JP7415241B1 - 硫化物系固体電解質の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、原料を加熱炉内で加熱溶融する硫化物系固体電解質の製造方法であって、加熱炉は、硫黄供給部と、加熱炉の内部に設けられた仕切り部と、加熱炉の内部と外部とを連通させ得る1つ以上の他の構造とを備え、原料を加熱溶融することで融液を形成し、融液と加熱炉との空隙を、仕切り部により、硫黄供給部が位置する第1の空間と、他の構造が位置する第2の空間とに分離し、硫黄供給部から第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで、硫黄過剰雰囲気部を形成する、硫化物系固体電解質の製造方法に関する。

Description

本発明は、硫化物系固体電解質の製造方法及び製造装置に関する。
リチウムイオン二次電池は、携帯電話やノート型パソコン等の携帯型電子機器に広く用いられている。
従来、リチウムイオン二次電池においては液体の電解質が使用されてきたが、液漏れや発火等が懸念され、安全設計のためにケースを大型化する必要があった。また、電池寿命の短さ、動作温度範囲の狭さについても改善が望まれていた。
これに対し、安全性の向上や高速充放電、ケースの小型化等が期待できる点から、固体電解質をリチウムイオン二次電池の電解質として用いる全固体型リチウムイオン二次電池が注目されている。
固体電解質は、硫化物系固体電解質と酸化物系固体電解質とに大別される。硫化物系固体電解質を構成する硫化物イオンは、酸化物系固体電解質を構成する酸化物イオンに比べて分極率が大きく、高いイオン伝導性を示す。硫化物系固体電解質としては、例えばリチウム元素、硫黄元素およびリン元素を含む硫化物系固体電解質が挙げられ、その製造方法としては、ガラス封管法、メカニカルミリング法、溶融法等が知られている。
なかでも溶融法は、原料を加熱溶融して硫化物系固体電解質を合成する方法である。溶融法は、加熱溶融時に硫黄成分が揮散しやすく、組成制御が比較的難しい場合がある。
これに対し、特許文献1には、硫化物系リチウムイオン導電性固体電解質の各構成化合物であるLiSやSiSなどを、所定の化学量論比に混合した後、この混合物に硫黄の粉末または硫黄ガスを加えて、硫黄の過剰存在下で前記混合物を加熱溶融することが記載されている。また、かかる方法によれば、二酸化硫黄や硫化水素の発生により各構成化合物中の硫黄の量が不足することを防止し得ることが記載されている。
日本国特開平6-115911号公報
しかしながら、硫黄元素を含むガス雰囲気下で加熱溶融を行う際に、加熱炉内に原料投入部や配管接続部といった温度が低下しやすい箇所があると、ガスに含まれる硫黄が温度の比較的低い箇所において液化、または固化することにより当該箇所に付着しやすい。そして、硫黄が付着すると、装置内に閉塞が生じる等のため、継続的な生産が難しくなってしまうおそれがある。このように、硫黄元素を含むガス雰囲気下で加熱溶融を行う場合には、生産性の点で改善の余地があった。
そこで本発明は、装置内等への硫黄の付着が抑制され、生産性に優れる硫化物系固体電解質及び製造装置の製造方法の提供を目的とする。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、硫黄元素を含むガス雰囲気下で加熱溶融を行う硫化物系固体電解質の製造方法及び製造装置において、加熱炉内で、硫黄の付着が生じやすい箇所から硫黄過剰雰囲気部を分離することによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の1~11に関する。
1.原料を加熱炉内で加熱溶融する硫化物系固体電解質の製造方法であって、
前記加熱炉は、硫黄供給部と、前記加熱炉の内部に設けられた仕切り部と、前記加熱炉の内部と外部とを連通させ得る1つ以上の他の構造とを備え、
前記原料を加熱溶融することで融液を形成し、
前記融液と前記加熱炉との空隙を、前記仕切り部により、前記硫黄供給部が位置する第1の空間と、前記他の構造が位置する第2の空間とに分離し、
前記硫黄供給部から前記第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで、硫黄過剰雰囲気部を形成する、硫化物系固体電解質の製造方法。
2.前記他の構造が、原料投入部及び硫化物系固体電解質排出部の少なくとも一方である、前記1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
3.前記第2の空間の最低温度が450℃以下である、前記1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
4.前記加熱炉内に前記硫黄過剰雰囲気部を備える状態で、前記他の構造の少なくとも1つにより前記加熱炉の内部と外部とを連通させることをさらに含み、
前記第2の空間は、前記加熱炉の内部と外部とを連通させる他の構造を含む、前記1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
5.前記加熱炉外で硫黄源を200℃~450℃で加熱し、硫黄元素を含むガスを得ることをさらに含み、
前記硫黄元素を含む成分として、前記硫黄元素を含むガスを前記硫黄供給部から導入する、前記1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
6.前記硫黄元素を含む成分として、硫黄元素を含む固体を前記硫黄供給部から導入する、前記1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
7.前記加熱溶融における加熱の温度が600℃~900℃である、前記1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
8.前記加熱炉内で、前記第1の空間から分離された気体雰囲気部の水分露点が-30℃未満である、前記1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
9.前記加熱炉内で、前記第1の空間から分離された気体雰囲気部の酸素濃度が100ppm未満である、前記1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
10.原料を加熱溶融するための加熱炉を備える硫化物系固体電解質の製造装置であって、
前記加熱炉は、硫黄供給部と、前記加熱炉の内部に設けられた仕切り部と、前記加熱炉の内部と外部とを連通させ得る1つ以上の他の構造とを備え、
前記仕切り部は、前記加熱炉内で前記原料が加熱溶融されて形成される融液と前記加熱炉との空隙を、前記硫黄供給部が位置する第1の空間と、前記他の構造が位置する第2の空間とに分離するものであり、
前記硫黄供給部は、前記第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで、硫黄過剰雰囲気部を形成するものである、
硫化物系固体電解質の製造装置。
11.前記他の構造が、原料投入部及び硫化物系固体電解質排出部の少なくとも一方である、前記10に記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
本発明によれば、装置内等への硫黄の付着が抑制され、生産性に優れる硫化物系固体電解質の製造方法及び製造装置を提供できる。
