JP7388361B2 - 炭素電極材及びレドックス電池 - Google Patents

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Description

本発明は、レドックス電池に使用される炭素電極材に関し、さらに詳しくはレドックス電池全体のエネルギー効率に優れた炭素電極材に関する。
レドックス電池は、レドックスイオンの水溶液中での酸化還元を利用した電池であり、液相のみでのマイルドな反応であるため、非常に安全性の高い大容量蓄電池である。
レドックス電池の主な構成は、図1に示すように電解液(正極電解液、負極電解液)を貯える外部タンク6、7と、電解槽ECとからなる。電解槽ECでは、相対する集電板1、1の間にイオン交換膜3が配置されている。レドックス電池では、ポンプ8、9にて活物質を含む電解液を外部タンク6、7から電解槽ECに送りながら、電解槽ECに組み込まれた電極5上で電気化学的なエネルギー変換、すなわち充放電が行われる。電極5の材料には、耐薬品性があり、導電性を有し、かつ通液性のある炭素材料が用いられている。
レドックス電池に用いられる電解液として、代表的には、酸化還元により価数が変化する金属イオンを含有する水溶液が用いられる。電解液は、正極に鉄の塩酸水溶液、負極にクロムの塩酸水溶液を用いたタイプから、起電力の高いバナジウムの硫酸水溶液を両極に用いるタイプに替わり、高エネルギー密度化されてきた。
正極電解液にオキシ硫酸バナジウム、負極電解液に硫酸バナジウムの各々硫酸酸性水溶液を用いたレドックス電池の場合、放電時には、V2+を含む電解液が負極側の通液路に供給され、正極側の通液路にはV5+(実際には酸素を含むイオン)を含む電解液が供給される。負極側の通液路では、三次元電極内でV2+が電子を放出しV3+に酸化される。放出された電子は外部回路を通って正極側の三次元電極内でV5+をV4+(実際には酸素を含むイオン)に還元する。この酸化還元反応に伴って負極電解液中のSO4 2-が不足し、正極電解液ではSO4 2-が過剰になるため、イオン交換膜を通ってSO4 2-が正極側から負極側に移動し電荷バランスが保たれる。あるいは、H+がイオン交換膜を通って負極側から正極側へ移動することによっても電荷バランスを保つことができる。充電時には放電と逆の反応が進行する。
レドックス電池用電極材には、特に以下に示す性能が要求される。
1)目的とする反応以外の副反応を起こさないこと(反応選択性が高いと)、具体的には電流効率(ηI)が高いこと。
2)電極反応活性が高いこと、具体的にはセル抵抗(R)が小さいこと。すなわち電圧効率(ηV)が高いこと。
3)上記1)、2)に関連する電池エネルギー効率(ηE)が高いこと。
ηE=ηI×ηV
4)繰返し使用に対する劣化が小さいこと(高寿命)、具体的には電池エネルギー効率(ηE)の低下量が小さいこと。
例えば特許文献1には、電池のトータルエネルギー効率を高め得るFe-Cr電池の電極材として、結晶性の高い特定の擬黒鉛微結晶構造を有する炭素質材料が開示されている。具体的には、X線広角解析より求めた<002>面間隔が平均3.70Å以下であり、またc軸方向の結晶子の大きさが平均9.0Å以上の擬黒鉛微結晶を有し、かつ全酸性官能基量が少なくとも0.01meq/gである炭素質材料が開示されている。
特許文献2には、電池のエネルギー効率を高め、かつ充放電サイクル寿命を改善する鉄-クロム系レドックス電池等の電界層用電極として、ポリアクリロニトリル系繊維を原料とする炭素質繊維で、X線広角解析より求めた<002>面間隔が3.50~3.60Åの擬黒鉛結晶構造を有する炭素からなり、該炭素表面の結合酸素原子数が炭素原子数の10~25%である炭素電極材が開示されている。
特許文献3には、電池系全体でのエネルギー効率に優れ、長時間使用に伴う性能の変化の少ないバナジウム系レドックス電池用炭素電極材として、X線広角解析より求めた<002>面間隔が3.43~3.60Åで、c軸方向の結晶子の大きさが15~33Åで、a軸方向の結晶子の大きさが30~75Åである擬黒鉛結晶構造を有し、XPS表面分析より求めた表面酸性官能基量が全表面炭素原子数の0.2~1.0%であり、表面結合窒素原子数が全表面炭素原子数の3%以下である電極が開示されている。
また特許文献4には、バナジウム系レドックス電池の総合効率を高め、初期充電時のセル抵抗がより低くなる炭素電極材として、炭素質繊維上に、結晶構造がX線広角解析より求めた<002>面間隔が3.43~3.70Åであり平均1次粒子径が30nm以上5μm以下である炭素微粒子が付着した炭素複合材料からなり、前記炭素複合材料の結晶構造がX線広角解析より求めた<002>面間隔が3.43~3.60Åで、c軸方向の結晶子の大きさが15~35Åで、a軸方向の結晶子の大きさが30~75Åである電極材が開示されている。上記炭素複合材料は、炭素質繊維と炭素微粒子とが、近接、または、フェノール樹脂のような接着剤により接着されていることが好ましく、接着剤を使用することにより、電気化学反応場である炭素質繊維表面を過度に減少させることなく、炭素質繊維として元々接触していた部分のみを固定することができる旨記載されている。実施例の欄には、炭素微粒子(フェノール樹脂)を5重量%(実施例1)、または、フェノール樹脂を5重量%(実施例2~4)混合した溶液に不織布を浸漬した後、炭化、乾式酸化処理して得られた炭素質繊維不織布が開示されている。
日本国特許公開公報「特開昭60-232669号」 日本国特許公開公報「特開平5-234612号」 日本国特許公開公報「特開2000-357520号」 日本国特許公開公報「特開2017-33758号」
しかしながら、バナジウム系レドックス電池の普及を進めるためには、更なる低抵抗化及び安価な電極材が求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、初期充放電時のセル抵抗を低下させて電池エネルギー効率を向上可能なレドックス電池用炭素電極材を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明に係るレドックス電池用炭素電極材の構成は、以下の通りである。
1.炭素質繊維(A)と、黒鉛粒子(B)と、これらを結着する炭素質材料(C)と、からなり、下記の要件を満足することを特徴とする炭素電極材。
(1)炭素質材料(C)における、X線回折で求めたc軸方向の結晶子の大きさをLc(C)としたとき、Lc(C)は10nm未満、
(2)炭素質繊維(A)における、X線回折で求めたc軸方向の結晶子の大きさをLc(A)としたとき、Lc(C)/Lc(A)は1.0以上、
(3)炭素質繊維(A)の構造体における、平均曲率は1R以上および平均繊維径は5~15μm、
(4)炭素電極材表面の結合酸素原子数が炭素電極材表面の全炭素原子数の1.0%以上。
2.黒鉛粒子(B)における、X線回折で求めたc軸方向の結晶子の大きさをLc(B)としたとき、Lc(B)は35nm未満である1に記載の炭素電極材。
3.炭素質繊維(A)、黒鉛粒子(B)、および炭素質材料(C)の合計量に対する前記黒鉛粒子(B)および前記炭素質材料(C)の質量含有率がそれぞれ20%以上であり、かつ、前記黒鉛粒子(B)に対する前記炭素質材料(C)の質量比が0.2~4.0である1に記載の炭素電極材。
4.窒素吸着量から求められるBET比表面積が8.1m2/g以上である1~3のいずれかに記載の炭素電極材。
