JPH0228749B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は、板金材料の塑性加工によつて所定
の形状に形成された板金製ポリＶプーリーの製造
方法および製造装置に関する。

ポリＶプーリーは、現在、主として切削加工に
よつて製造されているが、大量に使用されるもの
については、板金材料の塑性加工で製造する方法
が採用されつつある。従つて、板金材料の塑性加
工によるポリＶプーリーの製造技術はかなり進歩
しているが、それでもＶ溝部分の精度が悪いと言
う欠点が残つている。

この欠点は、板金製ポリＶプーリーの外周面Ｖ
溝部の裏面内径部に凹凸を形成することによつ
て、除去される。

この本発明によれば、外周面Ｖ溝部の裏面内径
部に凹凸を形成した板金製ポリＶプーリーに特に
適した、従来のものに比べて加工工程を最も少な
くできるような、ポリＶプーリーの塑性加工によ
る製造方法および製造装置が提供される。この発
明を要約すれば、最初に、現在最も一般的に行わ
れている絞り加工によつて底部付きの円筒が作ら
れる。次に、この発明の重要な点として、前記の
底部付きの円筒の円筒部が部分的に増厚される。
次いで、増厚の完了した底部付きの円筒に対し
て、中心穴、取付けボルト穴などの穴明けが行な
われる。最後に、Ｖ溝が転造加工されるが、これ
もこの発明の重要な点である。

以下、図面を参照しながら、この発明の実施例
について詳述する。

第１図に断面図で示されるこの発明に関連する
ポリＶプーリーの実施例は、１枚の板から成形さ
れ、その円筒部は多数のＶ溝２を有し、この円筒
部の両端には、Ｖ溝２の間のＶ山３の外径より大
きい外径を有するフランジ部分４と２枚重ねのフ
ランジ部分５とが存する。フランジ部分５からの
中心部は円板で、中心穴６を有する。円板には実
際には、その外周に複数個のボルト穴が設けら
れ、また軽量化のための減肉穴が設けられること
が多い。以上に説明したことは一般に周知のもの
で、１枚の板からつくられる場合には、このよう
な形状にならざるを得ない。

従つてこの発明に関連するポリＶプーリーの要
点は、前記したことに存するのではなく、Ｖ溝２
の裏側の内径部に多数の凹凸を設けたことにあ
る。この凹凸は、第２図のポリＶプーリーの正面
図に示されるように、軸線Ａの方向に平行に走る
凹部７および凸部８からなる。この凹凸は、Ｖプ
ーリーの機能とは何んの関係もないものである
が、この凹凸を形したことで、機能部分であるＶ
溝の精度が向上する。この点についての詳細は、
後述することにする。

次にこれを加工する方法について、第３図、第
４図、第５図および第６図を参照して説明する。
第３図に示される絞り工程は、現在広く行われて
いるので、その加工についての説明は必要がない
が、この発明では、素材１の円筒部の外径が第１
図のフランジ部分５の外径とほぼ等しくなつてい
る。

第４図は、円筒部の一部分を増厚した形状を示
し、符号１０は増厚された部分である。この増厚
加工は困難で、現在の技術では加工工程数を多く
すれば可能であるが、そうするとコスト高になる
ので、生産的に採用されることはまれである。こ
の発明では、この点に注目して、この増厚を１工
程で行う具体的な方法が提供される。

第５図は穴明け工程で、中心穴、ボルト穴など
を穴明けする。これも説明の必要はないものと思
われる。

第６図は、この発明の重要項目である転造工程
を示す。その特徴の１つは、フランジ部分５と直
径がほぼ等しい素材１をＶ溝部の直径まで縮小し
ながら、素材にＶ溝転造を行なうことによつて、
全工程を簡略化していることである。別の特徴
は、Ｖ溝転造時にＶ溝の裏面の内径部に凹凸を形
成して、Ｖ溝の精度を向上させていることであ
る。

以上の如く、この発明の重要部は次の３つに集
約される。１つは、Ｖ溝の裏面の内径部に凹凸を
形成して、Ｖ溝の精度を向上させたポリＶプーリ
ーそのものの形状である。次に、非常に単準化し
た製造方法とこれを具体化するための加工技術で
あつて、この技術の要約は、増厚工程と転造工程
とに存する。

