JPH05241363A - 電子写真用転写体 - Google Patents

電子写真用転写体

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JPH05241363A
JPH05241363A JP4086892A JP4086892A JPH05241363A JP H05241363 A JPH05241363 A JP H05241363A JP 4086892 A JP4086892 A JP 4086892A JP 4086892 A JP4086892 A JP 4086892A JP H05241363 A JPH05241363 A JP H05241363A
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JP
Japan
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polyaniline
film
volume resistivity
structural unit
transfer member
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Application number
JP4086892A
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English (en)
Inventor
Masao Abe
正男 阿部
Yoshihiro Uetani
慶裕 植谷
Akira Otani
彰 大谷
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Nitto Denko Corp
Original Assignee
Nitto Denko Corp
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Publication date
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  • Electrostatic Charge, Transfer And Separation In Electrography (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】周囲環境条件の変動によらずに安定に107
1013Ω・cmの範囲の体積抵抗率を有し、しかも、均一
な電気抵抗膜を備えた電子写真用転写体提供することに
ある。 【構成】一般式(I) 【化1】 (式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中のキノンジイ
ミン構造単位及びフエニレンジアミン構造単位のモル分
率を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1であ
る。)で表わされるキノンジイミン構造単位及びフエニ
レンジアミン構造単位を主たる繰返し単位として有し、
その体積抵抗率が107 〜1013Ω・cmの範囲にある有
機重合体からなる電気抵抗膜を備えている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真用転写体に関
し、詳しくは、周囲環境条件によらずに安定に107
1013Ω・cmの範囲の体積抵抗率を有する電気抵抗膜を
備えた電子写真用転写体に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真用転写体は、電子写真プロセス
によつて感光体上に形成されたパターンに対応する静電
潜像にトナーを付着させて得られたトナー画像(顕像)
を紙、樹脂フイルム等の画像定着基材上に転写するため
に、感光体と画像定着基材との間に配設される中間部材
である。
【0003】このような転写体の素材として、従来、二
種のものが知られている。一つは絶縁性材料であり、他
の一つは半導電性材料である。絶縁性材料を用いる場合
は、感光体上のトナーを転写した転写体が感光体から離
れるときに剥離放電が発生し、放電模様が生じたり、ト
ナーが飛散したりして、画像が乱れやすいので、これを
防止するために、その帯電電圧が高くならないように、
通常、例えば、ポリフツ化ビニリデンのような誘電率の
高い材料が用いられる。しかし、このように、誘電率の
高い材料を用いるときは、トナーの離脱性がよくないの
で、トナーが転写されやすいように、表面エネルギーの
小さい材料と組み合わせることが必要である。また、ト
ナーを転写するためには、表面電位を制御するために、
除電装置が不可欠である。
【0004】一方、転写体の材料として、半導電性材料
を用いる場合は、トナーの転写は容易であり、除電装置
が不要であり、装置費用を低減させることができるの
で、半導電性材料は、転写体の材料として有望であると
考えられている。電子写真用転写体のためのの半導電性
材料は、体積抵抗率が107 〜1013Ω・cmの範囲にあ
ることが必要である。体積抵抗率がこの範囲にある材料
は、従来、炭素を分散させた樹脂や、或いはイオン伝導
性の半導電性樹脂等によつて製造されている。しかし、
前者は、体積抵抗率が上記範囲にあるものを安定して製
造することが困難であり、通常、得られた製品のばらつ
きが著しく大きい。また、材料の組成が不均一であるた
め、ミクロ的には体積抵抗率に不均一性があり、精密な
複写画像を得ることが困難である。他方、イオン伝導性
の半導電性樹脂は、例えば、フエノール樹脂のようなイ
オン伝導性の樹脂は、湿度等の環境変動に対する体積抵
抗率の変動が大きく、例えば、相対湿度が90%と10
%のときとでは、3桁乃至5桁のように大きく変動す
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の半導
電性材料からなる電子写真用転写体における上記した問
題を解決するためになされたものであつて、周囲環境条
件の変動によらずに安定に107 〜1013Ω・cmの範囲
の体積抵抗率を有し、しかも、均一な電気抵抗膜を備え
た電子写真用転写体提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による電子写真用
転写体は、一般式(I)
【0007】
【化3】
【0008】(式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中
のキノンジイミン構造単位及びフエニレンジアミン構造
単位のモル分率を示し、0<m<1、0<n<1、m+
n=1である。)で表わされるキノンジイミン構造単位
及びフエニレンジアミン構造単位を主たる繰返し単位と
して有し、その体積抵抗率が107 〜1013Ω・cmの範
囲にある有機重合体からなる電気抵抗膜を備えているこ
とを特徴とする。
【0009】本発明において、電気抵抗膜を形成する上
記有機重合体は、脱ドープ状態において溶剤に可溶性の
ポリアニリンであり、前記一般式(I)で表わされるも
のである。かかるポリアニリンの製造、脱ドーピング方
法、溶剤への溶解性等については、特開平3−2822
9号公報に詳細に記載されている。特に、本発明におい
て用いるポリアニリンは、脱ドープ状態において457.
9nmの波長の光で励起して得られるレーザー・ラマン
スペクトルにおけるパラ置換ベンゼンの骨格振動のう
ち、1600cm-1よりも高波数にあらわれる骨格延伸振
動のラマン線の強度Iaと1600cm-1よりも低波数に
あらわれる骨格延伸振動のラマン線強度Ibの比Ia/
Ibが1.0以上であることが好ましい。更に、本発明に
おいて用いるポリアニリンは、N−メチルピロリドン
中、30℃で測定した極限粘度が〔η〕が0.40dl/g以
上であることか好ましい。かかるレーザー・ラマンスペ
クトル特性を有するポリアニリンは、特開平3−282
29号公報に詳細に記載されているように、従来より知
られているポリアニリンに比べて、高分子量であり、溶
