JP3589285B2 - レドックスフロー電池用炭素電極材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶液系電解液を使用するレドックスフロー電池用の炭素電極材に関するものであり、特に、バナジウム系レドックスフロー電池に有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電極は電池の性能を左右するものとして重点的に開発されている。電極には、それ自体が活物質とならず、活物質の電気化学的反応を促進させる反応場として働くタイプのものがあり、このタイプには導電性や耐薬品性などから炭素材料がよく用いられる。特に電力貯蔵用に開発が盛んなレドックスフロー電池の電極には、耐薬品性があり、導電性を有し、かつ通液性のある炭素繊維集合体が用いられている。
【0003】
レドックスフロー電池は、正極に鉄の塩酸水溶液、負極にクロムの塩酸水溶液を用いたタイプから、起電力の高いバナジウムの硫酸水溶液を両極に用いるタイプに替わり、高エネルギー密度化されたが、最近さらに活物質濃度を高める開発が進み、一段と高エネルギー密度化が進んでいる。
【0004】
レドックスフロー型電池の主な構成は、図1に示すように電解液を貯える外部タンク6,7と電解槽ECからなり、ポンプ8,9にて活物質を含む電解液を外部タンク6,7から電解槽ECに送りながら、電解槽ECに組み込まれた電極上で電気化学的なエネルギー変換、すなわち充放電が行われる。
【0005】
一般に、充放電の際には、電解液を外部タンクと電解槽との間で循環させるため、電解槽は図1に示すような液流通型構造をとる。該液流通型電解槽を単セルと称し、これを最小単位として単独もしくは多段積層して用いられる。液流通型電解槽における電気化学反応は、電極表面で起こる不均一相反応であるため、一般的には二次元的な電解反応場を伴うことになる。電解反応場が二次元的であると、電解槽の単位体積当たりの反応量が小さいという難点がある。
【0006】
そこで、単位面積当りの反応量、すなわち電流密度を増すために電気化学反応場の三次元化が行われるようになった。図2は、三次元電極を有する液流通型電解槽の分解斜視図である。該電解槽では、相対する二枚の集電板1,1間にイオン交換膜3が配設され、イオン交換膜3の両側にスペーサ2によって集電板1,1の内面に沿った電解液の流路4a,4bが形成されている。該流通路4a,4bの少なくとも一方には炭素繊維集合体等の電極材5が配設されており、このようにして三次元電極が構成されている。なお、集電板1には、電解液の液流入口10と液流出口11とが設けられている。
【0007】
正極電解液にオキシ硫酸バナジウム、負極電解液に硫酸バナジウムの各々硫酸酸性水溶液を用いたレドックスフロー型電池の場合、放電時には、V2+を含む電解液が負極側の液流路4aに供給され、正極側の流路4bにはV5+(実際には酸素を含むイオン)を含む電解液が供給される。負極側の流路4aでは、三次元電極5内でV2+が電子を放出しV3+に酸化される。放出された電子は外部回路を通って正極側の三次元電極内でV5+をV4+(実際には酸素を含むイオン)に還元する。この酸化還元反応に伴って負極電解液中のSO4 2−が不足し、正極電解液ではSO4 2−が過剰になるため、イオン交換膜3を通ってSO4 2−が正極側から負極側に移動し電荷バランスが保たれる。あるいは、H+ がイオン交換膜を通って負極側から正極側へ移動することによっても電荷バランスを保つことができる。充電時には放電と逆の反応が進行する。
【0008】
バナジウム系レドックスフロー電池用電極材の特性としては、特に以下に示す性能が要求される。
【0009】
1)目的とする反応以外の副反応を起こさないこと(反応選択性が高いこと)、具体的には電流効率(ηI )が高いこと。
2)電極反応活性が高いこと、具体的にはセル抵抗(R)が小さいこと。すなわち電圧効率(ηV )が高いこと。
