JP2015138692A - 一体化炭素電極 - Google Patents

一体化炭素電極 Download PDF

Info

Publication number
JP2015138692A
JP2015138692A JP2014010253A JP2014010253A JP2015138692A JP 2015138692 A JP2015138692 A JP 2015138692A JP 2014010253 A JP2014010253 A JP 2014010253A JP 2014010253 A JP2014010253 A JP 2014010253A JP 2015138692 A JP2015138692 A JP 2015138692A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbonaceous
liquid
carbon
less
carbonaceous fiber
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014010253A
Other languages
English (en)
Inventor
小林 真申
Masanobu Kobayashi
真申 小林
良平 岩原
Ryohei Iwahara
良平 岩原
真佐子 吉岡
Masako Yoshioka
真佐子 吉岡
全広 山下
Masahiro Yamashita
全広 山下
敏弘 細川
Toshihiro Hosokawa
敏弘 細川
伸也 三崎
Nobuya Misaki
伸也 三崎
博文 西尾
Hirofumi Nishio
博文 西尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyo Tanso Co Ltd
Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyo Tanso Co Ltd
Toyobo Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyo Tanso Co Ltd, Toyobo Co Ltd filed Critical Toyo Tanso Co Ltd
Priority to JP2014010253A priority Critical patent/JP2015138692A/ja
Publication of JP2015138692A publication Critical patent/JP2015138692A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/50Fuel cells

Landscapes

  • Inert Electrodes (AREA)
  • Fuel Cell (AREA)