剤可溶性である点で区別され、更に、構造的にも区別さ
れ得る。
【0010】本発明において用いる上記一般式で表わさ
れるキノンジイミン構造単位及びフエニレンジアミン構
造単位を主たる繰返し単位として有する重合体であつ
て、脱ドープ状態において有機溶剤に可溶性であり、所
定の極限粘度と前述したレーザー・ラマンスペクトル特
性を有するポリアニリン(以下、脱ドープされたポリア
ニリンという。)は、特開平3−28229号公報に詳
細に記載されているように、酸解離定数 pKa値が3.0以
下であるプロトン酸の存在下に溶剤中にてアニリンに温
度を5℃以下、好ましくは0℃以下の温度に保持しつ
つ、標準水素電極を基準とする還元半電池反応における
起電力として定められる標準電極電位が0.6V以上であ
る酸化剤の水溶液をアニリン1モル当りに、酸化剤の1
モルを、酸化剤1分子を還元するのに必要な電子数で割
つた量として定義される当量で、2当量以上、好ましく
は2〜2.5当量徐々に加えて、上記プロトン酸にてドー
プされたアニリンの酸化重合体(以下、ドープされたポ
リアニリンという。)を生成させ、次いで、このドープ
されたポリアニリンを塩基性物質によつて脱ドープする
ことによつて得ることができる。
【0011】このように、プロトン酸の存在下にアニリ
ンを酸化重合してポリアニリンを得、次いで、このポリ
アニリンを脱ドープして得られるポリアニリンは、高分
子量を有し、しかも、種々の有機溶剤に溶解する。かか
る有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、
N,N−ジメチルアセトアミド、 N,N−ジメチルホルムア
ミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イ
ミダゾリジノン、スルホラン等を挙げることができる。
溶解度は、脱ドープされたポリアニリンの平均分子量や
溶剤にもよるが、重合体の0.5〜100%が溶解し、1
〜30重量%の溶液を得ることができる。特に、脱ドー
プされたポリアニリンは、N−メチル−2−ピロリドン
に高い溶解性を示し、通常、重合体の20〜100%が
溶解し、3〜30重量%溶液を得ることができる。しか
し、テトラヒドロフラン、80%酢酸水溶液、60%ギ
酸水溶液、アセトニトリル等には溶解しない。
【0012】前記一般式(I)で表わされるポリアニリ
ンの体積抵抗率は、そのポリアニリンにおける酸化還元
の度合い、即ち、前記一般式(I)におけるm及びnの
値によつて調整することができる。ポリアニリンを還元
することによつて、mを低減させ、nを増大させること
ができ、逆に、酸化すれば、mを増大させ、nを低減さ
せることができる。一般的には、還元によつて体積抵抗
率は減少し、酸化すれば、体積抵抗率は増大する傾向が
ある。
【0013】前記一般式(I)で表わされるポリアニリ
ンの体積抵抗率は、ポリアニリンの形態がフイルムであ
るときは、還元状態で107 Ω・cmであり、酸化状態で
10 13Ω・cmである。また、前記一般式(I)で表わさ
れるポリアニリンの体積抵抗率は、ポリアニリンの形態
が粉末であるときは、還元状態で106 Ω・cmであり、
酸化状態で109 Ω・cmである。
【0014】従つて、前記一般式(I)で表わされるポ
リアニリンの体積抵抗率は、その形態の選択と酸化還元
の度合いの調整によつて、107 Ω・cmから1013Ω・
cmの範囲で任意に調整することができる。ポリアニリン
の酸化還元の度合いは、脱ドープしたポリアニリンを還
元剤で還元し、その際に、用いる還元剤のポリアニリン
に対する当量比を選択することによつて調整することが
できる。
【0015】ポリアニリンの酸化還元の度合いは、ポリ
アニリンをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた溶
液の電子スペクトルから評価することができる。溶剤可
溶性のポリアニリンのN−メチル−2−ピロリドン溶液
の電子スペクトルは、340nmと640nmとに極大
吸収を有する。ポリアニリンを完全に還元すれば、64
0nmの吸収が消失し、340nmの吸収の強度が増す
ので、640nmの吸収はキノンジイミン構造に由来
し、340nmの吸収はフエニレンジアミン構造に由来
するものと考えられる。
【0016】そこで、それぞれの波長における吸光度を
640 及びA340 とするとき、ポリアニリンの酸化の度
合いは、便宜的に次式で表わされる酸化度指数ODI
(Oxi-dation Degree Index)によつて数値化することが
できる。 ODI=A640 /A340 ポリアニリンが完全に還元された場合は、A640 =0で
あるから、ODI=0である。アニリンの酸化重合の
後、アルカリ処理によつて脱ドープしたポリアニリンの
ODIは、通常、0.8程度である。従つて、前述したポ
リアニリンの還元状態及び酸化状態をODIで表わせ
ば、還元状態では、ODI=0.01〜0.1程度、酸化状
態では、ODI=0.7〜0.8程度である。ODIが0.1
から0.7の間のポリアニリンは、前記したように、ポリ
アニリンの還元処理時に用いる還元剤のポリアニリンに
対する当量比によつて自由に制御することができる。
【0017】このようなポリアニリンの還元のために
は、抱水ヒドラジン、フエニルヒドラジン等のヒドラジ
ン類、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチ
ウム等の金属水素化物、水素等が好適に用いられる。有
機溶剤、特に、N−メチル−2−ピロリドンに溶解する
が、N−メチル−2−ピロリドンを還元しない点から、
フエニルヒドラジンが最も好ましく用いられる。
【0018】他方、ポリアニリンの酸化のために用いら
れる酸化剤は、前記一般式(I)におけるフエニレンジ
アミン構造単位を酸化し得るものであれば任意である
が、標準水素電極を基準とする還元半電池反応における
起電力として定められる標準電極電位が0.3V以上であ
る酸化剤が特に好適に用いられる。例えば、穏和な酸化
剤である酸化銀が好ましく用いられる。酸素吹き込みも
有用である。強力な酸化剤として、例えば、過マンガン
酸カリウムや重クロム酸カリウム等も用いることができ
るが、その使用に際しては、ポリアニリンの劣化をもた
らないようにする必要がある。
【0019】更に、ポリアニリンからなるフイルムの体
積抵抗率は、そのようなフイルムの製膜条件によつて
も、調整することができる。例えば、キヤステイング
後、空気中、高温で長時間の乾燥のように、乾燥条件を
厳しくするにつれて、得られるフイルムは、空気酸化に
よつて酸化の度合いが高まつており、その結果、フイル
ムの体積抵抗率が上昇する傾向がある。例えば、ODI
=0.02の還元状態のポリアニリン溶液をキヤステイン
グし、空気中で1時間乾燥する場合、得られるフイルム
の体積抵抗率は、乾燥温度が100℃のときは8×10
8 Ω・cm、120℃のときは2×109 Ω・cm、150
℃のときは2×1010Ω・cm、170℃のときは3×1
10Ω・cmである。乾燥温度を同じとし、乾燥時間を変
動させることは、フイルムの体積抵抗率を大幅に変化さ
せない。例えば、10分と1時間とを比べれば、1時間
乾燥することによつて、得られるフイルムの体積抵抗率
は、約1.3〜2倍に増大する。
【0020】本発明によれば、かかる溶剤可溶性の脱ド
ープされたポリアニリンを有機溶剤、特に好ましくはN
−メチル−2−ピロリドンに溶解し、必要に応じて、還
元剤にてODIを調整し、次いで、ガラス・フイルター
にて濾過し、異物、未溶解物等を除去し、真空脱泡し、
次いで、ガラス板や平滑な金属板等の適宜の基材上にキ
ヤステイングし、溶剤を乾燥揮散させれば、ポリアニリ
ンからなるフイルムを得ることができる。このポリアニ
リンフイルムを基材から剥離すれば、本発明による電子
写真用転写体として用いることができる。尚、ポリアニ
リンのフイルムが生成した後、基材を水中に浸漬すれ
ば、ポリアニリンフイルムが自然に基材から剥離する。
【0021】ポリアニリンからなるフイルムの厚さは、
