JP7363110B2 - SiCエピタキシャルウェハ、SiC基板及びSiCエピタキシャルウェハの評価方法、及びSiCデバイスの製造方法 - Google Patents

SiCエピタキシャルウェハ、SiC基板及びSiCエピタキシャルウェハの評価方法、及びSiCデバイスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、SiCエピタキシャルウェハ、SiC基板及びSiCエピタキシャルウェハの評価方法、及びSiCデバイスの製造方法に関する。
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きく、熱伝導率が3倍程度高い。そのため、炭化珪素(SiC)は、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。
しかし、SiCデバイスには解決すべき多くの課題が残されている。
課題の一つとして製造プロセスの効率化があり、歩留まりの改善も課題の一つである。SiCの結晶成長技術は現在も発展途上にあるため、基板中に多くの結晶欠陥が存在する。これらの結晶欠陥がSiCデバイスの特性を劣化させるデバイスキラー欠陥となり、歩留まりを悪化させる大きな要因となっている。
歩留り改善のために、デバイスキラー欠陥等の欠陥を有するチップをデバイス形成する前にスクリーニングし、デバイスキラー欠陥のないチップと区別することが求められている。そのため、種々の欠陥を検出する方法や欠陥を特定する方法が検討されている。例えば、特許文献1に記載の発明は、SiCエピタキシャルウェハを検査し、発見された欠陥を目立たせるために、SiCエピタキシャルウェハの欠陥周辺にドットを形成することが記載されている。SiCエピタキシャルウェハの欠陥周辺にドットを形成することで、SiCエピタキシャルウェハのチップを用いて形成したデバイスの耐圧検査等の工程においても欠陥を有するものを見逃さないと記載されている。
特許文献2に記載の発明は、マーカーを形成したエピタキシャルウェハにUV照射することで基底面転位を拡張させ、マーカーと共にフォトルミネッセンス観察を用いてその欠陥を特定すると記載されている。
特開2011-258683号公報 特開2014-022503号公報
しかしながら、特許文献1および特許文献2はSiCエピタキシャルウェハに存在する欠陥を目立たせる発明である。SiCエピタキシャルウェハに存在する欠陥には、SiC基板に存在する欠陥と、SiCエピタキシャル層に存在する欠陥とがあり、SiC基板に存在する欠陥がSiCエピタキシャル層にも引き継がれるかについての情報やそれぞれに存在する欠陥の位置情報が重要である。SiC基板に存在する欠陥がSiCエピタキシャル層に引き継がれるか否かは、SiC基板に存在する欠陥の位置情報およびSiCエピタキシャル層に存在する欠陥の位置情報を高精度に把握することで調査できる。
すなわち、本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、SiC基板及びSiCエピタキシャル層に存在する欠陥の位置を高精度に把握することのできるSiCエピタキシャルウェハを提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討の結果、SiC基板上の凹み又は穴(ピット)は、SiCエピタキシャル層が積層された際に三角欠陥の形成に起因する場合があり、位置合わせの適切な基準となることを見出した。
すなわち、本発明は上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)本発明の第1の態様にかかるSiCエピタキシャルウェハは、主面にマーカー欠陥を有するSiC基板と、前記主面上に形成されたSiCエピタキシャル層と、を有する。
(2)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハは、前記マーカー欠陥に起因して形成された三角欠陥を有していてもよい。
(3)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハは、前記マーカー欠陥の深さは前記SiC基板の主面から0.4μm以上であってもよい。
(4)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハは、前記マーカー欠陥を複数有していてもよい。
