JPH04214323A - Aas系樹脂延伸シート及びフィルム - Google Patents

Aas系樹脂延伸シート及びフィルム

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JPH04214323A
JPH04214323A JP40148190A JP40148190A JPH04214323A JP H04214323 A JPH04214323 A JP H04214323A JP 40148190 A JP40148190 A JP 40148190A JP 40148190 A JP40148190 A JP 40148190A JP H04214323 A JPH04214323 A JP H04214323A
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JP
Japan
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weight
layer
multilayer structure
units
thermoplastic resin
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Application number
JP40148190A
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English (en)
Inventor
Hajime Nishihara
一 西原
Katsuaki Maeda
前田 勝昭
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規な延伸シート及びフ
ィルムに関し、更に詳しくは、耐候性、機械的強度、耐
熱性及び優れた外観を兼備した熱可塑性樹脂延伸シート
及びフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、OAハウジング等の電子機器、住
宅設備、土木建築部材、輸送用機器内外装部品、工業部
品及び自動販売機外部材等の分野では、プラスチックシ
ートの新用途として、無塗装可能な程度に耐候性があり
、かつ耐衝撃性を有するシートに対する要求が一段と高
まっている。
【0003】耐候性、耐衝撃性シートとしては、従来か
らアクリル変性塩化ビニル系樹脂シートが主流であるが
、これは耐候性が充分でなく、また焼却時塩化水素が発
生し、燃焼炉が損傷するという問題点があった。一方、
耐衝撃シートとして、ABS樹脂シートがあり、耐衝撃
性と機械的特性のバランスが優れ、しかも成形加工が容
易なこと、比較的価格が安い等の利点がある。しかし、
その反面、ABS樹脂は、構成成分の一つとしてポリブ
タジエンを使用しているために耐候性に欠点があり、屋
外使用の分野には不適とされ、ABS樹脂の耐候性を著
しく向上させたプラスチックシートの出現が長年の要望
であった。
【0004】このような背景から、ジエン系以外のゴム
を用いることが考えられ、飽和ゴムを用いることが種々
提案されている。アクリル酸エステル系重合体であるA
AS樹脂はこの一つの例であるが、この手段によって耐
候性は改善されるが、一方、耐衝撃性およびシートの外
観の低下を招き、実用上に問題が残されるものであった
【0005】例えば、特公昭55−27576号公報は
、第1段階の硬質重合体と中間段階のゴム状弾性体重合
体と第3段階の硬質重合体からなる多段、逐次構造重合
体を製造する方法が開示されているが、この方法におい
ては、第1段階にグラフト化剤及び架橋剤を用いること
により、低ヘイズの耐衝撃性樹脂組成物を与えるだけで
なく、衝撃強度も小さく、実用的使用範囲が制限される
【0006】また、特公昭59−36645号公報は、
メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルからなる多
段階重合体を製造する方法が開示されているが、衝撃強
度において不充分であった。その上、シート及びフィル
ム分野に於いては、経済上、資源節約上、薄肉化が進ん
でいる。このためには、シート厚さを薄くしても充分な
強度を保持することが必要である。
【0007】例えば、特願平1−320435号には、
アクリル酸エステル系ゴムと熱可塑性樹脂とからなるA
AS系樹脂が開示されているが、射出成形品としての耐
候性、耐衝撃性は優れているものの、圧縮成形機で薄肉
シートを作製した場合は、必ずしも耐衝撃性は充分でな
い。そこで、耐衝撃性樹脂を延伸して分子配向させるこ
とにより耐衝撃性を向上させることが考えられる。
【0008】例えば、特開昭57−30748号公報に
は、耐衝撃スチレン(HIPS)を、ORSが10〜2
5Kg/cm2 になる様に分子配向させることにより
衝撃強度の改良を行なっているが、耐候性が劣るだけで
なく、耐衝撃性も低く、工業的使用が狭められる。本発
明は、AAS系樹脂シート及びフィルムの機械的強度の
改良を鋭意研究した結果、特定のアクリル酸エステル系
多層構造重合体と特定の熱可塑性樹脂からなる樹脂組成
物を、特定の延伸を施こして分子配向させることにより
、耐候性、耐熱性及び優れた外観を保持しつつ、機械的
強度を向上させることが可能になった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち、耐候性
、機械的強度、耐熱性及び優れた外観を兼備した熱可塑
性樹脂延伸シート及びフィルムの提供を目的とするもの
である。
【0010】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、下記多
層構造重合体A  5〜95重量部と、下記熱可塑性樹
脂B  95〜5重量部及び下記熱可塑性樹脂C  0
〜30重量部からなる樹脂組成物からなり、分子配向の
度合がASTM  D−2838−69に規定するOR
S(Orientation  Release  S
tress  熱収縮応力)の値で、5〜20Kg/c
m2 の値であることを特徴とする熱可塑性樹脂延伸シ