3)上記1)、2)に関連する電池エネルギー効率(ηE )が高いこと。
ηE =ηI ×ηV
4)くりかえし使用に対する劣化が小さいこと(高寿命)、具体的には電池エネルギー効率(ηE )の低下量が小さいこと。
【0010】
例えば、特開昭60−232669号公報には、X線広角解析より求めた<002>面間隔が、平均3.70Å以下であり、またc軸方向の結晶子の大きさが平均9.0Å以上の擬黒鉛微結晶を有し、かつ全酸性官能基量が少なくとも0.01meq/gである炭素質材料をレドックスフロー電池の電解槽用電極材として用いることが提案されている。
【0011】
また、特開平5−234612号公報には、ポリアクリロニトリル系繊維を原料とする炭素質繊維で、X線広角解析より求めた<002>面間隔が3.50〜3.60Åの擬黒鉛結晶構造を有し、炭素質材料表面の結合酸素原子数が炭素原子数の10〜25%となるような炭素質材をレドックスフロー電池の電解槽用電極材として用いることが提案されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭60−232669号公報、特開平5−234612号公報では、炭素質材料表面と電解液との間に有効な濡れ性を発現させるために、全酸性官能基量が0.01meq/g以上か、あるいはX線広角解析より求めた<002>面間隔が3.50Å以上、かつ炭素質材料表面の結合酸素原子数が炭素原子数の10%以上必要であったので、この条件を満たすために低い温度での炭素化を行わざるを得ず、そのため炭素の導電性を高められないという問題点があった。さらに炭素質材料表面と集電板との接触抵抗も官能基が多すぎるため高くなり、その結果セル抵抗が高くなり、高いエネルギー効率を得られないことも問題となった。また上述の理由から、炭素の結晶性を上げられないため、特に電解液が1.5mol/l以上のバナジウムイオンを含むレドックスフロー電池において、耐酸化性が充分ではなく、充放電サイクルの繰り返しに伴ってセル抵抗が増加し、エネルギー効率の変化(低下率)が大きいこと判明した。
【0013】
そこで、本発明の目的は、かかる事情に鑑み、電解槽の内部抵抗(セル抵抗)を低減して電池の総合効率を高めることができるレドックスフロー電池用炭素電極材を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究したところ、a軸方向の結晶子の大きさを特定の範囲に制御することにより、上記目的が達成できることを見出し、更に炭素電極材の表面酸性官能基量を従来より低く抑えることが有効なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明の炭素電極材は、水溶液系電解液を使用するバナジウム系レドックスフロー電池用の炭素電極材であって、重量平均分子量20000〜500000のポリアクリロニトリル繊維を原料とし、X線広角解析より求めたa軸方向の結晶子の大きさが30〜80Åであり、XPS表面分析より求めた表面酸性官能基量が全表面炭素原子数の0.2%以上0.8%以下であることを特徴とする。本発明の炭素電極材によると、炭素の結晶子が適度な大きさとなり、炭素電極材自体の導電性が向上し、これによりセル抵抗を小さくしてエネルギー効率を向上できると共に、結晶子の周囲のエッジ面への表面酸性官能基の良好な賦与が可能となり、活物質の良好な反応性が得られる。その結果、電極材自体の導電性を高めつつ、かつ程良い濡れ性を得ることで電解槽の内部抵抗の低減を図ることが可能となり、電圧効率を高めて電池エネルギー効率を高めることができる。
【0016】
また、XPS表面分析より求めた表面酸性官能基量が全表面炭素原子数の0.2%以上0.8%以下であるため、電極材表面の接触抵抗を低く抑えながら、水溶液系電解液との濡れ性を適度に付与することができ、上記の如き作用効果をより確実に得ることができる。本発明の炭素電極材は、バナジウム系レドックスフロー電池に用いられるものであるが、バナジウム系のレドックスフロー電池では、上記の電解液との濡れ性が比較的良好になるため、上記の如き作用効果がより顕著になる。また、当該電池では電極材を構成する繊維間や集電板に対する電極材表面の接触抵抗が特に問題になり易いため、上記作用効果を有する本発明の炭素電極材が特に有用なものとなる。
