JP7456188B2 - タコ又はイカ加工食品の改質方法 - Google Patents

タコ又はイカ加工食品の改質方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7456188B2
JP7456188B2 JP2020032162A JP2020032162A JP7456188B2 JP 7456188 B2 JP7456188 B2 JP 7456188B2 JP 2020032162 A JP2020032162 A JP 2020032162A JP 2020032162 A JP2020032162 A JP 2020032162A JP 7456188 B2 JP7456188 B2 JP 7456188B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
octopus
squid
meat
processed
protease
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020032162A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021132588A (ja
Inventor
菜月 渡辺
卓也 大貫
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ajinomoto Co Inc
Original Assignee
Ajinomoto Co Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ajinomoto Co Inc filed Critical Ajinomoto Co Inc
Priority to JP2020032162A priority Critical patent/JP7456188B2/ja
Publication of JP2021132588A publication Critical patent/JP2021132588A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7456188B2 publication Critical patent/JP7456188B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Meat, Egg Or Seafood Products (AREA)

Description

本発明は、タコ又はイカ加工食品の改質方法に関し、詳細には、タコ又はイカ加工食品の食感改良方法、製造歩留り向上方法等に関する。また本発明は、タコ又はイカ加工食品の製造方法に関する。更に本発明は、タコ又はイカ加工食品の改質剤に関する。
タコ、イカは、和洋中等のジャンルを問わず様々な料理、メニューに利用され得る食材の一つであり、その味もさることながら、コリコリ、プリプリとした特有の食感が、消費者から特に支持されている。そのようなタコ、イカ特有の食感を改良できれば、タコ加工食品、イカ加工食品の製品価値を高めることが期待できる。
プロテアーゼは、従来、畜肉の肉質を柔らかくし得ること等が報告されている(特許文献1及び2)。しかし、畜肉の食感とは全く異なるタコ、イカ特有のコリコリ、プリプリとした食感を、プロテアーゼによって改良し得ることは、これまで全く報告されていない。
一方、タコ加工食品、イカ加工食品の歩留りを向上するために、従来、pH調整剤(アルカリ剤等)等が用いられている。しかし、タコやイカをpH調整剤で処理すると、処理後に皮が収縮して皮剥がれ等が生じ、外観が著しく損なわれるという問題があった。
特開平9-140352号公報 特開2015-211654号公報
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、タコ又はイカ加工食品の食感を改良でき、製造歩留りを向上できる、タコ又はイカ加工食品の改質方法等を提供することにある。
本発明者らは、上述の課題を解決するべく鋭意検討した結果、タコ肉、イカ肉にプロテアーゼを作用させることよって、驚くべきことに、畜肉に作用させた場合に得られる柔らかさの改善とは異なり、コリコリとした心地よい歯応えとプリプリとした弾力感のある食感を改良し得ることを見出した。
また本発明者らは、タコ肉、イカ肉にプロテアーゼを作用させることよって、皮剥がれ等が生じずに、タコ又はイカ加工食品の外観を損なうことなく製造歩留りを向上し得ることも見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づき、更に研究を重ねることによって、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]タコ肉又はイカ肉に、プロテアーゼを作用させることを含む、タコ又はイカ加工食品の改質方法。
[2]タコ肉又はイカ肉に、有機酸モノグリセリドを添加することを更に含む、[1]記載の改質方法。
[3]タコ又はイカ加工食品の改質方法が、タコ又はイカ加工食品の食感改良方法である、[1]又は[2]記載の改質方法。
[4]タコ又はイカ加工食品の改質方法が、タコ又はイカ加工食品の製造歩留り向上方法である、[1]又は[2]記載の改質方法。
[5]タコ肉又はイカ肉に、プロテアーゼを作用させることを含む、タコ又はイカ加工食品の製造方法。
[6]タコ肉又はイカ肉に、有機酸モノグリセリドを添加することを更に含む、[5]記載の製造方法。
[7]タコ又はイカ加工食品の製造方法が、食感が改良されたタコ又はイカ加工食品の製造方法である、[5]又は[6]記載の製造方法。
[8]タコ又はイカ加工食品の製造方法が、製造歩留りが向上したタコ又はイカ加工食品の製造方法である、[5]又は[6]記載の製造方法。
[9]プロテアーゼを含有する、タコ又はイカ加工食品の改質剤。
[10]有機酸モノグリセリドを更に含有する、[9]記載の改質剤。
[11]タコ又はイカ加工食品の改質剤が、タコ又はイカ加工食品の食感改良剤である、[9]又は[10]記載の改質剤。
[12]タコ又はイカ加工食品の改質剤が、タコ又はイカ加工食品の製造歩留り向上剤である、[9]又は[10]記載の改質剤。
本発明によれば、タコ又はイカ加工食品の食感を改良でき、製造歩留りを向上できる、タコ又はイカ加工食品の改質方法を提供できる。
また本発明によれば、食感が改良され、製造歩留りが向上したタコ又はイカ加工食品の製造方法を提供できる。
更に本発明によれば、タコ又はイカ加工食品の食感を改良でき、製造歩留りを向上できる、タコ又はイカ加工食品の改質剤を提供できる。
本発明のタコ又はイカ加工食品の改質方法(本明細書において「本発明の改質方法」と称する場合がある)は、タコ肉又はイカ肉に、プロテアーゼを作用させることを含むことを、特徴の一つとする。
本発明において「タコ肉又はイカ肉にプロテアーゼを作用させること」を「プロテアーゼ処理」ともいう。
本発明において「タコ加工食品」とは、少なくともタコ肉を含む原料から製造される食品をいい、例えば、蒸しタコ、ボイルタコ(茹でタコ)、タコ刺し、タコの炒め物、タコの煮物、タコの揚げ物、タコ焼き、タコの握り寿司、酢ダコ等が挙げられるが、これらに制限されない。また、本発明において「イカ加工食品」とは、少なくともイカ肉を含む原料から製造される食品をいい、例えば、蒸しイカ、ボイルイカ(茹でイカ)、イカ刺し、イカの炒め物、イカの煮物、イカの揚げ物、イカの姿焼き、イカの握り寿司、イカそうめん等が挙げられるが、これらに制限されない。本発明において「タコ加工食品」及び「イカ加工食品」を総称して、「タコ又はイカ加工食品」ともいう。本発明における「タコ又はイカ加工食品」には、タコ肉、イカ肉を加熱せずに、切断、盛り合わせしたもの等も包含される。
