JP2023069804A - レドックスフロー電池用電極材およびそれを備えたレドックスフロー電池 - Google Patents

レドックスフロー電池用電極材およびそれを備えたレドックスフロー電池 Download PDF

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Abstract

【課題】充放電時のセル抵抗を低下でき、電池エネルギー効率に優れた炭素電極材レドックスフロー電池用電極材を提供する。【解決手段】本発明のレドックスフロー電池用電極材は、炭素繊維、炭化バインダー、及び炭素粒子を含み、前記炭化バインダーに幅1~50μm、長さ100μm以上の凹部を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、レドックスフロー電池に用いられる電極材に関する。
レドックスフロー電池は、セル内に電解液を循環(フロー)させつつ、レドックスイオンの水溶液中での酸化還元を利用した電池であり、液相のみでのマイルドな反応であるため、安全性の高い大容量蓄電池である。レドックスフロー電池に用いられる電解液として、酸化還元により価数変化できる鉄、クロム等の水溶液を用いることができる。代表的には、正極電解液にオキシ硫酸バナジウム、負極電解液に硫酸バナジウムの各々硫酸酸性水溶液が広く使用される。
安全性が高く、スケールアップメリットに優れるレドックスフロー電池であるが、普及のためには電池の低コスト化が強く望まれている。一般的には、安価な汎用材料を選定すると、電池の低コスト化を図ることができる。一方、高性能なセル部材(電極、イオン交換膜、集電板等)を開発すれば、部材使用量やランニングコストの低減効果を得ることができ、コストダウンに寄与することができる。中でも、レドックスフロー電池用電極材は、イオンの反応場だけでなく、電解液の流路も担っており、セル部材の中でも極めて重要な材料である。電極材に低抵抗を付与できれば、電池効率やシステム効率を高められ、結果としてレドックスフロー電池のコストダウンに大きく寄与する。
例えば、特許文献1にはフェノール樹脂によって低結晶炭素粒子を担持し、低抵抗化できることが開示されている。また、特許文献2には、炭素フィラーを添加して凹凸を発現させる手法、消失粒子を添加して空隙を形成させる手法が開示されている。また、特許文献3、4には高結晶な炭化バインダーによって高比表面積炭素粒子を担持して低抵抗化することが開示されている。
特開2017-33758号公報 特開2018-147595号公報 国際公開WO2019/049755 国際公開WO2015/032667
レドックスフロー電池の普及をさらに促進するために、より低抵抗化でき安価な電極材が求められている。一般的に、レドックスフロー電池用電極材の低抵抗化は高表面積化により達成されるが、電解液への接触効率を高めるための最適な細孔サイズや形状が存在すると考えられる。
しかし、特許文献1の技術では、市販の分散液を適用しているのみであり、低抵抗化効果はあるものの、最適な細孔サイズ及び形状を考慮した設計とは言い難い。また、特許文献2の空隙形成手法は粒子に限られたものであり、最適な形状まで考慮されていない。さらに、特許文献3,4の技術においても、電解液への接触効率を高めるために積極的な空隙を形成させる手法は無く、最適な細孔サイズ及び形状を考慮した設計とは言い難い。
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、充放電時のセル抵抗を低下させて、電池のシステム効率を高めることが可能なレドックスフロー電池用電極材及びレドックスフロー電池を提供することにある。本発明者らは、特に、バナジウム系レドックスフロー電池に好ましく用いられる炭素電極材を提供するため、鋭意検討してきた。従来のバナジウム系レドックスフロー電池において、低コスト化の観点での低抵抗化が重要である。
上記課題を解決し得た本発明に係るレドックスフロー電池用電極材の構成は以下の通りである。
1.炭素繊維、炭化バインダー、及び炭素粒子を含む電極材であり、前記炭化バインダーに幅1~50μm、長さ100μm以上の凹部を含むことを特徴とする、レドックスフロー電池用電極材。
2.前記炭化バインダーの、レーザーラマン分光法により求めた1350cm-1のピーク強度IDと1590cm-1のピーク強度IGとの比(ID/IG)が0.3~1.5である、上記1に記載のレドックスフロー電池用電極材。
3.前記炭化バインダーID/IGが、炭素繊維のID/IGよりも小さい、上記1または2に記載のレドックスフロー電池用電極材。
4.前記炭素繊維の繊維径が5~30μmである、上記1~3のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極材。
5.上記1~4のいずれかに記載の電極材を用いたレドックスフロー電池。
本発明によれば、充放電時のセル抵抗を低下させて電池エネルギー効率に優れ、結果としてシステム効率にも優れるバナジウム系レドックスフロー電池に好適に使用される電極材を提供できる。本発明の電極材は、フロータイプおよびノンフロータイプのレッドクス電池、またはリチウム、キャパシタ、燃料電池のシステムと複合化されたレドックスフロー電池に好適に用いられる。
