JP7105133B2 - 結晶性硫化物系固体電解質の製造方法 - Google Patents

結晶性硫化物系固体電解質の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウム二次電池の固体電解質として好適に用いることができる結晶性硫化物系固体電解質の製造方法に関する。
硫化リチウム(LiS)などを出発原料として用いた硫化物系固体電解質を用いた全固体型リチウム二次電池は、可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化を図ることができ、しかも製造コストや生産性に優れたものとすることができるばかりか、セル内で直列に積層して高電圧化を図れるという特徴も有している。また、この種の固体電解質では、リチウムイオン以外は動かないため、アニオンの移動による副反応が生じないなど、安全性や耐久性の向上につながることが期待される。
特許文献1においては、アルジロダイト型結晶構造を有し、Li7-x-2yPS6-x-yClで表される化合物に関し、新たなリチウムイオン電池用硫化物系固体電解質として、組成式(1):Li7-x-2yPS6-x-yClで表される化合物を含有し、且つ、前記組成式において、0.8≦x≦1.7、0<y≦-0.25x+0.5を満足することを特徴とするリチウムイオン電池用硫化物系固体電解質が開示されている。
特許文献2の実施例には、リチウム、リン、硫黄及びハロゲンを含み、アルジロダイト型結晶構造を有する化合物からなる固体電解質の製造方法として、硫化リチウム(LiS)粉末と、五硫化二リン(P)粉末と、塩化リチウム(LiCl)粉末を混合し、硫化水素ガスを流通させながら300℃で4時間加熱した後、さらに500℃で4時間加熱する製造方法が開示されている。
また、特許文献3には、単体硫黄の残留量を低減することが可能な硫化物固体電解質の製造方法として、少なくともLiS、Pを含む電解質原料と、単体硫黄と、を容器に投入する投入工程と、投入工程後に、電解質原料と単体硫黄とからなる原料組成物を非晶質化し、硫化物固体電解質材料を合成する非晶質化工程と、非晶質化工程後に、不活性雰囲気下で硫化物固体電解質材料を単体硫黄の融点以上、低Liイオン伝導相の生成温度未満の温度すなわち300℃以下の温度で熱処理する熱処理工程と、を有する、硫化物固体電解質の製造方法が開示されている。
特開2016-24874号公報 特開2018-67552号公報 特開2018-80095公報、請求項1及び段落0028等
上述のように、結晶性硫化物系固体電解質を製造する方法として、硫化水素ガスを流通させながら焼成することが提案されている。しかし、硫化水素ガスは有毒ガスであるばかりか可燃性ガスでもあるから、製造設備にコストがかかるため、硫化水素ガスを使用すると製造コストが高くなることになる。そのため、できるかぎり硫化水素ガスを使用せず、それでいて、硫化水素ガスを流通させる場合と同等のイオン伝導率を確保することができる固体電解質の、新たな製造方法が求められていた。
ちなみに、特許文献3に開示されている硫化物固体電解質の製造方法は、非晶質の硫化物固体電解質を製造するための方法であるため、この方法では、結晶性硫化物系固体電解質を製造することはできない。
そこで本発明は、結晶性硫化物系固体電解質の製造方法に関し、できるかぎり硫化水素ガスを使用せず、それでいて、硫化水素ガスを流通させた場合と同等のイオン伝導率を確保することができる、新たな結晶性硫化物系固体電解質の製造方法を提供せんとするものである。
本発明は、結晶性硫化物系固体電解質の原料(「固体電解質原料」とも称する)と、単体の硫黄又は硫黄化合物(但し、当該硫黄化合物は300℃より高温に加熱されることにより硫黄ガスを発生するものに限る。)と、を混合して混合物を得、得られた混合物を300℃より高温で焼成することを特徴とする、結晶性硫化物系固体電解質の製造方法を提案する。
本発明が提案する結晶性硫化物系固体電解質の製造方法は、単体の硫黄又は硫黄化合物(但し、当該硫黄化合物は300℃より高温に加熱されることにより硫黄ガスを発生するものに限る。)を、固体電解質原料に加えて、300℃より高温で焼成することにより、結晶性硫化物を製造することができるばかりか、できるかぎり硫化水素ガスを使用しなくても、製造された固体電解質が硫化水素ガスを流通させた場合と同等のイオン伝導率を確保することができる。
実施例3で得た化合物粉末(サンプル)を用いて全固体電池セルを作製し、電池特性評価(初回充放電容量)を行った結果を、縦軸:充放電電圧(V)、横軸:放電容量(mAh/g)からなる座標中に示したグラフである。
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
<本固体電解質の製造方法>
本発明の実施形態に係る製造方法(「本固体電解質の製造方法」と称する)は、結晶性硫化物系固体電解質(「本固体電解質」と称する)の製造方法であって、固体電解質原料と、単体の硫黄又は硫黄化合物(但し、当該硫黄化合物は300℃より高温に加熱されることにより硫黄ガスを発生するものに限る。)と、を混合して混合物を得(「混合工程」)、得られた混合物を300℃より高温で焼成する(「焼成工程」)ことを特徴とする製造方法である。
結晶性硫化物に硫黄欠陥が生じると、化学的安定性が低下し、イオン伝導率が低くなる。周期的な配列構造を持たない非晶質と違い、結晶性硫化物は硫黄欠陥を制御することが好ましいため、本発明が提案する製造方法は、結晶性硫化物に効果を奏する。