【0017】
一方、本発明の炭素電極材の製造方法は、重量平均分子量20000〜500000のポリアクリロニトリル繊維を耐炎化した後、1000〜1800℃で炭化処理を行い、これを乾式酸化処理して、X線広角解析より求めたa軸方向の結晶子の大きさが30〜80Åであり、XPS表面分析より求めた表面酸性官能基量が全表面炭素原子数の0.2%以上0.8%以下である、バナジウム系レドックスフロー電池用の炭素電極材を得るものである。この製造方法によると、重量平均分子量20000〜500000のポリアクリロニトリル繊維を原料として使用するため、実施例の結果が示すように、単繊維の比抵抗や電極性能が良好になる。つまり、この範囲より分子量が大きくなった場合、より低い焼成(炭化)温度でも所定のLaを得ることができるが、同時に結晶子の配向性が相対的に高くなる傾向にあり、単繊維の曲げ弾性率が高くなってセル接合時の圧縮弾性率が低下し、反面分子量が小さくなると焼成時に単繊維の結晶化が進まず、乱層構造が発達し導電性が向上しない傾向がある。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のレドックスフロー電池用炭素電極材は、炭素質材料からなり、その組織、微細構造等は特に限定されないが、電極表面積を大きくできるものが好ましい。具体的には、紡績糸、フィラメント集束糸、不織布、編地、織地、特殊編織物(特開昭63−200467号公報に開示されているようなもの)、あるいはこれらの混成組織からなる炭素質繊維集合体、又は多孔質炭素体、炭素−炭素複合体、粒子状炭素材料等を挙げることができる。これらのうち、炭素質繊維よりなるシート状のものが、取り扱いや加工性、製造性等の点から好ましい。
【0019】
シート状物等の目付量は、その組織にもよるが、隔膜と集電板に挟まれた充填状態の厚みを2〜3mmで使用する場合、100〜1000g/m2 、不織布組織の場合は200〜600g/m2 が望ましい。また片面に凹溝加工が施された不織布等が通液性から好んで用いられる。その場合の溝幅、溝深さは少なくとも0.3mm、好ましくは0.5mm以上が望ましい。炭素質繊維シートの厚みは上記充填状態の厚みより少なくとも大きいこと、不織布等の密度の低いものでは充填状態の厚みの1.5倍程度が望ましい。しかしながら、厚みが厚すぎると圧縮応力で膜を突き破ってしまうので、圧縮応力を1kgf/cm2 以下に設計するのが好ましい。
【0020】
なお、上記の炭素質繊維の平均繊維径は5〜20μm程度が好ましく、平均長さは30〜100mm程度が好ましい。
【0021】
炭素質繊維シートは、電池の中に圧接されて組み込まれ、その薄い隙間を電解液が流れるが、電解液の粘度が高い場合があるため、脱落しないように引張強度を0.1kg/cm2 以上にすることが形態保持のために望ましい。また集電板との接触抵抗を良くするために、不織布組織では隔膜、集電板に挟まれた充填層の密度を0.05g/cm3 以上に、電極面に対する反発力を0.1kgf/cm2 以上にすることが好ましい。
【0022】
さらに本発明の炭素電極材は、電極材としての本来必要な導電性と圧接型電解層用電極としてのセル接合性を両立するために、X線広角解析より求めたa軸方向の結晶子の大きさ(La)が30〜80Åで、かつXPS表面分析より求めた表面酸性官能基量が全表面炭素原子数の0.2%以上0.8%以下に調整される。
【0023】