図1は実施例No.1の走査型電子顕微鏡(SEM)の表面図(倍率100倍)である。 図2は実施例No.1の走査型電子顕微鏡(SEM)の表面図(倍率1000倍)である。 図3は本発明の電極材が用いられるレドックスフロー電池の概略図である。 図4は本発明の電極材が用いられるレドックスフロー電池の単セルを示す図である。
図3、図4を参照しながら、本発明を構成要件ごとに詳細に説明する。なお、本発明は下記に限定される訳ではなく前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
図3は、本発明に好適に用いられるレドックスフロー電池の概略図である。図4は単セルを示す図であり、相対する二枚の集電板1,1間にイオン交換膜3が配設され、イオン交換膜3の両側にスペーサー2によって集電板1,1の内面に沿った電解液の通液路4a,4bが形成されている。通液路4a,4bの少なくとも一方に電極材5が配設されている。集電板1には電解液の液流入口10と液流出口11とが設けられている。図4のように電極を電極材5と集電板1とで構成し、電解液が電極材5中を通過する構造(電極構造の三次元化)とする。
本発明の電極材5は、低抵抗化を発現させるため、炭素繊維シートを基材とし、炭化バインダーで炭素粒子を担持すると共に、電解液への接触効率を高めた空間(凹部)を積極的に形成させた電極材である。各要件の詳細は以下のとおりである。
[炭素繊維]
本発明の電極材5に用いられる炭素繊維は、有機繊維のプレカーサーを加熱炭素化処理(詳細は後述)して得られる繊維であって、質量比で90%以上が炭素で構成される繊維を意味する(JIS L 0204-2)。炭素繊維の原料となる有機繊維のプレカーサーとしては、ポリアクリロニトリル等のアクリル繊維;フェノール繊維;ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)等のPBO繊維;芳香族ポリアミド繊維;等方性ピッチ繊維、異方性ピッチ繊維、メソフェーズピッチ等のピッチ繊維;セルロース繊維;等を使用することができる。中でも、強度・弾性率に優れる等の観点から、有機繊維のプレカーサーとしては、アクリル繊維、フェノール繊維、セルロース繊維、等方性ピッチ繊維、異方性ピッチ繊維が好ましく、アクリル繊維がより好ましい。アクリル繊維は、アクリロニトリルを主成分として含有するものであれば特に限定されないが、アクリル繊維を形成する原料単量体中、アクリロニトリルの含有量が95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましい。
炭素繊維の平均繊維径は5~30μmであることが好ましい。平均繊維径が5μmよりも小さいと通液性が悪化する。一方、平均繊維径が30μmよりも大きいと表面積が低下し、炭素粒子を担持したとしても、セル抵抗が高くなってしまう。通液性および反応表面積のバランスを考慮すると、より好ましくは8~20μmである。
本発明の電極材5は、炭素繊維の構造体を基材として用いることが好ましく、これにより、強度が向上し、取扱いや加工性が容易になる。上記構造体として、具体的には、炭素繊維よりなる紡績糸、フィラメント集束糸、炭素繊維のシート状物である不織布、編物、織物、特開昭63-200467号公報などに記載の特殊編織物を挙げることができる。これらのうち、炭素繊維の不織布が、取扱いや加工性、製造性等の点からより好ましい。
基材に炭素繊維のシート状物を用いる場合、その厚みが1.5mm以上8.0mm以下であることが好ましい。厚みが1.5mmよりも小さいと、接触抵抗を低減させるためスペーサー厚みを下げることとなり、電極内の通液性が著しく悪化する。一方、厚みが8.0mmを超えると、通液性は改善するものの、所望の低抵抗化効果が得られ難くなる。
不織布を用いる場合、平均繊維長は30~100mmが好ましい。上記の範囲内とすることで、均一な繊維構造体が得られる。
不織布はJIS L 0222に定義されており、交絡、融着、接着などの製法の違いによって、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、レジンボンド不織布、サーマルボンド不織布などが挙げられる。これらのいずれを用いてもよい。
前述したように炭素繊維は、有機繊維のプレカーサーを加熱炭素化処理して得られるが、加熱炭素化処理は、少なくとも、耐炎化工程、および炭素化(焼成)工程を含むことが好ましい。但し、これらのうち炭素化工程は、必ずしも上記のように耐炎化工程の後に行う必要はなく、耐炎化された繊維に粒子を添着した後に炭素化工程を行っても良く、この場合は耐炎化工程後の炭素化工程を省略することができる。
このうち上記耐炎化工程は、空気雰囲気下、有機繊維のプレカーサーを好ましくは180℃以上350℃以下の温度で加熱し、耐炎化有機繊維を得る工程を意味する。加熱処理温度は、190℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましい。また、330℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがさらに好ましい。上記温度範囲で加熱することにより、有機繊維が熱分解することなく炭素繊維の形態を保持したまま有機繊維中の窒素、水素の含有率を低減し、炭素化率を向上することができる。耐炎化工程の際、有機繊維が熱収縮し分子配向が崩壊して、炭素繊維の導電性が低下する場合があることから、有機繊維を緊張下ないし延伸下で耐炎化処理することが好ましく、緊張下で耐炎化処理することがより好ましい。
