JPH0128632B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は、有機酸を共存する重金属含有廃水を
処理する方法に関する。 鉄、銅、カドミウム、ニツケル等の重金属を含
有する廃水の最も一般的な方法は、廃水にアルカ
リを添加し、重金属を水酸化物として沈殿分離す
るアルカリ沈殿法である。しかし、廃水に有機
酸、特にオキシカルボン酸（クエン酸、酒石酸、
グルコン酸等）が共存する場合にはアルカリ沈殿
法では処理が困難であつた。例えば、 クエン酸は 酒石酸は

【式】 （式中Ｍは重金属を示す。） の如き錯体を形成すると言われ、これらの錯体は
安定なものであるため、上記方法では沈殿分離し
えず、液中に残留する。また有機酸は鉄イオンと
も安定な錯体を形成するため、鉄イオンが錯体と
なつて残存し、さらに鉄錯体が分散剤として作用
し他の重金属の沈殿を妨害することが明らかにな
つた。重金属廃水の処理に最も有効と考えられて
いる硫化物法も、過剰の硫化ナトリウムを沈殿さ
せるに添加した鉄塩が上述した分散剤としての作
用を示すことになるため、適用が困難であつた。 本発明の目的は、有機酸を共存する重金属含有
廃水に対し、鉄イオンの存在の有無にかかわらず
重金属を十分に沈殿処理でき、従来のアルカリ沈
殿法、鉄塩共沈法及び硫化物法のいずれの方法に
も適用できる重金属含有廃水の処理方法を提供す
ることにある。 本発明は重金属と有機酸を含む廃水に、水溶性
リン酸化合物と水溶性カルシウム化合物とを添加
するか、又は水溶性リン酸化合物と水溶性カルシ
ウム化合物との反応直後の生成物を添加し、PH７
〜12に調整して沈殿処理することを特徴とする重
金属含有廃水の処理方法である。 水溶性カルシウム化合物と水溶性リン酸化合物
とはヒドロキシルアパタイトCa₅（PO₄）₃OHに代
表される沈殿を生成するが、廃水中に重金属が存
在するとCaxMy（PO₄）zL_(2x+2y-3z)に代表される
複塩を形成して沈殿すると推定される。式中、Ｍ
は鉄、銅、カドミウム、ニツケル等の重金属であ
り、ＬはOH^-、Cl^-、SO₄ ^2-等の陰イオンであり、
ｘ、ｙ、ｚはＭ及びＬのイオン価数によつて決定
される整数を示す。廃水中に共在する有機酸はこ
の沈殿物組成にほとんど関与せず、一部が吸着あ
るいは包含されるのみである。 本発明で使用する水溶性カルシウム化合物とし
ては、塩化カルシウム、消石灰、炭酸カルシウム
等が挙げられ、水溶性リン酸化合物としてはリン
酸あるいはナトリウム、カリウム等の各種リン酸
塩が挙げられる。リン酸あるいはリン酸塩を含む
廃水、例えばアルカリ脱脂液、リン酸塩を主体と
するメツキ浴廃液でもよい。これらの使用量は廃
水中の重金属の種類等によつて適宜決定される
が、通常、カルシウム化合物とリン酸化合物の比
はCa／PO₄（モル比）で１以上、重金属とリン酸
化合物の比はＭ／PO₄（モル比）で３以下で使用
される。 リン酸化合物とカルシウム化合物は、予め廃水
中に添加すればよいが、リン酸化合物とカルシウ
ム化合物を反応させたヒドロキシアパタイトを添
加してもよい。ただし、予め反応させたヒドロキ
シルアパタイトは時間と共に活性がなくなるた
め、反応後１時間以内のものを使用する。この場
合リン酸化合物とカルシウム化合物とを反応槽で
反応させた後、反応生成物を含む懸濁水を使用で
きる。 廃水にリン酸化合物とカルシウム化合物を添加
した後は、PH７〜12、好ましくはPH7.5〜９に調
整し適宜撹拌を行つて反応せしめ、生成した沈殿
物を公知の沈降分離、ろ過分離、遠心分離手段に
よつて分離除去する。沈殿処理に際しては単にPH
を中性ないしアルカリ性にして重金属を水酸化物
として沈殿させることができるが、従来知られて
いるような鉄塩共沈法、硫化物法を使用すること
もできる。 本発明によれば、水溶性リン酸化合物と水溶性
カルシウム化合物との併用によつて重金属と有機
酸との錯体形成が抑止され、重金属が選択的に沈
殿物として生成する。従つて、有機酸を共存する
重金属含有廃水に対しアルカリ沈殿法（PH中性な
いしアルカリ性）、鉄塩共沈法、硫化物法の適用
が可能となり効率よく重金属を除去できる。 従来法に係る参考例と本発明に係る実施例を示
す。 参考例 １ （アルカリ沈殿法、鉄塩共沈法） Cr³⁺、Cd²⁺、Ni²⁺、Zn²⁺、Cu²⁺、Pb²⁺をそれ
ぞれ20ppm含む溶液に、有機酸（シユウ酸、酒石
酸、グルコン酸）を1000ppm添加した。さらに鉄
塩として硫酸第一鉄又は塩化第二鉄を添加して水
酸化ナトリウムでPH7.5又はPH11に調整し30分間
反応させた。反応液を濾紙No.5Cを用いて濾過し、
濾液の分析を行い結果を表―１に示した。 いずれの場合も全ての重金属を十分に除去しえ
ておらず、鉄塩を添加しても共沈効果が認められ
ず、むしろ鉄塩の共存によつて沈殿効果は悪化
し、鉄塩は錯体となつて残留した。

