JPH04351651A - 制振性の優れた耐候性耐衝撃性重合体組成物 - Google Patents

制振性の優れた耐候性耐衝撃性重合体組成物

Info

Publication number
JPH04351651A
JPH04351651A JP15086791A JP15086791A JPH04351651A JP H04351651 A JPH04351651 A JP H04351651A JP 15086791 A JP15086791 A JP 15086791A JP 15086791 A JP15086791 A JP 15086791A JP H04351651 A JPH04351651 A JP H04351651A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymer
weight
parts
polymerization
monomer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP15086791A
Other languages
English (en)
Inventor
Hajime Nishihara
一 西原
Katsuaki Maeda
前田 勝昭
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Chemical Industry Co Ltd filed Critical Asahi Chemical Industry Co Ltd
Priority to JP15086791A priority Critical patent/JPH04351651A/ja
Publication of JPH04351651A publication Critical patent/JPH04351651A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特定のアクリル酸エス
テル系ゴムグラフト共重合体と、特定の熱可塑性重合体
とからなる重合体組成物に関し、更に詳しくは、耐候性
、耐衝撃性、剛性及び制振性を兼備しているか、または
、これらのバランス特性に優れた重合体組成物に関する
【0002】
【従来の技術】耐衝撃ポリスチレン(HIPS)やAB
S樹脂等のスチレン系樹脂は、成形性、寸法安定性に優
れることに加え、耐衝撃性、剛性、電気絶縁性に優れて
いることから、家電部品、OA機器部品、車両部品等の
多岐にわたる分野で使用されるに至っている。
【0003】しかし、その反面、HIPS、ABS樹脂
は、構成成分の一つとしてポリブタジエンを使用してい
るために耐候性に欠点があり、屋外使用の分野には不適
とされるという問題があった。また更には、近年になり
一部の家電分野、例えば、洗濯機、掃除機、音響、映像
機器に於いては、騒音や雑音を抑制するため、スチレン
系樹脂に対し上記性能に加えて、音や振動を吸収する制
振性が要求されるようになってきており、HIPS、A
BS樹脂の耐候性、耐衝撃性と制振性を著しく向上させ
たプラスチックの出現が長年の要望であった。
【0004】このような背景から、耐衝撃性と制振性バ
ランスの取れた重合体組成物の例としては、特願平2−
151720号がある。該明細書には、グリシジルエス
テル基変性HIPSと金属イオン架橋性エチレン系重合
体からなる重合体組成物が開示されているが、制振性、
耐衝撃性は優れているものの、耐候性が劣る。
【0005】また、特開平2−298553号公報には
、(イ)Tgが−20℃以下のゴム質重合体と(ロ)T
gが−20℃〜60℃の範囲の重合体と、(ハ)Tgが
60℃以上の重合体からなる樹脂組成物が開示されてい
る。該公報の重合体組成物は、制振性、耐衝撃性は優れ
ているものの、耐候性が充分ではなく、工業的に使用が
狭められる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
現状に鑑み、上記のような問題点のない、即ち耐候性、
耐衝撃性、剛性及び制振性を兼備しているか、または、
これらのバランス特性に優れた重合体組成物を提供する
ことを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、HIPS
、ABS樹脂の耐候性、耐衝撃性及び制振性の改良を鋭
意検討した結果、(イ)Tgが−30℃以下の飽和ゴム
であるアクリル酸エステル系ゴムグラフト共重合体と、
(ロ)Tgが−30℃〜30℃のアクリル酸エステル系
ゴムグラフト共重合体と、(ハ)特定の共重合組成物を
有する熱可塑性重合体との特定量を組み合わすことによ
り、驚くべきことに耐候性、耐衝撃性及び剛性を保持し
つつ、制振性を飛躍的に向上させることが可能となり、
本発明に到達した。
【0008】即ち、本発明は、ガラス転移温度(Tg)
が−30℃以下のアクリル酸エステル系ゴムグラフト共
重合体A(重合体A)5〜50重量%と、該Tgが−3
0℃〜30℃の範囲にあるアクリル酸エステル系ゴムグ
ラフト共重合体B(重合体B)5〜45重量%と熱可塑
性重合体C(重合体C)90〜5重量%とからなる重合
体組成物であって、
【0009】該重合体Aは、アクリル酸エステル単位と
多官能架橋剤とからなるゴム質重合体5〜80重量部に
、不飽和ニトリル単量体10〜50重量%と芳香族ビニ
ル単量体50〜90重量%と、これらと共重合可能な単
量体0〜50重量%とからなる単量体混合物95〜20
重量部をグラフト重合してなるアクリル酸エステル系ゴ
ムグラフト共重合体であり、
【0010】該重合体Bは、アクリル酸エステル単量体
と芳香族ビニル単量体及び架橋剤とからなるゴム質重合
体5〜80重量部に、該重合体Aの欄に記載の単量体混
合物95〜20重量部をグラフト重合してなるアクリル
酸エステル系ゴムグラフト共重合体であり、
【0011
】該重合体Cは、不飽和ニトリル単量体10〜50重量
%と芳香族ビニル単量体50〜90重量%と、これらと
共重合可能な1種以上の単量体0〜50重量%とからな
る熱可塑性重合体であることを特徴とする、制振性の優
れた耐候性耐衝撃性重合体組成物を提供するものである
【0012】以下、本発明を詳しく説明する。本発明の
重合体組成物は、(イ)Tgが−30℃以下の、アクリ
ル酸エステル系ゴムグラフト共重合体A(以下、重合体
Aと称する。)と、(ロ)Tgが−30℃〜30℃のア
クリル酸エステル系グラフト共重合体B(以下、重合体
Bと称する。)と、(ハ)特定の共重合組成を有する熱
可塑性重合体C(以下、重合体Cと称する。)とを組み
合わすことにより驚くべき利点を生じる。
【0013】この理由を以下に説明する。一般に、制振
特性の支配因子は材料の損失係数に大きく依存し、損失
係数の大きな材料ほど制振効果は高く、しかもガラス転
移温度領域で最高の特性を示すことが知られている。そ
こで、室温領域での制振性の向上のためには、Tgが−
30℃〜30℃の範囲にある重合体Bは必須成分である
。また、耐衝撃性の向上のためには、Tgは低い方がよ
く、更には特殊な構造を有するアクリル酸エステル系ゴ
ムを用いた重合体Aにより、耐候性と耐衝撃性の両方の
特性が満足される。一方、重合体Cは成形品の剛性を付
与するための成分であり、重合体A、B、Cの特定量の
組み合わせにより、耐候性、耐衝撃性、剛性及び制振性
が兼備した組成物が得られる。
【0014】まず、重合体Aについて説明する。本発明
のアクリル酸エステ系ゴムグラフト共重合体Aは、アク
リル酸エステル系ゴム質重合体の存在下に、グラフト重
合可能な単量体混合物をグラフト共重合することにより
得られる。該アクリル酸エステル系ゴム質重合体とは、
アクリル酸エステル単位と多官能架橋剤からなる。
【0015】ここで、アクリル酸エステル単位としては
、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プ
ロピル、アクリル酸ブチルなどが挙げられ、アクリル酸
ブチルが好ましく使用される。
【0016】また、多官能架橋剤としては、C=C二重
結合を少なくとも2個有する架橋性モノマーであり、例
えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌ
レートのようなイソシアヌル酸トリアリルと不飽和アル
コールとのエステル;ジビニルベンゼンのようなジビニ
ル化合物;ジアリル化合物、エチレングリコールジメタ
クリレートのようなジメタクリル化合物など、一般的に
知られる架橋剤が使用できるが、トリアリルイソシアヌ
レートが好ましく用いられる。
【0017】ここで、アクリル酸エステル単量体と多官
能架橋剤の量比については、アクリル酸エステル単量体
/多官能架橋剤の重量比が、99.9/0.1〜95/
5の範囲にあることが好ましく、その範囲外では耐衝撃
性が劣る。そして、Tgが−30℃を越えない程度にア
クリル酸エステル及び多官能架橋剤と共重合可能な単量
体を導入することができる。例えば、スチレン、アクリ
ロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸メチル
、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
【0018】グラフト重合可能な単量体混合物とは、不
飽和ニトリル単量体と芳香族ビニル単量体とこれらの共
重合可能な単量体とからなる。ここで、必須の不飽和ニ
トリル単量体とは、アクリロニトリル、メタクリロニト
リル等であり、特にアクリロニトリルが好ましくが、ア
クリロニトリルを主体にして、メタクリロニトリルを共
重合しても良い。
【0019】もう一つの必須成分の芳香族ビニル単量体
とは、スチレン、α−メチルスチレン、バラメチルスチ
レン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,
4,5−トリブロモスチレン等であり、スチレンが最も
好ましいが、スチレンを主体に上記他の芳香族ビニルを
共重合しても良い。
【0020】更には、重合体Aの成分として、不飽和ニ
トリル、芳香族ビニルに共重合可能なモノマー成分を一
種以上導入することがある。重合体B、Cとのブレンド
性を更に向上させるか、ブレンド時の溶融粘度を低下さ
せる必要のある場合は、炭素数が1〜8のアルキル基か
らなるアクリル酸エステルを用いることができる。また
、重合体組成物の耐熱性を更に高める必要のある場合は
、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置
換マレイミド等の単量体を共重合してもよい。
【0021】重合体Aの組成に於けるゴム質重合体は5
〜80重量部、グラフト重合可能な単量体混合物は95
〜20重量部の範囲にあることが必要であり、この範囲
外では、目的とする重合体組成物の耐衝撃性と剛性のバ
ランスが取れなくなる。
【0022】一方、グラフト可能な単量体混合物の組成
に於ける不飽和ニトリル単量体は10〜50重量%、芳
香族ビニル単量体は50〜90重量%及びそれらと共重
合可能な単量体は0〜50重量%の範囲にあることが必
須であり、この範囲外では、重合体B、Cとの相溶性が
低下し、耐衝撃性が低下する。
【0023】そして、この重合体Aは、アクリル酸エス
テル系ゴム質重合体の存在下に、公知の乳化重合法、溶
液重合法等の方法により、グラフト可能な単量体混合物
をグラフト重合することにより得られる。
【0024】ここで、更に好ましい重合体Aとしては、
以下の形態と組成を有するものである。(a)アクリル
酸エステル架橋重合体とメタクリル酸エステル単位とア
クリル酸エステル単位からなる共重合体との混合体であ
って、−30℃以下のガラス転移温度を有する本質的に
は球状のゴム状重合体(α部分)と、
【0025】(b)上記α部分の内部に分散する重合体
であって、芳香族ビニル単位と不飽和ニトリル単位から
なる共重合体及び/又は芳香族ビニル単位と不飽和ニト
リル単位とα部分を構成するアクリル酸エステル単位か
らなる共重合体(β部分)と、(c)上記α部分の外部
を層状に囲む重合体であって、芳香族ビニル単位と不飽
和ニトリル単位からなる共重合体及び/又は芳香族ビニ
ル単位と不飽和ニトリル単位とα部分を構成するアクリ
ル酸エステル単位からなる共重合体(γ部分)とからな
り、その共重合組成は、
【0026】(イ)メタクリル酸エステル単位    
2〜30重量%と、(ロ)アクリル酸エステル単位  
  50〜80重量%と、(ハ)不飽和ニトリル単位 
   5〜20重量%と、(ニ)芳香族ビニル単位  
          5〜40重量%とからなる重合体
Aであって、
【0027】本質的には球状のα部分の平
均直径は1900〜5900Åであり、このα部を囲む
γ部の平均層厚みは10〜1,000Åであり、アセト
ン不溶部分の(イ)アセトンに対する膨潤度が1.5〜
10で、かつ(ロ)引張弾性率が1,000〜10,0
00Kg/cm2 である重合体である。
【0028】更に好ましい重合体Aについて詳しく説明
する。 (a)重合体Aの組成;本発明における重合体Aは、組
成的に(イ)メタクリル酸アルキルエステル単位、(ロ
)アクリル酸アルキルエステル単位、(ハ)不飽和ニト
リル単位と(ニ)芳香族ビニル単位から構成され、さら
に(ホ)多官能架橋剤をも含むことからなる複構造重合
体である。前記複構造重合体を構成する(イ)メタクリ
ル酸アルキルエステル単位としては、メタクリル酸メチ
ル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピルなどが
挙げられ、特にメタクリル酸メチルが好ましく用いられ
る。
【0029】(ロ)アクリル酸アルキルエステル単位と
しては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリ
ル酸プロピル、アクリル酸ブチルなどが挙げられ、アク
リル酸ブチルが好ましく使用される。 (ハ)不飽和ニトリル単位としては、アクリロニトリル
、メタクリロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリ
ルが好ましく用いられる。 (ニ)芳香族ビニル単位としては、スチレン、α−メチ
ルスチレン、ハロゲン化スチレンなどが挙げられ、スチ
レンが好ましく用いられる。
【0030】さらに、(ホ)多官能架橋剤としては、C
=C二重結合を少なくとも2個有する架橋性モノマーで
あり、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイ
ソシアヌレートのようなイソシアヌル酸トリアリルと不
飽和アルコールとのエステル;ジビニルベンゼンのよう
なジビニル化合物;ジアリル化合物、エチレングリコー
ルジメタクリレートのようなジメタクリル化合物など、
一般的に知られる架橋剤が使用できるが、トリアリルイ
ソシアヌレートが好ましく用いられる。
【0031】(b)複構造重合体の組成比;一方、複構
造重合体の組成比は、基本的には(イ)メタクリル酸ア
ルキルエステル単位2〜30重量%、更に好ましくは5
〜15重量%、(ロ)アクリル酸アルキルエステル単位
50〜80重量%、更に好ましくは55〜70重量%、
(ハ)不飽和ニトリル単位5〜20重量%、更に好まし
くは6〜10重量%、(ニ)芳香族ビニル単位5〜40
重量%、更に好ましくは8〜35重量%及び(ホ)多官
能架橋剤0.05〜5重量%であることが好ましい。こ
の範囲を逸脱した場合には、耐衝撃性の点で好ましくな
い。
【0032】(c)複構造重合体の微細構造;本発明の
複構造重合体はα部の中にβ部が分散した構造であって
、当該α部の平均直径が好ましくは1,900〜5,9
00Å、その周辺を覆っているγ部の平均厚みが好まし
くは10〜1,000Åであるという極めて特殊な構造
を有している。この特殊な構造のために、耐衝撃性、耐
候性を維持しつつ表面光沢が大きく改良されたものと考
えられる。これは、従来提案されてきた以下のような複
構造体からは予期し難いことであった。
【0033】これに対し、特公昭47−109811号
公報に開示された方法において、第1段階の硬質重合体
の重合時にアリルメタクリレート等のグラフト化剤又は
架橋(交叉)剤を用いた場合には、α部にオスミニウム
酸に染色されない第1段階の(交叉された)硬質重合体
が球状に存在する。より詳細には、α部にβ部の小粒子
がミクロに分散した部分と、β部が全く存在しない(独
立した)球状部分の2つの領域を含む複構造重合体とな
る。この場合には、衝撃強度の低下が見られる。
【0034】従って、本発明の複構造重合体において、
α部がγ部で覆われていない場合には、耐衝撃性、耐候
性に劣るものが得られ、また、α部部分の中にβ部が分
散していない場合には、表面光沢と耐衝撃性を同時に満
足するものを得ることがむずかしくなる。
【0035】更に、α部の平均直径は1,900〜5,
900Åが好ましく、更に好ましくは、3,000〜4
,000Åである。1,900Å未満では耐衝撃性が低
下し、一方、5,900Åを越えると表面光沢が低下す
る。また、α部の周囲を覆っているγ部の平均厚みは1
0〜1,000Åが好ましく、更に好ましくは200〜
500Åである。10Å未満では重合体Bとの相溶性が
低下し耐衝撃性が劣り、一方、1000Åを越えると、
相溶性が良くなり、2相系が崩れ、単一物質と同様にな
るために耐衝撃性が低下する。
【0036】本発明の複構造重合体において、α部の中
にβ部が複数個全体的に分散させるためには、α部の組
成、分子量、架橋密度、架橋点間距離を適切にすること
が必要である。本発明の複構造重合体において、α部の
中にβ部が分散するとは、α部全体に複数個のβ部の小
粒子が比較的に平均的に分散した状態を指す。従って、
従来の上記複構造体のように、α部にβ部の小粒子が分
散した部分と、β部が全く存在しない(独立した)球状
部分の2つの領域を含むようなものは分散したとは言え
ない。
【0037】上記α部の中にβ部が分散する態様として
