JPH0372839B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はスクロール型流体機械に関するもの
で、特にスクロール型圧縮機に関するものであ
る。

スクロール型圧縮機は、米国特許第801182号明
細書を初めとする多くの特許や文献に開示され、
その動作原理は良く知られている。

まず、ここでは、スクロール型圧縮機の構成及
びその動作原理について、第１図、第２図及び第
３図を参照して説明する。

圧縮機１は、フロントエンドプレート１１とこ
れに設置されたカツプ状部分１２とからなる圧縮
機ケーシング１０を有している。該フロントエン
ドプレート１１は、その中心部に貫通孔を穿設し
ており、その中にボールベアリング１３を介して
主軸１４を回転自在に支承している。またフロン
ドエンドプレート１１は、主軸１４の外周を取り
囲むように前方に突出したスリーブ部１５を有
し、該スリーブ部１５内にはシヤフトシール部材
１６を配置している。

フロントエンドプレート１１によつて開口部を
閉塞されたカツプ状部分１２内には固定スクロー
ル部材１７、可動スクロール部材１８及び可動ス
クロール部材の駆動機構と回転阻止機構が配設さ
れている。ここで、固定スクロール部材１７は一
般に側板１７１とその一面上に形成されたうず巻
体１７２を形成した面とは反対側の面上に設けた
脚部１７３とより構成され、該脚部１７３をカツ
プ状部材１２の底部を貫通して螺合するボルト１
９によつて固定スクロール部材１７をカツプ状部
分１２内に固定している。また固定スクロール部
材１７の側材１７１の外周面とカツプ状部分１２
の内壁面との間をＯ−リング20によつてシールす
ることによりカツプ状部分１２内を吸入室２１と
吐出室２２とに仕切つている。さらに、側板１７
１の中央部にはスクロール部材間に形成された密
閉空間と吐出室２２を連通する連通孔１７４を穿
設している。

可動スクロール部材１８は、側板１８１とその
一面上に形成したうず巻体１８２とより構成さ
れ、該うず巻体１８２は前記固定スクロール部材
１７のうず巻体１７２と180゜の角度ずれをもつて
かみ合されている。なお、主軸１４と可動スクロ
ール部材１８との間には、可動スクロール部材の
駆動機構及び回転阻止機構が配設されており、こ
の駆動機構及び回転阻止機構については種々の公
知機構において実施されうるため、ここでの説明
は省略するが、主軸１４が回転運動を行なうこと
によつて、可動スクロール部材１８は所定の軌道
半径をもつて旋回運動を行なうこととなる。

このような構成にて成る圧縮機は、一対のスク
ロール部材１７，１８の両うず巻体が180゜の角度
ずれをもつてかみ合されているので、両うず巻体
の線接触部から線接触部にわたつて密閉された流
体ポケツトが形成されることとなり、主軸１４が
回転運動を行なうと駆動機構及び回転阻止機構の
動きによつて可動スクロール部材１８は所定の半
径上を円軌道運動することとなる。したがつて、
うず巻体の壁面に沿つてうず巻体の内端方向へ移
動し、ポケツト内の流体を容積の減少を伴なわせ
つつ徐々に圧縮することとなる。

次に、第２図及び第３図を参照して上述した圧
縮機の圧縮動作、圧縮サイクルについて説明す
る。なお圧縮サイクルについては第３図中、細い
実線で示してある。第２図イ〜ヲをクランク角が
０からそれぞれπ／２づつ進行した状態を示して
おり、第２図イで示すように可動スクロール部材
１８のうず巻体１８２最外端及び固定スクロール
部材１７のうず巻体１７２最外端がそれぞれ対向
するうず巻体側壁に接触することにより、対称な
一対の密閉空間Ａ１，Ａ２が形成され圧縮が開始
される（この開始点を第３図においてクランク角
度０とする）。そして密閉空間Ａ１，Ａ２は第２
図ロ〜ヘに示すようにクランク角の進行に伴つ
て、その容積を徐々に減少させつつ内部圧力を次
第に上昇させていく。だが第２図のヘからトの状
態へ移行する過程では（第３図中Ｆで示す点）、
密閉空間Ａ１，Ａ２は、うず巻体中央に残置され
た一サイクル前の高圧空間を介して連通し一つの
密閉空間Ａを形成するので、その内部圧力はわず
かな値ではあるが不連続な圧力上昇（第３図中Ｄ
で示す）をひき起こす。その後（第２図で言えば
ト以降）密閉空間Ａは、再びその容積を徐々に減
少させつつ内部圧力を次第に上昇させていくが、
側板の中央部に穿設した吐出室と連通する連通孔
に逆止弁を設けてあるので、前記密閉空間Ａの内
部圧力が吐出室圧力に達した時点で、密閉空間Ａ
の高圧流体は吐出室へ吐出され、この吐出が続い
ている間密閉空間Ａ内の圧力は吐出室圧力の状態
で維持される。高圧流体の吐出は、第２図のルの
状態、（第３図でクランク角5π）すなわち密閉空
間Ａが次の一対の密閉空間と連通するまで続き、
第２図ルの状態になつたとき終わり、一つの圧縮
サイクルが完了する。その時、次の圧縮サイクル
は第２図のトの状態に移行している。こうして順
次圧縮サイクルが継続されることとなる。