(5)上記態様にかかるSiCエピタキシャルウェハにおいて、前記マーカー欠陥の最大径は、4μm以上20μm以下であってもよい。
(6)本発明の第2の態様にかかるSiC基板およびSiCエピタキシャルウェハの評価方法は、SiC基板の主面にマーカー欠陥を形成するマーカー欠陥形成工程と、前記SiC基板の主面上にSiCエピタキシャル層を形成することによって、前記マーカー欠陥に起因して形成された三角欠陥を有するSiCエピタキシャルウェハを製造する積層工程と、前記マーカー欠陥と前記三角欠陥とに基づいて、SiC基板及び前記SiCエピタキシャルウェハの少なくとも一方の欠陥の位置を決定する欠陥位置決定工程と、を有する。
(7)上記態様にかかるSiC基板およびSiCエピタキシャルウェハの評価方法は、前記マーカー欠陥形成工程の前に、予定されているSiCエピタキシャル層の厚さに基づいて、前記SiC基板の主面上に形成する前記マーカー欠陥の位置を決定するマーカー欠陥位置決定工程を有してもよい。
(8)上記態様にかかるSiC基板およびSiCエピタキシャルウェハの評価方法において、前記欠陥位置決定工程は、前記SiCエピタキシャル層の厚さをdとすると、前記マーカー欠陥の間隔をd×{1/tan(4°)}としてもよい。
(9)上記態様にかかるSiC基板およびSiCエピタキシャルウェハの評価方法は、前記欠陥位置決定工程において、前記SiC基板及び前記SiCエピタキシャルウェハの欠陥の両方の位置を決定し、前記積層工程の前後における欠陥の位置を比較する工程をさらに有してもよい。
(10)本発明の第3の態様にかかるSiCデバイスの製造方法は、SiC基板の主面にマーカー欠陥を形成するマーカー欠陥形成工程と、前記SiC基板の主面上にSiCエピタキシャル層を形成することによって、前記マーカー欠陥に起因して形成された三角欠陥を有するSiCエピタキシャルウェハを製造する工程と、前記マーカー欠陥と前記三角欠陥とに基づいて、SiC基板及び前記SiCエピタキシャルウェハの少なくとも一方の欠陥の位置を決定する欠陥位置決定工程と、前記欠陥位置決定工程において、決定したSiC基板及び前記SiCエピタキシャルウェハの少なくとも一方の欠陥の位置に基づいて、前記SiCエピタキシャルウェハのチップ化切断によって得られる複数のチップのうち、NGチップを決定するNGチップ決定工程と、を有する。
本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハは、SiC基板及びSiCエピタキシャル層に存在する欠陥の位置を高精度に把握することができる。
本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの断面を概略的に示す断面模式図である。 本実施形態に係るSiC基板の上面のSICA像の一例である。 本実施形態に係るSiCウェハの上面を模式的に示す概略図の一例である。 本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの上面のSICA像の一例である。 本実施形態に係るSiC基板をレーザー顕微鏡で測定した結果の一例である。 SiCエピタキシャルウェハの上面のSICA像の一例である。 本実施形態に係るSiC基板のX線トポ像の一例である。 本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハのPL検査像の一例である。
以下、本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ、SiCエピタキシャルウェハの評価方法およびSiCデバイスの製造方法の好ましい例について図面を適宜参照して詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴を分かりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材質、寸法、数、配置等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
<SiCエピタキシャルウェハ>
図1は、本発明の一実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの断面模式図である。図1に示すSiCエピタキシャルウェハ100は、主面にマーカー欠陥を有するSiC基板1と、主面上に形成されたSiCエピタキシャル層2とを有する。本明細書においてSiC基板はSiCエピタキシャル層が形成されていないものをいい、SiCエピタキシャルウェハはSiC基板上にSiCエピタキシャル層が形成されているものをいう。また、本明細書においてSiCウェハとは、SiCエピタキシャルウェハおよびSiC基板のいずれも指す場合がある。