ポリアニリン溶液の濃度とそのキヤステイング厚さによ
つて制御することができる。ポリアニリン溶液の濃度と
しては、自立性フイルムを得るには、通常、3〜25重
量%、好ましくは、5〜15重量%の範囲である。ま
た、ポリアニリン溶液の粘度は、溶液の濃度及びODI
によつて大幅に変動するが、通常、1〜500ポアズの
ものが用いられる。
【0022】このように、本発明による電子写真用転写
体は、前記一般式(I)で表わされるポリアニリンであ
つて、その体積抵抗率が107 〜1013Ω・cmの範囲に
あり、更に、好ましくは、所定のレーザー・ラマンスペ
クトル特性と極限粘度とを有するポリアニリンのフイル
ムからなる電気抵抗膜を備えている。本発明によれば、
前記ポリアニリンが単独で上記範囲の体積抵抗率を有す
るので、かかるポリアニリンからなる電気抵抗膜を表面
材として用いることによつて、単一の材料からなる均一
なフイルムにて上記範囲の体積抵抗率を有する電子写真
用転写体を得ることができ、かくして、かかる電子写真
用転写体を備えた電子写真プロセスによれば、画像の均
一性が保持された高品質の転写画像を得ることができ
る。
【0023】更に、本発明によるポリアニリンは、電子
伝導性の導電性高分子であるので、湿度による抵抗変動
がないために、体積抵抗率が環境変化による影響を受け
ない。従つて、本発明による転写体を備えた電子写真プ
ロセスは、環境安定性にすぐれている。本発明による電
子写真用転写体は、前記一般式(I)で表わされるポリ
アニリンのみから構成される自立性フイルムであつても
よいが、例えば、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリ
アミド等の樹脂フイルムを補強基材として、その上にキ
ヤステイング法にてポリアニリンフイルムを形成させて
なる複合フイルムでもよく、また、補強基材自体がカー
ボン分散系プラスチツク等の半導電性であるような複合
体でもよい。また、基材とポリアニリンフイルムとの間
の密着を高めるための接着層を介在させた複合体であつ
てもよい。
【0024】また、必要に応じて、例えば、表面の滑り
性や硬度の改良のために、ポリアニリンフイルムの表面
にポリアニリンの電気的特性を損なわない範囲内におい
て、シリコーン系重合体や含フツ素系重合体等からなる
厚さ数μmの薄膜を形成させてもよい。本発明による電
子写真用転写体は、その形状において、特に限定される
ものではなく、例えば、シート状、ベルト状等任意であ
る。ベルト状の転写体は、例えば、シート状のものを接
着剤を用いてベルト状に加工したり、加熱溶融可能な重
合体を用いて加熱融着すれば得ることができるほか、ま
た、熱可塑性樹脂フイルムで補強した複合フイルムをそ
の端部で加熱融着させる方法によつても得ることができ
る。別の方法として、円筒型金属基材の内面又は外面に
ポリアニリン溶液を塗布し、加熱乾燥させてフイルムを
形成させた後、円筒型基材から離型させれば、所謂継ぎ
目なしのベルト状の転写体を得ることができる。
【0025】前述したように、電子写真用転写体は、電
子写真プロセスによつて感光体上に形成されたパターン
に対応する静電潜像にトナーを付着させて得られたトナ
ー画像(顕像)を紙、樹脂フイルム等の画像定着基材上
に転写するために、感光体と画像定着基材との間に配設
される中間部材である。感光体上のトナー画像を転写体
に転写するには、転写体を感光体に接触させればよい。
しかし、この方法以外にも、例えば、帯電器にて転写体
をトナーと逆極性に均一にコロナ帯電させて、感光体上
のトナー画像を転写体に転写させることもできる。
【0026】このようにして、トナー画像が転写体に転
写された後、この転写体を紙、樹脂フイルム等の画像定
着基材に接触させて、トナー画像を画像定着基材に再転
写し、加熱又は加圧等の手段にて画像を最終的に定着さ
せる。この後、転写体はクリーニング・ブラシでクリー
ニングされて、当初の状態に戻される。カラー複写の場
合は、イエロー、マゼンタ及びシアンの3色について転
写される。この場合、一色ずつ転写する方法、三色分を
すべて転写体に転写した後、一括して定着基材に転写す
る方法等、転写方法は何ら制約されない。
【0027】
【発明の効果】本発明による電子写真用転写体は、以上
のように、脱ドープされたポリアニリンからなる電気抵
抗膜を備えており、ここに、このポリアニリンの導電性
が電子伝導によるので、水分によつて影響を受けず、環
境条件に対して安定であつて、安定した抵抗値を有す
る。また、その体積抵抗率が半導性領域である107
1013Ω・cmの範囲にあり、しかも、均一材料であり、
フイルムの引張弾性率も高い。かくして、本発明による
電子写真用転写体は、画像的均一性にすぐれ、電子写真
用転写体として非常にすぐれている。
【0028】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではな
い。 参考例1 (アニリンの酸化重合によるドープされたポリアニリン
の製造)攪拌装置、温度計及び直管アダプターを備えた
10リットル容量セパラブル・フラスコに蒸留水600
0g、36%塩酸360ml及びアニリン400g(4.2
95モル)をこの順序にて仕込み、アニリンを溶解させ
た。別に、氷水にて冷却しながら、ビーカー中の蒸留水
1493gに97%濃硫酸434g(4.295モル)を
加え、混合して、硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶
液を上記セパラブル・フラスコに加え、フラスコ全体を
低温恒温槽にて−4℃まで冷却した。
【0029】次に、ビーカー中にて蒸留水2293gに
ペルオキソ二硫酸アンモニウム980g(4.295モ
ル)を加え、溶解させて、酸化剤水溶液を調製した。フ
ラスコ全体を低温恒温槽で冷却して、反応混合物の温度
を−3℃以下に保持しつつ、攪拌下にアニリン塩の酸性
水溶液に、チユービングポンプを用いて、直管アダプタ
ーから上記ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液を1ml
/分以下の割合にて徐々に滴下した。最初、無色透明の
溶液は、重合の進行に伴つて緑青色から黒緑色となり、
次いで、黒緑色の粉末が析出した。
【0030】この粉末析出時に反応混合物において温度
の上昇がみられるが、反応系内の温度を−3℃以下に抑
えた。かくして、7時間を要して、ペルオキソ二硫酸ア
ンモニウム水溶液の滴下を終了した後、更に1時間、−
3℃以下の温度にて攪拌を続けた。得られた重合体粉末
を濾別し、水洗、アセトン洗浄し、室温で真空乾燥し
て、黒緑色の重合体粉末430gを得た。これを直径1
3mm、厚さ700μmのデイスクに加圧成形し、フアン
・デル・ポー法によつて、その電導度を測定したとこ
ろ、14S/cmであつた。 (ドープされた導電性ポリアニリンのアンモニアによる
脱ドーピング)上記ドープされているポリアニリン粉末
350gを2Nアンモニア水4リットル中に加え、オー
トホモミキサーにて回転数5000rpm にて5時間攪拌
した。混合物は、黒緑色から青紫色に変化した。
【0031】ブフナーろうとにて粉末を濾別し、ビーカ
ー中にて攪拌しながら、蒸留水にて濾液が中性になるま
で繰り返して洗浄し、続いて、濾液が無色になるまでア
セトンにて洗浄した。この後、粉末を室温にて10時間
真空乾燥して、黒褐色の脱ドープしたポリアニリン粉末
280gを得た。このポリアニリンはN−メチル−2−
ピロリドンに可溶性であつて、溶解度は同溶剤100g
に対して8g(7.4%)であつた。また、これを溶剤と
して30℃で測定した極限粘度〔η〕は1.23であつ
た。
【0032】このポリアニリンは、ジメチルスルホキシ
ド及びジメチルホルムアミドには1%以下の溶解度であ
つた。テトラヒドロフラン、ピリジン、80%酢酸水溶
液、60%ギ酸水溶液及びアセトニトリルには実質的に
溶解しなかつた。この脱ドープされたポリアニリンの粉
末をデイスク状に成形した試料について、励起波長45
7.9nmで照射して得たレーザー・ラマンスペクトルを