本発明において「タコ肉」、「イカ肉」とは、それぞれタコ、イカの生体から臓器を除去した肉質部(例、胴部、足部等)をいう。
本発明において用いられるタコ肉、イカ肉の種類は特に制限されず、タコ肉は、例えば、マダコ、ミズダコ、ヤナギダコ、イイダコ等のいずれに由来するものであってもよく、イカ肉は、例えば、アオリイカ、スルメイカ、ヤリイカ、コウイカ、ケンサキイカ、ホタルイカ、ダイオウイカ等のいずれに由来するものであってもよい。また、これらのタコ、イカの産地も特に制限されない。本発明において用いられるタコ肉、イカ肉は、一種を単独で用いてよく、あるいは、二種又はそれ以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において用いられるタコ肉、イカ肉のサイズ、形状は特に制限されず、タコ又はイカ加工食品の種類やその製造方法等に応じて適宜設定すればよいが、タコ肉、イカ肉の肉片1個当たりの重量は、通常80~80000gである。
本発明において用いられるタコ肉、イカ肉は、凍結処理及び解凍処理が施されていないものであってよく、あるいは、凍結処理及び解凍処理が施されたものであってもよい。本発明によるタコ又はイカ加工食品の改質作用(食感の改良、製造歩留りの向上等)は、原料のタコ肉又はイカ肉の凍結処理及び解凍処理の実施の有無にかかわらない。
本発明において「プロテアーゼ」(一般に「プロテイナーゼ」等とも称される)とは、タンパク質のペプチド結合を加水分解する酵素をいう。
本発明において用いられるプロテアーゼは、本発明の所望の効果が得られる限り特に限定されないが、例えば、動物由来のプロテアーゼ(例、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン等)、植物由来のプロテアーゼ(例、パパイン、ブロメライン、フィカイン等)、微生物由来のプロテアーゼ(サチライシン、NPI、NPII等)等を使用し得る。
本発明において用いられるプロテアーゼは、酸性プロテアーゼ、中性プロテアーゼ及びアルカリ性プロテアーゼのいずれであってよいが、好ましくは、中性プロテアーゼ、アルカリ性プロテアーゼである。また、本発明において用いられるプロテアーゼは、例えば、アスパラギン酸プロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、金属プロテアーゼ等であってもよい。微生物由来のプロテアーゼとしては、例えば、サチライシン(subtilisin;EC 3.4.21.62;プロチン、ビオプラーゼ、アルカラーゼ等ともいう)等のセリンプロテアーゼ、サーモライシン(thermolysin;EC 3.4.24.27)等の金属プロテアーゼ(metalloprotease)、NPIやNPII等の中性プロテアーゼ、ALP等のアルカリ性プロテアーゼ、PEPO等のアスパラギン酸プロテアーゼ(酸性プロテアーゼ)等が挙げられる。
微生物由来のプロテアーゼの具体例としては、以下のものが挙げられる。
<中性プロテアーゼ>
・プロテアーゼN「アマノ」G(Bacillus subtilis由来;天野エンザイム株式会社)
・プロチンSD-NY10(Bacillus amyloliquefaciens由来;天野エンザイム株式会社)
・ブリューワーズプロテアーゼ(Bacillus amyloliquefaciens由来;DSM株式会社)
・アクセラザイムNP50.000(Bacillus amyloliquefaciens由来;DSM株式会社)
・ニュートラーゼ(Bacillus amyloliquefaciens由来;ノボザイムズジャパン株式会社)
・ヌクレイシン(Bacillus subtilis由来;エイチビィアイ株式会社)
・オリエンターゼ90N(Bacillus subtilis由来;エイチビィアイ株式会社)
・コロラーゼN(Bacillus subtilis由来;株式会社 樋口商会)
・アロアーゼNS(Bacillus subtilis由来;ヤクルト薬品工業株式会社)
・アロアーゼAP-10(Bacillus subtilis由来;ヤクルト薬品工業株式会社)
・アロアーゼNP-10(Bacillus subtilis由来;ヤクルト薬品工業株式会社)
・プロテアーゼA「アマノ」SD(Aspergillus oryzae由来;天野エンザイム株式会社)
・プロテアーゼP「アマノ」3SD(Aspergillus melleus由来;天野エンザイム株式会社)
・スミチームACP-G(Aspergillus oryzae由来;新日本化学工業株式会社)
・スミチームLP(Aspergillus oryzae由来;新日本化学工業株式会社)
・スミチームFP-G(Aspergillus oryzae由来;新日本化学工業株式会社)
・バリダーゼFP60(Aspergillus oryzae由来;DSM株式会社)
・デナチームAP(Aspergillus sp.由来;ナガセケムテックス株式会社)
・オリエンターゼOP(Aspergillus oryzae由来;エイチビィアイ株式会社)
・パンチダーゼP(Aspergillus sp.由来;ヤクルト薬品工業株式会社)
・パンチダーゼNP-2(Aspergillus oryzae由来;ヤクルト薬品工業株式会社)
<アルカリ性プロテアーゼ>
・プロチンSD-AY10(Bacillus licheniformis由来;天野エンザイム株式会社)
・デルボラーゼ(Bacillus licheniformis由来;DSM株式会社)
・エスペラーゼ(Bacillus sp.由来;ノボザイムズジャパン株式会社)
・サビナーゼ(Bacillus sp.由来;ノボザイムズジャパン株式会社)
・エバラーゼ(Bacillus sp.由来;ノボザイムズジャパン株式会社)
・アルカラーゼ(Bacillus licheniformis由来;ノボザイムズジャパン株式会社)
・ビオプラーゼOP(Bacillus sp.由来;ナガセケムテックス株式会社)
・ビオプラーゼSP-20FG(Bacillus sp.由来;ナガセケムテックス株式会社)
・オリエンターゼ22BF(Bacillus subtilis由来;エイチビィアイ株式会社)
・スミチームMP(Aspergillus sp.由来;新日本化学工業株式会社)
<酸性プロテアーゼ>
・プロテアーゼM「アマノ」G(Aspergillus oryzae由来;天野エンザイム株式会社)
・スミチームAP(Aspergillus niger由来;新日本化学工業株式会社)
・デナプシン2P(Aspergillus sp.由来;ナガセケムテックス株式会社)
・オリエンターゼAY(Aspergillus niger由来;エイチビィアイ株式会社)
・テトラーゼS(Aspergillus niger由来;エイチビィアイ株式会社)
・ブリューワーズクラレックス(Aspergillus niger由来;DSM株式会社)
・バリダーゼAFP(Aspergillus niger由来;DSM株式会社)
・プロテアーゼYP-SS(Aspergillus niger由来;ヤクルト薬品工業株式会社)
