JP7452688B2 - 転舵方法及び転舵装置 - Google Patents
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Description
本発明は、実転舵角と目標転舵角との差に基づいた転舵力で操向輪を転舵する転舵装置において、操舵操作に対する車両挙動の応答が早いことによる運転者の違和感を低減することを目的とする。
本発明の目的及び利点は、特許請求の範囲に示した要素及びその組合せを用いて具現化され達成される。前述の一般的な記述及び以下の詳細な記述の両方は、単なる例示及び説明であり、特許請求の範囲のように本発明を限定するものでないと解するべきである。
(構成)
図1Aは、第1実施形態~第4実施形態の車両の転舵装置の一例の概略構成図である。実施形態の転舵装置は、運転者の操舵入力を受け付ける操舵部31と、操向輪である左右前輪34FL、34FRを転舵する転舵部32と、バックアップクラッチ33と、コントローラ11を備える。
この操舵装置は、バックアップクラッチ33が解放状態になると、操舵部31と転舵部32とが機械的に分離されるステアバイワイヤ(SBW)システムを採用している。以下の説明において左右前輪34FL、34FRを「操向輪34」と表記することがある。
一方で転舵部32は、ピニオンシャフト32aと、ステアリングギア32bと、ラックギア32cと、ステアリングラック32dと、転舵アクチュエータ14と、第2駆動回路15と、転舵角センサ35を備える。
コラムシャフト31bは、ステアリングホイール31aと一体に回転する。
バックアップクラッチ33は、コラムシャフト31bとピニオンシャフト32aとの間に設けられる。そして、バックアップクラッチ33は、解放状態になると操舵部31と転舵部32とを機械的に切り離し、締結状態になると操舵部31と転舵部32とを機械的に接続する。なお、バックアップクラッチ33は、車両の走行時あるいはイグニッションスイッチがオンとされている時などの通常時には解放状態であり、例えば転舵アクチュエータ14や反力アクチュエータ12の異常など、システムに何らかの異常が発生した場合や車両のイグニッションスイッチがオフとされている時(例えば駐車時)に締結状態となるものであり、通常は解放状態とされている。このため、以下ではバックアップクラッチ33は解放状態であり、ステアリングホイール31aと転舵部32とは機械的に切り離されているものとして記載する。
車速センサ17は、実施形態の転舵装置が搭載された車両の車輪速を検出し、車輪速に基づいて車両の車速Vvを算出する。
操舵角センサ19は、コラムシャフト回転角、すなわち、ステアリングホイール31aの操舵角θs(ハンドル角度)を検出する。
転舵角センサ35は、操向輪34の実際の転舵角である実転舵角θtを検出する。
なお、汎用の半導体集積回路中に設定される機能的な論理回路でコントローラ11を実現してもよい。例えば、コントローラ11はフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)等のプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD:Programmable Logic Device)等を有していてもよい。
反力制御部40は、操舵角センサ19が検出した操舵角θsに応じて、ステアリングホイールへ付与する操舵反力トルク(ステアリングホイール31aへ付与する回転トルクであり、以下では反力トルクとも言う)の指令値である反力指令値fsを算出する。
反力アクチュエータ12は、例えば電動モータであってよい。反力アクチュエータ12は、コラムシャフト31bと同軸上に配置された出力軸を有する。
反力アクチュエータ12は、第1駆動回路13から出力される指令電流に応じて、ステアリングホイール31aに付与する回転トルクをコラムシャフト31bに出力する。回転トルクを付与することによって、ステアリングホイール31aに操舵反力トルクを発生させる。
具体的には、転舵制御部41は、操舵角θsに基づいて、操向輪34の転舵角の目標値である目標転舵角θtrを算出する。
転舵制御部41は、転舵力指令値ftを第2駆動回路15に出力する。第2駆動回路15は、転舵力指令値ftに基づいて転舵アクチュエータ14を駆動する。
転舵アクチュエータ14は、例えばブラシレスモータ等の電動モータであってよい。転舵アクチュエータ14の出力軸は、減速機を介してラックギア32cと接続される。