図1に示す。また、レーザー励起光の波長を変化させ
て、1400〜1700cm-1の範囲について、ラマンス
ペクトルを測定した結果を図2に示す。励起波長を48
8.0nmから476.5nmを経て457.9nmへと短波
長側に変化させるにつれて、Ia/Ibが変化し、45
7.9nmでは、1.0以上となつており、488.0nmの
ときと比べて、Ia/Ib強度が逆転していることが示
される。 実施例1 参考例1にて得た脱ドープされたポリアニリン粉末0.5
gをN−メチル−2−ピロリドン19.5g中に溶解させ
て、2.5重量%溶液を調製した。この溶液1gをN−メ
チル−2−ピロリドンにて50倍に希釈し、この希釈し
た溶液1gを更に50倍に希釈した。
【0033】この希釈溶液について、波長260nmか
ら1200nmの範囲の電子スペクトルを分光光度計に
て測定した。結果を図3に示す。λmax =641nm及
び329nmの二つのピークをもつスペクトルを得た。
これより酸化度指数ODIは0.83であつた。このよう
なポリアニリン粉末5gをN−メチル−2−ピロリドン
95gに溶解して、5重量%溶液を調製した。ガラス・
フイルターで濾過した後、吸引鐘中で真空脱泡した。こ
のように処理した溶液をガラス板上にキヤステイング
し、熱風循環乾燥器中、150℃で2時間加熱乾燥させ
て、N−メチル−2−ピロリドンを蒸発揮散させた。こ
の後、ガラス板を乾燥機から取出して放冷し、フイルム
をその端部からガラス板から剥がして、厚さ50μmの
ポリアニリンフイルムを得た。このポリアニリンフイル
ムの体積抵抗率は、直流二端子法にて、9.0×10 11Ω
・cmであつた。
【0034】このフイルムを温度60℃、相対湿度90
%の環境に24時間放置した後、体積抵抗率を測定した
ところ、8.1×1011Ω・cmであつて、放置前に比べて
殆ど変化なかつた。また、温度25℃、相対湿度0.03
%のグローブボツクス中に24時間放置した後、体積抵
抗率を測定したところ、1.0×1012Ω・cmであつて、
同様に、放置前に比べて殆ど変化なかつた。このよう
に、得られたポリアニリンフイルムの体積抵抗率は、環
境条件の変化に対して非常に安定であつた。
【0035】このポリアニリンフイルムを用いて電子写
真プロセスを適用した。先ず、感光体上のトナー画像を
ポリアニリンフイルムに転写させたところ、感光体から
フイルムが離れるときも、剥離放電は生じず、画像の乱
れはなく、画像的均質性にすぐれる高品質の画像を得る
ことができた。 実施例2 参考例1にて得た脱ドープされたポリアニリン粉末48
gを500ml容量三角フラスコ中のエチルエーテル20
0ml中に磁気攪拌子による攪拌下に加えて、懸濁させ
た。これにフエニルヒドラジン7.2gを少量ずつ滴下し
たところ、しばらくして、ポリアニリンの還元反応が始
まり、窒素ガスが発生した。そのまま、1時間攪拌した
後、ヌツチエにて減圧濾過し、ヌツチエ上でアセトン洗
浄し、室温で真空下に3時間乾燥して、部分的に還元さ
れたポリアニリンを得た。
【0036】このポリアニリン0.5gをN−メチル−2
−ピロリドン19.5gに溶解させ、2.5重量%溶液を調
製した。この溶液を実施例1と同様にして希釈し、分光
光度計にて波長260〜850nmの範囲の電子スペク
トルを測定した。これを図4に示す。これより求めたO
DIは0.31であつた。また、ポリアニリン粉末10g
をN−メチル−2−ピロリドン90gに溶解して、10
重量%溶液を調製し、実施例1と同様にして、溶液を濾
過、脱泡した。次いで、この溶液をガラス板上にキヤス
テイングし、60℃で2時間加熱乾燥させた後、150
℃で5時間乾燥させて、厚さ100μmのポリアニリン
フイルムを得た。このフイルムの体積抵抗率は、2.1×
1010Ω・cmであつた。
【0037】実施例1と同様にして、温度60℃、相対
湿度90%及び温度25℃、相対湿度0.03%の環境下
に24時間放置した後、取出して、体積抵抗率を測定し
たところ、それぞれ1.3×1010Ω・cm及び3.2×10
10Ω・cmであつて、放置前に比べて殆ど変化なかつた。
また、実施例1と同様にして電子写真プロセスに適用し
て、転写体としての性能評価したところ、感光体からポ
リアニリンフイルムへのトナーの転写及びポリアニリン
フイルムから紙への転写のいずれの場合にも、剥離放電
は生じず、画像の乱れはなく、画像的均質性にすぐれる
高品質の画像を得ることができた。 実施例3 実施例2で調製した10重量%ポリアニリン溶液にフエ
ニルヒドラジンを少量ずつ加えていき、溶液の青色が消
えて、褐色を呈するところで、フエニルヒドラジンの添
加を止めた。この溶液の一部を採り、N−メチル−2−
ピロリドンにて希釈し、実施例1と同様にして電子スペ
クトルを測定した。これより求めたODIは0.01であ
つた。
【0038】この褐色のポリアニリン溶液をガラス板上
にキヤステイングし、120℃1時間加熱乾燥させて、
厚さ40μmのポリアニリンフイルムを得た。このポリ
アニリンフイルムの体積抵抗率は、2.0×109 Ω・cm
であつた。実施例1と同様にして、温度60℃、相対湿
度90%及び温度25℃、相対湿度0.03%の環境下に
24時間放置した後、取出して、体積抵抗率を測定した
ところ、それぞれ1.1×109 Ω・cm及び2.4×109
Ω・cmであつて、放置前に比べて殆ど変化なかつた。
【0039】また、実施例1同様にして電子写真プロセ
スに適用して、転写体としての性能を評価したところ、
感光体からポリアニリンフイルムへのトナーの転写及び
ポリアニリンフイルムから紙への転写のいずれの場合に
も、剥離放電は生じず、画像の乱れはなく、画像的均質
性にすぐれる高品質の画像を得ることができた。 4.図面の簡単な説明
【0040】
【図1】は、脱ドープ状態で有機溶剤可溶性のポリアニ
リンを457.9nmの波長の光で励起したときのレーザ
ー・ラマンスペクトルである。
【0041】
【図2】は、図1と同じポリアニリンを種々異なる励起
波長の光で励起したときのレーザー・ラマンスペクトル
である。
【0042】
【図3】は、本発明にて用いた脱ドープされた溶剤可溶
性のODIが0.83であるポリアニリンの電子スペクト
ルである。
【0043】
【図4】は、本発明にて用いた脱ドープされた溶剤可溶
性のODIが0.31であるポリアニリンの電子スペクト
ルである。
【手続補正書】
【提出日】平成4年11月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】電子写真用転写体
【特許請求の範囲】
【化1】 (式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中のキノンジイ
ミン構造単位及びフエニレンジアミン構造単位のモル分
率を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1であ
る。)で表わされるキノンジイミン構造単位及びフエニ
レンジアミン構造単位を主たる繰返し単位として有し、
その体積抵抗率が107 〜1013Ω・cmの範囲にある有
機重合体からなる電気抵抗膜を備えていることを特徴と
する電子写真用転写体。
【化2】 (式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中のキノンジイ
ミン構造単位及びフエニレンジアミン構造単位のモル分
率を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1であ
る。)で表わされるキノンジイミン構造単位及びフエニ
レンジアミン構造単位を主たる繰返し単位として有し、
その体積抵抗率が107 〜1013Ω・cmの範囲にある有
機重合体であつて、脱ドープ状態において457.9nm
の波長の光で励起して得られるレーザー・ラマンスペク
トルにおけるパラ置換ベンゼンの骨格振動のうち、16
00cm-1よりも高波数にあらわれる骨格延伸振動のラマ
ン線の強度Iaと1600cm-1よりも低波数にあらわれ
る骨格延伸振動のラマン線強度Ibの比Ia/Ibが1.
