JP7416377B2 - 多極電磁石、およびそれを用いた加速器 - Google Patents
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Description
荷電粒子ビームは、多極電磁石のうち複数の磁心先端に囲われた部分を通る。また、2N個(Nは2以上の自然数)の磁心を持つ前記多極電磁石は、磁石の径方向最外周を囲うヨークと、前記ヨークからビーム軸の方向へ伸び、ビーム軸を中心に2N回対称な形状で配置された2N本の磁心と、前記2N本の磁心に磁化を生じさせるためのコイルを有する。
特許文献1の[要約]には、「[目的]ボア内の多極磁場を乱すことなく、偏向電磁石の放射光取出しパイプとのスペース的干渉を排除する。[構成]多極電磁石としての四極電磁石40は、半径方向断面がほぼリング状を成す継鉄41と、この継鉄41から内側に等角度で一体に突設させた4個の磁心42、42、42L、42Lと、この磁心42、42、42L、42Lに個別に巻装した励磁コイル43…43とを備える。これにより、磁極P1~P4が形成される。継鉄41の磁極P3、P4間の部分(電子ビームの周回軌道の半径方向に沿った部分)が切除される。磁極P3、P4の磁心42L、42Lの幅を、継鉄半径方向の断面において、他の磁極P1、P2の磁心42、42よりも広くする。全ての磁心42、42、42L、42Lの先端面の形状は、ボア半径R0に基づく双曲線の曲面を維持させる。」と記載され、電子加速器の多極電磁石の技術が開示されている。また、多極電磁石に隣接するパイプとのスペース的干渉を排除する技術が開示されている。
特許文献1のようにビーム軸を軸とした4回対称の磁心を持つ四極電磁石では、四極電磁石中心に生成される磁場勾配を大きくしようとすると磁心が太くなる。そのため、生成する磁場勾配が大きくなると四極電磁石の幅が大きくなり、隣接してビームパイプを置ける距離が広がってしまうという問題がある。
また、特許文献1の電磁石形状は磁石外周のヨークの一部が開放された形となっているため、漏れ磁場が隣接するビームパイプまで届いてしまう。そのため、隣接するビームへの漏れ磁場の影響を避けるために、隣接してビームパイプを置ける距離をさらに広げる必要が生じる場合があるという問題がある。
すなわち、本発明の多極電磁石は、4以上の偶数からなる複数の磁心と、複数の前記磁心のそれぞれの周囲に巻回して配置される複数のコイルと、複数の前記磁心を囲み、多極電磁石の外周部に配置されるヨークと、を備え、複数の前記磁心は、互いに平行または同方向に配置され、複数の前記磁心は、それぞれ先端に磁心先端部を有し、複数の前記磁心先端部は、それぞれ多極電磁石としての中心部に向かって曲がり延びて形成されている、
ことを特徴とする。
本発明の第1実施形態に係る多極電磁石について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る多極電磁石(四極電磁石)10の構成と断面構造の例を示す図である。
図1において、多極電磁石10は、四極電磁石として構成され、4個のコイル14U1,14U2,14L1,14L2と、4個の磁心13U1,13U2,13L1,13L2を備えている。4個のコイル14U1,14U2,14L1,14L2は、それぞれ4本の磁心13U1,13U2,13L1,13L2の周囲に巻回され、4極の電磁石が構成されている。
4個の磁心13U1,13U2,13L1,13L2は、ヨーク12と一体となって形成されている。磁心13U1,13U2,13L1,13L2、およびヨーク12の素材は、強磁性体である鉄が使用されている。なお、鉄と同じく強磁性体であるコバルトやニッケルが用いられることもある。
また、磁心13U1,13U2,13L1,13L2のそれぞれの先端部には強磁性体である磁心先端部13Uc1,13Uc2,13Lc1,13Lc2が備えられている。
ただし、4個の磁心13U1,13U2,13L1,13L2を、単に、互いに平行、または同方向に配置したとすると、磁心13U1,13U2,13L1,13L2からの磁束線が、多極電磁石(四極電磁石)10の中心部(ビーム軸11cxに対応)に効率よく集まらなくなる。