上記炭素化工程は、不活性雰囲気下(好ましくは窒素雰囲気下)、上記のようにして得られた耐炎化有機繊維を好ましくは1000℃以上2000℃以下の温度で加熱し、炭素繊維を得る工程を意味する。加熱温度は、1100℃以上であることがより好ましく、1200℃以上であることがさらに好ましい。また、より好ましくは1900℃以下である。上記温度範囲で炭素化工程を行うことにより、有機繊維の炭素化が進行し、擬黒鉛結晶構造を有する炭素繊維を得ることができる。
有機繊維は、それぞれ異なる結晶性を有するため、炭素化工程における加熱温度は、原料とする有機繊維の種類に応じて選択することができる。例えば、有機繊維としてアクリル樹脂(好ましくはポリアクリロニトリル)を使用する場合、加熱温度は800℃以上2000℃以下であることが好ましく、1000℃以上1800℃以下であることがさらに好ましい。
前述した耐炎化工程および炭素化工程は、連続的に行うことが好ましく、耐炎化温度から炭素化温度へ昇温するときの昇温速度は、20℃/分以下であることが好ましく、より好ましくは15℃/分以下である。昇温速度を上記範囲とすることにより、有機繊維の形状を保持し、かつ機械的性質に優れた炭素繊維を得ることができる。なお上記昇温速度の下限は、機械的性質などを考慮すると、5℃/分以上であることが好ましい。
[空間形成用繊維]
本発明の電極材5では、より積極的に電解液への接触効率を高めた空間を形成させるため、空間形成用繊維を用いる。空間形成用繊維とは、電極材5の製造工程のいずれかでは繊維として存在しているが、製造後には繊維の形態を残さず、繊維が存在していた空間(凹部)が残る繊維を意味する。空間形成用繊維は、例えば、炭素化処理時に溶融または分解により繊維形態は崩壊し、電極材5には空間形成用繊維の存在していた個所に、電解液への接触効率を高めるための空間が形成される。特に、炭化バインダー中に、空間として幅1~50μm、長さ100μm以上の凹部が形成されることで、より高いレベルで低抵抗を発揮することができる。
空間形成用繊維に用いる原材料としては、炭素化後に繊維の形態を残さないものであれば特に限定されない。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の脂肪族ポリマーなど、炭素化時が挙げられる。さらに、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリp-フェニレンエーテルなどで、熱処理により溶融するグレードも使用することができる。中でも特に好ましいのは、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリp-フェニレンエーテルである。
空間形成用繊維の1000℃加熱後の残炭率は、10~50%が好ましい。10%を下回ると、後述の炭化バインダーの結着力を低下させてしまう恐れがある。50%を上回ると、消失繊維由来の溶融物が炭素粒子を過剰に被覆してしまい、高抵抗化に繋がる恐れがある。より好ましい残炭率は15~40%である。
空間形成用繊維に用いる繊維の繊維径は、1~50μmが好ましい。1μmを下回ると、形成される空間サイズが小さくなり、電解液への接触効率の向上効果が得られ難くなる。一方、50μmを上回ると、形成される空間の量が著しく減ることから、電解液への接触効率の向上効果が得られない。より好ましい繊維径は、3~30μmである。
空間形成用繊維は前記炭素繊維前駆体繊維と共に繊維構造体として形成され繊維基材として用いられるが、最終的に製造された電極材5では、空間形成用繊維は消失して凹部が形成されている。ここで、炭素繊維前駆体繊維に対する空間形成用繊維の重量分率は、10~80%が好ましい。10%を下回ると、高通液性の効果が得られ難くなる。一方、80%を超えると、炭素繊維量が少なすぎて、ばね性が著しく損なわれ、圧縮時に組織形態を保てなくなる。さらに、炭素化処理時の収縮が大きすぎて、変形が大きくなる等の問題が生じる。
[炭素粒子]
本発明の電極材において炭素粒子は、反応表面積を高めて低抵抗と高通液性を両立するために有用である。
本発明に用いられる炭素粒子の粒径は0.01~20μmであり、0.05~10μmが好ましい。粒径が20μmを超えると、反応表面積が小さくなって低抵抗効果が得られ難くなる。一方、0.01μm以下であると、バインダーに埋没する割合が増える、または非常に小さい領域の空間では、表面張力等により電解液が接触しづらくなるため、反応に有効な粒子の割合が低下する恐れがある。ここで「粒径」とは、動的光散乱法などで得られた粒径分布におけるメジアン50%径での平均粒径(D50)を意味する。この時、1次粒子径が0.01μm以下であったとしても、その凝集体である2次粒子径が0.01μm以上であれば良い。このように、炭素粒子の粒子径を適切に選定することで、担持した炭素粒子を有効利用することができる。