ート及びフィルム提供するものである。
【0011】 記 多層構造重合体  A:(イ)メタクリル酸アルキルエ
ステル単位、(ロ)アクリル酸アルキルエステル単位、
(ハ)不飽和ニトリル単位と(ニ)芳香族ビニル単位か
らなる多層構造重合体(A)であって、該多層構造重合
体(A)は、(a)本質的に、リング状に内層と外層と
の2層からなり、リングの内側の内層(β層)部分の平
均直径が2,000〜6,500Å、 (b)内層をリング状に囲む外層(α層)部分の平均厚
みが200〜500Åであり、 (c)さらに内層部分に小粒子(γ層)が複数個全体的
にミクロに分散していることを特徴とする多層構造重合
体であり、 (d)しかも、その組成が(イ)メタクリル酸アルキル
エステル単位2〜30重量%(ロ)アクリル酸アルキル
エステル単位50〜80重量%、(ハ)不飽和ニトリル
単位5〜20重量%、(ニ)芳香族ビニル単位5〜40
重量%であり、 (e)アセトン不溶部分の、(イ)メチルエチルケトン
に対する膨潤度が1.5〜10で、かつ、(ロ)引張り
弾性率が1,000〜10,000Kg/cm2である
ことを特徴とする、多層構造重合体。
【0012】 熱可塑性樹脂B: シアン化ビニル単位10〜40重量%、芳香族ビニル単
位90〜60重量%、これらと共重合可能な1種以上の
モノマー単位0〜30重量%からなる熱可塑性樹脂。 熱可塑性樹脂C: 多層構造重合体A及び熱可塑性樹脂Bと相溶化可能な熱
可塑性樹脂。
【0013】以下、本発明を詳しく説明する。本発明の
AAS系樹脂延伸シート及びフィルム(以下、シートと
称する。)は、特定の多層構造重合体Aと特定の熱可塑
性樹脂B及び熱可塑性樹脂Cを組み合わして、筒状また
は平坦なシート状に熱溶融し、これに適切な延伸を施こ
すことによって驚くべき利点を生じる。
【0014】まず、多層構造重合体について言及する。 I.多層構造重合体の組成; 本発明における多層構造重合体は、組成的に、(イ)メ
タクリル酸アルキルエステル単位、(ロ)アクリル酸ア
ルキルエステル単位、(ハ)不飽和ニトリル単位と(ニ
)芳香族ビニル単位から構成され、さらに(ホ)多官能
架橋剤をも含むことからなる多層構造重合体である。
【0015】前記多層構造重合体を構成する(イ)メタ
クリル酸アルキルエステル単位としては、メタクリル酸
メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピルな
どが挙げられ、特に、メタクリル酸メチルが好ましく用
いられる。 (ロ)アクリル酸アルキルエステル単位としては、アク
リル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル
、アクリル酸ブチルなどが挙げられ、アクリル酸ブチル
が好ましく使用される。
【0016】 (ハ)不飽和ニトリル単位としては、アクリロニトリル
、メタクリロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリ
ルが好ましく用いられる。 (ニ)芳香族ビニル単位としては、スチレン、α−メチ
ルスチレン、ハロゲン化スチレンなどが挙げられ、スチ
レンが好ましく用いられる。さらに、(ホ)多官能架橋
剤としては、C=C二重結合を少くとも2個有する架橋
性モノマーであり、例えば、トリアリルシアヌレート、
トリアリルイソシアヌレートのようなイソシアヌル酸ト
リアリルと不飽和アルコールとのエステル;ジビニルベ
ンゼンのようなジビニル化合物;ジアリル化合物、エチ
レングリコールジメクリレートのようなジメタクリル化
合物など、一般的に知られる架橋剤が使用できるが、ト
リアリルイソシアヌレートが好ましく用いられる。
【0017】 II.多層構造重合体の組成比など; 一方、多層構造重合体の組成比は、基本的には、(イ)
メタクリル酸アルキルエステル単位2〜30重量%、好
ましくは5〜15重量%、(ロ)アクリル酸アルキルエ
ステル単位50〜80重量%、好ましくは55〜70重
量%、(ハ)不飽和ニトリル単位5〜20重量%、好ま
しくは6〜10重量%、(ニ)芳香族ビニル単位5〜4
0重量%、好ましくは8〜35重量%であることが必要
である。
【0018】この範囲を逸脱した場合には耐衝撃性の点
で好ましくない。また、アセトン不溶部のメチルエチル
ケトンに対する膨潤度が1.5〜10であり、さらに引
張弾性率が1,000〜10,000Kg/cm2 で
あることが必要である。この範囲を逸脱した場合には耐
衝撃性に劣るものが得られ、好ましくない。
【0019】 III .多層構造重合体の微細構造;本発明の多層構
造重合体はβ層の中にγ層が複数個全体的にミクロに分
散した構造であって、当該β層の平均直径が、2,00
0〜6,500Å、その周辺を覆っているα層の平均厚
みが、200〜500Åである、という極めて特殊な構
造を有している。
【0020】この特殊な構造のために、耐衝撃性、耐候
性を維持しつつ、表面光沢が大きく改良されたものと考
えられる。これは従来提案されてきた以下のような多層
構造体からは予期し難いことであった。これに対し、特
公昭47−109811号公報に開示された方法におい
て、第1段階の硬質重合体の重合時にアリルメタアクリ
レート等のグラフト化剤又は架橋(交叉)剤を用いた場
合には、β層部分にオスミウム酸に染色されない第1段
階の(交叉された)硬質重合体が球状に存在する。より
詳細には、β層にγ層の小粒子がミクロに分散した部分
と、γ層が全く存在しない(独立した)球状部分の2つ
の領域を含む多層構造重合体となる。
【0021】この場合には、衝撃強度の低下が著しく問
題である。従って、本発明の多層構造重合体において、
β層がα層で覆われていない場合には、耐衝撃性、耐候
性に劣るものが得られ、また、β層部分の中にγ層が複
数個ミクロに分散していない場合には、表面光沢と耐衝
撃性を同時に満足するものを得ることができない。
【0022】さらに、β層の平均直径(粒子径)は、2
,000〜6,500Åを有する必要があり、好ましく
は2,500〜4,000Åである。β層の平均直径が
2,000Å未満の場合には耐衝撃性が充分でなく、6