本発明のSiCエピタキシャルウェハ100に用いるSiC基板1は、4HのSiC単結晶基板であることが好ましい。
また、本発明のSiCエピタキシャルウェハ100に用いるSiC基板1はオフ角を有し、例えば、0.4°以上、8°以下のものであることが好ましい。典型的には、オフ角4°のものを用いることができる。
SiC基板1の厚さとしては特に限定するものではないが、例えば、150μm以上550μm以下のものを用いることができる。好ましくは300μm以上400μm以下のものを用いることができる。
SiC基板1のサイズとしては特に限定するものではないが、例えば、3インチ~6インチのものを用いることができる。
図2は、本実施形態に係るSiC基板1の上面を共焦点微分干渉顕微鏡とフォトルミネッセンス(PL)観察機能を併設した検査装置で観察して得られた顕微鏡像(以下、SICA像ということがある)の一例である。図2に示すSiC基板1は、1つのマーカー欠陥10を有する。
本明細書において「マーカー欠陥」とは、レーザー顕微鏡(キーエンス社製VK-9710と同様の原理の装置)を用いて観察した結果、深さが、0.4μm以上の凹み又は穴(ピット)であり、幅が4μm以上20μm以下の凹み又は穴(ピット)である。ここでいう深さとは、SiC基板1の主面の平均高さから凹み又は穴(ピット)の最深部までの厚み方向距離をいい、幅とはSiC基板1の主面の平均高さにおける凹み又は穴(ピット)の最大径のことをいう。尚、「マーカー欠陥」とは、人工的にダメージを加えて形成した凹み又は穴(ピット)である。そして、マーカー欠陥は結晶方位に寄らないため、MOSFETで形成されるようなトレンチ構造とは異なる。
マーカー欠陥の深さや幅は、原子間力顕微鏡や段差計を用いて測定されてもよい。
また、「マーカー欠陥」は、共焦点微分干渉顕微鏡とフォトルミネッセンス(PL)観察機能を併設した検査装置(レーザーテック株式会社製、SICA88と同様の原理の装置)を用いた場合に、得られた顕微鏡像(以下、SICA像ということがある)においても観察することができる。マーカー欠陥は、SICA像において、幅(増における外周の2点間を直線で結んだときの最大距離)が4μm以上20μm以下の凹み又は穴(ピット)である。
マーカー欠陥10は、公知の方法で付けることができる。マーカー欠陥10は、この例に限定されないが例えばダイヤモンドペンでSiC基板1にダメージを与えることで形成することができる。ダイヤモンドペンは、公知のダイヤモンドペンを用いることができる。例えば、先端外径が1~4mmのダイヤモンドペンを好ましく用いることができる。ダイヤモンドペンでSiC基板1にダメージを加えることによりマーカー欠陥10を形成する場合は、深さ0.4μm以上の凹み又は穴(ピット)が形成されるようにダイヤモンドペンの径、押し圧、時間や角度等を調整して行う。
また、マーカー欠陥10は、レーザーマーキングにより形成してもよい。レーザーマーキングによりマーカー欠陥10を形成する場合は深さが0.4μm以上となるように出力や波長等の条件を調整して行う。
尚、マーカー欠陥10の形成は、凹み又は穴(ピット)がSiC基板1を貫通しないように行う。
マーカー欠陥10は、SiC基板1上に少なくとも1つ備えられる。マーカー欠陥10は、後述する位置合わせの精度を向上する観点から、SiC基板1が主面に複数有することが好ましく、3つ以上有することがより好ましい。SiC基板1は、当該構成により複数のマーカー欠陥10間の角度及び距離により位置合わせをすることができるため、位置合わせの精度を向上することができる。尚、SiC基板1が過剰にマーカー欠陥10を有することは、NGチップの過剰な発生を招く恐れがある。そのため、マーカー欠陥10を形成する位置や数を、SiCエピタキシャルウェハ上に形成するチップの配置に基づき適宜調整することができる。
