JPH0221616Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本考案は、特に舶用機関や陸用機関の前端駆動
軸と補機後端駆動軸とをカツプリングし、これら
の駆動軸に発生する有害な捩り振動を抑制するド
ーナツ形カツプリング装置に関する。

〈従来の技術〉 例えば、船舶に搭載されるデイーゼル機関３１
は、第６図に示すように、後端駆動軸３２を可撓
継手３３を介して減速機３４に連結し、この減速
機３４にプロペラ３５を連結する一方、前端駆動
軸３６をドーナツ形カツプリング装置内蔵のエア
クラツチ３７を介して増速機３８に連結し、この
増速機３８に巻上機用等の油圧ポンプ３９や発電
機４０を連結している。

そして、前端駆動軸３６の捩り振動を抑制する
上記ドーナツ形カツプリング装置としては、従
来、第７図に示すようなものがある。このドーナ
ツ形カツプリング装置は、前端駆動軸に外嵌して
固定されるスリーブ管４１と、このスリーブ管に
外嵌してボルト４２で一体に固定される一対の内
輪４３，４３と、この内輪に内周が加硫接着され
る一対の環状のゴム体４４，４４と、このゴム体
の外周を内周の円錐面４５ａに加硫接着した一対
の外輪４５，４５と、この外輪に外嵌してボルト
４６で両外輪を軸方向に相寄せて固定した連結輪
４７と、この連結輪のフランジ４７ａにボルト４
８で連結され、被駆動軸に外嵌して固定されるフ
ランジ管４９からなる。上記一対の内輪４３，４
３の外周は対向する側へ向かつて突出する円錐面
４３ａ，４３ａを成す一方、一対の外輪４５，４
５の内周は対向する側へ向かつて拡がる円錐面４
５ａ，４５ａを成し、これらの間に加硫接着され
た一対のゴム体４４，４４は、ボルト４６の締め
付けによつて互いに相寄せられる外輪４５，４５
を介して軸方向に予圧縮されており、駆動軸の捩
り振動を抑制するとともに、破損することなく駆
動軸から被駆動軸へ大きなトルクを伝え得るよう
になつている。

〈考案が解決しようとする問題点〉 ところが、上記従来のドーナツ形カツプリング
装置は、内輪４３とゴム体４４が夫々一対即ち２
個であるため、次のような種々の欠点や問題を有
する。即ち、一対の内輪４３，４３をスリーブ管
４１に固定するために、スリーブ管にフランジ４
１ａを設け、このフランジ４１ａと内輪４３，４
３を軸方向に貫くボルト穴５０を螺設するととも
に、結合用のボルト４２が必要になる。したがつ
て、駆動側GD²（慣性能率、以下同じ）が大きく
なり、機関側ねじり振動に不都合を生じるととも
に、機械加工に手間がかかり、部品数も多くなつ
て、製造コストが上昇するほか、そのために必要
なスペースが装置の小形化の妨げになるなどの欠
点がある。また、一対の内輪４３，４３をボルト
４２で連結しているので、一体のものよりも強度
が低く、この内輪４３に加硫接着されるゴム体４
４の接着端部４４ａも、当然４個所となり、ここ
を起点とするゴム体破損の可能性も自づと高くな
るという欠点がある。さらに、内輪４３とゴム体
４４の加硫接着は、高温に保持された内輪４３に
接触するゴム体の部分から加硫反応が始まり、加
硫反応で硬化した部分に未硬化部のゴム体が流れ
込んで硬化部の内部応力を緩和しつつ径方向外方
へ進行するが、ゴム体が図示の如く完全に一対に
分離していると、未硬化部のゴム体が相互に流れ
込むことができず、加硫接着後のゴム体に内部応
力の不均衡が生じて、カツプリング装置の性能に
悪影響を及ぼすという問題がある。

そこで、本考案の目的は、構造の簡素化と部品
数の減少によつて製造コストを低減でき、無駄な
スペースをなくせるとともに、GD²を低減し、ゴ
ム体に内部応力の不均衡がなく、ゴム体の加硫接
着部からの破損を低減でき、クラツチの併設に適
したドーナツ形カツプリング装置を提供すること
である。

〈問題点を解決するための手段〉 上記目的を達成するため、本考案のドーナツ形
カツプリング装置は、単一の内輪と、この内輪の
外周に切れ目のない内周が全面に亙つて加硫接着
され、外周が環状溝で２つの円錐面に区切られて
いる環状のゴム体と、軸方向に対向して配置さ
れ、対向する側へ向かつて拡がり、かつ上記ゴム
体の各外周円錐面が夫々加硫接着される内周円錐
面を有する一対の外輪と、この一対の外輪を軸方
向に相寄せて固定して上記ゴム体を圧縮するとと
もに、上記外輪の外周との間に間隔をあけて外部
に連通する空気室が形成され、外周にクラツチシ
ユーが接離せしめられる連結部材とからなる。