,500Åを超えた場合にも耐衝撃性の劣るものが得ら
れる。また、β層の周囲を覆っているα層の平均厚みは
200〜500Åの必要があり、好ましくは300〜4
00Åである。α層の平均厚みが200Å未満の場合に
は耐衝撃性に劣り、500Åを超える場合には光沢が著
しく低下する。
【0023】本発明の多層構造重合体において、β層の
中に、γ層が複数個全体的にミクロに分散させるために
は、β層の組成、分子量、架橋密度、架橋点間距離を適
切にすることが必要である。本発明の多層構造重合体に
おいて、β層の中に、γ層が複数個全体にミクロに分散
するとは、β層全体に複数個のγ層の小粒子が比較的に
平均的に分散した状態を指す。従って、従来の上記多層
構造体のように、β層にγ層の小粒子がミクロに分散し
た部分と、γ層が全く存在しない(独立した)球状部分
の2つの領域を含むようなものは全体的にミクロに分散
したとは言えない。
【0024】上記のβ層の中に、γ層が複数個全体的に
ミクロに分散する態様として、β層の全体にγ層が複数
個ミクロに均一にミクロ分散させるのが好ましいが、こ
れに制限されない。また、このγ層の小粒子の個数もと
くに制限されず任意の数でよいが、比較的多数個が均一
にミクロ分散させているのがより好ましい。さらにこの
γ層の小粒子の大きさも夫々が比較的に揃っているのが
好ましいが、多少のバラツキがあっても構わない。
【0025】 IV.多層構造重合体の製造法; 本発明の多層構造重合体の製造方法は、モノマー、乳化
剤、重合開始剤、連鎖移動剤などの存在下で行なわれる
公知の乳化重合法を用いることが有利である。さらに、
このような多層構造重合体を形成させるためには、各単
量体或いは単量体混合物を逐次添加して反応させること
によって多層構造重合体を形成できるシード重合法を用
いることが有利である。
【0026】本発明の多層構造重合体の製法を具体的に
示すと以下のとおりである。 <第1段目の重合> メタクリル酸アルキルエステル2〜30重量%とアクリ
ル酸アルキルエステル1〜6重量%のモノマー混合液を
乳化剤、重合開始剤とともにモノマー/水比0.3〜1
.0で重合する。
【0027】なお、この段階で架橋剤、グラフト交叉剤
を用いた場合には、耐衝撃性が低くなる。 <第2段目の重合> 第1段目で得られたシード・ラテックスの一部を用いて
、第1段目と同じモノマー混合液で重合し、粒径を制御
することができる。この第2段目の重合は省略すること
も可能である。
【0028】 <第3段目の重合> アクリル酸アルキルエステル45〜70重量%、架橋剤
0.05〜5重量%のモノマー液を乳化剤、重合開始剤
とともに乳化重合する。 <第4段目の重合> アクリル酸アルキルエステル    4〜8重量%不飽
和ニトリル                4〜8重
量%芳香族ビニル                 
 2〜5重量%架橋剤               
     0.005 〜 0.5重量%のモノマー液
を乳化剤、重合開始剤とともに乳化重合する。
【0029】 <第5段目の重合> アクリル酸アルキルエステル    0〜2重量%芳香
族ビニルル                1〜16
重量%不飽和ニトリル               
 3〜38重量%のモノマー液を乳化剤、重合開始剤と
ともに乳化重合する。
【0030】この際、第3段目以降の重合を行う場合に
、可及的に新たな粒子の生成を抑制するような条件を選
ぶ必要があるが、これには、用いる乳化剤の量を臨界ミ
セル濃度未満にすることによって実現することが出来る
。また、新たな粒子生成の有無は、電子顕微鏡による観
察によって確認することが出来る。また、多層構造重合
体の各層の粒子径(直径)を特定範囲に制御するには、
最内層の硬質重合体(第1段目の重合で得られたもの)
のシードラテックスの一部を取り出し、イオン交換水、
乳化剤、モノマーを加えてシート重合を続ける際に、シ
ードラテックスの取り出し量を調整し、シードラテック
スの粒子数を制御することなどによることができる。
【0031】各重合段階及び/又は共重合体を形成させ
るための適切な重合温度は、各重合段階ともに30〜1
20℃、好ましくは50〜100℃の範囲で選ばれる。 重合に用いられる乳化剤については、特に、制限はなく
、従来慣用されているものの中から任意のものを選ぶこ
とができる。例えば、C2 〜C 22 のカルボン酸
類、C6 〜C22のアルコール又はアルキルフェノー
ル類のスルホネートのアニオン性乳化剤、脂肪族アミン
又はアミドにアルキレンオキサイドの付加した非イオン
性乳化剤又は第4級アンモニウム含有化合物などのカチ
オン性乳化剤が挙げられるが、長鎖アルキルカルボン酸
塩、アルキルベンゼンスルホン酸などの使用が好ましい
【0032】また、この際に用いられる重合開始剤につ
いては特に制限はなく、例えば、過硫酸のアルカリ金属
塩、アンモニウム塩などの水溶性過酸化物:過ホウ酸塩
などの無機系開始剤、過酸化水素、アゾビスブチロニト
リルなどのアゾ系化合物を単独で、或いは亜硫酸塩、チ
オ硫酸塩などを併用してレドックス開始剤として用いる
こともできる。さらに、油溶性の有機過酸化物/第1鉄
塩、有機過酸化物/ソジウムスルホキシレートのような
レドックス開始剤も用いることができる。
【0033】さらに、使用される連鎖移動剤としては、
t−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、
トルエン、キシレン、クロロホルム、ハロゲン化炭化水
素等が挙げられる。モノマーの添加方法については、一
括しても良いが、モノマーを数回に分けて投入するか、
若しくは連続添加した方が良い。その場合は、重合反応
を制御することができ、過熱及び凝固を防止することが
できる。
【0034】本発明の多層構造重合体を有利に製造する
場合に、各層は以下のように調整された方法を実施する
と良い。ゴム状弾性体の形成は、アクリル酸エステル架
橋体の重合反応を完結させてからゴム状弾性体用モノマ
ーを添加して逐次重合させても良いし、或いはアクリル
酸エステル架橋体の重合を完結せずに未反応モノマーを