5.水滴を垂らした時の通水速度が0.5mm/sec以上である1~4のいずれかに記載の炭素電極材。
6.1~5のいずれかに記載の炭素電極材を備えたレドックス電池。
7.1~5のいずれかに記載の炭素電極材を用いたバナジウム系レドックス電池。
本発明の炭素電極材は、低抵抗を実現できるため、レドックス電池用電極材、特にバナジウム系レドックス電池用の電極材として有用である。特に本発明によれば、炭素質繊維(A)の構造体における、平均曲率は1R以上であることから、3次元構造体ゆえに優れた反発力が得られ、材料間の接触抵抗の低減や通液性の確保が実現でき、低抵抗な電極材を提供することができる。
このような本発明の炭素電極材は、フロータイプおよびノンフロータイプのレッドクス電池、またはリチウム、キャパシタ、燃料電池のシステムと複合化されたレドックス電池に好適に用いられる。
図1はレドックス電池の概略図である。 図2は本発明に好適に用いられる三次元電極を有する液流通型電解槽の分解斜視図である。 図3は、後記する実施例2において、表2AのNo.1(スパンレースを用いた本発明例)のSEM写真(倍率100倍)である。
本発明者らは、特に、バナジウム系レドックス電池に好ましく用いられる炭素電極材を提供するため、鋭意検討してきた。従来のバナジウム系レドックス電池において、低コスト化の観点での低抵抗化が重要である。しかし、従来の炭素繊維フェルト電極材では材料間の接触抵抗が下がらない。一方、カーボンペーパーなどに黒鉛粒子を担持した電極材も提案されているが、カーボンペーパーは繊維の向きが2次元に配向しており、圧縮に対して十分な反発力が得られない。そのため、従来の電極材をバナジウム系レドックス電池に用いると、さらなる低抵抗化が見込めないことが、本発明者らの検討結果によって判明した。
そこで新たな炭素電極材を提供するに当たり、本発明者らは、まず反応性を示す粒子の要件を見直した。一般的に、レドックス電池における反応活性を示す粒子としては、アセチレンブラック(アセチレンの煤)、オイルブラック(ファーネスブラック、オイルの煤)、ガスブラック(ガスの煤)などのカーボンブラック類;黒鉛化された煤、炭素繊維粉末、カーボンナノチューブ(CNT,carbonnanotube)、カーボンナノファイバー、カーボンエアロゲル、メソ多孔性炭素、ガラス状炭素粉末、活性化炭素、グラフェン、酸化グラフェン、NドープCNT、ホウ素ドープCNT、フラーレン、石油コークス、アセチレンコークス、無煙炭コークスなどの炭素粒子など、公知の炭素粒子が挙げられる。これらのうちカーボンブラック類のように反応性および比表面積が高く、低結晶性のものは、正極の充電液に対して容易に酸化されてしまい、使用できない。一方、CNTなどの炭素粒子のように単に炭素結晶性が高い粒子を用いただけでは、十分な反応活性を発現することができなかった。更にこれらは希少かつ高価であるため、安価な電極材として適切でない。
そこで本発明者らは、反応性を示す粒子として黒鉛粒子を採用した。
更に炭素質材料(C)として、炭素質繊維(A)と黒鉛粒子(B)の両方を結着する結着性の炭素質材料であって、下記(1)および(2)の要件を満足する炭素質材料を採用することにした。
(1)X線回折で求めたc軸方向の結晶子の大きさをLc(C)としたとき、Lc(C)は10nm未満
(2)炭素質繊維における、X線回折で求めたc軸方向の結晶子の大きさをLc(A)としたとき、Lc(C)/Lc(A)は1.0以上
ここで「炭素質繊維(A)と黒鉛粒子(B)の両方を結着する」(換言すれば、本発明に用いられる炭素質材料は炭素質繊維と黒鉛粒子の結着剤として作用する)とは、当該炭素質材料によって炭素質繊維および黒鉛粒子の表面および内部(炭素質繊維間、黒鉛粒子同士を含む)が強く結着されて、電極材全体としてみた場合に当該炭素質材料により炭素質繊維が被覆されつつ、黒鉛粒子の表面が露出しているように構成されていることを意味する。
但し、結着後の炭素質材料は被膜状態にならないことが好ましい。ここで「被膜状態にならない」とは、炭素質繊維(A)の繊維間において炭素質材料(C)が全蹼足(ボクソク)や蹼足のような水かき状態を形成しないことを意味する。被膜状態を形成した場合、電解液の通液性が悪化し、上記黒鉛粒子の反応表面積を有効利用できないためである。
参考のため、図3に、本発明の電極材において炭素質繊維(A)と黒鉛粒子(B)の両方が結着された状態を示すSEM写真を示す。この図3は、後記する実施例2において、表2AのNo.1(本発明の要件を満たすスパンレースを用いた本発明例)のSEM写真(倍率100倍)である。図3より、炭素質材料(C)によって炭素質繊維(A)および黒鉛粒子(B)の表面および内部が強く結着されて、当該炭素質材料(C)により炭素質繊維(A)が被覆されつつ、黒鉛粒子(B)の表面が露出していることが分る。
このような結着状態を得るためには、炭素質繊維(A)と黒鉛粒子(B)と炭素質材料(C)の合計量に対する炭素質材料(C)の含有比率を多くすることが好ましく、本発明では、例えば20質量%以上とする。この点で、本発明に用いられる炭素質材料(C)は、前述した特許文献4に記載の炭素質材料とは相違する。特許文献4では、炭素質繊維と炭素微粒子とが元々接触していた部分のみを固定(接着)できれば良いという発想のもと、使用する炭素質材料は部分的な接着剤としての作用が発揮されれば良いとの認識しかないからである。そのため、特許文献4の実施例では、炭素質材料の含有率はせいぜい14.4質量%である。
このような結着性の炭素質材料(C)を用いれば、炭素質材料(C)が黒鉛粒子(B)を介して炭素質繊維(A)間などを強く結着するため、効率的な導電パスを形成でき、前述した黒鉛粒子(B)添加による作用が一層有効に発揮されて、低抵抗を達成できることが判明した。
更に本発明に用いられる炭素質繊維(A)の構造体は、平均曲率1R以上、平均繊維径5~15μmを満足する。特に上記構造体は曲率1R以上を満足することが重要である。これにより、電極材の低抵抗化を一層進めることができた(詳細は後述する)。
更に本発明の炭素電極材は下記(4)の要件を満足する。(4)炭素電極材表面の結合酸素原子数が炭素電極材表面の全炭素原子数の1.0%以上 これにより、炭素のエッジ面や欠陥構造部に酸素原子を導入することができる。その結果、電極材の表面では、導入された酸素原子がカルボニル基、キノン基、ラクトン基、フリーラジカル的な酸化物などの反応基として生成されるため、これらの反応基が電極反応に大きく寄与し、十分な低抵抗を得ることが出来る。
本発明の電極材は上記のように構成されているため、反応活性を高め、低抵抗かつ長寿命な電極が得られる。特に、本発明の電極材を、バナジウム系レドックス電池の電解槽用電極材として用いた場合、初期充放電時のセル抵抗を低下させ、電池エネルギー効率を向上させることが可能となる。
以下、図2を参照しながら、本発明を構成要件ごとに詳細に説明する。
図2は、本発明に好適に用いられる液流通型電解槽の分解斜視図である。図2の電解槽は、相対する二枚の集電板1,1間にイオン交換膜3が配設され、イオン交換膜3の両側にスペーサー2によって集電板1,1の内面に沿った電解液の通液路4a,4bが形成されている。通液路4a,4bの少なくとも一方に電極材5が配設されている。集電板1には電解液の液流入口10と液流出口11とが設けられている。図2のように電極を電極材5と集電板1とで構成し、電解液が電極材5中を通過する構造(電極構造の三次元化)とすると、集電板1によって電子の輸送を確保しながら電極材5の細孔表面全てを電気化学反応場として充放電効率を向上することができる。その結果、電解槽の充放電効率が向上する。