〈作用〉 内輪および外輪とゴム体の加硫接着の際、環状
のゴム体の切れ目のない内周面は高温に保持され
た内輪に全面に亙つて接触し、環状のゴム体の２
つに区切られた外周面は同様の一対の外輪に夫々
接触し、これらの部分からゴム体の加硫反応が始
まる。この加硫反応で硬化した部分には、環状溝
底部を経て未硬化のゴム体が遮られることなく自
在に流れ込んで、硬化部の内部応力を十分に緩和
し、加硫反応はゴム体の径方向中央部に向かつて
両側から進行し、終了する。そのため、加硫接着
後のゴム体に内部応力の不均衡が生じず、したが
つてカツプリング装置の性能が悪化することもな
い。また、内輪が一体で分割されていないので当
然に連結用ボルトが不要なうえ、内輪の側部を直
接駆動軸端に固定でき、構造の簡単化と部品数の
減少が図られるとともに、GD²が小さくなり内輪
とゴム体の接着端部が２個所に減つて接着部破損
の虞れも半減する。また、一対の外輪を軸方向に
相寄せて固定する連結部材と外輪の外周の間には
空気室があるので、連結部材の外周にクラツチシ
ユーが圧接して発熱しても、発熱が直接外輪やゴ
ム体に伝わらず、空気室から外部へ放散され、ゴ
ム体が高熱で劣化することがない。

〈実施例〉 以下、本考案を図示の実施例により詳細に説明
する。

第１図はドーナツ形カツプリング装置の一実施
例の1/2断面図であり、１は駆動軸端のフランジ、
２はこのフランジ１に駆動軸Ｘと同軸をなしてボ
ルト３で固定した内輪、４はこの内輪２の外周に
一つに連なつた内周面４ａが加硫接着され、環状
溝５で外周が２つの円錐面４ｂ，４ｂに区切られ
た環状のゴム体、６，６は互いに軸方向に対向す
る端面６ａ，６ａへ向かつて拡がる内周の円錐面
６ｂ，６ｂに上記ゴム体４の円錐面４ｂ，４ｂが
加硫接着された一対の外輪、７はこの一対の外輪
６，６に外嵌し、一端に形成したフランジ７ａと
他端にボルト８で固定される環状フランジ９で外
輪６，６を軸方向に相寄せて挾み込み、これらを
ボルト１０，１１で固定する連結輪である。

また、１２は上記連結輪７に間隔をあけて回転
自在に外嵌するエアクラツチリム、１３はこのエ
アクラツチリム１２の内周に取り付けられ、エア
の給排で膨縮するチユーブ、１４はこのチユーブ
１３の内周に固定され、上記連結輪７の外周に接
離するエアクラツチシユー、１５は上記エアクラ
ツチリム１２に図示しないボルトで固定されると
ともに、被駆動軸X′に同軸をなして連結される
フランジである。

上記一対の外輪６，６の内周の円錐面６ｂ，６
ｂは左右対称をなし、内輪２の外周も軸方向中央
部へ向かつて突出する左右対称な円錐面２ａ，２
ａになつており、ゴム体４の外周の環状溝５は、
連結輪７へ装着する前には第２図に示すように略
半円形の断面を呈する。そして、一方の外輪６の
端面を連結輪のフランジ７ａに当接させてボルト
１０で固定し、他方の外輪６の端面を環状フラン
ジ９にボルト１１で固定して、両外輪６，６を介
してゴム体４を軸方向に圧縮した状態で環状フラ
ンジ９をボルト８で連結輪７に固定している。こ
れによつて、環状溝５は第１図の如く外周に開口
する細長い楕円形断面となり、ゴム体４は５％程
度予圧縮されて、破損することなく内輪２から外
輪６へ大きなトルクを伝え得るようになる。上記
連結輪７の内周には、エアクラツチシユー１４と
の摩擦熱がゴム体４へ伝わらないように環状溝を
なす空気室１６が設けられ、側面には第３図に示
すように空気室１６に連通する多数の空気孔１７
が設けられている。

上記構成のドーナツ形カツプリング装置の利点
は、特にその製造時に存する。即ち、内輪２およ
び外輪６とゴム体４の加硫接着の際、環状のゴム
体４の一つに連なつた内周面４ａは高温に保持さ
れた内輪２に接触し、環状溝５で２つに区切られ
た外周の円錐面４ｂ，４ｂは高温に保持された外
輪６，６に夫々接触し、これらの部分からゴム体
の加硫反応が始まる。この加硫反応で硬化した部
分には、環状溝５の底部４ｃを経て未硬化のゴム
体が遮られることなく自在に流れ込んで（第２図
中矢印参照）、硬化部の内部応力を十分に緩和し、
加硫反応はゴム体の径方向中央部に向かつて進行
し、終了する。そのため、加硫接着後のゴム体４
に内部応力の不均衡が生じず、したがつてカツプ
リング装置の性能が悪化することもない。こうし
て製造されたドーナツ形カツプリング装置は、内
輪２とゴム体４の接着端部が従来の４個所から２
個所に減るので、接着端部からゴム体の破損が生
じる可能性も半減する。また、内輪２が一体で分
割されていないので、強度的に優れ、従来の如き
連結用ボルトが不要になるとともに、内輪２の側
部２ｂをボルト３で直接駆動軸端のフランジ１に
固定しているので、GD²の減少、部品数の減少、
構造の簡素化およびスペースの有効利用によつて
製造コストが低減できる。また、連結輪７の外周
にエアクラツチシユー１４が圧接して摩擦熱が発
生しても、この発熱は空気室１６から多数の空気
孔１７を経て外部へ放散され、外輪６やゴム体４
に直接伝わらず、ゴム体４が高熱で劣化すること
がない。

