JP7440002B1 - 硫化物系固体電解質の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、炉体内で第1の硫化物系固体電解質原料を加熱溶融して第1の融液を得、前記第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料を供給し、硫黄元素を含むガス雰囲気下で加熱溶融し、得られた第2の融液を冷却する、硫化物系固体電解質の製造方法に関する。

Description

本発明は、硫化物系固体電解質の製造方法及び製造装置に関する。
リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の携帯型電子機器に広く用いられている。従来、リチウムイオン二次電池においては液体の電解質が使用されてきた。一方で、安全性の向上や高速充放電、ケースの小型化等が期待できる点から、近年、固体電解質をリチウムイオン二次電池の電解質として用いる全固体型リチウムイオン二次電池が注目されている。
全固体型リチウムイオン二次電池に用いられる固体電解質として、例えば硫化物系固体電解質が挙げられる。
硫化物系固体電解質を溶融法で合成するにあたって、例えば600℃以上の温度で混合原料を加熱する必要がある。しかし、原料の五硫化二リン(P)の沸点が514℃と低いため、高温で混合原料を加熱すると当該原料の一部が揮発してしまい、得られる固体電解質の組成制御が難しいという問題があった。
上記問題を解決する手段として、例えば特許文献1には、リチウム、硫黄、リンを含む複合化合物を事前に合成し、当該複合化合物を原料に用いて溶融を実施することで、原料成分の揮散を防ぐ方法が開示されている。
他の解決手段として、特許文献2には、原料を圧縮しながら加熱して溶融することで、成分の揮発を防止し、冷却凝固させて硫化物系固体電解質を合成する手法が開示されている。
また、特許文献3には、原料を所定の化学量論比で混合した後、この混合物を硫黄の過剰状態下で加熱溶融することで、硫黄の揮発を防ぐ方法が開示されている。
日本国特開2012-43654号公報 日本国特許第5640665号公報 日本国特許第3284215号公報
しかしながら、特許文献1の方法では、リチウム、硫黄、リンを含む複合化合物を事前に合成する必要があるため、製造工程が複雑化し、多くの時間を要してしまう。
また、特許文献2の方法では、原料を圧縮する必要があるため設備構造が非常に複雑となり、多量に固体電解質を生産することが難しい。
また、特許文献3の方法では、硫黄の揮発は防ぐことができるものの、リンの揮発は抑えられないため、組成制御が難しい。
上記の事情に鑑み、本発明は、原料の揮発を抑えつつ、短時間で多量の硫化物系固体電解質を製造する方法及び製造装置を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討の結果、炉体内で第1の硫化物系固体電解質原料を加熱溶融して得られる融液に対し、さらに第2の硫化物系固体電解質原料を供給することにより、融液に供給された第2の硫化物系固体電解質原料の温度が急激に上昇し、融液と混ざり合いながら瞬間的に溶融できることを見出した。これにより、原料の揮発を抑えつつ、短時間で多量の硫化物系固体電解質を製造することが可能となり、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]~[16]に関する。
[1]炉体内で第1の硫化物系固体電解質原料を加熱溶融して第1の融液を得、前記第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料を供給し、硫黄元素を含むガス雰囲気下で加熱溶融し、得られた第2の融液を冷却する、硫化物系固体電解質の製造方法。
[2]前記第1の融液100質量%に対し、前記第2の硫化物系固体電解質原料を5質量%/min以下の速度で供給する、上記[1]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[3]前記第1の硫化物系固体電解質原料の組成は、前記第2の硫化物系固体電解質原料の組成と同じである、上記[1]または[2]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[4]前記第1の融液に硫黄源を供給することにより前記硫黄元素を含むガス雰囲気を得る、上記[1]または[2]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[5]前記炉体に硫黄蒸気を導入することにより前記硫黄元素を含むガス雰囲気を得る、上記[1]または[2]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[6]前記炉体内で硫黄を200~450℃で加熱して前記硫黄蒸気を発生させる、上記[5]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[7]前記第1の融液に対して前記第2の硫化物系固体電解質原料を連続的に供給する、上記[1]または[2]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[8]前記炉体から前記第2の融液を連続的に排出して冷却する、上記[1]または[2]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[9]前記第1の硫化物系固体電解質原料または前記第2の硫化物系固体電解質原料の加熱温度が600℃以上900℃未満である、上記[1]または[2]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[10]双ローラーを用いて前記第2の融液を冷却する、上記[1]または[2]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[11]炉体と、
前記炉体を加熱するための加熱部と、
前記炉体に第1の硫化物系固体電解質原料を供給するための第1原料供給部と、
前記炉体に供給された前記第1の硫化物系固体電解質原料が加熱溶融されて得られる第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料を供給するための第2原料供給部と、
前記炉体内の第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料が供給されて得られる第2の融液を排出するための排出部と、
前記排出部から排出された前記第2の融液を冷却するための冷却部と、
を備える、硫化物系固体電解質の製造装置。
[12]前記炉体に硫黄源または硫黄蒸気を供給するための硫黄供給部を備える、上記[11]に記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
[13]前記第2原料供給部は前記第2の硫化物系固体電解質原料を前記第1の融液に連続的に供給する、上記[11]または[12]に記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
[14]前記第2原料供給部は前記第2の硫化物系固体電解質原料を前記第1の融液に定量供給する、上記[11]または[12]に記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
[15]前記冷却部は双ローラーを有する、上記[11]または[12]に記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