前述したとおり本発明の電極材5は、炭素質繊維(A)を基材とし、黒鉛粒子(B)を炭素質材料(C)で坦持する電極材であり、上記(1)~(4)の要件を満足する。各要件の詳細は以下のとおりである。
[炭素質繊維(A)] 本発明に用いられる炭素質繊維は、有機繊維のプレカーサーを加熱炭素化処理(詳細は後述する。)して得られる繊維であって、質量比で90%以上が炭素で構成される繊維を意味する(JIS L 0204-2)。炭素質繊維の原料となる有機繊維のプレカーサーとしては、ポリアクリロニトリル等のアクリル繊維;フェノール繊維;ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)等のPBO繊維;芳香族ポリアミド繊維;等方性ピッチ、異方性ピッチ繊維、メソフェーズピッチ等のピッチ繊維;セルロース繊維;等を使用することができる。中でも、耐酸化性に優れ、強度・弾性率に優れる等の観点から、有機繊維のプレカーサーとしては、アクリル繊維、フェノール繊維、セルロース繊維、等方性ピッチ繊維、異方性ピッチ繊維が好ましく、アクリル繊維がより好ましい。アクリル繊維は、アクリロニトリルを主成分として含有するものであれば特に限定されないが、アクリル繊維を形成する原料単量体中、アクリロニトリルの含有量が95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましい。
有機繊維の質量平均分子量は、特に限定されないが、10000以上、100000以下であることが好ましく、15000以上、80000以下であることがより好ましく、20000以上、50000以下であることがさらに好ましい。質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)や溶液粘度などの方法によって測定することができる。
炭素質繊維の平均繊維径は0.5~40μmであることが好ましい。平均繊維径が0.5μmより小さいと通液性が悪化してしまう。一方、平均繊維径が40μmよりも大きいと3次元構造が粗くなりすぎてセル抵抗が高くなってしまう。通液性および3次元構造体のバランスを考慮すると、より好ましくは3~20μmである。
また、炭素質繊維の平均繊維長は30~100mmであることが好ましい。平均繊維長が30mmより小さいと繊維の絡み合いが不足し、酸化劣化時に組織形態が維持できないなどの問題がある。一方、平均繊維長が100mmよりも大きいと繊維が解繊しにくくなり、均一性が損なわれるなどの問題がある。より好ましくは40~80mmである。
本発明では、上記炭素質繊維の構造体(以下、繊維構造体と呼ぶ場合がある。)を基材として用いる。上記繊維構造体の使用により、強度が向上し、取扱いや加工性が容易になる。
更に上記繊維構造体は、平均曲率1R以上、および平均繊維径5~15μmを満足する。本発明では、特に平均曲率が1R以上の繊維構造体を用いることが重要であり、上記繊維構造体を含む電極材は、上記要件を満足しない構造体を含む電極材に比べて、反発力が向上する。詳細には、3次元構造体により厚み方向に配向した繊維が増え、圧縮に対して十分な反発力を得ることができ、材料間の接触抵抗や通液性を確保できるため、低抵抗な電極材を提供できる。一方、上記の条件を満たさない繊維構造体の場合、圧縮に対して過剰に密度が上がってしまい、そのため、空間が消失し、セル内での液流れ性が悪化して電池性能も悪化してしまう。
ここで「曲率R」は、炭素質繊維の曲がり程度を示す指標となるものであり、曲率半径rの逆数(R=1/r、rの単位はmm)で示される。曲率Rが大きい程(すなわち曲率半径rが小さい程)、曲がりの程度が大きいことを意味する。本発明では、炭素電極材の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したとき、視野中に観察される曲がった繊維(曲線状繊維)の曲がり具合を円に近似して曲率Rを算出した。詳細な測定方法は実施例の欄で詳述する。
上記曲率を大きくすることにより、セル抵抗も低減する傾向がある。上記観点からは、上記平均曲率は大きい程良く、好ましくは5R以上であり、より好ましくは10R以上である。但し、繊維の解繊などを考慮すると、おおむね、上記平均曲率は200R以下であることが好ましい。
ここで上記「平均曲率が1R以上の繊維構造体」とは、繊維構造体を構成する繊維の殆どが曲線状または縮れて存在することを意味する。或は、上記「平均曲率Rが1以上の繊維構造体」は、繊維構造体の厚さ方向断面(繊維長さ方向に対して垂直な断面)を走査型電子顕微鏡で観察したとき、厚さ方向に繊維が存在する三次元構造体であると言うこともできる。これに対し、カーボンペーパーなどの紙類は直線状の繊維が繋がって存在するものであり、上記と同様の方法で顕微鏡観察したとき、平均曲率Rはゼロであり、本発明の要件を満足しない。また上記紙類は、厚さ方向に繊維が存在せず繊維長さ方向にのみ存在する二次元構造体である点でも本発明に用いられる繊維構造体と相違する。
上記要件を満足する繊維構造体として、具体的には、炭素質繊維よりなるシート状物である紡績糸、フィラメント集束糸、不織布、編物、織物、特開昭63-200467号公報などに記載の特殊編織物、スパンレース、マリフリース、フェルトなどを挙げることができる。これらのうち、炭素質繊維よりなる不織布、フェルト、編物、織物、及び特殊織編物が、取り扱いや加工性、製造性等の点から好ましい。より好ましくは不織布である。
ここで不織布はJIS L 0222に定義されており、交絡、融着、接着などの製法の違いによって、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、レジンボンド不織布、サーマルボンド不織布などが挙げられる。
上記繊維構造体の平均繊維径は5~15μmである。平均繊維径が上記の下限を下回ると、組織体の強度が低下してしまう。一方、平均繊維径が上記の上限を超えると、組織体の均一性が損なわれてしまう。上記構造体の平均繊維径は、好ましくは7~10μmである。
前述したように上記炭素質繊維は、有機繊維のプレカーサーを加熱炭素化処理して得られるが、上記「加熱炭素化処理」は、少なくとも、耐炎化工程、および炭素化(焼成)工程を含むことが好ましい。但し、これらのうち炭素化工程は、必ずしも上記のように耐炎化工程の後に行う必要はなく、後記する実施例に記載のように耐炎化された繊維に黒鉛粒子および炭素質材料を添着した後に炭素化工程を行っても良く、この場合は耐炎化工程後の炭素化工程を省略することができる。
このうち上記耐炎化工程は、空気雰囲気下、有機繊維のプレカーサーを好ましくは180℃以上350℃以下の温度で加熱し、耐炎化有機繊維を得る工程を意味する。加熱処理温度は、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、330℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがさらに好ましい。上記温度範囲で加熱することにより、有機繊維が熱分解することなく炭素質繊維の形態を保持したまま有機繊維中の窒素、水素の含有率を低減し、炭素化率を向上することができる。耐炎化工程の際、有機繊維が熱収縮し分子配向が崩壊して、炭素質繊維の導電性が低下する場合があることから、有機繊維を緊張下ないし延伸下で耐炎化処理することが好ましく、緊張下で耐炎化処理することがより好ましい。