残存させた状態で、不飽和ニトリル(ハ)、芳香族ビニ
ル(ニ)などを添加してゴム状弾性体を形成させても良
い。
【0035】 (V)その他: このような重合方法によって得られる特殊な構造を有す
る多層構造重合体は、ポリマーラテックスの状態から公
知の方法によって、塩析、洗浄、乾燥等の処理を行うこ
とにより、粒子状固形物として得られる。このような多
層構造重合体は、通常の場合、アセトンなどの溶剤に不
溶の純粋な多層構造重合体自体と、アセトンなどの溶剤
に可溶のグラフト化しないポリマーとの混合物として得
られるので、ここで言う多層構造重合体には、該多層構
造重合体自体及び、該多層構造重合体と上記グラフト化
しないポリマーとの混合物が包含される。
【0036】本発明の特殊な構造を有する多層構造重合
体は、基本的に前記(IV)で説明したような重合方法
により得られるが、各重合段階で得られた重合体の特徴
は; ■  第1〜2段目の重合で得られた重合体は、多層構
造重合体の弾性率を高める役目をし、またシード重合に
おいて、多層構造重合体の最終粒子径を決定する意味か
らも重要である。
【0037】特に、第1段目の重合時にグラフト化剤又
は架橋剤が存在すると、耐衝撃性の低い多層構造重合体
しか得られない。(第1段目、第2段目の重合で形成さ
れる層を第1層と称する。)■  主に第3段目の重合
体で得られたアクリル酸エステル架橋体は、衝撃強度付
与の役目をする。(この重合で形成される層を第2層と
称する。)■  主に第4段目の重合で得られたゴム状
弾性体は、第1〜2段目の重合の硬質重合体、第3段目
の重合のアクリル酸エステル架橋体と最終重合体との間
の接着性向上の役目をする。(この重合で形成される層
第3層と称する。)■  最終段階の重合で得られた最
終重合体は、さらにブレンドする熱可塑性樹脂との相溶
性向上の役目をする。(この重合で形成される層を第4
層と称する。)一方、熱可塑性樹脂Bとは、シアン化ビ
ニル単位と芳香族ビニル単位と、これらと共重合可能な
一種以上のモノマー単位からなる。ここで、必須成分の
シアン化ビニルとは、アクリロニトリル、メタクリロニ
トリル等であり、特にアクリロニトリルが好ましいが、
アクリロニトリルを主体にして、メタクリロニトリルを
含有した共重合体でも良い。今一つの必須成分の芳香族
ビニルとは、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチ
ルスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン
、2,4,5−トリブロモスチレン等であり、スチレン
が最も好ましいが、スチレンを主体に上記他の芳香族ビ
ニルを混合した共重合体であっても良い。熱可塑性樹脂
Bの成分として、シアン化ビニルと芳香族ビニルに共重
合可能なモノマー成分を一種以上に導入することがある
。多層構造重合体Aとのブレンド性を更に向上させるか
、ブレンド時の溶融粘度を低下させる必要のある場合は
、炭素数が1〜8のアルキル基からなるアクリル酸エス
テルを用いることができる。また、シートの耐熱性を高
める必要のある場合は、アクリル酸、メタクリル酸、無
水マレイン酸、N−置換マレイミド等のモノマーから選
ばれる。
【0038】熱可塑樹脂Bの組成に於けるシアン化ビニ
ル単位は、10〜40重量%、芳香族ビニル単位は90
〜60重量%、これらと共重合可能な1種以上のモノマ
ー単位は0〜30重量%の範囲にあることが必要であり
、この範囲外では、多層構造重合体Aとのブレンド性が
低下し、シートの機械的性質が低下する。そして、この
熱可塑性樹脂Bは、通常の溶液重合、懸濁重合、乳化重
合の方法により製造される。
【0039】また、熱可塑性樹脂Cは、多層構造重合体
Aと熱可塑性樹脂Bと相溶化が可能な熱可塑性樹脂であ
れば特に制限はなく、これによってシートに特殊な機能
を付与することができる。例えば、メタクリル系樹脂に
より耐傷性が付与され、シアン化ビニル−芳香族ビニル
−アクリル酸エステル共重合体により流動性だ付与され
、シアン化ビニル−芳香族ビニル−N置換マレイミド共
重合体により耐熱性が付与され、ポリカーボネート系樹
脂により耐熱性と耐衝撃性が付与され、塩化ビニル系樹
脂により難燃性が付与される。
【0040】本発明のシートを構成する多層構造重合体
Aと熱可塑性樹脂Bと熱可塑性樹脂Cとの量比について
は、Aが95〜5重量部、Bが5〜95重量部、Cが0
〜30重量部の範囲にあることが必須である。上記範囲
外では、機械的強度と耐熱性のバランスが取れなくなる
。本発明の樹脂組成物は、一般に知られているテンター
方式、インフレーション方式及び圧縮延伸成形方式(プ
レス延伸方式)等を採用して延伸を施こし、分子配向の
度合が、ASTM  D−2838−69に規定するO
RS(熱収縮応力)の値で5〜20kg/cm2 の値
をもつことにより驚くべき特長を呈する。その理由を以
下に説明する。
【0041】図3〜5は、実施例1,9,10、比較例
5,6に記載したシートについてのORSと、それぞれ
引張強さ、引張伸度、引張弾性率との関係を示したグラ
フである。図3〜5によると、ORSが5〜20kg/
cm2 で特異的に上記機械的強度が向上していること
が分かる。この理由は、ORSが5kg/cm2 未満
では、分子配向が充分でなく脆性破壊が進み、一方、2
0kg/cm2 を越えると、分子鎖が伸びきり、分子
鎖のスベリが優位になり延性破壊が進むことに起因する
【0042】上述のORS(熱収縮応力)を得るために
は、本発明の組成物を溶融してシート状または円筒状に
押出しし、そのものをテンター方式またはインフレーシ
ョン方式で延伸することにより容易に達成できる。その
時の延伸条件としては樹脂温度(延伸温度)を120〜
190℃、延伸倍率を1.5〜10倍から選ぶのが最適
である。
【0043】本発明の樹脂組成物に適切な延伸を施こし
て得られたシート及びフィルムでは肉厚みに関係なく、
こうした特性が兼備されているので、シート分野でもフ
ィルム分野でも実用性が大幅に向上していて応用分野を