0以上である有機重合体からなる電気抵抗膜を備えてい
ることを特徴とする電子写真用転写体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真用転写体に関
し、詳しくは、周囲環境条件によらずに安定に107
1013Ω・cmの範囲の体積抵抗率を有する電気抵抗膜を
備えた電子写真用転写体に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真用転写体は、電子写真プロセス
によつて感光体上に形成されたパターンに対応する静電
潜像にトナーを付着させて得られたトナー画像(顕像)
を紙、樹脂フイルム等の画像定着基材上に転写するため
に、感光体と画像定着基材との間に配設される中間部材
である。
【0003】このような転写体の素材として、従来、二
種のものが知られている。一つは絶縁性材料であり、他
の一つは半導電性材料である。絶縁性材料を用いる場合
は、感光体上のトナーを転写した転写体が感光体から離
れるときに剥離放電が発生し、放電模様が生じたり、ト
ナーが飛散したりして、画像が乱れやすいので、これを
防止するために、その帯電電圧が高くならないように、
通常、例えば、ポリフツ化ビニリデンのような誘電率の
高い材料が用いられる。しかし、このように、誘電率の
高い材料を用いるときは、トナーの離脱性がよくないの
で、トナーが転写されやすいように、表面エネルギーの
小さい材料と組み合わせることが必要である。また、ト
ナーを転写するためには、表面電位を制御するために、
除電装置が不可欠である。
【0004】一方、転写体の材料として、半導電性材料
を用いる場合は、トナーの転写は容易であり、除電装置
が不要であり、装置費用を低減させることができるの
で、半導電性材料は、転写体の材料として有望であると
考えられている。電子写真用転写体のためのの半導電性
材料は、体積抵抗率が107 〜1013Ω・cmの範囲にあ
ることが必要である。体積抵抗率がこの範囲にある材料
は、従来、炭素を分散させた樹脂や、或いはイオン伝導
性の半導電性樹脂等によつて製造されている。しかし、
前者は、体積抵抗率が上記範囲にあるものを安定して製
造することが困難であり、通常、得られた製品のばらつ
きが著しく大きい。また、材料の組成が不均一であるた
め、ミクロ的には体積抵抗率に不均一性があり、精密な
複写画像を得ることが困難である。他方、イオン伝導性
の半導電性樹脂は、例えば、フエノール樹脂のようなイ
オン伝導性の樹脂は、湿度等の環境変動に対する体積抵
抗率の変動が大きく、例えば、相対湿度が90%と10
%のときとでは、3桁乃至5桁のように大きく変動す
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来の半導
電性材料からなる電子写真用転写体における上記した問
題を解決するためになされたものであつて、周囲環境条
件の変動によらずに安定に107 〜1013Ω・cmの範囲
の体積抵抗率を有し、しかも、均一な電気抵抗膜を備え
た電子写真用転写体提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による電子写真用
転写体は、一般式(I)
【0007】
【化3】
【0008】(式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中
のキノンジイミン構造単位及びフエニレンジアミン構造
単位のモル分率を示し、0<m<1、0<n<1、m+
n=1である。)で表わされるキノンジイミン構造単位
及びフエニレンジアミン構造単位を主たる繰返し単位と
して有し、その体積抵抗率が107 〜1013Ω・cmの範
囲にある有機重合体からなる電気抵抗膜を備えているこ
とを特徴とする。
【0009】本発明において、電気抵抗膜を形成する上
記有機重合体は、脱ドープ状態において溶剤に可溶性の
ポリアニリンであり、前記一般式(I)で表わされるも
のである。かかるポリアニリンの製造、脱ドーピング方
法、溶剤への溶解性等については、特開平3−2822
9号公報に詳細に記載されている。特に、本発明におい
て用いるポリアニリンは、脱ドープ状態において457.
9nmの波長の光で励起して得られるレーザー・ラマン
スペクトルにおけるパラ置換ベンゼンの骨格振動のう
ち、1600cm-1よりも高波数にあらわれる骨格延伸振
動のラマン線の強度Iaと1600cm-1よりも低波数に
あらわれる骨格延伸振動のラマン線強度Ibの比Ia/
Ibが1.0以上であることが好ましい。更に、本発明に
おいて用いるポリアニリンは、N−メチルピロリドン
中、30℃で測定した極限粘度が〔η〕が0.40dl/g以
上であることか好ましい。かかるレーザー・ラマンスペ
クトル特性を有するポリアニリンは、特開平3−282
29号公報に詳細に記載されているように、従来より知
られているポリアニリンに比べて、高分子量であり、溶
剤可溶性である点で区別され、更に、構造的にも区別さ
れ得る。
【0010】本発明において用いる上記一般式で表わさ
れるキノンジイミン構造単位及びフエニレンジアミン構
造単位を主たる繰返し単位として有する重合体であつ
て、脱ドープ状態において有機溶剤に可溶性であり、所
定の極限粘度と前述したレーザー・ラマンスペクトル特
性を有するポリアニリン(以下、脱ドープされたポリア
ニリンという。)は、特開平3−28229号公報に詳
細に記載されているように、酸解離定数 pKa値が3.0以
下であるプロトン酸の存在下に溶剤中にてアニリンに温
度を5℃以下、好ましくは0℃以下の温度に保持しつ
つ、標準水素電極を基準とする還元半電池反応における
起電力として定められる標準電極電位が0.6V以上であ
る酸化剤の水溶液をアニリン1モル当りに、酸化剤の1
モルを、酸化剤1分子を還元するのに必要な電子数で割
つた量として定義される当量で、2当量以上、好ましく
は2〜2.5当量徐々に加えて、上記プロトン酸にてドー
プされたアニリンの酸化重合体(以下、ドープされたポ
リアニリンという。)を生成させ、次いで、このドープ
されたポリアニリンを塩基性物質によつて脱ドープする
ことによつて得ることができる。
【0011】このように、プロトン酸の存在下にアニリ
ンを酸化重合してポリアニリンを得、次いで、このポリ
アニリンを脱ドープして得られるポリアニリンは、高分
子量を有し、しかも、種々の有機溶剤に溶解する。かか
る有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、
N,N−ジメチルアセトアミド、 N,N−ジメチルホルムア
ミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イ
ミダゾリジノン、スルホラン等を挙げることができる。
溶解度は、脱ドープされたポリアニリンの平均分子量や
溶剤にもよるが、重合体の0.5〜100%が溶解し、1
〜30重量%の溶液を得ることができる。特に、脱ドー
プされたポリアニリンは、N−メチル−2−ピロリドン
に高い溶解性を示し、通常、重合体の20〜100%が
溶解し、3〜30重量%溶液を得ることができる。しか
し、テトラヒドロフラン、80%酢酸水溶液、60%ギ
酸水溶液、アセトニトリル等には溶解しない。
【0012】前記一般式(I)で表わされるポリアニリ
ンの体積抵抗率は、そのポリアニリンにおける酸化還元
の度合い、即ち、前記一般式(I)におけるm及びnの
値によつて調整することができる。ポリアニリンを還元
することによつて、mを低減させ、nを増大させること
ができ、逆に、酸化すれば、mを増大させ、nを低減さ