以上でこの発明の大要を説明したので、具体的
な加工技術について以下に詳述するが、前記した
ように、説明の必要があるのは第４図の増厚工程
と第６図の転造工程だけである。

先づ第４図の増厚工程における増厚法について
述べる。第７図はこの増厚法の加工原理を表わ
す。符号１は、第３図に図示される絞り加工を終
了した素材を示す。雄型１１および上型１２はこ
れらで素材１の底部１６を狭みながら下方に移動
できる。しかるに素材１の下方端部は、固定型１
４の段部１７に当接しているので、動かない。従
つて雄型１１および上型１２が下方に移動する
と、素材１の円筒部の長さは短かくなる。破線１
６ａは底部１６が位置を変えたことを示す。とこ
ろが、素材１の円筒部の上方には雌型１３があ
り、その下方には、直径が増大できる割り型１５
があるので、素材１の円筒部の長さの短縮によつ
て余つた肉は、直径が増大できる割り型１５の部
分ではみ出してくる。ここで大切なのは、割り型
１５に中心に向つて一定の圧力が保持されている
ということである。この圧力が弱いと、円筒部の
内径および外径が共にふくらみ、増厚ではなくバ
ルジ加工となつてしまう。従つて増厚加工とする
ためには、前記の圧力の大きさを正確に制御する
必要がある。

上述した増厚加工の原理は、昭和58年５月23日
付で出願されている昭和58年特許願第89076号
「薄肉筒状体の肉厚の増厚方法及びその装置」に
開示されているものと同じである。従つてここで
は、これをポリＶプーリーに適用した場合の具体
的装置について、第８図、第９図および第１０図
を参照しながら以下に説明する。第８図は増厚用
の金型の断面図であつて、その中心線Ｂより左側
は増厚加工に入る前の状態を、また右側は増厚加
工終了時の状態を示す。更にその右側には、油圧
装置のシンボルを使用して、油圧による割り型の
制御が示される。第９図は、割り型１５とその周
辺を輪切りにした断面をハツチングなしで示し、
第１０図は、その一部を拡大したものである。こ
れらの機能動作について以下順を追つて説明する
が、現在板金加工技術者が一見して理解できるよ
うな金型の基本的な構造などについての説明は省
略する。

増厚加工の最初に、素材１は雄型１１の上部に
挿入される。このときには、プレスのラムが上死
点に位置し金型が大きく開いていて、雄型１１が
ダイクツシヨンピン１８によつて所定の位置に持
ち上げられているので、挿入は容易である。そこ
でラムが降下させられて、ノツクアウト１２と雄
型１１の間に素材１の底部１６が狭み込まれる。
このとき、雌型１３は、素材１の外径に嵌まつ
て、その部分を拘束する。更にラムが降下する
と、雌型１３の下面が割り型１５の上面に当接し
て停止する。このときに、素材１の端部は固定型
１４の段部１７に接近している。更にラムが降下
すると、雌型１３の上部に位置する弾性体１９を
圧縮しながら、ノツクアウト１２が下降し、素材
１の下面端部が固定型１４の段部１７に強圧され
るようになる。

このときに、素材１の底部１６はダイクツシヨ
ン圧力で押えつけられて、この部分の変形が防止
され、素材１の内径は雄型１１によつて拘束さ
れ、またその外径の上部は雌型１３によつて下部
は固定型１４によつて拘束されている。従つて、
これよりラムが降下すると素材１の肉は割り型１
５の部分にはみ出さざるを得ない。この場合に割
り型１５が存しないとすると、素材１の円筒部が
外周方向にふくらんで、普通に行なわれているバ
ルジ加工になる。この発明では、割り型１５が計
画された圧力で外周を押えていて、ふくらむこと
を防止しながら、この部分に、余つた肉をはみ出
させる。このことは、素材１の円筒部の長さを圧
縮して縮まつた量が、増厚部分に移行したことを
意味する。

前記の増厚過程で問題となるのは、割り型１５
の中心方向への加圧力である。これが少ないと、
前記したバルジ加工となつてしまうが、そうなら
ない程度の圧力では、波形のしわが発生する。ま
た、あまり高圧にすると、金型に大きな力がかか
り破損の原因となる。もともとこの加工は、一般
の絞り加工、曲げ加工などの板金プレス加工とは
異つて、一種の冷鍜加工で金型には強大な力が作
用する。従つて割り型１５の加圧力の制御を精密
に行わないと、金型破損、品質不良などが多発す
る恐れがある。この制御法については後述する。