、α部の全体にβ部が分散させるのが好ましいが、これ
に制限されない。また、このβ部の小粒子の個数も特に
制限されず、任意の数で良いが、比較的多数個が均一に
分散させているのがより好ましい。さらに、このβ部の
小粒子の大きさも夫々が比較的に揃っているのが好まし
いが、多少のバラツキがあっても構わない。
【0038】本発明の複構造重合体自体も、α部も、β
部もその形状は、本質的に球状であり、γ部はこの球状
のα部を囲む層として存在する。これらの粒子の形状は
、本発明の目的を達成する限りにおいて、何ら限定され
るものではない。
【0039】α部を例にとって、その代表的な好ましい
形を挙げれば、本質的に球状のものである。α部が球状
である場合、複構造重合体の断面形状を観察すれば、γ
部は、その断面形状が本質的にリング状の層として存在
することが判る。α部の形状は、球状の他に、図3にそ
の断面形状を模式的に示したように、長軸、短軸を有す
る楕円形、キドニー形、またはひょうたん形などが挙げ
られる。または、これらに凹凸を有する図4のような形
態のものでも構わない。また、必ずしも対称形でなく、
不定形のものでもよい。
【0040】γ部はα部全体を囲んでいることが好まし
いが、α部が部分的にγ部の存在しない部分において露
出していても構わない。α部の厚みのばらつきは、小さ
いことがより好ましい。
【0041】(d)複構造重合体の製造法;本発明の複
構造重合体の製造方法は、モノマー、乳化剤、重合開始
剤、連鎖移動剤などの存在下で行われる公知の乳化重合
法を用いることが有利である。さらに、このような複構
造重合体を形成させるためには、各単量体或いは単量体
混合物を逐次添加して反応させることによって、複構造
重合体を形成できるシード重合法を用いることが有利で
ある。
【0042】本発明の複構造重合体の製法の代表的な例
を具体的に示すと、以下のとおりである。 <第1段目の重合>メタクリル酸アルキルエステル2〜
30重量%とアクリル酸アルキルエステル1〜6重量%
のモノマー混合液を乳化剤、重合開始剤とともにモノマ
ー/水比0.3〜1.0で重合する。なお、この段階で
架橋剤、グラフト交叉剤を用いた場合には、耐衝撃性が
低くなる。
【0043】<第2段目の重合>第1段目で得られたシ
ードラテックスの一部を用いて、第1段目と同じモノマ
ー混合液で重合し、粒径を制御することができる。この
第2段目の重合は省略することも可能である。 <第3段目の重合>アクリル酸アルキルエステル45〜
70重量%、架橋剤0.05〜5重量%のモノマー液を
乳化剤、重合開始剤と共に乳化重合する。
【0044】<第4段目の重合> アクリル酸アルキルエステル  4〜8重量%不飽和ニ
トリル              4〜8重量%芳香
族ビニル                2〜5重量
%架橋剤              0.005〜0
.5重量%のモノマー液を乳化剤、重合開始剤とともに
乳化重合する。
【0045】<第5段目の重合> アクリル酸アルキルエステル    0〜2重量%芳香
族ビニル        1〜16重量%不飽和ニトリ
ル      3〜38重量%のモノマー液を乳化剤、
重合開始剤とともに乳化重合する。
【0046】この際、第3段目以降の重合を行う場合に
、可及的に新たな粒子の生成を抑制するような条件を選
ぶ必要があるが、これには、用いる乳化剤の量を臨界ミ
セル濃度未満にすることによって実現することが出来る
。また、新たな粒子生成の有無は、電子顕微鏡による観
察によって確認することが出来る。
【0047】また、複構造重合体の各層の粒子径(直径
)を特定範囲に制御するには、最内層の硬質重合体(第
1段目の重合で得られたもの)のシードラテックスの一
部を取出し、イオン交換水、乳化剤、モノマーを加えて
シード重合を続ける際に、シードラテックスの取出し量
を調整し、シードラテックスの粒子数を制御することな
どによることができる。
【0048】各重合段階の重合体及び/又は共重合体を
形成させるための適切な重合温度は、各重合段階ともに
30〜120℃、好ましくは50〜100℃の範囲で選
ばれる。重合に用いられる乳化剤については特に制限は
なく、従来慣用されているものの中から任意のものを選
ぶことができる。例えば、C2 〜C22のカルボン酸
類、C6 〜C22のアルコール又はアルキルフェノー
ル類のスルホネートのアニオン性乳化剤、脂肪族アミン
又はアミドにアルキレンオキサイドの付加した非イオン
性乳化剤又は第4級アンモニウム含有化合物などのカチ
オン性乳化剤が挙げられるが、長鎖アルキルカルボン酸
塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩などの使用が好まし
い。
【0049】また、この際に用いられる重合開始剤につ
いては特に制限はなく、例えば、過硫酸のアルカリ金属
塩、アンモニウム塩などの水溶性過酸化物:過ホウ酸塩
などの無機系開始剤、過酸化水素、アゾビスブチロニト
リルなどのアゾ系化合物を単独で、或いは亜硫酸塩、チ
オ硫酸塩などを併用してレドックス開始剤として用いる
こともできる。さらに、油溶性の有機過酸化物/第1鉄
塩、有機過酸化物/ソジウムスルホキシレートのような
レドックス開始剤も用いることができる。さらに、使用
される連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタン
等のアルキルメルカプタン、トルエン、キシレン、クロ
ロホルム、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0050】モノマーの添加方法については、一括して
も良いが、モノマーを数回に分けて投入するか、若しく
は連続添加した方が良い。その場合は、重合反応を制御
することができ、過熱及び凝固を防止することができる
。本発明の複構造重合体を有利に製造する場合に、各層
は以下のように調整された方法を実施すると良い。
【0051】ゴム状弾性体の形成は、アクリル酸エステ
ル架橋体の重合反応を完結させてから、ゴム状弾性体用
モノマーを添加して逐次重合させても良いし、或いはア
クリル酸エステル架橋体の重合を完結せずに未反応モノ
マーを残存させた状態で、不飽和ニトリル(ハ)、芳香
族ビニル(ニ)などを添加してゴム状弾性体を形成させ
ても良い。
【0052】(e)その他;このような重合方法によっ
て得られる特殊な構造を有する複構造重合体は、ポリマ
ーラテックスの状態から公知の方法によって、塩析、洗
浄、乾燥等の処理を行うことにより粒子状固形物として
得られる。このような複構造重合体は、通常の場合、ア
セトンなどの溶剤に不溶の純粋な多層構造重合体自体と
、アセトンなどの溶剤に可溶のグラフト化しないポリマ
ーとの混合物として得られるので、ここで言う複構造重
合体には、該複構造重合体自体及び、該複構造重合体と
上記グラフト化しないポリマーとの混合物が包含される
【0053】本発明の特殊な構造を有する複構造重合体
は、基本的に前記(d)で説明したような重合方法によ
り得られるが、各重合段階で得られた重合体の特徴は;
■  第1〜2段目の重合で得られた重合体は、複構造
重合体の弾性率を高める役目をし、またシート重合にお
いて複構造重合体の最終粒子径を決定する意味からも重
要である。特に、第1段目の重合時にグラフト化剤又は
架橋剤が存在すると、耐衝撃性の低い複構造重合体しか
得られない。(第1段目、第2段目の重合で形成される
層を第1層と称する。)
【0054】■  主に第3段目の重合で得られたアク
リル酸エステル架橋体は、衝撃強度付与の役目をする。 (この重合で形成される層を第2層と称する。)■  
主に第4段目の重合で得られたゴム状弾性体は、第1〜
2段目の重合の硬質重合体、第3段目の重合のアクリル
酸エステル架橋体と最終重合体との間の接着性向上の役
目をする。(この重合で形成される層を第3層と称する
。)
【0055】■  最終段階の重合で得られた最終重合
体は、さらにブレンドする熱可塑性樹脂との相溶性向上
の役目をする。(この重合で形成される層を第4層と称
する。)本発明の重合体組成物に於ける重合体Bは、T
gが−30℃〜30℃の範囲にあること以外は、重合体
Aと類似している。即ち、アクリル酸エステル単量体と
芳香族ビニル単量体と多官能架橋剤とからなるアクリル
酸エステル系ゴム質重合体の存在下に、グラフト重合可
能な単量体混合物をグラフト共重合することにより得ら
れる。
【0056】該アクリル酸エステル系ゴム質重合体とは
、アクリル酸エステル単量体と芳香族ビニル単量体と多
官能架橋剤とからなり、該各単量体、重合体Aの成分の
説明に於いて例示したものである。ここで、各単量体の
量比については、Tgが−30℃〜30℃の範囲にある
ような組成であればよく、例えば、アクリル酸エステル
単量体/芳香族ビニル単量体/多官能架橋剤の重量比は
、75/24.9/0.1〜35/60/5の範囲が好
ましい。そして、Tgが−30℃〜30℃の範囲にあれ