第４図は小型のドーナツ形カツプリング装置の
断面図である。この装置では、テーパ状に形成し
た駆動軸１８の先端を内輪２の端面中央のテーパ
穴１９に挿入し、この駆動軸先端に、テーパ穴底
に接合した取り付け板２０側からボルト２１，２
１を螺着して、駆動軸１８と内輪２を固定してい
る。

第５図はドーナツ形カツプリング装置の変形例
の断面図であり、この変形例ではゴム体１の径方
向中央にこのゴム体を軸方向に貫く一対の環状の
中間接着板２２を設けている。この中間接着板２
２によつて、製造時には、これを高温に保持して
ゴム体の加硫反応を促進し、ゴム体の性能改善を
図ることができる一方、使用時には、エアクラツ
チが脱で外輪６や連結輪７が空転するとき、これ
らの振動を抑制することができる。

なお、上記実施例のゴム体はゴムに限らず一般
のエラストマーであつてもよい。また、上記実施
例では駆動軸を内輪２に、被駆動軸を連結輪７側
に夫々連結したが、これを逆に連結してもよく、
駆動軸は後端駆動軸であつてもよいことは言うま
でもない。

〈考案の効果〉 以上の説明で明らかなように、本考案のドーナ
ツ形カツプリング装置は、単一の内輪と、この内
輪の外周に切れ目のない内周が全面に亙つて加硫
接着され、外周が環状溝で２つの円錐面に区切ら
れている環状のゴム体と、軸方向に対向して配置
され、対向する側へ向かつて拡がり、かつ上記ゴ
ム体の各外周円錐面が夫々加硫接着される内周円
錐面を有する一対の外輪と、この一対の外輪を軸
方向に相寄せて固定して上記ゴム体を圧縮すると
ともに、上記外輪の外周との間に間隔をあけて外
部に連通する空気室が形成され、外周にクラツチ
シユーが接離せしめられる連結部材とからなるの
で、製造時の内輪および外輪とゴム体の加硫接着
に際しては、加硫反応で硬化した部分に、一つに
連なつた部分を経て未硬化のゴム体が自在に流れ
込んで、硬化部の内部応力を緩和し、内部応力の
不均衡をなくしてゴム体の性能を改善する一方、
内輪とゴム体との接着端部が半減するので使用時
の接着部破損の虞れも低減し、さらに内輪が一対
なので連結用ボルトが不要でかつ強度的にも優
れ、GD²が減少し、構造が簡素化できて製造コス
トを低減でき、加えて連結部材の外周のクラツチ
シユーによる発熱が外部に放散されて、ゴム体に
直接伝わらず、ゴム体の劣化が防止されるなどの
種々の顕著な効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案のドーナツ形カツプリング装置
の一実施例の断面図、第２図は装着前のゴム体を
示す断面図、第３図は第１図の矢視図、第４図
は本考案の小型ドーナツ形カツプリング装置の断
面図、第５図は本考案の変形例の断面図、第６図
はドーナツ形カツプリング装置を用いたデイーゼ
ル機関の説明図、第７図は従来のドーナツ形カツ
プリング装置の断面図である。 １……駆動軸端のフランジ、２……内輪、４…
…ゴム体、４ａ……内周面、４ｂ，４ｂ……円錐
面、５……環状溝、６，６……外輪、６ｂ，６ｂ
……円錐面、７……連結輪、７ａ……フランジ、
９……環状フランジ、１５……フランジ、１６…
…空気室、１７……空気孔、Ｘ……駆動軸、
X′……被駆動軸。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 単一の内輪と、この内輪の外周に切れ目のない
   内周が全面に亙つて加硫接着され、外周が環状溝
   で２つの円錐面に区切られている環状のゴム体
   と、軸方向に対向して配置され、対向する側へ向
   かつて拡がり、かつ上記ゴム体の各外周円錐面が
   夫々加硫接着される内周円錐面を有する一対の外
   輪と、この一対の外輪を軸方向に相寄せて固定し
   て上記ゴム体を圧縮するとともに、上記外輪の外
   周との間に間隔をあけて外部に連通する空気室が
   形成され、外周にクラツチシユーが接離せしめら
   れる連結部材とからなるドーナツ形カツプリング
   装置。