[16]前記冷却部で冷却されて得られる硫化物系固体電解質を再加熱するための再加熱部を備える、上記[11]または[12]に記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
本発明によれば、炉体内で第1の硫化物系固体電解質原料を加熱溶融して得られる融液に対し、さらに第2の硫化物系固体電解質原料を供給し、硫黄元素を含むガス雰囲気下で加熱溶融することで、供給された第2の硫化物系固体電解質原料の温度が急激に上昇し、融液と混ざり合いながら瞬間的に溶融できる。そのため、原料の揮発を抑えつつ、短時間で多量の硫化物系固体電解質を製造できる。
図1は、本発明の実施形態の硫化物系固体電解質の製造方法のフローチャートである。 図2の(a)は、炉体10に第1の硫化物系固体電解質原料12を導入し、第1の硫化物系固体電解質原料12が加熱溶融されることで、融液面13を有する第1の融液11が得られた状態を示す模式図である。図2の(b)は、炉体10の底面の一部のみに第1の融液11が存在し、炉体10内に融液面が形成されていない状態を示す模式図である。 図3は、炉体20内で形成された第1の融液に対し、第2の硫化物系固体電解質原料22を供給して加熱溶融することで、第2の融液21が得られた状態を示す模式図である。 図4の(a)は、炉体30内で形成された第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料32とともに硫黄源33aを供給し、硫黄源33aを加熱することで、硫黄雰囲気を得る態様を説明するための模式図である。図4の(b)は、予め得られた硫黄蒸気33bを炉体30内に導入することにより硫黄雰囲気を得る態様を説明するための模式図である。 図5は、炉体40に備えられた排出部44から第2の融液41を排出し、冷却工程へ移行する流れを説明するための模式図である。 図6は、本発明の実施形態の硫化物系固体電解質の製造装置の一例を示す模式図である。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際の装置等のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
[硫化物系固体電解質の製造方法]
本発明の実施形態の硫化物系固体電解質の製造方法(以下、本製造方法ともいう)は、炉体内で第1の硫化物系固体電解質原料を加熱溶融して第1の融液を得、前記第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料を供給し、硫黄元素を含むガス雰囲気下で加熱溶融し、得られた第2の融液を冷却することを特徴とする。
図1に、本製造方法のフローチャートを示す。本製造方法では、まず炉体内で第1の硫化物系固体電解質原料を加熱溶融し(ステップS1)、第1の融液を得る(ステップS2)。
炉体としては、別途加熱部を有し、従来固体電解質原料を加熱溶融するのに用いられる公知のものを適宜使用でき、炉体の材質や大きさも任意に選択できる。
上記第1の融液の量は、炉体内で少なくとも融液面を形成できる程度の量であればよく、少量であってもよい。ここで、融液面とは、図2の(a)に示すように、融液により形成される炉体の底面の全面を覆う液面を意味し、例えば、図2の(b)に示すように炉体の底面の一部のみに融液が存在する場合を含まない。得られた融液によって炉体内に一旦融液面が形成されれば、追加の原料(第2の硫化物系固体電解質原料)を供給することによって、当該原料は、その温度が急激に上昇するため瞬間的に溶融する。そのため、原料を追加するに応じて、次々と連続的に融液を合成でき、その後の冷却工程を経ることによって、短時間で硫化物系固体電解質が得られる。これにより、多量の硫化物系固体電解質を製造する場合であっても、その製造時間を大幅に短縮できる。また、硫化物系固体電解質を短時間で製造できるため、製造過程における原料の揮発を抑制できる。
なお、本明細書において、「第1の硫化物系固体電解質原料」とは、炉体内で少なくとも融液面を形成できる程度の量の融液を得るために、炉体内に最初に供給され加熱溶融される硫化物系固体電解質原料をいい、融液合成のいわゆるスターターとなる原料を意味する。また「第1の融液」とは、上記「第1の硫化物系固体電解質原料」を加熱溶融して得られる融液を意味する。
「第2の硫化物系固体電解質原料」とは、上記第1の融液に対して、さらに供給される硫化物系固体電解質原料を意味する。なお、「第1の融液」に対して硫化物系固体電解質原料を供給して得られる融液に対して、さらに供給される硫化物系固体電解質原料も「第2の硫化物系固体電解質原料」に含まれる。
また「第2の融液」とは、上記「第1の融液」に対して、上記「第2の硫化物系固体電解質原料」を供給し加熱溶融して得られる融液を意味する。なお、「第1の融液」に「第2の硫化物系固体電解質原料」を供給し加熱溶融して得られる融液に対し、さらに「第2の硫化物系固体電解質原料」を供給し加熱溶融して得られる融液も「第2の融液」に含まれる。
(硫化物系固体電解質原料)
本製造方法において、第1の硫化物系固体電解質原料および第2の硫化物系固体電解質原料としては種々の原料を使用でき、これらを用いて得られる硫化物系固体電解質も同様に種々の硫化物系固体電解質であってよい。第1の硫化物系固体電解質原料および第2の硫化物系固体電解質原料としては、組成が同じものを用いてもよく、組成が異なるものを用いてもよい。なかでも、第1の硫化物系固体電解質原料の組成は、第2の硫化物系固体電解質原料の組成と同じであるのが好ましい。以下、第1の硫化物系固体電解質原料および第2の硫化物系固体電解質原料をまとめて「硫化物系固体電解質原料」または「本原料」と呼ぶことがある。
本原料としては、市販の硫化物系固体電解質原料を用いてもよく、材料から硫化物系固体電解質原料を製造したものを用いてもよい。また、これらの硫化物系固体電解質原料にさらに公知の前処理を施してもよい。すなわち、本製造方法は、本原料を製造する工程や、本原料に前処理を施す工程を適宜含んでもよい。
以下、硫化物系固体電解質原料について具体的に説明する。硫化物系固体電解質原料としては、通常、アルカリ金属元素(R)及び硫黄元素(S)を含む。
アルカリ金属元素(R)としては、リチウム元素(Li)、ナトリウム元素(Na)、及びカリウム元素(K)等が挙げられ、なかでも、リチウム元素(Li)が好ましい。
アルカリ金属元素(R)としては、アルカリ金属元素単体やアルカリ金属元素を含む化合物等のアルカリ金属元素を含む物質(成分)等を適宜組み合わせて使用できる。なかでも、リチウム元素としては、Li単体やLiを含む化合物等のLiを含む物質(成分)等を適宜組み合わせて使用できる。
リチウム元素(Li)を含む物質としては、例えば、硫化リチウム(LiS)、ヨウ化リチウム(LiI)、炭酸リチウム(LiCO)、硫酸リチウム(LiSO)、酸化リチウム(LiO)および水酸化リチウム(LiOH)等のリチウム化合物や、金属リチウム等が挙げられる。リチウム元素(Li)を含む物質としては、硫化物材料を得る観点からは、硫化リチウムを用いることが好ましい。
硫黄元素(S)としては、S単体やSを含む化合物等のSを含む物質(成分)等を適宜組み合わせて使用できる。
硫黄元素(S)を含む物質としては、例えば、三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン、リンを含有するその他の硫黄化合物および単体硫黄、硫黄を含む化合物等が挙げられる。硫黄を含む化合物としては、HS、CS、硫化鉄(FeS、Fe、FeS、Fe1-xSなど)、硫化ビスマス(Bi)、硫化銅(CuS、CuS、Cu1-xSなど)が挙げられる。硫黄元素(S)を含む物質は、硫化物材料を得る観点から、硫化リンが好ましく、五硫化二リン(P)がより好ましい。これらの物質は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、硫化リンはSを含む物質と、後述するPを含む物質を兼ねる化合物として考えられる。