本発明に用いられる炭素粒子の窒素吸着量から求められるBET比表面積は、20m2/g以上が好ましく、30m2/g以上がより好ましく、40m2/g以上が更に好ましい。BET比表面積が20m2/g未満になると、炭素粒子のエッジ露出が減少し、電解液との接触面積も減少するため、所望とする低抵抗が得られなくなる。なお、その上限は上記観点からは特に限定されないが、表面積が大きく嵩高い粒子では分散溶液の粘性が上昇しやすく、シートなどへの加工性が悪化することを考慮すると、おおむね、2000m2/g以下であることが好ましい。ここで上記「窒素吸着量から求められるBET比表面積」とは、窒素分子を固体粒子に吸着させ、吸着した気体分子の量から算出された比表面積を意味する。
本発明に用いられる炭素粒子としては、例えば、アセチレンブラック(アセチレンの煤)、オイルブラック(ファーネスブラック、オイルの煤)、ケッチェンブラック、ガスブラック(ガスの煤)などのカーボンブラック類のように反応性および比表面積が高く、低結晶性のものがよく用いられる。上記の他、カーボンナノチューブ(CNT,carbon nanotube)、カーボンナノファイバー、カーボンエアロゲル、メソ多孔性炭素、黒鉛類、グラフェン、酸化グラフェン、NドープCNT、ホウ素ドープCNT、フラーレンなどが挙げられる。原料価格などの観点から、カーボンブラック類が好ましく用いられる。
本発明に用いられる炭素粒子の含有量は、前述した炭素繊維、炭素粒子、後記する炭化バインダーの合計量に対する質量比率で5%以上であることが好ましく、10%以上が好ましい。これにより、担持した炭素粒子の効能が十分に得られ、抵抗が低下するようになる。但し、炭素粒子の量が過剰になると、充填密度の向上により通液性との両立が困難になる。そのため、上限はおおむね90%以下であることが好ましい。なお上記含有量の算出に用いる炭素繊維の含有量は、基材として不織布などの構造体を用いる場合は当該構造体の含有量である。
本発明において、炭素粒子に対する、後記する炭化バインダーの質量比は、0.2以上20以下であることが好ましく、0.3以上10以下であることがより好ましい。上記の比が0.2未満では、炭素粒子の脱落が多くなり、当該炭素粒子が炭化バインダーに十分結着されなくなる。一方、上記の比が20を超えると、反応場である当該炭素粒子の炭素エッジ面が被覆されてしまい、所望とする低抵抗が得られなくなる。
[炭化バインダー]
本発明に用いられる炭化バインダーは、それ自身が導電性を有しつつ、本来、結着し得ない炭素繊維と、炭素粒子とを強く結着させるための結着剤(バインダー)として添加されるものである。本発明で用いられる炭化バインダーは、レーザーラマン分光法により求めた1360cm-1のピーク強度IDと1580cm-1のピーク強度IGの比(ID/IG)が0.3~1.5であることが好ましい。0.3~1.5の高結晶性の炭化バインダーを用いることにより上記炭素粒子と炭素繊維との電子伝導抵抗が低くなって、当該炭素粒子と炭素繊維の電子伝導パスがスムーズになる。また、炭化バインダーが炭素粒子を介して炭素繊維間などを強く結着するため、効率的な導電パスを形成でき、前述した炭素粒子添加による低抵抗化作用が一層有効に発揮される。
本発明では、炭化バインダーのID/IGは、電解液との親和性のバランスを考慮すると、0.3以上が好ましく、0.8以上がより好ましい。一方、上記観点から電子伝導性などを考慮すると、おおむね、1.5以下が好ましい。
本発明では、炭化バインダーのID/IGは、炭素繊維のID/IGよりも小さいことが好ましい。これにより、炭素繊維が低結晶性であっても、高結晶の炭化バインダーが被覆することで、耐酸化性や高導電性を確保することができる。
前述した炭素繊維および炭素粒子、炭化バインダーの合計量に対する、炭化バインダーの含有量は5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上が更に好ましい。このように炭化バインダーの含有率を多くすることによって炭素繊維および炭素粒子の両方を十分結着することができる。なお、その上限は、電解液の通液性、炭素粒子の表面被覆を抑制することを考慮すると、おおむね、60%以下であることが好ましい。
また、上述した炭素繊維、炭素粒子、及び炭化バインダーの合計量に対する、炭素粒子および炭化バインダーの合計含有量の質量比率は、上記要件を満足する限り特に限定されないが、例えば20~65%である。本範囲とすることで、通液性と低抵抗を両立することができる。
本発明に用いられる炭化バインダーの出発原料の種類は、炭素繊維および炭素粒子を結着し得るものであれば良く、具体的には、本発明の電極材作製時における炭化時に結着性を示すものであれば特に限定されない。このような例として、例えば、コールタールピッチ、石炭系ピッチ等のピッチ類;フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、エポキシド樹脂、フラン樹脂、ビニルエステル樹脂、メラニン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、レソルシノール-ホルムアルデヒド樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル等の樹脂;フルフリルアルコール;アクリロニトリル-ブタジエンゴム等のゴムなどが挙げられる。これらは市販品を用いても良い。
これらのうち、特に易結晶性であるコールタールピッチ、石炭系ピッチ等のピッチ類は、低い焼成温度で高結晶の炭化バインダーが得られるため好ましい。他の樹脂でも、焼成温度を上げれば目的とする炭化バインダーが得られるため、好ましく用いられる。特に好ましいのはピッチ類である。
