JP7533439B2 - 硬化性樹脂組成物及び電子部品装置 - Google Patents

硬化性樹脂組成物及び電子部品装置 Download PDF

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Description

本発明は、硬化性樹脂組成物及び電子部品装置に関する。
電子機器の小型化、軽量化、高性能化等に伴い、実装の高密度化が進んでいる。これにより、電子部品装置の主流は従来のピン挿入型のパッケージから、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Intergration)等の表面実装型のパッケージへと変化しつつある。さらに、SiP(System in a Package)、一括封止など、封止技術の多様化が進展している(例えば、特許文献1参照)。
特開2018-107416号公報
封止技術の多様化に伴い、チップに搭載される部品も多様化しつつあり、部品の種類(センサー、インダクター等)によっては封止材を硬化させる際の熱に影響を受ける場合が想定される。このため、封止材を硬化させる際の加熱温度の低減が望まれている。
本発明は上記事情に鑑み、低温での硬化性に優れる硬化性樹脂組成物、及びこれを用いて得られる電子部品装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記エポキシ樹脂は電子供与基が結合していない芳香環に結合したエポキシ含有基を有するエポキシ樹脂を含み、前記硬化剤は電子供与基が結合している芳香環に結合した水酸基を有する硬化剤を含む、硬化性樹脂組成物。
<2> 前記電子供与基は炭素数1~6のアルキル基、アミノ基及びメトキシ基からなる群より選択される少なくとも1つである、<1>に記載の硬化性樹脂組成物。
<3> 前記電子供与基が結合していない芳香環に結合したエポキシ含有基を有するエポキシ樹脂はビフェニル構造を有する、<1>又は<2>に記載の硬化性樹脂組成物。
<4> 前記電子供与基が結合している芳香環に結合した水酸基を有する硬化剤は前記電子供与基が結合したフェノール化合物をノボラック化して得られる構造を有する、<1>~<3>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
<5> 前記電子供与基が結合している芳香環に結合した水酸基を有する硬化剤は前記電子供与基がオルト位に結合したフェノール化合物をノボラック化して得られる構造を有する、<1>~<4>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
<6> イミダゾール化合物をさらに含む、<1>~<5>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
<7> 電子部品装置の封止材として用いるための、<1>~<6>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
<8> 素子と、前記素子を封止する<1>~<7>のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。
本発明によれば、低温での硬化性に優れる硬化性樹脂組成物、及びこれを用いて得られる電子部品装置が提供される。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
<硬化性樹脂組成物>
本開示の硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、前記エポキシ樹脂は電子供与基が結合していない芳香環に結合したエポキシ含有基を有するエポキシ樹脂(以下、特定エポキシ樹脂ともいう)を含み、前記硬化剤は電子供与基が結合している芳香環に結合した水酸基を有する硬化剤(以下、特定硬化剤ともいう)を含む、硬化性樹脂組成物である。
上記構成を有する硬化性樹脂組成物は、低温(例えば、150℃以下)での硬化性に優れている。その理由は必ずしも明らかではないが、電子供与基が結合していない芳香環に結合しているエポキシ含有基と、電子供与基が結合した芳香環に結合している水酸基とを反応させることでエポキシ樹脂と硬化剤の反応性が向上し、低温での硬化が促進されることが考えられる。
本開示の硬化性樹脂組成物は、従来の硬化性樹脂組成物よりも低温での硬化性に優れているため、例えば、耐熱性に劣る部品を含む電子部品装置の封止材として有用である。また、硬化時の熱収縮が抑えられて基板の反りが低減する効果が期待できる。
本開示において「電子供与基」とは、これが結合している芳香環の活性を高める性質を有する置換基を意味し、その種類は特に制限されない。例えば、炭素数1~6のアルキル基、アミノ基、メトキシ基等が挙げられる。
本開示において、エポキシ含有基又は水酸基は「電子供与基」に含まないものとする。また、エポキシ樹脂又は硬化剤が重合体である場合、主鎖に該当する構造は置換基には含まないものとする。
本開示において「エポキシ含有基」とは、エポキシ基(エチレンオキシド構造)を含む置換基を意味する。具体的には、芳香環に直接結合しているエポキシ基、及び芳香環に炭素数1~3の炭化水素基(好ましくはメチレン基)、炭素数1~3の炭化水素オキシ基(好ましくはメチレンオキシ基)又は炭素数1~3の炭化水素アミノ基を介して結合しているエポキシ基が挙げられる。
本開示において「エポキシ含有基が結合している芳香環」としては、ベンゼン環及び2つ以上のベンゼン環の縮合環(ナフタレン等)が挙げられる。2つ以上のベンゼン環が単結合等で連結した構造(ビフェニル構造等)の場合、エポキシ含有基が直接結合しているベンゼン環をエポキシ含有基が結合している芳香環とする。
(エポキシ樹脂)
硬化性樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は、特定エポキシ樹脂を含むものであれば特に制限されず、硬化性樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
特定エポキシ樹脂は、エポキシ含有基として電子供与基が結合していない芳香環に結合したエポキシ含有基のみを有するものであっても、電子供与基が結合していない芳香環に結合したエポキシ含有基と、電子供与基が結合している芳香環に結合したエポキシ含有基とを有するものであってもよい。
低温での硬化性の観点からは、エポキシ樹脂に占める特定エポキシ樹脂の割合は、エポキシ樹脂全体の20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。エポキシ樹脂に占める特定エポキシ樹脂の割合の上限は特に制限されない。硬化物の特性のバランスの観点からは、エポキシ樹脂に占める特定エポキシ樹脂の割合は、エポキシ樹脂全体の90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。
低温での反応性の観点からは、特定エポキシ樹脂は、2つの芳香環が単結合又は2価の連結基で結合した構造を有することが好ましく、2つの芳香環が単結合又は2価の連結基で結合した構造(ビフェニル構造)を有することがより好ましく、ビフェニル構造として下記一般式(A)で表される構造を有することがさらに好ましい。ビフェニル構造を有する特定エポキシ樹脂は、ビフェニル構造以外の構造(トリフェニルメタン構造等)をさらに有していてもよい。