本原料は、得られる硫化物系固体電解質のイオン伝導率向上等の観点から、さらにリン元素(P)を含むのが好ましい。リン元素(P)としては、P単体やPを含む化合物等のPを含む物質(成分)等を適宜組み合わせて使用できる。
リン元素(P)を含む物質としては、例えば、三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン、リン酸ナトリウム(NaPO)等のリン化合物および単体リン等が挙げられる。リン元素(P)を含む物質としては、本発明の効果がより発揮されるという観点から、揮散性の高い硫化リンが好ましく、五硫化二リン(P)がより好ましい。これらの物質は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本原料は、例えば上記の物質を、目的とする硫化物系固体電解質の組成に応じて適宜混合することで、混合原料として得てもよい。混合比率は特に限定されないが、例えば、原料中のアルカリ金属元素(R)に対する硫黄元素(S)のモル比S/Rは、得られる硫化物系固体電解質のイオン伝導率向上等の観点から、0.65/0.35以下が好ましく、0.5/0.5以下がより好ましい。また、当該混合原料は、混合に用いる物質に応じた所定の化学量論比で混合して得るのが好ましい。上記混合の方法としては、例えば、乳鉢での混合、遊星ボールミルのようなメディアを用いた混合、ピンミルや粉体撹拌機、気流混合の様なメディアレス混合等が挙げられる。
本原料に含まれるアルカリ金属元素及び硫黄元素の好ましい組み合わせの一例として、LiSとPの組み合わせが挙げられる。LiSとPを組み合わせる場合は、LiとPのモル比Li/Pは40/60~88/12が好ましく、50/50~88/12がより好ましい。PがLiSに対して比較的少なくなるように混合比を調整することで、LiSの融点に対しPの沸点が小さいことによる、加熱処理時の硫黄成分とリン成分の揮散を抑制しやすくなる。
一方で、硫化リチウムは高価であるため、硫化物系固体電解質の製造コストを抑える観点からは、硫化リチウム以外のリチウム化合物や、金属リチウム等を用いてもよい。具体的にはこの場合、原料はLiを含む物質として、金属リチウム、ヨウ化リチウム(LiI)、炭酸リチウム(LiCO)、硫酸リチウム(LiSO)、酸化リチウム(LiO)および水酸化リチウム(LiOH)からなる群から選ばれる1以上を含むことが好ましい。これらの物質は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本原料は、目的とする硫化物系固体電解質の組成に応じて、または添加剤等として、上記の物質の他にさらなる物質(化合物等)を含んでもよい。
例えば、F、Cl、BrまたはIなどのハロゲン元素を含む硫化物系固体電解質を製造する場合、原料はハロゲン元素(Ha)を含むことが好ましい。この場合、原料はハロゲン元素を含む化合物を含むことが好ましい。ハロゲン元素を含む化合物としてはフッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)等のハロゲン化リチウム、ハロゲン化リン、ハロゲン化ホスホリル、ハロゲン化硫黄、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化ホウ素等が挙げられる。ハロゲン元素を含む化合物としては、原料の反応性の観点からは、ハロゲン化リチウムが好ましく、LiCl、LiBr、LiIがより好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ハロゲン化リチウム等のハロゲン化アルカリ金属は、Li等のアルカリ金属元素を含む化合物でもある。原料がハロゲン化アルカリ金属を含む場合、原料におけるLi等のアルカリ金属元素の一部または全部がハロゲン化リチウム等のハロゲン化アルカリ金属に由来するものであってもよい。
原料がハロゲン元素(Ha)およびリン元素(P)を含む場合、原料中のPに対するHaのモル当量は、得られる硫化物系固体電解質のイオン伝導率向上等の観点からは、0.2モル当量以上が好ましく、0.5モル当量以上がより好ましい。また、得られる硫化物系固体電解質の安定性の観点からは、Haのモル当量は4モル当量以下が好ましく、3モル当量以下がより好ましい。
得られる硫化物系固体電解質は、その目的に応じて、非晶質の硫化物系固体電解質であってもよく、非晶質相の生成のしやすさを改善する観点からは、原料がSiS、B、GeS、Al等の硫化物を含むことも好ましい。非晶質相を形成し易くすることで、急冷により非晶質を得る場合に冷却速度を低下させても、非晶質の硫化物系固体電解質を得ることができ、設備負荷を軽減できる。
また硫化物系固体電解質の耐湿性付与等の観点からは、SiO、B、GeO、Al、P等の酸化物を含むことも好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記硫化物や酸化物は本原料に含んでもよいし、本原料を加熱溶融する際に別途添加してもよい。また、上記硫化物や酸化物の添加量は、原料全量に対し0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましい。また、上記硫化物や酸化物の添加量は、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。
また、原料は、後述する結晶核となる化合物を含んでいてもよい。
本製造方法は、上述のとおり原料の揮発を抑制できるため、本原料に揮散性の高い化合物を含む場合に、特に好適に用いられる。揮散性の高い化合物としては、例えば、LiI、B、S、Se、Sb、及びP等が挙げられる。
(加熱溶融)
本製造方法では、図2の(a)に示すように、まず、炉体10に導入された第1の硫化物系固体電解質原料12を加熱溶融して第1の融液11を得る。後述するように、炉体10は、別途加熱部(図示せず)によって、第1の硫化物系固体電解質原料12が溶融する温度に加熱される。
上記加熱溶融により得られる第1の融液11は、図2の(a)に示すように、炉体10内で少なくとも融液面13を形成できる程度の量とするのが好ましい。上述したとおり、第1の融液11によって炉体10内に一旦融液面13が形成されれば、追加の原料(第2の硫化物系固体電解質原料)を供給することによって、供給された追加の原料の温度が急激に上昇し瞬間的に溶融するため、次々と融液を合成できる。一方、図2の(b)に示すように、炉体10の底面の一部のみに第1の融液11が存在する場合のように、炉体10内に融液面が形成されない場合は、第1の融液11と後述する第2の硫化物系固体電解質原料とが十分に混ざり合わないおそれがあり、効率良く硫化物系固体電解質の合成を行うことができない。
上記の観点から、第1の融液11に対する第1の融液に最初に追加する原料(第2の硫化物系固体電解質原料)の比率(質量比)は、例えば、2以上であってよく、5以上であってよく、10以上であってよい。
つづいて、図1、3に示すように、上記で得られた第1の融液に対し、第2の硫化物系固体電解質原料22を供給して(ステップS3)、硫黄元素を含むガス雰囲気下で加熱溶融する(ステップS4)。当該第1の融液は後述するとおり、通常600~1000℃にまで加熱溶融されているため、当該第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料22をさらに供給することによって、供給された第2の硫化物系固体電解質原料22の温度が急激に上昇し、上記第1の融液と混ざり合うことで、第2の融液21が得られる(ステップS5)。