a軸方向の結晶子の大きさとは、炭素の結晶子における網面の広がりを意味し、a軸方向の結晶子の大きさが30Å未満である場合、電池内部抵抗(セル抵抗)の内の電極材導電抵抗成分が無視できないようになり、その結果セル抵抗が増加し(電圧効率が低下し)、エネルギー効率が低下する。反面80Åより大きいと電解液の濡れ性を左右する親水基の賦与ができなくなり、活物質の反応性が著しく低下するため、電池の内部抵抗が高くなる。なおa軸方向の結晶子の大きさはX線広角解析にて得られる<10>面回折ピークの半値幅より算出される。
【0024】
また表面酸性官能基量は0.2%未満の場合には、電解液の濡れ性が悪く、セル抵抗が著しく増加する。これは、炭素原子そのものは疎水性であるため、親水基の酸性官能基が少ない場合には水をはじきやすいためと考えられる。反面0.8%を超える場合、官能基の存在が大きく影響し、電極材の繊維間接触および繊維−集電板間の導電性が阻害され好ましくない。なお、上記の表面酸性官能基量とは、含酸素官能基のうち硝酸銀処理によって銀イオン置換されうる水酸基やカルボキシル基の量を意味し、XPS表面分析によって検出される表面銀イオン量の表面炭素原子数に対する割合(百分率)として表す。
【0025】
本発明では、こうした結晶性と表面特性を有する炭素質材料は、緊張下200〜300℃の初期空気酸化(耐炎化)を経たポリアクリロニトリルを原料として用いて製造される。中でも、特にポリアクリロニトリルの重量平均分子量(Mw)を20000〜500000に調整されたものが耐炎化の原料として好ましい。分子量が大きくなった場合、より低い焼成(炭化)温度でも所定のLaを得ることができるが、同時に結晶子の配向性が相対的に高くなる傾向にあり、単繊維の曲げ弾性率が高くなってセル接合時の圧縮弾性率が低下し、反面分子量が小さくなると焼成時に単繊維の結晶化が進まず、乱層構造が発達し導電性が向上しない傾向がある。こうした所定の分子量を有するポリアクリロニトリル繊維は公知の方法で耐炎化される。
【0026】
耐炎化された原料は不活性雰囲気下1000〜1800℃で焼成され、擬黒鉛結晶構造を有する炭素材料となる。炭化温度は原料やその分子量によって結晶性が異なるので、温度には特に限定されず、原料に応じた炭化温度の最適化が必要である。つまり、Laは、原料の分子量と炭化温度の兼ね合い等により制御することができる。
【0027】
さらに所定の酸素濃度で乾式酸化処理し、必要があれば水素ガス存在下によって官能基を一部還元してもよい。乾式酸化については公知の方法が採用できるが、電極材に適度の表面酸性官能基量を得るためには、酸化処理後の重量収率にて90〜96%に調整することが望ましい。
【0028】
次に、本発明において採用されるa軸方向の結晶子の大きさ(La)、XPS表面分析、全酸性官能基量、単繊維の導電抵抗、電極性能の各測定法について説明する。
【0029】
1.a軸方向の結晶子の大きさ(La)
電極材料をメノウ乳鉢で、粒径10μm程度になるまで粉砕し、試料に対して約5重量%のX線標準用高純度シリコン粉末を内部標準物質として混合し、試料セルに詰め、CuKα線を線源として、ディフラクトメーター法によって広角X線を測定する。
【0030】
曲線の補正には、いわゆるローレンツ因子、偏光因子、吸収因子、原子散乱因子等に関する補正を行わず、次の簡便法を用いる。即ち、<10>回折に相当するピークのべースラインからの実質強度をプロットし直して<10>補正強度曲線を得る。この曲線のピーク高さの1/2の高さに引いた角度軸に平行な線が補正強度曲線と交わる線分の長さ(半値幅β)から数式1によって結晶子の大きさを求める。
【0031】
【数1】
ここで、波長λ=1.5418Å、構造係数k2=1.84、θは<10>回折角を、βは<10>回折ピークの半値幅を示す。
【0032】
2.XPS表面分析
ESCAあるいはXPSと略称されているX線光電子分光法の測定に用いる装置は島津ESCA750で、解析にはESCAPAC760を用いる。
【0033】
各試料を硝酸銀のアセトン溶液に浸漬し、酸性官能基のプロトンを完全に銀置換し、アセトン及び水でそれぞれ洗浄後、6mm径に打ち抜き、導電性ペーストにより加熱式試料台に貼り付け、分析に供する。予め、測定前に試料を12O℃に加熱し、3時間以上真空脱気する。線源にはMgKα線(1253.6eV)を用い、装置内真空度は10−7torrとする。
