JPH0350707B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は凹版印刷機において凹版面に転移され
た余分のインキを拭き取るワイピング装置に関す
るものである。

凹版印刷機による印刷作業は、インキ装置によ
つて凹版胴上の凹版面にインキを転移させ、この
転移したインキのうちの絵柄部分以外の箇所に付
着したインキを凹版面に対接して回転するワイピ
ングローラで拭き取つたのち、凹版胴と圧胴との
間を通過する紙に、残つた絵柄部分のインキを転
写させて印刷を施すものである。そして、ワイピ
ングローラは液槽内に入れたトリクレンなどの洗
浄液に浸漬されて回転しているとともに、液内の
ワイピングローラ周面にはその軸方向へ延びる複
数個のブラシが対接されており、拭き取りによつ
てワイピングローラに転移したインキは、このブ
ラシと洗浄液との洗浄作用で取り除かれて洗浄液
で溶解される。

このようなワイピング装置を備えた凹版印刷機
による印刷作業は、前述したように版の凹部に残
つたインキを紙に転写させるものであるから、印
刷に際しては紙を版面へ強く押し付けなければな
らず、圧胴と凹版胴との間の大きな印圧を必要と
する。一方、凹版は凹版胴の外周部に設けた切欠
き内の版万力によつて両端を支持されて胴周面に
巻付けられており、版の部分を有効面と呼ばれ、
切欠きの部分を非有効面と呼ばれている。そし
て、印刷中、凹版胴の有効面と非有効面すなわち
版のある大径部と版のない小径部とが交互に圧胴
へ対接しながら回転するところへ前記大きな印圧
が掛かるので、凹版胴と圧胴とは大きな振動を繰
返しながら回転する。

この振動によつて印刷機の各部は種々の影響を
受けるが、取り分け印刷物の品質に与える影響は
致命的なものとなり、その一つとして前記ワイピ
ング装置との関係が挙げられる。すなわち、前記
ワイピングローラは、軟質の表面を持つており、
凹版面に対して相対的に逆方向に滑りながら回転
して凹版面凸部のインキを拭き取るが、この場
合、前記凹版面に対する圧胴の印圧がワイピング
ローラと凹版面との接触部に伝わると、その箇所
の周速が瞬間的に変化し、またワイピング圧力が
変化することにより拭き取りむらが発生する。こ
の結果、一般に地よごれと呼ばれるように、凸部
のインキがわずかに拭き切れず紙面にすじ状とな
つて印刷されたり、印刷されるインキ厚が不均一
になつたりする。

そこで従来、圧胴、凹版胴、ワイピングローラ
の配置を、ワイピングと印刷とが同じタイミング
で行なわれるように設定して有効面のワイピング
中以外の箇所で印圧を入り切りさせることが実施
されている。すなわち、凹版胴は前述したように
大きな印圧を必要とするので、強度保持上、３倍
または４倍胴にして凹版胴の１回転中に３枚また
は４枚の紙に印刷が施されるようにしたものが多
いが、例えば３倍胴の場合には、凹版胴、圧胴の
対接箇所と凹版胴、ワイピングローラの対接箇所
とを120゜ずらせ、一つの版による印刷が開始され
ると同時にこれと隣接する版のワイピングが開始
されるように構成されている。

しかしながら、このような従来のワイピング装
置においては、前述したワイピングに対する印圧
の影響が回避される反面、印圧の入り切り時にワ
イピングローラが、凹版胴の有効面始端または終
端すなわち前記胴周切欠き部の始端または終端の
かどと対接することになるので、印圧の入り切り
による大きな振動がワイピングローラに伝わつて
ワイピングローラの耐久性を大きく損なうという
欠点があつた。

本発明は以上のような点に鑑みなされたもの
で、整数倍径の凹版胴、圧胴の中心を結ぶ線と、
凹版胴、ワイピングローラの中心を結ぶ線とのな
す角度を、凹版胴の有効面円周角、またはこれに
有効面円周角と非有効面円周角との和の１を含む
整数倍を加えた角度と等しいかこれよりもやゝ大
きく設定し、ワイピングローラによるインキの拭
き取りが終つてから胴がわずかに回動したのちに
印刷が開始されるように構成することにより、印
圧の入り切りによる振動が、ワイピングローラに
よるインキの拭き取り動作中に版面に伝達される
のを回避して印刷障害の発生防止を計つた凹版印
刷機のワイピング装置を提供するものである。以
下、本発明の実施例を図面に基いて詳細に説明す
る。