なお、結晶性硫化物系固体電解質とは、結晶性を有する硫黄含有化合物からなる固体電解質の意味であり、当該固体電解質とは、電池製造後の初回充放電反応等で電極材界面に生じる膜(所謂SEI(Solid Electrolyte Interphase))ではなく、電池設計に際し、電解液及びセパレーターの代替として用いることが可能なLiイオン伝導性を有する固体のことを指す。
本固体電解質の製造方法は、前記混合工程と前記焼成工程を備えていれば、他の処理若しくは他の工程を任意に追加することは可能である。例えば混合工程と焼成工程との間に攪拌、解砕、分級などの処理を追加したり、焼成工程後に攪拌、解砕、分級などの処理を追加したりすることは可能である。
本固体電解質は、結晶性を有する硫化物すなわち硫黄含有化合物からなる固体電解質であればよく、一例としてリチウム(Li)、リン(P)及び硫黄(S)を含む結晶性硫化物、例えばLi、S及びPからなる結晶性硫化物、又は、Li、S、P及びHa(ハロゲン)からなる結晶性硫化物、又は、Ge、Sn、Siの中から選ばれる1種類以上の元素及びLi、P、Sからなる結晶性硫化物、又は、Li、P、S、Si、Clからなる結晶性硫化物などを挙げることができる。
中でも、本固体電解質の製造方法の適用対象の固体電解質としては、Li、S、P及びHa(ハロゲン)を含有する結晶性硫化物が好ましい。
また、本固体電解質は、アルジロダイト型結晶構造を含有するものが好ましい。
アルジロダイト型結晶構造を含有する固体電解質は、顕著な硫黄欠損の低減効果を有するため、上述のように上記単体硫黄又は上記硫黄化合物を混合原料に混合して不活性ガス流通下で、300℃より高温で焼成すれば、硫化水素ガスを流通させた場合と同等のイオン伝導率を得ることができる点で優れている。
アルジロダイト型結晶構造を含有するものとしては、例えばアルジロダイト型結晶構造を含有し、Li、S、P及びSiを含有する結晶性硫化物、又は、アルジロダイト型結晶構造を含有し、Li、S、P及びHa(ハロゲン)を含有する結晶性硫化物が好ましい。
その一例として、アルジロダイト型結晶構造からなる組成式(1):Li7-xPS6-xHax(Haは1種又は2種類以上のハロゲン元素、0.2<x≦2.0)を挙げることができる。
中でも、上述のように、本固体電解質の製造方法の効果をより一層享受できる観点から、組成式(1)のxは1.4以上であるのが好ましく、中でも1.5以上、その中でも1.6以上であるのがさらに好ましい。
組成式(1)のxが1.4以上であれば、アルジロダイト型結晶構造を含有する固体電解質の中でも、特に顕著な硫黄欠損の低減効果を得ることができる。よって、上述のように上記単体硫黄又は上記硫黄化合物を混合原料に混合して不活性ガス流通下で300℃より高温で焼成すれば、イオン伝導率を高めることができる点でより一層優れている。
なお、上記「アルジロダイト型結晶構造」とは、化学式:AgGeSで表される鉱物に由来する化合物群が有する結晶構造である。
また、結晶性であるか否かは、粉末X線回折法による結晶ピークの有無によって確認することができる。
<混合工程>
本工程では、固体電解質原料と、単体の硫黄又は硫黄化合物(但し、当該硫黄化合物は300℃より高温に加熱されることにより硫黄ガスを発生するものに限る。)と、を混合して混合物を得ればよい。
焼成する前に、固体電解質原料に、単体の硫黄又は硫黄化合物(但し、当該硫黄化合物は300℃より高温に加熱されることにより硫黄ガスを発生するものに限る。)を混合することにより、焼成時に当該単体の硫黄又は硫黄化合物から硫黄(S)ガスを発生させることができ、たとえ不活性ガス雰囲気で焼成した場合であっても、焼成雰囲気において十分な硫黄(S)分圧を確保することができる。従って、硫化水素ガスを流通させなくても、硫化水素ガスを流通させた場合と同等の固相反応や結晶成長を生じさせることができるため、結果として生成物である固体電解質のイオン伝導率を確保することができる。
中でも、単体の硫黄は、昇華する性質を有しており、融点よりも低温であっても固体-気体の平衡反応に基づいた硫黄(S)ガスの発生を期待することができ、さらに融点以上の温度では、液体-気体の平衡反応による硫黄(S)ガスの発生を期待することができる。従って、広い温度範囲において焼成雰囲気における硫黄(S)分圧の低下をより一層効果的に補うことができ、硫化水素ガスを流通させなくても、硫化水素ガスを流通させた場合と同等のイオン伝導率をより効果的に確保することができる。
(固体電解質原料)
固体電解質原料とは、製造する結晶性硫化物系固体電解質を構成する元素を含む物質であり、原料となるものである。例えばリチウム(Li)、硫黄(S)及びリン(P)を含有する結晶性硫化物系固体電解質であれば、その原料としては、リチウム(Li)を含有する化合物、硫黄(S)を含有する化合物、及び、リン(P)を含有する化合物、を挙げることができる。また、リチウム(Li)、硫黄(S)、リン(P)及びHa(ハロゲン)を含有する結晶性硫化物系固体電解質であれば、その原料としては、リチウム(Li)を含有する化合物、硫黄(S)を含有する化合物、リン(P)を含有する化合物、及び、Ha(ハロゲン)を含有する化合物を挙げることができる。
ここで、前記リチウム(Li)を含有する化合物としては、例えば硫化リチウム(LiS)、酸化リチウム(LiO)、炭酸リチウム(LiCO)等のリチウム化合物、及びリチウム金属単体等を挙げることができる。