図1は、本発明の実施形態に係る製造方法を例示するフローチャートである。 図2は、本発明の実施形態に係る製造方法を模式的に例示する図である。図2の(a)は、他の構造として原料投入部を備える場合の製造方法を例示する図であり、図2の(b)は、他の構造として硫化物系固体電解質排出部を備える場合の製造方法を例示する図である。 図3は、本発明の実施形態に係る製造方法を例示するフローチャートである。 図4は、本発明の実施形態に係る製造方法を模式的に例示する図である。 図5は、本発明の実施形態に係る製造方法を例示するフローチャートである。図5の(a)は、第1の空間に硫黄元素を含むガスを導入する場合、図5の(b)は、第1の空間に硫黄元素を含む固体を導入する場合を例示するフローチャートである。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施できる。また、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、実際の装置等のサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
<硫化物系固体電解質の製造方法>
本実施形態に係る硫化物系固体電解質の製造方法(以下、本製造方法ともいう。)は、原料を加熱炉内で加熱溶融する硫化物系固体電解質の製造方法である。本製造方法において、前記加熱炉は、硫黄供給部と、前記加熱炉の内部に設けられた仕切り部と、前記加熱炉の内部と外部とを連通させ得る1つ以上の他の構造と、を備える。本製造方法において、前記原料を加熱溶融することで融液を形成し、前記融液と前記加熱炉との空隙を、前記仕切り部により、前記硫黄供給部が位置する第1の空間と、前記他の構造が位置する第2の空間とに分離し、前記硫黄供給部から前記第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで、硫黄過剰雰囲気部を形成する。
(硫化物系固体電解質)
本製造方法において、製造される硫化物系固体電解質の種類や組成は特に限定されず、用途や所望の物性等に応じて適宜選択できる。硫化物系固体電解質としては、例えばLi、P及びSを含む硫化物系固体電解質、Li、P、S及びHaを含む硫化物系固体電解質等が挙げられる。ここで、Haはハロゲン元素から選ばれる少なくとも1種の元素を表す。Haは、具体的には、例えば、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。アルジロダイト型の結晶構造を取るためには、Haとして、Cl及びBrの少なくとも一方を含むことがより好ましく、Clを含むことがさらに好ましく、Cl単体又はCl及びBrの混合体がよりさらに好ましい。
硫化物系固体電解質は、その目的に応じて、非晶質の硫化物系固体電解質であってもよく、特定の結晶構造を有する硫化物系固体電解質であってもよく、結晶相と非晶質相とを含む硫化物系固体電解質であってもよい。
硫化物系固体電解質は、リチウムイオン伝導性を向上する観点から結晶構造を含むことが好ましい。硫化物系固体電解質が結晶構造を含む場合、硫化物系固体電解質に含有される結晶は、好ましくはイオン伝導性結晶である。イオン伝導性結晶とは、具体的には、リチウムイオン伝導率が好ましくは10-4S/cmより大きく、より好ましくは10-3S/cmより大きい結晶である。
硫化物系固体電解質として、より具体的にはLi10GeP12等のLGPS型の結晶を含む硫化物系固体電解質、LiPSCl等のアルジロダイト型の結晶を含む硫化物系固体電解質、Li-P-S-Ha系の結晶化ガラス、並びにLi11等のLPS結晶化ガラス等が挙げられる。硫化物系固体電解質はこれらを組み合わせたものや、組成や結晶構造が異なる複数種の結晶を含有するものであってもよい。リチウムイオン伝導性に優れる点から、硫化物系固体電解質としてはアルジロダイト型の結晶を含む硫化物系固体電解質が好ましい。
硫化物系固体電解質が結晶を含む場合、その結晶構造は、アルジロダイト型を含むことが結晶構造の対称性の観点から好ましい。対称性が高い結晶は、リチウムイオン伝導のパスが三次元に広がりやすく、粉体を成型した際に好ましい。
アルジロダイト型の結晶構造を取るためには、結晶相はLi、P及びSに加えてHaを含む。Haは、Cl及びBrの少なくとも一方を含むことがより好ましく、Clを含むことがさらに好ましく、Cl単体又はCl及びBrの混合体がよりさらに好ましい。
アルジロダイト型の結晶は、Li、P、S及びHaを含み、X線粉末回折(XRD)パターンにおいて、2θ=15.7±0.5°及び30.2±0.5°の位置にピークを有するものであると定義できる。XRDパターンは上記に加え、さらに2θ=18.0±0.5°の位置にもピークを有することが好ましく、さらに2θ=25.7±0.5°の位置にもピークを有することがより好ましい。
硫化物系固体電解質の組成は、例えばICP発光分析、原子吸光法、イオンクロマトグラフ法などを用いた組成分析により求められる。また、硫化物系固体電解質に含有される結晶の種類は、X線粉末回折(XRD)パターンから解析できる。
(原料)
本製造方法に用いられる原料は、上述した種々の硫化物系固体電解質の原料として公知のものを使用できる。例えば、硫化物系固体電解質がLi、P及びSを含む場合には、原料はリチウム元素(Li)、硫黄元素(S)およびリン元素(P)を含む。このような原料としては、Li単体やLiを含む化合物といったLiを含む物質(成分)、S単体やSを含む化合物といったSを含む物質(成分)、P単体やPを含む化合物といったPを含む物質(成分)等を適宜組み合わせて使用できる。Liを含む化合物、Sを含む化合物およびPを含む化合物は、Li、SおよびPから選ばれる2以上をともに含む化合物であってもよい。例えば、Sを含む化合物およびPを含む化合物を兼ねる化合物として、五硫化二リン(P)等が挙げられる。
Liを含む物質としては、例えば、硫化リチウム(LiS)、炭酸リチウム(LiCO)、硫酸リチウム(LiSO)、酸化リチウム(LiO)および水酸化リチウム(LiOH)等のリチウム化合物や、金属リチウム等が挙げられる。取り扱いやすさの観点からは、硫化リチウムを用いることが好ましい。
一方で、硫化リチウムは高価であるため、硫化物系固体電解質の製造コストを抑える観点からは、硫化リチウム以外のリチウム化合物や、金属リチウム等を用いることが好ましい。具体的にはこの場合、原料はLiを含む物質として、金属リチウム、炭酸リチウム(LiCO)、硫酸リチウム(LiSO)、酸化リチウム(LiO)および水酸化リチウム(LiOH)からなる群から選ばれる1以上を含むことが好ましい。これらの物質は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Sを含む物質としては、例えば、三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン、リンを含有するその他の硫黄化合物および単体硫黄、硫黄を含む化合物等が挙げられる。硫黄を含む化合物としては、HS、CS、硫化鉄(FeS、Fe、FeS、Fe1-xSなど)、硫化ビスマス(Bi)、硫化銅(CuS、CuS、Cu1-xSなど)が挙げられる。Sを含む物質は、目的の硫化物系固体電解質を構成する元素以外の元素の含有を抑制する観点から、硫化リンが好ましく、五硫化二リン(P)がより好ましい。これらの物質は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、硫化リンはSを含む物質とPを含む物質を兼ねる化合物として考えられる。