せることができる。一般的には、還元によつて体積抵抗
率は減少し、酸化すれば、体積抵抗率は増大する傾向が
ある。
【0013】前記一般式(I)で表わされるポリアニリ
ンの体積抵抗率は、ポリアニリンの形態がフイルムであ
るときは、還元状態で107 Ω・cmであり、酸化状態で
10 13Ω・cmである。また、前記一般式(I)で表わさ
れるポリアニリンの体積抵抗率は、ポリアニリンの形態
が粉末であるときは、還元状態で106 Ω・cmであり、
酸化状態で109 Ω・cmである。
【0014】従つて、前記一般式(I)で表わされるポ
リアニリンの体積抵抗率は、その形態の選択と酸化還元
の度合いの調整によつて、107 Ω・cmから1013Ω・
cmの範囲で任意に調整することができる。ポリアニリン
の酸化還元の度合いは、脱ドープしたポリアニリンを還
元剤で還元し、その際に、用いる還元剤のポリアニリン
に対する当量比を選択することによつて調整することが
できる。
【0015】ポリアニリンの酸化還元の度合いは、ポリ
アニリンをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させた溶
液の電子スペクトルから評価することができる。溶剤可
溶性のポリアニリンのN−メチル−2−ピロリドン溶液
の電子スペクトルは、340nmと640nmとに極大
吸収を有する。ポリアニリンを完全に還元すれば、64
0nmの吸収が消失し、340nmの吸収の強度が増す
ので、640nmの吸収はキノンジイミン構造に由来
し、340nmの吸収はフエニレンジアミン構造に由来
するものと考えられる。
【0016】そこで、それぞれの波長における吸光度を
640 及びA340 とするとき、ポリアニリンの酸化の度
合いは、便宜的に次式で表わされる酸化度指数ODI
(Oxi-dation Degree Index)によつて数値化することが
できる。 ODI=A640 /A340 ポリアニリンが完全に還元された場合は、A640 =0で
あるから、ODI=0である。アニリンの酸化重合の
後、アルカリ処理によつて脱ドープしたポリアニリンの
ODIは、通常、0.8程度である。従つて、前述したポ
リアニリンの還元状態及び酸化状態をODIで表わせ
ば、還元状態では、ODI=0.01〜0.1程度、酸化状
態では、ODI=0.7〜0.8程度である。ODIが0.1
から0.7の間のポリアニリンは、前記したように、ポリ
アニリンの還元処理時に用いる還元剤のポリアニリンに
対する当量比によつて自由に制御することができる。
【0017】このようなポリアニリンの還元のために
は、抱水ヒドラジン、フエニルヒドラジン等のヒドラジ
ン類、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチ
ウム等の金属水素化物、水素等が好適に用いられる。有
機溶剤、特に、N−メチル−2−ピロリドンに溶解する
が、N−メチル−2−ピロリドンを還元しない点から、
フエニルヒドラジンが最も好ましく用いられる。
【0018】他方、ポリアニリンの酸化のために用いら
れる酸化剤は、前記一般式(I)におけるフエニレンジ
アミン構造単位を酸化し得るものであれば任意である
が、標準水素電極を基準とする還元半電池反応における
起電力として定められる標準電極電位が0.3V以上であ
る酸化剤が特に好適に用いられる。例えば、穏和な酸化
剤である酸化銀が好ましく用いられる。酸素吹き込みも
有用である。強力な酸化剤として、例えば、過マンガン
酸カリウムや重クロム酸カリウム等も用いることができ
るが、その使用に際しては、ポリアニリンの劣化をもた
らないようにする必要がある。
【0019】更に、ポリアニリンからなるフイルムの体
積抵抗率は、そのようなフイルムの製膜条件によつて
も、調整することができる。例えば、キヤステイング
後、空気中、高温で長時間の乾燥のように、乾燥条件を
厳しくするにつれて、得られるフイルムは、空気酸化に
よつて酸化の度合いが高まつており、その結果、フイル
ムの体積抵抗率が上昇する傾向がある。例えば、ODI
=0.02の還元状態のポリアニリン溶液をキヤステイン
グし、空気中で1時間乾燥する場合、得られるフイルム
の体積抵抗率は、乾燥温度が100℃のときは8×10
8 Ω・cm、120℃のときは2×109 Ω・cm、150
℃のときは2×1010Ω・cm、170℃のときは3×1
10Ω・cmである。乾燥温度を同じとし、乾燥時間を変
動させることは、フイルムの体積抵抗率を大幅に変化さ
せない。例えば、10分と1時間とを比べれば、1時間
乾燥することによつて、得られるフイルムの体積抵抗率
は、約1.3〜2倍に増大する。
【0020】本発明によれば、かかる溶剤可溶性の脱ド
ープされたポリアニリンを有機溶剤、特に好ましくはN
−メチル−2−ピロリドンに溶解し、必要に応じて、還
元剤にてODIを調整し、次いで、ガラス・フイルター
にて濾過し、異物、未溶解物等を除去し、真空脱泡し、
次いで、ガラス板や平滑な金属板等の適宜の基材上にキ
ヤステイングし、溶剤を乾燥揮散させれば、ポリアニリ
ンからなるフイルムを得ることができる。このポリアニ
リンフイルムを基材から剥離すれば、本発明による電子
写真用転写体として用いることができる。尚、ポリアニ
リンのフイルムが生成した後、基材を水中に浸漬すれ
ば、ポリアニリンフイルムが自然に基材から剥離する。
【0021】ポリアニリンからなるフイルムの厚さは、
ポリアニリン溶液の濃度とそのキヤステイング厚さによ
つて制御することができる。ポリアニリン溶液の濃度と
しては、自立性フイルムを得るには、通常、3〜25重
量%、好ましくは、5〜15重量%の範囲である。ま
た、ポリアニリン溶液の粘度は、溶液の濃度及びODI
によつて大幅に変動するが、通常、1〜500ポアズの
ものが用いられる。
【0022】このように、本発明による電子写真用転写
体は、前記一般式(I)で表わされるポリアニリンであ
つて、その体積抵抗率が107 〜1013Ω・cmの範囲に
あり、更に、好ましくは、所定のレーザー・ラマンスペ
クトル特性と極限粘度とを有するポリアニリンのフイル
ムからなる電気抵抗膜を備えている。本発明によれば、
前記ポリアニリンが単独で上記範囲の体積抵抗率を有す
るので、かかるポリアニリンからなる電気抵抗膜を表面
材として用いることによつて、単一の材料からなる均一
なフイルムにて上記範囲の体積抵抗率を有する電子写真
用転写体を得ることができ、かくして、かかる電子写真
用転写体を備えた電子写真プロセスによれば、画像の均
一性が保持された高品質の転写画像を得ることができ
る。
【0023】更に、本発明によるポリアニリンは、電子
伝導性の導電性高分子であるので、湿度による抵抗変動
がないために、体積抵抗率が環境変化による影響を受け
ない。従つて、本発明による転写体を備えた電子写真プ
ロセスは、環境安定性にすぐれている。本発明による電
子写真用転写体は、前記一般式(I)で表わされるポリ
アニリンのみから構成される自立性フイルムであつても
よいが、例えば、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリ
アミド等の樹脂フイルムを補強基材として、その上にキ
ヤステイング法にてポリアニリンフイルムを形成させて
なる複合フイルムでもよく、また、補強基材自体がカー
ボン分散系プラスチツク等の半導電性であるような複合
体でもよい。また、基材とポリアニリンフイルムとの間
の密着を高めるための接着層を介在させた複合体であつ
てもよい。
【0024】また、必要に応じて、例えば、表面の滑り
性や硬度の改良のために、ポリアニリンフイルムの表面
にポリアニリンの電気的特性を損なわない範囲内におい