一般式(A)において、*は隣接する原子との結合位置を表し、*の少なくとも一方はエポキシ含有基との結合位置を表す。
エポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物とを酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはシリコーン樹脂のエポキシ化物、アクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
耐リフロー性と流動性のバランスの観点から、エポキシ樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂及びアラルキル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれるエポキシ樹脂が好ましい。
ビフェニル型エポキシ樹脂の具体例としては、下記一般式(II)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(II)で表されるエポキシ樹脂の中でもRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基であり、それ以外のRが水素原子であるYX-4000H(三菱ケミカル株式会社、商品名)、全てのRが水素原子である4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ビフェニル、全てのRが水素原子の場合及びRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基でそれ以外のRが水素原子である場合の混合品であるYL-6121H(三菱ケミカル株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 0007533439000002
式(II)中、Rは水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数4~18の芳香族基(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは水素原子)を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
スチルベン型エポキシ樹脂の具体例としては、下記一般式(III)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。

式(III)中、R及びR10は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは水素原子)を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂の具体例としては、下記一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R11の全てが水素原子であり、R12のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基であり、それ以外のR12が水素原子であるYSLV-80XY(新日鉄住金化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 0007533439000004

式(IV)中、R11は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基、R12は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは水素原子)を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
硫黄原子含有型エポキシ樹脂の具体例としては、下記一般式(V)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(V)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R13のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’位がt-ブチル基であり、6,6’位がメチル基であり、それ以外のR13が水素原子であるYSLV-120TE(新日鉄住金化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 0007533439000005

式(V)中、R13は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは水素原子)を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
ノボラック型エポキシ樹脂の具体例としては、下記一般式(VI)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(VI)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R14の全てが水素原子であり、R15がメチル基であり、i=1であるESCN-190、ESCN-195(住友化学株式会社、商品名)、R14の全てが水素原子であり、i=0であるN-770、N-775(DIC株式会社、商品名)、R14の全てが水素原子であり、i=0である部分とi=1であり、R15が-CH(CH)-Phである部分を有するスチレン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂であるYDAN-1000-10C(新日鉄住金化学株式会社、商品名)、R14の全てが水素原子であり、i=1であり、R15がメチル基である部分とi=2であり、R15のうち一つがメチル基で一つがベンジル基である部分を有するベンジル基変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であるHP-5600(DIC株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。