SiC基板1にSiCエピタキシャル層2が積層すると、マーカー欠陥10に起因して三角欠陥11が形成する。ここでいうマーカー欠陥10に起因して三角欠陥11が形成されるとは、マーカー欠陥10を起点として三角欠陥10が形成されることをいう。以下、本明細書において同様の意味で記載する。三角欠陥11の形成される方向及び大きさは、SiC基板1のオフ角、マーカー欠陥10の大きさ、SiCエピタキシャル層2の厚さ等により推測することができる。位置合わせをより高精度にするためには積層するSiCエピタキシャル層2の厚さに応じてマーカー欠陥10の位置を決定することが好ましい。具体的には、オフ角が4°のSiC基板1を用いて厚さがd(μm)のSiCエピタキシャル層2を積層した場合は、マーカー欠陥10から[11-20]方向にd×{1/tan(4°)}(μm)以上間隔を空けることが好ましい。より好ましくは、[11-20]方向に2×d×{1/tan(4°)}(μm)以上間隔を空けることが好ましい。例えば、図3に示されるSiC基板1において、マーカー欠陥10A、10B、10CのそれぞれのX方向距離であるXAB、XAC、XBCのいずれもd×{1/tan(4°)}以上であることが好ましい。当該構成により異なるマーカー欠陥10に起因して形成する三角欠陥が重なることを抑制することができる。尚、図3においてオリフラに並行な方向がX方向となっているが、X方向が[11-20]方向であればSiC基板1の向きはこの例に限定されない。
また、マーカー欠陥10は、SiCエピタキシャルウェハにデバイスを作製した際に、チップが欠けてしまいデバイスとして使用できない可能性がある外周部12に形成されることが好ましい。尚、ここで外周部12とは、SiC基板1の外周端から内周方向への距離sが3.0mm以下の領域であり、2.0mm以下の領域であることが好ましい。当該箇所にマーカー欠陥10が形成されることでチップが正常に形成される領域が三角欠陥11により特性不良となることを抑制することができる。一方、マーカー欠陥10がSiC基板1の外周端から適度な距離だけ離れることがSiCエピタキシャル層2積層時に三角欠陥11を容易に確認するために好ましい。従って、マーカー欠陥10は、SiC基板1の外周端からの距離sが1.0mm以上の位置に形成されることが好ましく、2.0mm以上の位置に形成されることがより好ましい。
位置合わせマーカー10は、特定の区画に選択的に形成しても良い。区画の大きさはSiCエピタキシャル層1の厚さに応じて決定することができる。SiC基板1を平面視したとき区画の形状が正方形の形状である場合、SiCエピタキシャル層1の厚さが5μmであるとき区画の一辺当たりの大さを80μm以上とすることが好ましくm100μm以上とすることがより好ましい。マーカー欠陥10が形成された区画に隣接する区画は、例えばSiCエピタキシャルウェハ100を用いてSiCデバイスを作成する際に、TEG(Test Element Group)領域などのデバイスとして用いない領域にすることができる。TEG領域は、形成する場所及び数を任意に選択することができるが、例えば、SiCエピタキシャルウェハ10の中心、上下、左右、の5箇所等に形成してもよい。好ましくはマーカー欠陥10に隣接して、三角欠陥11が形成され得る領域に形成する。当該構成により特性不良を示すNGチップが過剰に発生することを抑制することができる。TEGチップとは、設計・製造上の問題を見つけ出すためのチップである。
図4は、図2に示すSiC基板1にSiCエピタキシャル層を積層して形成したSiCエピタキシャルウェハ100の上面のSICA像である。図4には、図2のマーカー欠陥10の位置を拡大した図である。図4には、マーカー欠陥10に起因して形成された三角欠陥11も示される。
図5は、図2に示されるマーカー欠陥10がレーザー顕微鏡で観察された結果である。この三角欠陥の形成に起因したマーカー欠陥10は、深さが0.44μmであり、幅が4.5μmである。
図6(a)~(c)は同一のSiCエピタキシャルウェハ100の異なる位置のSICA像である。図6(a)~(c)は、それぞれ深さの異なる凹みまたは穴(ピット)をSiC基板1に有する。SiC基板1上に積層されたSiCエピタキシャル層2の厚さは、図4に示されるSiCエピタキシャルウェハ100と同一である。SiC基板1に存在する凹みまたは穴(ピット)の深さはそれぞれ図6(a)に示されるものが0.27μm、図6(b)に示されるものが0.38μm、図6(c)に示されるものが0.44μmである。図6(a)、(b)に示される深さが0.27μm、0.38μmの凹み又は穴(ピット)に起因する三角欠陥は形成されなかった。
三角欠陥11の大きさは、SiCエピタキシャル層の膜厚が厚いほど大きい。本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ100のSiCエピタキシャル層2は、任意の厚さとすることができこの例に限定されるものではないが、例えば、1~65μmとすることができ、5~35μmとすることが好ましい。三角欠陥11の形成は、SiCエピタキシャル層の膜厚に依存するが、当該範囲とすると好適に三角欠陥11の形成を行うことができる。