Abstract

【課題】炭素質繊維集合体と炭素質固形物を液不浸透性接着剤で接着することで、長期間使用による導電性の低下を抑制し、かつレドックスフロー電池のセル抵抗(R)を低減してエネルギー効率を高めることができる炭素電極を提供する。
【解決手段】水溶液系電解液によるレドックスフロー電池に使用され、炭素質繊維集合体と炭素質固形物を液不浸透性接着剤で接着されていることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、水溶液系電解液を用いるレドックスフロー電池に使用される炭素電極に関し、特に、炭素質繊維集合体と炭素質固形物からなる炭素電極に関するものである。本発明の炭素電極は、バナジウム系レドックスフロー電池に特に有用である。
レドックスフロー電池は、フロー(流動)電池の一種であり、活物質を含む電解液のポンプ循環によってイオンの酸化還元反応を進行させ、充放電を行うものであり、大容量の電力貯蔵が可能であることから、開発が進められている。レドックスフロー電池は、電解液を循環するための液流通構造を有する電解セルを最小単位として、これを単独で使用、または複数を積層して構成されている。前記電解セルは、一般的には、図1に示すように、電解液を貯える外部タンク6,7と電解セルEC、ポンプ8,9とで構成されており、充放電の際には、活物質を含む電解液が、外部液路12,13を通って、外部タンク6,7と電解セルECの間でポンプ8,9により循環される。この電解液の循環により、電解液中の活物質と電解セルECに組み込まれた電極との間で電気化学反応(酸化還元反応)が起こり、フロー(流動)から電流へのエネルギー変換が進行する。
ここで、電解セルにおける電気化学反応は、電極表面での固相(電極)−液相(電解液)間の不均一相反応であるため、電極が板状であると、電気化学反応場は、二次元(平面)に制限される。その結果、電解セルの単位体積当たりの充放電量(充放電効率)はある一定値以上は向上できないこととなる。
そこで、電解セルの充放電効率を向上するために、電気化学反応場の三次元化(電極構造の三次元化)が行われている。例えば、電極を多孔電極材と集電板とで構成し、電解液が多孔電極材中を通過する構造とすると、集電板によって電子の輸送を確保しながら、多孔電極材の細孔表面全てを電気化学反応場として充放電効率を向上することができる。このような電極に用いられる材料としては、導電性や耐薬品性などが良好であることから、炭素材料がよく用いられている。特に、多孔電極材としては、耐薬品性、導電性が良好であり、かつ通液性に優れるとの特性を有することから、炭素質繊維の不織布等が用いられている。
図2に、このような三次元電極を有する電解セルの分解斜視図を示す。この電解セルでは、相対する二枚の集電板1,1間にイオン交換膜3が配設され、イオン交換膜3の両側にスペーサー2によって集電板1,1の内面に沿った電解液の流路4a,4bが形成され、この流路4a,4bの少なくとも一方に多孔電極材5が配設されている。なお、集電板1には電解液の液流入口10と液流出口11とが設けられている。
ここで、レドックスフロー電池用電極の特性としては、特に以下に示す性能が要求される。
1)目的とする反応以外の副反応を起こさないこと(反応選択性が高いこと)、具体的には電流効率(ηI)が高いこと。
2)電極反応活性が高いこと、具体的にはセル抵抗(R)が小さいこと。すなわち電圧効率(ηV)が高いこと。
3)上記1)、2)に関連する電池エネルギー効率(ηE)が高いこと。
ηE=ηI×ηV
4)くり返し使用に対する劣化が小さいこと(高寿命)、具体的には電池エネルギー効率(ηE)の低下量が小さいこと。
そして、電極として、前記三次元電極を用いた場合、セル抵抗(R)に関しては、炭素質繊維集合体等の多孔電極材と集電板との界面抵抗、及び多孔電極材中の内部抵抗が寄与する割合が大きく、これらの界面抵抗、内部抵抗やその経時変化が、電池エネルギー効率やその経時変化に及ぼす影響は大きい。
特許文献1には、導電性バイポーラ板と炭素質繊維集合体である電極とが物理的又は化学的にあらかじめ接合されたのち組み立てられた積層型電解セルが提案されている。
また、特許文献2には、一次平均粒径が20μm以下の有機バインダーを凝集させた造粒体を、炭素質繊維の原料不織布に分散添着させてから加熱加圧して単繊維同士を結着させた後、前記単繊維及び前記有機バインダーの炭化を行う工程を有する炭素電極材集合体の製造方法が提案されている。
特公平6−90933号公報 特許第4366802号公報
しかしながら、特許文献1に記載の積層型電解セルでは、炭素質繊維集合体(多孔電極材)と導電性カーボンプラスチックプレート(集電体)とを接合する手段がホットプレスであるため、炭素質繊維がプレートにめり込んだ状態となり、電気化学反応場となる炭素質繊維の有効表面積の減少による反応抵抗増大に加えて、炭素質繊維集合体と導電性カーボンプラスチックプレートとの界面抵抗増大の問題があった。
また、特許文献2に記載の炭素電極材集合体では、単繊維同士を結着、炭化することにより炭素質繊維集合体(多孔電極体)中の内部抵抗を低減することはできたが、炭素質繊維集合体と集電体との界面抵抗を低減することはできず、電池の抵抗を十分に改善できていなかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、レドックスフロー電池のセル抵抗(R)を低減してエネルギー効率を高めることができ、かつ長期間にわたって、多孔電極材と集電体との界面抵抗および多孔電極材中の内部抵抗を低く維持できる炭素電極を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究したところ、多孔電極材(電界液通過層)として炭素質繊維集合体を使用し、集電体として炭素質固形物を使用して、これらを液不浸透性接着剤で接着し一体化した炭素電極を用いることによって、多孔電極材(炭素質繊維集合体)と集電体(炭素質固形物)との界面抵抗を低減することができるとともに、電解液透過性を向上できることを見出した。そしてこのような電極をレドックスフロー電池に適用すると、セル抵抗(R)を低減してエネルギー効率を高めることができ、かつ長期間にわたって、多孔電極材(炭素質繊維集合体)と集電体(炭素質固形物)との界面抵抗を低く維持できることをつきとめて、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明に係る炭素電極は、水溶液系電解液を用いるレドックスフロー電池に使用される炭素電極であって、炭素質繊維集合体と炭素質固形物とを有し、炭素質繊維集合体と炭素質固形物が、液不浸透性接着剤により接着されていることを特徴とする。前記液不浸透性接着剤は、炭素粒子と、バインダーとを含むものであることが好ましく、炭素電極における付着量は、0.09g/cm2以下であることが好ましい。炭素質繊維集合体は、70%以上の空隙を有するものであることが好ましい。また、炭素質固形物は、1g/cm3以上のかさ密度を有するものであることが好ましい。
前記炭素電極は、炭素質繊維集合体と、炭素質固形物とを、液不浸透性接着剤を用いて接着し、80℃以上200℃以下の温度で熱処理することで、製造することが好ましい。また、本発明の炭素電極を使用したレドックスフロー電池も、本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の炭素電極は、炭素質繊維集合体と炭素質固形物とを有し、炭素質繊維集合体と炭素質固形物が、液不浸透性接着剤により接着されているため、炭素質繊維集合体と炭素質固形物との界面抵抗を低減することができるとともに、電解液透過性を向上することができる。その結果、レドックスフロー電池のセル抵抗(R)を低減してエネルギー効率を高めることができ、かつ長期間にわたって、多孔電極材と集電体との界面抵抗を低く維持することができる。
図1はバナジウム系レドックスフロー電池の概略図を示す。 図2は本発明の一実施例を示す三次元電極を有するバナジウム系レドックスフロー電池の電解セルの分解斜視図である。 図3は実施例1および比較例1におけるスペーサー厚と2サイクル目のセル抵抗(R)との関係を表す。 図4は実施例2および比較例2におけるスペーサー厚と2サイクル目のセル抵抗(R)との関係を表す。
1.炭素電極
本発明の炭素電極は、水溶液系電解液を用いるレドックスフロー電池に使用されるものであり、炭素質繊維集合体と炭素質固形物とを有し、炭素質繊維集合体と炭素質固形物は、液不浸透性接着剤により接着されている。これにより、炭素質繊維集合体と炭素質固形物との界面抵抗を低減することができるとともに、電解液透過性を向上することができる。その結果、レドックスフロー電池のセル抵抗(R)を低減してエネルギー効率を高めることができ、かつ長期間にわたって、多孔電極材と集電体との界面抵抗を低く維持することができる。
レドックスフロー電池等の電解セル用電極の特性は、電流効率ηI、電圧効率ηV(セル抵抗(R))および電池エネルギー効率ηE(ηIとηVとの積)とこれらの効率の充放電サイクル安定性(寿命)で表される。これらは、充放電サイクルの経時変化を測定することによって、評価することができる。
1−1.炭素質繊維集合体
本発明の炭素電極に用いられる炭素質繊維集合体は、炭素質繊維がランダムあるいは規則的に集合して、不織布、織物、編物、ペーパーのような炭素質繊維の集まりを形成したものを意味する。中でも、形成が容易である観点からは、不織布、織物であることが好ましい。前記不織布は、焼成(炭化)前の耐炎化(不融化)された短繊維を開繊し、カードにかけ、幾層かに重ねられたレイヤーからなるウェブをまず作製し、さらにニードルパンチ加工機にかけることで、好適に作製することができる。また、前記織物は、焼成(炭化)前の耐炎化(不融化)された短繊維を撚り合わせて紡績糸とし、製織することによって作製することができる。織物の種類は、特に限定されないが、製織容易性の観点から、平織物が好ましい。
本発明の炭素電極に用いられる炭素質繊維集合体は、70%以上の空隙率を有することが好ましい。炭素質繊維集合体の空隙率を高くすることにより、空隙内における電解液の輸送が良好に行われ、拡散抵抗が低減されるとともに、レドックスフロー電池の動力損失を低減することができるからである。したがって、炭素質繊維集合体の空隙率は、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。炭素質繊維集合体の空隙率の上限は、特に限定されないが、機械的強度の観点から、98%以下であることが好ましく、より好ましくは97%以下であり、さらに好ましくは96%以下である。
炭素質繊維集合体の空隙率は、下記式により算出する。
炭素質繊維集合体の空隙率(%)
=100−炭素質繊維集合体の目付量(g/m2)/厚み(mm)/1000/比重(g/cm3)×100
ここで、厚みは荷重8.8gf/cm2において測定した値とし、比重はJIS R7601−1986の6.3.2液置換法による測定方法で決定したものとする。
本発明の炭素質繊維集合体の目付量は、100g/m2以上、1000g/m2以下であることが好ましく、200g/m2以上、600g/m2以下であることがより好ましい。目付量が多いほど、炭素質繊維集合体としたときの比表面積を大きくして電気化学反応量を増やすことができ、目付量が少ないほど、炭素質繊維集合体における電解液の透過性を向上することができる。
炭素質繊維集合体の厚みは、一般に、0.1mm以上、50mm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.3mm以上、30mm以下、さらに好ましくは0.5mm以上、10mm以下である。
本発明の炭素電極に用いられる炭素質繊維集合体は、レドックスフロー電池において、炭素質固形物(集電板)と隔膜に接するように圧縮(圧接)されて組み込まれる。この圧縮状態の厚みは、図2におけるスペーサー2の厚みにより調整することができる。炭素質繊維集合体の厚みは、炭素電極をレドックスフロー電池に使用した際の、隔膜と集電板に挟まれた圧縮状態の炭素質繊維集合体の厚みに対して、1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましく、1.4倍以上であることが好ましい。また、5倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましく、2.5倍以下であることがさらに好ましい。炭素質繊維集合体の厚みが、前記圧縮状態の厚みに対して大きいほど、電気化学反応量を増やすことができ、小さいほど、圧縮応力を適度に小さくして隔膜の破れを抑制できるとともに、電解液の透過性を向上することができる。