Pを含む物質としては、例えば、三硫化二リン(P)五硫化二リン(P)等の硫化リン、リン酸ナトリウム(NaPO)等のリン化合物および単体リン等が挙げられる。Pを含む物質は、目的の硫化物系固体電解質を構成する元素以外の元素の含有を抑制する観点から、硫化リンが好ましく、五硫化二リン(P)がより好ましい。これらの物質は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本製造方法において、原料は、例えば上記の物質を、目的とする硫化物系固体電解質の組成に応じて適宜混合した混合原料として得られる。混合比率は特に限定されないが、例えば、原料中のPに対するLiのモル比Li/Pは、65/35以上が好ましく、70/30以上がより好ましい。
上記化合物の好ましい組み合わせの一例として、LiSとPの組み合わせが挙げられる。LiSとPを組み合わせる場合は、LiとPのモル比Li/Pは65/35~88/12が好ましく、70/30~88/12がより好ましい。PがLiSに対して比較的少なくなるように混合比を調整することで、LiSの融点に対しPの沸点が小さいことによる、加熱処理時の硫黄成分とリン成分の脱離を抑制しやすくなる。
本製造方法の原料は、目的とする硫化物系固体電解質の組成に応じて、又は添加剤等として、上記の物質の他にさらなる物質(化合物等)を含んでもよい。
例えば、F、Cl、BrまたはIなどのハロゲン元素を含む硫化物系固体電解質を製造する場合、原料はハロゲン元素(Ha)を含むことが好ましい。この場合、原料はハロゲン元素を含む化合物を含むことが好ましい。ハロゲン元素を含む化合物としてはフッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)等のハロゲン化リチウム、ハロゲン化リン、ハロゲン化ホスホリル、ハロゲン化硫黄、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化ホウ素等が挙げられる。ハロゲン元素を含む化合物としては、目的の硫化物系固体電解質を構成する元素以外の元素の含有を抑制する観点からは、ハロゲン化リチウムが好ましく、LiCl、LiBr、LiIがより好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、ハロゲン化リチウムは、Liを含む化合物でもある。原料がハロゲン化リチウムを含む場合、原料におけるLiの一部または全部がハロゲン化リチウムに由来するものであってもよい。
原料がハロゲン元素を含む場合、原料中のPに対するHaのモル当量は、原料を加熱溶融する際に融点を下げる観点からは、0.2モル当量以上が好ましく、0.5モル当量以上がより好ましい。また、得られる硫化物系固体電解質の安定性を向上する観点からは、Haのモル当量は4モル当量以下が好ましく、3モル当量以下がより好ましい。
得られる硫化物系固体電解質のガラス形成状態を改善する観点からは、原料がSiS、B、GeS、Al等の硫化物を含むことも好ましい。ガラス形成をし易くすることで、急冷によりガラスを得る場合に冷却速度を低下させてもガラスを得ることができ、設備負荷を軽減できる。また硫化物系固体電解質の耐湿性付与等の観点からは、SiO、B、GeO、Al、P等の酸化物を含むことも好ましい。これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの化合物の添加量は、原料の全量に対し0.1重量%以上が好ましく、0.5重量%以上がより好ましい。また添加量は、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。
原料としては、上述した各種の物質を組み合わせて使用できる。原料として複数の物質を組み合わせる場合、例えば公知の混合機等を用いて原料を混合してもよい。混合機としては、例えばV型混合機、W型混合機、リボン型混合機等を使用できる。
本製造方法では原料を加熱溶融することで硫化物系固体電解質が得られるが、加熱溶融の前に、予め原料に対し熱処理を行ってもよい。熱処理を経ることで、原料の組成をより目的組成に近づけた状態から加熱溶融できるため、組成制御しやすくなる。なお、熱処理を原料の一部に対して行い、その後、残りの原料と混合して用いてもよい。熱処理を経た原料は、例えばLi、LiPS等のLi、PおよびSを含む化合物を含んでいてもよい。熱処理の条件は特に限定されないが、例えば、温度100~500℃で0.1~5時間保持することが好ましい。
(硫化物系固体電解質の製造方法)
図1は、本製造方法の一例を示すフローチャートである。例えば、本製造方法は、原料を加熱溶融することで融液を形成するステップS11と、融液と加熱炉との空隙を、仕切り部により、硫黄供給部が位置する第1の空間と、他の構造が位置する第2の空間とに分離するステップS12と、硫黄供給部から第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで、硫黄過剰雰囲気部を形成するステップS13とを含む。なお、ステップS11~S13はこの順に行われる必要はなく、例えば並行して行われてもよい。
図2は、本製造方法を模式的に例示する図である。図2の(a)は、他の構造として原料投入部を備える場合の本製造方法を例示する図であり、図2の(b)は、他の構造として硫化物系固体電解質排出部を備える場合の本製造方法を例示する図である。
図2において、製造装置100は少なくとも加熱炉10を備える。加熱炉10は、硫黄供給部13と、加熱炉10の内部に設けられた仕切り部19と、加熱炉10の内部と外部とを連通させ得る他の構造と、を備える。ここで、図2の(a)において、加熱炉10は、他の構造として原料投入部11を備える。また、図2の(b)において、加熱炉10は、他の構造として硫化物系固体電解質排出部15を備える。
本製造方法は、原料を加熱炉内で加熱溶融すること(加熱溶融工程)を含む。具体的には、加熱溶融工程では、原料を加熱炉内で加熱溶融することで融液を形成する(ステップS11)。
図2において、加熱炉10はその内部に、原料を加熱溶融して得られる融液5を備える。そして、融液5と加熱炉10との空隙を、仕切り部19により、硫黄供給部13が位置する第1の空間と、他の構造が位置する第2の空間とに分離する(ステップS12)。また、硫黄供給部13から第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで硫黄過剰雰囲気部23を形成する(ステップS13)。
例えば図2の(a)において、原料を加熱溶融することで融液5を形成し、融液5と加熱炉10との空隙を、仕切り部19により、硫黄供給部13が位置する第1の空間と、原料投入部11が位置する第2の空間とに分離する。そして、第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで硫黄過剰雰囲気部23を形成する。
例えば図2の(b)において、原料を加熱溶融することで融液5を形成し、融液5と加熱炉10との空隙を、仕切り部19により、硫黄供給部13が位置する第1の空間と、硫化物系固体電解質排出部15が位置する第2の空間とに分離する。そして、第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで硫黄過剰雰囲気部23を形成する。
なおここで、他の構造が位置する第2の空間とは、図2の(a)のように、他の構造が加熱炉内で気体雰囲気部に接する場合は、他の構造及び当該他の構造が接する気体雰囲気部のことをいう。すなわち、図2の(a)では、原料投入部11が位置する第2の空間は原料投入部11及びこれに接する気体雰囲気部21である。