拡大することができる。本発明の延伸シートを得るため
に混練するに際し、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、充填
剤、補強材、染料、顔料等を必要に応じて添加すること
ができる。このようにして得られた本発明の組成物に最
適の延伸を施すことにより、耐候性、機械的強度、耐熱
性及び優れた外観の四拍子そろったシートが得られる。
【0044】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるもので
は無い。なお、実施例・比較例における測定は、以下の
方法もしくは測定機器を用いて行った。
【0045】1.電子顕微鏡用試料の作製;本発明の多
層構造重合体のβ層の平均直径、α層の平均厚みは次の
ように測定される。即ち、多層構造重合体をPMMA(
デルペット80N;旭化成(株)製)を中谷機械製作所
製AS−30、30mmφ二軸押出機で混練する。次に
、0.5mm角以下の超薄切片を作製し、面をダイヤモ
ンドナイフを用いて切削し、仕上げる。この試料を密閉
容器内で、遮光状態にして1%ルテニウム酸水溶液の蒸
気に数時間暴露し、染色した。
【0046】該組成物を電子顕微鏡で観察した場合、海
島構造を有しており、島部分はルテニウム染色される部
分とされない部分からなり、ルテニウム酸で染色されな
い部分をβ層、β層の外側にありβ層をリング状に囲み
ルテニウム酸で染色される部分をα層、β層の中にあり
ルテニウム酸で染色され複数個分散した小粒子をγ層と
する。
【0047】2.平均直径(粒子径)、平均厚み;上記
のように、成形品より切り取ったサンプルをルテニウム
酸で染色した超薄切片の透過型電子顕微鏡写真(写真倍
率10万倍)を調製し、無作為に選んだ100個の粒子
の径を測定し、それを算術平均して平均直径(粒子径)
とした。このとき、粒子が球状と見なせない場合には、
その長径と短径を策定し、算術平均した値を平均直径(
粒子径)とした。
【0048】厚みについても、同様に無作為に選んだ1
00個の粒子について測定し、それを算術平均して平均
厚みとした。このとき、厚みにむらがある場合には、そ
の最大厚みと最小厚みを測定し、算術平均した値を厚み
とした。 3.膨潤度; ペレット約0.5gにメチルエチルケトン30mlを加
え、25℃で24時間浸漬後、5時間振とうし、5℃、
18,000rpmで1時間遠心分離する。上澄み液を
デカンテーションして除いた後、新たにメチルエチルケ
トン30mlを加え、25℃で1時間振とうし、5℃、
18,000rpmで1時間遠心分離する。上澄み液を
除き、重量を秤量する(W3 )。その後、100℃、
2時間真空乾燥し、残留物の重量を秤量する(W4 )
【0049】次式により膨潤度を算出する。
【0050】
【数1】
【0051】4.組成分析; アセトン可溶部については、アセトン分離で得た上澄み
液(イ),(ロ)を大量のメタノール中に注ぎ、沈澱物
を真空乾燥して得た。アセトン不溶部については、アセ
トン分別で得たサンプルを用いた。各サンプルの熱分解
ガスクロマトグラフィーにより、組成分析を行った。
【0052】5.引張り弾性率; アセトン分別で得られた不溶部を150℃で圧縮成形し
てフィルムを作製し、これから幅15±0.5mm、厚
み0.50±0.05mm、長さ70mmの試験片を作
製した。引張試験機を用いてチャック間距離50mm、
引張速度50mm/分で測定した。
【0053】6.表面光沢; ASTM−D523−62Tに基づき、60度の入射角
による鏡面光沢度を求めた。 7.耐候性; スガ試験機(株)製デューパネル光コントロールウェザ
ーメーター(DPWL−5型)を用いて60℃で照射し
、40℃で湿潤結露と云うサイクルで耐候性促進テスト
を行った。20日照射後の光沢と初期の光沢との比の百
分率を光沢の保持率と定義し、耐候性の評価とした。
【0054】8.ビカット軟化温度; ASTM−D1525に準拠した方法で測定し、耐熱性
の尺度とした。9.ORS; シート及びフィルムの配向分子が加熱によってもとの状
態にもどろうとする際に発生する収縮応力(Orien
tation  Release  Stress)で
あり、ASTM  D−2838−69に準拠して測定
されるものである。上記のORSは非晶性高分子の分子
配向に対応し、最も実用的なものの1つとして知られて
いる。以下にその定義を示す。
【0055】
【数2】
【0056】10.シート及びフィルムの引張強さ・引
張伸度・引張弾性率;ASTM  D−882に準拠し
た条件及び装置を使用して、サンプル幅10mm、クラ
ンプ間距離70mm、引張速度5mm/分の条件で測定
した値をいう。
【0057】
【実施例1】 (イ)多層構造重合体Aの製造 (1)最内層の硬質重合体の重合(シード1段目)、反
応器内にイオン交換水248.3重量部、ジヘキシルス
ルホコハク酸ナトリウム0.05重量部を仕込み、攪拌
下窒素置換を充分に行った後、昇温して内温を75℃に
する。この反応器に過硫酸アンモニウム0.02重量部
添加後、メタクリル酸メチル8重量部、アクリル酸ブチ
ル2重量部の混合物を50分間で連続的に添加した。 添加後、更に過硫酸アンモニウム0.01重量部を添加
してから75℃で45分間反応を続けた。重合率は99
%であった。 (2)最内層の硬質重合体の重合(シード2段目)、(
1)で得たラテックスの1/4(固形分換算で2.5重
量部)を取出し、更にイオン交換水186.2重量部、
ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.03重量部を
反応器に仕込み、攪拌下に窒素置換を充分に行った後、
昇温して内温を75℃にする。この反応器に過硫酸アン
モニウム0.02重量部添加後、メタクリル酸メチル6
.0重量部、アクリル酸ブチル1.5重量部の混合物を
50分間で連続的に添加した。添加終了後、更に反応を
完結するため75℃で45分間反応を続けた。重合率は
98%であった。 (3)アクリル酸エステル架橋体の重合(第3段目の重
合)、(第2層) (2)のラテックスの存在下に過硫酸アンモニウム0.