また、プロテアーゼとしては、公知のプロテアーゼ(例えば、上記例示のプロテアーゼ等)のホモログを利用してもよい。ホモログは、所望のプロテアーゼ活性を有するものであれば特に制限されない。また、プロテアーゼとしては、公知のプロテアーゼ(例えば、上記例示のプロテアーゼ等)又はそれらのホモログの人為的改変体を利用してもよい。人為的改変体は所望のプロテアーゼ活性を有するものであれば特に制限されない。
プロテアーゼとしては、一種のプロテアーゼを用いてよく、あるいは、二種又はそれ以上のプロテアーゼを組み合わせて用いてもよい。プロテアーゼとしては、市販品を用いてもよく、適宜製造して取得したものを用いてもよい。市販品のプロテアーゼ製剤には、例えば、プロテアーゼに加えて有機酸モノグリセリドを含有する製剤等もあり、そのようなプロテアーゼ製剤を用いれば、タコ又はイカ加工食品をより効果的に改質し得る点等において好適である。また、プロテアーゼの製造方法は特に制限されない。プロテアーゼは、例えば、プロテアーゼを産生する微生物を培養し、培養物からプロテアーゼを回収することにより製造できる。プロテアーゼを産生する微生物は、本来的にプロテアーゼを産生するものであってもよく、プロテアーゼを産生するように改変されたものであってもよい。プロテアーゼを産生する微生物は、例えば、プロテアーゼをコードする遺伝子を微生物に発現可能に導入することにより取得できる。遺伝子の導入は、例えば、同遺伝子を搭載したベクターを微生物に導入することや、遺伝子を微生物の染色体上に導入することにより達成できる。微生物の培養条件は、微生物が生育でき、プロテアーゼが産生される限り、特に制限されない。微生物は、例えば、細菌や真菌等の微生物を培養する通常の条件で培養できる。
本発明の改質方法におけるプロテアーゼ処理の方法(すなわち、タコ肉又はイカ肉にプロテアーゼを作用させる方法)は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得るが、例えば、プロテアーゼをタコ肉又はイカ肉に添加すること、プロテアーゼを含む液(例、プロテアーゼを水に溶かした溶液、プロテアーゼを調味液に溶かした溶液等)にタコ肉又はイカ肉を浸漬させること等が挙げられる。
プロテアーゼ処理に用いられるプロテアーゼの量は、所望の効果が得られる限り特に限定されず、プロテアーゼ処理の方法や反応時間等に応じて適宜調整すればよいが、一態様として、タコ肉又はイカ肉にプロテアーゼを添加することによってプロテアーゼ処理を実施する場合、プロテアーゼ処理に用いられるプロテアーゼの量(すなわち、タコ肉又はイカ肉に添加されるプロテアーゼの量)は、効果的にタコ又はイカ加工食品を改質し得ることから、タコ肉又はイカ肉の重量1gに対して、好ましくは0.05U以上であり、より好ましくは0.07U以上であり、特に好ましくは0.09U以上である。また、この場合、プロテアーゼ処理に用いられるプロテアーゼの量(すなわち、タコ肉又はイカ肉に添加されるプロテアーゼの量)は、効果的にタコ又はイカ加工食品を改質し得ることから、タコ肉又はイカ肉の重量1gに対して、好ましくは0.25U以下であり、より好ましくは0.20U以下であり、より好ましくは0.18U以下である。
本発明において、プロテアーゼ活性は、カゼインを基質として、フォリン法により測定されるものとする。すなわち、本発明においては、カゼインを基質として常法により酵素反応を行い、1分間にチロシン1μgに相当するフォリン試液呈色物質の増加をもたらす酵素量を1Uのプロテアーゼ活性と定義する。
プロテアーゼ処理における反応時間は、所望の効果が得られる限り特に限定されず、作用させるプロテアーゼの量等に応じて適宜調整すればよいが、通常1分間~24時間であり、好ましくは3分間~6時間であり、より好ましくは5分間~2時間である。
プロテアーゼ処理における反応温度は、所望の効果が得られる限り特に限定されず、作用させる方法等に応じて適宜調整すればよいが、通常4~60℃であり、好ましくは10~40℃である。
プロテアーゼ処理におけるpHは、本発明の目的を損なわない限り特に制限されないが、通常3~8であり、好ましくは4~7である。
本発明の改質方法において、プロテアーゼ処理を実施する時期(タイミング)は特に制限されず、プロテアーゼ処理は、タコ肉、イカ肉に対して実施し得る他の加工処理(例、塩もみ、ミョウバン揉み、加熱処理、凍結処理等)の前、最中及び後のいずれの時期にも実施し得る。一態様として、タコ加工食品が、その製造工程にタコ肉の塩もみ等を含む場合、プロテアーゼ処理を実施する時期は、塩もみの前、塩もみの最中及び塩もみの後のいずれであってもよい。塩もみの最中にプロテアーゼ処理を実施する場合、その方法としては、例えば、プロテアーゼを、塩もみに用いる塩に混合して塩もみを行うこと等が挙げられる。同様に、一態様として、タコ加工食品が、その製造工程にタコ肉のミョウバン揉み等を含む場合、プロテアーゼ処理を実施する時期は、ミョウバン揉みの前、ミョウバン揉みの最中及びミョウバン揉みの後のいずれであってもよい。また、タコ又はイカ加工食品が、その製造工程に、タコ肉又はイカ肉の加熱(例、蒸し加熱、炒め加熱、茹で加熱等)等を含む場合、プロテアーゼ処理を実施する時期は、本発明の所望の効果が得られれば、加熱前、加熱中及び加熱後のいずれであってもよいが、加熱前が好ましい。
本発明の改質方法は、プロテアーゼ処理に加えて、タコ肉又はイカ肉に有機酸モノグリセリドを添加することを更に含み得る。本発明の改質方法は、有機酸モノグリセリドを添加すること含むことによって、より効果的にタコ又はイカ加工食品の食感を改良でき、タコ又はイカ加工食品の製造歩留りを向上できる。またタコ又はイカ加工食品の味も改良できる。
本発明において「有機酸モノグリセリド」(一般に「有機酸モノアシルグリセロール」、「グリセリン有機酸脂肪酸エステル」等とも称される)とは、モノグリセリド(グリセリン脂肪酸エステル)の有機酸エステルをいう。
有機酸モノグリセリドを構成する有機酸としては、例えば、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、フマル酸等が挙げられ、好ましくは、クエン酸、酢酸、乳酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸であり、風味の観点から、より好ましくは、コハク酸である。
有機酸モノグリセリドを構成する脂肪酸は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよく、また、飽和及び不飽和のいずれであってもよい。当該脂肪酸の炭素原子数は、好ましくは6~24であり、より好ましくは8~22である。当該脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
本発明において用いられる有機酸モノグリセリドは、乳化能を有するものが好ましく、例えば、コハク酸モノグリセリド、酢酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド等が挙げられ、風味の観点から、好ましくは、コハク酸モノグリセリドである。
有機酸モノグリセリドの製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法により製造し得る。例えば、有機酸の酸無水物とモノグリセリドとを反応させること等によって製造し得る。有機酸モノグリセリドは、市販品(例えば、太陽化学株式会社製、サンソフトNo.600シリーズ等)を用いてもよい。