第2駆動回路15は、転舵アクチュエータ14の駆動電流から推定される実際の転舵トルクと、転舵制御部41から出力される転舵力指令値ftが示す転舵トルクとを一致させるトルクフィードバックにより、転舵アクチュエータ14へ出力する指令電流を制御する。あるいは、転舵アクチュエータ14の駆動電流と、転舵力指令値ftに相当する駆動電流とを一致させる電流フィードバックによって、転舵アクチュエータ14へ出力する指令電流を制御してもよい。
このため、転舵角θtの変化の開始直後において、図2C、図2Dに示すように転舵力とセルフアライニングトルクが急増する。
この結果、図2Eに示すように、転舵角θtの変化開始直後ではヨーレイトが急増し、運転者がステアリングホイール31aに加える操舵力に対して車両挙動が速くなって運転者が違和感を覚えることがある。
図3A~図3Dの実線は、図2Aに示した操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせた場合の転舵角θt、転舵力、SAT及びヨーレイトの模式図である。比較のため、位相を遅らせない場合を1点鎖線で示している。
図3Aに示すように転舵力指令値ftの位相を遅らせた結果として転舵角θtが遅れることにより、転舵力、SAT及びヨーレイトの変化を緩やかにすることができる。このため、運転者が加える操舵力に対して車両挙動が速くなることを抑制して、運転者の違和感を低減できる。
図4は、第1実施形態の転舵制御部41の機能構成の一例のブロック図である。転舵制御部41は、転舵角設定部50と、遅延部52と、転舵角制御部53を備える。
転舵角設定部50は、操舵角θsに応じて目標転舵角θtrを算出する。例えば転舵角設定部50は、角度比Raを操舵角θsに乗算して目標転舵角θtrを算出する。
例えば、車速Vvが低い場合には角度比Raを比較的大きな値に設定してステアリングホイール31aの取り回し性を向上させ、車速Vvが高い場合には角度比Raを比較的小さな値に設定して操縦安定性を向上させてもよい。
あるいは、予め操舵角θsに対する目標転舵角θtrを転舵角マップとして記憶しておき、検出した実際の操舵角θsに基づいて転舵角マップを参照して目標転舵角θtrを算出しても良い。また、転舵角マップを車速Vvに応じて複数記憶する事によって、操舵角θsに対する目標転舵角θtrの関係を車速Vvに応じて変化させても良い。
転舵角制御部53は、位相を遅らせた目標転舵角θtrdと実転舵角θtとの差に基づいて、実転舵角θtを目標転舵角θtrdに一致させるための転舵力指令値ftを算出する。
このように、遅延部(遅延手段)52は目標転舵角θtrの位相を遅らせることにより、転舵角制御部53が算出する転舵力指令値ftの位相を、操舵角θsに対して遅らせる。
また、遅延部52は、後述の第2実施形態のように目標転舵角θtrの積分項を目標転舵角θtrの比例項に加算した信号を出力することにより、目標転舵角θtrの位相を遅延させてもよい。
次に、図5を参照して、第1実施形態の転舵方法の一例を説明する。
ステップS1において操舵角センサ19は、ステアリングホイール31aの操舵角θsを検出する。
ステップS2において転舵角センサ35は、操向輪34の実転舵角θtを検出する。
ステップS3において転舵角設定部50は、操舵角θsに応じて目標転舵角θtrを算出する。
ステップS5において転舵角制御部53は、位相を遅らせた目標転舵角θtrdと実転舵角θtとの差に基づいて転舵力指令値ftを算出する。
ステップS6において第2駆動回路15は、転舵力指令値ftに基づいて転舵アクチュエータ14を駆動する。
(1)操舵角センサ19は、ステアリングホイール31aの操舵角θsを検出する。転舵角センサ35は、操向輪34の実転舵角θtを検出する。転舵角設定部50は、操舵角θsに応じて目標転舵角θtrを算出する。遅延部52は、操舵角θsに対して目標転舵角θtrの位相を遅らせる。
これにより、操舵操作に対する車両挙動の応答が早いことにより生じる運転者の違和感を低減できる。
(3)遅延部52は、遅延フィルタであってよい。これにより、操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせることができる。
第2実施形態では、転舵制御部41の遅延部52の一例を提示する。第2実施形態の遅延部52は、転舵角設定部50が設定した目標転舵角θtrの積分項を、目標転舵角θtrの比例項に加算することにより、目標転舵角θtrの位相を遅らせる。
図6Aを参照する。遅延部52は、ゲイン乗算部60と、遅延素子61と、加算器62及び64と、リミッタ63を備える。
遅延素子61は、ゲイン乗算部60の出力(Ki×(1-K)×θtr)の積分値の過去値を保持する。
加算器62は、ゲイン乗算部60の出力(Ki×(1-K)×θtr)を、積分値の過去値に加算することにより、出力(Ki×(1-K)×θtr)を積分する。