ば、アクリル酸エステル単量体と芳香族ビニル単量体と
多官能架橋剤と共重合可能な単量体を導入することがで
きる。例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル
、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸等が
挙げられる。
【0057】重合体Bに於けるグラフト重合可能な単量
体混合物の種類、量比及び重合体Bの組成に於けるゴム
質重合体とグラフト重合可能な単量体混合物の量比につ
いては、重合体Aと同一である。ここで、更に好ましい
重合体Bとしては、Tgが−30℃〜30℃の範囲にあ
ること以外は、好ましい重合体Aと類似した重合体であ
る。即ち、
【0058】(a)アクリル酸エステル単位と芳香族ビ
ニル単位とからなる架橋重合体と、メタクリル酸エステ
ル単位とアクリル酸エステル単位からなる共重合体との
混合体であって、−30℃〜30℃の範囲にあるガラス
転移温度を有する、本質的には球状のゴム状重合体(α
部分)と、(b)上記α部分の内部に分散する重合体で
あって、芳香族ビニル単位と不飽和ニトリル単位からな
る共重合体及び/又は芳香族ビニル単位と不飽和ニトリ
ル単位とα部分を構成するアクリル酸エステル単位から
なる共重合体(β部分)と、
【0059】(c)上記α部分の外部を層状に囲む重合
体であって、芳香族ビニル単位と不飽和ニトリル単位か
らなる共重合体及び/又は芳香族ビニル単位と不飽和ニ
トリル単位とα部分を構成するアクリル酸エステル単位
からなる共重合体(γ部分)とからなり、その共重合組
成は、(イ)メタクリル酸エステル単位  2〜30重
量%と、(ロ)アクリル酸エステル単位    30〜
80重量%と、(ハ)不飽和ニトリル単位      
    5〜20重量%と、(ニ)芳香族ビニル単位1
0〜60重量%とからなる重合体Aであって、
【0060】本質的には球状のα部分の平均直径は、1
900〜5900Åであり、このα部を囲むγ部の平均
層厚みは10〜1000Åであり、アセトン不溶部分の
(イ)アセトンに対する膨潤度が1.5〜10で、かつ
(ロ)引張弾性率が1,000〜10,000Kg/c
m2 である重合体である。  更に好ましい重合体B
について詳しく説明する。更に好ましい重合体Bは、T
gが−30℃〜30℃の範囲にあること以外は、好まし
い重合体Aと類似している。
【0061】(a)重合体Bの組成 本発明に於ける重合体Bは、組成的に、(イ)メタクリ
ル酸アルキルエステル単位、(ロ)アクリル酸アルキル
エステル単位、(ハ)不飽和ニトリル単位と(ニ)芳香
族ビニル単位から構成され、更に(ホ)多官能架橋剤を
も含む複構造重合体であり、各単量体は、好ましい重合
体Aの成分の説明に於いて例示したものである。
【0062】(b)重合体Bの組成比 一方、重合体Bの組成比は、基本的には、(イ)メタク
リル酸アルキルエステル単位2〜30重量%、更に好ま
しくは5〜15重量%、(ロ)アクリル酸アルキルエス
テル単位30〜80重量%、更に好ましくは50〜70
重量%、(ハ)不飽和ニトリル単位5〜20重量%、更
に好ましくは6〜10重量%、(ニ)芳香族ビニル単位
10〜60重量%、更に好ましくは20〜40重量%及
び(ホ)多官能架橋剤0.05〜5重量%であることが
好ましい。この範囲を逸脱した場合には、耐衝撃性の点
で好ましくない。
【0063】(c)重合体Bの微細構造本発明の重合体
Bはα部の中に、β部が分散した構造であって、当該α
部の平均直径が好ましくは1900〜5900Å、その
周辺を覆っているγ部の平均厚みが、好ましくは10〜
1000Åである、という極めて特殊な構造を有してい
るおり、好ましい重合体Aと基本的に同一である。
【0064】(d)重合体Bの製造法 好ましい重合体Aの製造法と同様に5段からなり、該重
合体Aと異なる点は、第3段目の重合の単量体組成であ
る。即ち、 <第3段目の重合>アクリル酸アルキルエステル30〜
60重量%、芳香族ビニル10〜40重量%及び架橋剤
0.05〜5.0重量%のモノマー液を乳化剤、重合開
始剤と共に乳化重合する。
【0065】(e)その他 このような重合方法によって得られる特殊な構造を有す
る重合体Bは、ポリマーラテックスの状態から公知の方
法によって、塩析、洗浄、乾燥等の処理を行うことによ
り、粒子状固形物として得られる。一方、重合体Cとは
、不飽和ニトリル単量体と芳香族ビニル単位と、これら
と共重合可能な一種以上のモノマー単位からなる。
【0066】ここで、必須成分の不飽和ニトリルとは、
アクリロニトリル、メタクリロニトリル等であり、特に
アクリロニトリルが好ましいが、アクリロニトリルを主
体にして、メタクリロニトリルを含有した共重合体でも
良い。
【0067】今一つの必須成分の芳香族ビニルとは、ス
チレン、α−メチルスチレン、バラメチルスチレン、p
−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、2,4,5,
−トリブロモスチレン等であり、スチレンが最も好まし
いが、スチレンを主体に上記他の芳香族ビニルを混合し
た共重合体であっても良い。
【0068】重合体Cの成分として、不飽和ニトリルと
芳香族ビニルに共重合可能なモノマー成分を一種以上に
導入することがある。重合体AとBとのブレンド性を更
に向上させるか、ブレンド時の溶融粘度を低下させる必
要のある場合は、炭素数が1〜8のアルキル基からなる
アクリル酸エステルを用いることができる。また、シー
トの耐熱性を高める必要のある場合は、アクリル酸、メ
タクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミド等の
モノマーから選ばれる。
【0069】重合体Cの組成に於ける不飽和ニトリル単
位は10〜50重量%、好ましくは、20〜40重量%
、芳香族ビニル単位は50〜90重量%、好ましくは6
0〜80重量%、これらと共重合可能な1種以上のモノ
マー単位は0〜50重量%の範囲にあることが必要であ
り、この範囲外では、重合体A、Bとのブレンド性が低
下し、成形品の耐衝撃性が低下する。そして、この重合
体Cは、通常の溶液重合、懸濁重合、乳化重合の方法に
より製造される。
【0070】また、本発明の重合体組成物に重合体Aと
BとCとに相溶化が可能な重合体を添加することが可能
である。これによって成形品に特殊な機能を付与するこ
とができる。例えば、メタクリル系樹脂により耐傷性が
付与され、シアン化ビニル−芳香族ビニル−アクリル酸
アルキルエステル共重合体により流動性が付与され、シ
アン化ビニル−芳香族ビニル−N置換マレイミド共重合
体により耐熱性が付与され、ポリカーボネート系樹脂に
より耐熱性と耐衝撃性が付与され、塩化ビニル系樹脂に
より難燃性が付与される。
【0071】本発明の重合体組成物を構成する重合体A
と重合体Bと重合体Cとの量比については、Aが5〜5
0重量%、好ましくは10〜20重量%、Bが5〜45
重量%、好ましくは10〜20重量%、Cが90〜5重
量%、好ましくは80〜60重量%の範囲になければな
らない。上記範囲以外では、耐衝撃性と剛性と制振性の
バランスが取れなくなる。特に、制振性に関しては、重
合体Bが5重量%未満では効果がなく、一方、45重量
%を越えると、制振性は優れているものの耐衝撃性が著
しく低下する。(後述する実施例2,9〜12、比較例
3〜6参照)
【0072】本発明の重合体組成物は、上記各重合体を
市販の単軸押出機あるいは、二軸押出機で溶融混練する
ことにより得られるが、その際に紫外線吸収剤、安定剤
、滑剤、充填剤、補強剤、染料、顔料等を必要に応じて
添加することができる。このようにして得られた本発明
の組成物を例えば、射出成形または押出成形することに
より、制振性、耐候性、耐衝撃性、剛性及び優れた外観
を兼備しているか、もしくは、それらの特性がバランス
した成形品が得られる。
【0073】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるもので
はない。なお、実施例、比較例における測定は、以下の
方法もしくは測定機器を用いて行った。 1.電子顕微鏡用試料の作製;本発明の多層構造重合体
のα層の平均直径、β層の平均厚みは次のように測定さ
れる。 即ち、多層構造重合体をPMMA(デルペット80N;
旭化成工業(株)製)を中谷機械製作所製AS−30,
30mmφ二軸押出機で混練する。次に、0.5mm角
以下の超薄切片を作製し、面をダイヤモンドナイフを用
いて切削し、仕上げる。この試料を密閉容器内で、遮光
状態にして1%ルテニウム酸水溶液の蒸気に数時間暴露
し、染色した。
【0074】該組成物を電子顕微鏡で観察した場合、海
島構造を有しており、島部分はルテニウム染色される部
分とされない部分からなり、ルテニウム酸で染色されな
い部分をα層、α層の外側にあり、α層をリング状に囲
みルテニウム酸で染色される部分をβ層、β層の中にあ
りルテニウム酸で染色され複数個分散した小粒子をβ層