本発明の好ましい態様によれば、フェノール樹脂を使用しないため、フェノール樹脂に伴う弊害(室温でのホルムアルデヒド発生およびホルムアルデヒド臭)は生じず、常温では臭気が発生しない等のメリットがある。これに対し、前述した特許文献2では炭化バインダー前駆体にフェノール樹脂を用いているため、上記弊害の他、作業場所におけるホルムアルデヒド濃度を管理濃度以下に制御するための設備が別途必要になる等、コスト面、作業面でのデメリットがある。
ここで、特に好ましく用いられるピッチ類について詳述する。前述したコールタールピッチや石炭系ピッチは、不融化処理の温度や時間によって、メソフェーズ相(液晶相)の含有率をコントロールすることができる。メソフェーズ相の含有量が少なければ、比較的低温で溶融、または室温で液体状態のものが得られる。一方、メソフェーズ相の含有率が高ければ、高温で溶融し、炭化収率の高いものが得られる。ピッチ類を炭化バインダーに適用する場合、メソフェーズ相の含有率が高い(すなわち炭化率が高い)ことが好ましく、例えば30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。これにより、溶融時の流動性を抑え、炭素粒子の表面を過剰に被覆することなく、当該炭素粒子を介して炭素繊維間を結着することができる。なお、その上限は、結着性の発現などを考慮すると、例えば90%以下であることが好ましい。
上記と同様の観点から、ピッチ類の融点は、100℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。これにより、上記効果が得られる他、添着加工時の臭気を抑えることができ、加工性の面でも好ましい。なお、その上限は、結着性の発現などを考慮すると、例えば350℃以下であることが好ましい。
(電極材の特性)
本発明の電極材は、炭素繊維、炭化バインダー、及び炭素粒子を含み、前記炭化バインダーに幅1~50μm、長さ100μm以上の凹部を有する。前述した電解液への接触効率を高めた空間である凹部を積極的に形成させた電極材することで、低抵抗なレドックスフロー電池用電極材が得られる。本発明によれば、積極的に電解液への接触効率を高めた空間(幅1~50μm、長さ100μm以上の凹部)を形成させることとなる。
従来技術では、低抵抗を得るために数ナノメートルサイズのミクロ~メソ孔を中心とした高比表面積化が図られ、一般的には酸化等による賦活処理が施される。また、特許文献2のように数マイクロメートルの空隙が設計されることもある。一方、本発明では、電解液を確実に炭素表面に接触させるため、表面張力の影響が少ないマイクロメートル空間である上記凹部を形成した。さらに、幅1~50μm、長さが100μm以上の連続した凹部であれば、当該凹部を滞りなく電解液が通過するため、低抵抗化効果が大きくなったと考えられる。これは、電極の酸化還元反応に利用されるミクロ~メソ孔の近傍における電解液の拡散を促進させたため、と考えられる。このことから、幅が1μm未満であると、電解液に対する表面張力の影響から効率的に接触できないだけでなく、電解液が優先的に通過する空間サイズ(数十マイクロメートル)との差が大きくなり、偏流によりミクロ~メソ孔近傍の液拡散効果が発揮できないと考えられる。一方、幅が50μmを超えると当該凹部の数が減少するため、低抵抗化が発揮できないと考えられる。また、連続した凹部の長さが100μm未満であると、電解液の流路が寸断されることが多くなり、低抵抗化が発揮できないと考えられる。
ここで、本発明の幅1~50μm、長さ100μm以上の凹部は、電極材表面を走査型電子顕微鏡で観察することで確認できる。本発明の凹部とは、バインダーが連続的に存在する部分において、半円形状、半楕円形状、スリット形状、トンネル形状などの空間が存在している状態を意味する。この時、当該凹部において部分的に欠陥や微細な孔が形成されていてもよい。バインダー部に幅1~50μm、長さ100μm以上の凹部を形成することで、当該凹部に滞りなく電解液が通過し、電極材の低抵抗化を発現することができる。凹部の幅は好ましい範囲は1~50μmであり、より好ましくは、4~30μmである。幅が1μm未満であると、電解液に対する表面張力の影響から効率的に接触できない。一方、50μmを超えると当該凹部の数が著しく減少するため、十分な低抵抗化が得られない。凹部の幅は、上述した空間形成用繊維として用いる繊維径を変更することにより制御できる。凹部の長さは100μm以上が好ましく、100μm以上であると、電解液の流路が寸断されることなく、低抵抗化が発揮できる。凹部の長さは、空間形成用繊維として用いる繊維の繊維長や形状(クリンプやストレート)を変更することにより制御することができる。
本発明の電極材において、幅1~50μm、長さ100μm以上の凹部は、走査型電子顕微鏡の100倍率の視野(単位面積2.3mm)で2個以上確認できることが好ましい。当該凹部が2.3mm当たりに2個以上あれば、低抵抗化の効果を得るのに好ましい。なお、幅が50μmを超えると数が著しく減少し、2.3mm当たりに2個以上存在できにくくなる。