て、シリコーン系重合体や含フツ素系重合体等からなる
厚さ数μmの薄膜を形成させてもよい。本発明による電
子写真用転写体は、その形状において、特に限定される
ものではなく、例えば、シート状、ベルト状等任意であ
る。ベルト状の転写体は、例えば、シート状のものを接
着剤を用いてベルト状に加工したり、加熱溶融可能な重
合体を用いて加熱融着すれば得ることができるほか、ま
た、熱可塑性樹脂フイルムで補強した複合フイルムをそ
の端部で加熱融着させる方法によつても得ることができ
る。別の方法として、円筒型金属基材の内面又は外面に
ポリアニリン溶液を塗布し、加熱乾燥させてフイルムを
形成させた後、円筒型基材から離型させれば、所謂継ぎ
目なしのベルト状の転写体を得ることができる。
【0025】前述したように、電子写真用転写体は、電
子写真プロセスによつて感光体上に形成されたパターン
に対応する静電潜像にトナーを付着させて得られたトナ
ー画像(顕像)を紙、樹脂フイルム等の画像定着基材上
に転写するために、感光体と画像定着基材との間に配設
される中間部材である。感光体上のトナー画像を転写体
に転写するには、転写体を感光体に接触させればよい。
しかし、この方法以外にも、例えば、帯電器にて転写体
をトナーと逆極性に均一にコロナ帯電させて、感光体上
のトナー画像を転写体に転写させることもできる。
【0026】このようにして、トナー画像が転写体に転
写された後、この転写体を紙、樹脂フイルム等の画像定
着基材に接触させて、トナー画像を画像定着基材に再転
写し、加熱又は加圧等の手段にて画像を最終的に定着さ
せる。この後、転写体はクリーニング・ブラシでクリー
ニングされて、当初の状態に戻される。カラー複写の場
合は、イエロー、マゼンタ及びシアンの3色について転
写される。この場合、一色ずつ転写する方法、三色分を
すべて転写体に転写した後、一括して定着基材に転写す
る方法等、転写方法は何ら制約されない。
【0027】
【発明の効果】本発明による電子写真用転写体は、以上
のように、脱ドープされたポリアニリンからなる電気抵
抗膜を備えており、ここに、このポリアニリンの導電性
が電子伝導によるので、水分によつて影響を受けず、環
境条件に対して安定であつて、安定した抵抗値を有す
る。また、その体積抵抗率が半導性領域である107
1013Ω・cmの範囲にあり、しかも、均一材料であり、
フイルムの引張弾性率も高い。かくして、本発明による
電子写真用転写体は、画像的均一性にすぐれ、電子写真
用転写体として非常にすぐれている。
【0028】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではな
い。 参考例1 (アニリンの酸化重合によるドープされたポリアニリン
の製造)攪拌装置、温度計及び直管アダプターを備えた
10リットル容量セパラブル・フラスコに蒸留水600
0g、36%塩酸360ml及びアニリン400g(4.2
95モル)をこの順序にて仕込み、アニリンを溶解させ
た。別に、氷水にて冷却しながら、ビーカー中の蒸留水
1493gに97%濃硫酸434g(4.295モル)を
加え、混合して、硫酸水溶液を調製した。この硫酸水溶
液を上記セパラブル・フラスコに加え、フラスコ全体を
低温恒温槽にて−4℃まで冷却した。
【0029】次に、ビーカー中にて蒸留水2293gに
ペルオキソ二硫酸アンモニウム980g(4.295モ
ル)を加え、溶解させて、酸化剤水溶液を調製した。フ
ラスコ全体を低温恒温槽で冷却して、反応混合物の温度
を−3℃以下に保持しつつ、攪拌下にアニリン塩の酸性
水溶液に、チユービングポンプを用いて、直管アダプタ
ーから上記ペルオキソ二硫酸アンモニウム水溶液を1ml
/分以下の割合にて徐々に滴下した。最初、無色透明の
溶液は、重合の進行に伴つて緑青色から黒緑色となり、
次いで、黒緑色の粉末が析出した。
【0030】この粉末析出時に反応混合物において温度
の上昇がみられるが、反応系内の温度を−3℃以下に抑
えた。かくして、7時間を要して、ペルオキソ二硫酸ア
ンモニウム水溶液の滴下を終了した後、更に1時間、−
3℃以下の温度にて攪拌を続けた。得られた重合体粉末
を濾別し、水洗、アセトン洗浄し、室温で真空乾燥し
て、黒緑色の重合体粉末430gを得た。これを直径1
3mm、厚さ700μmのデイスクに加圧成形し、フアン
・デル・ポー法によつて、その電導度を測定したとこ
ろ、14S/cmであつた。 (ドープされた導電性ポリアニリンのアンモニアによる
脱ドーピング)上記ドープされているポリアニリン粉末
350gを2Nアンモニア水4リットル中に加え、オー
トホモミキサーにて回転数5000rpm にて5時間攪拌
した。混合物は、黒緑色から青紫色に変化した。
【0031】ブフナーろうとにて粉末を濾別し、ビーカ
ー中にて攪拌しながら、蒸留水にて濾液が中性になるま
で繰り返して洗浄し、続いて、濾液が無色になるまでア
セトンにて洗浄した。この後、粉末を室温にて10時間
真空乾燥して、黒褐色の脱ドープしたポリアニリン粉末
280gを得た。このポリアニリンはN−メチル−2−
ピロリドンに可溶性であつて、溶解度は同溶剤100g
に対して8g(7.4%)であつた。また、これを溶剤と
して30℃で測定した極限粘度〔η〕は1.23であつ
た。
【0032】このポリアニリンは、ジメチルスルホキシ
ド及びジメチルホルムアミドには1%以下の溶解度であ
つた。テトラヒドロフラン、ピリジン、80%酢酸水溶
液、60%ギ酸水溶液及びアセトニトリルには実質的に
溶解しなかつた。この脱ドープされたポリアニリンの粉
末をデイスク状に成形した試料について、励起波長45
7.9nmで照射して得たレーザー・ラマンスペクトルを
図1に示す。また、レーザー励起光の波長を変化させ
て、1400〜1700cm-1の範囲について、ラマンス
ペクトルを測定した結果を図2に示す。励起波長を48
8.0nmから476.5nmを経て457.9nmへと短波
長側に変化させるにつれて、Ia/Ibが変化し、45
7.9nmでは、1.0以上となつており、488.0nmの
ときと比べて、Ia/Ib強度が逆転していることが示
される。 実施例1 参考例1にて得た脱ドープされたポリアニリン粉末0.5
gをN−メチル−2−ピロリドン19.5g中に溶解させ
て、2.5重量%溶液を調製した。この溶液1gをN−メ
チル−2−ピロリドンにて50倍に希釈し、この希釈し
た溶液1gを更に50倍に希釈した。
【0033】この希釈溶液について、波長260nmか
ら1200nmの範囲の電子スペクトルを分光光度計に
て測定した。結果を図3に示す。λmax =641nm及
び329nmの二つのピークをもつスペクトルを得た。
これより酸化度指数ODIは0.83であつた。このよう
なポリアニリン粉末5gをN−メチル−2−ピロリドン
95gに溶解して、5重量%溶液を調製した。ガラス・
フイルターで濾過した後、吸引鐘中で真空脱泡した。こ
のように処理した溶液をガラス板上にキヤステイング
し、熱風循環乾燥器中、150℃で2時間加熱乾燥させ
て、N−メチル−2−ピロリドンを蒸発揮散させた。こ
の後、ガラス板を乾燥機から取出して放冷し、フイルム
をその端部からガラス板から剥がして、厚さ50μmの
ポリアニリンフイルムを得た。このポリアニリンフイル
ムの体積抵抗率は、直流二端子法にて、9.0×10 11Ω
・cmであつた。
【0034】このフイルムを温度60℃、相対湿度90
%の環境に24時間放置した後、体積抵抗率を測定した
ところ、8.1×1011Ω・cmであつて、放置前に比べて
殆ど変化なかつた。また、温度25℃、相対湿度0.03
%のグローブボツクス中に24時間放置した後、体積抵