前記 リン(P)を含有する化合物としては、例えば三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン、リン酸ナトリウム(NaPO)等のリン化合物、及びリン単体等を挙げることができる。
前記硫黄(S)を含有する化合物としては、上記硫化リチウムや硫化リンを挙げることができる。
前記Ha(ハロゲン)を含有する化合物としては、Ha(ハロゲン)としてのフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)からなる群から選択される1種又は2種以上の元素と、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、リン(P)、硫黄(S)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、セレン(Se)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、鉛(Pb)及びビスマス(Bi)からなる群から選択される1種又は2種以上の元素との化合物、又は、当該化合物にさらに酸素又は硫黄が結合した化合物を挙げることができる。より具体的には、LiF、LiCl、LiBr、LiI等のハロゲン化リチウム、PF、PF、PCl、PCl、POCl、PBr、POBr、PI、PCl、P等のハロゲン化リン、SF、SF、SF、S10、SCl、SCl、SBr等のハロゲン化硫黄、NaI、NaF、NaCl、NaBr等のハロゲン化ナトリウム、BCl、BBr、BI等のハロゲン化ホウ素などを挙げることができ、これらのうちの一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
リチウム(Li)、硫黄(S)、リン(P)及びHa(ハロゲン)を含有する結晶性硫化物系固体電解質の原料の好ましい組み合わせの一例として、硫化リチウム(Li2S)と、硫化リン(P25)と、ハロゲン化合物例えば塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)などとの組み合わせを挙げることができる。
(単体の硫黄)
添加する単体の硫黄は、硫黄化合物でない硫黄単体であればよく、固体例えば粉体であるのが通常である。
また、添加する単体の硫黄は、α硫黄(斜方硫黄、融点 112.8 ℃、沸点444.6℃)、β硫黄(単斜硫黄、融点 119.6 ℃、沸点444.6℃)、γ硫黄(単斜硫黄、融点 106.8 ℃、沸点444.6℃)、その他硫黄同素体のいずれであってもよい。なお、ここでいう単体の硫黄は、硫黄ガスを発生させる目的で別途添加するものであり、固体電解質原料とは異なる。
(硫黄化合物)
他方、硫黄化合物は、300℃より高温に加熱されることにより硫黄(S)ガスを発生するものであればよい。例えば二硫化炭素やその他有機硫黄化合物、多硫化リチウム、多硫化ナトリウムなどの多硫化物、ポリスルフィド、硫黄加硫処理を施されたゴムなどを挙げることができる。なお、ここでいう硫黄化合物は、硫黄ガスを発生させる目的で別途添加するものであり、固体電解質原料とは異なる。
なお、上記単体硫黄及び硫黄化合物は、固体電解質材料に混入して特性劣化を引き起こさない範囲であれば、水分やその他不純物を含んでいてもかまわない。
その際、上記単体硫黄及び硫黄化合物の不純物の含有量は、典型的には3質量%以下であれば、特性劣化の影響が少ないため好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
単体の硫黄又は硫黄化合物を加える量、すなわち混合量は、前記混合物すなわち結晶性硫化物系固体電解質の原料と、単体の硫黄又は硫黄化合物とを混合した混合物の合計量の5wt%以上であるのが好ましい。
前記混合物の合計量の5wt%以上の単体の硫黄又は硫黄化合物を加えることにより、特別な混合分散処理を行わなくとも、前記混合物全体に単体の硫黄又は硫黄化合物を配置することができ、単体の硫黄又は硫黄化合物が気化することによって得られる硫黄(S)ガスの偏在が抑制され、焼成時に硫化水素ガスを流通させなくても、硫化水素ガスを流通させた場合と同等のイオン伝導率を確保することができる。他方、単体の硫黄又は硫黄化合物の混合量が多過ぎると、得られる固体電解質の量が減り経済的でないだけでなく、揮発したガス状硫黄が排気ガス等とともに排出される際、冷却により再析出する量が多くなり、装置の閉塞のリスクが高まる。そのため、添加する単体の硫黄又は硫黄化合物は、前記混合物の合計量の20wt%以下であるのが好ましい。
かかる観点から、単体の硫黄又は硫黄化合物の混合量は、前記混合物の合計量の5wt%以上であるのが好ましく、中でも20wt%以下、その中でも5wt%以上15wt%以下、その中でも5wt%以上10wt%以下であるのがより一層好ましい。
単体の硫黄又は硫黄化合物(但し、当該硫黄化合物は300℃より高温に加熱されることにより硫黄ガスを発生するものに限る。)を固体電解質原料に混合するタイミングは、焼成前であればいつでも構わない。例えば、固体電解質原料である硫化リチウム、硫化リン及びハロゲン化合物を混合した後に、単体の硫黄又は硫黄化合物を混合してもよいし、又、固体電解質原料の混合と同時に単体の硫黄又は硫黄化合物を混合してもよいし、又、固体電解質原料の何れか、例えば硫化リチウム、硫化リン及びハロゲン化合物の何れか一部と単体の硫黄又は硫黄化合物を混合した後、固体電解質原料の残り、例えば硫化リチウム、硫化リン及びハロゲン化合物の残りを混合してもよい。