とする。
【0075】2.平均直径(粒子径)、平均厚み上記の
ように、成形品より切り取ったサンプルをルテニウム酸
で染色した超薄切片の透過型電子顕微鏡写真(写真倍率
10万倍)を調製し、無作為に選んだ100個の粒子の
径を測定し、それと一般式(I)に定義した平均直径(
粒子径)
【化1】 とした。
【0076】このとき、粒子が球状と見なせない場合に
は、その長径と短径を策定し、算術平均した値を平均直
径(粒子径)とした。厚みについても、同様に無作為に
選んだ100個の粒子について測定し、それを算術平均
して平均厚みとした。このとき、厚みにむらがある場合
には、その最大厚みと最小厚みを測定し、算術平均した
値を厚みとした。
【0077】3.膨潤度;ペレット約0.5gにアセト
ン30mlを加え、25℃で24時間浸漬後、5時間振
とうし、5℃、18,000rpmで1時間遠心分離す
る。上澄み液をデカンテーションして除いた後、新たに
アセトン30mlを加え、25℃で1時間振とうし、5
℃、18,000rpmで1時間遠心分離する。上澄み
液を除き、重量を秤量する(W3 )。その後、100
℃、2時間真空乾燥し、残留物の重量を秤量する(W4
 )。
【0078】次式により膨潤度を算出する。
【数1】
【0079】4.組成分析;アセトン可溶部については
、アセトン分離で得た上澄み液(イ)、(ロ)を大量の
メタノール中に注ぎ、沈澱物を真空乾燥して得た。アセ
トン不溶部については、アセトン分別で得たサンプルを
用いた。各サンプルの熱分解ガスクロマトグラフィーに
より組成分析を行った。
【0080】5.引張り弾性率;アセトン分別で得られ
た不溶部を150℃で圧縮成形してフィルムを作製し、
これから幅15±0.5mm、厚み0.50±0.05
mm、長さ70mmの試験片を作製した。引張試験機を
用いてチャック間距離50mm、引張速度50mm/分
で測定した。
【0081】6.表面光沢;ASTM−D523−62
Tに基づき、60度の入射角による鏡面光沢度を求めた
。 7.耐候性;スガ試験機(株)製デューパネル光コント
ロールウェザーメーター(DPWL−5型)を用いて6
0℃で照射し、40℃で湿潤結露と言うサイクルで耐候
性促進テストを行った。20日照射後の物性値と初期の
それとの比の百分率を物性の保持率と定義し、耐候性の
評価とした。ここで、耐候性の評価物性は、アイゾット
衝撃強さ、引張伸び、光沢である。
【0082】8.引張強さ、引張伸度:ASTM−D6
38に準拠した方法で測定した。 9.曲げ強さ、曲げ弾性率:ASTM−D790に準拠
した方法で測定した。 10.アイゾット衝撃強度:ASTM−D256に準拠
した方法で測定した(Vノッチ、1/4”試験片)。
【0083】11.ガラス転移温度(Tg)厚さ1mm
のコンプレッション成形により成形したタンザク片をサ
ンプルとし、レオバイブロンREO−2000(東洋ボ
ールドウィン社製)により、振動数35Hz、2℃/分
の昇温速度でtanδ値を測定し、このtanδのピー
クの値をガラス転移温度とした。
【0084】12.制振性 制振性の評価として共振鋭度(Q値)をその尺度とした
。図5に示す装置を用いて、試験片より(ASTM  
D−638  ダンベル片)を電磁石により非接触強制
振動させ、微少変位を測定し、(試験片の一方の先端の
両面にアルミ箔及び鉄片を張り付け、図5の様に他方の
端を固定し、発振器からの加振周波数で非接触強制振動
させる。試験片の微少変位を、微小電気容量変化(コン
デンサー)にてとらえ、さらに微少電圧に変換してして
観測する。)図6のような周波数と変位との関係に基づ
く共振曲線を得て、共振鋭度の算出式により求めた。
【0085】
【数2】   但し、fo:共振周波数 fH 、fL :共振周波数の変位より3dB
【008
6】
【数3】 低い値をとる周波数
【0087】
【実施例1】 (イ)重合体Aの製造 アクリル酸ブチル100重量部、トリアリルイソシアヌ
レート2重量部、過硫酸カリウム0.05重量部、オレ
イン酸ソーダ2.5重量部及びイオン交換水200重量
部を反応器に仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら60
℃4時間、80℃5時間重合を行った。ここで得られた
アクリル酸ブチルゴムラテックスを固形分に換算して7
0重量部及びイオン交換水100重量部を反応器に仕込
み、かきまぜ下にて、70℃でスチレン22.5重量部
とアクリロニトリル7.5重量部との混合物及び過硫酸
カリウム0.1重量部をイオン交換水50重量部に溶解
した水溶液を7時間にて連続的に添加しながら重合を行
い、重合反応終了後、グラフト共重合体ラテックスを塩
析・脱水、乾燥して粉体の重合体A−1を得た。また、
重合体A−1のTgは−54℃であった。
【0088】(ロ)重合体Bの製造 重合体A−1の製造に於いて、アクリル酸ブチル100
重量部の代わりに、アクリル酸ブチル70重量部とスチ
レン30重量部を用い、また過硫酸カリウム0.05重
量部の代わりに0.5重量部を用いること以外、重合体
A−1と同一の実験を行い、重合体B−1を得た。前記
重合体B−1のTgは−23℃であった。
【0089】(ハ)重合体C 重合体Cとして、市販のAS樹脂〔(アクリロニトリル
/スチレン共重合体)(アクリロニトリル/スチレン=
29/71重量比)旭化成工業(株)製  商品名「ス
タイラック」<登録商標>AS−783KT)〕を用い
た。(重合体C−1と称する。)
【0090】(ニ)組成物の調整及び評価前記重合体A
−1と、重合体B−1と、重合体C−1を18/17/
65の比率でヘンシェルミキサーにて20分間混合した
後、30mmベント付二軸押出機(中谷機械(株)製、
A型)を用いて260℃にてペレット化を実施した。得
られたペレットをインラインスクリュー射出成形機(東
芝機械(株)製、IS−75S型)を用いて成形温度2
60℃、金型温度60℃の条件で所定の試験片を作製し
、物性測定を行った。その結果を表1に示した。表1に
よると、本発明の重合体組成物は、耐候性、制振性、耐
衝撃性及び剛性を兼備していることが分かる。
【0091】
【実施例2】(イ)重合体Aの製造 (1)最内層の硬質重合体の重合(シード1段目)、反
応器内にイオン交換水248.3重量部、ジヘキシルス
ルホコハク酸ナトリウム0.05重量部を仕込み、攪拌
下窒素置換を充分に行った後、昇温して内温を75℃に
する。この反応器に過硫酸アンモニウム0.02重量部
添加後、メタクリル酸メチル8重量部、アクリル酸ブチ
ル2重量部の混合物を50分間で連続的に添加した。 添加後、更に過硫酸アンモニウム0.01重量部を添加
してから、75℃で45分間反応を続けた。重合率は9
9%であった。
【0092】(2)最内層の硬質重合体の重合(シード
2段目) (1)で得たラテックスの1/4(固形分換算で2.5
重量部)を取出し、更にイオン交換水186.2重量部
、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.03重量部
を反応器に仕込み、攪拌下に窒素置換を充分に行った後
、昇温して内温を75℃にする。この反応器に過硫酸ア
ンモニウム0.02重量部添加後、メタクリル酸メチル
6.0重量部、アクリル酸ブチル1.5重量部の混合物
を50分間で連続的に添加した。添加終了後、更に反応
を完結するため、75℃で45分間反応を続けた。重合
率は98%であった。
【0093】(3)アクリル酸エステル架橋体の重合(
第3段目の重合)、(第2層) (2)のラテックスの存在下に、過硫酸アンモニウム0
.01重量部、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0
.05重量部を添加後、アクリル酸ブチル63重量部、
架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート0.6重量部
の混合物を70℃で80分間かけて連続的に添加した。 添加終了後、更に70℃で20分間反応を続けた。 第1層、第2層を通しての重合率は85%であった。
【0094】(4)ゴム状弾性体の重合(第4段目の重
合)、(第3層) (3)の重合で未反応のアクリル酸ブチル11重量部、
トリアリルイソシアヌレート0.18重量部の存在下で
、過硫酸アンモニウム0.045重量部、ジヘキシルス
ルホコハク酸ナトリウム0.45重量部を添加後、アク
リロニトリル3.8重量部、スチレン11.4重量部、
t−ドデシルメルカプタン0.025重量部の混合物を
75℃で90分間かけて連続的に添加した。重合率は9
3%であった。
【0095】また、ラテックス中の残存モノマー量をガ
スクロマトグラフィーにより測定して、第3層の共重合
組成比を算出した結果、アクリロニトリル/スチレン/
アクリル酸ブチル比は、夫々10/43/47であった
【0096】(5)最終重合体の重合(第5段目の重合
)、(第4層) (4)のラテックスの存在下に、アクリロニトリル2.