中心部に向かって曲がり延びた磁心先端部13Uc1,13Uc2,13Lc1,13Lc2によって、4個の磁心13U1,13U2,13L1,13L2と4個のコイル14U1,14U2,14L1,14L2による四極電磁石が多極電磁石(四極電磁石)10の中心部に効率よく磁場を形成する。
この構成によって、多極電磁石10の水平方向(X軸方向)の横幅をより小さくすること、多極電磁石10の中心部に効率よく磁場を形成することが両立する。その理由の詳細については、後記する。
図1に示すビームパイプ11(11c,11b,11d)が前記したビームが通る領域の囲いである。なお、ビームパイプ11cは、多極電磁石10の中を通るビームパイプであり、ビームパイプ11b,11dは、多極電磁石10に隣接して通るビームパイプである。また、ビームパイプ11cの中心をビーム軸11cxとして示している。また、ビーム軸11cxは、多極電磁石10の中心部に対応している。
多極電磁石10は、荷電粒子ビームの軸に直交する断面を有し、ビームパイプ11を中心部に貫通させた構造を有する。
なお、図1において、X軸、Y軸、Z軸(右手系)を示している。多極電磁石の幅(水平方向の幅)とは、多極電磁石10のX軸方向の長さ(寸法)である。多極電磁石の高さが多極電磁石10のY軸方向の長さ(寸法)に相当する。また、ビームパイプ11を通過するビームの方向は、Z軸方向である。
前記したように、4個の磁心先端部13Uc1,13Uc2,13Lc1,13Lc2は、それぞれ磁心13U1,13U2,13L1,13L2に対して折れ曲がり、多極電磁石10の中心部に相当するビーム軸11cxに向かって延びた構成となっている。
前記の4個のコイル14U1,14U2,14L1,14L2が生成した磁束が、4個の磁心13U1,13U2,13L1,13L2、および磁心先端部13Uc1,13Uc2,13Lc1,13Lc2と、ヨーク12を主に通過し、4個の磁心先端部13Uc1,13Uc2,13Lc1,13Lc2に囲まれた空間内に四極磁場が生成される。
この磁場勾配の数値計算例は、後記する。
多極電磁石(四極電磁石)10の水平方向の寸法が小さくなることで、図2に示すようにビームパイプが複数隣接している場合、多極電磁石(四極電磁石)10と隣接するビームパイプ(11b,11d)との間の距離を小さくすることができる。さらに、多極電磁石(四極電磁石)10と隣接するビームパイプ(11b、11d)との間にヨークを設置することで、漏れ磁場(漏れ磁束)の低減が可能となる。その結果として、多極電磁石(四極磁石)10と隣接するビームパイプ(11b,11d)との間にヨークを設置しない場合よりも、多極電磁石(四極磁石)10と隣接するビームパイプ(11b,11d)との間の距離をさらに小さくすることが可能となる。
また、価数の異なる複数種類の荷電粒子を同時に周回させる加速器等における効果について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る多極電磁石(四極電磁石)10を価数の異なる複数種類の荷電粒子を同時に周回させる加速器等に用いた場合の効果を説明する図である。
図2において、複数種類の荷電粒子を同時に周回させる加速器100には、5台の多極電磁石(四極電磁石)10(10a,10b,10c,10d,10e)と、複数種類の荷電粒子をそれぞれ通すビームパイプ11(11a,11b,11c,11d,11e)が配置されている。なお、図2において、多極電磁石10a,10c,10eが隣接する方向は、図1におけるX軸方向である。
複数種類の荷電粒子をそれぞれ通すビームパイプ11a,11b,11c,11d,11eは、5台の多極電磁石10(10a,10b,10c,10d,10e)のそれぞれの中心部を貫通している。
図2に示すように、複数台の多極電磁石10を設置する場合に、前記した構成と理由から水平方向の寸法を小さく抑えられるため、複数台の多極電磁石10を狭い領域に隣接して設置することが可能である。
