JPH05199812A - コンバインの伝動方式 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】油圧無段変速装置５により、通常負荷時のスリ
ップ防止と、異常負荷時の安全装置とを兼ね備えさせる
ようにする。 【構成】刈取装置１と脱穀装置２のフィードチエン３と
に各々動力を分配伝達する伝動装置４の入力側へ、油圧
無段変速装置５を連動連結させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、コンバインの伝動方
式に関し、詳しくは刈取装置及び脱穀装置のフィードチ
エンへ単一の伝動装置から各々動力を分配供給する伝動
方式等に利用できる。

【０００２】

【従来の技術、及び発明が解決しようとする課題】従来
から、コンバインはその原動機によって走行、刈取、脱
穀の各装置等へ各別に動力を供給することにより作業を
行うようにしている。これらの動力伝達において、最近
では走行用のミッションケースのほかに、刈取装置と一
部脱穀装置のフィードチエンとへ動力を供給する専用の
伝動装置を設け、この伝動装置に内装した機械式のシン
クロ装置によって、刈取装置の回転速度と脱穀装置のフ
ィードチエン速度とを車速の変化に同調させて各々動力
を分配伝達するようにしている。

【０００３】この機械式のシンクロ装置は、例えばリン
グコーン形式や変速ベルト形式等の変速装置に、別に設
けた検出装置による車速の検出値を送って、この検出値
により変速装置を変速制御して車速に同調させるように
しているものである。しかし、このような機械式変速装
置は、何れもその構造が摩擦力により伝動するものであ
るから作業負荷に対して安定した伝動が得られず、特に
刈取発進時等において穀稈の流れが微妙なときに変速装
置がスリップを起こしやすく、車速に対する同調が阻害
されて作業に支障をきたす虞れがある。

【０００４】また、脱穀の詰まり等による異常負荷の発
生時には、機械式変速装置はそのスリップにより多少は
異常負荷を逃げることはできるが、このスリップが大き
くなると摩擦熱が発生する等の弊害があり、所詮は本来
の安全装置とはなり得ないもので動力伝達機構の破損を
招きかねない。そこでこの発明は、前記伝動装置の入力
側に油圧無段変速装置を設けることによって、刈取装置
及び脱穀装置のフィードチエンへ各々動力を分配伝達す
ると共に、通常負荷時におけるスリップの防止と、異常
負荷時における本来の安全装置とを兼ね備えさせるよう
にするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】この発明は、刈取装置１
の回転速度と脱穀装置２のフィードチエン３速度を車速
に同調させるコンバインにおいて、該刈取装置１と該フ
ィードチエン３とへ各々動力を分配する伝動装置４の入
力側に油圧無段変速装置５を設けたことを特徴とするコ
ンバインの伝動方式の構成とする。

【０００６】

【作用、及び発明の効果】油圧無段変速装置５へ原動機
からの動力を供給し、この油圧無段変速装置５の圧油流
体により変速した動力を伝動装置４に連動伝達して、こ
の伝動装置４の歯車列の高速部位から刈取装置１の入力
部へ、また低速部位から脱穀装置２のフィードチエン３
へ各々動力を分配伝達する。

【０００７】これらの動力伝達によるコンバイン作業時
の車速を、例えば別に設けた車速検出装置によって検出
し、この検出値によって該油圧無段変速装置５を制御す
ることにより、該伝動装置４による出力回転速度を殆ん
どスリップさせることなく車速に同調させることができ
る。また、コンバイン作業時に穀稈の詰まり等により異
常負荷が発生したときは、この異常負荷によって高圧と
なった圧油を、該油圧無段変速装置５に内蔵しているリ
リーフ弁の作用で逃して、入力された動力を出力させな
いようスリップさせることにより、安全装置としての作
用を果すことができる。

【０００８】このように、コンバインにおける刈取装置
１の回転速度と脱穀装置２のフィードチエン３速度を、
該油圧無段変速装置５の圧油流体による変速によって車
速に同調させることにより、従来の機械式変速装置のよ
うにスリップを起こして車速に対する同調が阻害されて
作業に支障をきたすようなことがなく、的確な動力の伝
達を行いうるものである。

【０００９】また、もし作業中に穀稈の詰まり等により
異常負荷が発生したとしても、この異常負荷によって高
圧となった圧油を、該油圧無段変速装置５のリリーフ弁
から逃して、動力の伝達が不能となるまでスリップさせ
ることにより、従来の機械式変速装置のように中途半端
なスリップにより動力伝達機構の破損を招くようなこと
がなく、本来の安全装置としての機能を充分発揮しうる
ものである。