ここで係数Ki×(1-K)もまた、1つの積分ゲインとみなすことができる。したがって、加算器62で積分される出力(Ki×(1-K)×θtr)の積分値は、目標転舵角θtrの積分項とみなすことができる。
例えば、リミッタ63は、目標転舵角θtrに応じて変化する制限値により、目標転舵角θtrの積分項の大きさ(すなわち絶対値)を制限値以下に制限してよい。
図6Bを参照する。目標転舵角θtrが大きいほど、制限値はより大きな値を有する。目標転舵角θtrと同様に、車速Vvに応じて制限値を変化させてもよい。
図6Aを参照する。加算器64は、リミッタ63から出力される目標転舵角θtrの積分項を、分配目標転舵角K×θtr(すなわち、目標転舵角θtrの比例項)に加算することにより、位相を遅らせた目標転舵角θtrdを算出する。
このため、目標転舵角θtrが一定になり(すなわち時間変化がなくなり)、分配目標転舵角(1-K)×θtrと、ゲイン乗算部60の出力(Ki×(1-K)×θtr)の積分値と、が等しくなると、ゲイン乗算部60への入力がキャンセルされて積分値が変化しなくなる。
これにより、保舵状態において目標転舵角θtrがゼロでない角度に維持されても、目標転舵角θtrの積分項が増加し続けるのを防止して、遅延部52の出力(すなわち、位相を遅らせた目標転舵角θtrd)を、目標転舵角θtrに応じた角度に固定できる。
(1)遅延部52は、操舵角θsに応じて算出した目標転舵角θtrの積分項を目標転舵角θtrの比例項に加算することにより、目標転舵角θtrの位相を遅らせてもよい。これにより、操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせることができる。
(2)遅延部52は、目標転舵角θtrの変動成分のみを積分することにより算出した積分項を目標転舵角θtrの比例項に加算してもよく、目標転舵角θtrに応じた制限値で、目標転舵角θtrの積分項を制限してから目標転舵角θtrの比例項に加算してもよい。これにより、保舵状態において目標転舵角θtrがゼロでない角度に維持されても、目標転舵角θtrの積分項が増加し続けるのを防止して、遅延部52の出力(すなわち、位相を遅らせた目標転舵角θtrd)を、目標転舵角θtrに応じた角度に固定できる。
上記のとおり、操舵操作に対する車両挙動の応答が速くなるのは、実転舵角θtの変化開始直後である。したがって、実転舵角θtの変化開始直後の期間には、操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせ、それ以外の期間には位相を遅らせないのが好ましい。
そこで、第3実施形態の転舵制御部41は、操舵角θsが所定値未満の場合に操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせ、操舵角θsが所定値以上の場合に操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせない。
例えば、ゲイン設定部70は、操舵角θsに基づいて設定される目標転舵角θtrに応じてゲインGを設定してもよい。上記のとおり、目標転舵角θtrは操舵角θsと角度比Raとの積である。
乗算器71及び73、減算器72及び加算器74は、遅延部52により位相を遅らせた目標転舵角θtrdと、目標転舵角θtrとの重み付け和(G×θtrd+(1-G)×θtr)を算出する。
したがって、目標転舵角θtrがθ2以上の場合には、重み付け和(G×θtrd+(1-G)×θtr)の値は目標転舵角θtrとなって、位相遅れがなくなる。このため、操舵角θsに対する転舵力指令値ftの位相遅れは発生しない。
これにより、操舵角θsが中立位置から変化を開始した直後の期間では、操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせ、それ以外の期間には位相が遅れないように、転舵力指令値ftを生成できる。
第1変形例の転舵制御部41は、操舵角θsの角速度が所定値未満の場合に操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせ、操舵角θsの角速度が所定値以上の場合に操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせない。
これにより、操舵角θsが中立位置から変化を開始した直後だけでなく、操舵角θsが中立位置以外の位置で保舵された状態から変化を開始した直後にも、操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせることができる。
例えば、ゲイン設定部70は、目標転舵角θtrを微分した転舵角速度ωに応じてゲインGを設定してもよい。