【0034】
測定はCls,Ag3dピークに対して行い、各ピークをESCAPAC760(J.H.Scofieldによる補正法に基づく)を用いて補正解析し、各ピーク面積を求める。得られた面積にClsについては1.00、Ag3dについては10.68の相対強度を乗じたものの比が原子数比であり、全表面炭素原子数に対する表面酸性官能基量は(表面銀原子数/表面炭素原子数)比を百分率(%)で算出する。
【0035】
3.単繊維の比抵抗
JIS R7601(1986)に記載の「6.7体積抵抗率」に従って測定する。
【0036】
4.電極性能
上下方向(通液方向)に1cm、幅方向に10cmの電極面積10cm2 を有する小型のセルを作り、定電流密度で充放電を繰り返し、電極性能のテストを行う。正極電解液には2mol/lのオキシ硫酸バナジウムの3mol/l硫酸水溶液を用い、負極電解液には2mol/lの硫酸バナジウムの3mol/l硫酸溶液を用いる。電解液量はセル、配管に対して大過剰とした.液流量は毎分6.2mlとし、30℃で測定を行う。
【0037】
(a)電流効率:ηI
充電に始まり、放電で終わる1サイクルのテストにおいて、電流密度を電極幾何面積当たり40mA/cm2 (400mA)として、1.7Vまでの充電に要した電気量をQ1 クーロン、1.0Vまでの定電流放電、およびこれに続く1.2Vでの定電圧放電で取りだした電気量をそれぞれQ2 、Q3 クーロンとし、数式2で電流効率ηI を求める。
【0038】
【数2】
(b)セル抵抗:R
負極液中のV3+をV2+に完全に還元するのに必要な理論電気量Qthに対して、放電により取りだした電気量の比を充電率とし、数式3で充電率を求める。
【0039】
【数3】
充電率が50%のときの電気量に対応する充電電圧VC50 、放電電圧VD50 を電気量−電圧曲線からそれぞれ求め、数式4より電極幾何面積に対するセル抵抗R(Ω・cm2 )を求める。
【0040】
【数4】
ここで、Iは定電流充放電における電流値0.4Aである。
【0041】
(c)電圧効率:ηV
上記の方法で求めたセル抵抗Rを用いて数式5の簡便法により電圧効率ηV を求める。
【0042】
【数5】
ここで、Eは充電率50%のときのセル開回路電圧1.432V(実測値)、Iは定電流充放電における電流値0.4Aである。
【0043】
(d)エネルギー効率:ηE
前述の電流効率ηI と電圧効率ηV を用いて、数式6によりエネルギー効率ηE を求める。
【0044】
【数6】
電流効率、電圧効率が高くなる程、エネルギー効率は高くなり、従つて充放電におけるエネルギーロスが小さく、優れた電極であると判断される。
【0045】
本発明の炭素電極材は、水溶液系電解液を使用するレドックスフロー電池に用いられるものである。当該レドックスフロー電池は、前述のように、例えば間隙を介した状態で対向して配設された一対の集電板間に隔膜が配設され、該集電板と隔膜との間に少なくとも一方に電極材が配設され、電極材は活物質を含んだ水溶液からなる電解液を含んだ構造を有する電解槽を備える。
【0046】
水溶液系電解液としては、前述の如きバナジウム系電解液の他、鉄−クロム系、チタン−マンガン系、マンガン−クロム系、クロム−クロム系、鉄−チタン系などが挙げられるが、バナジウム系電解液が好ましい。本発明の炭素電極材は、特に、粘度が25℃にて0.005Pa・s以上であるバナジウム系電解液、あるいは1.5mol/l以上のバナジウムイオンを含むバナジウム系電解液を使用するレドックスフロー電池に用いるのが有用である。
【0047】
【実施例】
以下、本発明の構成及び効果を具体的に示す、実施例等について説明する。
【0048】
(実施例1)