このようなスクロール型圧縮機におけるうず巻
体の壁厚は外端部より中央端部に至るまでほぼ一
定の値であり、この壁厚は一定寸法の圧縮機内に
できるだけ大きく容積を取り込めるように、強度
的に可能な限り小さく設定されていた。また、う
ず巻体は圧縮機駆動中に圧力変動を常に受けるこ
ととなるので、疲れ破壊しやすい状況下に置かれ
ている。特に中央端部ではうず巻の巻き終り点で
あるとともに最も大きな圧力下に置かれることと
なるため、強度的に最も弱い部分であつた。即
ち、大容量の圧縮機を得るため、うず巻体の高さ
を大きくとると、中央端部におけるうず巻体の剛
性はさらに弱められる強度が劣ることとなる。こ
のため、うず巻体の壁厚を大きくとつて強度を向
上させると、壁厚の増加に伴なつて同一容積を得
るための圧縮機の外形寸法を大きくとらなければ
ならず、寸法及び重量が増加するとともに慣性力
のつり合わせの点でも不利になるという欠点を有
するものであつた。

また、従来うず巻体の形成はエンドミル加工に
よつて行なわれるのが一般的であるが、このエン
ドミル加工によるうず巻体の形成では、うず巻体
中央内壁面の形状が通常インボリユート創成円上
まで達することはなかつた。これは、エンドミル
の直径をあまり小さくするとエンドミル自体の変
形により精密な加工が行なえないため、ある程度
の直径を有するエンドミルを用いて加工し、内壁
中央端はエンドミル工具の円弧をそのまま残すこ
とでうず巻体が形成されていたからである。この
ような内壁中央端を円弧で成形したうず巻体を用
いて、圧縮機動作を行なわせると、うず巻体間の
線接触部がインボリユート曲線で形成されたうず
巻体内壁面を通過し円弧部内壁に達すると、この
線接触部が解消され、中央部に形成されていた吐
出ボードに連通している中央高圧室がその外周上
に形成されている一対の密閉空間と残留ガスを残
しながら連通することとなる。このため、高圧室
と外周上の一対の密閉空間とが連通した時に高圧
室に残留していたガスは連通時に再膨張すること
となるため、圧縮機の馬力損失を生じ圧縮効率を
低下させることとなつていた。

従つて、本発明の目的はうず巻体の中央端部形
状を改良することにより、うず巻体の耐久性を向
上させ、小型、軽量の圧縮機を提供することにあ
る。

また、本発明の他の目的は再膨張容積を低減さ
せることにより、消費馬力が小さく圧縮効率の良
好な圧縮機を提供することである。

以下、本発明を実施例を示す図面を参照して説
明する。

第４図乃至第８図は本発明に基づいて形成され
たうず巻体の中央端部を示す拡大図であり、従来
用いられているうず巻体の中央端部の形状を図中
点線で示すことにより本発明と従来例の構成を対
比させている。