ゲイン設定部70は、転舵角速度ωに応じたゲインGを設定する。
図9Bは、ゲインGの一例の説明図である。ゲインGの値は、転舵角速度ωがω1以下である場合に「1」であり、転舵角速度ωがω2以上の場合に「0」である。
したがって、転舵角速度ωがω2以上の場合には、重み付け和(G×θtrd+(1-G)×θtr)の値は目標転舵角θtrとなって、位相遅れがなくなる。このため、操舵角θsに対する転舵力指令値ftの位相遅れは発生しない。
これにより、ステアリングホイール31aが静止した状態から操舵角θsが変化を開始した直後の期間では、操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせ、操舵角θsが変化している期間には位相が遅れないように、転舵力指令値ftを生成できる。
上記の第1変形例の転舵制御部41は、操舵角θsが変化を開始した直後の期間でなくても、操舵角θsが変化している状態からステアリングホイール31aが静止した保舵状態に移る期間に、操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせるおそれがある。保舵状態に移る期間では操舵角θsの角速度が小さくなるためである。
これにより、保舵状態に移る期間に操舵角θsの角速度が小さくなっても、操舵角θsの角加速度を検出して、転舵力指令値ftの位相を遅らせるのを抑制できる。
例えば、ゲイン設定部70は、目標転舵角θtrを2階微分した転舵角加速度αに応じてゲインGを設定してもよい。
ゲイン設定部70は、転舵角加速度αに応じたゲインGを設定する。図10Bは、ゲインGの一例の説明図である。ゲインGの値は、転舵角加速度αがα1以下である場合に「1」であり、転舵角加速度αがα2以上の場合に「0」である。
したがって、転舵角加速度αがα2以上の場合には、重み付け和(G×θtrd+(1-G)×θtr)の値は目標転舵角θtrとなって、位相遅れがなくなる。このため、操舵角θsに対する転舵力指令値ftの位相遅れは発生しない。
これにより、ステアリングホイール31aが静止した状態から操舵角θsが変化を開始し、操舵角θsの変化開始直後のまだ角加速度が小さい初期の期間において、操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせることができる。
また、操舵角θsが変化している状態からステアリングホイール31aが静止した保舵状態に移る期間において、操舵角θsの角速度が小さくなっても、操舵角θsの角加速度を検出して、転舵力指令値ftの位相を遅らせるのを抑制できる。
第3変形例の転舵制御部41は、ステアリングホイール31aに加わる操舵トルクTsが所定値未満の場合に操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせ、操舵トルクTsが所定値以上の場合に操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせない。
第3変形例の転舵制御部41は、第2変形例の転舵制御部41の効果と同様の効果を奏する。
したがって、操舵トルクTsがT2以上の場合には、重み付け和(G×θtrd+(1-G)×θtr)の値は目標転舵角θtrとなって、位相遅れがなくなる。このため、操舵角θsに対する転舵力指令値ftの位相遅れは発生しない。
一方で、操舵トルクTsがT2未満の場合には重み付け和(G×θtrd+(1-G)×θtr)は、位相を遅らせた目標転舵角θtrdの成分を含むため、操舵角θsに対して位相が遅れる。このため操舵角θsに対する転舵力指令値ftの位相遅れが発生する。
第4変形例の転舵制御部41は、操舵トルクTsの時間変化jが所定値未満の場合に操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせ、操舵トルクTsの時間変化jが所定値以上の場合に操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせない。
操舵トルクTsの時間変化jを、操舵角θsの操舵角躍度(操舵角加加速度、操舵角ジャーク)に代えてもよい。
また、操舵角θsが変化している状態からステアリングホイール31aが静止した保舵状態に移る期間において、保舵状態に移る直前に操舵角躍度が小さくなる時点まで、転舵力指令値ftの位相を遅らせるのを抑制できる。
ゲイン設定部70は、時間変化jに応じたゲインGを設定する。図12Bは、ゲインGの一例の説明図である。ゲインGの値は、時間変化jがj1以下である場合に「1」であり、時間変化jがj2以上の場合に「0」である。