本発明の電極材の目付量は、集電板1とイオン交換膜3に挟まれたスペーサー2の厚み(以下、「スペーサー厚み」と言う)を1~4mmで使用する場合、100~700g/mが好ましく、150~400g/mがより好ましい。目付を上記範囲内に制御することで、通液性を確保しつつ、イオン交換膜3の破損を防止することができる。特に、近年では低抵抗化の観点から、イオン交換膜3の厚みは薄くなる傾向にあり、イオン交換膜3へのダメージを軽減する処置及び使用方法は極めて重要である。また上記の観点から、本発明の電極材として、片面に平坦加工が施された不織布や紙を基材として使用することもより好ましい。平坦加工方法は、公知の任意の方法を適用でき、例えばスラリーを炭素繊維の片面に塗布、乾燥する方法;PETなどの平滑なフィルム上で含侵、乾燥するなどの手法が挙げられる。
本発明の電極材の厚みは、少なくともスペーサー厚みより大きいことが好ましい。例えばスペーサー厚みの1.5~6.0倍が好ましい。しかしながら、厚みが厚すぎるとシート状物の圧縮応力によりイオン交換膜3を突き破ってしまうことがあるので、本発明の電極材の圧縮応力が9.8N/cm以下のものを使用するのが好ましい。本発明の電極材を2層や3層など積層して用いることも可能である。或は、別の形態の電極材との組み合わせも可能である。
以下、本発明の電極材を製造する各工程について説明する。以下では、電極材の基材が炭素繊維の不織布である場合を例として説明する。
(不織布化工程)
まず、有機繊維として耐炎化ポリアクリロニトリル等の炭素繊維前駆体繊維に空間形成用繊維を添加し、公知の任意の方法で不織布にする。例えば、解繊後、カード機でウェブを作製し、ウェブをクロスレイヤーもしくはパラレルレイヤーで積層させた後、ニードルパンチ、カレンダー、ウオータージェット等で不織布化する。ウェブは単一組成でも良いが、異なる組成の層構造とし、それぞれの層で低抵抗と高通液性を機能分担させてもよい。
(添着工程)
不織布化工程で得た不織布に炭素粒子および、炭化バインダーの前駆体を添着させる。炭素粒子及び炭化バインダーの前駆体を添着させるには、上記の炭化バインダー前駆体と炭素粒子とを、ポリビニルアルコールなどのように炭化時に消失するバインダー(仮接着剤)を添加した水やアルコールなどの溶媒に分散させ、この分散液に上記構造体を浸漬した後、加熱して乾燥する手法を用いることができる。ここで、上記構造体を浸漬した際の余剰な液は、所定のクリアランスを設けたニップローラーに通すことで除去、あるいは、ドクターブレード等で分散液に浸漬した際の余分な分散液の表面をかきとる等の方法、もしくはニップローラーで絞る等の方法で除去することができる。
その後、空気雰囲気下、例えば80~150℃で乾燥する。
(炭素化工程)
炭素化工程は、上記添着工程で得られた添着後の製造物を焼成するために行なわれる。これにより、炭素粒子、炭素繊維、炭化バインダーが結着されるようになる。炭素化工程では、炭化時の分解ガスを十分に除去することが好ましく、例えば、不活性雰囲気下(好ましくは窒素雰囲気下)、500℃以上、2000℃未満の温度で加熱する。加熱温度は600℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましく、1000℃以上がさらに好ましく、1200℃以上がさらにより好ましく;1400℃以下がより好ましく、1300℃以下がさらに好ましい。
また、不活性雰囲気下における加熱時間は、例えば1~2時間であることが好ましい。この程度の短時間処理により、炭素繊維間の結着および炭化時の分解ガスの除去が十分に進む。
(黒鉛化工程)
黒鉛化工程は、炭素質材料の結晶性を十分に高め、電子伝導性の向上ならびに電解液中の硫酸溶液などに対する耐酸化性を向上させるために行なわれる工程である。不活性雰囲気下(好ましくは窒素雰囲気下)で、1300℃以上の温度であって、上記炭素化工程における加熱温度よりも高い温度で加熱することが好ましく、1500℃以上がより好ましい。なお、その上限は、炭素質材料に高い電解液親和性を付与することを考慮すると、2000℃以下が好ましい。
(酸化工程)
本発明では、上記黒鉛化工程後に、乾式下で酸化処理を行っても良い。上記黒鉛化工程の後、さらに酸化処理を行うことにより、電極材表面に、ヒドロキシル基、カルボニル基、キノン基、ラクトン基、フリーラジカル的な酸化物などの酸素官能基が導入されるようになる。その結果、前述したO/C比≧1%を達成することができる。これらの酸素官能基は電極反応に大きく寄与するため、十分に低い抵抗が得られる。
酸化処理工程は、例えば湿式の化学酸化、電解酸化、乾式酸化などの各種処理工程を適用できるが、本発明では、加工性、製造コストの観点から乾式酸化処理を行う。好ましくは空気雰囲気下で酸化処理を行う。加熱温度は、500℃以上、900℃以下の範囲に制御する。これにより、電極材表面に酸素官能基が導入されて、上記効果が有効に発揮される。上記加熱温度は、600℃以上が好ましく、650℃以上がより好ましい。また、800℃以下が好ましく、750℃以下がより好ましい。
また、上記の酸化処理は前述した一次酸化処理と同様、例えば5分~1時間行うことが好ましい。一次酸化処理液が5分未満の場合、炭素電極材全体が均一に酸化処理されない虞がある。一方、一次酸化処理液が1時間を超えると、炭素電極材の強度低下を起こし、生産性が低下する虞がある。