単体の硫黄又は硫黄化合物を固体電解質原料に混合する際、単体の硫黄又は硫黄化合物を固体電解質原料に分散させるのが好ましい。その際、単体の硫黄又は硫黄化合物が混合物中で偏析していない状態であればよく、必ずしも固体電解質原料中に均一混合させる必要はない。よって、乳鉢による攪拌やボールミルによる混合程度で十分である。
単体の硫黄又は硫黄化合物に対して直接接触していない固体電解質原料が存在していたとしても、単体の硫黄又は硫黄化合物が気化して硫黄ガスを発生すれば、焼成雰囲気における硫黄(S)分圧の低下を補うことができるからである。また、余分な単体の硫黄又は硫黄化合物は、融点以上まで昇温するように加熱することで、目的とする結晶性硫化物系固体電解質の生成反応に寄与しないようにすることができる。
固体電解質原料の混合方法は、特に制限するものではない。例えばボールミル、ビーズミル、ホモジナイザー等で混合すればよい。
但し、メカニカルミリング法及び溶融急冷法を採用して混合し、混合物に過剰な運動エネルギーを掛けると、混合工程の段階で添加した硫黄もしくは硫黄化合物の一部、又は全部が気化してしまうため、これらメカニカルミリング法及び溶融急冷法は採用しないことが好ましい。
固体電解質原料、例えば硫化リチウムや硫化リンは、大気中で極めて不安定で、水分と反応して分解し、硫化水素ガスを発生したり、酸化したりするため、不活性ガス雰囲気に置換したグローブボックス内などで、上記混合工程を実施するのが好ましい。
上記混合工程で得られた混合物は、必要に応じて、乾燥、攪拌、洗浄、整粒、分級などの処理を施した後、焼成工程に供給するようにしてもよい。
<焼成工程>
本工程では、混合工程で得られた混合物を300℃より高温で焼成すればよい。
単体の硫黄又は硫黄化合物、特に単体の硫黄を固体電解質原料に混合して300℃より高温で焼成することにより、結晶性硫化物を製造することができるばかりか、硫化水素ガスを流通させながら焼成する場合に比べて、焼成試料近傍の硫黄分圧をより一層高めることができるため、硫黄欠損が生じるのをより抑えることができ、電子伝導性が高くなるのをより一層抑えることができる。
この際の焼成温度は、品温を意味し、例えば、焼成物中に熱電対を挿入して測定することができる。
焼成時に原料を入れる容器は、蓋付の容器でも、蓋無しの容器でもよいが、封管などの気密性のある容器ではなく、容器内外のガスが流通し得るものであるのが好ましい。添加した単体の硫黄又は硫黄化合物のうち、余った単体の硫黄又は硫黄化合物をより容易に系外すなわち当該容器外に逃がすことができるようにするためである。
かかる観点から、焼成時に原料を入れる容器は、例えばカーボン、アルミナ、ジルコニア、SiCなどの材料からなる匣鉢などを挙げることができる。
焼成は、不活性ガスもしくは硫化水素ガス(H2S)を流通させながら焼成するのが好ましい。この際、不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスを挙げることができる。
中でも、本固体電解質の製造方法は、硫化水素ガスを流通させなくても、硫化水素ガスを流通させて焼成した場合と同等のイオン伝導率を得ることができる特徴を有しているから、製造設備にかかるコストを考慮して、硫化水素ガス(H2S)をできるかぎり流通させず、不活性ガスを流通させながら焼成するのがより好ましい。
かかる観点から、流通させるガス全体に対する硫化水素ガスの体積比率は、50%以下であることが好ましく、中でも30%以下、その中でも20%以下、さらにその中でも10%以下であるのがより一層好ましい。
焼成温度すなわち、焼成する際の品温の最高到達温度は、300℃より高温であればよく、中でも700℃以下、その中でも400℃以上或いは600℃以下とするのが所望の固相反応や結晶化反応を起こさせる観点からより好ましい。
焼成時間、すなわち、300℃より高温に加熱する時間は、混合物の固相反応や結晶化反応が十分進行する程度であればよく、混合物の混合状態や焼成温度により適宜調整するのが好ましい。典型的には1時間~10時間が好ましく、中でも2時間以上或いは6時間以下であるのがさらに好ましい。
焼成時の昇温速度は、反応ムラを低減する観点から、300℃/hr以下であることが好ましく、焼成効率を維持する観点を加味すると、中でも50℃/hr以上或いは250℃/hr以下、その中でも100℃/hr以上或いは200℃/hr以下であるのがさらに好ましい。
また、昇温と温度保持を繰り返す多段階焼成を行ってもよい。
例えば、昇温速度50~500℃/hr、好ましくは100℃/hr以上或いは300℃/hr以下で、300~500℃まで昇温し、当該温度を1~20時間保持した後、昇温速度50~500℃/hr、好ましくは100℃/hr以上或いは300℃/hr以下で、添加した単体の硫黄又は硫黄化合物の融点以上の温度、例えば350~700℃まで昇温し、当該温度を1~20時間保持するように焼成する方法を挙げることができる。
このように多段階焼成することにより、結晶性が高く、イオン伝導率の高い固体電解質を製造することができるばかりか、余分な単体の硫黄又は硫黄化合物を系外により一層確実に追い出すことができるから、これらの残留を防いで、イオン伝導率をより一層高めることができる。
本工程では、焼成後における、単体の硫黄又は硫黄化合物の残量を、焼成前の50wt%以下とするのが好ましい。
当該残量が50wt%以下であれば、添加した単体の硫黄又は硫黄化合物のうち、Liイオン伝導に寄与しない余分な単体の硫黄又は硫黄化合物の多くを系外に追い出すことができ、固体電解質中の不純物量を効果的に低下させることができ、イオン伝導率をさらに高めることができるから、好ましい。