上記炭素化工程は、不活性雰囲気下(好ましくは窒素雰囲気下)、上記のようにして得られた耐炎化有機繊維を好ましくは1000℃以上2000℃以下の温度で加熱し、炭素質繊維を得る工程を意味する。加熱温度は、1100℃以上であることがより好ましく、1200℃以上であることがさらに好ましい。また、より好ましくは1900℃以下である。上記温度範囲で炭素化工程を行うことにより、有機繊維の炭素化が進行し、擬黒鉛結晶構造を有する炭素質繊維を得ることができる。
有機繊維は、それぞれ異なる結晶性を有するため、炭素化工程における加熱温度は、原料とする有機繊維の種類に応じて選択することができる。例えば、有機繊維としてアクリル樹脂(好ましくはポリアクリロニトリル)を使用する場合、加熱温度は800℃以上2000℃以下であることが好ましく、1000℃以上1800℃以下であることがさらに好ましい。
前述した耐炎化工程および炭素化工程は、連続的に行うことが好ましく、耐炎化温度から炭素化温度へ昇温するときの昇温速度は、20℃/分以下であることが好ましく、より好ましくは15℃/分以下である。昇温速度を上記範囲とすることにより、有機繊維の形状を保持し、かつ機械的性質に優れた炭素質繊維を得ることができる。なお上記昇温速度の下限は、機械的性質などを考慮すると、5℃/分以上であることが好ましい。
なお、後記する炭素質材料(C)の欄で詳述するが、本発明の電極材は、上記(2)に規定するように、炭素質繊維(A)および炭素質材料(C)における、X線回折で求めたc軸方向の結晶子の大きさを、それぞれ、Lc(A)およびLc(C)としたとき、Lc(C)/Lc(A)は1.0以上を満足する。よって本発明では上記(2)を満足する限り、炭素質繊維(A)におけるLc(A)は特に限定されないが、1~15nmであることが好ましい。これにより、適度な電子伝導性、硫酸溶媒などに対する耐酸化性、酸素官能基が付与し易いなどの作用が有効に発揮される。Lc(A)は、2~10nmであることがより好ましい。Lc(A)の測定方法は後記する実施例の欄で詳述する。
[黒鉛粒子(B)] 本発明において黒鉛粒子は、酸化還元による価数の変化(反応性)を高めて反応活性を得ると共に、導電性を高めるために必要である。本発明において黒鉛粒子は、反応場である炭素エッジ面を豊富に露出させて低抵抗を実現するために有用である。本発明者らの検討結果によれば、黒鉛粒子について、X線回折で求めたc軸方向の結晶子の大きさをLc(B)としたとき、Lc(B)の値が炭素エッジ面の露出度と相関しており、Lc(B)が35nm未満の場合に炭素エッジ面を十分に露出させることができて反応性が向上するため、低抵抗を実現できることが分かった。Lc(B)は33nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましい。上記値の下限は上記観点からは特に限定されないが、導電性や耐酸化性の確保などを考慮すると、おおむね、15nm以上であることが好ましい。
黒鉛粒子は、一般に天然黒鉛と人造黒鉛に大別される。天然黒鉛として、例えば鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土状黒鉛、球状黒鉛、薄片化黒鉛などが挙げられ、人造黒鉛として、例えば膨張黒鉛、酸化黒鉛などが挙げられる。本発明では、天然黒鉛、人造黒鉛のいずれも用いることができるが、これらのうち、酸化黒鉛、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土状黒鉛、薄片化黒鉛、膨張黒鉛は、反応場としての炭素エッジ面を有することから好ましい。中でも、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、膨張黒鉛は炭素エッジ面の露出が非常に大きく低抵抗が得られるだけでなく、低コストかつ資源量が豊富なため、より好ましい。ここで鱗片状黒鉛とは外観が葉片状のものを意味する。鱗片状黒鉛は、鱗状黒鉛(形状が塊状であり、塊状黒鉛と呼ばれる場合がある)と相違する。
本発明に用いられる黒鉛粒子は、前述した炭素質繊維(A)、黒鉛粒子(B)、後記する炭素質材料(C)の合計量に対する質量比率で、20%以上含まれていることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。これにより、黒鉛粒子(B)が炭素質材料(C)で結着されるようになると共に、黒鉛粒子(B)の特性を十分に発揮することができる。但し、黒鉛粒子(B)の量が過剰になると、炭素質材料(C)との結着性が不十分となり、反応に関わる黒鉛粒子(B)が減少する。また、通液圧損も上昇してしまうことから、所望とする低抵抗が得られなくなる。そのため、その上限はおおむね、60%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以下である。なお上記含有量の算出に用いる炭素質繊維(A)の含有量は、基材として不織布などの構造体を用いる場合は当該構造体の含有量である。
本発明において、黒鉛粒子(B)に対する、後記する炭素質材料(C)の質量比は、0.2以上3.0以下であることが好ましく、0.3以上2.5以下であることがより好ましい。上記の比が0.2未満では、黒鉛粒子(B)の脱落が多くなり、黒鉛添加による特に耐酸化性向上効果が有効に発揮されない。一方、上記の比が4.0を超えると、反応場である黒鉛粒子(B)の炭素エッジ面が被覆されてしまい、所望とする低抵抗が得られなくなる。
本発明に用いられる黒鉛粒子(B)の粒径は特に限定されないが、黒鉛の比表面積などを考慮すると、おおむね、0.1~15μmの範囲内であることが好ましい。ここで「粒径」とは、動的光散乱法などで得られた粒径分布におけるメジアン50%径での平均粒径(D50)を意味する。黒鉛粒子は市販品を用いてもよく、その場合、カタログ記載の粒径を採用できる。
本発明に用いられる黒鉛粒子(B)の、窒素吸着量から求められるBET比表面積は21m2/g以上が好ましく、30m2/g以上がより好ましい。BET比表面積が20m2/g未満になると、黒鉛粒子(B)のエッジ面の露出が減少し、電解液との接触面積も減少するため、所望とする低抵抗が得られなくなる。なお、その上限は上記観点からは特に限定されないが、耐酸化性やバインダーとの結着性などを考慮すると、おおむね、300m2/g以下であることが好ましい。
[炭素質材料(C)] 本発明において炭素質材料は、本来、結着し得ない炭素質繊維と黒鉛粒子とを強く結着させるための結着剤(バインダー)として添加されるものである。本発明では、上記(1)に規定するように炭素質材料(C)における、X線回折で求めたc軸方向の結晶子の大きさをLc(C)としたとき、Lc(C)は10nm未満を満足し、且つ、上記(2)に規定するように、炭素質繊維(A)における、X線回折で求めたc軸方向の結晶子の大きさをLc(A)としたとき、Lc(C)/Lc(A)は1.0以上を満足する必要がある。 このような低結晶性の結着性炭素質材料を用いることにより、酸素官能基が導入し易くなり、黒鉛粒子を結着する炭素質材料に高い電解液親和性が付与される。その結果、所望とする低抵抗化が得られる。また、炭素質材料が黒鉛粒子を介して炭素質繊維間などを強く結着するため、効率的な導電パスを形成でき、前述した黒鉛粒子添加による低抵抗化作用が一層有効に発揮されることが判明した。