磁場解析ソフトウェアPoisson Superfishを用いて、多極電磁石(四極電磁石)10によって生成される磁場をシミュレーションした結果について、図3A、図3B、図3C、図3D、図3Eを参照して説明する。
図3Aは、本発明の第1実施形態に係る多極電磁石(四極電磁石)10によって生成される磁場(磁束線)のシミュレーションの結果の例を示す図である。
図3Bは、図3Aの磁場のシミュレーションの結果の部分を拡大して示す図である。
図3Cは、図3Aの磁場のシミュレーションにおける磁場Byと磁石中心からの距離xとの関係の例を示す図である。
図3Dは、図3Aの磁場のシミュレーションにおける磁場勾配dBy/dxと磁石中心からの距離xとの関係の例を示す図である。
図3Eは、図3A~図3Dの磁場のシミュレーションにおける条件としての各項目と各値の例を示す図である。
なお、図3Aにおいて、横軸はX軸方向の長さ、座標(単位はcm)を示し、縦軸はY軸方向の長さ、座標(単位はcm)を示している。座標(0,0)は、多極電磁石(四極電磁石)10の中心であり、ビーム軸(11cx:図1)の位置を示している。
また、横軸方向において、磁束線分布が示された多極電磁石10が、概ね-10~+10の範囲に記載されていることは、多極電磁石10の幅が約20cmであることに対応している。また、多極電磁石10が縦軸方向において、-20~+20の範囲に記載されていることは、多極電磁石10の高さが約40cmであることに対応している。
図3Cに示すように、磁石中心において磁場Byは、ほぼ0[G]であり、中心から離れるにしたがって、磁場Byは強くなっている。
図3Dに示すように、磁石中心のx=0からx=1.50あたりにおいて磁場勾配dBy/dxは、ほぼ所定の値を保ち、ビームパイプ(11:図1)の外部に相当するx=2.40を超えると急激に減少している。
なお、図3Cと図3Dは、x方向の磁場や磁場勾配について記載したもので、前記したように、ビームパイプを通る荷電粒子(荷電粒子ビーム)を収束する作用について説明したものである。
また、前記したように、図3Eに示した多極電磁石(四極電磁石)10の幅と高さは、図3AにおけるX方向の座標、Y方向の座標から算出されるサイズに、それぞれ対応している。
また、多極電磁石(四極電磁石)10のコイルの起磁力を7243[AT](電流密度3.72[A/mm2])とした場合、多極電磁石(四極電磁石)10の中心部に2000[G/cm]の磁場勾配を生成することが可能である。
このように、四極磁場で通常必要とされる磁場勾配を本発明の第1実施形態の多極電磁石(四極電磁石)10の構造で生成することができる。
また、コイル(14U1,14U2,14L1,14L2)を縦に伸ばすことでコイルの起磁力を増やした場合(電流密度は固定)、磁心が飽和しない範囲で多極電磁石(四極電磁石)10の中心部に作られる磁場勾配を大きくすることも可能である。
第1実施形態の多極電磁石(四極電磁石)10においては、4個の磁心13U1,13U2,13L1,13L2は、互いに平行、または同方向に配置され、それぞれビーム軸11cxに垂直な方向でヨーク12に接している。また、4個の磁心先端部13Uc1,13Uc2,13Lc1,13Lc2は、それぞれ磁心13U1,13U2,13L1,13L2に対して折れ曲がり、ビーム軸11cxに向かって構成されている。
このように、多極電磁石10の磁心13U1,13U2,13L1,13L2を互いに平行、または同方向に配置して、磁心先端部13Uc1,13Uc2,13Lc1,13Lc2を中心部に向かって曲げて構成することにより、多極電磁石10の中心部に作られる磁場勾配を大きくしながら、多極電磁石10の幅を小さく抑えることが可能となっている。
また、特許文献1の四極電磁石のようにヨークの一部が開放されていると漏れ磁場が大きくなり、その影響を避けるために、隣接するビームパイプとの距離を広げる必要が出る場合がある。
このように、多極電磁石(四極電磁石)10の水平方向の寸法が小さくなったことでコイルと隣接するビームパイプの間にヨークを設置することが可能となり、その結果漏れ磁場が低減され、隣接するビームパイプとの距離を縮めることが可能となる。