01重量部、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム部0
.05重量部を添加後、アクリル酸ブチル63重量部、
架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート0.6重量部
の混合物を70℃で80分間かけて連続的に添加した。 添加終了後、更に70℃で20分間反応を続けた。 第1層、第2層を通しての重合率は85%であった。 (4)ゴム状弾性体の重合(第4段目の重合)、(第3
層) (3)の重合で未反応のアクリル酸ブチル11重量部、
トリアリルイソシアヌレート0.18重量部の存在下で
、過硫酸アンモニウム0.045重量部、ジヘキシルス
ルホコハク酸ナトリウム0.45重量部を添加後、アク
リロニトリル3.8重量部、スチレン11.4重量部、
t−ドデシルメルカプタン0.025重量部の混合物を
75℃で90分間かけて連続的に添加した。重合率は9
3%であった。
【0058】また、ラテックス中の残存モノマー量をガ
スクロマトグラフィーにより測定して、第3層の共重合
組成比を算出した結果、アクリロニトリル/スチレン/
アクリル酸ブチル比は、夫々10/43/47であった
。 (5)最終重合体の重合(第5段目の重合)、(第4層
) (4)のラテックスの存在下に、アクリロニトリル2.
05重量部、スチレン8.86重量部、t−ドデシルメ
ルカプタン0.02重量部の混合物を75℃で70分間
かけて連続的に添加した。更に重合を完結させるために
85℃で1時間反応を続けた。重合率は97%であった
【0059】また、ラテックス中の残存モノマー量をガ
スクロマトグラフィーにより測定して、第4層の共重合
組成比を算出した結果、アクリロニトリル/スチレン/
アクリル酸ブチル比は、夫々24/65/11であった
。このようにして得られたラテックスを、3重量%硫酸
ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、次
いで、脱水・洗浄を繰り返した後、乾燥し、多層構造重
合体A−1を得た。 (ロ)組成物の調製及び評価 前記多層構造重合体A−1と、熱可塑性樹脂BとしてA
S樹脂〔(アクリロニトリル−スチレン共重合体)(ア
クリロニトリル/スチレン=29/71重量比)旭化成
工業(株)製商品名「スタイラック」〈登録商標〉AS
−783)〕を、重量比で35/65の比率で機械的に
混合したのち、250℃で2軸溶融押出機にて混練して
ペレット化した。
【0060】次いで、このペレットを用い、圧縮成形機
で2mmのシートを作製し、テンター方式で、オーブン
温度(延伸温度)130℃、延伸倍率2倍の条件で一軸
延伸を行なった。この延伸シートのORSは10.0k
g/cm2であり、その他の評価結果を表1に記載した
。表1によると、本発明のシートは、耐候性、機械的強
度、耐熱性、優れた外観を兼備していることが分かる。 (ハ)多層構造重合体の分析など; (i)ルテニウム酸による染色と電子顕微鏡観察:また
、先に記述の方法で試験片を作成し、試験片からルテニ
ウム酸で染色した超薄切片を作成し、透過型電子顕微鏡
で観察したとろ、図1の模式図に示されるように、熱可
塑性樹脂からなる海相1中に多層構造重合体からなる島
相2が点在した状態が観察される。
【0061】そして、ルテニウム酸で染色されていない
β層4の平均粒子径は5,000Åであり、島全体2(
多層構造重合体)の平均粒子径は、5,700Åであり
、ルテニウム酸で染色されているα層3の平均厚みは3
50Åである。ルテニウム酸で染色されていないβ層部
分4には、ルテニウム酸で染色された部分(γ層)5が
複数個ほぼ全体的にミクロに分散していた。
【0062】なお、この多層構造重合体を重合するのに
用いた、各硬質重合体用モノマー、ゴム弾性体用モノマ
ー、アクリル酸エステル架橋体用モノマーの特性などか
ら考えて、(イ)β層部分4は、第1、2段目の重合に
よる硬質重合体用のアクリル酸ブチル、メチルメタアク
リレート単位、および第3段目の重合によるアクリル酸
エステル架橋体用のアクリル酸ブチル、架橋剤又はグラ
フト化剤単位が主要成分であると考えられ、(ロ)α層
部分3は、第4段目の重合によるゴム弾性体用のアクリ
ル酸ブチル、スチレン、アクリロニトリル単位、および
第5段目の重合による最終重合体用のスチレン、アクリ
ロニトリルと残余のアクリル酸ブチル単位が主要成分で
あると考えられる。さらに、(ハ)β層4中にミクロに
分散するγ層5は、上記α層部分3に仕込まれた主にス
チレンなどの硬質成分の一部が、β層4に流れ込み重合
して形成されたものと考えられる。  この機構はあく
までも推定であって、このようになる理由は明確には明
らかでない。 (ii)膨潤度、引張弾性率: 多層構造重合体のメチルエチルケトンに対する膨潤度は
3.5であった。フィルムの引張り弾性率は、2,50
0kg/cm2 であった。 (iii)組成分析: 熱分解ガスクロマトグラフィーによる組成分析の結果は
、MMA7.0重量%、BA65.9重量%、St20
.0重量%、AN7.1重量%であった。
【0063】
【比較例1】 (イ)多層構造重合体の製造 (1)最内層の硬質重合体の重合(シード1段目)及び
(2)最内層の硬質重合体の重合(シード2段目)は、
アリルメタクリレート0.19部を添加した以外は、実
施例1と同一の方法で行った。 (3)アクリル酸エステル架橋体の重合(第3段目の重
合)、 (2)のラテックスの存在下に過硫酸アンモニウム0.