一方で、図2の(b)のように、他の構造が加熱炉内で融液に接する場合は、他の構造及び、加熱炉内の融液の量を減少させたときに当該他の構造が最初に接する気体雰囲気部とを、当該他の構造が位置する第2の空間とする。具体的には、図2の(b)において、硫化物系固体電解質排出部15が位置する第2の空間は、硫化物系固体電解質排出部15及び融液5の量を減少させたときに硫化物系固体電解質排出部15が最初に接する気体雰囲気部21である。
本明細書において、気体雰囲気部とは、加熱炉内で融液又は仕切り部等によって区画された気体雰囲気領域のことをいう。
一般的に、加熱炉内において、原料投入部や硫化物系固体電解質排出部といった、加熱炉の内部と外部とを連通させ得る他の構造付近は温度が低下しやすい。より具体的には、原料投入部の場合、原料中に含まれ得るPは融点が288℃と比較的低いため、投入出口は温度をある程度低くしないと、Pの液化により閉塞するおそれがある。また硫化物系固体電解質排出部から融液を排出する場合、排出された融液は冷却され得るので、炉体部より温度が低くなる傾向がある。加えて、これら他の構造が開閉可能であり、かつ当該部材を閉状態としている場合であっても、その開閉制御の機構及びその位置などによっては当該他の構造の温度が低下しやすい場合がある。例えば、加熱炉の内部と外部とを連通させる経路の途中にバルブといった開閉制御の機構が配置される構成などでは、他の構造付近で温度が低下しやすいと考えられる。
そして、上述の硫黄過剰雰囲気部は、硫黄元素を含むガスで構成される。硫黄元素を含むガスが加熱炉内で比較的温度の低い箇所に接すると、当該箇所で硫黄が液化、または固化しやすい。すなわち、他の構造付近に硫黄が付着してしまうおそれがある。特に、他の構造によって加熱炉の内部と外部とを連通させる際に付着が生じると、他の構造付近で閉塞が生じる場合がある。加えて、閉塞に伴い炉の内圧が上昇し、外部に硫黄蒸気が漏洩した場合、外部の配管や部材にも硫黄が付着することで継続的な生産が難しくなるリスクが増大する。また、閉塞に伴い加熱炉内への物質投入や加熱炉からの物質排出が阻害された場合も、継続的な生産が難しくなるリスクが増大する。
また一般に、温度が高いほど硫黄の飽和蒸気圧は高くなり、硫黄ガスが高濃度で存在しやすい。そのため、例えば固相反応等と比較してより高温で加熱溶融を行う本製造方法では、硫黄過剰雰囲気部における硫黄の付着が比較的生じやすいと考えられる。
これに対し、本製造方法においては、融液と加熱炉との空隙を、仕切り部により、硫黄供給部が位置する第1の空間と、他の構造が位置する第2の空間とに分離し、第1の空間に硫黄過剰雰囲気部が形成される。これにより、硫黄過剰雰囲気部は他の構造から独立して区画されるので、硫黄の付着やそれによる装置内部の閉塞を抑制でき、安定して生産を継続しやすく、生産性を向上できる。
他の構造は、加熱炉の内部と外部とを連通させ得る部材であれば特に限定されないが、例えば加熱炉の内部に物質を移送するための部材、加熱炉の内部から物質を排出するための部材等が挙げられる。かかる他の構造は、より具体的には上述した原料投入部及び硫化物系固体電解質排出部の少なくとも一方であることが好ましい。他の構造は、常に加熱炉の内部と外部とを連通させる開口部等であってもよいし、開状態に制御した際に加熱炉の内部と外部とを連通させる、開閉可能な部材であってもよい。他の構造において、開口の形態や開閉の機構等も特に限定されず、公知のものであってよい。例えば、他の構造の形態の例としては、加熱炉の壁部等に開口部(通り部)を備える形態や、加熱炉内に、加熱炉外へ連通可能な管(ノズル)が配置される形態等が挙げられる。
また、部材による加熱炉内部と外部との連通は意図的に制御されるものでなくてもよく、例えば撹拌翼、熱電対、圧力計といった部材を加熱炉内に設けることで、その部材と加熱炉との接続部から加熱炉内のガスがやむを得ずリークし得る場合なども、当該接続部は他の構造であり得る。このような接続部付近においても温度が低下しやすい場合があり、また、硫黄が付着した場合に部材の動作に影響を与えるなど生産性を低下させるおそれがあるため、当該接続部付近への硫黄の付着を抑制することで生産性の向上に寄与し得る。
他の構造が位置する第2の空間の最低温度は、硫黄の液化または固化を抑制する効果を好適に得る観点から、450℃以下であることが好ましく、400℃以下がより好ましく、350℃以下が更に好ましい。これは、第2の空間の最低温度が硫黄の沸点444℃と同等かそれより低いことを意味する。すなわち、この場合、硫黄の液化や固化が比較的生じやすい条件となるため、本発明の効果をより好適に得られうる。
ここで、第2の空間の最低温度とは、加熱炉内に仕切り部が無いと仮定した状態において、硫黄蒸気が侵入しうる領域における最低温度のことをいう。これは多くの場合、外部と内部を連通させ得る部分において炉体から最も離れている箇所の温度となる。当該最低温度の下限は特に限定されないが、例えば100℃程度が実際的である。
上述した通り、他の構造は、加熱炉の内部と外部とを連通させ得る部材であるが、当該他の構造によって前記加熱炉の内部と外部とが連通されている際、すなわち他の構造が開状態である場合に、より温度の低下や硫黄付着による閉塞のリスクが増大しやすい。よって、本製造方法が、加熱炉内に硫黄過剰雰囲気部を備える状態で、前記他の構造の少なくとも1つにより加熱炉の内部と外部とを連通させることをさらに含む場合に、前記第2の空間は、前記加熱炉の内部と外部とを連通させる他の構造を含むことが好ましい。
図3は、他の構造の少なくとも1つにより加熱炉の内部と外部とを連通させることをさらに含む場合の本製造方法を例示するフローチャートである。図3に例示される製造方法は、上述のステップS11~S13に相当するステップS21~S23と、加熱炉内に前記硫黄過剰雰囲気部を備える状態で、他の構造の少なくとも1つにより前記加熱炉の内部と外部とを連通させるステップS24と、を含む。
なお、次に例示するように、ステップS21~ステップS24の順序は特に限定されない。例えば、ステップS21~S23の少なくとも1以上とステップS24とが並行して行われてもよく、ステップS21~S23の少なくとも1以上の途中でステップS24が複数回行われてもよく、ステップS21~S23の後にステップS24が行われてもよい。
例えば、図2の(a)において、加熱溶融工程と並行して連続的に原料投入部から原料等を加熱炉に入れる場合は、加熱炉10内に硫黄過剰雰囲気部23を備える状態で原料投入部11を開状態として、加熱炉の内部と外部とを連通させ得る。この場合、原料投入部によって加熱炉の内部と外部とを連通させることが図3におけるステップS24に相当する。このとき、図2の(a)の構成において、融液5と加熱炉10との空隙を、仕切り部19により、硫黄供給部13が位置する第1の空間と加熱炉の内部と外部とを連通させる他の構造である原料投入部11が位置する第2の空間とに分離する。すなわち、第2の空間は、加熱炉の内部と外部とを連通させる他の構造を含む。
また、図2の(b)において、例えば加熱溶融工程後に融液5を加熱炉から排出する場合は、加熱炉10内に硫黄過剰雰囲気部23及び融液5を備える状態で硫化物系固体電解質排出部15を開状態として、加熱炉の内部と外部とを連通させ得る。この場合、硫化物系固体電解質排出部によって加熱炉の内部と外部とを連通させることが図3におけるステップS24に相当する。このとき、融液5と加熱炉10との空隙を、仕切り部19により、硫黄供給部13が位置する第1の空間と加熱炉の内部と外部とを連通させる他の構造である硫化物系固体電解質排出部15が位置する第2の空間とに分離する。すなわち、第2の空間は、加熱炉の内部と外部とを連通させる他の構造を含む。