なお、本製造方法では、第1の硫化物系固体電解質原料12を加熱溶融して第1の融液11を得た後、そのまま連続的に第2の硫化物系固体電解質原料22を供給することで、中間体を経ることなく第2の融液21を得るものであってよい。ここで中間体とは原料が反応して原料とは化学結合が異なる化合物であり、目的の電解質とも化学結合状態が異なるものを指す。例えば、リチウム元素、硫黄元素およびリン元素を含む原料を加熱処理して得られるLi、LiPS等のLi、PおよびSを含む化合物が挙げられる。本製造方法によれば、上記の中間体製造の事前工程を必要とせず工程が単純化できる。また、短時間で多量の硫化物系固体電解質を製造できるため、中間体を経てから組成の制御を行うことを要しない。
本製造方法は、上述のとおり、第1の融液に供給された第2の硫化物系固体電解質原料の温度が急激に上昇し、融液と混ざり合いながら瞬間的に溶融することを見出したことに基づくものである。そのため、第1の融液の量に対する第2の硫化物系固体電解質原料の投入速度を調整することが好ましい。第1の融液に対し、第2の硫化物系固体電解質原料22を供給する速度は、第1の融液100質量%に対し、第2の硫化物系固体電解質原料22を5質量%/min以下となるように調整するのが好ましい。上記速度は、3.5質量%/min以下に調整するのがさらに好ましく、また、質量0.01%/min以上であってよく、0.05質量%/min以上であってよい。
第2の硫化物系固体電解質原料22は、第1の融液に連続的に供給されてもよいし、間欠的に供給されてもよい。なかでも、第2の硫化物系固体電解質原料22は、第1の融液に連続的に供給されるのが好ましい。第2の硫化物系固体電解質原料22を連続的に供給する場合、供給される原料が瞬間的に溶融するため、連続的に次々と融液を合成でき、続く冷却工程へ移行できるため、効率良く短時間で、多量の硫化物系固体電解質を合成できる。
第1の融液に対し第2の硫化物系固体電解質原料22を連続的に供給する場合、第2の硫化物系固体電解質原料22を定量供給するのが好ましい。上記定量供給の方法としては、特に制限されないが、例えば、スクリューフィーダー、テーブルフィーダー、気流搬送等を用いる方法が挙げられる。
第2の硫化物系固体電解質原料22は、第1の融液に供給する前に混合撹拌するのが好ましい。これにより、第2の硫化物系固体電解質原料22が融液と混ざり合った瞬間に合成反応がより良好に進行するため、より効率的な溶融が実現できる。第2の硫化物系固体電解質原料22に対する混合撹拌の方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。
第1の融液に対し、第2の硫化物系固体電解質原料を供給して加熱溶融する際は、硫黄元素を含むガス雰囲気下で行う。硫黄元素を含むガス雰囲気下で本原料を加熱溶融することで、第1の融液に硫黄が導入されるため、揮発に伴う硫黄の組成変化を抑制できる。あるいは、第1の融液に対し、第2の硫化物系固体電解質原料を供給して加熱溶融することで第2の融液を得た後に、硫黄元素を含むガス雰囲気下で第2の融液の加熱溶融を継続して行ってもよい。これにより、加熱溶融時に揮発して減少した分の硫黄が補充されるため、得られる硫化物系固体電解質における硫黄の組成変化を抑制できる。
上記硫黄元素を含むガスとしては、例えば、硫黄ガス、硫化水素ガス、二硫化炭素ガス等、硫黄元素を含む化合物又は硫黄単体を含むガスが挙げられる。
上記硫黄元素を含むガス雰囲気は、図4の(a)に示すように、第1の融液に硫黄源33aを供給し、硫黄源33aを加熱することで発生する硫黄元素を含むガスにより得てもよい。この場合、硫黄源33aは加熱により硫黄元素を含むガスが得られる単体硫黄または硫黄化合物であれば特に限定されないが、例えば、単体硫黄、硫化水素、二硫化炭素等の有機硫黄化合物、硫化鉄(FeS、Fe、FeS、Fe1-xSなど)、硫化ビスマス(Bi)、硫化銅(CuS、CuS、Cu1-xSなど)、多硫化リチウム、多硫化ナトリウム等の多硫化物、ポリスルフィド、硫黄加硫処理を施されたゴム等が挙げられる。硫黄源33aとして好ましくは、硫黄粉末が挙げられる。
また、別の方法として、硫黄元素を含むガス雰囲気は、図4の(b)に示すように、予め得られた硫黄蒸気33bを炉体30内に導入することにより得てもよい。例えば、硫黄を200~450℃で加熱し、硫黄蒸気33bを発生させ、Nガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスをキャリアガスとして炉体内に搬送することで、硫黄元素を含むガス雰囲気が得られる。
また、別の方法として、硫黄元素を含むガス雰囲気は、第1の硫化物系固体電解質原料および第2の硫化物系固体電解質原料の少なくとも一方に硫黄源を含有させておくことにより得てもよい。これにより、本原料を加熱溶融する際に、硫黄源も併せて加熱されるため、発生した硫黄元素を含むガス雰囲気下で本原料の加熱溶融を行うことができる。
本製造方法において、上記した硫黄元素を含むガス雰囲気を得るための方法は、いずれか一の方法を採用してもよいし、複数の方法を組み合わせて採用してもよい。
加熱溶融の温度は、第1の融液を得る過程、及び第2の融液を得る過程のいずれの過程においても、特に限定されないが、短時間で融液を均質化する観点から、600℃以上が好ましく、630℃以上がより好ましく、650℃以上がさらに好ましい。また、加熱溶融の温度は融液中の成分の加熱による劣化や分解抑制等の観点から1000℃以下が好ましく、950℃以下がより好ましく、900℃未満がさらに好ましく、800℃未満が特に好ましい。また、600℃以上900℃未満が好ましい。
なお、第1の融液を得る段階では、炉体に設けられる加熱部により上記温度まで加熱を行ってもよいが、その後、例えば第2の融液を得る段階では、追加の原料の供給により温度が減少する分の熱エネルギーを補填すれば足りる。例えばヒーター等で内部温度を保持することで、上記温度を維持してもよい。
第1の融液を得るための加熱溶融の時間は、上述した融液面が得られる限り、特に制限されないが、例えば、0.5時間以上であってもよく、1時間以上であってもよく、2時間以上であってもよい。
第2の融液を得るための加熱溶融の時間は、炉体サイズに合わせて適宜調整でき、特に限定されないが、均質性の観点から、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、2時間以上がさらに好ましい。また、加熱溶融の時間は融液中の成分の加熱による劣化や分解が許容できる範囲では加熱溶融の時間は長くてもよい。現実的な範囲としては、100時間以下が好ましく、50時間以下がより好ましく、25時間以下がさらに好ましい。
第1の融液を得る過程、及び第2の融液を得る過程のいずれの過程においても、加熱溶融時の圧力は特に限定されないが、例えば常圧又は微加圧が好ましく、常圧がより好ましい。
加熱溶融時、水蒸気や酸素等との副反応を防ぐ観点から、炉体内の露点は-20℃以下が好ましく、下限は特に制限されないが、通常-80℃以上である。また酸素濃度は1000体積ppm以下が好ましい。
第1の融液に対し、第2の硫化物系固体電解質原料を供給するにあたり、第1の融液を混合撹拌するのが好ましい。これにより、第2の硫化物系固体電解質原料22が融液とより良好に混ざり合うため、より瞬間的な溶融が実現できる。第1の融液を混合撹拌は、第2の硫化物系固体電解質原料を供給する前に行ってもよいし、供給した後に行ってもよい。第1の融液に対する混合撹拌の方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。