更に酸化処理工程では、電極材の機械的強度を維持する観点から、酸化処理前後の電極材の質量収率(すなわち、二次酸化処理前の電極材の質量に対する、二次酸化処理液後の電極材の質量の比率)を85%以上、96%以下に調整することが好ましい。上記の質量収率は、例えば、乾式空気酸化の処理時間や加熱温度を適宜調整することによって調整することができる。
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。以下において、%は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
実施例及び比較例では、以下の項目を測定した。測定方法の詳細は以下のとおりである。
(1)レーザーラマン分光法によるID/IG
炭素繊維及び炭化バインダーについて、1360cm-1のピーク強度IDと1580cm-1のピーク強度IGとの比(ID/IG)を、以下のよう測定した。
電極材を構成する炭素繊維、炭化バインダーにつき、レーザーラマン顕微鏡により各構成材料をフォーカス後、ラマン分光を測定した。ラマンスペクトルはレーザーラマン顕微鏡(ナノフォトン社製 Raman-11)で、波長532nmレーザーを使用して測定した。回折格子は600gr/mmを使用し、500~2300cm-1の領域を測定した。得られたラマンスペクトルはローレンツ関数を用いてピーク分離し、1350cm-1付近のDバンド、1590cm-1付近のGバンドのピーク強度を評価した。
(2)凹部
電極材サンプルを5mmサイズにカットし、表面を上面に配置した状態で、導電性テープで顕微鏡用台座に貼り付けた。これにAu蒸着処理を施し、日立ハイテクノロジー社製走査型電子顕微鏡(SU3800)にセットし、表面を観察した。この時、粒子を含んだ炭化バインダー部に形成された凹部を1000倍率にて幅を測定し、100倍率にて長さを測定した。長さは凹部の始点と終点の直線距離にて測定した。100倍率の視野(2.3mm)にて、当該凹部が2個以上確認できる部分を複数選定し、これらのうち任意の凹部10個について前述の測定を行い、その平均値を当該凹部の幅及び長さとした。
(3)BET比表面積(m2/g)
試料約50mgを測り採り、これを130℃で24時間真空乾燥した。得られた乾燥後の試料について、自動比表面積測定装置(島津製作所製、GEMINI VII)を使用し、窒素ガスを用いたガス吸着法により窒素吸着量を測定し、BET法に基づく多点法によってBET比表面積(m2/g)を決定した。
(4)全セル抵抗
後記する方法で得られた各電極材サンプルを、上下方向(通液方向)に10cm、幅方向に1.6cmの電極面積16cm2に切り出し、図4に示すセルを組み立てた。イオン交換膜は旭硝子社製APS4膜を用い、スペーサー厚みは1.5mmとした。
100mA/cm2で電圧範囲1.70~1.00Vで10サイクル後の電圧曲線から、下記式によって全セル抵抗を算出した。なお正極電解液には1.7moL/Lのオキシ硫酸バナジウムの2.5moL/L硫酸水溶液を用い、負極電解液には1.7moL/Lの硫酸バナジウムの2.5moL/L硫酸水溶液を用いた。電解液量はセルおよび配管に対して大過剰とした。液流量は毎分20mLとし、30℃で測定を行った。充電率が50%のときの電気量に対応する充電電圧VC50、放電電圧VD50を電圧曲線からそれぞれ求め、電流密度をI(mA/cm2)とし、下式より全セル抵抗(Ω・cm2)を求めた。
全セル抵抗(Ω・cm2)=(VC50 -VD50)/(2×I)
ここで、
C50は、充電率が50%のときの電気量に対する充電電圧を電極曲線から求めたもの、
D50は、充電率が50%のときの電気量に対する放電電圧を電極曲線から求めたもの、
I=電流密度(mA/cm2)、
である。
(5)平均繊維径
任意に5本の繊維を抽出して走査型電子顕微鏡(1000倍)で観察し断面積を測定した。この断面積を、丸形断面形状繊維の断面積とみなして、下式にて繊維径を算出した。合計5本の繊維径の平均値を算出し、これを炭化バインダーの平均繊維径とした。
繊維径(μm)=√(4×断面積(μm2)/3.14)
(6)目付
サンプルを1.6cm×10cmに切り出し、電子天秤で重量を測定した。3つのサンプルについて同様に行い、その平均重量を用いて下記式にて目付量を算出した。
目付量(g/m)=3サンプルの平均重量(g)/0.0016(m
(7)厚み
サンプルを1.6cm×10cmに切り出し、φ20mmの測定端子を有する厚み計を用い、荷重7g/cmで3点測定した時の平均値を厚みとした。
[実施例]
実施例では、炭素粒子として比表面積800m/gの顆粒状カーボンブラックを用いた。
(No.1)
平均繊維径16μmの耐炎化ポリアクリロニトリル綿(炭素繊維前駆体繊維)80%、平均繊維径8μmのナイロン綿(空間形成用繊維)20%を混合し、カード機で解繊しウェブとした。得られたウェブをパンチング密度100g/cmでニードルパンチを行い、不織布(目付250g/m、厚み4.4mm)を得てこれを繊維基材とした。次に、イオン交換水中に、花王社製レオドールTWL-120(非イオン系界面活性剤)を2.0%、ポリビニルアルコール(仮接着剤)を1.5%、炭化バインダーの前駆体としてJFEケミカル社製MCP100(融点100℃、粒径10μm)を9.6%、前述のカーボンブラックを3.4%となるように加えた。これに3mm径のジルコニアビーズを入れ、ビーズミルによる粉砕処理を施した分散液を作製した。