式(VI)中、R14は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基(好ましくは水素原子)を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R15は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは0)を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の具体例としては、下記一般式(VII)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(VII)で表されるエポキシ樹脂の中でも、i=0であるHP-7200(DIC株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。

式(VII)中、R16は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは0)を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂の具体例としては、下記一般式(VIII)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(VIII)で表されるエポキシ樹脂の中でも、iが0であり、kが0である1032H60(三菱ケミカル株式会社、商品名)、EPPN-502H(日本化薬株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。

式(VIII)中、R17及びR18は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは0)、kは各々独立に0~4の整数(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは0)を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
ナフトール化合物及びフェノール化合物と、アルデヒド化合物とから得られるノボラック樹脂をエポキシ化した共重合型エポキシ樹脂の具体例としては、下記一般式(IX)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(IX)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R21がメチル基でiが1であり、jが0であり、kが0であるNC-7300(日本化薬株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。

式(IX)中、R19~R21は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは0)、jは各々独立に0~2の整数(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは0)、kは各々独立に0~4の整数(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは0)を示す。l及びmはそれぞれ平均値であり、0~10の数であり、(l+m)は0~10の数を示す。式(IX)で表されるエポキシ樹脂の末端は、下記式(IX-1)又は(IX-2)のいずれか一方である。式(IX-1)及び(IX-2)において、R19~R21は、i、j及びkの定義は式(IX)におけるR19~R21は、i、j及びkの定義と同じである。nは1(メチレン基を介して結合する場合)又は0(メチレン基を介して結合しない場合)である。

上記一般式(IX)で表されるエポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体等が挙げられる。これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アラルキル型エポキシ樹脂の具体例としては、下記一般式(X)及び(XI)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(X)で表されるエポキシ樹脂の中でも、iが0であり、R38が水素原子であるNC-3000L(日本化薬株式会社、商品名)、iが0であり、R38が水素原子であるエポキシ樹脂と一般式(II)の全てのRが水素原子であるエポキシ樹脂を質量比80:20で混合したCER-3000(日本化薬株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。また、下記一般式(XI)で表されるエポキシ樹脂の中でも、iが0であり、jが0であり、kが0であるESN-175(新日鉄住金化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。

式(X)及び(XI)において、R38は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R37、R39~R41は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは0)であり、jはそれぞれ独立に0~2の整数(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは0)であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは0)であり、lはそれぞれ独立に0~6の整数(特定エポキシ樹脂の場合、好ましくは0)を示す。nは平均値であり、それぞれ独立に0~10の数である。
上記一般式(II)~(XI)中のR~R21及びR37~R41について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8~88個のRの全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR~R21及びR37~R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R~R21及びR37~R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、RとR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
また、一般式(III)~(XI)における炭素数1~18の有機基はアルキル基又はアリール基であることが好ましい。
上記一般式(II)~(XI)中のnは、平均値であり、それぞれ独立に0~10の範囲であることが好ましい。nが10以下であると樹脂成分の溶融粘度が高くなりすぎず、硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度が低下し、充填不良、ボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形等の発生が抑制される傾向にある。nは0~4の範囲に設定されることがより好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性及び電気的信頼等の各種特性バランスの観点からは、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
エポキシ樹脂が固体である場合、その軟化点又は融点は特に制限されない。硬化性樹脂組成物の調製の際の取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることが好ましい。
エポキシ樹脂の融点は示差走査熱量測定(DSC)で測定される値とし、エポキシ樹脂の軟化点はJIS K 7234:1986に準じた方法(環球法)で測定される値とする。
硬化性樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有率は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から0.5質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~30質量%であることがより好ましい。
(硬化剤)
硬化性樹脂組成物に含まれる硬化剤は、特定硬化剤を含むものであれば特に制限されず、硬化性樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
特定硬化剤は、水酸基として電子供与基が結合している芳香環に結合した水酸基のみを有するものであっても、電子供与基が結合している芳香環に結合した水酸基と、電子供与基が結合していない芳香環に結合した水酸基とを有するものであってもよい。
低温での硬化性の観点からは、硬化剤に占める特定硬化剤の割合は、硬化剤全体の20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。硬化剤に占める特定硬化剤脂の割合の上限は特に制限されない。硬化物の特性のバランスの観点からは、硬化剤に占める特定硬化剤の割合は、硬化剤全体の90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよい。
低温速硬化性の観点からは、特定硬化剤は電子供与基が結合したフェノール化合物をノボラック化して得られる構造を有することが好ましく、電子供与基がオルト位に結合したフェノール化合物をノボラック化して得られる構造を有することが好ましい。電子供与基がオルト位に結合したフェノール化合物をノボラック化して得られる構造としては、下記一般式(B)で表される構造が挙げられる。