低抵抗化の観点から、Lc(C)は8nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。なおLc(C)が2nm未満になると、炭素質材料(C)の導電性が十分に発揮できず、所望の低抵抗化が得られ難くなるため、Lc(C)は2nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましい。
また前述したとおり、Lc(C)/Lc(A)の比は1.0以上である。すなわち本発明では、Lc(C)がLc(A)よりも大きいので、炭素質材料(C)の導電性が高く、より低抵抗な電極材となる。上記比は、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。但し、前述した導電性の確保と電解液に対する親和性とのバランスなどを考慮すると、その上限は5以下であることが好ましい。
本発明に用いられる炭素質材料(C)は、前述した炭素質繊維(A)および黒鉛粒子(B)、炭素質材料(C)の合計量に対する質量比率で、14.5%以上含まれていることが好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上がさらに好ましい。このように炭素質材料の含有率を多くすることによって炭素質繊維および黒鉛粒子の両方を十分結着することができ、炭素質材料添加による結着作用が有効に発揮される。なお、その上限は、通液圧損などを考慮すると、おおむね、60%以下であることが好ましい。より好ましくは50%以下である。
本発明に用いられる炭素質材料(C)の種類は、炭素質繊維(A)および黒鉛粒子(B)を結着し得るものであれば良く、具体的には、本発明の電極材作製時における炭化時に結着性を示すものであれば特に限定されない。このような例として、例えば、コールタールピッチ、石炭系ピッチ等のピッチ類;フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシド樹脂、フラン樹脂、ビニルエステル樹脂、メラニン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、レソルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル等の樹脂;フルフリルアルコール;アクリロニトリル-ブタジエンゴム等のゴムなどが挙げられる。これらは市販品を用いても良い。
これらのうち、特に易結晶性であるコールタールピッチ、石炭系ピッチ等のピッチ類は、低い焼成温度で目的とする炭素質材料(C)が得られるため好ましい。また、ポリアクリロニトリル樹脂も、低い焼成温度で目的とする炭素質材料(C)が得られるため、好ましく用いられる。特に好ましいのはピッチ類である。 本発明の好ましい態様によれば、フェノール樹脂を使用しないため、フェノール樹脂に伴う弊害(室温でのホルムアルデヒド発生およびホルムアルデヒド臭)は生じず、常温では臭気が発生しない等のメリットがある。これに対し、前述した特許文献4では接着剤としてフェノール樹脂を用いているため、上記弊害の他、作業場所におけるホルムアルデヒド濃度を管理濃度以下に制御するための設備が別途必要になる等、コスト面、作業面でのデメリットがある。
ここで、特に好ましく用いられるピッチ類について詳述する。前述したコールタールピッチや石炭系ピッチは、不融化処理の温度や時間によって、メソフェーズ相(液晶相)の含有率をコントロールすることができる。メソフェーズ相の含有量が少なければ、比較的低温で溶融、または室温で液体状態のものが得られる。一方、メソフェーズ相の含有率が高ければ、高温で溶融し、炭化収率の高いものが得られる。ピッチ類を炭素質材料(C)に適用する場合、メソフェーズ相の含有率が高い(すなわち炭化率が高い)ことが好ましく、例えば30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。これにより、溶融時の流動性を抑え、黒鉛粒子の表面を過剰に被覆することなく、黒鉛粒子を介して炭素質繊維間を結着することができる。なお、その上限は、結着性の発現などを考慮すると、例えば90%以下であることが好ましい。
上記と同様の観点から、ピッチ類の融点は、100℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。これにより、上記効果が得られる他、添着加工時の臭気を抑えることができ、加工性の面でも好ましい。なお、その上限は、結着性の発現などを考慮すると、例えば350℃以下であることが好ましい。
(本発明の電極材の特性) 本発明の電極材は、炭素電極材表面の結合酸素原子数が炭素電極材表面の全炭素原子数の1.0%以上を満足する。以下、上記全炭素原子数に対する結合酸素原子数の比をO/Cで略記する場合がある。O/Cは、X線光電子分光法(XPS)や蛍光X線分析法などの表面分析にて測定できる。
O/Cが1.0%以上の電極材を用いることにより、電極反応速度を著しく高められるため、低抵抗が得られる。更にO/Cの制御により親水性も高められ、後記する電極材の通水速度(好ましくは0.5mm/sec以上)を確保することができる。これに対し、O/Cが1.0%未満の酸素濃度の低い電極材を用いると、放電時の電極反応速度が小さくなり、電極反応活性を高めることはできない。その結果、抵抗が増加する。このように電極材表面に酸素原子を多く結合させた電極材の使用により電極反応活性(換言すれば電圧効率)が高められる理由の詳細は明らかでないが、表面に多く存在する酸素原子が炭素質材料(C)と電解液との親和性、電子の授受、錯イオンの炭素質材料からの脱離、錯交換反応等に有効に作用しているためと考えられる。
本発明の電極材は親水性に優れている。親水性は、上記電極材を乾式酸化処理後、水滴を垂らした時の通水速度によって確認することができる。本発明に係る電極材の通水速度は、0.5mm/sec以上であることが好ましい。これにより、電解液に対する十分な親和性を有すると判断できる。上記電極材の通水速度は大きい程良く、より好ましくは1mm/sec以上、更に好ましくは5mm/sec以上、更により好ましくは10mm/sec以上である。
本発明の電極材の目付量は、集電板1とイオン交換膜3に挟まれたスペーサー2の厚み(以下、「スペーサー厚み」と言う)を0.3~3mmで使用する場合、50~500g/m2が好ましく、100~400g/m2がより好ましい。目付を上記範囲内に制御することで、通液性を確保しつつ、イオン交換膜3の破損を防止することができる。特に、近年では低抵抗化の観点から、イオン交換膜3の厚みは薄くなる傾向にあり、イオン交換膜3へのダメージを軽減する処置及び使用方法は極めて重要である。また上記の観点から、本発明の電極材として、片面に平坦加工が施された不織布や紙を基材として使用することもより好ましい。平坦加工方法は、公知の任意の方法を適用でき、例えばスラリーを炭素質繊維の片面に塗布、乾燥する方法;PETなどの平滑なフィルム上で含侵、乾燥するなどの手法が挙げられる。
本発明の電極材の厚みは、少なくともスペーサー厚みより大きいことが好ましい。例えば炭素質繊維に不織布等のように密度の低いものを用い、これに本発明の電極材に用いられる黒鉛粒子や結着性の炭素質材料を坦持した場合、スペーサー厚みの1.5~6.0倍が好ましい。しかしながら、厚みが厚すぎるとシート状物の圧縮応力によりイオン交換膜3を突き破ってしまうことがあるので、本発明の電極材の圧縮応力が9.8N/cm2以下のものを使用するのが好ましい。本発明の電極材の目付量・厚みに応じて、圧縮応力などを調整するために、本発明の電極材を2層や3層など積層して用いることも可能である。或は、別の形態の電極材との組み合わせも可能である。