ラムが最下点に達したときに増厚は完了する。
それ以後に素材１の取外しのためラムが上昇させ
られるが、それに先立つて、割り型１５の加圧力
を取り去る必要がある。この点について以下に述
べる。ラムが上昇すると、ダイクツシヨン圧力で
雄型１１も上昇する。この際に、雌型１３は、弾
性体１９で下方へ押されているが、素体１の増厚
部の直径が大きくなつているので、またダイクツ
シヨン加圧力の方が大きいので、雄型１１および
素材１と同一速度で上昇する。この場合に割り型
１５に加圧力が働らいていると、割り型１５も共
に上昇することになる。このことは危険でもあ
り、また割り型１５を加圧したままで素材１に取
り出すことはできないので、ラムの上昇開始と共
にこの加圧力を取り去つておく必要がある。この
ようにすれば、ラムの上昇時に割り型１５はその
ままの位置にとどまり、素材１は割り型１５から
抜けれる。

ラムが更に上昇すると、雄型１１の下方の段部
が固定型１４の段部２０に突き当り、またクツシ
ヨンピン１８の下方のダイクツシヨンのストロー
クもここで終るので、雄型１１の上昇は止まる。
従つて素材１の上昇も停止し、これと共に雌型１
３もその位置で停止する。これ以後は、ラムの上
昇と共に弾性体１９が伸びて、遂には、雌型１３
の上方の段部に案内リング２２の段部２１が係合
するようになる。この時点からは、雌型１３はラ
ムと共に上昇する。このときに、素材１の円筒部
の上方が雌型１３の下方と雄型１１との間にはま
つているが、雌型１３が上昇すると素材１は雌型
１３について行つて雄型１１から抜けることにな
るただし、素材１が必らず雄型１１から抜けると
いう保障はないが、経験的に言つて、素材１が雌
型１３について上がる確率が高い。もし素材１が
雌型１３について上らずに雄型１１に残つてしま
うおそれがある場合には、雄型の内部にはね出し
装置（図示なし）を設けて素材が雌型１３に計画
的について上がるようにする必要がある。

更にラムが上昇して上死点近くになると、はね
出し棒２３が、ノツクアウト１２を押して、雌型
１３から素材１を抜く。

以上において、この増厚型の作用を詳細に説明
したが、この説明においては、図面を見ただけで
解るような事項、金型部品の固定の方法など、金
型技術、およびプレス技術の常識的な事項につい
ては、その詳説を省略した。

前述したように割り型１５とその周辺を輪切に
した断面を、ハツチングを一部省略して示した第
９図に示されるように、割り型１５は、外径の拡
大によつて放射状の隙間が大きくならないように
するため、分割数を多くとつてある。２４は割り
型１５を包囲するパツキンを示し、これは、第８
図に示されるような断面を有し、割り型１５の直
径変動に応じてその直径が拡大しまたは縮小す
る。これは本来好ましいことではないが、この場
合にはその量が少ないので実用上充分であり、こ
れを許容することで簡単な構造が得られる。符号
２６はシリンダを示し、これは高圧に耐える構造
を有する。パツキン２４とシリンダ２６の間は油
圧による高圧室で、その通路は第８図に符号２７
で示される。割り型の外周に配置される３角片２
５は、割り型１５の拡大によつて発生する隙間に
パツキン２４が食い込まないように防止する作用
をする。第９図の部分拡大図である第１０図に鎖
線で示されるように、割り型１５の直径が拡大し
て隙間２７ａが生じても、パツキン部は気密にな
つている。

前述した増厚過程において、割り型１５は中心
に向つて加圧されているが、この加圧力は精密に
制御されなければならない。その制御方法を達成
する手段の１例は、第８図の右側に線図的に図示
される。