したがって、時間変化jがj2以上の場合には、重み付け和(G×θtrd+(1-G)×θtr)の値は目標転舵角θtrとなって、位相遅れがなくなる。このため、操舵角θsに対する転舵力指令値ftの位相遅れは発生しない。
一方で、時間変化jがj2未満の場合には重み付け和(G×θtrd+(1-G)×θtr)は、位相を遅らせた目標転舵角θtrdの成分を含むため、操舵角θsに対して位相が遅れる。このため、操舵角θsに対する転舵力指令値ftの位相遅れが発生する。
転舵制御部41は、操舵角θs、又は操舵角θsの操舵角速度、操舵角加速度、若しくは操舵角躍度、ステアリングホイール31aに加わる操舵トルクTs、又は操舵トルクTsの時間変化jが所定値未満の場合に、操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせる。
これにより、操舵操作に対する車両挙動の応答が速くなる転舵角θtの変化開始直後の期間に操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせ、それ以外の期間に位相を遅らせるのを抑制できる。
上記の第1実施形態の転舵制御部41は、目標転舵角θtrの位相を遅らせることにより、操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせる。
これに代えて第4実施形態の転舵制御部41は、転舵角制御部53が出力する転舵力指令値の位相を遅らせることにより、操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせる。
これにより、第1実施形態の転舵制御部41の効果と同様の効果を奏する。
転舵角制御部53は、転舵角設定部50が設定した目標転舵角θtrと実転舵角θtとの差に基づいて、実転舵角θtを目標転舵角θtrに一致させるための基準転舵力指令値ft0を算出する。
遅延部52は、転舵角制御部53が出力する基準転舵力指令値ft0の位相を遅らせて(遅延させて)、転舵力指令値ftとして出力する。遅延部52は、例えば位相遅れフィルタ(遅延フィルタ)であってよい。
ステップS11~S13の処理は、図5のステップS1~S3の処理と同様である。
ステップS14において転舵角制御部53は、転舵角設定部50が設定した目標転舵角θtrと実転舵角θtとの差に基づいて、実転舵角θtを目標転舵角θtrに一致させるための基準転舵力指令値ft0を算出する。
ステップS16の処理は、図5のステップS7の処理と同様である。
第4実施形態の転舵制御部41は、第3実施形態の転舵制御部41と同様に、操舵角θsが所定値未満の場合に操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせ、操舵角θsが所定値以上の場合に操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせない。
ゲイン設定部70は、第3実施形態のゲイン設定部70と同様に操舵角θsに応じたゲインGを設定する。ゲインGは、操舵角θsが所定値未満の場合にゼロでなく、操舵角θsが所定値以上の場合にゼロとなるゲインである。
乗算器71及び73、減算器72及び加算器74は、遅延部52により基準転舵力指令値ft0の位相を遅らせた転舵力指令値ft1と、基準転舵力指令値ft0との重み付け和(G×ft1+(1-G)×ft0)を、転舵力指令値ftとして算出する。
一方で、操舵角θsが所定値未満の場合には重み付け和(G×ft1+(1-G)×ft0)は、位相を遅らせた転舵力指令値ft1の成分を含む。このため、第3実施形態と同様に、操舵角θsに対する転舵力指令値ftの位相遅れが発生する。
これにより、第4実施形態の転舵制御部41は、操舵角θsの操舵角速度、操舵角加速度、若しくは操舵角躍度、ステアリングホイール31aに加わる操舵トルクTs、又は操舵トルクTsの時間変化jが所定値以上の場合に操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせず、これら操舵角速度、操舵角加速度、操舵角躍度、操舵トルクTs、又は操舵力の時間変化jが、所定値未満の場合に遅らせてもよい。
転舵制御部41は、実転舵角θtと目標転舵角θtrとの差に基づいて算出した転舵力指令値ftの位相を遅らせることにより、操舵角θsに対して転舵力指令値ftの位相を遅らせてもよい。
これにより、運転者が加える操舵力に対する車両挙動の応答が速くなることを抑制し、運転者の違和感を低減できる。
Claims (10)
- 車両の操向輪を転舵する転舵方法であって、
ステアリングホイールの操舵角を検出し、
操向輪の実際の転舵角である実転舵角を検出し、