本発明の第1実施形態の多極電磁石(四極電磁石)によれば、4個の磁心は、互いに平行、または同方向に配置され、ヨークに垂直に接しており、それぞれの磁心の先端部で中心部に向かって曲がり延びている磁心先端部が形成されている。この構造によって、多極電磁石の中心部の磁場勾配を大きく確保しながら、多極電磁石の幅(水平方向の幅寸法)を小さく抑える事が可能となる。
そして、多極電磁石の幅を小さく抑えることによって、隣接するビームパイプとの空間的干渉を抑える事が可能となる。
また、従来の4回対称形状の多極電磁石よりも水平方向の幅が小さくなることにより、複数の多極電磁石を近接させて設置できる。すなわち、複数の多極電磁石を隣接して効率よく設置することが可能となる。
また、コイルを鉛直方向に大きくすることにより、コイルの巻数を増やしたり、コイル長を長くすることができて、多極電磁石の横方向寸法を維持したままコイル起磁力を上げ、多極電磁石中心の磁場勾配を大きくすることも可能である。
本発明の第2実施形態に係る多極電磁石について、図を参照して説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る多極電磁石(四極電磁石)20の構成と断面構造の例を示す図である。
この多極電磁石(四極電磁石)20は、前記した多極電磁石(四極電磁石)10の特徴に加え、ヨーク22のうち磁心(13U1,13U2,13L1,13L2)に平行な2辺のヨーク22R,22Lの中央部において、多極電磁石20の内側に向かって凹んでいる(くびれている)ヨーク屈曲部22Dを有していることである。
他の構成要素は同じであるので、重複する説明は、適宜、省略する。
図5において、複数種類の荷電粒子(荷電粒子のビーム)を同時に周回させる加速器200には、5台の多極電磁石(四極電磁石)20(20a,20b,20c,20d,20e)と、複数種類の荷電粒子をそれぞれ通すビームパイプ11a,11b,11c,11d,11eが配置されている。
複数種類の荷電粒子をそれぞれ通すビームパイプ11a,11b,11c,11d,11eは、5台の多極電磁石(四極電磁石)20a,20b,20c,20d,20eのそれぞれの中心部を貫通している。
ただし、図4におけるビームパイプ11は、別の多極電磁石20から観ると、図4におけるビームパイプ21に相当することがある。すなわち、図5におけるビームパイプ11a,11b,11c,11d,11eは、ビームパイプ21a,21b,21c,21d,21eとも観ることもできる。
そのため、図5に示す第2実施形態の多極電磁石20は、図2に示す第1実施形態の多極電磁石10の設置できる限界よりも、狭いビームパイプ間隔(ビーム間隔)での箇所へ多極電磁石の設置が可能となる。
図6において、2台の多極電磁石20(20a,20c)は、ビームパイプ21(21b)を挟んで配置されている。
図6における多極電磁石20aと多極電磁石20cとビームパイプ21bとの関係は、図5における多極電磁石20aと多極電磁石20cとビームパイプ21bの配置の関係に対応している。
図6および図5に示すように、図4において説明した多極電磁石20を採用することによって、隣接するビームパイプ(11,21)だけではなく、隣接する多極電磁石20との干渉も抑えることができる。そのため、多極電磁石20は、多極電磁石10よりも隣接する複数の多極電磁石の間隔を狭くすることが可能となる。
本発明の第2実施形態によれば、ヨーク22のうち磁心に平行な2辺のヨーク22の中央部が、多極電磁石(四極電磁石)20の内側に向かってくびれたヨーク屈曲部22Dを有する多極電磁石20を採用することによって、隣接するビームパイプ(11,21)だけではなく、隣接する多極電磁石20との干渉も抑えることができる。
そのため、多極電磁石20は、多極電磁石10よりも隣接する複数の多極電磁石の間隔を狭くすることが可能となる。
本発明の第3実施形態に係る多極電磁石30Aとその変形例の多極電磁石30Bについて、図7A、図7Bを参照して説明する。まず、図7Aを参照して、多極電磁石30Aについて説明し、変形例の多極電磁石30Bについては、図7Bを参照して後記する。