【００１０】

【実施例】以下に、この発明の実施例を図面に基づいて
具体的に説明する。本発明を実施するコンバインは、植
立穀稈を分草体６により分草し、引起装置７にて引起こ
すと同時に刈刃装置８にて刈取り、この刈取穀稈を搬送
装置９により後方の脱穀装置２へ搬送する刈取装置１
を、土壌面に対して上下昇降自在に機台１０の前端側に
装架して構成する。

【００１１】また、該機台１０上に、扱室１１の供給口
側に沿って張設したフィードチエン３によって穀稈を挾
持搬送すると共に、この搬送穀稈を該扱室１１に軸承し
た扱胴１２により脱穀し、この脱穀物を該扱室１１の下
側に設けた選別装置１３にて選別する脱穀装置２を設
け、この脱穀装置２の一側に並設した穀粒タンク１４に
脱穀選別後の穀粒を一時貯留する。また、脱穀装置２の
後部側に設けた排藁処理装置１５によって脱穀後の排藁
を処理するよう構成する。

【００１２】また、該機台１０の前端側に走行ミッショ
ンケース１６を設け、この走行ミッションケース１６に
より該機台１０の下側に配設した左右一対の走行クロー
ラ１７を駆動して土壌面を走行させる走行装置１８を設
ける。また、該機台１０上で該穀粒タンク１４の前側に
原動機１９を設置し、この原動機１９を囲んでその上方
に操縦席２０と操縦台２１とを設けて構成する。

【００１３】また、該原動機１９により各装置１，２，
１８へ動力を伝達する動力伝達機構Ａは、図３に示す如
く、該原動機１９の出力軸２２からプーリとベルトを介
して走行用油圧無段変速装置２３（以下ＨＳＴという）
の走行入力軸２４に連結し、該走行用ＨＳＴ２３の出力
側を前記走行ミッションケース１６の入力側と連結する
と共に、該走行ミッションケース１６の走行出力軸２５
を前記左右一対の走行クローラ１７に連動する。

【００１４】また、一方該走行入力軸２４から更にプー
リとベルトを介してカウンタ軸２６に連動すると共に、
更に該カウンタ軸２６からプーリとベルトを介して刈脱
用油圧無段変速装置５（以下ＨＳＴという）の刈脱入力
軸２７に連動する。また該刈脱用ＨＳＴ５の出力側は刈
脱用伝動装置４の伝動入力軸２８に連動する。また、該
伝動装置４は伝動入力軸２８から歯車を介して伝動中間
軸２９へ、更に該伝動中間軸２９から歯車を介して伝動
減速軸３０まで二段変速を行うべく構成されており、高
速部位である該伝動入力軸２８からプーリとベルトを介
して刈取中間軸３１に連動し、該刈取中間軸３１から更
にプーリとベルトを介して刈取入力軸３２に連動すると
共に、該刈取入力軸３２から刈取装置１の引起装置７、
刈刃装置８、搬送装置９等へ動力を伝達する。また、低
速部位である該伝動減速軸３０からプーリとベルトを介
して搬送中間軸３３に連動し、該搬送中間軸３３の一端
にスプロケット３４を軸着し、このスプロケット３４に
より脱穀装置２のフィードチエン３に動力を伝達する。

【００１５】また、前記カウンタ軸２６にプーリ３５及
びプーリ３６を軸着し、このプーリ３５からはベルト３
７により、またプーリ３６からはベルト３８により、各
々脱穀装置２の扱胴１２系統及び選別装置１３系統へ動
力を伝達すべく構成する。また、走行装置１８の走行速
度を検出する検出手段として、フォトカプラ等からなる
車速検出装置３９を、前記走行ミッションケース１６を
形成する何れかの軸端（図示省略）及びその周辺に設け
る。

【００１６】また、刈取装置１の回転速度と脱穀装置２
のフィードチエン３速度とを検出する検出手段として、
フォトカプラ等からなる刈脱回転速度検出装置４０を、
前記刈脱用ＨＳＴ５の出力側周辺に設ける。また、該刈
脱用ＨＳＴ５の制御機構４１は、図５に示す如く、該刈
脱用ＨＳＴ５のケース４２に回動自在に挿通した斜板揺
動軸４３に扇形のラック板４４を軸着して設け、一方変
速モータ４５の回転軸に軸装したウォームギヤ及びこれ
に噛合う歯車（図示省略）を内装するギヤボックス４６
を設け、このギヤボックス４６から該歯車に固着したピ
ニオン軸４７を突出させ、このピニオン軸４７に軸装し
たピニオン４８と該ラック板４４とを噛合い係合させ
る。また、該刈脱用ＨＳＴ５の油圧回路には、異常負荷
時の高圧を逃す安全装置としてのリリーフ弁（図示省
略）を設けている。