有機酸モノグリセリドは、一種を単独で用いてよく、あるいは、二種又はそれ以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の改質方法が、プロテアーゼ処理に加えて、タコ肉又はイカ肉に有機酸モノグリセリドを添加することを更に含む場合、タコ肉又はイカ肉に添加される有機酸モノグリセリドの量は、より効果的にタコ又はイカ加工食品を改質し得ることから、タコ肉又はイカ肉に対して、好ましくは0.0001重量%以上であり、より好ましくは0.001重量%以上であり、特に好ましくは0.003重量%以上である。また、この場合、タコ肉又はイカ肉に添加される有機酸モノグリセリドの量は、より効果的にタコ又はイカ加工食品を改質し得ることから、タコ肉又はイカ肉に対して、好ましくは0.009重量%以下であり、より好ましくは0.008重量%以下であり、特に好ましくは0.0075重量%以下である。
本発明の改質方法が、プロテアーゼ処理に加えて、タコ肉又はイカ肉に有機酸モノグリセリドを添加することを更に含む場合、タコ肉又はイカ肉に有機酸モノグリセリドを添加する時期は特に制限されず、プロテアーゼ処理の前及び後のいずれでもよい。また、プロテアーゼ処理を実施する際に、有機酸モノグリセリドを添加してもよく、一態様として、タコ肉又はイカ肉にプロテアーゼを添加することによりプロテアーゼ処理を実施する場合、プロテアーゼとともに有機酸モノグリセリドをタコ肉又はイカ肉に添加し得る。
本発明の改質方法を用い得るタコ又はイカ加工食品の種類は特に制限されないが、例えば、蒸しタコ、ボイルタコ(茹でタコ)、タコ刺し、タコの炒め物、タコの煮物、タコの揚げ物、タコ焼き、タコの握り寿司、酢ダコ等のタコ加工食品;蒸しイカ、ボイルイカ(茹でイカ)、イカ刺し、イカの炒め物、イカの煮物、イカの揚げ物、イカの姿焼き、イカの握り寿司、イカそうめん等のイカ加工食品が挙げられ、好ましくは蒸しタコ、蒸しイカである。
本発明の改質方法によれば、タコ又はイカ加工食品の食感を改良できる。すなわち本発明の改質方法は、一態様として、タコ又はイカ加工食品の食感改良方法であってよい。
具体的には、本発明の改質方法によれば、例えば、タコ又はイカ加工食品の歯応えを改良でき、また、タコ又はイカ加工食品の弾力感を向上できる。ここでタコ又はイカ加工食品の「歯応えの改良」とは、タコ、イカを噛んだときの感覚が、コリコリとした、噛み切りやすい心地よいものとなることをいい、また、タコ又はイカ加工食品の「弾力感の向上」とは、タコ、イカを咀嚼し、その表面に歯が入るときの感覚が、プリプリとした、跳ね返るような適度な弾力のあるものとなり、表面に歯が入った後は、サクッと抵抗なく歯が入る噛み切りやすいものとなることをいう。タコ又はイカ加工食品の食感(例、歯応え、弾力感等)は、専門パネルによる官能評価(例えば、後述の実施例に示される官能評価等)によって評価できる。
一態様として、本発明の改質方法は、好ましくは、タコ又はイカ加工食品の歯応えの改良方法であり、あるいは、タコ又はイカ加工食品の弾力感の向上方法である。本発明の改質方法は、タコ又はイカ加工食品の歯応えを改良し、かつ弾力感を向上するための方法であってもよい。
本発明の改質方法によれば、タコ又はイカ加工食品の製造歩留りを向上できる。すなわち本発明の改質方法は、一態様として、タコ又はイカ加工食品の製造歩留り向上方法であってよい。
本発明において、タコ又はイカ加工食品の「製造歩留り」とは、タコ又はイカ加工食品の原料のタコ肉又はイカ肉(表面のヌメリをとったもの)の総重量に対する、タコ又はイカ加工食品の総重量の割合をいい、下記式により算出し得る。
[製造歩留り(%)]=[タコ又はイカ加工食品の総重量]/[原料のタコ肉又はイカ肉の総重量]×100
タコ肉又はイカ肉の表面のヌメリは、例えば、塩もみ等によってとることができる。
本発明の改質方法は、タコ又はイカ加工食品の外観を損なうことなく、その製造歩留りを向上できる。ここでタコ又はイカ加工食品の「外観を損なう」とは、例えば、タコ又はイカ加工食品に皮剥がれが生じたり、あるいは、皮剥がれが観察できずとも、タコ肉又はイカ肉の表皮が溶けてべたついたり等して、本来の好適な外観が維持できなくなることをいう。
いかなる理論に拘泥するものでもないが、畜肉は、プロテアーゼを作用させるとタンパク組織が分解し、ドリップ(水分の流出)が増加する傾向がみられるのに対し、タコ肉又はイカ肉は、プロテアーゼを作用させること(好ましくは、更に有機酸モノグリセリドを添加すること)により、タコ肉又はイカ肉の保水性が向上し、畜肉とは逆にタコ肉又はイカ肉からのドリップが寧ろ抑えられるようになることで、タコ又はイカ加工食品の製造歩留りが向上すると推測される。
したがって本発明の改質方法は、一態様として、タコ又はイカ加工食品のドリップ抑制方法であってもよい。
本発明の改質方法は、好適な一態様として、タコ又はイカ加工食品の食感を改良し、かつ製造歩留りを向上するための方法であってよい。
本発明は、タコ又はイカ加工食品の製造方法(本明細書において「本発明の製造方法」と称する場合がある)も提供する。本発明の製造方法は、タコ肉又はイカ肉に、プロテアーゼを作用させることを含むことを、特徴の一つとする。
本発明の製造方法において用いられ得るタコ肉、イカ肉及びプロテアーゼは、いずれも本発明の改質方法(上述)に関して説明したものと同様であり、好ましい態様も同様である。
本発明の製造方法は、特に断りのない限り、本発明の改質方法(上述)と同様に実施し得、好ましい態様も同様である。例えば、本発明の製造方法は、プロテアーゼ処理に加えて、タコ肉又はイカ肉に有機酸モノグリセリドを添加することを更に含むものであってよく、当該有機酸モノグリセリドは、本発明の改質方法(上述)に関して説明したものと同様であり、好ましい態様も同様である。
本発明の製造方法は、タコ肉又はイカ肉にプロテアーゼを作用させること(好ましくは、更に有機酸モノグリセリドを添加すること)に加えて、タコ又はイカ加工食品の製造において慣用の処理工程、調理工程を、製造する食品の種類等に応じて適宜含んでよい。
本発明の製造方法によって製造されるタコ又はイカ加工食品の種類は特に制限されないが、例えば、本発明の改質方法(上述)を用い得るタコ又はイカ加工食品と同様のものが挙げられる。
本発明の製造方法によれば、食感(例、歯応え、弾力感等)が改良されたタコ又はイカ加工食品を製造できる。本発明の製造方法によれば、好ましくは、歯応えが改良されたタコ又はイカ加工食品、弾力感が向上したタコ又はイカ加工食品を製造でき、より好ましくは、歯応えが改良され、かつ、弾力感が向上したタコ又はイカ加工食品を製造できる。
本発明の製造方法によれば、製造歩留りが向上したタコ又はイカ加工食品を製造できる。本発明の製造方法によれば、好ましくは、外観を損なうことなく、製造歩留りが向上したタコ又はイカ加工食品を製造できる。
本発明の製造方法によれば、ドリップが抑制されたタコ又はイカ加工食品を製造できる。
本発明の製造方法によれば、好ましくは、食感が改良され、かつ製造歩留りが向上したタコ又はイカ加工食品を製造できる。
本発明は、タコ又はイカ加工食品の改質剤(本明細書において「本発明の改質剤」と称する場合がある)も提供する。本発明の改質剤は、プロテアーゼを有効成分として含有することを、特徴の一つとする。
本発明の改質剤に含有されるプロテアーゼは、本発明の改質方法(上述)に関して説明したものと同様であり、好ましい態様も同様である。
本発明の改質剤におけるプロテアーゼの含有量は、本発明の改質剤1gに対して、好ましくは0.001~1000Uであり、より好ましくは0.01~100Uである。