(冷却)
本製造方法は、上記本原料を加熱溶融して得られた第2の融液を冷却する工程を含む(ステップS6)。これにより、固体状の硫化物系固体電解質が得られる。例えば、図5に示すように、炉体40に備えられた排出部44から、第2の融液41を任意のタイミングで排出し、第2の融液41の冷却工程に移行する。第2の融液41の冷却は公知の方法で行えばよく、その方法は特に限定されないが、冷却速度を高めるべく、一般的に急冷速度が最も速いと言われる双ローラーを用いることが好ましい。
冷却速度は加熱溶融により得られた組成を維持する観点から、0.01℃/sec以上が好ましく、0.05℃/sec以上がより好ましく、0.1℃/sec以上がさらに好ましい。また、冷却速度の上限値は特に定めないが、双ローラーの冷却速度は、例えば1000000℃/sec以下である。
また、得られる固体を非晶質の硫化物系固体電解質としたい場合には、加熱溶融により得られた第2の融液を急冷することが好ましい。急冷する場合の冷却速度は10℃/sec以上が好ましく、100℃/sec以上がより好ましく、500℃/sec以上がさらに好ましく、700℃/sec以上が特に好ましい。また、冷却速度の上限値は特に限定されないが、双ローラーの冷却速度は、例えば1000000℃/sec以下である。
一方で、冷却工程時に徐冷して、固体の少なくとも一部を結晶化し、特定の結晶構造を有する硫化物系固体電解質や結晶相と非晶質相とから構成される硫化物系固体電解質として得ることもできる。徐冷する場合の冷却速度は0.01℃/sec以上が好ましく、0.05℃/sec以上がより好ましい。また、冷却速度は500℃/sec以下が好ましく、450℃/sec以下がより好ましい。冷却速度は10℃/sec以下であってもよく、5℃/sec以下であってもよい。なお、結晶化の条件に応じて適宜冷却速度を調節してもよい。
ここで硫化物系固体電解質の結晶は、イオン伝導性結晶が好ましい。イオン伝導性結晶とは、具体的には、リチウムイオン伝導率が10-4S/cmより大きく、より好ましくは10-3S/cmより大きい結晶である。
また、冷却後に得られる固体を、結晶相を含む硫化物系固体電解質としたい場合には、加熱溶融工程で得られる融液に結晶核となる化合物を含有させることが好ましい。これにより、冷却工程において結晶が析出しやすくなる。融液に結晶核となる化合物を含有させる方法は特に限定されないが、例えば原料や中間体に結晶核となる化合物を添加する、加熱溶融中の融液に結晶核となる化合物を添加する等の方法が挙げられる。
結晶核となる化合物としては、酸化物、酸窒化物、窒化物、炭化物、他のカルコゲン化合物、ハロゲン化物等が挙げられる。結晶核となる化合物は、融液とある程度の相溶性をもった化合物が好ましい。なお、融液と全く相溶しない化合物は結晶核となり得ない。
冷却後に得られる固体を、結晶相を含む硫化物系固体電解質としたい場合には、融液における結晶核となる化合物の含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。一方で、リチウムイオン伝導率の低下を抑制する観点からは、融液における結晶核となる化合物の含有量は20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
冷却後に得られる固体を非晶質の硫化物系固体電解質としたい場合には、融液は結晶核となる化合物を含有しないか、その含有量は所定量以下であることが好ましい。具体的には、融液における結晶核となる化合物の含有量は1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。融液における結晶核となる化合物の含有量は0.01質量%以下であってもよい。
上記冷却は常圧下で行うのが好ましい。常圧下とは、冷却に際し圧力を制御しないことを意味する。具体的には、0.8~1.2atm程度である。
(再加熱)
本製造方法は、冷却工程において得られた固体が非晶質の硫化物系固体電解質または非晶質相を含む硫化物系固体電解質である場合、固体を再加熱処理することをさらに含んでもよい。また、硫化物系固体電解質結晶を含んだ硫化物系固体電解質を再加熱処理することで、結晶構造内のイオンを再配列させ、リチウムイオン伝導率を高めることもできる。
なお、再加熱処理とは、冷却して得られた固体を結晶化のために加熱処理すること、および結晶構造内のイオンを再配列させることの少なくとも一方をいう。ここでは、これらの非晶質の硫化物系固体電解質または非晶質相を含む硫化物系固体電解質の加熱処理を結晶化処理も含めて、再加熱処理と称する。
(連続的プロセス)
本製造方法において、上記加熱溶融の工程と冷却工程は連続的なプロセスとして行うのが好ましい。すなわち、炉体内で得られた第1の融液に、上記第2の硫化物系固体電解質原料を連続的に供給しつつ、経時的に生成される上記第2の融液を連続的に排出して、冷却工程に移行させ、連続的に硫化物系固体電解質を製造するのが好ましい。これにより、原料の投入、融液の排出・冷却という一連の工程を連続的に行うことができ、硫化物系固体電解質をより効率的に短時間で多量に製造できる。具体的には、炉体内で第1の硫化物系固体電解質原料を加熱溶融して第1の融液を得る工程と、第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料を供給し、硫黄元素を含むガス雰囲気下で加熱溶融して第2の融液を得る工程と、第2の融液を炉体内から排出して、第2の融液を冷却する工程と、を含む一連の工程を連続的に行うのが好ましい。
(硫化物系固体電解質)
本製造方法で得られる硫化物系固体電解質としては、リチウム元素を含む硫化物系固体電解質が挙げられ、例えばLi10GeP12等のLGPS型結晶構造を有する硫化物系固体電解質、LiPSCl、Li5.4PS4.4Cl1.6およびLi5.4PS4.4Cl0.8Br0.8等のアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物系固体電解質、Li-P-S-Ha系(Haはハロゲン元素から選ばれる少なくとも一つの元素を表す)の結晶化ガラス、ならびにLi11等のLPS結晶化ガラス等が挙げられる。
硫化物系固体電解質は、その目的に応じて、非晶質の硫化物系固体電解質であってもよく、特定の結晶構造を有する硫化物系固体電解質であってもよく、結晶相と非晶質相とを含む硫化物系固体電解質であってもよい。結晶相は、リチウムイオン伝導率の観点からはアルジロダイト型結晶相であることがより好ましい。
リチウムイオン伝導率に優れる硫化物系固体電解質としては、Li-P-S-Haの元素を有する硫化物系固体電解質が好ましく、結晶相を有することがより好ましい。また、かかるハロゲン元素は、ハロゲン元素が塩化リチウム、臭化リチウムおよびヨウ化リチウムからなる群から選ばれる1以上に由来することが好ましい。
硫化物系固体電解質のリチウムイオン伝導率は、リチウムイオン二次電池に用いた際に電池特性を良好にする観点からは、1.0×10-4S/cm以上が好ましく、5.0×10-4S/cm以上がより好ましく、1.0×10-3S/cm以上がさらに好ましく、5.0×10-3S/cm以上が特に好ましい。
上記リチウムイオン伝導率は、交流インピーダンス測定装置(例えば、Bio-Logic Sciences Instruments社製、ポテンショスタット/ガルバノスタット VSP)を用い、測定条件を、測定周波数:100Hz~1MHz、測定電圧:100mV、測定温度:25℃として測定される。
得られた硫化物系固体電解質は、X線回折(XRD)測定による結晶構造の解析や、ICP発光分析測定、原子吸光測定およびイオンクロマトグラフィ測定等種々の方法を用いた元素組成の分析により同定できる。例えば、PとSはICP発光分析測定により、Liは原子吸光測定により、Haはイオンクロマトグラフィ測定により測定できる。