本発明例は本発明を４倍径の凹版胴を備えたド
ライオフセツト印刷機に実施した例を示し、第１
図はこれを実施した印刷機の概要側面図、第２図
は凹版胴、圧胴、ワイピングローラの配置図、第
３図は動作説明図である。図において、印刷機１
は給紙装置２と印刷装置３および排紙装置４とを
備えており、このうちの給紙装置２には、紙５を
積載して自動的に上昇する紙積台６と、紙５を１
枚ずつ差板７上へ送り込むサツカ装置および送り
込みローラを備えている。また、印刷装置３に
は、ゴム胴８と後程詳述するこれと同径の圧胴
９、凹版胴１０とが周面を対接させて配設されて
おり、差板７上からスイング１１と紙渡し胴１２
を介して１枚ずつ供給される紙５を、圧胴９の爪
１３で咥えて図に矢印Ａで示す方向に回転して搬
送し、排紙チエーン１４へ送り込むように構成さ
れている。図に矢印Ｂで示す方向に回転するゴム
胴８には４個の版胴１５が対接されており、色の
異なる４個の各インキ壺１６から図示しないロー
ラ群を経て版胴１５の版面に転移されるインキで
形成された４色の画像がゴム胴８に転写されて両
胴８，９間を通過する紙５に４色のドライオフセ
ツト印刷が施される。

図に矢印Ｃで示す方向に回転する凹版胴１０は
４倍胴であつてその周面には円周角ｎを有する４
個の有効面１０ａと、円周角ｎよりも大きい円周
角ｍを有する４個の非有効面１０ｂとが交互に配
設されており、各有効面１０ａには、凹溝状の絵
柄部分を備えた凹板１７が、非有効面１０ｂであ
る切欠きの円周方向両端部に設けた版万力で両端
部を保持されて装着されている。また、前記圧胴
９には、凹版胴１０の非有効面１０ｂとほゞ同じ
円周角を有する４個の切欠き９ａが円周を等分し
て設けられており、前記爪１３はこの切欠き９ａ
の回転方向終端部に設けられている。１８はイン
キ装置であつて、凹板１７に対接する３個のイン
キ着ローラ１９とインキ壺２０およびこれらの間
に配設されたローラ群（図示せず）を備えてお
り、各インキ壺２０からローラ群を経てインキ着
ローラ１９に転移された３色のインキが、各凹板
１７の絵柄部分とその周囲の一部とに付着し、こ
のうちの絵柄部分以外の余分なインキが後述する
ワイピング装置２１によつて掻き落されるように
構成されている。

さらに、排紙装置４には、前後一対の紙積台２
２が排紙チエーン１４の搬送終端部下方に配設さ
れており、印刷後、排紙チエーン１４で搬送され
た紙５は、いずれか一方の紙積台２２上に落下し
て積載されるとともに、一方の紙積台２２が満杯
になると、紙５の落下径路を他方の紙積台２２に
切替えて紙５の積載を行なうように構成されてい
る。

前記ワイピング装置２１は、洗浄液２３を蓄え
た液槽２４を備えており、この液槽２４内には、
前記有効面１０ａの周長とほゞ同長の円周面を有
し図に矢印Ｄで示すように凹版胴１０と対接周面
が逆方向へ周回するように回転するワイピングロ
ーラ２５が、下半部を洗浄液２３に浸漬されて軸
架されている。そして、ワイピングローラ２５
は、その周面が凹板１７の表面に対接するように
その半径方向の位置が設定されているとともに、
凹版胴１０の円周方向に対する位置が次のように
設定されている。すなわち、凹版胴１０、圧胴９
の中心を通る線Ｌと、凹版胴１０、ワイピングロ
ーラ２５の中心を通る線L₁とのなす角度をθと
すると、この角度θは、前記有効面１０ａの円周
角ｎ、またはこれに有効面１０ａの円周角ｎと非
有効面１０ｂの円周角ｍとの和の１を含む整数倍
を加えた角度と等しいかこれよりもやゝ大きく設
定されている。さらに詳しく数式で表わすと次の
通りである。

θ＝ｋ（ｎ＋ｍ）＋ｎ＋α（ｍ−ｎ） 式中ｋは０または１を含む整数、αは０と１と
の間の任意の数である。したがつて、４倍胴の場
合、角度θの最大最小は次の通りである。

最大 θ_nax＝２（ｎ＋ｍ）＋ｎ＋１（ｍ−ｎ） ＝２（ｎ＋ｍ）＋ｍ 最小 θ_nio＝０（ｎ＋ｍ）＋ｎ＋０（ｍ−ｎ） ＝ｎ また、本実施例の場合、ｎ＝40゜、ｍ＝50゜、ｋ
＝１、α＝0.5であつて、θ＝135゜である。

このように配置されたワイピング装置２１の液
槽２４内には、拭き取りによりワイピングローラ
２５に付着したインキを洗浄液２３ととも掻き落
す複数個のブラシ２６と、ワイピングローラ２５
がつれ回りする洗浄液２３を掻き落すスクレーパ
２７とが付設されている。