第８図において、ピストン２８はシリンダ３０
と共にポンプ作用をする油圧の発生源を構成し、
上部と金型が下方に移動するときには、ピストン
２８は下方に押され、上部金型が上方に移動する
ときには、ピストン２８はばね３１の作用で上方
へもとに戻る。かかる作動の達成のため、図示実
施例では、上部金型が腕２９を有し、これがピス
トン２８に作用するとされているが、これは単に
説明の都合であつて、腕２９が実際に存するとは
限らない。

プレスのラムが下降する途中で腕２９がピスト
ン２８を押し下げると、ピストン２８の下方に位
置する油は、通路３２を通つてシリンダ２６に達
し、またチエツク弁３３、圧力調整弁３４および
２方弁３５に達するが、これによつて、その始め
には割り型１５が中心方向に移動する。更にラム
が下降すると、割り型１５はその中心方向移動の
終点に達する。この時点は、金型が増厚作用を開
始する直前である。割り型がその中心方向移動の
終点に達すると、油は、行き場を失い、高圧を発
生する。この高圧は圧力調整弁３４を作動させ、
油が通路３６を通つてタンク３７に入る。ラムは
引きつづいてさらに下降し、これによつて金型は
増厚加工を開始する。この時点から、割り型１５
の直径が増大して、シリンダ２６内の油は通路３
２を通つて逆流し、ピストン２８によつて押し出
されてくる油と合流して、圧力調整弁３４を通つ
てタンク３７にはいる。このようにして、素材１
が増厚されている間は、割り型１５に作用する圧
力は圧力調整弁３４の設定圧力値に保持される。

その後にラムの上昇が開始されると、ピストン
２８も上昇するので圧力は下降するが、この下降
は、通常は、各部が弾性変形しているのであまり
急にはならない。このような難点を克服するた
め、この発明によれば、金型の移動と連動して作
動される電磁弁３５が第８図に図示のように配置
されて、これによつて理想的なタイミングをとる
ことができるようになつている。このようにし
て、ラムの上昇時における割り型１５の理想的な
制御が達成できる。次にラムの上昇によるピスト
ン２８の復帰の際には、チエツク弁３３が開いて
タンク３７の中の油がシリンダ３０の中に引きあ
げられ、かくして次の作動の準備がなされる。

上述した増厚方法において、割り型１５は種類
の方式で加圧でき、ここではその１例を示したに
すぎない。例えばプレス機に附属するダイクツシ
ヨンを利用することも考えられるが、この加圧力
は以外に大きく、増厚部の幅が大きくなると、加
圧力が加工に要する圧力より大きくなる。この
点、油圧を利用したこの発明の上述の実施例によ
れば、設備損失およびエネルギ損失が非常に小さ
くなる。

次に、第６図の転造工程について説明する。転
造加工の各段階を示す第１１図および第１２図に
おいて、第１１図中心線Ｃより左側は転造開始前
の状態を示し、第１１図の中心線Ｃより右側は転
造完了時の状態を示す。さらにこれらの中間の状
態は第１２図に図示される。この転造工程の特色
は、第１図に示されるフランジ部分５とほぼ等し
い直径を有する素材１を使用し、それの直径を縮
小しながらＶ溝転造をなし、その際にＶ溝転造と
同時にＶ山の裏側に凹凸を形成することにある。

第１１図および第１２図について説明すると、
符号４０は回転台を示し、その中心には案内ピン
４１が設けられる。これに素材１の中心穴を差し
込んだのちに、上方に位置していた金型４２〜４
７を降下させると図示のような配置になる。金型
４２〜４７のうちの締付け型４２が素材１の底部
を先づ締付ける。この締付け型４２はホルダ４６
によつて回転軸４７に取り付けられ、加圧しなが
ら回転できるように構成されている。締付け型４
２の外側の移動型４３はわづかの量だけ下方へ移
動できるが、ゴムなどの弾性体４５で決められた
位置に保持される。この移動型４３の下方部分に
は凹凸溝４８が形成されている。移動型４３を包
囲する加圧型４４は、回転と共に加圧を達成でき
るようになつている。符号５０は加工ロールを示
し、これはばね５１によつて定位置に保持され
る。

第１１図の左側に図示される加工開始直前の状
態において、加工ロール５０はばね５１によつて
定位置に位置する。締付け型４２によつて素材１
はこの締付け型４２と回転台４０との間で締付け
られ、さらに加圧型４４が素材１の端部４９を強
圧している。このような状態で金型４２〜４７、
回転台４０〜４１および素材１の全体を回転させ
ると共に、ロール５０が回転中心へ向けて前進さ
せられる。そのようにすると、まず始めに、素材
１の直径が小さくなる。