また、ラマンスペクトル測定を行うことにより、硫化物系固体電解質の組成の均質性を評価できる。具体的には、得られた硫化物系固体電解質から得られるサンプルについて、任意の2点以上でラマンスペクトル測定を行う。なお、評価の精度を高める観点から、測定点の数は8以上が好ましく、10以上がより好ましい。
硫化物系固体電解質の組成の均質性を評価する際の好ましいラマンスペクトル測定の条件として、例えばスポット径3μm、測定点の数を10とすることが挙げられる。スポット径を3μmとすることで、ラマンスペクトル測定における分析領域が、硫化物系固体電解質の組成の均質性をミクロレベルで評価するのに適した大きさとなる。
各測定結果での、PS 3-等、硫化物系固体電解質の構造に由来するピーク波数(ピーク位置)のばらつきが小さいほど、硫化物系固体電解質の組成は均質であると考えられる。または、硫化物系固体電解質の構造に由来するピークの半値全幅のばらつきが小さいほど、硫化物系固体電解質の組成は均質であると考えられる。
得られる硫化物系固体電解質の組成にもよるが、硫化物系固体電解質の構造に由来するピークとして、P-S結合に由来するピークを確認することが好ましい。
P-S結合に由来するピークの位置は組成系によって異なるが、典型的には、350cm-1~500cm-1の間に含まれる。以降、本明細書においてピーク位置のばらつきやピークの半値全幅のばらつきとは、P-S結合に由来するピークのうち、最も強度が強いピークについて確認されるものをいう。
ピーク位置のばらつきは次のように評価できる。すなわち、ラマンスペクトル測定により得られた測定点ごとのピーク位置の標準偏差を求め、(ピーク位置平均値)±(標準偏差)と記載した場合、標準偏差の値は、2cm-1以内が好ましく、より好ましくは1cm-1以内であり、さらに好ましくは0.5cm-1以内である。なお、ここでピーク位置とは、ピークトップの位置のことをいう。
例えば、本製造方法により得られる硫化物系固体電解質について、スポット径3μm、測定点の数を10としてラマンスペクトル測定をした際に、前記測定点ごとの、350cm-1~500cm-1におけるP-S結合由来のピークのピーク位置の標準偏差は、2cm-1以内が好ましく、より好ましくは1cm-1以内であり、さらに好ましくは0.5cm-1以内である。
ピークの半値全幅のばらつきは次のように評価できる。すなわち、ラマンスペクトル測定により得られた測定点ごとのピークの半値全幅の標準偏差は、それぞれのピークの半値全幅をもとめ、その値の標準偏差を求める方法で算出される。これを(ピーク半値全幅平均値)±(標準偏差)と記載した場合、標準偏差の値は、2cm-1以内が好ましく、より好ましくは1.5cm-1以内である。なお、ピークの半値全幅とは、ラマンスペクトルを描いた際に、前記P-S結合由来のピークのピーク強度半分の値と、そのP-S結合由来のピークとが交わる幅のことをここでは指す。
例えば、本製造方法により得られる硫化物系固体電解質について、スポット径3μm、測定点の数を10としてラマンスペクトル測定をした際に、前記測定点ごとの、350cm-1~500cm-1におけるP-S結合由来のピークの半値全幅の標準偏差は、2cm-1以内が好ましく、より好ましくは1.5cm-1以内である。
[硫化物系固体電解質の製造装置]
本発明の実施形態の硫化物系固体電解質の製造装置(以下、本製造装置ともいう)は、炉体と、前記炉体を加熱するための加熱部と、前記炉体に第1の硫化物系固体電解質原料を供給するための第1原料供給部と、前記炉体に供給された前記第1の硫化物系固体電解質原料が加熱溶融されて得られる第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料を供給するための第2原料供給部と、前記炉体内の第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料が供給されて得られる第2の融液を排出するための排出部と、前記排出部から排出された前記第2の融液を冷却するための冷却部と、を備えることを特徴とする。
本製造装置は、上述した本製造方法を実施するために用いることができ、[硫化物系固体電解質の製造方法]の項で説明した内容がそのまま援用され得る。図6は本製造装置の一例を示す模式図である。
本製造装置500における炉体50を加熱するための加熱部(図示せず)は、[硫化物系固体電解質の製造方法]の項で説明した加熱溶融を行うために備えられるものであり、その態様は特に制限されるものではない。
本製造装置500における第1原料供給部51は、[硫化物系固体電解質の製造方法]の項で説明した第1の硫化物系固体電解質原料を炉体50に供給するために備えられるものであり、その態様は特に制限されるものではない。
また、本製造装置500における第2原料供給部52は、炉体50に供給された第1の硫化物系固体電解質原料が加熱溶融されて得られる第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料を供給するために備えられるものであり、その態様は特に制限されるものではない。
また、第2原料供給部52は、第2の硫化物系固体電解質原料を第1の融液に連続的に供給するものであってもよいし、第2の硫化物系固体電解質原料を第1の融液に定量供給するものであってもよいし、その両方であってもよい。
なお、図6では、上記第1原料供給部51と上記第2原料供給部52は、それぞれ異なる供給口を用いた例を示しているが、本実施形態はこれに制限されず、本製造装置500に備えられる同一の供給口を用いるものであってもよい。
本製造装置500における排出部53は、炉体50内の第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料が供給されて得られる第2の融液を排出するために備えられるものであり、その態様は特に制限されるものではない。
本製造装置500における冷却部54は、排出部53から排出された第2の融液を冷却するために備えられるものであり、その態様は特に制限されるものではない。
また、冷却部54は、図6にも示すように、[硫化物系固体電解質の製造方法]の項で説明した双ローラーを有してもよい。
本製造装置500は、[硫化物系固体電解質の製造方法]の項で説明した硫黄源または硫黄蒸気を供給するための硫黄供給部55を備えてもよく、その態様は特に制限されるものではない。
なお、図6では、硫黄供給部55と、第1原料供給部51および第2原料供給部52とは、それぞれ異なる供給口を用いた例を示しているが、本実施形態はこれに制限されず、本製造装置500に備えられる同一の供給口を用いるものであってもよい。
本製造装置500は、[硫化物系固体電解質の製造方法]の項で説明したとおり、冷却部54で冷却されて得られる硫化物系固体電解質を再加熱するための再加熱部(図示せず)を備えてもよく、その態様は特に制限されるものではない。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、及び改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、及び配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
以上説明したように、本明細書には次の事項が開示されている。
[1]炉体内で第1の硫化物系固体電解質原料を加熱溶融して第1の融液を得、前記第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料を供給し、硫黄元素を含むガス雰囲気下で加熱溶融し、得られた第2の融液を冷却する、硫化物系固体電解質の製造方法。