本発明の改質剤は、プロテアーゼに加えて、有機酸モノグリセリドを更に含有し得る。本発明の改質剤は、有機酸モノグリセリドを含有することによって、より効果的にタコ又はイカ加工食品の食感を改良できる。またタコ又はイカ加工食品の味も改良できる。
本発明の改質剤に含有され得る有機酸モノグリセリドは、本発明の改質方法(上述)に関して説明したものと同様であり、好ましい態様も同様である。
本発明の改質剤が、プロテアーゼに加えて、有機酸モノグリセリドを更に含有する場合、本発明の改質剤における有機酸モノグリセリドの含有量は、本発明の改質剤に対して、好ましくは0.1~90重量%であり、より好ましくは1~50重量%である。
本発明の改質剤は、プロテアーゼ、あるいは、プロテアーゼ及び有機酸モノグリセリドのみからなるものであってよいが、これらに加えて、プロテアーゼ及び有機酸モノグリセリド以外の成分(本明細書において「その他の成分」と称する場合がある)を含有してもよい。その他の成分は、本発明の目的を損なわない限り特に制限されないが、例えば、デキストリン、澱粉、加工澱粉、還元麦芽糖等の賦形剤;アミノ酸、核酸、畜肉エキス等の調味料;植物タンパク質、グルテン、卵白、カゼイン等のタンパク質;タンパク質加水分解物、タンパク質部分分解物等のタンパク質加工品;グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤;クエン酸塩、重合リン酸塩等のキレート剤;グルタチオン、システイン等の還元剤;アルギン酸、かんすい、油脂、色素、酸味料、香料等のその他の食品添加物等が挙げられる。その他の成分は、一種を単独で用いてよく、あるいは、二種又はそれ以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の改質剤の形態は特に制限されず、例えば、固体状(粉末状、顆粒状等を含む)、液体状(スラリー状等を含む)、ゲル状、ペースト状等が挙げられる。
本発明の改質剤の製造は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法により行い得る。
本発明の改質剤は、タコ又はイカ加工食品の原料であるタコ肉又はイカ肉に添加されて用いられ得る。
本発明の改質剤は、効果的にタコ又はイカ加工食品を改質し得ることから、タコ肉又はイカ肉に添加されるプロテアーゼの量が、タコ肉又はイカ肉の重量1gに対して、好ましくは0.05U以上、より好ましくは0.07U以上、特に好ましくは0.09U以上となるように用いられ得る。また、本発明の改質剤は、効果的にタコ又はイカ加工食品を改質し得ることから、タコ肉又はイカ肉に添加されるプロテアーゼの量が、タコ肉又はイカ肉の重量1gに対して、好ましくは0.25U以下、より好ましくは0.20U以下、より好ましくは0.18U以下となるように用いられ得る。
本発明の改質剤が、プロテアーゼに加えて、有機酸モノグリセリドを更に含有する場合、本発明の改質剤は、より効果的にタコ又はイカ加工食品を改質し得ることから、タコ肉又はイカ肉に添加される有機酸モノグリセリドの量が、タコ肉又はイカ肉に対して、好ましくは0.0001重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、特に好ましくは0.003重量%以上となるように用いられる。また、この場合、本発明の改質剤は、より効果的にタコ又はイカ加工食品を改質し得ることから、タコ肉又はイカ肉に添加される有機酸モノグリセリドの量が、タコ肉又はイカ肉に対して、好ましくは0.009重量%以下、より好ましくは0.008重量%以下、特に好ましくは0.0075重量%以下となるように用いられる。
本発明の改質剤をタコ肉又はイカ肉に添加する方法及び条件は特に限定されず、本発明の改質剤の形態等に応じて自体公知の方法又はそれに準ずる方法で行い得る。本発明の改質剤を用いてプロテアーゼ処理を実施する際の反応時間、反応温度及びpHはいずれも特に制限されないが、本発明の改質方法(上述)におけるプロテアーゼ処理と同様に設定し得る。本発明の改質剤をタコ肉又はイカ肉に添加する時期(タイミング)は特に限定されないが、例えば、本発明の改質方法においてプロテアーゼ処理を実施し得る時期と同様の時期に行い得る。
本発明の改質剤が用いられ得るタコ又はイカ加工食品の種類は特に制限されないが、例えば、本発明の改質方法(上述)を用い得るタコ又はイカ加工食品と同様のものが挙げられる。
本発明の改質剤によれば、タコ又はイカ加工食品の食感(例、歯応え、弾力感等)を改良できる。すなわち、本発明の改質方法は、一態様として、タコ又はイカ加工食品の食感改良剤であってよい。
一態様として、本発明の改質剤は、好ましくは、タコ又はイカ加工食品の歯応えの改良剤であり、あるいは、タコ又はイカ加工食品の弾力感の向上剤である。本発明の改質剤は、より好ましくは、タコ又はイカ加工食品の歯応えを改良し、かつ弾力感を向上するためのものであってよい。
本発明の改質剤によれば、タコ又はイカ加工食品の製造歩留りを向上できる。すなわち、本発明の改質剤は、一態様として、タコ又はイカ加工食品の製造歩留り向上剤であってよい。
本発明の改質剤は、一態様として、タコ又はイカ加工食品のドリップ抑制剤であってもよい。
本発明の改質剤は、好ましい一態様として、タコ又はイカ加工食品の食感を改良し、かつ製造歩留りを向上するためのものであってよい。
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
尚、以下の実施例において用いられた原料は、特にことわりのない限り、いずれも食品用として市販されているものである。
[試験例1]
(コントロール1の蒸しタコの作製)
ヤナギダコのタコ肉100重量部(肉片1個当たりの重量:約700~2500g)に、ソーラーソルト(天日塩)1.36重量部及びアスコルビン酸ナトリウム0.93重量部を加えて、タコ肉表面が白く泡立ち、粘りを生じるまで15分間、塩もみを行った。塩もみ後のタコ肉を、タンブラー(GLASS GmbH&CO.KG製、製品名:GLASS 真空マリネーター、型式:LPM20)を用いて25分間、タンブリングした後、桶に溜めた水で3回洗浄し、次いで、当該タコ肉を、焼きミョウバン0.27重量部とともに樽に入れ、樽を回転させて3分間、ミョウバン揉みを行った。ミョウバン揉み後のタコ肉を、桶に溜めた水で1回洗浄した後、スチームコンベクションオーブン(株式会社ラショナル・ジャパン製、SCC WE 61)を用いて、100℃の蒸気で5分間、蒸し加熱を行った。蒸し加熱後のタコ肉を、スチームコンベクションオーブンに入れたまま、130℃で2分30秒間、スチーム及び熱風による過加熱を行った。得られた蒸しタコ(タコ加工食品)を、粗熱が取れるまで15℃の低温室にて保管してから、4℃前後の冷蔵庫で冷蔵した。尚、本試験例1のヤナギダコのタコ肉には、ヤナギダコを捕獲して内臓を除去した後、凍結処理及び解凍処理を1回ずつ行ったものを用いた。
(実施例1の蒸しタコの作製)
ヤナギダコのタコ肉に、ソーラーソルト及びアスコルビン酸ナトリウムとともに、中性プロテアーゼを、タコ肉1g当たり0.093Uとなる量で加えて塩もみを行ったこと以外は、コントロール1と同様の手順で、蒸しタコを作製した。
(実施例2の蒸しタコの作製)
ヤナギダコのタコ肉に、ソーラーソルト及びアスコルビン酸ナトリウムとともに、中性プロテアーゼを、タコ肉1g当たり0.185Uとなる量で加えて塩もみを行ったこと以外は、コントロール1と同様の手順で、蒸しタコを作製した。
(製造歩留りの測定、算出)