本発明の電極材の、窒素吸着量から求められるBET比表面積は8.1m2/g以上が好ましく、12m2/g以上がより好ましい。BET比表面積が8.1m2/g未満になると、黒鉛粒子(B)のエッジ面の露出の減少および電解液との接触面積の減少により、所望とする低抵抗が得られなくなる。なお上記BET比表面積の上限は、上記観点からは特に限定されないが、耐酸化性などを考慮すると、おおむね、150m2/g以下であることが好ましい。
(本発明に係る電極材の製造方法) 次に、本発明の電極材を製造する方法について説明する。本発明の電極材は、炭素質繊維(基材)に黒鉛粒子、および炭素質材料の前駆体(炭化前のもの)を添着した後、炭素化工程、黒鉛化工程、酸化処理工程を経て製造することができる。各工程では、公知の方法を任意に適用することができる。
以下、各工程について説明する。
(炭素質繊維に黒鉛粒子、および炭素質材料の前駆体を添着する工程)
まず、炭素質繊維に黒鉛粒子および炭素質材料の前駆体を添着させる。炭素質繊維に黒鉛粒子及び炭素質材料の前駆体を添着させるには、公知の方法を任意に採用できる。例えば上記の炭素質材料前駆体を加熱して溶融させ、得られた溶融液中に黒鉛粒子を分散させ、この溶融分散液に炭素質繊維を浸漬した後、室温まで冷却する手法が挙げられる。或は、後記する実施例に示すように、上記の炭素質材料前駆体と黒鉛粒子を、ポリビニルアルコールなどのように炭化時に消失するバインダー(仮接着剤)を添加した水やアルコールなどの溶媒に分散させ、この分散液に炭素質繊維を浸漬した後、加熱して乾燥する手法を用いることができる。ここで、炭素質繊維を浸漬した上記溶融分散液や分散液のうち余分な液は、所定のクリアランスを設けたニップローラーに通すことで分散液に浸漬した際の余分な分散液を絞ったり、或は、ドクターブレード等で分散液に浸漬した際の余分な分散液の表面をかきとる等の方法で除去することができる。
その後、空気雰囲気下、例えば80~150℃で乾燥する。
(炭素化工程) 炭素化工程は、上記工程で得られた添着後の製造物を焼成するために行なわれる。これにより、黒鉛粒子を介して炭素質繊維間が結着されるようになる。炭素化工程では、炭化時の分解ガスを十分に除去することが好ましく、例えば、不活性雰囲気下(好ましくは窒素雰囲気下)、800℃以上2000℃以下の温度で加熱することが好ましい。加熱温度は1000℃以上がより好ましく、1200℃以上がさらに好ましく、1300℃以上がさらにより好ましく、また、1500℃以下がより好ましく、1400℃以下がさらに好ましい。
なお前述したとおり、上記炭素化工程に対応する処理を、繊維の耐炎化後にも行っても良いが、繊維の耐炎化後に行われる炭素化処理は省略しても良い。すなわち、本発明の電極材を製造する方法は、下記方法1と方法2に大別される。
・方法1:繊維の耐炎化→繊維の炭素化→黒鉛粒子および炭素質材料の添着→炭素化→黒鉛化→酸化
・方法2:繊維の耐炎化→黒鉛粒子および炭素質材料の添着→炭素化→黒鉛化→酸化
上記方法1によれば、炭素化を2回行うため加工コストが上昇するものの、電極材として使用するシートは体積収縮比率の差による影響を受け難いため、得られるシートが変形(反り発生)し難いという利点がある。一方、上記方法2によれば、炭素化工程を1回行えば良いため加工コストを低減できるものの、各材料の炭素化時における体積収縮比率の差により得られるシートが変形し易くなる。上記方法1、2のいずれを採用するかは、これらを勘案して適宜決定すれば良い。
(黒鉛化工程) 黒鉛化工程は、炭素質材料の結晶性を十分に高め、電子伝導性の向上ならびに電解液中の硫酸溶液などに対する耐酸化性を向上させるために行なわれる工程である。上記炭素化工程の後、さらに不活性雰囲気下(好ましくは窒素雰囲気下)で1300℃以上の温度で加熱することが好ましく、1500℃以上がより好ましい。なお、その上限は、炭素質材料に高い電解液親和性を付与することを考慮すると、2000℃以下が好ましい。
(酸化処理工程) 上記黒鉛化工程の後、さらに酸化処理工程を行うことにより、電極材表面に、ヒドロキシル基、カルボニル基、キノン基、ラクトン基、フリーラジカル的な酸化物などの酸素官能基が導入されるようになる。その結果、前述したO/C比≧1%を達成することができる。これらの酸素官能基は電極反応に大きく寄与するため、十分に低い抵抗が得られる。また水の通水速度も高められる。
酸化処理工程は、例えば湿式の化学酸化、電解酸化、乾式酸化などの各種処理工程を適用できるが、加工性、製造コストの観点から乾式酸化処理工程が好ましい。乾式酸化処理工程は、空気雰囲気下、例えば500℃以上、900℃以下で加熱(酸化処理)する工程を意味する。上記酸素官能基の導入による効果を有効に発揮させるためには、上記加熱温度は、600℃以上がより好ましく、650℃以上がさらに好ましい。また、800℃以下がより好ましく、750℃以下がさらに好ましい。
更に乾式酸化処理工程では、電極材の機械的強度を維持する観点から、酸化処理前後の電極材の質量収率を90%以上、96%以下に調整することが好ましい。これは、例えば、乾式空気酸化の処理時間や温度を適宜調整するなどの方法により調整することができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。以下において、%は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
本実施例では、以下の項目を測定した。測定方法の詳細は以下のとおりである。
(1)X線回折による、c軸方向の結晶子の大きさ(Lc)の測定 詳細には炭素質繊維のLc(A)、黒鉛粒子のLc(B)、および炭素質材料のLc(C)を以下のようにして測定した。 本実施例で用いた炭素質繊維、黒鉛粒子、炭素質材料のそれぞれ(単体)について、実施例2と同じ加熱処理を順次行い、最終処理されたサンプルを用いて測定した。基本的に炭素結晶性はそのサンプルに与えられる熱エネルギーの影響が支配的になり、サンプルに与えられる最高温の熱履歴がLcの結晶性を決定すると考えられるが、その後の酸化処理の度合いによっては、黒鉛化工程時に形成されたグラフェン積層構造を乱し、欠陥構造の発生などによる結晶性の低下が生じる可能性が考えられる。そのため、黒鉛化処理されたサンプルを用いた。
上記のようにして採取した各単体サンプルをメノウ乳鉢で、粒径10μm程度になるまで粉砕した。粉砕後のサンプルに対して約5質量%のX線標準用高純度シリコン粉末を内部標準物質として混合し、試料セルに詰め、CuKα線を線源として、ディフラクトメーター法によって広角X線を測定した。
本発明の電極材に用いた炭素質繊維(A)および黒鉛粒子(B)、並びにこれらを結着する炭素質材料(C)は、上記広角X線測定で得られたチャートからピーク分離を行うことで、それぞれのLc値を算出した。具体的には、回折角θの2倍(2θ)が26.4°~26.6°の範囲に頂点が見られるピークを黒鉛粒子(B)、25.7°~26.2°の範囲に頂点が見られるピークを炭素質材料(C)とした。それぞれのピークトップから、正弦波としてピーク形状を決定した後、24.0°~25.0°付近にみられる裾野部分から、正弦波としたピーク形状を決定し、これを炭素質繊維(A)とした。黒鉛粒子(B)と炭素質材料(C)のピークトップが分離できない場合、24.0°~26.0°付近にみられる裾野部分から正弦波としたピーク形状を決定することで両者を分離した。以上の方法により分離した3つのピークより、下記方法によってそれぞれのLcを算出した。