[2]前記第1の融液100質量%に対し、前記第2の硫化物系固体電解質原料を5質量%/min以下の速度で供給する、上記[1]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[3]前記第1の硫化物系固体電解質原料の組成は、前記第2の硫化物系固体電解質原料の組成と同じである、上記[1]または[2]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[4]前記第1の融液に硫黄源を供給することにより前記硫黄元素を含むガス雰囲気を得る、上記[1]~[3]のいずれかに記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[5]前記炉体に硫黄蒸気を導入することにより前記硫黄元素を含むガス雰囲気を得る、
上記[1]~[4]のいずれかに記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[6]前記炉体内で硫黄を200~450℃で加熱して前記硫黄蒸気を発生させる、上記[5]に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[7]前記第1の融液に対して前記第2の硫化物系固体電解質原料を連続的に供給する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[8]前記炉体から前記第2の融液を連続的に排出して冷却する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[9]前記第1の硫化物系固体電解質原料または前記第2の硫化物系固体電解質原料の加熱温度が600℃以上900℃未満である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[10]双ローラーを用いて前記第2の融液を冷却する、上記[1]~[9]のいずれかに記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
[11]炉体と、
前記炉体を加熱するための加熱部と、
前記炉体に第1の硫化物系固体電解質原料を供給するための第1原料供給部と、
前記炉体に供給された前記第1の硫化物系固体電解質原料が加熱溶融されて得られる第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料を供給するための第2原料供給部と、
前記炉体内の第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料が供給されて得られる第2の融液を排出するための排出部と、
前記排出部から排出された前記第2の融液を冷却するための冷却部と、
を備える、硫化物系固体電解質の製造装置。
[12]前記炉体に硫黄源または硫黄蒸気を供給するための硫黄供給部を備える、上記[11]に記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
[13]前記第2原料供給部は前記第2の硫化物系固体電解質原料を前記第1の融液に連続的に供給する、上記[11]または[12]に記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
[14]前記第2原料供給部は前記第2の硫化物系固体電解質原料を前記第1の融液に定量供給する、上記[11]~[13]のいずれかに記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
[15]前記冷却部は双ローラーを有する、上記[11]~[14]のいずれかに記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
[16]前記冷却部で冷却されて得られる硫化物系固体電解質を再加熱するための再加熱部を備える、上記[11]~[15]のいずれかに記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。例1、2は本製造方法の実施例であり、例3、4は比較例である。
(リチウムイオン伝導率評価)
各例で得られた粉末を更に乳鉢で砕いて、100μmのメッシュパスを行い、体積基準粒度分布によるD50が10μmの硫化物系固体電解質粉末を得て、当該粉末を380MPaの圧力で圧粉体として測定サンプルとし、交流インピーダンス測定装置(Bio-Logic Sciences Instruments社製、ポテンショスタット/ガルバノスタット VSP)を用いてリチウムイオン伝導率を測定し、以下の基準で評価した。
測定条件は、測定周波数:100Hz~1MHz、測定電圧:100mV、測定温度:25℃とした。
(電池性能評価)
各例で得られた粉末を更に乳鉢で砕いて、100μmのメッシュパスを行い、体積基準粒度分布によるD50が10μmの硫化物系固体電解質粉末を得て、当該粉末を全固体型リチウムイオン二次電池に用いる場合の電池性能を評価した。まず、以下の方法で正極合材及び全固体型リチウムイオン二次電池を作製し、充放電試験を実施した。充放電試験の結果を以下の評価基準により評価した。
[正極合材の作製]
正極活物質として、LiNbOコートがなされた層状岩塩型LiCoO粉末(体積平均粒子径:10μm)を用い、各例の方法で得られた硫化物系固体電解質粉末を35部、正極活物質を60部、導電助剤(アセチレンブラック、デンカ株式会社製、HS100)を5部混合し正極合材を作製した。LiNbOコートの厚みは、TEM観察より7nmであった。
[全固体型リチウムイオン二次電池の作製]
各例の方法で得られた硫化物系固体電解質粉末80mgを直径10mmのプラスチック製の円筒に投入し、加圧成型して固体電解質層とした。次いで、同じ円筒に上記で作製した正極合材を10mg投入し再び加圧成型し、正極層を形成した。さらに正極合材とは反対側から、インジウム箔とリチウム箔を投入して負極層とした。このようにして全固体型リチウムイオン二次電池を作製し、拘束圧10kNにて、電池性能評価試験を実施した。
[電池性能評価試験]
作製した全固体型リチウムイオン二次電池を用いて、25℃の環境で0.1Cで3.7Vまで定電流定電位充電を行い、次に3Cで1.9Vまで定電流放電を行い、放電容量を得た。以下で示す放電容量は正極活物質の重さ(g)あたりのもの(mAh/g)である。
(評価基準)
〇:放電容量が30より大きかった。
△:放電容量が0より大きく、30以下であった。
×:放電容量が0であった。
例1
1.原料混合
露点-50℃の窒素雰囲気環境下に調整したグローブボックス中にて、LiS、P、LiClの各原料粉末を1.9:0.5:1.6(mol比)になるように調合し、十分に撹拌混合した。撹拌混合した原料を、露点-50℃以下窒素雰囲気に置換したカーボン製の容器に300g投入した。
2.第1の融液形成
カーボン製の容器を昇温速度5℃/分で300℃まで加熱し、0.5時間保持した後、5℃/分で700℃まで加熱し保持し、融液面を形成した。
3.原料追加投入
露点-50℃の窒素雰囲気環境下に調整したグローブボックス中にて、上記原料混合と同じmol比で調合した原料粉末を十分に撹拌混合し、密閉容器に入れ、定量供給機(マイクロンフィーダー,アイシン・ナノテクノロジーズ社製)と連結するホッパーに大気非曝露で投入した。ホッパー内部の露点も-50℃以下に調整した。当該定量供給機を用いて、混合原料を6g/minの速度で、上記融液面が形成されたカーボン容器内に投入した。なお、混合原料の投入開始から投入完了までの投入速度は、融液100質量%に対して2質量%以下を維持した。投入と同時に同配管からNを2SLM送り込んだ。また、原料投入と同時に、硫黄粉末を0.6g/minの速度で送り込み、カーボン容器内部に硫黄ガスが充満している状態とした。