一般式(B)において、Rはそれぞれ独立に電子供与基を表し、nは0~10の整数を示す。一般式(B)において、Rはそれぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のアルコキシ基であることが好ましく、メチル基である(オルトクレゾールノボラック構造である)ことがより好ましい。
硬化剤として具体的には、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化性及びポットライフの両立の観点からはフェノール硬化剤、アミン硬化剤及び酸無水物硬化剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、電気的信頼性の観点からはフェノール硬化剤がより好ましい。
フェノール硬化剤としては、例えば、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂及び多価フェノール化合物が挙げられる。具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等とから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンとから共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール硬化剤の中でも、耐リフロー性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂、及びノボラック型フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。低温速硬化性の観点からは、ノボラック型フェノール樹脂であることがより好ましい。
アラルキル型フェノール樹脂の具体例としては、下記一般式(XII)~(XIV)で表されるフェノール樹脂が挙げられる。
Figure 0007533439000013

式(XII)~(XIV)において、R23は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R22、R24、R25及びR28は炭素数1~18の1価の有機基(特定硬化剤の場合、好ましくは電子供与基)を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R26及びR27は水酸基又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、jはそれぞれ独立に0~2の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数であり、pはそれぞれ独立に0~4の整数である。nは平均値であり、それぞれ独立に0~10の数である。
上記一般式(XII)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、R23が全て水素原子であるMEH-7851(明和化成株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂の具体例としては、下記一般式(XV)で表されるフェノール樹脂が挙げられる。

式(XV)中、R29は炭素数1~18の1価の有機基(特定硬化剤の場合、好ましくは電子供与基)を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
トリフェニルメタン型フェノール樹脂の具体例としては、下記一般式(XVI)で表されるフェノール樹脂が挙げられる。

式(XVI)中、R30及びR31は炭素数1~18の1価の有機基(特定硬化剤の場合、好ましくは電子供与基)を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数である。nは平均値であり、0~10の数である。
ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂の具体例としては、下記一般式(XVII)で表されるフェノール樹脂が挙げられる。

式(XVII)中、R32~R34は炭素数1~18の1価の有機基(特定硬化剤の場合、R32及びR34は好ましくは電子供与基)を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数であり、qはそれぞれ独立に0~5の整数である。l及びmはそれぞれ平均値であり、それぞれ独立に0~11の数である。ただし、lとmの合計は1~11の数である。
ノボラック型フェノール樹脂の具体例としては、下記一般式(XVIII)で表されるフェノール樹脂が挙げられる。