かかる観点から、当該残量を50wt%以下とするのが好ましく、中でも40wt%以下とするのがさらに好ましい。
単体の硫黄を添加した場合に、硫黄の融点以上の温度まで昇温するように焼成することにより、固体電解質の焼成体の細孔部等にトラップされた余剰の硫黄の大部分を追い出すことができるので、その場合、当該残量は30wt%以下、中でも20wt%以下となるのが好ましい。
単体の硫黄又は硫黄化合物の残量は、添加した単体の硫黄又は硫黄化合物の重量(g)と焼成前後の混合物の重量減少量(g)を測定し、100×(添加した単体の硫黄又は硫黄化合物の重量-焼成前後の混合物の重量減少量)/添加した単体の硫黄又は硫黄化合物の重量を計算して求めることができる。
上記の製法によれば、焼成時にアルジロダイト型結晶構造が形成するため、混合工程において強い混合エネルギーをかけてアルジロダイト型結晶構造を生じさせなくてもよい。但し、焼成前の段階で、アルジロダイト型結晶構造を生じさせるようにしてもよい。
アルジロダイト型結晶構造を焼成前の段階で生じさせる方法としては、遊星ボールミル、振動ミル、転動ミル等の粉砕機や、混練機等を使用して、機械的応力を加えるようにすればよい。このように機械的応力を加えるようにすれば、アルジロダイト型結晶構造の基本骨格であるPS構造を生じさせることができる。
上記焼成後、必要に応じて解砕粉砕し、必要に応じて分級してもよい。
<本固体電解質>
上述した本固体電解質の製造方法により、次に説明する本固体電解質を製造することができる。但し、本固体電解質の製造方法は、上述した本固体電解質の製造方法に限定されるものではない。
本固体電解質の一例として、結晶性を有する硫化物すなわち硫黄含有化合物からなる固体電解質、中でも、Li、S及びPを含有する結晶性硫化物からなる固体電解質、その中でもLi、S、P及びHa(ハロゲン)を含有する結晶性硫化物からなる固体電解質その中でも、アルジロダイト型結晶構造を有し、Li、S、P及びHa(ハロゲン)を含有する結晶性硫化物からなる固体電解質、その中でも、組成式(1):Li7-xPS6-xHax(Haは1種又は2種類以上のハロゲン元素、0.2<x≦2.0) からなる固体電解質を挙げることができる。
前記組成式(1)において、ハロゲン元素のモル比を示す「x」が0.2より大きければ、室温近傍でアルジロダイト型結晶構造が安定であり、高いイオン伝導率を確保することができ、2.0以下であればアルジロダイト型結晶構造の基本骨格であるPS構造を生成しやすく、リチウムイオンの伝導性を高めることができるため好ましい。かかる観点から、「x」は0.2より大きく且つ2.0以下であるのが好ましく、中でも0.4以上或いは1.7以下、その中でも0.5以上或いは1.65以下であるのが特に好ましい。
他方、ハロゲンを多く含むほど、本固体電解質の製造方法の効果、すなわち、単体の硫黄又は硫黄化合物硫黄化合物を固体電解質原料に加えることによって硫黄欠損を低減する効果をより一層効果的に享受することができる。かかる観点からは、「x」は1.4以上であるのが好ましく、中でも1.5以上、その中でも1.55以上であるのがさらに好ましい。
なお、ハロゲン(Ha)が別の元素(例えばClとBr)の組み合わせの場合、上記組成式(1)における「x」は、各元素のモル比の合計値である。
本固体電解質は、前記以外の物質、例えば不可避不純物を含有していたとしても、その含有量が本固体電解質の5mol%未満、好ましくは3mol%未満、特に好ましくは1mol%未満であることが、性能への影響が低いという観点から好ましい。
(粒径)
本固体電解質は、粒子であるのが好ましく、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布によるD50(「平均粒径(D50)」又は「D50」と称する)が0.1μm~10μmであるのが好ましい。
本固体電解質のD50が0.1μm以上であれば、固体電解質粒子粉末全体の表面積が増えることによる抵抗増大や、活物質との混合が困難となることがないから好ましい。他方、該D50が10μm以下であれば、活物質や、組み合わせて用いる固体電解質の隙間に本固体電解質が入りやすくなり、接触点及び接触面積が大きくなるから好ましい。
かかる観点から、本固体電解質の平均粒径(D50)は0.1μm~10μmであるのが好ましく、中でも0.3μm以上或いは7μm以下、その中でも特に0.5μm以上或いは5μm以下であるのがさらに好ましい。
本固体電解質を電極内に加える場合の平均粒径(D50)は、正極活物質の平均粒径(D50)又は負極活物質の平均粒径(D50)の1~100%であるのが好ましい。
本固体電解質の平均粒径(D50)が、活物質の平均粒径(D50)の1%以上であれば、活物質間を隙間なく埋めることができるため好ましい。他方、100%以下であれば、電極の充填率を高めつつ、活物質比率を高くできるので、電池の高エネルギー密度化の観点から好ましい。
かかる観点から、本固体電解質の平均粒径(D50)は、活物質の平均粒径(D50)の1~100%であるのが好ましく、中でも3%以上或いは50%以下、その中でも5%以上或いは30%以下であるのがさらに好ましい。
本固体電解質は、全固体型リチウム二次電池の固体電解質層や、正極・負極合材に混合する固体電解質として使用できる。
例えば正極及び負極の間に本固体電解質を含む層を形成することで、全固体型リチウム二次電池を構成することができる。電池の形状としては、例えばラミネート型、円筒型及び角型等を挙げることができる。