4.排出・冷却固化
カーボン容器に付帯する排出口から融液を6g/minの速度で流し出し、急冷し非晶質相とアルジロダイト型結晶相を含有した硫化物系固体電解質として固体を得た。
5.再加熱工程
得られた固体をカッターミルで粉砕し粗粉末とした後、カーボン製の容器に入れ、窒素ガス雰囲気下、400℃で1時間結晶化処理し、結晶化した。これにより結晶相の割合が90vol%以上のアルジロダイト型結晶構造を有する硫化物系固体電解質としてLi5.4PS4.4Cl1.6を得た。
なお、上記工程のうち、「3.原料追加投入」と「4.排出・冷却固化」は連続して行った。すなわち、原料の追加投入しながら、得られた融液の排出・冷却固化を連続的に行った。
得られた電解質のリチウムイオン伝導率を測定すると5mS/cmであった。また、電池性能評価は〇(放電容量:38mAh/g)であった。結果を表1に示す。
例2
例1の「3.原料追加投入」において送り込んだ硫黄粉末の代わりに、350℃で硫黄を加熱し硫黄蒸気を発生させ、当該硫黄蒸気をカーボン容器に供給し、容器内に硫黄ガス雰囲気を供給したこと以外は、例1と同じ方法で硫化物系固体電解質の粉末を得た。
得られた電解質の伝導率を測定すると5mS/cmであった。また、電池性能評価は〇(放電容量:45mAh/g)であった。結果を表1に示す。
例3
1.容器の加熱
カーボン製の容器を、例1と同様の方法で700℃に加熱した。
2.原料投入
上記700℃に加熱したカーボン容器に、例1の「3.原料追加投入」と同じ方法で原料を投入した。ただし、硫黄粉末の供給は行わなかった。
3.排出・冷却固化
内部原料が溶解した後に、カーボン容器に付帯する排出口から融液を6g/min程度の速度で流し出し、急冷し、非晶質相とアルジロダイト型結晶相を含有した硫化物系固体電解質として固体を得た。
4.再加熱工程
次いで、この固体をカッターミルで粉砕し粗粉末とした後、カーボン製の容器に入れ、窒素ガス雰囲気下、400℃で1時間結晶化処理し、結晶化した。
なお、上記工程のうち、「2.原料投入」と「3.排出・冷却固化」は連動して連続的に行わず、成り行きで行った。すなわち、第1の融液の量が無い状態で原料投入を6g/minの速度で行ったところ、原料がすぐさま溶けて排出されてきた。この際、排出速度は0~6g/min程度の速度で排出・冷却固化された。投入開始して10g排出されたところでサンプル採取を終え、評価を行った。
得られた電解質は、アルジロダイト型結晶以外の結晶相も有しており、その伝導率を測定すると0.1mS/cmであった。また、電池性能評価は×(放電容量:0mAh/g)であった。結果を表1に示す。
例4
1.原料混合、第1の融液形成
例1と同じ方法で原料を混合し、融液面を有する第1の融液を形成した。
2.原料追加投入
硫黄粉末を供給しなかった点を除いては、例1と同様に原料を追加投入した。
3.排出・冷却固化
カーボン容器に付帯する排出口から融液を流し出し、急冷し非晶質相とアルジロダイト型結晶相を含有した硫化物系固体電解質として固体を得た。
4.再加熱工程
得られた固体をカッターミルで粉砕し粗粉末とした後、カーボン製の容器に入れ、窒素ガス雰囲気下、400℃で1時間結晶化処理し、結晶化した。
上記の操作の通り、例1と同じ方法で硫化物系固体電解質の粉末を得た。
得られた電解質は、アルジロダイト型結晶以外の結晶相も有しており、その伝導率を測定すると1mS/cmであった。また、電池性能評価は△(放電容量:5mAh/g)であった。結果を表1に示す。
Figure 0007440002000001
実施例である例1、2はいずれも、リチウムイオン伝導率および電池評価が優れる結果となった。これにより、本製造方法によれば、電解質製造過程での原料の揮発が抑えられることがわかった。また、例1、2では、融液面を有する第1の融液に対し、原料を追加投入することで、連続的に第2の融液が得られ、続く冷却工程に移行できた。これにより、短時間で多量の硫化物系固体電解質を製造できることがわかった。
一方、比較例である例3は、第1の融液を得ずに、直接混合原料を加熱して得たため、イオン伝導率及び電池性能に劣る結果となった。また、比較例である例4は、第1の融液に原料を追加投入する際に硫黄の供給を行わなかったため、イオン伝導率及び電池性能に劣る結果となった。
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
なお、本出願は、2022年5月13日出願の日本特許出願(特願2022-079716)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
10,20,30,40 炉体
11 第1の融液
12 第1の硫化物系固体電解質原料
13 融液面
21,31,41 第2の融液
22,32 第2の硫化物系固体電解質原料
33a 硫黄源
33b 硫黄蒸気
44 排出部
500 硫化物系固体電解質の製造装置
50 炉体
51 第1原料供給部
52 第2原料供給部
53 排出部
54 冷却部
55 硫黄供給部

Claims (9)

  1. 炉体内で第1の硫化物系固体電解質原料を加熱溶融して第1の融液を得、前記第1の融液に第2の硫化物系固体電解質原料を供給し、硫黄元素を含むガス雰囲気下で加熱溶融し、得られた第2の融液を冷却する、硫化物系固体電解質の製造方法であって、前記第1の融液100質量%に対し、前記第2の硫化物系固体電解質原料を5質量%/min以下の速度で供給する、硫化物系固体電解質の製造方法
  2. 前記第1の硫化物系固体電解質原料の組成は、前記第2の硫化物系固体電解質原料の組成と同じである、請求項1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  3. 前記第1の融液に硫黄源を供給することにより前記硫黄元素を含むガス雰囲気を得る、請求項1または2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  4. 前記炉体に硫黄蒸気を導入することにより前記硫黄元素を含むガス雰囲気を得る、請求項1または2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  5. 前記炉体内で硫黄を200~450℃で加熱して前記硫黄蒸気を発生させる、請求項に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  6. 前記第1の融液に対して前記第2の硫化物系固体電解質原料を連続的に供給する、請求項1または2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  7. 前記炉体から前記第2の融液を連続的に排出して冷却する、請求項1または2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  8. 前記第1の硫化物系固体電解質原料または前記第2の硫化物系固体電解質原料の加熱温度が600℃以上900℃未満である、請求項1または2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  9. 双ローラーを用いて前記第2の融液を冷却する、請求項1または2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
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