第４図は、本発明の一実施例を示すものであ
り、インボリユートうず巻体の壁中心線（当該壁
中心線は、前記うず巻体内外壁の位相のずれの1/
２のずれを以て該内外壁間にインボリユート曲線
によつて形成される仮想線である）の伸開開始点
を起点とする任意の伸開角（以下、伸開角はうず
巻体の壁中心線における伸開角で説明する）αを
設定し、この伸開角αに対応するインボリユート
創成円（以下、基礎円と呼ぶ）の円周上の点をＧ
とすると、このＧ点を通過する基礎円に対する接
線と外壁面を構成する外側インボリユート曲線と
の交点Ｃが決まる。うず巻体外壁面はこのＣ点よ
り外方に向つてインボリユート曲線によつて形成
する。一方、伸開角α＋180゜に対応する基礎円周
上の点をＨとし、このＨ点を通過する基礎円に対
する接線と内壁面を構成する内側インボリユート
曲線との交点Ｂを求める。そしてうず巻体内壁面
はこのＢ点より外方へ向つてインボリユート曲線
によつて形成する。なお所定の伸開角αは、両う
ず巻体の壁同士が、うず巻体の旋回運動が干渉し
ない範囲に選ばれる。又、うず巻体中央端部対向
面の形状が、両うず巻体による流体の圧縮終了時
点において、該対向面によつて形成される空〓が
最小となるように設定される。

このようにして形成されるうず巻体の外壁面と
内壁面の中央うず巻中心側端部の結合は以下のよ
うにして形成される。即ち、接線GC上に任意の
点Ｆを設定し、FC＝ｒを半径とする円弧を描く。
一方接線HB上にＢ点よりｒ＋ro（roはうず巻体
の軌道半径）離れた点Ｅを設け、このＥ点を中心
として半径Ｒ＝ｒ＋roの円弧を描く。次に両円弧
に共通な接線Ａ−A′を引くことによつて形成さ
れる形状によつて内外壁面を連結してうず巻体の
中央端部を形成している。従つて、中央端部は半
径ｒの円弧５、半径Ｒ＝ｒ＋roの円弧７及び両円
弧５，７に共通な接線６とにより構成される。

上述の形状にて構成されるうず巻体の組み合せ
による動作を第８図を用いて説明する。第８図ａ
は可動うず巻体１０１と固定うず巻体１００とに
よつて形成された一対の密閉空間が連通して中央
室１０３となり、最後の圧縮をされる直前の状態
を示すもので可動うず巻体１０１の軌道運動によ
つて中央出力１０３内の流体は圧縮され、吐出口
１０２を通して排出される。第８図ｂは圧縮体の
排出が継続されている。両うず巻体１００，１０
１の先端に形成される線接触部はインボリユート
曲線に沿つて移動するとともに、第８図ｂからｃ
に移行する過程で、インボリユート曲線から外れ
るが円弧と円弧の接触で線接触部は継続して形成
され、第８図ｃに示すように共有接線部の接触に
移行する。ここで両うず巻体の共有接線部の接触
によつて中央室１０３の容積はほぼ零となる。な
お、両共有接線が接触する時には接線とクランク
軸線とは直交する状態となり、クランク軸がさら
に回転すると接線はクランク軸線との直交状態か
ら外れるため、両共有接線は互いに離れ、この時
外周上の一対の密閉空間が連通する。（この状態
を第８図ｂに示す。） このように、中央室１０３を形成する線接触が
両スクロール壁面同志の干渉がなく最後まで継続
し得るので再膨張容積を低減することが可能とな
る。

さらに、インボリユート創成円に基づくインボ
リユート曲線を用いたうず巻体において、前記２
つの円弧及び両円弧に共通な接線で接続した中央
端部としたことにより、うず巻体の内外壁の曲率
が連続的に変化するため、スムーズな圧縮が可能
となる。

また、うず巻体中央端部のみの壁厚を大きくと
ることができるので圧縮機の外形寸法を大きくと
ることなく、うず巻体の力学的強度を向上させる
ことが可能となる。

なお、このようなうず巻体を組合せた場合、組
付時の相対角度ずれあるいは、うず巻体の加工寸
法誤差により、うず巻体中央部が干渉するおそれ
がある。このような点を解消するためには、第５
図に示すように円弧７の半径をわずか（ΔR）増
加させ、かつ円弧５の半径をわずか（ΔR）減少
させるとともに両円弧５，７を接続する共有接線
６を内側にくい込むような任意の曲線とすればよ
い。