また、本発明の炭素電極に用いられる炭素質繊維集合体は、レドックスフロー電池において、炭素質固形物(集電板)と隔膜に圧縮されて組み込まれるが、その圧縮された炭素質繊維間の薄い隙間を粘度の高い電解液が流れる。したがって、炭素質繊維集合体の脱落を防止して形態保持するためには、炭素質繊維集合体の引張強度を0.49N/mm2(0.05kgf/cm2)以上にすることが好ましい。より好ましくは0.69N/mm2(0.07kgf/cm2)以上であり、さらに好ましくは0.98N/mm2(0.1kgf/cm2)以上である。炭素質繊維集合体の引張強度の上限は特に限定されないが、例えば、9.8N/mm2(1kgf/cm2)以下であることが好ましく、より好ましくは6.9N/mm2(0.7kgf/cm2)以下であり、さらに好ましくは4.9N/mm2(0.5kgf/cm2)以下である。
また、本発明の炭素質繊維集合体は、炭素質繊維集合体と炭素質固形物(集電板)との界面抵抗を減少させるためには、隔膜、集電板に挟まれた(圧縮状態における)炭素質繊維集合体(充填層)のかさ密度を0.05g/cm3以上とすることが好ましい。より好ましくは、0.07g/cm3以上であり、さらに好ましくは0.1g/cm3以上である。圧縮状態における炭素質繊維集合体のかさ密度の上限は、特に限定されないが、例えば、1g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.8g/cm3以下であり、さらに好ましくは0.5g/cm3以下である。
さらに、本発明の炭素質繊維集合体は、前記圧縮状態において、電極面に対する反発力を0.098N/mm2(0.01kgf/cm2)以上にすることが好ましい。より好ましくは0.147N/mm2(0.015kgf/cm2)以上であり、さらに好ましくは0.196N/mm2(0.02kgf/cm2)以上である。圧縮状態における炭素質繊維集合体の電極面に対する反発力の上限は特に限定されないが、例えば、9.8N/mm2(1kgf/cm2)以下であることが好ましく、より好ましくは6.9N/mm2(0.7kgf/cm2)以下であり、さらに好ましくは4.9N/mm2(0.5kgf/cm2)以下である。
前記圧縮応力は、炭素質繊維集合体が所定のスペーサー厚みになるまで0.1mm/秒程度の速度で荷重を加え、その時の荷重を荷重厚み測定器で測定して得られた値とする。測定面積は4cm2の真円とする。
なお、圧縮状態における炭素質繊維集合体の空隙率は、70%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。圧縮状態における炭素質繊維集合体の空隙率を高くすることにより、空隙内における電解液の輸送が良好に行われ、拡散抵抗が低減されるとともに、レドックスフロー電池の動力損失を低減することができる。炭素質繊維集合体の空隙率の上限は、特に限定されないが、機械的強度の観点から、98%以下であることが好ましく、より好ましくは97%以下であり、さらに好ましくは96%以下である。
圧縮状態における炭素質繊維集合体の空隙率は、通常の状態における空隙率をφ0、圧縮状態における空隙率をφ1、通常の状態における集合体の厚みをt0、圧縮状態における厚みをt1として、下記式により算出することができる。
φ1=1−(1−φ0)/(t1/t0
本発明の炭素電極に用いられる炭素質繊維集合体は、炭素質繊維で構成されるものである。炭素質繊維は、有機繊維のプレカーサーを加熱炭素化処理して得られる質量比で90%以上が炭素で構成される繊維を意味する(JIS L 0204−2)。炭素質繊維の原料となる有機繊維のプレカーサーとしては、ポリアクリロニトリル等のアクリル繊維;フェノール繊維;ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)等のPBO繊維;芳香族ポリアミド繊維;等方性ピッチ、メソフェーズピッチ等のピッチ繊維;セルロース繊維;等を使用することができる。中でも、炭素質繊維の強度・弾性率に優れ、炭素質繊維集合体を形成することが容易となる観点から、有機繊維のプレカーサーとしては、アクリル繊維、ピッチ繊維が好ましく、アクリル繊維がより好ましい。アクリル繊維としては、アクリロニトリルを主成分として含有するものであれば特に限定されないが、アクリル繊維を形成する原料単量体中、アクリロニトリルの含有量が95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましい。
有機繊維の質量平均分子量は、特に限定されないが、10000以上、100000以下であることが好ましく、15000以上、80000以下であることがより好ましく、20000以上、50000以下であることがさらに好ましい。
また、有機繊維の直径は、平均繊維径が3μm以上、30μm以下であることが好ましい。より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。平均繊維径が大きいほど、集合体の形成が容易となるため好ましい。また、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。平均繊維径が小さいほど、炭素質繊維集合体としたときの比表面積が大きくなり、電気化学反応場の面積を大きくすることができるため好ましい。
特に、加熱炭素化処理は、少なくとも、耐炎化工程、および、炭素化工程を含むことが好ましい。
前記耐炎化工程は、空気雰囲気下、有機繊維のプレカーサーを180℃以上350℃以下の温度で加熱し、耐炎化有機繊維を得る工程を意味する。熱処理温度は、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、330℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがさらに好ましい。前記温度範囲で加熱することにより、有機繊維が熱分解することなく炭素質繊維の形態を保持したまま有機繊維中の窒素、水素の含有率を低減し、炭素化率を向上することができる。耐炎化工程の際、有機繊維が熱収縮し分子配向が崩壊して、炭素質繊維の導電性が低下する場合があることから、有機繊維を緊張下ないし延伸下で耐炎化処理することが好ましく、緊張下で耐炎化処理することがより好ましい。
前記炭素化工程は、不活性雰囲気下(好ましくは窒素雰囲気下)、耐炎化有機繊維を1000℃以上2000℃以下の温度で加熱し、炭素質繊維を得る工程を意味する。加熱温度は、1100℃以上であることがより好ましく、1200℃以上であることがさらに好ましい。また、より好ましくは1900℃以下である。前記温度範囲で炭素化工程を行うことにより、有機繊維の炭素化が進行し、擬黒鉛結晶構造を有する炭素質繊維を得ることができる。
有機繊維は、それぞれ異なる結晶性を有するため、加熱温度は、原料とする有機繊維の種類に応じて選択することができる。
例えば、有機繊維としてアクリル樹脂(好ましくはポリアクリロニトリル)を使用する場合、加熱温度は1500℃以下であることが好ましく、1400℃以下であることがさらに好ましい。
前記耐炎化工程と炭素化工程とは、連続的に行うことが好ましく、耐炎化温度から炭素化温度へ昇温するときの昇温速度は、20℃/分以下であることが好ましく、より好ましくは15℃分/以下である。昇温速度を前記範囲とすることにより、有機繊維の形状を保持し、かつ機械的性質に優れた炭素質繊維を得ることができる。
加熱炭素化処理は、さらに乾式酸化処理工程を含むことが好ましい。乾式酸化処理工程は、空気雰囲気下、炭素質繊維を500℃以上、900℃以下で加熱する工程を意味する。乾式酸化処理温度は、600℃以上であることがより好ましく、650℃以上であることがさらに好ましい。また、800℃以下であることがより好ましく、750℃以下であることが好ましい。前記温度範囲で炭素質繊維を乾式酸化処理することにより、炭素質繊維中の低結晶性部分が酸化消耗され、さらに結晶性に優れた炭素質繊維を得ることができる。
乾式酸化処理工程においては、炭素質繊維の機械的強度を維持する観点から、酸化前後の質量収率を90%以上、96%以下に調整することが好ましい。
加熱炭素化処理において、乾式酸化処理の代わりに電解酸化処理を行っても同様な効果を得ることができる。
本発明において、炭素質繊維は炭素結晶性に優れるものであることが好ましい。炭素結晶性は、炭素質繊維に含まれる結晶子の<002>面間隔d002の大きさ、及び、c軸方向の結晶子径により評価することができる。
前記面間隔d002は、0.3nm以上、0.4nm以下であることが好ましい。より好ましくは0.32nm以上、0.38nm以下であり、さらに好ましくは0.34nm以上、0.355nm以下である。結晶子の面間隔の測定により、試料内部に含まれる結晶構造を特定することができ、<002>面間隔が上記範囲であると、当該炭素質繊維が導電性の高い擬黒鉛結晶構造を含むことを確認することができる。
また、c軸方向の結晶子径は、1nm以上であることが好ましく、より好ましくは1.2nm以上であり、さらに好ましくは1.5nm以上である。c軸方向の結晶子径が大きいほど、結晶性が高いため、炭素質繊維の導電性が良好となる。また、c軸方向の結晶子径は、5nm以下であることが好ましく、より好ましくは4nm以下であり、さらに好ましくは3.5nm以下である。c軸方向の結晶子径が小さいほど、炭素質繊維の可撓性が良好となる。
炭素質繊維の炭素結晶性は、広角X線回折により測定することができる。
また、本発明の炭素質繊維は、表面酸性官能基量が0.01meq/g以上であることが好ましい。より好ましくは0.02meq/g以上であり、さらに好ましくは0.025meq/以上である。また、表面酸性官能基量の上限は特に限定されないが、例えば0.1meq/g以下であることが好ましく、より好ましくは0.05meq/g以下である。
炭素質繊維の表面酸性官能基量は、化学滴定により測定することができる。
また、炭素質繊維の表面酸性官能基数は全表面炭素原子数に対して0.2%以上、2%以下であることが好ましい。より好ましくは0.5%以上、1.8%以下であり、さらに好ましくは0.8%以上、1.5%以下である。表面酸性官能基数が多いほど、炭素質繊維上の電気化学反応点が多くなり、また、表面酸性官能基数が適度な範囲であると、電解液中の活物質の量と電気化学反応点とのバランスが良好となるため、電池のエネルギー効率を高めることができる。
炭素質繊維の全表面炭素原子数に対する表面酸性官能基数は、X線光電子分光法により測定することができる。X線光電子分光法は、ESCAあるいはXPSと略称されている。
1−2.炭素質固形物
本発明の炭素電極に用いられる炭素質固形物としては、電解液の浸透性が小さい固体状の炭素を用いることが好ましい。電解液の浸透性は、後述するように電解セルを組み、1500サイクルの電池試験を行った後にも電解液の炭素質固形物に浸透していなければ、充分に小さい電解液の浸透性を有するものとして判別することができる。
このような炭素質固形物としては、例えば、膨張黒鉛シートを用いることが好ましい。膨張黒鉛は、一般に、天然黒鉛やキッシュ黒鉛等の黒鉛結晶を硫酸や硝酸等の酸に浸漬してその層間に酸を挿入し、洗浄・中和処理を行うことにより得られる層状の材料を意味し、急速に加熱することによって、元の黒鉛結晶の100〜300倍に膨張する。これにより、綿状の黒鉛(膨張後の膨張黒鉛)からなるシート状の原料が得られる。本発明に用いられる膨張黒鉛シートは、膨張後の膨張黒鉛を加圧圧縮して形成されたものであることが好ましい。このような膨張黒鉛シートでは、黒鉛が扁平状になっているため、電解液の浸透を抑制することができる。前記膨張黒鉛の膨張の際の加熱温度は、400℃以上であることが好ましく、500℃以上であることがより好ましい。加熱温度の上限は特に限定されないが、例えば1200℃である。