なお、図2では、加熱炉が他の構造を少なくとも1つ備える場合を例示したが、加熱炉は、他の構造を2つ以上備えてもよい。またこの場合、他の構造が位置する第2の空間は、複数存在してもよい。加熱炉が他の構造を複数備える場合に、第1の空間は他の構造の少なくとも1つが位置する第2の空間と分離されればよく、他の構造が位置する第2の空間の全てから分離されてもよい。
例えば、図4は、加熱炉が他の構造として原料投入部と硫化物系固体電解質排出部とを備え、かつ、第1の空間を、これらをそれぞれ含んで区画される領域の両方から分離する場合の本製造方法を模式的に例示する図である。図4において、製造装置100は少なくとも加熱炉10を備える。加熱炉10は、硫黄供給部13と、加熱炉の内部に設けられた仕切り部19a及び19bと、加熱炉の内部と外部とを連通させ得る他の構造と、を備える。ここで、図4では、加熱炉10は、他の構造として原料投入部11及び硫化物系固体電解質排出部15を備える。
図4において、融液と加熱炉との空隙を、仕切り部19aにより、硫黄供給部13が位置する第1の空間と、他の構造である原料投入部11が位置する第2の空間とに分離する。かつ、融液と加熱炉との空隙を、仕切り部19bにより、硫黄供給部13が位置する第1の空間と、他の構造である硫化物系固体電解質排出部15が位置する第2の空間とに分離する。
ここで、図4において、原料投入部11が位置する第2の空間とは原料投入部11及び気体雰囲気部21aのことであり、硫化物系固体電解質排出部15が位置する第2の空間とは硫化物系固体電解質排出部15及び気体雰囲気部21bのことである。そして、かかる第1の空間に硫黄過剰雰囲気部23を形成する。これにより、図4の態様では、硫黄過剰雰囲気部23が、原料投入部11が位置する第2の空間及び硫化物系固体電解質排出部15が位置する第2の空間の両方から分離される。
例えば図4に例示される製造方法において、加熱溶融工程と並行して原料投入部11から原料を投入しつつ、かつ、硫化物系固体電解質排出部15から融液を排出することで、連続的に加熱溶融工程を実施し得る。このとき、原料投入部11と硫化物系固体電解質排出部15はいずれも、加熱炉内に前記硫黄過剰雰囲気部を備える状態で加熱炉の内部と外部とを連通させる部材となる。そのため、硫黄過剰雰囲気部を、これらがそれぞれ位置する第2の空間の両方から分離させることで、上記のように連続的に加熱溶融工程を実施する場合において特に効果的に硫黄の付着を抑制できる。
以下、本製造方法についてさらに詳細に説明する。
(加熱炉)
本製造方法において、加熱炉は、硫黄供給部と、加熱炉の内部に設けられた仕切り部と、加熱炉の内部と外部とを連通させ得る1つ以上の他の構造と、を備える。
硫黄供給部は、加熱炉内に硫黄元素を含む成分を導入できる部分であれば特に限定されず、硫黄元素を含む成分を導入する方法等に応じた公知の構成であってよい。
仕切り部は、加熱炉の内部に設けられる。本発明の効果が得られる範囲において、その具体的な形状や材質等は特に限定されない。例えば図2及び図4における仕切り部19は、融液と加熱炉との空隙を分離するものであり、加熱炉内の少なくとも気体雰囲気部を区画するように設けられた板状部材である。図2及び図4における仕切り部19は、紙面の上下方向を鉛直方向とした際に、加熱炉10の鉛直方向に沿った断面に平行に配置されている。
仕切り部は、加熱炉内に融液を備える場合において、仕切り部及び融液によって気体雰囲気部を区画するとともに、融液は完全に区画せず、仕切り部を介した表裏を連通するように配置されることが好ましい。このような、融液を連通させる連通部は加熱炉の底部側に設けられることが好ましい。これにより、融液の量が比較的少ない場合にも仕切り部によって融液と加熱炉との空隙を分離する状態を維持しやすい。仕切り部は、加熱炉内に1つ設けられてもよく、複数設けられてもよい。
他の構造は、上述した通り加熱炉の内部と外部とを連通させ得る部材である。他の構造として具体的に挙げられる部材等については先に例示した通りである。
他の構造の、加熱炉内における開口部の位置は、当該他の構造が位置する第2の空間に接する仕切り部の下端より上方にあることが好ましい。ここでの上下方向は、加熱炉が使用のために設置された状態での上下方向のことをいう。例えば図4では、原料投入部11の加熱炉内における開口部は、原料投入部11が位置する第2の空間に接する仕切り部19aの下端より上方にある。また、硫化物系固体電解質排出部15の加熱炉内における開口部は、硫化物系固体電解質排出部15が位置する第2の空間に接する仕切り部19bの下端より上方にある。これにより、融液を排出させること等によって加熱炉内の融液の量が減少する場合も、仕切り部により第1の空間と第2の空間とを分離する状態を維持しやすい。また、本製造方法が加熱炉内に硫黄過剰雰囲気部を備える状態で硫化物系固体電解質排出部から融液を排出することを含む場合に、第1の空間(硫黄過剰雰囲気部)が分離されるのを維持した状態で融液の排出を止めやすくなり、硫化物系固体電解質排出部における硫黄の付着をより好適に抑制できる。
なお他の構造の、加熱炉内における開口部とは、他の構造によって加熱炉の内部と外部とを連通させる際の加熱炉内側の開口部のことをいう。かかる開口部は、図2及び図4における硫化物系固体電解質排出部15のように、加熱炉の壁部に開口部(通り部)を備える場合は当該開口部のことであり、加熱炉内に、加熱炉外へ連通可能な管(ノズル)が配置される場合は、当該管の、加熱炉内側における開口部のことである。
(加熱溶融工程)
加熱溶融工程では、原料を加熱炉内で加熱溶融する。より具体的には、加熱溶融工程において、原料を加熱炉内で加熱溶融することで融液を形成する。また、原料を加熱炉内で加熱溶融するとともに、第1の空間に硫黄過剰雰囲気部が形成されることで、原料(融液)は、硫黄過剰雰囲気部に接して加熱溶融される。
加熱炉への原料の投入方法は特に限定されず、所望の製造方法等に応じて公知の方法から適宜選択できる。加熱炉への原料の投入方法として、例えば上述した原料投入部から原料を加熱炉に入れる方法が挙げられる。原料は、連続的に定量を入れてもよく、間欠的に所定量を入れてもよい。また、原料投入部から加熱炉内の気体が流出することを抑制するために、原料投入部から不活性ガス等を導入してもよい。不活性ガスとしては、例えば窒素ガスやアルゴンガス等が挙げられる。
加熱溶融工程における加熱の温度は、好ましくは600℃~900℃である。加熱の温度は600℃以上が好ましく、650℃以上がより好ましく、700℃以上がさらに好ましい。加熱の温度が上記値以上であることで、原料が溶融し易い温度となるため好ましい。加熱の温度は、900℃以下が好ましく、850℃以下がより好ましく、800℃以下がさらに好ましい。加熱の温度が上記値以下であることで、加熱溶融時に原料から脱離する成分量が過剰となりにくいため好ましい。
加熱炉を加熱する方法は特に限定されず、例えば外熱式の加熱装置を用いる等、公知の加熱方法であってよい。
加熱溶融の時間は、融液や得られる硫化物系固体電解質の均質性を向上する観点から0.1時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましく、0.7時間以上がさらに好ましく、1時間以上がよりさらに好ましい。また、融液中の成分の加熱による劣化や分解が許容できる範囲であれば、加熱溶融の時間の上限は特に限定されず、比較的長くてもよい。現実的な範囲としては、100時間以下が好ましく、50時間以下がより好ましく、24時間以下がさらに好ましい。上述の通り、加熱溶融は連続的に行ってもよく、バッチ式で行ってもよい。