以上のように構成された印刷機における凹版印
刷動作を説明する。給紙装置２から差板７上へ送
り出され、スイング１１と紙渡し胴１２を経て圧
胴９の爪１３に咥え替えられた紙５は、圧胴９の
矢印Ａ方向への回転により爪１３で搬送される間
にゴム胴８との間でオフセツト印刷が施されたの
ち、圧胴９と凹版胴１０との間を通過する。凹版
胴１０の有効面１０ａに装着された４個の凹板１
７には、インキ装置１８によつてそれぞれ３色の
インキが絵柄部分よりもわずかに広い面積で転移
されており、余分なインキは、凹版胴１０に対接
してこれと逆方向に回転しているワイピングロー
ラ２５によつて拭き取られるので、絵柄部分にの
みインキが残つてこれが両胴９，１０間を通過す
る紙５に転写されて凹版印刷が施される。第３図
ａは凹版胴１０の有効面１０ａの始端部が圧胴９
の爪１３と対接する印圧入り時を示しており、こ
のときから印刷が開始される。この場合、本実施
例では前記数式中ｋ＝１、α＝0.5であるから、
θ＝１（ｎ＋ｍ）＋ｎ＋0.5（ｍ−ｎ）＝2n＋ｍ＋0.5
（ｍ−ｎ）となり、凹版胴１０の回転方向に対し
印圧入り有効面１０ａの一つ手前の有効面１０ａ
の終端よりもわずか手前、すなわち非有効面１０
ｂの始端部にワイピングローラ２５が対接するこ
とになる。したがつて、このあと両胴９，１０が
回転して印刷が行なわれる間、ワイピングローラ
２５は非有効面１０ｂに対接しており凹板１７面
のワイピングが行なわれない。第３図ｂは第３図
ａから角度ｎだけ回転した印圧切り時を示してお
り、このとき印刷が終る。この場合ワイピングロ
ーラ２５はまだ非有効面１０ｂと対接しており印
圧が切れると、ワイピングローラ２５が有効面１
０ａすなわち凹板１７面と対接し始めワイピング
が開始される。そして、ワイピングが終つたとき
は第３図ａのわずか手前であつて未だ印圧が入つ
ておらず、このあと間もなく印圧が入つて印刷が
開始される。このように、凹版胴１０と圧胴９と
の間で印刷が行なわれているタイミングと、凹板
１７の表面をワイピングしているタイミングとが
完全にずれて分離されているために、印圧の入り
切りによる振動がワイピングに影響することがな
く、また、印圧の入り切り時にワイピングローラ
２５が凹版胴１０の切欠き始端または終端のかど
に当つてワイピングローラ２５の表面を痛めると
いうようなことがない。

なお、有効面１０ａと非有効面１０ｂの角度
は、４倍胴の場合ｎ＝45゜、ｍ＝45゜とするのが有
効面が最大にとれて最良の効果を発揮する。ただ
し、有効面のかどを面取りすることにより実質的
には角度ｎが45゜以下となるので、印圧の入り切
りによる振動がワイピングローラ２５へ伝わるこ
とがない。

なお、本実施例では本発明をドライオフセツト
凹版印刷機に実施した例を示したが、オフセツト
印刷装置を併設しない凹版印刷機にも実施できる
ことは言うまでもない。

以上の説明により明らかなように、本発明によ
れば、凹版印刷機のワイピング装置において、整
数倍径の凹版胴、圧胴の中心を結ぶ線と、凹版
胴、ワイピングローラの中心を結ぶ線とのなく角
度を、凹版胴の有効面円周角、またはこれに有効
面円周角と非有効面円周角との和の１を含む整数
倍を加えた角度と等しいかこれよりもやゝ大きく
設定し、ワイピングローラによりインキの拭き取
りが終つてから胴がわずかに回動したのちに印刷
が開始されるように構成することにより、凹版胴
と圧胴との間の印圧入り切りによる振動が、ワイ
ピングローラによるインキの拭き取り動作中に版
面に伝達されることがないので、筋目など各種の
印刷障害の発生を防止することができ印刷物の品
質が著しく向上する。また、印圧の入り切りタイ
ミングと、ワイピングローラが凹版胴の切欠き始
端、終端かどへ対接するタイミングとが一致する
ことがないので、ワイピングローラが損傷せずそ
の耐久性が向上する。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第３図は本発明に係る凹版印刷機
のワイピング装置の実施例を示し、第１図はこれ
を実施したドライオフセツト凹版印刷機の概要側
面図、第２図凹版胴、圧胴、ワイピングローラの
配置図、第３図は動作説明図である。 ９……圧胴、１０……凹版胴、１０ａ…有効
面、１０ｂ……非有効面、１７……凹版、２５…
…ワイピングローラ、ｎ……有効面の円周角、ｍ
……非有効面の円周角、Ｌ……凹版胴、圧胴の中
心を通る線、L₁……凹版胴、ワイピングローラ
の中心を通る線、θ……ＬとL₁とのなす角。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 凹版が装着された複数個の有効面とその円周
   角に等しいかこれよりも大きい円周角を有する複
   数個の非有効面とが周面に交互に配設された整数
   倍径の凹版胴と、この凹版胴と同径でこれに対接
   する圧胴と、前記有効面の円弧長にほゞ等しい円
   周長を有してこれに対接するワイピングローラと
   を備えた凹版印刷機において。前記凹版胴、圧胴
   の中心を通る線と前記凹版胴、ワイピングローラ
   の中心を通る線とのなす角度を、前記有効面の円
   周角、またはこれに前記有効面の円周角と非有効
   面の円周角との和の１を含む整数倍を加えた角度
   と等しいかこれよりもわずかに大きく設定したこ
   とを特徴とする凹版印刷機のワイピング装置。