05重量部、スチレン8.86重量部、t−ドデシルメ
ルカプタン0.02重量部の混合物を75℃で70分間
かけて連続的に添加した。更に重合を完結させるために
、85℃で1時間反応を続けた。重合率は97%であっ
た。また、ラテックス中の残在モノマー量をガスクロマ
トグラフィーにより測定して、第4層の共重合組成比を
算出した結果、アクリロニトリル/スチレン/アクリル
酸ブチル比は、夫々24/65/11であった。このよ
うにして得られたラテックスを、3重量%硫酸ナトリウ
ム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、次いで、脱
水・洗浄を繰り返した後、乾燥し、重合体A−2を得た
。前記重合体A−2のTgは−53℃であった。
【0097】重合体Aの分析 (1)ルテニウム酸による染色と電子顕微鏡観察:また
、先に記述の方法で試験片を作製し、試験片からルテニ
ウム酸で染色した超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡
で観察したところ、図1の模式図に示されるように、熱
可塑性樹脂からなる海相1中に複構造重合体からなる島
相2が点在した状態が観察される。そして、ルテニウム
酸で染色されていないα部4の平均粒子径は5,000
Åであり、島全体2(複構造重合体)の平均粒子径は、
5,700Åであり、ルテニウム酸で染色されているγ
部3の平均厚みは350Åである。
【0098】ルテニウム酸で染色されていないα部4に
は、ルテニウム酸で染色された部分(β部)5が複数個
ほぼ全体的に分散していた。なお、この複構造重合体を
重合するのに用いた、各硬質重合体用モノマー、ゴム弾
性体用モノマー、アクリル酸エステル架橋体用モノマー
の特性などから考えて、
【0099】(イ)α部4は、第1、2段目の重合によ
る硬質重合体用のアクリル酸ブチル、メチルメタクリレ
ート単位、および第3段目の重合によるアクリル酸エス
テル架橋体用のアクリル酸ブチル、架橋剤又はグラフト
化剤単位が主要成分であると考えられ、(ロ)γ部3は
、第4段目の重合によるゴム弾性体用のアクリル酸ブチ
ル、スチレン、アクリロニトリル単位、および第5段目
の重合による最終重合体用のスチレン、アクリロニトリ
ルと残余のアクリル酸ブチル単位が主要成分であると考
えられる。
【0100】さらに、(ハ)α部4中に分散するβ部5
は、上記γ部部分3に仕込まれた主にスチレンなどの硬
質成分の一部が、α部4に流れ込み重合して形成された
ものと考えられる。この機構はあくまでも推定であって
、このようになる理由は明確に明らかでない。
【0101】(2)膨潤度、引張弾性率:複構造重合体
のアセトンに対する膨張度は7.0であった。フィルム
の引張り弾性率は、2,500Kg/cm2 であった
。 (3)組成分析 熱分解ガスクロクトグラフィーによる組成分析の結果は
、MMA7,0重量%、BA65.9重量%、St20
.0重量%、AN7.1重量%であった。
【0102】(ロ)重合体Bの製造 重合体A−2の製造に於いて、(3)アクリル酸エステ
ル架橋体の(第3段目の重合)と(4)ゴム状弾性体の
重合(第4段目の重合)の一部を以下のように変更する
こと以外、重合体A−2と同一の実験を行い、重合体B
−2を得た。
【0103】(3)アクリル酸エステル架橋体の重合(
4)ゴム状弾性体の重合 このようにして得た重合体B−2のTgは−22℃であ
った。
【0104】重合体Bの分析 (1)ルテニウム酸による染色と電子顕微鏡観察:また
、先に記述の方法で試験片を作製し、試験片からルテニ
ウム酸で染色した超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡
で観察したところ、図1の模式図に示されるように、熱
可塑性樹脂からなる海相1中に複構造重合体からなる島
相2が点在した状態が観察される。そして、ルテニウム
酸で染色されていないα部4の平均粒子径は4,900
Åであり、島全体2(複構造重合体)の平均粒子径は5
,800Åであり、ルテニウム酸で染色されているγ部
3の平均厚みは450Åである。
【0105】ルテニウム酸で染色されていないα部4に
は、ルテニウム酸で染色された部分(β部)5が複数個
ほぼ全体的に分散していた。なお、この複構造重合体を
重合するのに用いた、各硬質重合体用モノマー、ゴム弾
性体用モノマー、アクリル酸エステル架橋体用モノマー
の特性などから考えて、(イ)α部4は、第1、2段目
の重合による硬質重合体用のアクリル酸ブチル、メチル
メタアクリレート単位、および第3段目の重合によるア
クリル酸エステル架橋体用のアクリル酸ブチル、架橋剤
又はグラフト化剤単位が主要成分であると考えられ、

0106】(ロ)γ部3は、第4段目の重合によるゴム
弾性体用のアクリル酸ブチル、スチレン、アクリロニト
リル単位、および第5段目の重合による最終重合体用の
スチレン、アクリロニトリルと残余のアクリル酸ブチル
単位が主要成分であると考えられる。
【0107】さらに、(ハ)α部4中に分散するβ部5
は、上記γ部部分3に仕込まれた主にスチレンなどの硬
質成分の一部が、α部4に流れ込み重合して形成された
ものと考えられる。この機構はあくまでも推定であって
、このようになる理由は明確に明らかでない。
【0108】(2)膨潤度、引張弾性率:複構造重合体
のアセトンに対する膨張度は7.1であった。フィルム
の引張り弾性率は、3,000Kg/cm2 であった
。 (3)組成分析 熱分解ガスクロクトグラフィーによる組成分析の結果は
、MMA7,0重量%、BA46.1重量%、St39
.8重量%、AN7.1重量%であった。
【0109】(ハ)組成物の調整及び評価重合体A、B
として、それぞれ前記重合体A−2、B−2を用いるこ
と以外、実施例1と同様にペレットを得た後、成形品を
作製し、物性を評価した。その結果を表1に示した。表
1によると、本発明の重合体組成物は、耐候性、制振性
、耐衝撃性及び剛性を兼備していることが分かる。
【0110】
【比較例1】実施例1の重合体組成物の代わりに、AB
S樹脂〔旭化成工業(株)製  商品名<スタイラック
−ABS>登録商標<200>〕を用いて実施例と同様
に成形品を作製し、物性を評価した。その結果を表1に
示した。表1によると、ABS樹脂は制振性、耐候性が
劣ることが分かる。
【0111】
【比較例2】平均粒子径が3,000Åのポリブタジエ
ンゴムラテックス(Col含量82%、膨潤指数21%
、固形分54%)に脱イオン水を添加し、ゴム成分とし
て35部、脱イオン水として90部のゴムラテックスと
した後、ブチルメタクリレート35部を添加し、1時間
攪拌を続け十分にゴムに含浸させる。次にtert−ブ
チル−パーオキシ−2−エチルヘキサネート(日本油脂
製、パーブチルO)0.2部を添加し、30分間攪拌を
続け十分にゴムに含浸させる。続いて攪拌を続けながら
80℃に昇温し4時間重合を行い重合率99%の重合体
ラテックスを得た。ブチルメタクリレートのグラフト効
率を測定したところ75%であった。(ラテックスAと
する)
【0112】この重合体ラテックスAに対して60部の
脱イオン水を添加した後、攪拌しながら70℃に昇温し
、 スチレン                     
           21部アクリロニトリル   
                       9部
クメンハイドロパーオキシド            
0.1部ターシャリードデシルメルカプタン     
 0.2部からなる混合溶液と、ソジウムホルムアルデ
ヒドスルホキシレート、硫酸第2鉄、EDTAからなる