第１２図は、Ｖ溝部の直径が縮小して、フラン
ジ部分ができた状態を示す。このときに、移動型
４３の外径に素材１の円筒部の内径が接して、素
材１のこの部分に凹凸ができ始める。そして、Ｖ
溝加工が進むに従つて凹凸を深くなる。

このときに、次のような問題が生ずる。実験の
結果によれば、第１２図の状態では、フランジ部
分（第１図に符号５で示された部分）は完全でな
く、従つて、完全なフランジ部分を形成するため
には、素材１の円筒部を更に下方へ移動させる必
要がある。この移動のための力は加圧型４４より
受けるが、素材１の円筒部の内径が移動型４３の
凹凸溝４８に食い込んでいるので、もしもこの移
動型４３が動かないとすると、加圧型４４の圧力
が下方に及ばず、従つて上下不均等なものができ
上つてしまう。

前段に記した問題を解決するため、この発明の
この実施例によれば、移動型４３が設けられ、第
１２図の状態からは、移動型４３が弾性体４５を
圧縮しながら下方への移動を開始する。この際
に、弾性体４５の圧力は加圧型４４の圧力より極
端に少ないので、この弾性体の圧力の影響は無視
できる。このようにして、移動型４３によれば、
加圧型４４の加圧力をできるだけ均等にして転造
加工を行なうことができる。しかしながら、Ｖ溝
の数が少ないときには、場合によつては移動型４
３を省略して締付け型４２だけとすることもあ
る。

加工完了の時点において、移動型４３は、第１
１図の右側に示すように、弾性体４５を圧縮しな
がら最下端に位置している。

第１１図の右側の状態からロール５０を加工前
の位置に戻し、上型群を引き上げると、素材１は
これについて行く。最終段階では、締付け型４２
および移動型４３に対して加圧型４４が素材を抜
く方向に動かされ、これによつて転造品が抜き取
られる。このようにして、円筒部の裏側に凹凸の
ある第１図および第２図に示されるようなポリＶ
プーリーが完成する。

Ｖ溝の加工精度を良くするためにＶ溝裏面の内
径部に凹凸を設けたというこの発明の要点につい
て、第１３図および第１４図を参照しながら、次
に説明する。

第１３図の説明図に示すように、芯金５０ａの
まわりに、パイプを切断した幅のせまい円筒素材
５１ａを嵌めて、これを回転し、これに平面ロー
ル５３ａを強圧して円筒素材を塑性変形させる作
業を考えて見る。この作業は明らかに圧延加工で
あつて、肉厚がうすくなつただけ円筒素材５１ａ
の直径は増大し、鎖線に示すような状態が得られ
る。上述した円筒素材の圧延加工と対比すると、
ポリＶプーリーの転造では、Ｖ溝外側のフランジ
部分で直径が拘束されているので、この付近にお
いては、圧延による直径の変化は生じない。しか
しながら、この拘束力が弱まつている中央部にお
いては、圧延の結果として直径が増大すること
は、当然の結果と考えられる。第１４図は、この
状態を示す。実線は計画された形状であるが、実
際にできるものは鎖線で示したようになる。