図7Aにおいて、ヨーク32Uは、ヨーク(12:図1)の上辺の部分(ヨークの上部)であり、ヨーク32Rは、ヨーク(12:図1)の右辺の部分(ヨークの側面)を示している。
ヨーク32Uは、磁心33U2と接して一体となっている。また磁心33U2の周囲をコイル34U2が巻回している。また、磁心33U2の先端部に、磁心先端部33Uc2が設けられている。
また、磁心33U2の幅を幅cとして、ヨークの厚さa(ヨークの厚みの長さ)とヨークの厚さb(ヨークの厚みの長さ)の和が幅c(磁心のコイルが巻回される方向の幅の長さ)よりも厚い構成となっている。
すなわち、
a>b
かつ、
(a+b)>c
の関係があることを特徴としている。
以上の構造の作用と効果を、図8と図9を参照して説明する。
図8は、図7Aにおけるヨーク32U、ヨーク32R、磁心33U2における磁束線88a,88b,88cの経路の例を模式的に示した図である。図7Aにおける、
a>b
の関係、すなわち、ヨーク32U(ヨークの上部)の厚さa(ヨークの厚み)が、ヨーク32R(ヨークの側面)の厚さb(ヨークの厚み)よりも大きいことによって、コイル34U2によって生成される磁束(磁束線88c)のうち、図8に示される磁束線88aの経路を通る磁束の割合が増加し、磁束線88bの経路を通る磁束の割合が減少する。
そのため、横側のヨーク32Rの外に漏れる磁場は小さくなり、多極電磁石30Aに隣接するビームに与える影響を抑えることが可能となる。
なお、以上の「a>b」の関係を「ヨークの上部におけるヨークの厚みが、ヨークの側面におけるヨークの厚みよりも大きい」とも表記する。
(a+b)>c
の関係があると、分岐点において、磁束はすみやかに分岐し、漏洩する磁束もより低減される効果がある。
なお、以上の「(a+b)>c」の関係を「ヨークの上部におけるヨークの厚みと、ヨークの側面におけるヨークの厚みとの合計が、磁心のコイルが巻回される方向の幅よりも大きい」とも表記する。
磁束線の様子を磁場解析ソフトウェアPoisson Superfishを用いてシミュレーションした結果を図9に示す。
図9は、本発明の第3実施形態に係る多極電磁石(四極電磁石)30Aによって生成される磁場のシミュレーションの結果の例を示す図である。
図9において、コイル34U2、ヨーク32U、ヨーク32R、磁心33U2、磁心先端部33Uc2で構成されている部分の磁束線の様子を示している。また、横軸と縦軸はそれぞれの長さにおける距離を示している。
図9に示すように、
a>b
(a+b)>c
と設定してシミュレーションをした結果、磁心33U2を通る磁束の多くは、ヨーク32Uを通り、ヨーク32Rを通る磁束は相対的に少ない。また、漏洩する磁束(例えば、磁束線89)は僅かである。
また、その他の構成要素は、図1で示した多極電磁石(四極電磁石)10と同じであるので、事実上、重複する説明は、省略する。
ヨーク32Uの厚さaがヨーク32Rの厚さbよりも大きい(a>b)ことによって、コイル34U2によって生成される磁束のうち図8に示される磁束線88aの経路を通る磁束の割合が増加し、磁束線88bの経路を通る磁束の割合が減少する。そのため、横側のヨーク32Rの外に漏れる磁場(磁束)は小さくなり、多極電磁石(四極電磁石)30に隣接するビームパイプを通るビームに与える影響を抑えることが可能となる。
また、ヨーク32Uの厚さaとヨーク32Rの厚さbと磁心33U2の幅(径)cとの関係において、(a+b)>cの関係があると、さらに効果的である。
本発明の第3実施形態の変形例に係る多極電磁石30Bについて、図7Bを参照して説明する。
図7Bは、本発明の第3実施形態の変形例に係る多極電磁石(四極電磁石)30Bの部分的な構成と断面構造の例を示す図である。
図7Bと図7Aの違いは、図7Bの側面のヨーク32Rが、第2実施形態の多極電磁石(四極電磁石)20のヨーク屈曲部22Dのように、図7Bにおいて凹んだヨーク屈曲部を有していることである。このヨーク屈曲部のヨークの厚みを厚さb2(ヨークの厚み)とすれば、図7Aにおける関係式と同様に、