レドックス系水溶液30部をそれぞれ3時間にわたって
逐次添加したところ93%であった。
【0113】得られた重合体ラテックス100部(固形
分)に対して硫酸アルミニウム1.0部を加えて塩析し
、脱水回収した後、100℃で1時間乾燥しフレークと
した。このフレークに対してAS樹脂(AN含量30%
、10%メチルエチルケトン溶液粘度7.7cps)を
ゴム分が18%となるようにブレンドし、造粒してペレ
ットとした後、実施例1と同様に成形品を作製し、物性
を評価した。その結果を表1に示した。表1によると、
ブタジエンを含む重合体組成物は、耐候性が劣ることが
分かる。
【0114】
【表1】
【0115】
【実施例3】 (イ)重合体Aの製造 (1)最内層の硬質重合体の重合(シード1段目)及び
(2)最内層の硬質重合体の重合(シード2段目)は、
アリルメタクリレート0.19部を添加した以外は、実
施例1と同様の方法で行った。
【0116】(3)アクリル酸エステル架橋体の重合(
第3段目の重合)、 (2)のラテックスの存在下に、過硫酸アンモニウム0
.13重量部、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0
.05重量部を添加後、アクリル酸ブチル63重量部、
架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート0.6重量部
の混合物を80℃で80分間かけて連続的に添加した。 添加終了後、更に80℃で90分間反応を続けた。 前記(1)〜(3)の重合を通して重合率は99.5%
であった。
【0117】(4)最終重合体の重合(第4段目の重合
)、 (3)のラッテクスの存在下に、過硫酸アンモニウム0
.045重量部、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム
0.045重量部を添加後、アクリロニトリル6.75
重量部、スチレン20.25重量部、t−ドデシルメル
カプタン0.045重量部の混合物を75℃で160分
間かけて連続的に添加した。更に重合を完結するために
85℃で1時間反応を続けた。重合率は98%であった
【0118】また、ラテックス中の残存モノマー量をガ
スクロマトグラフィーにより測定して、第4層の共重合
組成比を算出した結果、アクリロニトリル/スチレン/
アクリル酸ブチル比は、25/75/0であった。この
ようにして得られたラテックスを実施例1と同一の処理
を行い重合体A−3を得た。前記重合体A−3のTgは
−55℃であった。
【0119】また、電子顕微鏡観察の結果、図2の模式
図に示されるように、熱可塑性樹脂からなる海相1中に
複構造重合体からなる島相2が点在しており、該島相2
は層状に2層からなり、粒子の内側の内層(α部)部分
4の平均直径4,900Åで、層状に囲む外層(γ部)
部分3の平均厚みは340Åであった。α部4中に実施
例1では存在しなかった、オスミウム酸に染色されてい
ない、直径1,200Åの独立した球状部6が認められ
た。この球状部6の中に分散したβ部5はなかった。
【0120】(ロ)重合体Bの製造 前記重合体A−3の製造の、(3)アクリル酸エステル
架橋体の重合に於いて、以下の様に変更する以外は重合
体A−3と同一の実験を行い、重合体B−3を得た。 このようにして得た重合体B−3のTgは−21℃であ
った。
【0121】また、電子顕微鏡観察の結果、図2の模式
図に示されるように、熱可塑性樹脂からなる海相1中に
複構造重合体からなる島相2が点在しており、該島相2
は層状に2層からなり、粒子の内側の内層(α部)部分
4の平均直径5,000Åで、層状に囲む外層(γ部)
部分3の平均厚みは340Åであった。
【0122】α部4中に実施例1では存在しなかった、
オスミウム酸に染色されていない、直径1,100Åの
独立した球状層6が認められた。この球状層6の中に分
散したβ部5はなかった。
【0123】(ハ)組成物の調整及び評価重合体A、B
として、それぞれ前記重合体A−3、B−3を用いるこ
と以外、実施例1と同様にペレットを得た後、成形品を
作製し、物性を評価した。その結果を表2に示した。表
2によると、本発明の重合体組成物は、耐候性、制振性
、耐衝撃性及び剛性を兼備していることが分かる。表2
及び電子顕微鏡観察の結果を総合すると、最内層の硬質
重合体の重合の際にグラフト剤(架橋剤)を導入すると
、独立した球状が存在し、この球状層中にβ部が分散し
ていないために、実施例2に比較すると耐衝撃性が低い
ことが分かる。
【0124】
【実施例2、4〜7】実施例2の重合体A−2、B−2
の製造に於いて、最内層の硬質重合体のシード1段目の
重合によって得られたラテックスの採取量を減少させて
シード重合を続けた。また、上記のシード1段目のジヘ
キシルスルホコハク酸ナトリウムを増量してシード重合
を続けた。このようにして得られたラテックスを実施例
1と同様の処理を行い、評価した。その結果を表2に記
載した。
【0125】表2によると、本発明の重合体組成物は、
耐候性、制振性、耐衝撃性及び剛性を兼備しているが、
その中でも特にα部の平均直径、γ部の平均厚みが、各
々1,900Å、10Åより小さいと光沢は優れている
ものの、耐衝撃性は低く、一方、各々5,900Å、1
,000Åを越えると、光沢は低いことが分かる。
【0126】
【実施例8】 (イ)重合体Aの製造 (1)アクリル酸エステル架橋体の重合(シード1段目
)、 反応器内にイオン交換水248.3重量部、ジヘキシル
スルホコハク酸ナトリウム0.05重量部を仕込み、攪
拌下窒素置換を充分に行った後、昇温して内温を75℃
にする。この反応器に過硫酸アンモニウム0.02重量
部添加後、アクリル酸ブチル10重量部と架橋剤として
トリアリルイソシアヌレート0.1重量部の混合物を5
0分間で連続的に添加した。添加後、更に過硫酸アンモ
ニウム0.01重量部を添加してから75℃で45分間
反応を続けた。重合率は99%であった。
【0127】(2)アクリル酸エステル架橋体の重合(
シード2段目)、 (1)で得たラテックスの1/4(固形分換算で2.5
重量部)を取出し、更にイオン交換水186.2重量部
、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム0.03重量部
を反応器に仕込み、攪拌下に窒素置換を充分に行った後
、内温を70℃にする。この反応器に過硫酸アンモニウ
ム0.01重量部を添加後、アクリル酸ブチル70.5
重量部、架橋剤としてトリアリルイソシアヌレート0.
67重量部の混合物を70℃で80分かけて連続的に添
加した。添加終了後、更に70℃で20分間反応を続け
た。重合率は85%であった。
【0128】(3)ゴム状弾性体の重合(2)の重合で
未反応のアクリル酸ブチル11重量部、トリアリルイソ
シアヌレート0.18重量部の存在下で、過硫酸アンモ
ニウム0.045重量部、ジヘキシルスルコハク酸ナト
リウム0.45重量部を添加後、アクリロニトリル3.
8重量部、スチレン11.4重量部、t−ドデシルメル
カプタン0.025重量部の混合物を75℃で90分間
かけて連続的に添加した。重合率は93%であった。ま
た、ラテックス中の残存モノマー量をガスクロマトグラ
フィーにより測定して、第3層の共重合組成比を算出し
た結果、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸ブチ
ル比は、夫々10/43/47であった。
【0128】(4)最終重合体の重合 (3)のラテックスの存在下に、アクリロニトリル2.