式(XVIII)中、R35は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基(好ましくは水素原子)を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R36は炭素数1~18の1価の有機基(特定硬化剤の場合、好ましくは電子供与基)を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
上記一般式(XII)~(XVIII)におけるR22~R36について記載した「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」は、例えば、式(XII)中のi個のR22の全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。他のR23~R36についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。また、R22~R36は、それぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R22及びR23の全てについて同一でも異なっていてもよく、R30及びR31の全てについて同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(XII)~(XVIII)におけるnは、0~10の範囲であることが好ましい。10以下であると樹脂成分の溶融粘度が高くなりすぎず、硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度が低くなる傾向にある。1分子中の平均nは、0~4の範囲に設定されることが好ましい。
硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
硬化剤が固体である場合、その軟化点又は融点は、特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、封止用樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
硬化剤の融点又は軟化点は、エポキシ樹脂の融点又は軟化点と同様にして測定される値とする。
エポキシ樹脂と硬化剤との当量比、すなわちエポキシ樹脂中の官能基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中の官能基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える関連からは、0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性と耐リフロー性の観点からは、0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
(硬化促進剤)
硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザ-ビシクロ(4,3,0)ノネン、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等のシクロアミジン化合物、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物、及び2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジルー2-フェニルイミダゾール、1-ベンジルー2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2'-メチルイミダゾリル-(1'))-エチル-s-トリアジン、2-ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリアルキルホスフィン(トリブチルホスフィン等)、ジアルキルアリールホスフィン(ジメチルフェニルホスフィン等)、アルキルジアリールホスフィン(メチルジフェニルホスフィン等)、トリフェニルホスフィン、アルキル基置換トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン化合物、及びこれらの有機リン化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、並びにこれらの誘導体が挙げられる。さらには、2-エチル-4-メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N-メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のフェニルボロン塩が挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂と硬化剤との低温での反応を促進する観点からは、硬化性樹脂組成物はイミダゾール化合物を含むことが好ましい。
硬化性樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その量は、樹脂成分(エポキシ樹脂及び硬化剤の合計)100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な成形品が得られる傾向にある。
(無機充填材)
硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含んでもよい。特に、硬化性樹脂組成物を半導体パッケージの封止材として用いる場合には、無機充填材を含むことが好ましい。
無機充填材の種類は、特に制限されない。具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが好ましく、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。無機充填材は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機充填材の状態としては粉未、粉末を球形化したビーズ、繊維等が挙げられる。
硬化性樹脂組成物が無機充填材を含む場合、その含有率は特に制限されない。流動性及び強度の観点からは、硬化性樹脂組成物全体の30体積%~90体積%であることが好ましく、35体積%~80体積%であることがより好ましく、40体積%~70体積%であることがさらに好ましい。無機充填材の含有率が硬化性樹脂組成物全体の30体積%以上であると、硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の特性がより向上する傾向にある。無機充填材の含有率が硬化性樹脂組成物全体の90体積%以下であると、硬化性樹脂組成物の粘度の上昇が抑制され、流動性がより向上して成形性がより良好になる傾向にある。
無機充填材の平均粒子径は、特に制限されない。例えば、体積平均粒子径が0.2μm~10μmであることが好ましく、0.5μm~5μmであることがより好ましい。体積平均粒子径が0.2μm以上であると、硬化性樹脂組成物の粘度の上昇がより抑制される傾向がある。体積平均粒子径が10μm以下であると、狭い隙間への充填性がより向上する傾向にある。無機充填材の体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により、体積平均粒径(D50)として測定することができる。
硬化性樹脂組成物又はその硬化物中の無機充填材の体積平均粒子径は、公知の方法によって測定することができる。例えば、有機溶剤、硝酸、王水等を用いて、硬化性樹脂組成物又は硬化物から無機充填材を抽出し、超音波分散機などで充分に分散して分散液を調製する。この分散液を用いて、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定される体積基準の粒度分布から、無機充填材の体積平均粒径を測定することができる。あるいは、硬化物を透明なエポキシ樹脂等に埋め込み、研磨して得られる断面を走査型電子顕微鏡にて観察して得られる体積基準の粒度分布から、無機充填材の体積平均粒径を測定することができる。更には、FIB装置(集束イオンビームSEM)などを用いて、硬化物の二次元の断面観察を連続的に行い、三次元構造解析を行なうことで測定することもできる。
硬化性樹脂組成物の流動性の観点からは、無機充填材の粒子形状は角形よりも球形が好ましく、また無機充填材の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。
[各種添加剤]
硬化性樹脂組成物は、上述の成分に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、難燃剤、着色剤、応力緩和剤等の各種添加剤を含んでもよい。硬化性樹脂組成物は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含んでもよい。
(カップリング剤)
硬化性樹脂組成物が無機充填材を含む場合は、樹脂成分と無機充填材との接着性を高めるために、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。
硬化性樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~5質量部であることが好ましく、0.1質量部~2.5質量部であることがより好ましい。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上であると、フレームとの接着性がより向上する傾向にある。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して5質量部以下であると、パッケージの成形性がより向上する傾向にある。
(イオン交換体)
硬化性樹脂組成物は、イオン交換体を含んでもよい。特に、硬化性樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、イオン交換体を含むことが好ましい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
Mg(1-X)Al(OH)(COX/2・mHO ……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