また、第６図に示すように、内側インボリユー
ト曲線上に設けた起点Ｂを角度Δxだけ内方へず
らし新しく起点B′としてもよい。さらに第７図
に示すように円弧５，７のうち円弧５の半径をゼ
ロなすわちｒ＝０とし、円弧７と外側インボリユ
ート曲線上のＣ点とを該円弧７の接線６で結んで
うず巻体中央端部を形成するようにしてもよい。

ここで本発明によるスクロール型圧縮機の圧縮
サイクルについて再び第３図を用いて説明する。

なお本発明の圧縮サイクルは太い実線にて示し
てある。本発明のスクロール型圧縮機では、圧縮
サイクルの完了する時点で流体の再膨張容積がほ
ぼゼロとなるのでうず巻体中央端部近傍において
一対の密閉空間が連通（第３図中Ｅで示す点）し
ても、従来のように不連続は圧力上昇（第３図中
Ｄで示す）が起こることはない。従つて密閉空間
の流体は滑らかに吐出室圧力まで上昇しその後流
体の吐出が行なわれる。また同一クランク角で対
比した場合、従来例で起きる不連続な圧力上昇に
よつて一旦従来例より本発明の方が密閉空間の圧
力が低くなるが、うず巻体中央端部の形状が次の
圧縮サイクルに移るまで線接触を有効に維持でき
るようなものとなつているため、一対の密閉空間
が連通した後で従来例の圧力を上まわることとな
る。そして従来例より小さなクランク角度から流
体の吐出が始まる。

このように本発明によるうず巻体形状とするこ
とにより、圧縮機自体の寸法を大きくすることな
く、うず巻体中央部の強度を増加させ得るだけで
なく、再膨張容積をも零とすることが可能となつ
た。その結果、従来例にみられた圧縮過程におけ
る不連続な圧力上昇が無くなり、トルク変動及び
馬力損失も減少させることが可能となつた。

【図面の簡単な説明】

第１図は一般的なスクロール型圧縮機の縦断面
図、第２図は流体の圧縮工程を説明するための
図、第３図はクランク角度と圧縮室内の圧力との
関係を示す図、第４図は本発明の第１の実施例を
示す拡大図、第５図は本発明の第２の実施例を示
す拡大図、第６図は本発明の第３の実施例を示す
拡大図、第７図は本発明の第４の実施例を示す拡
大図、第８図は本発明の第１の実施例の動作を説
明するための図である。 ５……円弧、６……接線、７……円弧、１００
……固定うず巻体、１０１……可動うず巻体、１
０２……吐出口、１０３……中央室。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 流体吸入口と流体排出口とを有する圧縮機ハ
   ウジングと、第１の板体の一面上に設けられた第
   １のうず巻体を有し上記ハウジング内に固定配置
   された固定スクロール部材と、第２の板体の一面
   上に設けられた第２のうず巻体を有し該第２のう
   ず巻体が上記第１のうず巻体と角度をずらされて
   噛み合い、それらの間に閉塞された流体ポケツト
   を形成するように上記固定スクロール部材と重ね
   合わされた可動スクロール部材と、該可動スクロ
   ール部材に円軌道運動を与えるために該可動スク
   ロール部材と結合された駆動機構と、該可動スク
   ロール部材の上記円軌道運動の間、該可動スクロ
   ールの回転を阻止する回転阻止機構とを有し、上
   記可動スクロール部材の上記円軌道運動によつ
   て、上記流体ポケツトが容積を減少しながら上記
   両うず巻体の中心方向へ移動し、これによつて流
   体の圧縮が行なわれるスクロール型圧縮機におい
   て、両うず巻体は同一のインボリユート創成円に
   基づくとともに、位相の異なる二つのインボリユ
   ート曲線によつて内外壁が形成され、伸開角及び
   半径は両うず巻体の中央端部が軌道運動に伴つて
   圧縮工程の最終時に接触し中央圧縮室の容積がほ
   ぼ零となる範囲であつて、前記仲開角によつて外
   壁を形成するインボリユート曲線の起点が決めら
   れるとともに、前記伸開角に180゜加えた伸開角に
   よつて内壁を形成するインボリユート曲線の起点
   が決められ、該両起点を中心とする前記半径を有
   した少なくとも２つの円弧及び両円弧に共通な接
   線によつて接続して両うず巻体の中央端部を形成
   したことを特徴とするスクロール型圧縮機。