この際、本固体電解質は、硫黄欠損が少なく、完全性の高い結晶であるため、耐湿性に優れており、乾燥空気中で取り扱っても特性劣化が少ないため、例えばドライルームなどでも全固体型リチウム二次電池の組立作業を行うことができる。
ここで、本固体電解質を含む層は、例えば本固体電解質とバインダー及び溶剤からなるスラリーを基体上に滴下し、ドクターブレードなどで擦り切る方法、基体とスラリーを接触させた後にエアーナイフで切る方法、スクリーン印刷法等で塗膜を形成し、その後加熱乾燥を経て溶剤を除去する方法等で製造することができる。又、本固体電解質の粉をプレス等により圧粉体とした後、適宜加工して製造することもできる。
リチウムイオン伝導性を高める観点から、本固体電解質を含む層は、空隙率を50%以下にすることが好ましく、中でも30%以下、その中でも20%以下にすることがさらに好ましい。そのために、本固体電解質の粉を20MPa以上でプレスして製造することが好ましい。
ここで、空隙率は、例えば液相法(アルキメデス法)で求めた、本固体電解質を含む層の真密度と見かけの密度から、下記に示す関係式により算出することができる。
空隙率=(真密度-見かけの密度)÷真密度×100
また、本固体電解質を含む層の厚さは、短絡防止と容量のバランスから、典型的には5~300μmであるのが好ましく、中でも10μm以上或いは100μm以下であるのがさらに好ましい。
なお、本固体電解質と他の固体電解質を混ぜた固体電解質層として使用することも可能である。非晶質(ガラス)、ガラスセラミックス、結晶性材料の何れとも組み合わせて用いることが可能である。硫化物系固体電解質として具体的には、LiS-P系、Li、Li11等を挙げることができる。また、組み合わせる固体電解質は非硫化物でもよく、例えば酸化物系固体電解質でも構わない。
正極材としては、リチウム二次電池の正極活物質として使用されている正極材を適宜使用可能である。例えばリチウムを含む正極活物質、具体的にはスピネル型リチウム遷移金属化合物や層状構造を備えたリチウム金属酸化物等を挙げることができる。高電圧系正極材を使用することで、エネルギー密度の向上を図ることができる。
正極材は、正極活物質のほかに、導電化材或いはさらに他の材料を含んでいてもよい。
負極材についても、リチウム二次電池の負極活物質として使用されている負極材を適宜使用可能である。例えば、本固体電解質は、電気化学的に安定であることから、リチウム金属やリチウム金属に匹敵する卑な電位(約0.1V vs Li/Li)で充放電するグラファイト、人造黒鉛、天然黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)などの炭素系材料を使用することができる。そのため、全固体型リチウム二次電池のエネルギー密度を大きく向上させることができる。また、高容量材料として有望なケイ素や錫を活物質として使用することもできる。一般的な電解液を用いたリチウム二次電池では、充放電に伴い電解液と活物質が反応し、活物質表面に腐食が生じるため、電池特性の劣化が著しい。リチウム二次電池の電解質として本固体電解質を用い、負極にケイ素や錫を用いると、このような腐食反応が生じないため、電池の耐久性の向上を図ることができる。
負極材についても、負極活物質のほかに、導電材或いはさらに他の材料を含んでいてもよい。
<用語の解説>
また、本発明において「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」又は「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」又は「X≦」(Xは任意の数字)と記載した場合、「Xより大きいことが好ましい」旨の意図を包含し、「Y以下」又は「Y≧」(Yは任意の数字)と記載した場合、「Yより小さいことが好ましい」旨の意図を包含する。
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
<実施例1>
アルジロダイト型結晶構造を有する化合物の組成がLi5.4PS4.4Cl1.6となるように、硫化リチウム(LiS)粉末と、五硫化二リン(P)粉末と、塩化リチウム(LiCl)粉末とを、全量で5gとなるようにそれぞれ秤量し、ボールミルで15時間粉砕混合を行った後、混合粉全体の5wt%に相当する量の単体硫黄粉末(α硫黄、融点113℃、沸点444℃)0.26gを加えて乳鉢で混合して混合粉末を得た。
そして、得られた混合粉末をカーボン製の容器(40mm×30mm×20mm、非気密性)の80%体積まで充填し、これを管状電気炉にてArガスを1.0l/min流通させながら300℃(品温)で4時間加熱した後、さらに500℃(品温)で4時間加熱した。昇降温速度は200℃/hrとした。その後、試料を乳鉢で解砕し、目開き53μmの篩いで整粒して粉末状のサンプルを得た。
この際、前記秤量、混合、電気炉へのセット、電気炉からの取り出し、解砕及び整粒作業は全て、十分に乾燥されたArガス(露点-60℃以下)で置換されたグローブボックス内で実施し、組成式:Li5.4PS4.4Cl1.6で示される化合物粉末(サンプル)を得た。
<実施例2、3>
前記硫化リチウム(LiS)粉末と、五硫化二リン(P)粉末と、塩化リチウム(LiCl)粉末と、臭化リチウム(LiBr)を、表1に示す組成となるように秤量して混合した以外、実施例1と同様に、化合物粉末(サンプル)を得た。
<実施例4>