硬化性樹脂組成物がイオン交換体を含む場合、その含有量は、ハロゲンイオン等のイオンを捕捉するのに充分な量であれば特に制限はない。例えば、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。
(離型剤)
硬化性樹脂組成物は、成形時における金型との良好な離型性を得る観点から、離型剤を含んでもよい。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化性樹脂組成物が離型剤を含む場合、その量は樹脂成分100質量部に対して0.01質量部~15質量部が好ましく、0.1質量部~10質量部がより好ましい。離型剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。15質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。
(難燃剤)
硬化性樹脂組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化性樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その量は、所望の難燃効果を得るのに充分な量であれば特に制限されない。例えば、樹脂成分100質量部に対して1質量部~300質量部であることが好ましく、2質量部~150質量部であることがより好ましい。
(着色剤)
硬化性樹脂組成物は、着色剤をさらに含んでもよい。着色剤としてはカーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(応力緩和剤)
硬化性樹脂組成物は、シリコーンオイル、シリコーンゴム粒子等の応力緩和剤を含んでもよい。応力緩和剤を含むことにより、パッケージの反り変形及びパッケージクラックの発生をより低減させることができる。応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の応力緩和剤(可とう剤)が挙げられる。具体的には、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル-スチレン-ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル-シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル共重合体等のコア-シェル構造を有するゴム粒子などが挙げられる。応力緩和剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、シリコーン系応力緩和剤が好ましい。シリコーン系応力緩和剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したもの等が挙げられる。
(硬化性樹脂組成物の調製方法)
硬化性樹脂組成物の調製方法は、特に制限されない。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に撹拌及び混合し、予め70℃~140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。
硬化性樹脂組成物は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)において固体であることが好ましい。硬化性樹脂組成物が固体である場合の形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。硬化性樹脂組成物がタブレット状である場合の寸法及び質量は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量となるようにすることが取り扱い性の観点から好ましい。
<電子部品装置>
本開示の一実施形態である電子部品装置は、素子と、前記素子を封止する上述の硬化性樹脂組成物の硬化物と、を備える。
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、素子(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子など)を搭載して得られた素子部を硬化性樹脂組成物で封止したものが挙げられる。
より具体的には、リードフレーム上に素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部とをワイヤボンディング、バンプ等で接続した後、硬化性樹脂組成物を用いてトランスファ成形等によって封止した構造を有するDIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した素子を硬化性樹脂組成物で封止した構造を有するTCP(Tape Carrier Package);支持部材上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した素子を、硬化性樹脂組成物で封止した構造を有するCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール等;裏面に配線板接続用の端子を形成した支持部材の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と支持部材に形成された配線とを接続した後、硬化性樹脂組成物で素子を封止した構造を有するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。また、プリント配線板においても硬化性樹脂組成物を好適に使用することができる。
硬化性樹脂組成物を用いて電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。これらの中では、低圧トランスファ成形法が一般的である。
さらには、モールドアンダーフィル(Molded Underfill;MUF)と呼ばれる方法が挙げられる。モールドアンダーフィルとは、半導体チップと基板の間のギャップの封止(アンダーフィル)と半導体チップ上部の封止(オーバーモールド)とを一括して行う方法である。
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔硬化性樹脂組成物の調製〕
下記の材料を表1に記載の組成(質量部)で混合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件でロール混練を行うことによって、硬化性樹脂組成物を調製した。
エポキシ樹脂1:電子供与基(メチル基)が結合している芳香環にエポキシ含有基が結合しているトリフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、商品名「EPPN-501HY」)、エポキシ当量196g/eq、融点106℃
エポキシ樹脂2:電子供与基(メチル基)が結合している芳香環にエポキシ含有基が結合しているビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、商品名「YX-4000H」)、エポキシ当量196g/eq、融点106℃
エポキシ樹脂3:芳香環に電子供与基が結合していないビフェニル構造(25質量%)と、芳香環に電子供与基が結合していないトリフェニルメタン構造(75質量%)とを有するエポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社、商品名「YL6677」)、エポキシ当量155~170g/eq、軟化点60℃~100℃
エポキシ樹脂4:4,4’-ビフェニルジイルビス(グリシジルエーテル)と、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニルとの混合物(質量比1:1)(三菱ケミカル株式会社、商品名「YL6121」)、エポキシ当量170~180g/eq、軟化点105℃
硬化剤1:芳香環に電子供与基が結合していないトリフェニルメタン型フェノール樹脂(明和化成株式会社、商品名「MEH7500-3S」)、水酸基当量103g/eq、軟化点83℃
硬化剤2:オルトクレゾールノボラック樹脂(明和化成株式会社、商品名「MEH5100-5S」)、水酸基当量116g/eq、軟化点64℃
硬化剤3:芳香環に電子供与基が結合していないフェノールノボラック樹脂(日立化成株式会社、商品名「HP-850N」)、水酸基当量106g/eq、軟化点83℃
硬化促進剤1:トリブチルホスフィンとベンゾキノンとの付加物
硬化促進剤2:2-フェニル-4-メチルイミダゾール
カップリング剤1:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
カップリング剤2:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
離型剤1:モンタン酸エステル
着色剤1:カーボンブラック
応力緩和剤1:スチレン・インデン共重合体レジン
応力緩和剤2:エポキシ基とポリエーテル基を側鎖に有する液状シリコーン
無機充填材1:球状溶融シリカ(体積平均粒子径5μm)
無機充填材2:微細球溶融シリカ(体積平均粒子径0.5μm)
[流動性の評価]
流動性の評価の指標として、スパイラルフロー試験を行った。具体的には、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、成形圧力6.9MPaにて、硬化時間120秒/175℃及び硬化時間600秒/130℃における硬化性樹脂組成物の流動距離(cm)を求めた。結果を表1に示す。
[ゲルタイムの評価]
硬化性樹脂組成物3gに対し、JSRトレーディング株式会社のキュラストメータを用いた測定を温度175℃及び130℃で実施し、トルク曲線の立ち上がりまでの時間をゲルタイム(秒)とした。結果を表1に示す。
[低温での硬化性の評価]
アピックG-Line(MZ674-1)トランスファ成形機を用いて、240mm×74mm四方のCu板に対し、硬化性樹脂組成物の成形厚み500μmとして、表1に示す温度及び時間にてモールドアレイパッケージ(MAP)成形を実施した(成形圧力3MPa)。成形後のストリップ表面及びカル部分の外観状況を確認し、下記基準に従って低温での硬化性を評価した。結果を表1に示す。
A:基板上の成形物表面の硬化性が充分であり、カル部分に膨れ等がない。
B:基板上の成形物表面の硬化性は充分であるが、カル部分に膨れ等がある。
C:未硬化部分が発生する。