膨張後の膨張黒鉛には、フェノール樹脂やゴム成分等のバインダーが混合されていてもよい。バインダーの混合率は、例えば、膨張黒鉛(バインダーを含む)の総量に対して、7質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下である。バインダーの混合率が少ないほど、得られる膨張黒鉛シートは導電性に優れるものとなるため好ましい。
本発明に用いられる膨張黒鉛シートは、膨張後の膨張黒鉛原料を、厚さ0.1〜3mm、かさ密度0.4〜2.0g/cm3となるように圧縮して加圧成型することにより得ることができる。これにより、得られる膨張黒鉛シートは、膨張により鱗片状の形状になった膨張黒鉛が圧縮されたものであるため、面方向に沿って層状の膨張黒鉛が並び、かつ、膨張黒鉛シートの厚さ方向に重なりあった状態となっているため、導電性に優れたものとなると共に、電解液の浸透性が抑制されたものとなる。膨張黒鉛シートとしては、東洋炭素社製のPERMA−FOIL(登録商標)が好適に用いられる。また、厚さ0.05〜1.5mm、かさ密度1.6〜2.1g/cm3とすることが好ましい。これにより、一層導電性、電解液の浸透抑制性に優れたものとなる。
シート状原料の加圧圧縮により得られたシート(以下、「原シート」という。)は、さらに、ハロゲンガス等によって、硫黄や鉄分を除去して純化シートとしてもよい。純化シートにおいては、硫黄、鉄分等の不純物の総量が10ppm以下であることが好ましく、より好ましくは7ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下である。また、不純物のうち硫黄が1ppm以下であることが好ましい。純化シート中の不純物濃度が上記範囲であると、炭素電極として用いた際に、レドックスフロー電池の部材や装置の劣化をより確実に抑制することができる。
本発明の炭素質固形物は、表面に、液不浸透層を有するものであることが好ましい。液不浸透層を有することにより、電解液の炭素質固形物への侵入を一層抑制することができ、導電性をさらに向上させることができる。液不浸透層は、導電性を有し、電解液の透過を抑制することができるものであれば特に限定されないが、例えば、炭素粒子、ゴムを含む液不浸透性組成物を炭素質固形物の表面に塗布し、溶剤を乾燥除去することにより形成することができる。液不浸透性組成物としては、後述する液不浸透性接着剤と同一のものを使用することが好ましい。
液不浸透性組成物の塗布方法としては、従来公知の方法を用いればよく、例えば、バーコーター等を用いた塗布方法を好ましく採用できる。炭素質固形物における液不浸透性組成物の付着量は、0.0001g/cm2以上であることが好ましく、より好ましくは0.0005g/cm2以上であり、さらに好ましくは0.0007g/cm2以上である。液不浸透性組成物の付着量が多いほど、液不浸透層の液不浸透性を強固にすることができる。また、液不浸透性組成物の付着量は、0.09g/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは0.07g/cm2以下であり、さらに好ましくは0.05g/cm2以下、特に好ましくは0.03g/cm2以下である。液不浸透性組成物の付着量が適度な範囲であると、液不浸透層の液不浸透性を維持しながら、炭素質固形物の導電性を向上できる。
液不浸透性組成物の乾燥方法としては、特に限定されず、従来公知の乾燥方法を採用することができる。例えば、80〜120℃(より好ましくは90〜110℃)に加熱して乾燥する方法などを好ましく採用することができる。
1−3.液不浸透性接着剤
本発明の炭素電極は、炭素質繊維集合体と炭素質固形物とが、液不浸透性接着剤により接着されているものである。炭素質繊維集合体と炭素質固形物の固定方法としてはC/Cコンポジットのような炭素質繊維表面全面への炭化物融着が従来知られていたが、この方法では、炭素質繊維表面全面に炭化物が融着してしまうため、電気化学反応場である炭素質繊維表面が著しく減少する。本発明の炭素電極では、液不浸透性接着剤を使用することにより、電気化学反応場である炭素質繊維表面を過度に減少させることなく、炭素質繊維集合体として元々接触していた部分のみを固定化することができる。
本発明の炭素電極に用いられる液不浸透性接着剤は、炭素粒子と、接着剤(ゴム)を含むものであることが好ましい。液不浸透性接着剤が、炭素粒子と、接着剤(ゴム)を含むものであると、接着剤の比抵抗を一層抑制できるため、炭素質繊維集合体と炭素質固形物との間の損失が効果的に低減される。さらに導電性維持のための金属が不要であるため、異種金属による副反応をも低減できる。
前記液不浸透性接着剤において、炭素粒子としては、黒鉛、および、カーボンブラックを好ましく用いることができる。炭素粒子の粒子径は、10nm〜500μmであることが好ましく、より好ましくは10nm〜100μmである。炭素粒子の粒子径が上記範囲であると、液不浸透性接着剤が、電気化学反応場である繊維表面を覆うことなく、遷移集合体と炭素質固形物の接点のみを効率的に固定することができる。
炭素粒子の含有量は、液不浸透性接着剤の固形分の全量(100質量%)中、40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。炭素粒子の含有量が多いほど、液不浸透層の導電率を一層向上することができる。また、炭素粒子の含有量は、液不浸透性接着剤の固形分の全量(100質量%)中、90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは80質量%以下である。炭素粒子の含有量が適度であると、液不浸透層の導電率を維持しながら、炭素質固形物の液不浸透性を向上できる。
前記黒鉛は、人造黒鉛、天然黒鉛のいずれでもよいが、性能安定性、入手容易性の観点からは天然黒鉛であることが好ましい。また扁平状の黒鉛粒子、例えば天然黒鉛粒子を用いるのが好ましい。
黒鉛の粒子径は、5μm〜500μmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜100μmである。黒鉛の粒子径が上記範囲であると、液不浸透性接着剤が、電気化学反応場である繊維表面を覆うことなく、繊維集合体と炭素質固形物との接点のみを効率的に固定することができる。
炭素粒子として黒鉛を使用する場合、その含有量は、液不浸透性接着剤の固形分の全量(100質量%)中、40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。黒鉛の含有量が多いほど、液不浸透層の導電率を一層向上することができる。また、黒鉛の含有量は、液不浸透性接着剤の固形分の全量(100質量%)中、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは70質量%以下である。黒鉛の含有量が適度であると、液不浸透層の導電性を維持しながら、炭素質固形物の液不浸透性を向上できる。
また、前記カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックが挙げられる。中でも、ファーネスブラックが好ましい。
カーボンブラックの粒子径は、10nm〜500nmであることが好ましい。カーボンブラックの粒子径が上記範囲であると、液不浸透性接着剤が、電気化学反応場である繊維表面を覆うことなく、繊維集合体と炭素質固形物との接点のみを効率的に固定することができる。
炭素粒子として、カーボンブラックを使用する場合、その含有量は、液不浸透性接着剤の固形分の全量(100質量%)中、5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは7質量%以上である。また、カーボンブラックの含有量は、液不浸透性接着剤の固形分の全量(100質量%)中、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは15質量%以下である。カーボンブラックの含有量が前記範囲にあると、炭素質繊維集合体と炭素質固形物との間の損失を効果的に低減することができる。
また、液不浸透性接着剤において、黒鉛及びカーボンブラックを使用する場合、カーボンブラックの含有量は、黒鉛の含有量1質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上である。また、0.5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.4質量部以下である。黒鉛とカーボンブラックの含有量の割合が上記範囲であると、炭素質繊維集合体と炭素質固形物との間の損失を効果的に低減することができる。
また、前記液不浸透性接着剤において、ゴムの種類は特に限定されないが、黒鉛、カーボンブラックとの親和性に優れることから、ゴムであることが好ましい。ゴムとしては、具体的には、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリイソブチレンゴム等の主鎖に不飽和結合を含む高分子からなるゴム;エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム等の主鎖に不飽和結合を含まない高分子からなるゴム;等が挙げられる。中でも、炭素粒子との親和性の観点から、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
液不浸透性接着剤中、ゴムの含有量は、液不浸透性接着剤の固形分の全量(100質量%)中、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上である。ゴムの含有量が多いほど、液不浸透層の液不浸透性をさらに向上できる。また、ゴムの含有量は、液不浸透性接着剤の固形分の全量(100質量%)中、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下である。ゴムの含有量が適度であると液不浸透層の液不浸透性を維持しながら、炭素質固形物の導電性をさらに向上できる。
また、液不浸透性接着剤中、ゴムの含有量は、炭素粒子の含有量1質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.03質量部以上であり、さらに好ましくは0.05質量部以上である。ゴムの含有量が多いほど、液不浸透層の液不浸透性を向上できる。また、ゴムの含有量は、炭素粒子の含有量1質量部に対して、0.25質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以下であり、さらに好ましくは0.15質量部以下である。ゴムの含有量が適度であると、液不浸透性を維持したまま、液不浸透層の導電性を向上できる。
液不浸透性接着剤は、さらに、溶剤を含むものであることが好ましい。溶剤としては、乾燥除去が容易な溶剤であれば特に制限なく用いることができ、このような溶剤としては、例えば、水;アミド系溶剤;エステル系溶剤;ケトン系溶剤;エーテル系溶剤;キシレン、トルエン等の芳香族系溶剤;カーボネート系溶剤;等が挙げられる。中でも、芳香族系溶剤が好ましく、キシレン、トルエン等が好ましい。
溶剤の含有量は、液不浸透性接着剤の全量に対して、60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上である。溶剤の含有量が多いほど、塗布操作が容易となる。また、溶剤の含有量は、液不浸透性接着剤の全量に対して、95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは90質量%以下である。溶剤の含有量が少ないほど、溶剤の乾燥除去に要する時間が短くなり、強固な液不浸透層を形成することができる。
1−4.炭素電極の製造方法
本発明の炭素電極は、炭素質繊維集合体と、炭素質固形物とを、液不浸透性接着剤を用いて接着し、80℃以上200℃以下の温度で熱処理することにより製造される。本発明の炭素電極は、炭素質繊維集合体と、炭素質固形物とを、液不浸透性接着剤を用いて接着しているため、接着後の炭素化処理が不要であり、熱処理温度を低減できる。その結果、炭素質繊維集合体表面を電気化学反応に適した状態に維持できるとともに、工業的にも有利である。