アクリロニトリル98モル%−メタクリル酸メチル2モル%から構成される重量平均分子量75000の平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル繊維を空気中200〜300℃で耐炎化した後、該耐炎化繊維の短繊維(長さ約80mm)を用いてフェルト化して目付量400g/m2 、厚み4.0mmの不織布を作成した。該不織布にアルゴンガスを絶えず600cc/min/m2 吹き付けた状態で100゜C/分の昇温速度で1 400℃まで昇温し、この温度で1時間保持し炭化を行って冷却し、続いて空気中700℃で重量収率93%になるまで処理し炭素質繊維不織布を得た。XPS表面分析結果と単繊維の比抵抗および電極性能を表1に示す。
【0049】
(比較例4)
アクリロニトリル98モル%−メタクリル酸メチル2モル%から構成される重量平均分子量75000の平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル繊維を空気中200〜300℃で耐炎化した後、該耐炎繊維の短繊維(長さ約80mm)を用いてフェルト化して目付量400g/m2 、厚み4.0mmの不織布を作成した。該不織布にアルゴンガスを絶えず600cc/min/m2 吹き付けた状態で100℃/分の昇温速度で1400℃まで昇温し、この温度で1時間保持し炭化を行って冷却し、続いて空気中700℃で重量収率90%になるまで処理し炭素質繊維不織布を得た。XPS表面分析結果と単繊維の比抵抗および電極性能を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
アクリロニトリル98モル%−メタクリル酸メチル2モル%から構成される重量平均分子量75000の平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル繊維を空気中200〜300℃で耐炎化した後、該耐炎化繊維の短繊維(長さ約80mm)を用いてフェルト化して目付量400g/m2 、厚み4.0mmの不織布を作成した。該不織布にアルゴンガスを絶えず600cc/min/m2 吹き付けた状態で100℃/分の昇温速度で1 600℃まで昇温し、この温度で1時間保持し炭化を行って冷却し、続いて空気中700℃で重量収率93%になるまで処理し炭素質繊維不織布を得た。XPS表面分析結果と単繊維の比抵抗および電極性能を表1に示す。
【0051】
(実施例4)
アクリロニトリル97モル%−酢酸ビニル3モル%から構成される重量平均分子量200000の平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル繊維を空気中200〜300℃で耐炎化した後、該耐炎化繊維の短繊維(長さ約80mm)を用いてフェルト化して目付量400g/m2 、厚み4.0mmの不織布を作成した。該不織布にアルゴンガスを絶えず600cc/min/m2 吹き付けた状態で100℃/分の昇温速度で1 400℃まで昇温しこの温度で1時間保持し炭化を行って冷却し、続いて空気中700℃で重量収率93%になるまで処理し炭素質繊維不織布を得た。XPS表面分析結果と単繊維の比抵抗および電極性能を表1に示す。
【0052】
(実施例5)
アクリロニトリル97モル%−酢酸ビニル3モル%から構成される重量平均分子量200000の平繊維径16μmのポリアクリロニトリル繊維を空気中200〜300℃で耐炎化した後、該耐炎化繊維の短繊維(長さ約80mm)を用いてフェルト化して目付量400g/m2 、厚み4.0mmの不織布を作成した。該不織布にアルゴンガスを絶えず600cc/min/m2 吹き付けた状態で100℃/分の昇温速度で1 600℃まで昇温し、この温度で1時間保持し炭化を行って冷却し、続いて空気中700℃で重量収率95%になるまで処理し炭素質繊維不織布を得た。XPS表面分析結果と単繊維の比抵抗および電極性能を表1に示す。
【0053】
(比較例1)