実施例1、実施例2及びコントロール1の製造歩留りは、冷蔵して完全に冷ました各蒸しタコについて、製造から60時間以内に重量を測定し、下記式の通り、塩もみ後のヌメリをとった原料のタコ肉の総重量に対する蒸しタコの総重量の割合を算出することにより求めた。
[製造歩留り(%)]=[蒸しタコの総重量]/[塩もみ後の原料のタコ肉の総重量]×100
(官能評価)
冷蔵して完全に冷ました実施例1、実施例2及びコントロール1の各蒸しタコを、製造から60時間以内に、訓練された専門パネル3~7名が食し、食感(タコ特有のコリコリとした心地よい歯応えとプリプリとした弾力感のある食感)及び味(具体的には、タコらしいうまみが残り、かつ異風味(えぐみ、苦味、アルカリ風味等)が無いこと)について、下記の基準に基づき、1点刻みで合議により評点付けを行った。また、食感及び味の評価とあわせて、各蒸しタコの外観(見た目)について、専門パネル3~7名が、下記の基準に基づき、1点刻みで合議により評点付けを行った。
[食感、味の評価基準]
3点:コントロール1に比べて、非常に良い
2点:コントロール1に比べて、良い
1点:コントロール1に比べて、少し良い
0点:コントロール1と変わりなし
-1点:コントロール1に比べて、少し悪い
-2点:コントロール1に比べて、悪い
-3点:コントロール1に比べて、非常に悪い
[外観の評価基準]
0点:コントロール1と変わりなし
-1点:コントロール1に比べて、少し悪い
-2点:コントロール1に比べて、悪い
-3点:コントロール1に比べて、非常に悪い
結果を下表1に示す。
表1に示される結果から明らかなように、タコ肉にプロテアーゼを作用させて製造した実施例1及び実施例2の蒸しタコ(タコ加工食品)は、タコ肉にプロテアーゼを作用させなかったコントロール1の蒸しタコに比べて食感が良く、また、皮剥がれ等も確認されず、外観を損なうことなく製造歩留りが向上した。コントロール1の蒸しタコは、若干ゴムのような食感で噛み切りにくかったのに対し、実施例1及び実施例2の蒸しタコは、少しサックリとしていて、歯切れが良かった。
当該結果から、タコ肉にプロテアーゼを作用させることよって、タコ加工食品の食感を改良し得ること、外観を損なうことなく製造歩留りを向上し得ることが確認された。
[試験例2]
(コントロール2の蒸しタコの作製)
ヤナギダコのタコ肉100重量部(肉片1個当たりの重量:約700~2500g)に、ソーラーソルト(天日塩)1.36重量部及びアスコルビン酸ナトリウム0.93重量部を加えて、タコ肉表面が白く泡立ち、粘りを生じるまで15分間、塩もみを行った。塩もみ後のタコ肉を、タンブラー(GLASS GmbH&CO.KG製、製品名:GLASS 真空マリネーター、型式:LPM20)を用いて25分間、タンブリングした後、桶に溜めた水で3回洗浄し、次いで、当該タコ肉を、焼きミョウバン0.27重量部とともに樽に入れ、樽を回転させて3分間、ミョウバン揉みを行った。ミョウバン揉み後のタコ肉を、桶に溜めた水で1回洗浄した後、スチームコンベクションオーブン(株式会社ラショナル・ジャパン製、SCC WE 61)を用いて、100℃の蒸気で5分間、蒸し加熱を行った。蒸し加熱後のタコ肉を、スチームコンベクションオーブンに入れたまま、130℃で2分30秒間、スチーム及び熱風による過加熱を行った。得られた蒸しタコ(タコ加工食品)を、粗熱が取れるまで15℃の低温室にて保管してから、4℃前後の冷蔵庫で冷蔵した。尚、本試験例2のヤナギダコのタコ肉には、ヤナギダコを捕獲して内臓を除去した後、凍結処理及び解凍処理をそれぞれ2回ずつ行ったものを用いた。
(実施例3の蒸しタコの作製)
ヤナギダコのタコ肉100重量部に、ソーラーソルト及びアスコルビン酸ナトリウムとともに、中性プロテアーゼを、タコ肉1g当たり0.093Uとなる量で加え、更にコハク酸モノグリセリドの倍散品(コハク酸モノグリセリド(太陽化学株式会社製)をデキストリンで倍散したもの、倍散品中のコハク酸モノグリセリドの含有量:14重量%)0.025重量部を加えて塩もみを行ったこと以外は、コントロール2と同様の手順で、蒸しタコを作製した。
(実施例4の蒸しタコの作製)
ヤナギダコのタコ肉100重量部に、ソーラーソルト及びアスコルビン酸ナトリウムとともに、中性プロテアーゼを、タコ肉1g当たり0.185Uとなる量で加え、更にコハク酸モノグリセリドの倍散品(コハク酸モノグリセリド(太陽化学株式会社製)をデキストリンで倍散したもの、倍散品中のコハク酸モノグリセリドの含有量:14重量%)0.05重量部を加えて塩もみを行ったこと以外は、コントロール2と同様の手順で、蒸しタコを作製した。
(製造歩留りの測定、算出)
実施例3及び実施例4の製造歩留りは、試験例1と同様の方法で求めた。
(官能評価)
冷蔵して完全に冷ました実施例3、実施例4及びコントロール2の各蒸しタコを、製造から60時間以内に、訓練された専門パネル3~7名が食し、食感(タコ特有のコリコリとした心地よい歯応えとプリプリとした弾力感のある食感)及び味(具体的には、タコらしいうまみが残り、かつ異風味(えぐみ、苦味、アルカリ風味等)が無いこと)について、下記の基準に基づき、1点刻みで合議により評点付けを行った。また、食感及び味の評価とあわせて、各蒸しタコの外観(見た目)について、専門パネル3~7名が、下記の基準に基づき、1点刻みで合議により評点付けを行った。
[食感、味の評価基準]
3点:コントロール2に比べて、非常に良い
2点:コントロール2に比べて、良い
1点:コントロール2に比べて、少し良い
0点:コントロール2と変わりなし
-1点:コントロール2に比べて、少し悪い
-2点:コントロール2に比べて、悪い
-3点:コントロール2に比べて、非常に悪い
[外観の評価基準]
0点:コントロール2と変わりなし
-1点:コントロール2に比べて、少し悪い
-2点:コントロール2に比べて、悪い
-3点:コントロール2に比べて、非常に悪い
結果を下表2に示す。
表2に示される結果から明らかなように、タコ肉にプロテアーゼを作用させ、更にコハク酸モノグリセリドを添加して製造した実施例3及び実施例4の蒸しタコ(タコ加工食品)は、タコ肉にプロテアーゼを作用させず、コハク酸モノグリセリドを添加しなかったコントロール2の蒸しタコに比べて食感が良く、また、皮剥がれ等も確認されず、外観を損なうことなく製造歩留りが向上した。コントロール2の蒸しタコは、若干ゴムのような食感で噛み切りにくかったのに対し、実施例3の蒸しタコは、サクッと歯が入り、歯切れが良く、実施例4の蒸しタコは、よりしっかりサクッと歯が入り、更に歯切れが良かった。実施例3及び実施例4の蒸しタコは、コントロール2の蒸しタコに比べて、味も向上した。
当該結果から、タコ肉にプロテアーゼを作用させ、更に有機酸モノグリセリドを添加することよって、タコ加工食品の食感をより効果的に改良し得ること、外観を損なうことなく製造歩留りを向上し得ること、タコ加工食品の味を向上し得ることが確認された。
また、実施例3及び実施例4の蒸しタコは、いずれも水分が保持されたようなみずみずしさがあった。コントロール2の蒸しタコはカットすると、実施例3及び実施例4の蒸しタコよりも多めのドリップが確認され、プロテアーゼ及び有機酸モノグリセリドを併用することにより、タコ加工食品の保水性が向上し、ドリップを抑え得ることが示唆された。
本発明によれば、タコ又はイカ加工食品の食感を改良でき、製造歩留りを向上できる、タコ又はイカ加工食品の改質方法を提供できる。
また本発明によれば、食感が改良され、製造歩留りが向上したタコ又はイカ加工食品の製造方法を提供できる。
更に本発明によれば、タコ又はイカ加工食品の食感を改良でき、製造歩留りを向上できる、タコ又はイカ加工食品の改質剤を提供できる。