検出された前記操舵角に応じて前記操向輪の目標転舵角を算出し、
前記実転舵角と前記目標転舵角との差に基づいて、前記実転舵角を前記目標転舵角に一致させるための転舵力指令値を算出し、
前記検出された操舵角に応じて算出した前記目標転舵角の積分項を前記目標転舵角の比例項に加算することにより、前記目標転舵角の位相を遅らせ、
前記検出された操舵角に応じて算出した前記目標転舵角の位相を遅らせることにより、前記検出された操舵角に対して前記転舵力指令値の位相を遅らせ、
位相を遅らせた前記転舵力指令値に応じて前記操向輪を転舵する転舵力を発生させる、
ことを特徴とする転舵方法。 - 前記目標転舵角の変動成分のみを積分することにより前記積分項を算出し、又は前記目標転舵角に応じた制限値で前記積分項を制限することを特徴とする請求項1に記載の転舵方法。
- 車両の操向輪を転舵する転舵方法であって、
ステアリングホイールの操舵角を検出し、
操向輪の実際の転舵角である実転舵角を検出し、
検出された前記操舵角に応じて前記操向輪の目標転舵角を算出し、
前記実転舵角と前記目標転舵角との差に基づいて、前記実転舵角を前記目標転舵角に一致させるための転舵力指令値を算出し、
前記検出された操舵角、又は該操舵角の操舵角速度、操舵角加速度、若しくは操舵角躍度、前記ステアリングホイールに加わる操舵力、又は該操舵力の時間変化が所定値未満の場合に、前記検出された操舵角に対して前記転舵力指令値の位相を遅らせ、
位相を遅らせた前記転舵力指令値に応じて前記操向輪を転舵する転舵力を発生させる、
ことを特徴とする転舵方法。 - 前記検出された操舵角に応じて算出した前記目標転舵角の位相を遅らせることにより、前記検出された操舵角に対して前記転舵力指令値の位相を遅らせることを特徴とする請求項3に記載の転舵方法。
- 前記実転舵角と前記目標転舵角との差に基づいて算出した前記転舵力指令値の位相を遅らせることにより、前記検出された操舵角に対して前記転舵力指令値の位相を遅らせることを特徴とする請求項3に記載の転舵方法。
- 遅延フィルタを用いて位相を遅らせることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載の転舵方法。
- 前記検出された操舵角に応じて算出した前記目標転舵角の積分項を前記目標転舵角の比例項に加算することにより、前記目標転舵角の位相を遅らせることを特徴とする請求項4に記載の転舵方法。
- 前記目標転舵角の変動成分のみを積分することにより前記積分項を算出し、又は前記目標転舵角に応じた制限値で前記積分項を制限することを特徴とする請求項7に記載の転舵方法。
- 車両の操向輪を転舵する転舵装置であって、
ステアリングホイールの操舵角を検出する第1センサと、
操向輪の実際の転舵角である実転舵角を検出する第2センサと、
前記操向輪を転舵する転舵力を発生させるアクチュエータと、
前記第1センサが検出した前記操舵角に応じて前記操向輪の目標転舵角を算出し、前記実転舵角と前記目標転舵角との差に基づいて、前記実転舵角を前記目標転舵角に一致させるための転舵力指令値を算出すると共に、前記検出された操舵角に対して前記転舵力指令値の位相を遅らせる遅延手段を有し、前記遅延手段によって位相を遅らせた前記転舵力指令値に応じて前記アクチュエータを駆動するコントローラと、
を備え、
前記遅延手段は、前記検出された操舵角に応じて算出した前記目標転舵角の積分項を前記目標転舵角の比例項に加算することにより、前記目標転舵角の位相を遅らせ、前記検出された操舵角に応じて算出した前記目標転舵角の位相を遅らせることにより、前記検出された操舵角に対して前記転舵力指令値の位相を遅らせることを特徴とする転舵装置。 - 車両の操向輪を転舵する転舵装置であって、
ステアリングホイールの操舵角を検出する第1センサと、
操向輪の実際の転舵角である実転舵角を検出する第2センサと、
前記操向輪を転舵する転舵力を発生させるアクチュエータと、
前記第1センサが検出した前記操舵角に応じて前記操向輪の目標転舵角を算出し、前記実転舵角と前記目標転舵角との差に基づいて、前記実転舵角を前記目標転舵角に一致させるための転舵力指令値を算出すると共に、前記検出された操舵角、又は該操舵角の操舵角速度、操舵角加速度、若しくは操舵角躍度、前記ステアリングホイールに加わる操舵力、又は該操舵力の時間変化が所定値未満の場合に、前記検出された操舵角に対して前記転舵力指令値の位相を遅らせる遅延手段を有し、前記遅延手段によって位相を遅らせた前記転舵力指令値に応じて前記アクチュエータを駆動するコントローラと、
を備えることを特徴とする転舵装置。
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