a>b2
(a+b2)>c
の関係があることが望ましい。これらの関係があることによって、ヨーク32Rおよびヨーク屈曲部(22D)における漏洩する磁場、磁束が低減できる。
本発明の第4実施形態に係る多極電磁石40について、図を参照して説明する。
図10は、本発明の第4実施形態に係る多極電磁石(四極電磁石)40の構成と断面構造の例を示す図である。
この多極電磁石(四極電磁石)40は、前記した多極電磁石(四極電磁石)10の特徴に加え、ヨーク42のうち磁心(43U1,43U2,43L1,43L2)に平行な2辺のヨーク42の中央部が、多極電磁石(四極電磁石)40の外側に向かって凸(逆くびれ)となってヨーク突出部42Bを有していることである。
ヨーク42のうち横側のヨーク42R,42Lのそれぞれ中央付近に、多極電磁石(四極電磁石)40の外側に向かって凸となってヨーク突出部42Bを有している場合の磁束線の様子を磁場解析ソフトウェアPoisson Superfishを用いてシミュレーションした結果を図11A、および比較して図11Bに示す。
図11Aは、本発明の第4実施形態に係るヨーク突出部42Bを有する多極電磁石(四極電磁石)40によって生成される磁場のシミュレーションの結果の例を示す図である。
図11Bは、本発明の第1実施形態に係る多極電磁石(四極電磁石)10によって生成される磁場のシミュレーションの結果を比較として示す図である。なお、多極電磁石(四極電磁石)10は、ヨーク突出部42Bを有してはいない。比較のための磁場のシミュレーションの結果を示す図である。
なお、図11Aにおいて、図10におけるコイル44U2、ヨーク42U、ヨーク42R、磁心43U2、磁心先端部43Uc2で構成されている部分の磁束線の様子を示している。また、横軸と縦軸はそれぞれの方向における座標(距離)を示している。
本発明の第4実施形態に係る多極電磁石(四極電磁石)40によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるだけでなく、ヨークの側面において、ヨーク突出部42Bを有することで、多極電磁石40の中心部に所定の磁場勾配を生成するために必要なコイルの起磁力を低減できる。
そのため、磁心を曲げ延ばす形状にすることで横方向のスペースに余裕ができた場合、逆くびれのヨーク突出部42Bの大きさを、隣接するビームパイプと空間的干渉が起こらない範囲で微調整することで、必要な磁場勾配を電磁石中心部に生成するために必要なコイル起磁力を低減することが可能である。
本発明の第4実施形態の多極電磁石(四極電磁石)40は、ヨーク突出部42Bを設けているので、多極電磁石40の幅が増加する要素があるが、前記の様々の作用、効果によって、最終的に多極電磁石の水平方向の寸法幅を小さくすることが可能である。
本発明の第5実施形態に係る多極電磁石50について、図12を参照して説明する。
図12は、本発明の第5実施形態に係る多極電磁石(六極電磁石)50の構成と断面構造の例を示す図である。
図12において、多極電磁石50は、六極電磁石として構成され、6個のコイル54U1,54U2,54U3,54L1,54L2,54L3と6個の磁心53U1,53U2,53U3,53L1,53L2,53L3を備えている。6個のコイル54U1,54U2,54U3,54L1,54L2,54L3は、それぞれ6個の磁心53U1,53U2,53U3,53L1,53L2,53L3の周囲に巻回され、6極の電磁石が構成されている。
6本の磁心53U1,53U2,53U3,53L1,53L2,53L3は、ヨーク52と一体となって形成されている。磁心53U1,53U2,53U3,53L1,53L2,53L3、およびヨーク52の素材は、強磁性体である鉄が使用されている。
また、磁心53U1,53U2,53U3,53L1,53L2,53L3のそれぞれの先端部には強磁性体である磁心先端部53Uc1,53Uc2,53Uc3,53Lc1,53Lc2,53Lc3が備えられている。