このようにして得られた分散液中に、上記で得た繊維基材を浸漬した後、ニップローラーに通して余分な分散液を除去した。空気雰囲気下、120℃で20分間乾燥した。
次に、150℃、ゲージ圧10kg/cmで熱プレスした。その後、窒素ガス中で5℃/分の昇温速度で1000℃まで昇温し、この温度で1時間保持して炭素化(焼成)を行った。更に窒素ガス中で5℃/分の昇温速度で1500℃まで昇温し、この温度で1時間保持して黒鉛化した。最後に、空気雰囲気下、650℃で5分間酸化処理し、No.1の電極材(目付223g/m2、厚み2.4mm)を得た。
図1は実施例No.1のサンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)の表面図(倍率100倍)であり、図2は実施例No.1のサンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)の表面図(倍率1000倍)である。
(No.2)
平均繊維径21μmの耐炎化ポリアクリロニトリル綿(炭素繊維前駆体繊維)70%、平均繊維径8μmのポリエチレンテレフタレート綿(空間形成用繊維)30%を混合し、カード機で解繊しウェブとした。得られたウェブをパンチング密度100g/cmでニードルパンチを行い、不織布(目付280g/m、厚み4.4mm)を得て繊維基材とした。以降は、No.1と同様にして電極材を作製し、No.2の電極材(目付203g/m2、厚み3.3mm)を得た。
(No.3)
繊維基材として、平均繊維径21μmの耐炎化ポリアクリロニトリル綿(炭素繊維前駆体繊維)80%、平均繊維径43μmのポリフェニレンエーテル綿(空間形成用繊維)20%を混合し、No.1と同様にしてNo.3の電極材(目付231g/m2、厚み3.0mm)を得た。
(No.4)
繊維基材として、平均繊維径21μmの耐炎化ポリアクリロニトリル綿(炭素繊維前駆体繊維)80%、平均繊維径45μmのポリエチレンテレフタレート綿(空間形成用繊維)20%を混合し、No.1と同様にしてNo.4の電極材(目付231g/m2、厚み3.0mm)を得た。
[比較例]
(No.5)
平均繊維径21μmの耐炎化ポリアクリロニトリル繊維から成るフェルト(350g/m、厚み3.7mm)を繊維基材として使用し、含浸及び乾燥操作を省いたこと以外は、No.1と同様の炭化、黒鉛化、空気酸化処理を行い、No.5の電極材(目付220g/m、厚み4.3mm)を得た。
(No.6)
平均繊維径21μmの耐炎化ポリアクリロニトリル繊維から成るフェルト(220g/m、厚み3.1mm)を繊維基材として使用したこと以外は、No.1と同様にしてNo.6の電極材(目付191g/m、厚み2.8mm)を得た。
表1に上記No.1~6における各種項目の測定結果を示す。
Figure 2023069804000001
実施例であるNo.1~4は、炭化バインダーに幅1~50μm、長さ100μm以上の凹部を有している。実施例であるNo.1~4は、炭素粒子を担持させつつ、電解液への接触効率を高めた空間である凹部を形成させたことから、低抵抗な電極材が得られた。これは、凹部を積極的に形成させたことから、電極反応に有効な表面積が増加したためと考えられる。
比較例No.5は炭素粒子を担持しなかった例である。炭素粒子が無いため比表面積が不足していることから、高抵抗化した。また、No.6は炭素粒子を担持したものの、No.1~4のような凹部を形成しなかった例である。炭素粒子の無いNo.5より低抵抗化するものの、その効果はNo.1~4の電極材より効果は小さかった。
本発明によれば、充放電時のセル抵抗を低下し得、電池エネルギー効率に優れた炭素電極材を提供できるため、例えばバナジウム系電解液を用いるレドックスフロー電池の電極材として有用である。本発明の炭素電極材は、フロータイプおよびノンフロータイプのレッドクス電池や、リチウム、キャパシタ、燃料電池のシステムと複合化されたレドックスフロー電池などに好適に用いられる。
1 集電板
2 スペーサー
3 イオン交換膜
4a,4b 通液路
5 電極材
6 正極電解液タンク
7 負極電解液タンク
8,9 ポンプ
10 液流入口
11 液流出口
12,13 外部流路

Claims (5)

  1. 炭素繊維、炭化バインダー、及び炭素粒子を含む電極材であり、
    前記炭化バインダーに幅1~50μm、長さ100μm以上の凹部を有する、ことを特徴とするレドックスフロー電池用電極材。
  2. 前記炭化バインダーは、レーザーラマン分光法により求めた1350cm-1のピーク強度IDと1590cm-1のピーク強度IGとの比(ID/IG)が0.3~1.5である、ことを特徴とする請求項1に記載のレドックスフロー電池用電極材。
  3. 前記炭化バインダーの前記ID/IGは前記炭素繊維の前記ID/IGよりも小さい、ことを特徴とする請求項1または2に記載のレドックス電池用電極材。
  4. 前記炭素繊維の平均繊維径が5~30μmである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のレドックスフロー電池用電極材。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の電極材を用いたレドックスフロー電池。
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