図7は本実施形態に係るSiCウェハ1に対してX線トポグラフィ観察を行って得たSiC基板1のX線トポ像であり、図8は本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ100の図7に対応する位置に対してPL検査を行って得たPL検査像である。一例として、X線トポ像及びPL検査像を基に位置合わせマーカーを利用して欠陥の位置を特定する場合を説明する。尚、この例で位置を特定する欠陥は基底面転位(BPD)であるが、本実施形態はこの例に限定されない。
図7及び図8に示されるように、マーカー欠陥10は、X線トポ像及びPL検査像でも観察することができる。三角欠陥11は、PL検査像でも容易に見つけることができるため、三角欠陥11の位置を基にPL検査像においてもマーカー欠陥10を容易に見つけることができる。すなわち、SiCエピタキシャルウェハ100は、X線トポ像とPL検査像といった、異なる原理を用いて観察された画像においても位置合わせを容易に行うことができる。また、異なる原理の観察方法で観察を行うことで、単一の観察方法では検出できなかったSiC基板1の欠陥およびSiCエピタキシャルウェハ100の欠陥を検出することができる。
図7及び図8には、基底面転位(BPD)が観測される。BPDは、SiC-MOSFETなどのデバイスを作製し、順方向に通電した際に、オン抵抗を増大させる積層欠陥に拡張する恐れのある、SiC基板に存在し得る欠陥の一種である。BPDには、SiCエピタキシャル層2に引き継がれるものもある。そのため、どのBPDがSiCエピタキシャル層2に引き継がれるか、またBPDはどこに位置するかを把握することが重要となる。
xy成分が同位置の領域を観察した図7および図8を比較すると確認できるが、BPDは、SiCエピタキシャルウェハ100の観察する位置に応じてxy平面位置が異なる。そのため、BPD等の欠陥は本実施形態を適用しない場合、位置を高精度に把握することが難しい。一方、マイクロパイプ等の欠陥を基準として位置合わせを行う場合、欠陥の進展方向が異なることで面内の欠陥位置が変化してしまい、数十μm程度の誤差が生じる恐れがあるなど位置合わせの精度が悪い。
また、図7に示されたBPDはSiCエピタキシャル層2に進展するBPDであったが、SiC基板1のBPDにはSiCエピタキシャル層2に進展しないBPDもある。本実施形態では、マーカー欠陥10を利用してSiC基板1のX線トポ像とSiCエピタキシャルウェハ100のPL検査像とを比較することでSiCエピタキシャル層2に進展するBPDと進展しないBPDとの識別および位置の特定を正確に行うことができる。
本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ100が有するマーカー欠陥10の位置は任意に選択することができ、かつ位置の変化がない。そのため、マーカー欠陥10やマーカー欠陥10に起因して形成する三角欠陥11の位置を基準とすることで観察するSiC基板1やSiCエピタキシャルウェハ100上の位置を誤差数μmという高精度に把握することができる。例えば、マーカー欠陥10や三角欠陥11からの距離や角度を基にSiC基板1およびSiCエピタキシャルウェハ100上の欠陥の位置を高精度に把握することができる。尚、ここでいう欠陥は、転位等の欠陥を含む。位置を把握することができる欠陥は、前述のBPDに限定されず、例えばマイクロパイプ、カーボンインクルージョン、積層欠陥(SF)、等の欠陥の位置も把握することができ、光学顕微鏡像やX線トポ像、PL検査像などに写るものであれば位置を把握することができる。また、SiC基板1がマーカー欠陥10および/または三角欠陥11(以下、位置合わせマーカーという場合がある)を複数有していた場合、複数の位置合わせマーカーの位置により求めた倍率と位置関係の基準を同倍率の他の観察装置に適用して欠陥位置を把握してもよい。