炭素質繊維集合体と炭素質固形物とを、液不浸透性接着剤により接着する際には、液不浸透制接着剤を炭素質繊維集合体または炭素質固形物に塗布する。液不浸透性接着剤の塗布方法としては、従来公知の方法を用いればよく、例えば、バーコーター等を用いた塗布方法を好ましく採用できる。炭素質固形物における液不浸透性接着剤の付着量は、0.0001g/cm2以上であることが好ましく、より好ましくは0.0005g/cm2以上であり、さらに好ましくは0.0007g/cm2以上である。液不浸透性接着剤の付着量が多いほど、炭素質繊維集合体と炭素質固形物とを強固に接着することができる。また、液不浸透性接着剤の付着量は、0.09g/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは0.05g/cm2以下であり、さらに好ましくは0.01g/cm2以下である。液不浸透性接着剤の付着量が適度な範囲であると、炭素質繊維集合体と炭素質固形物とを強固に接着しながら、界面抵抗を効果的に低減できる。適宜圧力をかけて接着しても良い。
特に、炭素質繊維集合体の空隙率が低い(例えば90%未満、より好ましくは87%以下)場合、液不浸透性接着剤の付着量は、0.05g/cm2以下でもよく、0.03g/cm2以下でもよい。また、炭素質繊維集合体の空隙率が高い(例えば90%以上)場合、液不浸透性接着剤の付着量は、0.01g/cm2以上であることが好ましく、より好ましくは0.05g/cm2以上であり、さらに好ましくは0.07g/cm2以上である。
炭素質繊維集合体と、炭素質固形物とを接着した後、80℃以上200℃以下の温度で加熱処理する。これにより、液不浸透性接着剤に溶剤が含まれている場合にも、溶剤が除去乾燥され、強固に接着することができる。乾燥温度は、より好ましくは80℃以上、120℃以下であり、さらに好ましくは90℃以上、110℃以下である。加熱手段は、従来公知の加熱手段を採用することができる。加熱時間は、特に限定されないが、例えば10分以上10時間以下であることが好ましく、より好ましくは20分以上5時間以下であり、さらに好ましくは50分以上3時間以下である。
2.レドックスフロー電池
本発明の炭素電極は、水溶液系電解液を用いるレドックスフロー電池に使用される。レドックスフロー電池は、前述のように、例えば対向して配設された一対の集電板(炭素質固形物)間に隔膜が配設され、該集電板と隔膜との間に少なくとも一方に多孔電極材(炭素質繊維集合体)が圧縮挟持され、多孔電極材は活物質を含有する水溶液系電解液を含んだ構造を有する電解セルを備える。図1の概略図を例に取ると、レドックスフロー電池において、電解セルECは、外部液路12,13を通じて電解液タンク(正極電解液タンク6、負極電解液タンク7)と接続され、ポンプ8,9によって電解液(水溶液系電解液)が循環される。レドックスフロー電池は、電解セルの外側に筺体を備えていてもよい。レドックスフロー電池(電解セル)に用いられる構成部品(隔膜、筺体、通液路、ポンプ等)としては、従来公知のものを特に制限なく使用することができる。
特に、前記隔膜としては、イオン交換膜を用いることが好ましい。イオン交換膜としては、カチオンのみを透過する陽イオン交換膜が好ましく、例えば、スルホ基等の陰イオン性基を有する陽イオン交換膜であることが好ましい。陰イオン性基の含有量は、0.1〜5.0meq/gであることが好ましい。また、イオン交換膜の厚さは、5〜300μmであることが好ましい。
また、多孔電極材(炭素質繊維集合体)の圧縮度合は、図2に示されるスペーサー2によって調整することができる。スペーサーとしては、電気化学反応を阻害しない材料であれば、特に限定なく用いることができ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))等を用いることができる。スペーサーの厚みは、適宜調整できるが、例えば、0.1mm以上、10mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上、5mm以下である。
本発明のレドックスフロー電池には、前記電解セルを単独で使用し、あるいは2以上の電解セルを積層してもよい。電解セルの積層は、正極電解液タンク6、負極電解液タンク7に接続する外部液路12、13を、をれぞれ、電解セルの積層数に分岐させ、分岐した外部液路12、13のそれぞれを液流入口10、液流出口11に接続することによって行うことができる(直列接続)。
前記水溶液系電解液としては、バナジウム系電解液、鉄−クロム系電解液、チタン−マンガン−クロム系電解液、クロム−クロム系電解液、鉄−チタン系電解液などが挙げられる。中でも、本発明の炭素電極における界面抵抗低減効果がより効果的に発揮される観点から、バナジウム系電解液が好ましい。
また、水溶液系電解液において、電解質濃度は、0.5mol/L以上、4.0mol/L以下であることが好ましく、より好ましくは1.0mol/L以上、3.0mol/L以下であり、さらに好ましくは1.5mol/L以上、2.5mol/L以下である。電解質濃度が高いほど、電池のエネルギー効率を向上できる。電解質濃度が適度な範囲であると、炭素質繊維表面の電気化学反応場とのバランスが良好であるため、一層優れた電池のエネルギー効率を得ることができる。
また、水溶液系電解液を用いるレドックスフロー電池としては、正極電解液に鉄の塩酸水溶液、負極電解液にクロムの塩酸水溶液を用いた鉄−クロム系レドックスフロー電池、バナジウムの硫酸水溶液を両極電解液に用いたバナジウム系レドックスフロー電池、チタン−マンガン−クロム系レドックスフロー電池、クロム−クロム系レドックスフロー電池、鉄−チタン系レドックスフロー電池等が挙げられる。
このうち、バナジウム系レドックスフロー電池は、より具体的には、正極電解液にオキシ硫酸バナジウムの硫酸酸性水溶液、負極電解液に硫酸バナジウムの硫酸酸性水溶液を使用するレドックスフロー電池を意味する。以下図2に基づいてバナジウム系レドックスフロー電池における電気化学反応について説明する。放電時、V2+を含む負極電解液は負極側の液流路4aに供給され、正極側の液流路4bにはV5+(実際には酸素を含むイオン)を含む正極電解液が供給される。このとき、負極側の液流路4aでは、多孔電極材5の細孔表面でV2+が電子を放出しV3+に酸化される。放出された電子は外部回路を通って正極側の多孔電極材5の細孔表面でV5+をV4+(実際には酸素を含むイオン)に還元する。この酸化還元反応に伴って、負極電解液の電荷は正に偏り、正極電解液の電荷が負に偏るので、SO4 2-が隔膜3を通って正極側から負極側に移動し、あるいは、H+がイオン交換膜3を通って負極側から正極側へ移動することによって電荷バランスが保たれる。充電時には前記放電時と逆の反応が進行する。
このバナジウム系レドックスフロー電池では、鉄−クロム系レドックスフロー電池に比べ、活物質と電極(多孔電極材)表面の反応速度が速くなり、多孔電極材中の内部抵抗の影響が低減される。このため、セル抵抗(R)において、多孔電極材と集電体との界面抵抗の寄与がより大きくなる。本発明の炭素電極は、多孔電極材(炭素質繊維集合体)と集電板(炭素質固形物)との界面抵抗を効果的に低減できるものであるため、バナジウム系レドックスフロー電池に適用したときに、特に有用なものとなるため好ましい。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的に示す、実施例等について説明する。本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
以下、本発明で使用した測定方法について説明する。
<炭素結晶性:(結晶面間隔d002)>
炭素質繊維集合体を、メノウ乳鉢で粒径10μm程度になるまで粉砕した。粉砕した炭素質繊維集合体に対して約5質量%のX線標準用高純度シリコン粉末を内部標準物質として混合した。これを試料セルに詰め、CuKα線を線源として、ディフラクトメーター法によって広角X線を測定した。得られた広角X線回折曲線の補正には、いわゆるローレンツ因子、偏光因子、吸収因子、原子散乱因子等に関する補正を行わず、簡便法を用いた。すなわち、広角X線回折曲線の<002>回折に相当するピークに関し、ベースラインからの実質強度をプロットし直して<002>補正強度曲線とした。
次に、この曲線のピーク高さの2/3の高さに引いた角度軸(横軸)に平行な線が補正強度曲線と交わる線分の中点を求め、中点の角度を内部標準で補正し、これを<002>回折角θの2倍とした。この<002>回折角θと、CuKαの波長λ(0.15418nm)とから、下記数式1のBraggの式によって<002>面間隔d002を求めた。
<炭素結晶性(c軸方向の結晶子の大きさLc)>
さらに、ピーク高さの1/2の高さに引いた角度軸(横軸)に平行な線が補正強度曲線と交わる線分の長さ(半値幅β)から数式2によってc軸方向の結晶子の大きさLcを求めた。
ここで、波長λ=0.15418nm、構造係数k1=0.9、θは<002>回折角を、βは<002>回折ピークの半値幅を示す。
<炭素質繊維の表面酸性官能基量>
まず炭素質繊維集合体を水洗、乾燥後、約1gを採取し、120℃で12時間真空乾燥して秤量し、1/10MのNaOH水溶液50ml中に浸漬して、25℃で2時間振盪した。次に、この液をガラス濾過器で濾過し、濾液20mlを正確に分取して1/10MのHCl水溶液により逆滴定した。滴定の際は0.1質量/体積%のメチルオレンジ溶液(和研薬社製)を指示薬として用いた。空試験(1/10MのNaOH水溶液の1/10MHCl水溶液による逆滴定)も同様に行った。炭素質繊維についての試験における滴定量から、空試験での滴定量を差し引いて、化学滴定による表面酸性官能基量(単位:meq/g)を求めた。
<表面酸性官能基数>
X線光電子分析装置として、島津ESCA750、解析にはESCAPAC760を用いた。
測定に際して、まず炭素質繊維集合体を硝酸銀のアセトン溶液に浸漬し、酸性官能基のプロトンを完全に銀置換した。アセトン及び水でそれぞれ洗浄して過剰の硝酸銀を除去した後、炭素質繊維集合体を6mm径に打ち抜き、導電性ペーストにより加熱式試料台に貼り付け、分析に供した。測定前に試料を120℃に加熱し、3時間以上真空脱気した。線源にはMgKα線(1253.6eV)を用い、装置内真空度は10-7torrとした。
測定は、C1s、N1s、Ag3dピークに対して行い、各ピークをESCAPAC760(J.H.Scofieldによる補正法に基づく)を用いて補正解析し、各ピーク面積を求めた。得られた面積について、C1sには1.00、Ag3dには10.68の相対強度を乗じることにより、これらの相対強度を乗じた面積比を原子数比として算出した。得られた原子数比に基づき、全表面炭素原子数に対する表面酸性官能基数を(表面銀原子数/表面炭素原子数)比を百分率(%)で算出した。
<炭素電極の電極特性>
炭素電極の電極特性は、以下の方法で評価した。
上下方向(通液方向)に10cm、幅方向に1.6cmの電極面積16cm2を有する小型の電解セルを作り、定電流密度で充放電を繰り返し、電極性能のテストを行った。正極電解液にはオキシ硫酸バナジウムの2mol/l硫酸水溶液を用い、負極電解液には硫酸バナジウムの2mol/l硫酸水溶液を用いた。電解液量は電解セル、配管に対して大過剰とした。液流量は毎分10mlとし、30℃で測定を行った。隔膜としては、特願2011−180351号の実施例2に記載のイオン交換膜を用いた。
(a)電流効率:ηI
充電に始まり、放電で終わる1サイクルのテストにおいて、電流密度を電極幾何面積当たり62.5mA/cm2(1000mA)として、1.7Vまでの充電に要した電気量をQ1クーロン、1.0Vまでの定電流放電で取りだした電気量をそれぞれQ2クーロンとし、数式3で電流効率ηIを求めた。
(b)セル抵抗(R)
負極電解液中のV3+をV2+に完全に還元するのに必要な理論電気量Qthに対して、1.15Vでの定電圧放電で取り出した電気量をQ3クーロン、放電により取りだした電気量の比を充電率とし、数式4で充電率を求めた。
充電率が50%のときの電気量に対応する充電電圧VC50、放電電圧VD50を電気量−電圧曲線からそれぞれ求め、数式5より電極幾何面積に対するセル抵抗(R)(Ω・cm2)を求めた。
(c)電圧効率:ηV
上記の方法で求めたセル抵抗(R)を用いて数式6の簡便法により電圧効率ηVを求めた。ここで、Iは定電流充放電における電流値0.4Aである。