実施例3において、500℃(品温)で4時間加熱する代わりに、400℃(品温)で4時間加熱した以外、実施例3と同様に、化合物粉末(サンプル)を得た。
<実施例5,6>
単体硫黄粉末(α硫黄、融点113℃、沸点444℃)の添加量を表1に示す量に変更した以外、実施例1と同様に、化合物粉末(サンプル)を得た。
参考例1
Arガスに代えて、硫化水素(H2S)ガスを1.0l/min流通させながら焼成した以外、実施例1と同様に、化合物粉末(サンプル)を得た。
<比較例1,2,3>
単体硫黄粉末(α硫黄、融点113℃、沸点444℃)を添加しなかった以外、それぞれ実施例1,2、3と同様に、化合物粉末(サンプル)を得た。
<比較例4,5,6>
単体硫黄粉末(α硫黄、融点113℃、沸点444℃)を添加せず、さらには、Arガスに代えて、硫化水素(H2S)ガスを1.0l/min流通させながら焼成した以外、それぞれ実施例1,2、3と同様に、化合物粉末(サンプル)を得た。
<比較例7>
管状電気炉にてArガスを1.0l/min流通させながら300℃(品温)で4時間加熱した後、さらに500℃(品温)で4時間加熱する代わりに、
管状電気炉にてArガスを1.0l/min流通させながら200℃(品温)で4時間加熱した以外、実施例1と同様に、化合物粉末(サンプル)を得た。
<比較例8>
管状電気炉にてArガスを1.0l/min流通させながら300℃(品温)で4時間加熱した後、さらに500℃(品温)で4時間加熱する代わりに、
管状電気炉にてArガスを1.0l/min流通させながら300℃(品温)で4時間加熱した以外、実施例3と同様に、化合物粉末(サンプル)を得た。
<元素組成の測定>
実施例・比較例で得られた化合物粉末(サンプル)を全溶解してICP発光分析法により元素組成を測定した。その結果、仕込み原料化合物の配合比の通りとなっていることを確認した。
<X線回折測定>
実施例・比較例で得られた化合物粉末(サンプル)をX線回折法(XRD、Cu線源)で分析し、X線回折パターンを得て、各位置におけるピーク強度(cps)を測定した。リガク社製のXRD装置「Smart Lab」を用いて、走査軸:2θ/θ、走査範囲:10~60deg、ステップ幅0.01deg、走査速度1deg/minの条件の下で行った。内部標準としてSi粉末(和光純薬工業製、純度99.9%)を5wt%混合し、角度補正に用いた。
アルジロダイト型結晶構造に由来するピークもしくは内部標準用Si粉末に帰属されるピーク以外の回折ピークを異相ピークとした。アルジロダイト結晶構造に由来するピークの同定にはICSD(無機結晶構造データベース)No.034-0688のデータを用いた。
アルジロダイト型結晶構造に由来するピークのうち回折角2θ=24.9~26.3°の位置に出現するピークの強度に対する、異相ピークの強度の比率を調べた。そして、異相ピークが存在しないか、或は、当該比率が0.04未満の場合は、アルジロダイト型結晶構造の「単相」であると判定し、当該比率が0.04以上である場合には、「異相あり」と判定した。
<X線リートベルト解析>
実施例1で得られた化合物粉末(サンプル)のXRDデータを用いて、下記に示すリートベルト解析を実施し、アルジロダイト型結晶構造からなる化合物の組成を定量した結果、その組成式はLi5.4PS4.4Cl1.6となった。この値は、仕込み原料化合物の配合比から算出した組成式:Li5.4PS4.4Cl1.6と良く整合していた。
そこで、表1には、実施例・比較例で得られた化合物粉末(サンプル)の、仕込み原料化合物の配合比から算出したアルジロダイト型結晶構造からなる化合物の組成を示した。
リートベルト解析は、上記条件の下で測定したXRDデータを用いて、解析ソフト「RIETAN‐FP v2.8.3」にて実施した。この際、妥当性の指標は、Rwp<10、S<2.0とした。
<イオン伝導率の測定>
実施例・比較例で得た化合物粉末(サンプル)を、十分に乾燥されたArガス(露点-60℃以下)で置換されたグローブボックス内で一軸加圧成形し、さらにCIP(冷間等方圧加圧装置)にて200MPaで直径10mm、厚み約4~5mmのペレットを作製した。更にペレット上下両面に電極としてのカーボンペーストを塗布した後、180℃で30分間の熱処理を行い、イオン伝導率測定用サンプルを作製した。
イオン伝導率測定は、室温(25℃)にて、東陽テクニカ社製の装置である、ソーラトロン1255Bを用いて、測定周波数0.1Hz~1MHzの条件下、交流インピーダンス法にて、イオン伝導率(S/cm)を測定した。結果を、室温伝導率として表1に示した。
<全固体電池セルの作製と評価>
実施例3で得られた化合物粉末(サンプル)を固体電解質として用いて正極合材、負極合材を調製し、全固体電池を作製して、電池特性評価(初回充放電容量)を行った。結果を図1に示す。
(材料)
正極活物質として、層状化合物であるLiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM)粉末(D50=6.7μm)を用い、負極活物質としてグラファイト(D50=20μm)を用い、固体電解質粉末(D50=3.4μm)として実施例で得たサンプルを用いた。
(合材調製)
正極合材粉末は、正極活物質粉末、固体電解質粉末及び導電助剤(アセチレンブラック)粉末を、質量比で60:37:3の割合で乳鉢混合することで調製し、20MPaで1軸プレス成型して正極合材ペレットを得た。
負極合材粉末は、グラファイト粉末と固体電解質粉末を、質量比で64:36の割合で乳鉢混合することで調製した。
(全固体電池セルの作製)