磁心先端部53Uc1,53Uc2,53Uc3,53Lc1,53Lc2,53Lc3は、それぞれ磁心53U1,53U2,53U3,53L1,53L2,53L3からビームパイプ51に向かって曲がり延びた形状で構成されている。
四極と六極の多極電磁石の相違はあるが、その他の構成や作用において、同じようなものは、重複する説明は省略する。
なお、多極電磁石を四極から六極に増やすことによって、ビームパイプ51を通る荷電粒子の色収差(クロマティシティ)の調整が可能となる。
六極の多極電磁石50によれば、多極電磁石50の水平方向の幅を小さくして隣接するビームパイプとの干渉を回避しながら、ビームパイプ51を通る荷電粒子の色収差の調整が可能となる。
なお、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものでなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成の一部で置き換えることが可能であり、さらに、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部または全部を追加・削除・置換をすることも可能である。
以下に、その他の実施形態や変形例について、さらに説明する。
図2おいて、加速器100に用いる多極電磁石は、すべて図1で説明した多極電磁石(四極電磁石)10を用いることを想定して説明したが、多極電磁石10に限定されない。
例えば、多極電磁石(四極電磁石)10(図1)と、多極電磁石(四極電磁石)20(図4)、あるいは多極電磁石(四極電磁石)40(図10)とを組み合わせてもよい。
また、多極電磁石(四極電磁石)10(図1)と多極電磁石(六極電磁石)50(図12)とを組み合わせてもよい。
また、多極電磁石(四極電磁石)10(図1)と、従来のビーム軸を中心に4回対称である磁心形状を有する四極電磁石とを組み合わせてもよい。
また、図5における、加速器200に用いる多極電磁石は、図4で説明した多極電磁石(四極電磁石)20に限定されない。様々な構成の多極電磁石の組み合わせでもよい。
図7Aにおいて、多極電磁石(四極電磁石)10の上部のヨーク32Uの厚さaと、側面のヨーク32Rの厚さbとの関係において、a>bの関係があることが望ましいことを説明した。
また、図7Bにおいて、ヨーク32Uの厚さaと、側面のヨーク屈曲部32Dの厚さb2との関係において、a>b2の関係があることが望ましいことを説明した。
以上において、説明したのと概ね同様の理由によって、図10の多極電磁石(四極電磁石)40において、上部のヨーク42Uの厚さ(厚さaとする)と、側面のヨーク突出部42Bの厚さ(厚さb3とする)との関係において、a>b3の関係があることが望ましい。
図4において、ヨーク屈曲部22Dは、直線状のヨークの2辺が互いに接する形状の構成例を示した。しかし、ヨーク屈曲部22Dの形状は、前記の直線状の2辺を合わせた形状に限定されない。
例えば、ヨーク屈曲部22Dを一つの連続した曲線状の形状で構成しても類似した効果が得られる。また、複数の直線状のヨークを複数の屈曲点で連結させた形状で構成してもよい。
また、図10に示したヨーク突出部42Bの形状についても、一つの連続した曲線状の形状でも、複数の直線状のヨークを複数の屈曲点で連結させた形状で構成してもよい。
図1で示した多極電磁石10、あるいは図4で示した多極電磁石20においては、上部におけるヨーク、下部におけるヨーク、側面におけるヨークは、一体化して表記した。
しかし、前記のそれぞれのヨークは、一体化されることに限定されない。
例えば、側面のヨークは、上部のヨークおよび下部のヨークの双方と分離してもよい。あるいは、また側面のヨークは、上部のヨークと下部のヨークのどちらか一方のみと分離していてもよい。
このように、側面におけるヨークが、上部のヨーク、あるいは下部のヨークと分離していても、磁気シールドの作用は、有効に機能することがある。
図1に示した四極の多極電磁石10、また図12に示した六極の多極電磁石50は、磁心先端部以外の複数の磁心が互いに平行に上部または下部のヨークに伸びている構造をしている。このような構造は、四極や六極の多極電磁石に限定されない。八極以上の多極電磁石にも、前記した複数の磁心の構造を適用することは可能である。