ここで、Eは充電率50%のときのセル開回路電圧1.432V(実測値)である。
(d)エネルギー効率:ηE
前述の電流効率ηIと電圧効率ηVを用いて、数式7によりエネルギー効率ηEを求めた。
(e)充放電サイクルの経時変化
(a)、(b)、(c)、(d)の測定後、続いて同電解セルを用い、40mA/cm2の定電流密度でセル電圧1.0〜1.7V間で充放電を繰り返し実施した。規定サイクル経過後、再び(a)、(b)、(c)、(d)の測定を行い、ηE及びその初期からの1500サイクル後の変化量ΔηEを求めた。
<比較例1>
平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル繊維を空気中200〜300℃で耐炎化した。その後、該耐炎化繊維の短繊維(長さ約80mm)を用いてフェルト針SB#40(Foster Needle社)、パンチング密度250本/cm2でフェルト化して目付量600g/m2、厚み5.0mmの不織布を作製した。該不織布を、窒素ガス中で10℃/分の昇温速度で1300℃まで昇温し、この温度で1時間保持し炭化を行って冷却し、さらに空気中700℃で質量収率95%になるまで乾式酸化処理し、炭素質繊維不織布Aを得た。尚、炭素結晶面間隔d002は0.353nm、c軸方向の結晶子の大きさは1.6nm、化学滴定による表面酸性官能基量は0.03meq/g、XPSによる酸性基量の炭素に対する比は1.2%、空隙率は95.5%であった。
なお、集電板には、天然黒鉛100%である、商品名PERMA−FOIL(登録商標)(東洋炭素株式会社)をかさ密度2g/cm3、厚み0.5mmになるように作製し、表面に液不浸透性組成物を0.1g/cm2塗布して完全に被覆し、溶剤を乾燥除去した炭素質固形物を用いた。前記液不浸透性組成物としては、キシレン(溶剤)81質量%に、粒子径10μmの天然黒鉛11質量%、粒子径30nmのカーボンブラック2質量%、ゴム系バインダー(スチレン−ブタジエン−ゴム)6質量%を混合したものを使用した。
該不織布Aを集電板である炭素質固形物と液不浸透性接着剤で接着することなく、スペーサー厚2.5、3.0、3.5mmとして電解セルを作製し、測定した電池性能結果(充放電サイクル2サイクル目のηI、ηV、ηEと1500サイクル目の低下量ΔηE)を表1に示す。また、スペーサー厚と2サイクル目のセル抵抗(R)との関係を図3に示す。なお、炭素質繊維集合体の圧縮状態における空隙率は、スペーサー厚2.5mmのときは91%、スペーサー厚3.0mmのときは92.5%、スペーサー厚3.5mmのときは93.6%であった。
前記電解セルにおいて、スペーサーとしてはポリテトラフルオロエチレンシートを使用し、隔膜としては上記電極特性の測定の際に用いたものと同じイオン交換膜を用いた。
<参考例1>
商品名PERMA−FOIL(登録商標)(東洋炭素株式会社)をかさ密度2g/cm3、厚み0.5mmになるように作製した炭素質固形物について、表面に液不浸透性組成物を付着量0.002g/cm2塗布して完全に被覆したものとそうでないもののみを用いて(炭素質繊維集合体を用いずに)それぞれ電解セルを組み、1500サイクルの電池試験を行ったところ、表面に液不浸透性組成物を塗布した電解セルは問題なかったが、塗布しなかった炭素質固形物を用いた電解セルでは電解液が炭素質固形物からにじみ出てており、液不浸透性が十分ではなかった。
<実施例1>
商品名PERMA−FOIL(登録商標)(東洋炭素株式会社)をかさ密度2g/cm3、厚み0.5mmになるように作製し、表面に液不浸透性組成物を付着量0.002g/cm2塗布して完全に被覆した炭素質固形物と、比較例1で得られた炭素質繊維不織布Aとを付着量0.002g/cm2の液不浸透性接着剤で接着した。前記液不浸透性接着剤としては、キシレン(溶剤)81質量%に、粒子径10μmの天然黒鉛11質量%、粒子径30nmのカーボンブラック2質量%、ゴム系バインダー(スチレン−ブタジエン−ゴム)6質量%を混合したものを使用した。100℃で24時間の乾燥することで液不浸透性接着剤に含まれていた有機溶剤を完全に除去し、一体化炭素電極Bを得た。炭素質繊維不織布Aの空隙率には変化はなかった。該一体化炭素電極Bについて、スペーサー厚2.5、3.0、3.5mmとして電解セル(スペーサー:ポリテトラフルオロエチレンシート、隔壁:比較例1と同一のイオン交換膜)を作製し、測定した電池性能結果(充放電サイクル2サイクル目のηI、ηV、ηEと1500サイクル目の低下量ΔηE)を表1に示す。また、スペーサー厚と2サイクル目のセル抵抗(R)との関係を図3に示す。なお、炭素質繊維集合体の圧縮状態における空隙率は、スペーサー厚2.5mmのときは91%、スペーサー厚3.0mmのときは92.5%、スペーサー厚3.5mmのときは93.6%であった。
スペーサー厚が上がるにつれて、性能差が大きくなり、スペーサー厚3.5mmでは、比較例1に比べて、実施例1のエネルギー効率ηEは1.7%高くなり、低下量も4.5%小さくなった。
<比較例2>
平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル繊維を空気中200〜300℃で耐炎化した後、該耐炎化繊維の短繊維(長さ約80mm)を用いてフェルト針SB#40(Foster Needle社)、パンチング密度250本/cm2でフェルト化して目付量400g/m2、厚み4.2mmの不織布を作製した。該不織布を、窒素ガス中で10℃/分の昇温速度で1300℃まで昇温し、この温度で1時間保持し炭化を行って冷却し、さらに空気中700℃で質量収率95%になるまで乾式酸化処理し、炭素質繊維不織布Cを得た。尚、炭素結晶面間隔d002は0.353nm、c軸方向の結晶子の大きさは1.6nm、化学滴定による表面酸性官能基量は0.03meq/g、XPSによる酸性基量の炭素に対する比は1.2%、空隙率は95.6%であった。該不織布Cと集電板である炭素質固形物とを液不浸透性接着剤で接着することなく、スペーサー厚2.0、2.2、2.5mmとして電解セル(スペーサー:ポリテトラフルオロエチレンシート、隔壁:比較例1と同一のイオン交換膜)を作製し、測定した電池性能結果(充放電サイクル2サイクル目のηI、ηV、ηEと1500サイクル目の低下量ΔηE)を表2に示す。また、スペーサー厚と2サイクル目のセル抵抗(R)との関係を図4に示す。なお、炭素質繊維集合体の圧縮状態における空隙率は、スペーサー厚2.0mmのときは90.8%、スペーサー厚2.2mmのときは91.6%、スペーサー厚2.5mmのときは92.6%であった。
<実施例2>
商品名PERMA−FOIL(登録商標)(東洋炭素株式会社)をかさ密度2g/cm3、厚み0.5mmになるように作製し、表面に液不浸透性組成物を付着量0.002g/cm2塗布して完全に被覆し溶剤を乾燥除去して炭素質固形物を得た。液不浸透性組成物としては、比較例1で使用したものと同一のものを使用した。
この炭素質固形物と、比較例2で得られた炭素質繊維不織布Cとを付着量0.002g/cm2の液不浸透性接着剤で接着した。液不浸透性接着剤は、実施例1で使用したものと同一のものを使用した。さらに、100℃で24時間の乾燥することで液不浸透性接着剤に含まれていた有機溶剤を完全に除去し、一体化炭素電極Dを得た。炭素質繊維不織布Cの空隙率には変化はなかった。該一体化炭素電極Dを、スペーサー厚2.0、2.2、2.5mmとして電解セル(スペーサー:ポリテトラフルオロエチレンシート、隔壁:比較例1と同一のイオン交換膜)を作製し、測定した電池性能結果(充放電サイクル2サイクル目のηI、ηV、ηEと1500サイクル目の低下量ΔηE)を表4に示す。また、スペーサー厚と2サイクル目のセル抵抗(R)との関係を図4に示す。なお、炭素質繊維集合体の圧縮状態における空隙率は、スペーサー厚2.0mmのときは90.8%、スペーサー厚2.2mmのときは91.6%、スペーサー厚2.5mmのときは92.6%であった。
スペーサー厚が上がるにつれて、性能差が大きくなり、スペーサー厚2.5mmでは、比較例2に比べて、実施例2のエネルギー効率ηEは2.1%高くなり、低下量も4.8%小さくなった。
<比較例3>
平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル繊維を空気中200〜300℃で耐炎化した後、該耐炎化繊維を撚り合わせて紡績糸とし、目付400g/m2、厚み1.0mmの平織物を作製した。該織物を、窒素ガス中で10℃/分の昇温速度で1300℃まで昇温し、この温度で1時間保持し炭化を行って冷却し、さらに空気中700℃で質量収率95%になるまで乾式酸化処理し、炭素質繊維織物Eを得た。尚、炭素結晶面間隔d002は0.353nm、c軸方向の結晶子の大きさは1.6nm、化学滴定による表面酸性官能基量は0.03meq/g、XPSによる酸性基量の炭素に対する比は1.2%、空隙率は85.3%であった。該織物Eと集電板である炭素質固形物とを液不浸透性接着剤で接着することなく、スペーサー厚1.0mmとして電解セル(スペーサー:ポリテトラフルオロエチレンシート、隔壁:比較例1と同一のイオン交換膜)を作製し、測定した電池性能結果(充放電サイクル2サイクル目のηI、ηV、ηEと1500サイクル目の低下量ΔηE)を表3に示す。なお、炭素質繊維集合体の厚みと、スペーサー厚とがともに1.0mmであったため、圧縮状態(電池に組み込まれた状態)における炭素質繊維集合体の空隙率は、85.3%で変化がなかった。
<実施例3>
商品名PERMA−FOIL(登録商標)(東洋炭素株式会社)をかさ密度2g/cm3、厚み0.5mmになるように作製し、表面に液不浸透性組成物を付着量0.002g/cm2塗布して完全に被覆し、液不浸透性組成物中の溶剤を乾燥除去して炭素質固形物を得た。液不浸透性組成物としては、比較例1で使用したものと同一のものを使用した。この炭素質固形物と、比較例3で得られた炭素質繊維織物Eとを付着量0.002g/cm2の液不浸透性接着剤で接着し、100℃で24時間の間乾燥することで液不浸透性接着剤に含まれていた有機溶剤を完全に除去し、一体化炭素電極Fを得た。炭素質繊維織物Eの空隙率には変化はなかった。該一体化炭素電極Fを、スペーサー厚1.0mmとして電解セル(スペーサー:ポリテトラフルオロエチレンシート、隔壁:比較例1と同一のイオン交換膜)を作製し、測定した電池性能結果(充放電サイクル2サイクル目のηI、ηV、ηEと1500サイクル目の低下量ΔηE)を表3に示す。なお、炭素質繊維集合体の厚みと、スペーサー厚とがともに1.0mmであったため、圧縮状態(電池に組み込まれた状態)における炭素質繊維集合体の空隙率は、85.3%で変化がなかった。
スペーサー厚1.0mmにおいて、比較例3に比べて、実施例3のエネルギー効率ηEは0.8%高くなり、低下量も4.2%小さくなった。
<実施例4>
液不浸透性接着剤の塗布量を付着量0.1g/cm2にした以外は実施例1と同様に処理をして、一体化炭素電極Gを得た。炭素質繊維不織布Cの空隙率には変化はなかった。該一体化炭素電極Gを、スペーサー厚3.5mmとして電解セル(スペーサー:ポリテトラフルオロエチレンシート、隔壁:比較例1と同一のイオン交換膜)を作製し、測定した電池性能結果(充放電サイクル2サイクル目のηI、ηV、ηEと1500サイクル目の低下量ΔηE)を表4に示す。なお、炭素質繊維集合体の圧縮状態(スペーサー厚3.5mm)における空隙率は、93.6%であった。
スペーサー厚3.5mmにおいて、実施例1に比べて、実施例4のエネルギー効率ηEは1.9%悪くなった。
以上の結果から明らかなように、実施例1〜3の炭素電極は、電圧効率が高く、エネルギー効率に優れていた。しかも長期間使用時における接触抵抗の増加、すなわち導電性の低下を抑制でき、長期間の充放電サイクル時のエネルギー効率の経時変化も抑制される。
これに対し、接着されていない比較例1〜3では、電圧効率が低く、かつ長期間のエネルギー効率の変化も大きかった。また不浸透性接着剤の付着量が多い実施例4では電圧効率が低下することが確認された。
1 集電板
2 スペーサー
3 イオン交換膜
4a,4b 液流路
5 多孔電極材
6 正極電解液タンク
7 負極電解液タンク
8,9 ポンプ
10 液流入口
11 液流出口
12,13 外部液路