Claims (9)

  1. タコ肉に中性プロテアーゼを作用させることを含む、タコ加工食品の製造歩留り向上方法。
  2. タコ肉に、有機酸モノグリセリドを添加することを更に含む、請求項1記載の方法。
  3. 前記方法が、タコ加工食品の食感改良し、かつ製造歩留りを向上するための方法である、請求項1又は2記載の方法。
  4. タコ肉に中性プロテアーゼを作用させることを含む、製造歩留りが向上したコ加工食品の製造方法。
  5. タコ肉に、有機酸モノグリセリドを添加することを更に含む、請求項記載の製造方法。
  6. 前記製造方法が、食感が改良され、かつ製造歩留りが向上したタコ加工食品の製造方法である、請求項又は記載の製造方法。
  7. 中性プロテアーゼを含有する、タコ加工食品の製造歩留り向上剤。
  8. 有機酸モノグリセリドを更に含有する、請求項記載の剤
  9. 前記剤が、タコ加工食品の食感改良し、かつ製造歩留りを向上するための剤である、請求項又は記載の剤
JP2020032162A 2020-02-27 2020-02-27 タコ又はイカ加工食品の改質方法 Active JP7456188B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020032162A JP7456188B2 (ja) 2020-02-27 2020-02-27 タコ又はイカ加工食品の改質方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020032162A JP7456188B2 (ja) 2020-02-27 2020-02-27 タコ又はイカ加工食品の改質方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021132588A JP2021132588A (ja) 2021-09-13
JP7456188B2 true JP7456188B2 (ja) 2024-03-27