表1に示すように、電子供与基が結合していない芳香環に結合したエポキシ含有基を有するエポキシ樹脂(エポキシ樹脂3及びエポキシ樹脂4の一部)と、電子供与基が結合している芳香環に結合した水酸基を有する硬化剤(硬化剤2)とを用いた実施例の硬化性樹脂組成物は、これらの条件を満たさない比較例の硬化性樹脂組成物に比べて低温での硬化性が良好であった。
さらに、硬化促進剤としてイミダゾール化合物を用いた実施例3、4の硬化性樹脂組成物は、イミダゾール化合物と異なる硬化促進剤を用いた実施例1、2の硬化性樹脂組成物に比べて低温での硬化性がより良好であった。

Claims (5)

  1. エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、
    前記エポキシ樹脂は芳香環に電子供与基が結合していないビフェニル構造を有するエポキシ樹脂と、芳香環に電子供与基が結合していないトリフェニルメタン構造を有するエポキシ樹脂と、電子供与基が結合している芳香環にエポキシ含有基が結合しているビフェニル構造を有するエポキシ樹脂とを含み、
    前記硬化剤は電子供与基がオルト位に結合したフェノール化合物をノボラック化して得られるフェノール樹脂と、芳香環に電子供与基が結合していないトリフェニルメタン型フェノール樹脂とを含む、硬化性樹脂組成物。
  2. 前記電子供与基は炭素数1~6のアルキル基、アミノ基及びメトキシ基からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
  3. イミダゾール化合物をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載の硬化性樹脂組成物。
  4. 電子部品装置の封止材として用いるための、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
  5. 素子と、前記素子を封止する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。
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