上下を開口したポリプロピレン製の円筒(開口径10.5mm、高さ18mm)の下側開口部を正極電極(SUS製)で閉塞し、正極電極上に正極合材ペレットを載せた。その上から実施例で得た粉末固体電解質を載せて、180MPaにて1軸プレスし正極合材と固体電解質層を形成した。その上から負極合材粉末を載せた後、負極電極(SUS製)で閉塞して550MPaにて1軸成形し、およそ100μm厚の正極合材、およそ300μm厚の固体電解質層、およそ20μm厚の負極合材の3層構造からなる全固体電池セルを作製した。この際、上記全固体電池セルの作製においては、露点温度―60℃のアルゴンガスで置換されたグローブボックス内で行った。
(電池特性評価(初回充放電容量))
電池特性測定は、25℃に保たれた環境試験機内に全固体電池セルを入れて充放電測定装置に接続して評価した。1mAを1Cとして電池の充放電を行った。0.1Cで4.5VまでCC-CV方式で充電し、初回充電容量を得た。放電は0.1Cで2.5VまでCC方式で行い初回放電容量を得た。
0.1Cで2.5Vまで放電した際の放電容量は160mAh/g以上であった。固体電解質が実用可能なイオン伝導性を確保しているため、実用的な放電容量を発現できたと考えることができる。
Figure 0007105133000001
単体の硫黄を固体電解質原料に加えて、300℃より高温で焼成することにより、結晶性硫化物を製造することができるばかりか、硫化水素ガスを流通させなくても、硫化水素ガスを流通させた場合と同等のイオン伝導率を確保することができることが分かった。
なお、上記実施例は、単体の硫黄を固体電解質原料に加えた実施例であるが、気体化して硫黄分圧を高めることができれば同様の効果が気体できるから、300℃より高温に加熱されることにより硫黄ガスを発生する硫黄化合物であれば、単体の硫黄と同様の効果を得ることができるものと考えることができる。
比較例7は、焼成温度(品温の最高到達温度)を200℃に変更した以外、上記実施例1と同様に化合物粉末(サンプル)を得、焼成後のSの残量wt%を測定した。その結果、焼成後のSの残量は97wt%であった。
また、比較例8、実施例4は、焼成温度(品温の最高到達温度)を300℃、400℃にそれぞれ変更した以外、上記実施例3と同様に化合物粉末(サンプル)を得、焼成後のSの残量wt%を測定した。その結果、それぞれの焼成後のSの残量は61wt%、1wt%であった。これより、焼成温度(品温の最高到達温度)が300℃より高温であれば、添加した単体の硫黄を系外に除去することができ、化合物粉末(サンプル)中に残留する硫黄を低減乃至無くすことができることが分かった。
また、比較例7、比較例8で得られた化合物粉末(サンプル)のX線回折ピークは、他の実施例、比較例得られた化合物粉末(サンプル)のX線回折ピークと比べて、ブロードであったため、一部結晶性ではあるものの、主に非晶質で構成されていると考えられる。

Claims (11)

  1. 結晶性硫化物系固体電解質の原料と、単体の硫黄又は硫黄化合物(但し、当該硫黄化合物は300℃より高温に加熱されることにより硫黄ガスを発生するものに限る。)と、を混合して混合物を得、得られた混合物を300℃より高温で焼成 し、
    前記焼成は、不活性ガスを流しながら行う ことを特徴とする、結晶性硫化物系固体電解質の製造方法。
  2. 単体の硫黄又は硫黄化合物の量は、前記混合物の5wt%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の結晶性硫化物系固体電解質の製造方法。
  3. 前記焼成では、単体の硫黄又は硫黄化合物の融点以上の温度まで昇温することを特徴とする請求項1又は2に記載の結晶性硫化物系固体電解質の製造方法。
  4. 前記焼成後における、単体の硫黄又は硫黄化合物の残量が、焼成前の50wt%以下であることを特徴とする、請求項1~の何れかに記載の結晶性硫化物系固体電解質の製造方法。
  5. 前記結晶性硫化物系固体電解質が、アルジロダイト型結晶構造を含有するものであることを特徴とする、請求項1~の何れかに記載の結晶性硫化物系固体電解質の製造方法。
  6. 前記結晶性硫化物系固体電解質が、リチウム(Li)、リン(P)、硫黄(S)及びハロゲン(Ha)を含むことを特徴とする、請求項1~5の何れかに記載の結晶性硫化物系固体電解質の製造方法。
  7. 前記結晶性硫化物系固体電解質が、組成式:Li7-xPS6-xHax(Haは1種又は2種類以上のハロゲン元素)で表され、前記組成式におけるxは1.4≦xを満足するものであることを特徴とする、請求項1~6の何れかに記載の結晶性硫化物系固体電解質の製造方法。
  8. 前記焼成が700℃以下で行われることを特徴とする、請求項1~7の何れかに記載の結晶性硫化物系固体電解質の製造方法。
  9. 前記不活性ガスが、窒素ガス、アルゴンガス及びヘリウムガスのうちの少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1~8の何れかに記載の結晶性硫化物系固体電解質の製造方法。
  10. 前記焼成時の昇温速度が、300℃/hr以下であることを特徴とする、請求項1~9の何れかに記載の結晶性硫化物系固体電解質の製造方法。
  11. 前記焼成が、昇温と温度保持を繰り返す多段階焼成であることを特徴とする、請求項1~10の何れかに記載の結晶性硫化物系固体電解質の製造方法。
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