Claims (7)

  1. 水溶液系電解液を用いるレドックスフロー電池に使用される炭素電極であって、
    炭素質繊維集合体と炭素質固形物とを有し、
    炭素質繊維集合体と炭素質固形物が、液不浸透性接着剤により接着されていることを特徴とする炭素電極。
  2. 液不浸透性接着剤は、炭素粒子と、バインダーとを含むものである請求項1に記載の炭素電極。
  3. 前記液不浸透性接着剤の付着量が、0.09g/cm2以下である請求項1または2に記載の炭素電極。
  4. 炭素質繊維集合体は、70%以上の空隙を有するものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素電極。
  5. 炭素質固形物は、1g/cm3以上のかさ密度を有するものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭素電極。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭素電極の製造方法であって、
    炭素質繊維集合体と、炭素質固形物とを、液不浸透性接着剤を用いて接着し、80℃以上200℃以下の温度で熱処理することを特徴とする炭素電極の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭素電極を使用したことを特徴とするレドックスフロー電池。
JP2014010253A 2014-01-23 2014-01-23 一体化炭素電極 Pending JP2015138692A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014010253A JP2015138692A (ja) 2014-01-23 2014-01-23 一体化炭素電極

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014010253A JP2015138692A (ja) 2014-01-23 2014-01-23 一体化炭素電極