加熱溶融時の圧力は特に限定されないが、常圧又は微加圧が好ましく、常圧がより好ましい。
(硫黄過剰雰囲気部)
硫黄過剰雰囲気部は、硫黄供給部から第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入して形成される。硫黄過剰雰囲気部は、硫黄元素を含むガス雰囲気で構成される気体雰囲気部である。原料(融液)が硫黄過剰雰囲気部に接して加熱溶融されることで、硫黄分圧が比較的大きい硫黄元素を含むガス雰囲気への硫黄成分の揮発を抑制できる。これにより、得られる硫化物系固体電解質の組成制御をしやすくなる。
硫黄過剰雰囲気部を形成する方法としては、上述の通り第1の空間に硫黄供給部から加熱炉内に硫黄元素を含む成分を導入することが挙げられ、より具体的には、第1の空間に硫黄元素を含むガスを導入すること及び硫黄元素を含む固体を導入することの少なくとも一方が挙げられる。加熱炉内に硫黄元素を含む成分を導入するタイミングとしては、予め原料を加熱炉内に入れ、加熱して融液を得た後であってもよいし、本発明の効果を妨げない範囲であれば、原料を加熱炉内に入れることと並行してもよい。原料投入部への硫黄の付着を抑制する観点からは、加熱して融液を得た後に硫黄元素を含む成分を導入することがより好ましい。
硫黄元素を含むガスを導入する方法として、例えば、予め加熱炉外で用意された硫黄元素を含むガスを第1の空間に導入する方法が挙げられる。加熱炉外で硫黄元素を含むガスを用意する方法は特に限定されないが、例えば、加熱炉外で硫黄源を加熱し、硫黄元素を含むガスを得ることが好ましい。
図5の(a)は、この方法を例示するフローチャートである。図5の(a)に例示される製造方法は、加熱炉外で硫黄源を200℃~450℃で加熱し、硫黄元素を含むガスを得るステップS311と、上述のステップS11~S13に相当するステップS312~S314とを含む。ステップS311~S314の順序は特に限定されず、例えばステップS311はステップS312~S314より先に行われてもよく、ステップS312~S314と並行して行われてもよい。
硫黄源は加熱により硫黄元素を含むガスが得られる単体硫黄または硫黄化合物であれば特に限定されないが、例えば、単体硫黄、硫化水素、二硫化炭素等の有機硫黄化合物、硫化鉄(FeS、Fe、FeS、Fe1-xSなど)、硫化ビスマス(Bi)、硫化銅(CuS、CuS、Cu1-xSなど)、多硫化リチウム、多硫化ナトリウム等の多硫化物、ポリスルフィド、硫黄加硫処理を施されたゴム等が挙げられる。
例えば、これら硫黄源を別途設けられる硫黄源加熱部にて加熱し、硫黄元素を含むガスを発生させ、Nガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスをキャリアガスとして加熱部に搬送することで、硫黄過剰雰囲気部を形成できる。
硫黄源を加熱する温度は使用する硫黄源の種類によって適宜選択できる。例えば、硫黄源を加熱する温度は200℃~450℃が好ましく、300℃~400℃がより好ましい。
または、第1の空間に硫黄元素を含む固体を導入することによって硫黄過剰雰囲気部を形成してもよい。この場合、硫黄元素を含む固体が加熱炉内で加熱されることによって硫黄元素を含むガスが得られ、硫黄過剰雰囲気部を形成できる。図5の(b)は、この方法を例示するフローチャートである。図5の(b)に例示される製造方法は、上述のステップS11及びS12に相当するステップS321及びS322、並びに硫黄供給部から第1の空間に硫黄元素を含む成分として、硫黄元素を含む固体を導入することで、硫黄過剰雰囲気部を形成するステップS323を含む。
硫黄元素を含む固体としては、例えば単体硫黄、HS、Bi、硫化鉄、硫化銅、CS等の固体の硫黄源が挙げられる。例えばかかる固体の硫黄源を、粉末等の微細な状態でキャリアガスにより加熱部に気流搬送することで加熱炉内に硫黄元素を含む固体を導入できる。なお、加熱炉内に硫黄元素を含む成分を導入する方法は、図5の(a)と(b)を組み合わせたものであってもよい。例えば、図5の(a)におけるステップS314を、図5の(b)におけるステップS323に変更してもよい。
硫黄過剰雰囲気部において、硫黄分圧を10-3~10atmとすることが好ましい。かかる硫黄分圧にすることで、装置が複雑にならず低コストで効率よく硫黄導入ができる。
(気体雰囲気部)
加熱炉内において、第1の空間から分離された気体雰囲気部の水分露点は-30℃未満であることが好ましく、-40℃以下がより好ましく、-50℃以下がさらに好ましい。これにより、気体雰囲気部に存在する水分が原料や融液と反応し、得られる硫化物系固体電解質の組成に影響するのを抑制できる。気体雰囲気部の水分露点の下限は特に限定されないが、例えば-80℃程度である。
また加熱炉内において、第1の空間から分離された気体雰囲気部の酸素濃度は100ppm未満であることが好ましく、50ppm未満がより好ましく、10ppm未満がさらに好ましい。これにより、気体雰囲気部に存在する酸素が原料や融液と反応し、得られる硫化物系固体電解質の組成に影響するのを抑制できる。気体雰囲気部の酸素濃度の下限は特に限定されないが、例えば0.01ppm程度である。
(冷却工程)
本製造方法は、加熱溶融により得られた融液を冷却して固体を得る工程をさらに含むことが好ましい。冷却は公知の方法で行えばよく、その方法は特に限定されない。加熱溶融工程の後、加熱炉で引き続き冷却を行ってもよいし、加熱炉から融液を取り出して冷却を行ってもよい。加熱炉から融液を取り出して冷却を行う場合、例えば上述の硫化物系固体電解質排出部から融液を排出する。
冷却のより具体的な方法として、例えば、融液をカーボン製等の板状体の上に流し出して冷却する方法や、狭い隙間に流し込んで薄く成形する方法等が挙げられる。融液を板状体の上に流し出して冷却する場合、冷却効率を向上する観点から、流し出した後の融液及び得られる固体の厚みは比較的薄いことが好ましい。具体的には、厚みは10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。厚みの下限は特に限定されないが、0.01mm以上であってもよく、0.02mm以上であってもよい。狭い隙間に流し込んで薄く成形する場合は、冷却効率が優れており、薄片状のもの、繊維状のもの、粉末状のもの等を得ることができる。得られた固体は、取り扱いやすい大きさに砕く等して、任意の形状で得られる。中でも、ブロック状の固体で得た方が回収がし易く好ましい。ブロック状とは、板状、薄片状、または繊維状である場合も含む。
冷却速度は加熱溶融工程により得られた組成を維持する観点から、0.01℃/sec以上が好ましく、0.05℃/sec以上がより好ましく、0.1℃/sec以上がさらに好ましい。また、冷却速度の上限値は特に定めないが、一般的に急冷速度が最も早いと言われる双ローラーの冷却速度は1000000℃/sec以下である。
ここで、得られる固体を非晶質の硫化物系固体電解質としたい場合には、加熱溶融により得られた融液を急冷して固体を得ることが好ましい。具体的には、急冷する場合の冷却速度は10℃/sec以上が好ましく、100℃/sec以上がより好ましく、500℃/sec以上がさらに好ましく、700℃/sec以上がよりさらに好ましい。また、冷却速度の上限値は特に限定されないが、一般的に急冷速度が最も早いと言われる双ローラーの冷却速度は1000000℃/sec以下である。