【００１７】しかして該制御機構４１は、該変速モータ
４５の回転駆動により該ピニオン４８とラック板４４を
介して該斜板揺動軸４３を揺動させることにより、該刈
脱用ＨＳＴ５の斜板角度を変更自在に駆動するように構
成する。また、第６図に示す如く、前記操縦台２１に前
記走行用ＨＳＴ２３の変速比を変更するＨＳＴレバー４
９を配置し、このＨＳＴレバー４９の握り部分に作業モ
ード切換スイッチ５０を設ける。この作業モード切換ス
イッチ５０は穀稈の刈取作業の際に、穀稈が起立してい
るときに使用する「標準モード」と、穀稈が倒伏してい
るときに使用する「倒伏モード」との何れか一方を選択
するものである。

【００１８】また、該走行用ＨＳＴ２３のモータ５１側
を可変容量式とし、この可変容量によるトルク比変更手
段と、前記走行ミッションケース１６の歯車によるトル
ク比変更手段とを設け、該走行ミッションケース１６に
よるトルク比変更手段より該走行用ＨＳＴ２３によるト
ルク比変更手段が上位となるよう構成する。また、該操
縦台２１に該モータ５１のトルク比変更のために斜板角
度を変更するトルク比変更レバー５２を設ける。

【００１９】また、これらの操作制御を行うべくＣＰＵ
等によって構成される操作制御装置（図示省略）を該操
縦台２１近傍に配設する。次に以上の構成による作用に
ついて説明する。原動機１９の起動により、出力軸２２
から走行入力軸２４及びカウンタ軸２６に動力が伝達さ
れ、ＨＳＴレバー４９を操作すると走行クローラ１７が
駆動されて走行装置１８が走行装態となる。

【００２０】また、脱穀装置２の扱胴１２系統及び選別
装置１３系統と、刈取装置１及び脱穀装置２のフィード
チエン３とが各々駆動される。これにより、コンバイン
作業が開始されると、作業モード切換スイッチ５０の選
択に応じて操作制御装置により刈取装置１の回転速度が
制御される。即ち、図７に示す如く、標準モードが選択
されているときは、走行装置１８の車速と刈取装置１の
回転速度とが比例同調するように制御され、倒伏モード
が選択されているときは、それが比例同調せずに一定の
関係となるように制御される。

【００２１】以下にこの制御について詳しく説明する。
まず、車速検出装置３９により車速を検出すると、該作
業モード切換スイッチ５０の選択モードに応じて、その
検出車速に対応する目標の刈取装置１の回転速度が設定
される。それから、刈脱回転速度検出装置４０が刈取装
置１の回転速度を検出すると、この検出値を先に設定さ
れた目標の回転速度とを比較する。この比較の結果、検
出値が目標値を下回るときは、刈脱用ＨＳＴ５の斜板が
変速モータ４５の作用により増速側に移動される。一
方、その検出値が目標を上回るときは該斜板が減速側に
移動される。

【００２２】このような該刈脱用ＨＳＴ５の制御によ
り、刈取装置１の回転速度は、スリップを起こすことも
なく的確に動力を伝達して目標値に同調させることがで
きる。また、脱穀装置２のフィードチエン３は該刈脱用
ＨＳＴ５から動力が分配されているので、刈取装置１と
該フィードチエン３とは常時比例同調して作動してお
り、刈取装置１の回転速度の変化に対して穀稈の引継ぎ
は常時円滑に行われる。

【００２３】また、作業中に刈取装置１への穀稈の詰ま
り等により異常負荷が発生したときは、この異常負荷を
該刈脱用ＨＳＴ５に設けたリリーフ弁の作用により逃し
て、動力伝達機構Ａの破損等による障害を未然に防止す
ることができる。また、走行用ＨＳＴ２３のモータ側の
斜板を、トルク比変更レバー５２の操作により高トルク
側に移動させることにより、従来の如き斜板固定形式で
は異常負荷によりリリーフ弁が作用していた作業時の高
速域での旋回やスピンターン等を、リリーフ弁が作用す
ることなく容易に行いうるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】コンバインの全体を示す側面図。

【図２】コンバインの全体を示す平面図。

【図３】コンバインの動力伝達機構を示す概略図。

【図４】コンバインの動力伝達装置の一部を示す側面
図。

【図５】コンバインの制御機構の一部を示す正面図。

【図６】コンバインの操縦台の操作具を示す斜面図。

【図７】コンバインの作業モードの比較基準を示す線
図。

【図８】コンバインの走行伝達装置の一部を示す概略
図。

【符号の説明】

１ 刈取装置 ２ 脱穀装置 ３ フィードチエン ４ 伝動装置 ５ 油圧無段変速装置

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 刈取装置１の回転速度と脱穀装置２のフ
   ィードチエン３速度を車速に同調させるコンバインにお
   いて、該刈取装置１と該フィードチエン３とへ各々動力
   を分配する伝動装置４の入力側に油圧無段変速装置５を
   設けたことを特徴とするコンバインの伝動方式。