05重量部、スチレン8.86重量部、t−ドデシルメ
ルカプタン0.02重量部の混合物を75℃で70分間
かけて連続的に添加した。更に重合を完結させるために
85℃で1時間反応を続けた。重合率は97%であった
【0129】また、ラテックス中の残在モノマー量をガ
スクロマトグラフィーにより測定して、最終重合体の共
重合組成比を算出した結果、アクリロニトリル/スチレ
ン/アクリル酸ブチル比は、夫々24/65/11であ
った。このようにして得られたラテックスを、3重量%
硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ
、次いで、脱水・洗浄を繰り返した後、乾燥し、重合体
A−4を得た。前記重合体A−4のTgは−53℃であ
った。
【0130】(ロ)重合体Bの製造 前記重合体A−4の、(1)アクリル酸エステル架橋体
の重合(シード1段目)、(2)アクリル酸エステル架
橋体の重合(シード2段目)及び(3)ゴム状弾性体の
重合に於いて、以下の様に変更する以外は、重合体A−
4と同一の実験を行い、重合体B−4を得た。
【0131】(1)アクリル酸エステル架橋体の重合(
シード1段目)
【0132】(2)アクリル酸エステル架橋体の重合(
シード2段目)
【0133】(3)ゴム状弾性体の重合前記重合体B−
4のTgは−22℃であった。
【0134】(ハ)組成物の調整及び評価重合体A、B
として、それぞれ前記重合体A−4、B−4を用いるこ
と以外、実施例1と同様にペレットを得た後、成形品を
作製し、物性を評価した。その結果を表2に示した。表
2によると、本発明の重合体組成物は、耐候性、制振性
、耐衝撃性及び剛性を兼備しているが、メタクリル酸ア
ルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルからなる
最内層の硬質重合体のない重合体を用いた重合体組成物
は、実施例2に比較すると、耐衝撃性及び光沢が劣るこ
とが分かる。
【0135】
【表2】
【0136】
【実施例2、9〜12、比較例3〜6】実施例2に於い
て、重合体A−2、B−2、C−1の組成比を変更する
こと以外、同一の実験を繰り返し、諸物性を評価した。 その結果を表3に示した。表3によると、重合体Aが5
〜40重量%、重合体Bが5〜40重量%、及び重合体
Cが90〜20重量%の範囲内にある時のみ、耐衝撃性
と剛性と制振性のバランスが取れていることが分かる。
【0137】
【表3】
【0138】
【発明の効果】本発明は、上述から明らかなように、A
BS樹脂に比較して耐候性が改良されており、優れた外
観、耐衝撃性、剛性及び素晴らしい制振性を兼備した今
までにない新規な重合体組成物である。
【0139】この組成物は、自動車部品、家電部品、O
A機器部品をはじめとする広い用途、特に従来金属材料
あるいはHIPS、ABS樹脂等の塗装品を用いていた
屋外使用の用途に無塗装品で多年にわたって使用でき、
これら産業界に果たす役割は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複構造重合体と、それを含む熱可塑性
樹脂組成物のルテニウム酸染色の超薄切片の透過型電子
顕微鏡写真の模式図である。
【図2】本発明の複構造重合体と、それを含む熱可塑性
樹脂組成物のルテニウム酸染色の超薄切片の透過型電子
顕微鏡写真の模式図である。
【図3】本発明の複構造重合体の粒子形状の例を記す模
式図である。
【図4】本発明の複構造重合体の粒子形状の例を記す模
式図である。
【図5】Q値の測定方法を示すブロックダイアグラムで
ある。
【図6】Q値の算出方法に関する周波数と変位との関係
に基づく共振曲線を示すものである。
【符号の説明】
1  海相 2  島相 3  γ層 4  α層 5  β層 6  独立層

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】  ガラス転移温度(Tg)が−30℃以
    下のアクリル酸エステル系ゴムグラフト共重合体A(重
    合体A)5〜50重量%と、該Tgが−30℃〜30℃
    の範囲にあるアクリル酸エステル系ゴムグラフト共重合
    体B(重合体B)5〜45重量%と熱可塑性重合体C(
    重合体C)90〜5重量%とからなる重合体組成物であ
    って、該重合体Aは、アクリル酸エステル単位と多官能
    架橋剤とからなるゴム質重合体5〜80重量部に、不飽
    和ニトリル単量体10〜50重量%と芳香族ビニル単量
    体50〜90重量%と、これらと共重合可能な単量体0
    〜50重量%とからなる単量体混合物95〜20重量部
    をグラフト重合してなるアクリル酸エステル系ゴムグラ
    フト共重合体であり、該重合体Bは、アクリル酸エステ
    ル単量体と芳香族ビニル単量体及び架橋剤とからなるゴ
    ム質重合体5〜80重量部に、該重合体Aの欄に記載の
    単量体混合物95〜20重量部をグラフト重合してなる
    アクリル酸エステル系ゴムグラフト共重合体であり、該
    重合体Cは、不飽和ニトリル単量体10〜50重量%と
    芳香族ビニル単量体50〜90重量%と、これらと共重
    合可能な1種以上の単量体0〜50重量%とからなる熱
    可塑性重合体であることを特徴とする、制振性の優れた
    耐候性耐衝撃性重合体組成物。
JP15086791A 1991-05-28 1991-05-28 制振性の優れた耐候性耐衝撃性重合体組成物 Withdrawn JPH04351651A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15086791A JPH04351651A (ja) 1991-05-28 1991-05-28 制振性の優れた耐候性耐衝撃性重合体組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP15086791A JPH04351651A (ja) 1991-05-28 1991-05-28 制振性の優れた耐候性耐衝撃性重合体組成物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH04351651A true JPH04351651A (ja) 1992-12-07

Family

ID=15506117

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP15086791A Withdrawn JPH04351651A (ja) 1991-05-28 1991-05-28 制振性の優れた耐候性耐衝撃性重合体組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH04351651A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005076015A (ja) * 2003-09-03 2005-03-24 Umg Abs Ltd 溶融加工用樹脂組成物
JP2010001907A (ja) * 2008-06-18 2010-01-07 Polymatech Co Ltd 防振緩衝部材
WO2024062932A1 (ja) * 2022-09-22 2024-03-28 株式会社クラレ 制振材用組成物、制振材及び部材

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005076015A (ja) * 2003-09-03 2005-03-24 Umg Abs Ltd 溶融加工用樹脂組成物
JP4493956B2 (ja) * 2003-09-03 2010-06-30 ユーエムジー・エービーエス株式会社 溶融加工用樹脂組成物
JP2010001907A (ja) * 2008-06-18 2010-01-07 Polymatech Co Ltd 防振緩衝部材
WO2024062932A1 (ja) * 2022-09-22 2024-03-28 株式会社クラレ 制振材用組成物、制振材及び部材

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPS6284109A (ja) 熱可塑性樹脂組成物の製造方法
EP0231933B2 (en) Thermoplastic resin compositions having excellent impact resistance, weather resistance and moldability, and process for preparing the same
JP7106192B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JPH03199213A (ja) 多層構造アクリル系重合体
JP2002530494A (ja) 乳化重合ポリアクリレートゴム、耐衝撃性改良剤、それから得られるブレンド、並びに製造方法
JP2002201329A (ja) 耐薬品性と真空成形性が優れる熱可塑性樹脂組成物
JPH04351651A (ja) 制振性の優れた耐候性耐衝撃性重合体組成物
US4886857A (en) Styrene based resin composition
US5137979A (en) Multi-layer structure polymer and resin composition
US4701495A (en) Thermoplastic resin composition
JP2796595B2 (ja) 多層構造重合体および樹脂組成物
JP4410390B2 (ja) アクリル樹脂フィルム状物及び積層体
JPH04325536A (ja) 外観の優れた耐候性耐衝撃性重合体組成物
JPH04214323A (ja) Aas系樹脂延伸シート及びフィルム
JPH04342750A (ja) 着色性の優れた耐候性、耐衝撃性重合体組成物
JPH0559247A (ja) 耐熱劣化性の優れた耐候性、耐衝撃性重合体組成物
JP2004256744A (ja) 耐衝撃性補強材及びその製造方法、並びに耐衝撃性補強ポリスチレン
JPH04277546A (ja) 耐熱耐候耐衝撃性重合体組成物
JPH04185663A (ja) 高衝撃高剛性aas系樹脂組成物
JP2000017137A (ja) 多相共重合体含有樹脂組成物
JPH04146910A (ja) 多層グラフト共重合体
JPH04258655A (ja) 耐溶剤性の優れた耐候性耐衝撃性樹脂組成物
JPH04253714A (ja) 複構造重合体と重合体組成物
JP3074879B2 (ja) 塗装性の優れる熱可塑性樹脂組成物
JPS62235349A (ja) 熱可塑性樹脂組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 19980806