一方で、冷却工程時に徐冷して、固体の少なくとも一部を結晶化し、特定の結晶構造を有する硫化物系固体電解質や結晶相と非晶質相とから構成される硫化物系固体電解質として得ることもできる。徐冷する場合の冷却速度は0.01℃/sec以上が好ましく、0.05℃/sec以上がより好ましい。また、冷却速度は500℃/sec以下が好ましく、450℃/sec以下がより好ましい。冷却速度は10℃/sec未満であってもよく、5℃/sec以下であってもよい。なお、結晶化の条件に応じて適宜冷却速度を調節してもよい。
ここで硫化物系固体電解質に含有される結晶とは、好ましくはイオン伝導性結晶である。イオン伝導性結晶とは、具体的には、リチウムイオン伝導率が10-4S/cmより大きく、より好ましくは10-3S/cmより大きい結晶である。
冷却後に得られる固体を、結晶相を含む硫化物系固体電解質としたい場合には、加熱溶融工程で得られる融液に結晶核となる化合物を含有させることが好ましい。これにより、冷却工程において結晶が析出しやすくなる。融液に結晶核となる化合物を含有させる方法は特に限定されないが、例えば原料や原料加熱物に結晶核となる化合物を添加する、加熱溶融中の融液に結晶核となる化合物を添加する等の方法が挙げられる。
結晶核となる化合物としては、酸化物、酸窒化物、窒化物、炭化物、他のカルコゲン化合物、ハロゲン化物等が挙げられる。結晶核となる化合物は、融液とある程度の相溶性をもった化合物が好ましい。なお、融液と全く相溶しない化合物は結晶核と成り得ない。
冷却後に得られる固体を、結晶相を含む硫化物系固体電解質としたい場合には、融液における結晶核となる化合物の含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。一方で、リチウムイオン伝導率の低下を抑制する観点からは、融液における結晶核となる化合物の含有量は20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
冷却後に得られる固体を非晶質の硫化物系固体電解質としたい場合には、融液は結晶核となる化合物を含有しないか、その含有量は所定量以下であることが好ましい。具体的には、融液における結晶核となる化合物の含有量は1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。融液における結晶核となる化合物の含有量は0.01質量%未満であってもよい。
本製造方法は、融液を冷却して得られる硫化物系固体電解質に対し、公知の後処理等を行う工程をさらに含んでいてもよい。後処理工程としては例えば、所望の特性を得る等の観点で硫化物系固体電解質に対しさらに熱処理を行う工程や、所望の形状を得る等の観点で粉砕処理を行う工程等が挙げられる。
本製造方法は、装置内等への硫黄の付着が抑制されているので、硫化物系固体電解質の生産性に優れる。本製造方法により得られる硫化物系固体電解質は、例えばリチウムイオン二次電池に用いられる固体電解質材料等として好適に用いられる。
<硫化物系固体電解質の製造装置>
本実施形態に係る硫化物系固体電解質の製造装置(以下、本製造装置ともいう。)は、原料を加熱溶融するための加熱炉を備える硫化物系固体電解質の製造装置であって、前記加熱炉は、硫黄供給部と、前記加熱炉の内部に設けられた仕切り部と、前記加熱炉の内部と外部とを連通させ得る1つ以上の他の構造とを備え、前記仕切り部は、前記加熱炉内で前記原料が加熱溶融されて形成される融液と前記加熱炉との空隙を、前記硫黄供給部が位置する第1の空間と、前記他の構造が位置する第2の空間とに分離するものであり、前記硫黄供給部は、前記第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで、硫黄過剰雰囲気部を形成するものであることを特徴とする。
本製造装置は、上述した本製造方法を実施するために用いることができ、<硫化物系固体電解質の製造方法>の項で説明した内容がそのまま援用され得る。
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。例1~3は実施例である。
(例1)
図2の(a)に例示する構成の加熱炉を用いて硫化物系固体電解質を製造する。まず、目的とする硫化物系固体電解質の組成に応じた混合原料を用意する。次いで、加熱炉10における原料投入部11から、混合原料を投入し加熱溶融し、融液を形成する。加熱の温度は700℃とし、加熱炉の外部に設けられる加熱源を用いる。これにより、融液5と加熱炉10との空隙を、仕切り部19により、硫黄供給部13が位置する第1の空間と、原料投入部11が位置する第2の空間とに分離する。また、加熱炉10における硫黄供給部13から、第1の空間に硫黄固体を投入し硫黄過剰雰囲気部23を形成する。この状態で30分間加熱を継続する。これにより、原料(融液)を、硫黄過剰雰囲気部23に接して加熱溶融させる。加熱後、加熱炉10内で引き続き融液5を冷却固化させ、硫化物系固体電解質として得る。
(例2)
図2の(a)に例示する構成の加熱炉を用いて硫化物系固体電解質を製造する。まず、目的とする硫化物系固体電解質の組成に応じた混合原料を用意する。次いで、加熱炉10における原料投入部11から、混合原料を投入し加熱溶融し、融液を形成する。加熱の温度は700℃とし、加熱炉の外部に設けられる加熱源を用いる。これにより、融液5と加熱炉10との空隙を、仕切り部19により、硫黄供給部13が位置する第1の空間と、原料投入部11が位置する第2の空間とに分離する。また、加熱炉外で硫黄源として単体硫黄を350℃で加熱し、硫黄蒸気を得る。そして、加熱炉10における硫黄供給部13から、第1の空間に硫黄蒸気を含むガスを導入し硫黄過剰雰囲気部23を形成する。この状態で30分間加熱を継続する。これにより、原料(融液)を、硫黄過剰雰囲気部23に接して加熱溶融させる。加熱後、加熱炉10内で引き続き融液を冷却固化させ、硫化物系固体電解質として得る。
(例3)
図2の(b)に例示する構成の加熱炉を用いて硫化物系固体電解質を製造する。まず、目的とする硫化物系固体電解質の組成に応じた混合原料を用意する。次いで、加熱炉10における原料投入部(図示なし)から、混合原料を投入し加熱溶融し、融液を形成する。加熱の温度は700℃とし、加熱炉の外部に設けられる加熱源を用いる。これにより、融液5と加熱炉10との空隙を、仕切り部19により、硫黄供給部13が位置する第1の空間と、硫化物系固体電解質排出部15が位置する第2の空間とに分離する。次いで、加熱炉10における硫黄供給部13から、第1の空間に硫黄固体を投入し硫黄過剰雰囲気部23を形成する。この状態で30分間加熱を継続する。これにより、原料(融液)を、硫黄過剰雰囲気部23に接して加熱溶融させる。加熱後、硫化物系固体電解質排出部15から融液5を排出し、双ローラーにより冷却固化させ、硫化物系固体電解質として得る。
以上の通り、例1~3の全てで、融液と加熱炉との空隙を、仕切り部により、硫黄供給部が位置する第1の空間と、他の構造が位置する第2の空間とに分離する。これにより、硫黄過剰雰囲気部が他の構造から独立して区画されるので、例1~3の全てにおいて、装置内への硫黄の付着が抑制され、生産性を向上できる。
以上説明したように、本明細書には次の構成が開示されている。
1.原料を加熱炉内で加熱溶融する硫化物系固体電解質の製造方法であって、
前記加熱炉は、硫黄供給部と、前記加熱炉の内部に設けられた仕切り部と、前記加熱炉の内部と外部とを連通させ得る1つ以上の他の構造とを備え、
前記原料を加熱溶融することで融液を形成し、