抗率を測定したところ、1.0×1012Ω・cmであつて、
同様に、放置前に比べて殆ど変化なかつた。このよう
に、得られたポリアニリンフイルムの体積抵抗率は、環
境条件の変化に対して非常に安定であつた。
【0035】このポリアニリンフイルムを用いて電子写
真プロセスを適用した。先ず、感光体上のトナー画像を
ポリアニリンフイルムに転写させたところ、感光体から
フイルムが離れるときも、剥離放電は生じず、画像の乱
れはなく、画像的均質性にすぐれる高品質の画像を得る
ことができた。 実施例2 参考例1にて得た脱ドープされたポリアニリン粉末48
gを500ml容量三角フラスコ中のエチルエーテル20
0ml中に磁気攪拌子による攪拌下に加えて、懸濁させ
た。これにフエニルヒドラジン7.2gを少量ずつ滴下し
たところ、しばらくして、ポリアニリンの還元反応が始
まり、窒素ガスが発生した。そのまま、1時間攪拌した
後、ヌツチエにて減圧濾過し、ヌツチエ上でアセトン洗
浄し、室温で真空下に3時間乾燥して、部分的に還元さ
れたポリアニリンを得た。
【0036】このポリアニリン0.5gをN−メチル−2
−ピロリドン19.5gに溶解させ、2.5重量%溶液を調
製した。この溶液を実施例1と同様にして希釈し、分光
光度計にて波長260〜850nmの範囲の電子スペク
トルを測定した。これを図4に示す。これより求めたO
DIは0.31であつた。また、ポリアニリン粉末10g
をN−メチル−2−ピロリドン90gに溶解して、10
重量%溶液を調製し、実施例1と同様にして、溶液を濾
過、脱泡した。次いで、この溶液をガラス板上にキヤス
テイングし、60℃で2時間加熱乾燥させた後、150
℃で5時間乾燥させて、厚さ100μmのポリアニリン
フイルムを得た。このフイルムの体積抵抗率は、2.1×
1010Ω・cmであつた。
【0037】実施例1と同様にして、温度60℃、相対
湿度90%及び温度25℃、相対湿度0.03%の環境下
に24時間放置した後、取出して、体積抵抗率を測定し
たところ、それぞれ1.3×1010Ω・cm及び3.2×10
10Ω・cmであつて、放置前に比べて殆ど変化なかつた。
また、実施例1と同様にして電子写真プロセスに適用し
て、転写体としての性能評価したところ、感光体からポ
リアニリンフイルムへのトナーの転写及びポリアニリン
フイルムから紙への転写のいずれの場合にも、剥離放電
は生じず、画像の乱れはなく、画像的均質性にすぐれる
高品質の画像を得ることができた。 実施例3 実施例2で調製した10重量%ポリアニリン溶液にフエ
ニルヒドラジンを少量ずつ加えていき、溶液の青色が消
えて、褐色を呈するところで、フエニルヒドラジンの添
加を止めた。この溶液の一部を採り、N−メチル−2−
ピロリドンにて希釈し、実施例1と同様にして電子スペ
クトルを測定した。これより求めたODIは0.01であ
つた。
【0038】この褐色のポリアニリン溶液をガラス板上
にキヤステイングし、120℃1時間加熱乾燥させて、
厚さ40μmのポリアニリンフイルムを得た。このポリ
アニリンフイルムの体積抵抗率は、2.0×109 Ω・cm
であつた。実施例1と同様にして、温度60℃、相対湿
度90%及び温度25℃、相対湿度0.03%の環境下に
24時間放置した後、取出して、体積抵抗率を測定した
ところ、それぞれ1.1×109 Ω・cm及び2.4×109
Ω・cmであつて、放置前に比べて殆ど変化なかつた。
【0039】また、実施例1同様にして電子写真プロセ
スに適用して、転写体としての性能を評価したところ、
感光体からポリアニリンフイルムへのトナーの転写及び
ポリアニリンフイルムから紙への転写のいずれの場合に
も、剥離放電は生じず、画像の乱れはなく、画像的均質
性にすぐれる高品質の画像を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、脱ドープ状態で有機溶剤可溶性のポリアニ
リンを457.9nmの波長の光で励起したときのレーザ
ー・ラマンスペクトルである。
【図2】は、図1と同じポリアニリンを種々異なる励起
波長の光で励起したときのレーザー・ラマンスペクトル
である。
【図3】は、本発明にて用いた脱ドープされた溶剤可溶
性のODIが0.83であるポリアニリンの電子スペクト
ルである。
【図4】は、本発明にて用いた脱ドープされた溶剤可溶
性のODIが0.31であるポリアニリンの電子スペクト
ルである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I) 【化1】 (式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中のキノンジイ
    ミン構造単位及びフエニレンジアミン構造単位のモル分
    率を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1であ
    る。)で表わされるキノンジイミン構造単位及びフエニ
    レンジアミン構造単位を主たる繰返し単位として有し、
    その体積抵抗率が107 〜1013Ω・cmの範囲にある有
    機重合体からなる電気抵抗膜を備えていることを特徴と
    する電子写真用転写体。
  2. 【請求項2】一般式(I) 【化2】 (式中、m及びnはそれぞれ繰返し単位中のキノンジイ
    ミン構造単位及びフエニレンジアミン構造単位のモル分
    率を示し、0<m<1、0<n<1、m+n=1であ
    る。)で表わされるキノンジイミン構造単位及びフエニ
    レンジアミン構造単位を主たる繰返し単位として有し、
    その体積抵抗率が107 〜1013Ω・cmの範囲にある有
    機重合体であつて、脱ドープ状態において457.9nm
    の波長の光で励起して得られるレーザー・ラマンスペク
    トルにおけるパラ置換ベンゼンの骨格振動のうち、16
    00cm-1よりも高波数にあらわれる骨格延伸振動のラマ
    ン線の強度Iaと1600cm-1よりも低波数にあらわれ
    る骨格延伸振動のラマン線強度Ibの比Ia/Ibが1.
    0以上である有機重合体からなる電気抵抗膜を備えてい
    ることを特徴とする電子写真用転写体。
  3. 【請求項3】有機重合体が脱ドープ状態において有機溶
    剤に可溶性であり、且つ、N−メチル−2−ピロリドン
    中、30℃で測定した極限粘度〔η〕が0.40dl/g以上
    であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真
    用転写体。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5978637A (en) * 1996-10-31 1999-11-02 Minolta Co., Ltd. Image forming apparatus capable of obtaining stable transfer using a particular transfer roller

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US5978637A (en) * 1996-10-31 1999-11-02 Minolta Co., Ltd. Image forming apparatus capable of obtaining stable transfer using a particular transfer roller

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