曲線の補正には、いわゆるローレンツ因子、偏光因子、吸収因子、原子散乱因子等に関する補正を行わず、次の簡便法を用いた。すなわち、<002>回折に相当するピークのベースラインからの実質強度をプロットし直して<002>補正強度曲線を得た。このピーク高さの1/2の高さに引いた角度軸に平行な線が上記補正強度曲線と交わる線分の長さ(半値幅β)から、下式によってc軸方向の結晶子の大きさLcを求めた。
Lc=(k・λ)/(β・cosθ)
ここで、波長λ=1.5418Å、構造係数k=0.9、βは<002>回折ピークの半値幅を、θは<002>回折角を示す。
(2)平均曲率Rの算出方法 炭素電極材の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で倍率100倍にて観察した。視野中に観察される曲がった繊維のうち最も曲がりの大きい部分を選定し、その曲がり部分を円弧でフィッティングした。その円弧半径を曲率半径r(ミリメートルをベースとして計測)とし、1/rを曲率Rと規定して算出した。同様の測定を合計5箇所で行い、その平均値を算出して平均曲率Rを得た。
(3)平均繊維径の算出方法
使用した各繊維の断面を走査型電子顕微鏡(1000倍)で観察し、任意に5本の繊維を抽出して断面積を測定した。この断面積を、丸形断面形状繊維の断面積とみなして、下式にて繊維径を算出した。合計5本の繊維径の平均値を算出し、これを繊維構造体の平均繊維径とした。
繊維径(μm)=√(4×断面積(μm2)/3.14)
(4)XPS表面分析によるO/Cの測定 ESCAまたはXPSと略称されているX線光電子分光法の測定には、アルバック・ファイ5801MCの装置を用いた。 まず、試料をサンプルホルダー上にMo板で固定し、予備排気室にて十分に排気した後、測定室のチャンバーに投入した。線源にはモノクロ化AlKα線を用い、出力は14kV、12mA、装置内真空度は10-8torrとした。 全元素スキャンを行って表面元素の構成を調べ、検出された元素および予想される元素についてナロースキャンを実施し、存在比率を評価した。 全表面炭素原子数に対する表面結合酸素原子数の比を百分率(%)で算出し、O/Cを算出した。
(5)充放電試験 後記する方法で得られた各電極材を、上下方向(通液方向)に10cm、幅方向に1.6cmの電極面積16cm2に切り出し、図1のセルを組み立てた。イオン交換膜はナフィオン212膜を用いた。電極材は、後述のフェルト基材(No.1~4,No.9~10)においては各1枚、スパンレース基材(No.5~6)及びペーパー基材(No7~8)では各2枚を正・負極に配置し、セル内における電極材の充填率を、フェルト基材では0.1~0.2g/cc、カーボンペーパー基材およびスパンレース基材では0.3~0.4g/ccになるようにスペーサー厚みを調整した。このように使用する基材ごとにセル内の充填率を変更した理由は、カーボンペーパーやスパンレースは基材厚みが薄く高充填化され易いため、フェルトと同じ充填率では集電板との接触が不十分になり、電極材と集電板との接触抵抗が増加するためである。具体的なスペーサー厚みとして、後述のフェルト基材(No.1~4、No.9~10)では2.5mm、スパンレース基材(No5~6)及びペーパー基材(No7~8)では0.8mmとした。 100mA/cm2で電圧範囲1.70~1.00Vで10サイクル後の電圧曲線から、下記式によって全セル抵抗を算出した。なお正極電解液には2.0moL/Lのオキシ硫酸バナジウムの2.5moL/L硫酸水溶液を用い、負極電解液には2.0moL/Lの硫酸バナジウムの2.5moL/L硫酸水溶液を用いた。電解液量はセルおよび配管に対して大過剰とした。液流量は毎分10mLとし、30℃で測定を行った。充電率が50%のときの電気量に対応する充電電圧VC50、放電電圧VD50を電圧曲線からそれぞれ求め、電流密度をI(mA/cm2)とし、下式より全セル抵抗(Ω・cm2)を求めた。
全セル抵抗=(VC50-VD50)/(2×I) [Ω・cm2]
ここで、
C50は、充電率が50%のときの電気量に対する充電電圧を電極曲線から求めたもの、
D50は、充電率が50%のときの電気量に対する放電電圧を電極曲線から求めたもの、
I=電流密度(mA/cm2
(6)水の通水試験
電極からの高さ5cmの地点において、3mmφのピペットから1滴のイオン交換水を電極上に落とし、垂らした水滴が浸透するまでの時間を計測して、下式により水の通水速度を算出した。
水の通水速度(mm/sec)
=電極材の厚み(mm)÷水滴が浸透するまでの時間(sec)
(7)BET比表面積(BET:m2/g)の測定 試料を約100mg採取し、120℃で12時間真空乾燥して90mgを秤量し、比表面積・細孔分布測定装置Gemini2375(Micromeritics社製)を使用してBET比表面積を測定した。具体的には液体窒素の沸点(-195.8℃)における窒素ガスの吸着量を相対圧が0.02~0.95の範囲で測定し、試料の吸着等温線を作成した。相対圧0.02~0.15の範囲の結果に基づき、BET法により重量あたりのBET比表面積(単位:m2/g)を求めた。
実施例1 本実施例では、黒鉛粒子(B)として表1に示すA~Dの鱗片状黒鉛粒子を用い、以下のようにして電極材を作製して各種項目を測定した。これらのうちA、B、Dは市販品であり、表1に記載の粒径は、カタログに記載の値である。Cは、粒径5μmの鱗片状黒鉛粒子をアシザワファインテック社製のラボスターミニ機で6時間ビーズミル粉砕したものであり、粒径はレーザー回折法により測定した。なおDはLc(B)が大きい例である。
実施例2 本実施例では、表1の一部の炭素粒子を用い、以下のようにして電極材を作製して各種項目を測定した。
<炭素質繊維からなるフェルトの作製> 平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル繊維を空気雰囲気下、300℃で加熱して耐炎化し、該耐炎化繊維の短繊維(長さ80mm)を用いてフェルト針SB#40(Foster Needle社)、パンチング密度250本/cm2でフェルト化して目付量300g/m2、厚み4.3mmの耐炎化不織布を作製した。次に、空気雰囲気下、300℃で加熱して耐炎化し、該耐炎化繊維の短繊維(長さ80mm)を用いてフェルト針SB#40(Foster Needle社)、パンチング密度250本/cm2でフェルト化して耐炎化ポリアクリロニトリル繊維からなるフェルト(厚み4.3mm、目付150g/m2、繊維径10μm、平均曲率32R)を得た後、引き続き、窒素雰囲気下、1000℃で1時間焼成(炭素化)した。耐炎化温度から炭素化温度へ昇温するときの昇温速度は、10℃/分以下とした。
(No.1) No.1では、炭素質繊維としてポリアクリロニトリル繊維、黒鉛粒子として表1のA(本発明の要件を満足する例)、炭素質材料としてJFEケミカル社製MCP250のピッチ類を用い、以下のようにして電極材を作製した。
ます、イオン交換水中に、花王社製レオドールTW-L120(非イオン系界面活性剤)を1.8%、ポリビニルアルコール(仮接着材)を1.8%、JFEケミカル社製MCP250(炭素質材料)を14%、黒鉛粉末として表1のAを9.8%となるように加え、メカニカルスターラーで1時間撹拌して分散液とした。