六極の多極電磁石として、図12に示す多極電磁石50の側面の左右のヨークは、まっすぐで平行な構造として説明した。
しかし、六極以上の多極電磁石においても、ヨークの側面において、ヨーク屈曲部あるいは、ヨーク突出部を有する構造にすることは、四極の多極電磁石の場合と同様の作用と効果を有する。
例えば図2や図5で示したように、第1実施形態から第5実施形態の多極電磁石を用いた加速器(100,200)は、小型で漏洩磁束も少なく効率のよい優れた加速器を構成できる。
11,11a~11e,21,21a~21e,51 ビームパイプ
11cx ビーム軸(多極電磁石の中心部)
12,22,32R,32U,42,42U,42L,42R,52 ヨーク
13L1,13L2,13U1,13U2,33U2,43L1,43L2,43U1,43U2,53L1,53L2,53L3,53U1,53U2,53U3 磁心
13Lc1,13Lc2,13Uc1,13Uc2,33Uc2,43Lc1,43Lc2,43Uc1,43Uc2,53Lc1,53Lc2,53Lc3,53Uc1,53Uc2,53Uc3 磁心先端部(磁心)
14L1,14L2,14U1,14U2,34U2,44L1,44L2,44U1,44U2,54L1,54L2,54L3,54U1,54U2,54U3 コイル
22D ヨーク屈曲部(ヨーク)
42B ヨーク突出部(ヨーク)
50 多極電磁石(六極電磁石)
88a,88b,88c,89 磁束線
100,200 加速器
Claims (10)
- 4以上の偶数からなる複数の磁心と、
複数の前記磁心のそれぞれの周囲に巻回して配置される複数のコイルと、
複数の前記磁心を囲み、多極電磁石の外周部に配置されるヨークと、
を備え、
複数の前記磁心は、互いに平行または同方向に配置され、
複数の前記磁心は、それぞれ先端に磁心先端部を有し、
複数の前記磁心先端部は、それぞれ多極電磁石としての中心部に向かって曲がり延びて形成されている、
ことを特徴とする多極電磁石。 - 請求項1において、
前記多極電磁石の外周部を囲う前記ヨークが、前記コイルと接していない所定の部分において前記多極電磁石の中心部に向かって凹んでいるヨーク屈曲部を有する、
ことを特徴とする多極電磁石。 - 請求項1において、
前記多極電磁石の外周部を囲う前記ヨークが、前記コイルと接していない所定の部分において前記多極電磁石の外側に向かって凸となっているヨーク突出部を有する、
ことを特徴とする多極電磁石。 - 請求項1において、
前記ヨークの上部におけるヨークの厚みが、前記ヨークの側面におけるヨークの厚みよりも大きい、
ことを特徴とする多極電磁石。 - 請求項1において、
前記ヨークの上部におけるヨークの厚みと、前記ヨークの側面におけるヨークの厚みとの合計が、前記磁心のコイルが巻回される方向の幅よりも大きい、
ことを特徴とする多極電磁石。 - 請求項2において、
前記ヨークの上部におけるヨークの厚みが、前記ヨーク屈曲部のヨークの厚みよりも大きい、
ことを特徴とする多極電磁石。 - 請求項3において、
前記ヨークの上部におけるヨークの厚みが、前記ヨーク突出部のヨークの厚みよりも大きい、
ことを特徴とする多極電磁石。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項において、
前記多極電磁石が四極の電磁石で構成されている、
ことを特徴とする多極電磁石。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項において、
前記多極電磁石が六極以上の電磁石で構成されている、
ことを特徴とする多極電磁石。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の多極電磁石を備える、
ことを特徴とする加速器。
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