この発明に従つてＶ溝裏面の内径部に凹凸を設
けると、第１に、転造の際の圧延が抑制されて中
央部の直径増大が非常に少なくなると共に、角度
の精度も良くなる。更に、その凹凸を設けること
によつて、素材の増厚されている転造部分の精度
不足によるＶ山の不揃いが凹凸部に吸収されてし
まうという効果も得られる。実際の試験結果によ
れば、外径120mmの５条Ｖプーリーで、従来の凹
凸のないものは角度誤差が最大±3゜であつたが、
この発明に従つて凹凸を設けたものは角度誤差が
±1゜であつた。このことは、凹凸の効果が充分で
あることを意味する。この実験は比較実験である
ので、転造条件その他の改善で更に高精度のもの
を得ることができることは確実である。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この発明に関連するポリＶプーリー
を表わす、第２図の−線に沿う断面図、第２
図は、第１図に図示されるポリＶプーリーを表わ
す、１部を第１図の−線に沿う断面で示した
平面図、第３図、第４図、第５図および第６図
は、ポリＶプーリーの製造に適した各工程が完了
した時点での素材の形状を表わす、第１図に類似
した断面図、第７図は、増厚法の原理を示す図解
図、第８図は増厚用の金型を主として軸線を通る
垂直断面で示し、かつこれに関連する油圧装置を
線図的に略示した図、第９図は、割り型およびそ
の周辺を輪切りにした断面を、ハツチングを一部
省略して示す拡大図、第１０図は、第９図の１部
を拡大して、ハツチングなしで示す図、第１１図
および第１２図は、転造加工の各段階における転
造装置を、主として軸線を通る垂直断面で示した
図、第１３図および第１４図は、この発明に関連
するポリＶプーリーの利点を明らかにするための
説明図である。 図面において、１は底部付きの円筒、２はＶ
溝、４および５はフランジ部分、７および８は円
筒部の凹凸、１０は増厚部分、１２および１４は
円筒部を軸線方向に圧縮する型、１５は割り型、
２８および３０は油圧源、３２は油通路、３３，
３４および３５は制御機構、４０および４２は底
部を締付ける部材、４３は移動型、４４は円筒部
の端部を強圧する部材、４８は移動型の凹凸、５
０は加工ロールを示す。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 板金材料の絞り加工によつて、仕上りポリＶ
   プーリーの両端のフランジ部分とほぼ等しい外径
   を有する底部付きの円筒を形成し、その円筒部の
   中央部分を増厚するため、増厚すべき部分を除い
   て、円筒部の内外面および底部の表裏のすべてを
   拘束し、増厚すべき部分のまわりに、直径の変動
   が可能な割り型を配置し、円筒部を軸線方向に圧
   縮しながら材料を増厚すべき部分に移動させて、
   増厚部分を形成し、その際に、材料が曲つてバル
   ジ加工になることのないような程度の中心方向の
   圧力を割り型に印加し、次いで、増厚部分が形成
   された底部付きの円筒の前記底部を締付けると共
   に、円筒部の端部を軸線方向に強圧しながら、円
   筒を回転させ、前記軸線方向にばねによつて支持
   された加工ロールを、前記軸線方向に直交する方
   向に移動させることによつて円筒部に押し付け
   て、円筒部のこの部分の直径を縮小し、その最初
   には、円筒部の両端にフランジ部分を形成し、さ
   らに、円筒部の内径に対応する凹凸を備えた移動
   可能な移動型を円筒部の裏面内径に接触させるこ
   とによつて円筒部の裏面内径に凹凸を形成すると
   共に、加工ロールによつて円筒部の表面外径にＶ
   溝を加工する、各段階を包含することを特徴とす
   る板金製ポリＶプーリーの製造方法。 ２ 板金材料の絞り加工によつて底部付きの円筒
   を形成するための絞り加工手段、絞り加工手段に
   よつて形成された底部付きの円筒の円筒部の中央
   部分を増厚するための増厚手段、および、増厚手
   段によつて円筒部の中央部分を増厚された底部付
   き円筒の前記円筒部の裏面内径に凹凸を形成しか
   つ表面外径にＶ溝を形成して板金製ポリＶプーリ
   ーにするための転造手段、を有する板金製ポリＶ
   プーリーの製造装置において、前記増厚手段が、
   増厚すべき部分を除いて拘束された底部付きの円
   筒の前記の増厚すべき部分のまわりに配置される
   割り型、前記の底部付きの円筒の円筒部を軸線方
   向に圧縮するための移動可能な可動型、可動型を
   移動させるために移動できるプレスラム、プレス
   ラムの移動によつて作動されてポンプ作用をなす
   油圧源、油圧源から割り型のまわりまで達する油
   通路、および、油通路に配置される制御機構を備
   え、前記制御機構によつて、プレスラムが下死点
   まで移動するときに、油圧源からの油圧によつて
   高圧制御下に割り型に中心方向の圧力が印加さ
   れ、かつプレスラムが下死点に達したときまたは
   それ以前に、割り型に作用する圧力が開放される
   ことを特徴とする板金製ポリＶプーリーの製造装
   置。