13重量部、ジヘキシルスルコハク酸ナトリウム0.0
5重量部を添加後、アクリル酸ブチル63重量部、架橋
剤としてトリアリルイソシアヌレート0.6重量部の混
合物を80℃で80分間かけて連続的に添加した。添加
終了後、更に80℃で90分間反応を続けた。前記(1
)〜(3)の重合を通して重合率は99.5%であった
。 (4)最終重合体の重合(第4段目の重合)、(3)の
ラテックスの存在下に過硫酸アンモニウム0.045重
量部、ジヘキシルスルコハク酸ナトリウム0.045重
量部を添加後、アクリロニトリル6.75重量部、スチ
レン20.25重量部、t−ドデシルメルカプタン0.
045重量部の混合物を75℃で160分間かけて連続
的に添加した。更に重合を完結するために85℃で1時
間反応を続けた。重合率は98%であった。  また、
ラテックス中の残存モノマー量をガスクロマトグラフィ
ーにより測定して第4層の共重合組成比を算出した結果
、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸ブチル比は
25/75/0であった。このようにして得られたラテ
ックスを実施例1と同一の処理を行ない多層構造重合体
a−1を得た。 (ロ)組成物の調整及び評価 前記多層構造重合体a−1を用いた以外は、実施例1と
同様にしてペレットを得た後、延伸シートを作製し、物
性を評価した。その結果を第1表に示した。
【0064】また、電子顕微鏡観察の結果、図2の模式
図に示されるように、熱可塑性樹脂からなる海相1中に
多層構造重合体からなる島相2が点在しており、該島相
2はリング状に2層からなり、リングの内側の内層(β
層)部分4の平均直径4,900Åで、リング状に囲む
外層(α層)部分3の平均厚みは340Åであった。β
層4中に実施例1では存在しなかった、オスミウム酸に
染色されていない、直径1,200Åの独立した球状層
6が認められた。この球状層6の中にミクロ分散したγ
層5はなかった。
【0065】表1及び電子顕微鏡観察の結果を総合する
と、最内層の硬質重合体の重合の際にグラフト剤(架橋
剤)を導入すると、独立した球状層が存在し、この球状
層中にγ層がミクロ分散していないために、機械的強度
が低いことが分かる。
【実施例2、3及び比較例2、3】実施例1において、
最内層の硬質重合体のシード1段目の重合によって得ら
れたラテックスの採取量を減少させてシード重合を続け
た。また、上記のシード1段目のジヘキシルスルホコハ
ク酸ナトリウムを増量してシード重合を続けた。
【0066】このようにして得られたラテックスを実施
例1と同一の処理を行い、評価した。その結果を第1表
に記載した。第1表によると、β層の平均直径、α層の
平均厚みが、各々2,000Å、200Åより小さいと
光沢は優れているものの、機械的強度は低く、一方、各
々500Å、6,500Åを超えると、機械的強度は優
れているものの、光沢は低いことが分かる。
【0067】
【実施例4】実施例1の多層構造重合体A−1と、実施
例1のAS樹脂及びアクリロニトリル−スチレン−アク
リル酸ブチル共重合体(アクリロニトリル/スチレン/
アクリル酸ブチル=27/63/10重量比)(旭化成
工業(株)商品名「スタイラック」〈登録商標〉AS−
T8704)を、重量比で35/45/20の比率で機
械的に混合し、実施例1と同様にペレット化及び延伸シ
ートの作製を行ない、諸物性を評価した。その結果を表
2に示した。
【0068】表2によると、本発明のシートは、優れた
耐候性、機械的強度、耐熱性、外観を兼備していること
が分かる。
【0069】
【実施例5】実施例1の多層構造重合体A−1と、実施
例1のAS樹脂及びメタクリル樹脂(メタクリル酸メチ
ル/アクリル酸メチル=98/2重量比)(旭化成工業
(株)製商品名「デルペット」〈登録商標〉80N)を
、重量比で35/45/20の比率で機械的に混合し、
実施例1と同様にペレット化及び延伸シートの作製を行
ない、諸物性を評価した。その結果を表2に示した。
【0070】表2によると、本発明のシートは優れた耐
候性、機械的強度、耐熱性、外観を兼備していることが
分かる。
【0071】
【実施例6】実施例1の多層構造重合体A−1と、実施
例1のAS樹脂及びポリカーボネート樹脂(三菱化成(
株)製商品名ノバレックス7025A)を、重量比で3
5/45/20の比率で機械的に混合し、実施例1と同
様にペレット化及び延伸シートの作製を行ない、諸物性
を評価した。その結果を表2に示した。
【0072】表2によると、本発明のシートは優れた耐
候性、機械的強度、耐熱性、外観を兼備していることが
分かる。
【0073】
【実施例7】実施例1の多層構造重合体A−1と、実施
例1のAS樹脂及び塩化ビニル樹脂(重合度700)(
信越化学(株)製商品名TK700)を重量比で35/
45/20の比率で機械的に混合し、実施例1と同様に
ペレット化及び延伸シートの作製を行ない、諸物性を評
価した。その結果を表2に示した。
【0074】表2によると、本発明のシートは優れた耐
候性、機械的強度、耐熱性、優れた外観を兼備している
ことが分かる。
【0075】
【実施例8】実施例1の多層構造重合体A−1と、実施
例1のAS樹脂及びアクリロニトリル−スチレーン−N
−フェニルマレイミド共重合体(アクリロニトリル/ス
チレン/N−フェニルマレイミド=16/51/33重
量比)を重量比で35/45/20の比率で機械的に混
合し、実施例1と同様にペレット化及び延伸シートの作
製を行ない、諸物性を評価した。その結果を表2に示し
た。
【0076】表2によると、本発明のシートは優れた耐
候性、機械的強度、耐熱性、優れた外観を兼備している
ことが分かる。
【0077】
【比較例4】実施例1のアクリル酸エステル架橋体の重
合において、架橋剤のトリアリルイソシアヌレートを用
いないこと以外、実施例1と同一の実験を行った。トリ
アリルイソシアヌレートのない共重合体は、シートの引
張強さ、引張伸度がそれぞれ、280kg/cm2 、
5%であり、実施例1のシートに比較して機械的強度が
著しく劣ることが分かる。電顕観察をしたところ、α層
、β層は存在しなかった。
【0078】
【実施例1,9,10、比較例5,6】実施例1に於い
て、延伸倍率を1.0,1.5,3.0,5.0倍に変
更する以外、同一の実験を繰り返した。その結果を表3
及び図3〜5に示した。表1及び図3〜5によると、O
RSが5〜20kg/cm2 になるように分子配向さ
せたシートは、機械的強度が著しく高いことが分かる。
【0079】
【比較例7】 (1)ABS樹脂の製造 ポリブタジエンゴム70重量部、ジヘキシルスルホコハ
ク酸エステル0.05重量部、過硫酸アンモニウム0.