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2015138692A true JP2015138692A (ja) 2015-07-30

Family

ID=53769558

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014010253A Pending JP2015138692A (ja) 2014-01-23 2014-01-23 一体化炭素電極

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2015138692A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017033757A (ja) * 2015-07-31 2017-02-09 東洋紡株式会社 レドックス電池用炭素電極材
JPWO2018116467A1 (ja) * 2016-12-22 2019-10-24 住友電気工業株式会社 セルフレーム、セルスタック、およびレドックスフロー電池
CN113544888A (zh) * 2019-03-13 2021-10-22 东洋纺株式会社 碳电极材料和氧化还原电池
CN113544887A (zh) * 2019-03-13 2021-10-22 东洋纺株式会社 氧化还原液流电池用碳电极材料及具备其的氧化还原液流电池
CN113574707A (zh) * 2019-03-13 2021-10-29 东洋纺株式会社 碳电极材料和氧化还原电池

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01109663A (ja) * 1987-10-23 1989-04-26 Mitsubishi Plastics Ind Ltd 電池用電極板
JPH06290796A (ja) * 1993-03-30 1994-10-18 Shin Etsu Polymer Co Ltd 2次電池用反応電極層付双極板
JP2001196071A (ja) * 2000-01-12 2001-07-19 Toyobo Co Ltd 炭素電極材集合体及びその製造方法
JP2013527964A (ja) * 2009-12-31 2013-07-04 エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア レドックスフローバッテリーにおいて使用するための複合積層材料

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01109663A (ja) * 1987-10-23 1989-04-26 Mitsubishi Plastics Ind Ltd 電池用電極板
JPH06290796A (ja) * 1993-03-30 1994-10-18 Shin Etsu Polymer Co Ltd 2次電池用反応電極層付双極板
JP2001196071A (ja) * 2000-01-12 2001-07-19 Toyobo Co Ltd 炭素電極材集合体及びその製造方法
JP2013527964A (ja) * 2009-12-31 2013-07-04 エスゲーエル カーボン ソシエタス ヨーロピア レドックスフローバッテリーにおいて使用するための複合積層材料

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
シリコーンゴムの耐薬品性, JPN6017024281, 2011, ISSN: 0003589451 *

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017033757A (ja) * 2015-07-31 2017-02-09 東洋紡株式会社 レドックス電池用炭素電極材
JPWO2018116467A1 (ja) * 2016-12-22 2019-10-24 住友電気工業株式会社 セルフレーム、セルスタック、およびレドックスフロー電池
CN113544888A (zh) * 2019-03-13 2021-10-22 东洋纺株式会社 碳电极材料和氧化还原电池
CN113544887A (zh) * 2019-03-13 2021-10-22 东洋纺株式会社 氧化还原液流电池用碳电极材料及具备其的氧化还原液流电池
CN113574707A (zh) * 2019-03-13 2021-10-29 东洋纺株式会社 碳电极材料和氧化还原电池
CN113544888B (zh) * 2019-03-13 2023-08-11 东洋纺Mc株式会社 碳电极材料和氧化还原电池
CN113574707B (zh) * 2019-03-13 2024-01-12 东洋纺Mc株式会社 碳电极材料和氧化还原电池

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6617464B2 (ja) レドックス電池用炭素電極材
JP6786776B2 (ja) レドックス電池用電極材の製造方法
JP7049350B2 (ja) レドックスフロー電池用炭素電極材およびその製造方法
JP7088197B2 (ja) レドックスフロー電池用炭素電極材およびその製造方法
JP3601581B2 (ja) バナジウム系レドックスフロー電池用炭素電極材
JP2017027918A (ja) レドックスフロー電池用電極材
JP2015138692A (ja) 一体化炭素電極
JP2017033757A (ja) レドックス電池用炭素電極材
JP2017027920A (ja) レドックス電池用電極材
WO2020184451A1 (ja) マンガン/チタン系レドックスフロー電池用炭素電極材
CN113574707B (zh) 碳电极材料和氧化还原电池
JP6809257B2 (ja) 炭素質材料およびこれを用いた電池
CN113544888B (zh) 碳电极材料和氧化还原电池
JP4366802B2 (ja) 炭素電極材集合体及びその製造方法
JP2001085028A (ja) 炭素電極材集合体
WO2020184664A1 (ja) 炭素電極材およびそれを備えたレドックス電池
JP3589285B2 (ja) レドックスフロー電池用炭素電極材
JP2001085022A (ja) 炭素電極材及び炭素電極材集合体
US20220140355A1 (en) Carbon electrode material for redox flow battery and redox flow battery provided with the same
WO2020184450A1 (ja) マンガン/チタン系レドックスフロー電池用炭素正極電極材およびそれを備えた電池
JP2020149858A (ja) レドックス電池用正極電極材およびそれを備えたレドックス電池
JP2001085024A (ja) 炭素電極材集合体
JP2001085026A (ja) 炭素電極材集合体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20161012

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170628

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170704

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170831

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180109

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20180228

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180424

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20180821