【表】

【表】 参考例 ２ （硫化物法） 参考例１と同じ重金属濃度、有機酸濃度の試料
液に、塩化第二鉄160ppm（鉄として）と硫化ナト
リウム70ppm（イオウとして）を、水酸化ナトリ
ウムと硫酸でPH7.5に保ちながら添加して30分間
反応させた。反応液を濾紙No.5Cを用いて濾過し、
濾液の分析を行い結果を表―２に示した。比較の
ため有機酸を含まない場合（No.４）についても処
理を行つた。 表―２に示すように、処理可能な重金属もある
が、有機酸が存在する場合（No.１〜No.３）はいず
れも鉄錯体が残留し硫化物法の適用は困難であつ
た。

【表】 実施例 １ クエン酸1000ppm、塩化第二鉄100ppm（鉄とし
て）を含む試料液に、塩化カルシウム又はリン酸
ナトリウム或いは両者を添加して水酸化ナトリウ
ムによりPH８に調整し30分間反応させた。反応液
を濾紙No.5Cを用いて濾過し、濾液の分析を行い
結果を表―３に示した。 表―３に示すように、カルシウム化合物とリン
酸化合物が共存すると鉄イオンは処理可能となつ
た。またCODの低下は小さく、クエン酸はほと
んど沈殿しないことが分る。

【表】 実施例 ２ Cd²⁺、Ni²⁺、Zn²⁺、Cu²⁺、Pb²⁺、Fe³⁺をそれ
ぞれ20ppm、クエン酸を1000ppm含む溶液に塩化
カルシウムとリン酸ナトリウムを添加し、水酸化
ナトリウムでPH８に調整した。30分間反応後、反
応液を濾紙No.5Cを用いて濾過し、濾液の分析を
行い結果を表―４に示した。 表―４に示すように、カルシウム化合物とリン
酸化合物が共存しない場合（No.１）は処理困難で
あつたが、共存する場合（No.２〜No.５）では重金
属は処理可能であつた。特にNo.４及びNo.５に示す
ようにアルカリ性にするとNi、Cuも十分に処理
できた。

【表】 実施例 ３ 参考例２で述べた方法でカルシウム化合物とリ
ン酸化合物の共存試料液の硫化物処理を行つた。
重金属濃度と有機酸濃度も参考例２と同じであ
る。結果は表―５に示すとおりである。 表―５に示すように、カルシウム化合物とリン
酸化合物が共存すれば硫化物法の適用は十分可能
であることが明らかとなつた。

【表】 実施例 ４ クエン酸500ppm、塩化第二鉄100ppm（Fe³⁺と
して）、Zn²⁺とCd²⁺をそれぞれ20ppm含む溶液を
水酸化ナトリウムでPH８に調整し、これを被処理
液とした。 別容器で塩化カルシウム10ｇ/（Caとして）
とリン酸ナトリウム４ｇ/（Ｐとして）を混合
し、PH９〜10で０〜２時間反応させたリン酸カル
シウムを準備した。上記被処理液にリン酸カルシ
ウムを500ppm（Caとして、Ｐとしては200ppm）
添加してPH８で30分間反応させた。反応液を濾紙
No.5Cを用いて濾過し、濾液の分析を行い結果を
表―６に示した。 表―６に示すように熟成の進んだリン酸カルシ
ウムの反応性は乏しいことが明らかである。

【表】

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 重金属と有機酸を含む廃水に、水溶性リン酸
   化合物と水溶性カルシウム化合物とを添加する
   か、又は水溶性リン酸化合物と水溶性カルシウム
   化合物との反応直後の生成物を添加し、PH７〜12
   に調整して沈殿処理することを特徴とする重金属
   含有廃水の処理方法。