02重量部及びイオン交換水200重量部からなる水性
エマルジョン液を反応器に仕込み、内温を75℃に制御
した。次いで、これにアクリロニトリル25重量%とス
チレン75重量%との単量体混合物30重量部を、連続
的に2時間を要して添加し、添加終了後,更に2時間重
合を継続してグラフト共重合体を得た。反応率は98%
であった。この重合体中のアクリロニトリル単位とスチ
レン単位と重量比は25/75であった。また、電子顕
微鏡観察によると、平均ゴム粒子径は0.4μmであっ
た。 (2)組成の調製及び評価 次いで、上記グラフト共重合体と、実施例1のAS樹脂
を重量比で35/65の比率で機械的に混合し、実施例
1と同様にペレット化及び延伸シートの作製を行ない、
諸物性を評価した。その結果を表4に示した。
【0080】表4によると、ABSシートは、耐候性が
劣ることが分かる。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の延伸シー
ト及びフィルムは、ABS樹脂シートに比較して耐候性
が改良されており、かつ、機械的強度、耐熱性及び優れ
た外観を兼備した今までにない新規なAAS系樹脂延伸
シート及びフィルムである。これは、シート分野に於い
ては、OAハウジングや平面アンテナ用レドーム等の電
子機器分野、温水器外装や冷却塔部材等の住宅設備分野
、交通信号機、ロードミラー、防眩板等の土木建築部材
分野、輸送機器内外装部品分野、工業部品分野及び自動
販売機の無塗装外部材分野に好適であり、またフィルム
分野では包装材料分野、他の成形品のラミネート用フィ
ルムの分野にも好適であり、産業界に果たす役割は大き
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う多層構造重合体と、それを含む熱
可塑性樹脂組成物のルテニウム酸染色の超薄切片の透過
型電子顕微鏡写真の模式図である。
【図2】比較例によると多層構造重合体と、それを含む
熱可塑性樹脂のルテニウム酸染色の超薄切片の透過型電
子顕微鏡写真の模式図である。
【図3】ORSと引張強さとの関係を示したグラフであ
【図4】ORSと引張伸度との関係を示したグラフであ
【図5】ORSと引張弾性率との関係を示したグラフで
ある
【符号の説明】
1海相 2島相 3α層 4β層 5γ層 6独立層

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】  下記多層構造重合体A  5〜95重
    量部と、下記熱可塑性樹脂B95〜5重量部及び下記熱
    可塑性樹脂C  0〜30重量部からなる樹脂組成物か
    らなり、分子配向の度合がASTM  D−2838−
    69に規定するORS(Orientation  R
    elease  Stress  熱収縮応力)の値で
    5〜20Kg/cm2 の値をもつことを特徴とする熱
    可塑性樹脂延伸シート及びフィルム。 記 多層構造重合体  A: (イ)メタクリル酸アルキルエステル単位、(ロ)アク
    リル酸アルキルエステル単位、(ハ)不飽和ニトリル単
    位と(ニ)芳香族ビニル単位からなる多層構造重合体(
    A)であって、該多層構造重合体(A)は、(a)本質
    的に、リング状に内層と外層との2層からなり、リング
    の内側の内層(β層)部分の平均直径が2,000〜6
    ,500Å、 (b)内層をリング状に囲む外層(α層)部分の平均厚
    みが200〜500Åであり、 (c)さらに内層部分に小粒子(γ層)が複数個全体的
    にミクロに分散していることを特徴とする多層構造重合
    体であり、 (d)しかも、その組成が(イ)メタクリル酸アルキル
    エステル単位2〜30重量%、(ロ)アクリル酸アルキ
    ルエステル単位50〜80重量%、(ハ)不飽和ニトリ
    ル単位5〜20重量%、(ニ)芳香族ビニル単位5〜4
    0重量%であり、 (e)アセトン不溶部分の、(イ)メチルエチルケトン
    に対する膨潤度が1.5〜10で、かつ、(ロ)引張り
    弾性率が1,000〜10,000Kg/cm2である
    ことを特徴とする、多層構造重合体。 熱可塑性樹脂B: シアン化ビニル単位10〜40重量%、芳香族ビニル単
    位90〜60重量%、これらと共重合可能な1種以上の
    モノマー単位0〜30重量%からなる熱可塑性樹脂。 熱可塑性樹脂C: 多層構造重合体A及び熱可塑性樹脂Bと相溶化可能な熱
    可塑性樹脂。
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