このようにして得られた分散液中に、前述の作製したフェルトを浸漬した後、ニップローラーに通して余分な分散液を除去した。次に、空気雰囲気下、150℃で20分間乾燥した後、窒素雰囲気下、1000℃で1時間炭素化(焼成)した後、さらに1500℃で1時間黒鉛化した。黒鉛化の後、空気雰囲気下、700℃で10分間酸化処理して、厚み3.8mm、目付278.0g/m2の電極材(No.1)を得た。
(No.2) No.1において、黒鉛粉末として表1のB(本発明の要件を満足する例)を用いたこと;炭素質繊維、黒鉛粒子、炭素質材料の合計量に対する黒鉛粒子および炭素質材料の含有率を表2のように変えたこと以外は上記No.1と同様にしてNo.2(厚み3.9mm、目付301.0g/m2)の電極材を作製した。
(No.3) No.1において、黒鉛粉末として表1のC(本発明の要件を満足する例)を用いたこと;炭素質繊維、黒鉛粒子、炭素質材料の合計量に対する黒鉛粒子および炭素質材料の含有率を表2のように変えたこと以外は上記No.1と同様にしてNo.3(厚み4.0mm、目付294.0g/m2)の電極材を作製した。
(No.4) No.1において、炭素質繊維として、耐炎化ポリアクリロニトリル繊維からなるフェルトをそのまま用い、黒鉛粉末として表1のC(本発明の要件を満足する例)を用いたこと;炭素質繊維、黒鉛粒子、炭素質材料の合計量に対する黒鉛粒子および炭素質材料の含有率を表2のように変えたこと以外は上記No.1と同様にしてNo.4(厚み4.0mm、目付294.0g/m2)の電極材を作製した。
(No.5) No.1において、炭素質繊維として、耐炎化ポリアクリロニトリル繊維からなるフェルトの代わりに、ポリアクリロニトリル繊維からなるスパンレース(平均曲率40R、平均繊維径20μm、平均繊維長80mm、厚み0.81mm)を窒素ガス中で5℃/分の昇温速度で1000℃±50℃まで昇温し、昇温後1時間保持することで炭化処理を施した炭化スパンレース(目付量50~60g/m2、平均曲率40R、平均繊維径10μm、厚み0.5~0.7mm)を用い、黒鉛粉末(表1のA)を4.9%となるように加えて分散液を得たこと以外はNo.1と同様にしてNo.5(厚み0.65mm、目付189.0g/m2)の電極材を作製した。
(No.6) No.5において、耐炎化ポリアクリロニトリル繊維からなるスパンレースをそのまま用い、黒鉛粉末として表1のC(本発明の要件を満足する例)を用いたこと;炭素質繊維、黒鉛粒子、炭素質材料の合計量に対する黒鉛粒子および炭素質材料の含有率を表2のように変えたこと以外は上記No.1と同様にしてNo.6(厚み0.64mm、目付185.0g/m2)の電極材を作製した。
(No.7) No.1で用いた耐炎化ポリアクリロニトリル繊維からなるフェルトの代わりにポリアクリロニトリル繊維からなるカーボンペーパー(オリベスト株式会社製、目付60g/m2、平均曲率0、平均繊維径7μm、平均繊維長6mm、厚み0.84mm)を用いた。 詳細には、No.1において、上記カーボンペーパーを用いたこと;炭素質繊維、黒鉛粒子、炭素質材料の合計量と、合計量に対する黒鉛粒子および炭素質材料の含有率とを表2のように変えたこと以外はNo.1と同様にしてNo.7(厚み0.79mm、目付192.0g/m2)の電極材(比較例)を作製した。
(No.8) No.7において、黒鉛粒子として表1のBを用いたこと;炭素質繊維、黒鉛粒子、炭素質材料の合計量に対する黒鉛粒子および炭素質材料の含有率を表2のように変えたこと以外は上記No.7と同様にしてNo.8(厚み0.79mm、目付192.0g/m2)の電極材(比較例)を作製した。
(No.9) No.9は前述した特許文献3を模擬した比較例であり、黒鉛粒子および炭素質材料を使用せず、炭素質繊維を以下のように処理して電極材を得た。 具体的には、No.1において、耐炎化ポリアクリロニトリル繊維からなるフェルト(厚み4.3mm、目付150g/m2、繊維径10μm、平均曲率32R)を窒素雰囲気下、1000℃で1時間炭素化(焼成)した後、1500℃で1時間黒鉛化し、700℃で15分間酸化処理して、No.9(厚み4.0mm、目付150g/m2、平均曲率32R、平均繊維径10μm)の電極材(比較例)を作製した。ここで耐炎化温度から炭素化温度へ昇温するときの昇温速度は、No.1と同じである。
(No.10) No.1において、黒鉛粉末使用しなかったこと以外は上記No.1と同様にしてNo.10(厚み3.9mm、目付243.0g/m2)の電極材(比較例)を作製した。
表2A及び表2Bに、上記No.1~10における各種項目の測定結果を示す。
No.1~6は本発明の要件を満足する電極材であり、いずれも低抵抗の電極材が得られた。
これに対し、No.7~8は、基材の平均曲率が本発明の要件を満足しないカーボンペーパーを使用した例であり、低抵抗化は見られなかった。
No.9は、黒鉛粒子も炭素質材料も使用せず炭素質繊維のみからなる例であり、これも低抵抗化は見られなかった。
No.10は、黒鉛粒子を使用せず炭素質繊維と炭素質材料からなる例であり、これも低抵抗化は見られなかった。
本発明によれば、初期充放電時のセル抵抗を低下し得、電池エネルギー効率に優れた炭素電極材を提供できるため、例えばバナジウム系電解液を用いるレドックス電池の電極材として有用である。本発明の炭素電極材は、フロータイプおよびノンフロータイプのレッドクス電池や、リチウム、キャパシタ、燃料電池のシステムと複合化されたレドックス電池などに好適に用いられる。
1 集電板
2 スペーサー
3 イオン交換膜
4a,4b 通液路
5 電極材
6 正極電解液タンク
7 負極電解液タンク
8,9 ポンプ
10 液流入口
11 液流出口
12,13 外部流路

Claims (7)

  1. 炭素質繊維(A)と、黒鉛粒子(B)と、これらを結着する炭素質材料(C)と、からなり、下記の要件を満足することを特徴とする炭素電極材。
    (1)炭素質材料(C)における、X線回折で求めたc軸方向の結晶子の大きさをLc(C)としたとき、Lc(C)は10nm未満、
    (2)炭素質繊維(A)における、X線回折で求めたc軸方向の結晶子の大きさをLc(A)としたとき、Lc(C)/Lc(A)は1.0以上、
    (3)炭素質繊維(A)の構造体における、平均曲率は1R以上および平均繊維径は5~15μm、
    (4)炭素電極材表面の結合酸素原子数が炭素電極材表面の全炭素原子数の1.0%以上。
  2. 黒鉛粒子(B)における、X線回折で求めたc軸方向の結晶子の大きさをLc(B)としたとき、Lc(B)は35nm未満である請求項1に記載の炭素電極材。
  3. 炭素質繊維(A)、黒鉛粒子(B)、および炭素質材料(C)の合計量に対する前記黒鉛粒子(B)および前記炭素質材料(C)の質量含有率がそれぞれ20%以上であり、かつ、前記黒鉛粒子(B)に対する前記炭素質材料(C)の質量比が0.2~4.0である請求項1に記載の炭素電極材。
  4. 窒素吸着量から求められるBET比表面積が8.1m2/g以上である請求項1~3のいずれかに記載の炭素電極材。
  5. 水滴を垂らした時の通水速度が0.5mm/sec以上である請求項1~4のいずれかに記載の炭素電極材。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の炭素電極材を備えたレドックス電池。
  7. 請求項1~5のいずれかに記載の炭素電極材を備えたバナジウム系レドックス電池。
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