Family

ID=77659552

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020032162A Active JP7456188B2 (ja) 2020-02-27 2020-02-27 タコ又はイカ加工食品の改質方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7456188B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004081213A (ja) 2002-06-28 2004-03-18 Sanei Gen Ffi Inc 水産物用処理剤
JP2009089668A (ja) 2007-10-10 2009-04-30 Hiroshima Pref Gov 熟成食品の製造方法
JP2010246501A (ja) 2009-04-20 2010-11-04 Momoya Co Ltd イカ加工食品およびその製造方法
WO2011099354A1 (ja) 2010-02-12 2011-08-18 イーエヌ大塚製薬株式会社 酵素処理液、軟質化方法および軟質化動物性食材
JP2012075360A (ja) 2010-09-30 2012-04-19 Nippon Meat Packers Inc 魚介類成形加工食品

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004081213A (ja) 2002-06-28 2004-03-18 Sanei Gen Ffi Inc 水産物用処理剤
JP2009089668A (ja) 2007-10-10 2009-04-30 Hiroshima Pref Gov 熟成食品の製造方法
JP2010246501A (ja) 2009-04-20 2010-11-04 Momoya Co Ltd イカ加工食品およびその製造方法
WO2011099354A1 (ja) 2010-02-12 2011-08-18 イーエヌ大塚製薬株式会社 酵素処理液、軟質化方法および軟質化動物性食材
JP2012075360A (ja) 2010-09-30 2012-04-19 Nippon Meat Packers Inc 魚介類成形加工食品

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021132588A (ja) 2021-09-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5582308B2 (ja) 米飯食品の製造方法及び米飯食品改質用の酵素製剤
JP5056193B2 (ja) 畜肉加工食品又は水産加工食品の製造方法及び畜肉加工食品又は水産加工食品改質用の酵素製剤
JPWO2017018503A1 (ja) 食肉改質剤
JP6187467B2 (ja) 水産加工食品の製造方法及び水産加工食品改質用の酵素製剤
WO2022054880A1 (ja) 加工タンパク質の製造方法
CN110537675A (zh) 毛肚嫩脆酶处理剂及其制备方法、毛肚嫩脆处理方法、嫩脆毛肚及其熟制方法
JP7456188B2 (ja) タコ又はイカ加工食品の改質方法
JP3352818B2 (ja) 肉類の処理方法
KR100362298B1 (ko) 고기개질제및이를사용하여가공처리된식품육또는고기제품
JPWO2010126165A1 (ja) 食肉の軟化改質方法及び軟化改質剤
JPH0731396A (ja) 食品の老化防止、軟化作用をもつ品質改良剤
JP2022037925A (ja) 食肉改質剤、食肉の改質方法および改質された食肉加工食品の製造方法
JPH06125694A (ja) 冷凍えびの冷凍熟成法及び同方法を利用したえび加工食品
JP7456698B2 (ja) タンパク質食材含有食品の食感改良剤、並びにこれを使用する食感改良方法及びタンパク質食材含有食品の製造方法
JP7298479B2 (ja) 食肉改質用組成物
JP3639781B2 (ja) 炒飯用改質剤
WO2019093454A1 (ja) 食肉改質用組成物
JP7472528B2 (ja) ほぐれ性及び食感が改善された調理麺類の製造方法
CN113632953B (zh) 一种溶栓性核桃仁及其制备方法
JP2000041574A (ja) 食肉の焙乾食品およびその製造方法
JP7419077B2 (ja) 米飯用品質改良剤
US20040228960A1 (en) Dipping agent for meat
JPH0970274A (ja) 食品素材および同素材を使用した食品
WO2023190881A1 (ja) 不快臭マスキング剤
JP2024053948A (ja) 大豆臭軽減のための食品用酵素組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20221115

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20231025

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20231031

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20231227

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20231227

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20240213

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20240226

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7456188

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150