アクリロニトリル98モル%−メタクリル酸メチル2モル%から構成される重量平均分子量10000の平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル繊維を空気中200〜300℃で耐炎化した後、該耐炎化繊維の短繊維(長さ約80mm)を用いてフェルト化して目付量400g/m2 、厚み4.0mmの不織布を作成した。該不織布にアルゴンガスを絶えず600cc/min/m2 吹き付けた状態で100℃/分の昇温速度で1 600℃まで昇温し、この温度で1時間保持し炭化を行って冷却し、続いて空気中700℃で重量収率93%になるまで処理し炭素質繊維不織布を得た。XPS表面分析結果と単繊維の比抵抗および電極性能を表1に示す。
【0054】
(比較例2)
アクリロニトリル98モル%−メタクリル酸メチル2モル%から構成される重量平均分子量10000の平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル繊維を空気中200〜300℃で耐炎化した後、該耐炎化繊維の短繊維(長さ約80mm)を用いてフェルト化して目付量400g/m2 、厚み4.0mmの不織布を作成した。該不織布にアルゴンガスを絶えず600cc/min/m2 吹き付けた状態で100℃/分の昇温速度で1 400℃まで昇温し、この温度で1時間保持し炭化を行って冷却し、続いて空気中700℃で重量収率97%になるまで処理し炭素質繊維不織布を得た。XPS表面分析結果と単繊維の比抵抗および電極性能を表1に示す。
【0055】
(比較例3)
アクリロニトリル98モル%−メタクリル酸メチル2モル%から構成される重量平均分子量1000000の平均繊維径16μmのポリアクリロニトリル繊維を空気中200〜300℃で耐炎化した後、該耐炎化繊維の短繊維(長さ約80mm)を用いてフェルト化して目付量400g/m2 、厚み4.0mmの不織布を作成した。該不織布にアルゴンガスを絶えず600cc/min/m2 吹き付けた状態で100℃/分の昇温速度で1 400℃まで昇温し、この温度で1時間保持し炭化を行って冷却し、続いて空気中700℃で重量収率93%になるまで処理し炭素質繊維不織布を得た。XPS表面分析結果と単繊維の比抵抗および電極性能を表1に示す。
【0056】
【表1】
【発明の効果】
本発明の電極材を用いることにより水溶液系電解槽を利用する分野において電極材の単繊維の導電性を高めかつ程良い濡れ性を得ることによって電解槽の内部抵抗の低減を図ることが可能となり電圧効率を高める事ができ、電池エネルギー効率を高めることができる。このことは特にバナジウム系レドックスフロー型電池にとって効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】バナジウム系レドックスフロー電池の概略図
【図2】三次元電極を有するバナジウム系レドックスフロー電池の電解槽の分解斜図
【符号の説明】
1 集電板
2 スペーサ
3 イオン交換膜
4a,4b 通液路
5 電極材
6 外部液タンク(正極側)
7 外部液タンク(負極側)
8,9 ポンプ
10 液流入口
11 液流出口
Claims (2)
- 水溶液系電解液を使用するバナジウム系レドックスフロー電池用の炭素電極材であって、重量平均分子量20000〜500000のポリアクリロニトリル繊維を原料とし、X線広角解析より求めたa軸方向の結晶子の大きさが30〜80Åであり、XPS表面分析より求めた表面酸性官能基量が全表面炭素原子数の0.2%以上0.8%以下であることを特徴とする炭素電極材。
- 重量平均分子量20000〜500000のポリアクリロニトリル繊維を耐炎化した後、1000〜1800℃で炭化処理を行い、これを乾式酸化処理して、X線広角解析より求めたa軸方向の結晶子の大きさが30〜80Åであり、XPS表面分析より求めた表面酸性官能基量が全表面炭素原子数の0.2%以上0.8%以下である、バナジウム系レドックスフロー電池用の炭素電極材を得る炭素電極材の製造方法。
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