前記融液と前記加熱炉との空隙を、前記仕切り部により、前記硫黄供給部が位置する第1の空間と、前記他の構造が位置する第2の空間とに分離し、
前記硫黄供給部から前記第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで、硫黄過剰雰囲気部を形成する、硫化物系固体電解質の製造方法。
2.前記他の構造が、原料投入部及び硫化物系固体電解質排出部の少なくとも一方である、前記1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
3.前記第2の空間の最低温度が450℃以下である、前記1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
4.前記加熱炉内に前記硫黄過剰雰囲気部を備える状態で、前記他の構造の少なくとも1つにより前記加熱炉の内部と外部とを連通させることをさらに含み、
前記第2の空間は、前記加熱炉の内部と外部とを連通させる他の構造を含む、前記1~3のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
5.前記加熱炉外で硫黄源を200℃~450℃で加熱し、硫黄元素を含むガスを得ることをさらに含み、
前記硫黄元素を含む成分として、前記硫黄元素を含むガスを前記硫黄供給部から導入する、前記1~4のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
6.前記硫黄元素を含む成分として、硫黄元素を含む固体を前記硫黄供給部から導入する、前記1~5のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
7.前記加熱溶融における加熱の温度が600℃~900℃である、前記1~6のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
8.前記加熱炉内で、前記第1の空間から分離された気体雰囲気部の水分露点が-30℃未満である、前記1~7のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
9.前記加熱炉内で、前記第1の空間から分離された気体雰囲気部の酸素濃度が100ppm未満である、前記1~8のいずれか1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
10.原料を加熱溶融するための加熱炉を備える硫化物系固体電解質の製造装置であって、
前記加熱炉は、硫黄供給部と、前記加熱炉の内部に設けられた仕切り部と、前記加熱炉の内部と外部とを連通させ得る1つ以上の他の構造とを備え、
前記仕切り部は、前記加熱炉内で前記原料が加熱溶融されて形成される融液と前記加熱炉との空隙を、前記硫黄供給部が位置する第1の空間と、前記他の構造が位置する第2の空間とに分離するものであり、
前記硫黄供給部は、前記第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで、硫黄過剰雰囲気部を形成するものである、
硫化物系固体電解質の製造装置。
11.前記他の構造が、原料投入部及び硫化物系固体電解質排出部の少なくとも一方である、前記10に記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
なお、本出願は、2022年5月18日出願の日本特許出願(特願2022-081848)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
100 製造装置
10 加熱炉
11 原料投入部
13 硫黄供給部
15 硫化物系固体電解質排出部
19、19a、19b 仕切り部
21、21a、21b 気体雰囲気部
23 硫黄過剰雰囲気部
5 融液

Claims (11)

  1. 原料を加熱炉内で加熱溶融する硫化物系固体電解質の製造方法であって、
    前記加熱炉は、硫黄供給部と、前記加熱炉の内部に設けられた仕切り部と、前記加熱炉の内部と外部とを連通させ得る1つ以上の他の構造とを備え、
    前記原料を加熱溶融することで融液を形成し、
    前記融液と前記加熱炉との空隙を、前記仕切り部により、前記硫黄供給部が位置する第1の空間と、前記他の構造が位置する第2の空間とに分離し、
    前記硫黄供給部から前記第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで、硫黄過剰雰囲気部を形成する、硫化物系固体電解質の製造方法。
  2. 前記他の構造が、原料投入部及び硫化物系固体電解質排出部の少なくとも一方である、請求項1に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  3. 前記第2の空間の最低温度が450℃以下である、請求項1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  4. 前記加熱炉内に前記硫黄過剰雰囲気部を備える状態で、前記他の構造の少なくとも1つにより前記加熱炉の内部と外部とを連通させることをさらに含み、
    前記第2の空間は、前記加熱炉の内部と外部とを連通させる他の構造を含む、請求項1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  5. 前記加熱炉外で硫黄源を200℃~450℃で加熱し、硫黄元素を含むガスを得ることをさらに含み、
    前記硫黄元素を含む成分として、前記硫黄元素を含むガスを前記硫黄供給部から導入する、請求項1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  6. 前記硫黄元素を含む成分として、硫黄元素を含む固体を前記硫黄供給部から導入する、請求項1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  7. 前記加熱溶融における加熱の温度が600℃~900℃である、請求項1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  8. 前記加熱炉内で、前記第1の空間から分離された気体雰囲気部の水分露点が-30℃未満である、請求項1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  9. 前記加熱炉内で、前記第1の空間から分離された気体雰囲気部の酸素濃度が100ppm未満である、請求項1又は2に記載の硫化物系固体電解質の製造方法。
  10. 原料を加熱溶融するための加熱炉を備える硫化物系固体電解質の製造装置であって、
    前記加熱炉は、硫黄供給部と、前記加熱炉の内部に設けられた仕切り部と、前記加熱炉の内部と外部とを連通させ得る1つ以上の他の構造とを備え、
    前記仕切り部は、前記加熱炉内で前記原料が加熱溶融されて形成される融液と前記加熱炉との空隙を、前記硫黄供給部が位置する第1の空間と、前記他の構造が位置する第2の空間とに分離するものであり、
    前記硫黄供給部は、前記第1の空間に硫黄元素を含む成分を導入することで、硫黄過剰雰囲気部を形成するものである、
    硫化物系固体電解質の製造装置。
  11. 前記他の構造が、原料投入部及び硫化物系固体電解質排出部の少なくとも一方である、請求項10に記載の硫化物系固体電解質の製造装置。
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