本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハ100は、位置合わせを高精度に行うことで、SiCエピタキシャルウェハ100をダイシングしてチップ化した際に、どれがNGチップとなるか高精度に把握することができる。例えば、SiC基板のX線トポ像とSiCエピタキシャルウェハのPL検査像との位置合わせを正確に行い、それぞれの検査像で位置が正確に把握される欠陥からチップ化した際にNGチップとなるものを事前に高精度に把握することができる。すなわち、NGチップを事前にスクリーニングすることができる。NGチップをスクリーニングすることでSiCエピタキシャルウェハ100を用いて製造したSiCデバイスのNGが生じたもののうちSiCエピタキシャルウェハに存在する欠陥が原因のものを事前に区別することができ、SiCデバイス製造の歩留りを向上することができる。
上述のように、本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハによれば、SiC基板及びSiCエピタキシャル層に存在する欠陥の位置を高精度に把握することができる。
<SiCエピタキシャルウェハの評価方法>
以下、SiCエピタキシャルウェハの製造方法に関する実施形態の好ましい例について図を適宜参照しながら説明する。
本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、マーカー欠陥形成工程と、積層工程と、欠陥位置決定工程と、を有する。好ましくは、マーカー欠陥形成工程の前にマーカー欠陥位置決定工程をさらに有する。
マーカー欠陥形成工程は、SiC基板の主面にマーカー欠陥を形成する。
積層工程は、SiC基板の主面上にSiCエピタキシャル層を形成することによって、前記マーカー欠陥に起因して形成された三角欠陥を有するSiCエピタキシャルウェハを製造する。
欠陥位置決定工程は、前記マーカー欠陥と前記三角欠陥とに基づいて、SiC基板及び前記SiCエピタキシャルウェハの少なくとも一方の欠陥の位置を決定する。
「マーカー位置決定工程」
マーカー欠陥位置決定工程は、予定されているSiCエピタキシャル層2の厚さに基づいて、SiC基板1の主面上に形成するマーカー欠陥10の位置を決定する工程である。主面にマーカー欠陥を有するSiC基板にSiCエピタキシャル層を積層するとマーカー欠陥10に起因して三角欠陥11がSiCエピタキシャルウェハ100に形成される。三角欠陥11の形成される向きは、SiC基板1のオフ角等に依存し、三角欠陥11の大きさは、積層するSiCエピタキシャル層11の厚さに依存する。そのため、用いるSiC基板1とSiC基板1に積層するSiCエピタキシャル層2の厚さに応じてマーカー欠陥10を形成する適切な位置を決定する。具体的には、オフ角が4°のSiC基板1を用いて厚さがd(μm)のSiCエピタキシャル層2を積層した場合は、マーカー欠陥10から[11-20]方向にd×{1/tan(4°)}以上間隔を空けることが好ましい。より好ましくは、マーカー欠陥10から[11-20]方向に2×d×{1/tan(4°)}以上間隔を空けることが好ましい。当該構成により異なるマーカー欠陥10に起因して形成する三角欠陥が重なることを抑制することができる。
三角欠陥11は、デバイスキラー欠陥となりうるため過剰に形成されることは好ましくないが、マーカー欠陥位置決定工程を行い、マーカー欠陥10を形成すべき位置を決定することで過剰に三角欠陥が形成されることを抑制することができる。また、マーカー欠陥が適度な距離だけ離間して形成されることで位置合わせの精度を向上することができる。
「マーカー欠陥形成工程」
マーカー欠陥形成工程は、SiC基板1にマーカー欠陥10を形成する工程である。マーカー欠陥10は、公知の方法で形成することができる。マーカー欠陥10を形成する方法はこの例に限定されないが、例えば、ダイヤモンドペンでSiC基板1にダメージを加えることで形成する方法等がある。
ダイヤモンドペンは、公知のダイヤモンドペンを用いることができる。例えば、先端外径が1~4mmのダイヤモンドペンを好ましく用いることができる。ダイヤモンドペンでSiC基板1にダメージを加えることによりマーカー欠陥10を形成する場合は、深さ0.4μm以上の凹み又は穴(ピット)が形成されるようにダイヤモンドペンの径、押し圧、時間や角度等を調整して行う。
また、マーカー欠陥10は、レーザーマーキングにより形成してもよい。レーザーマーキングによりマーカー欠陥10を形成する場合は深さが0.4μm以上となるように出力や波長等の条件を調整して行う。
尚、マーカー欠陥10の形成は、凹み又は穴(ピット)がSiC基板1を貫通しないように行う。
「積層工程」
積層工程は、SiC基板1の主面上にSiCエピタキシャル層2を形成することによって、マーカー欠陥10に起因して形成された三角欠陥11を有するSiCエピタキシャルウェハ100を製造する工程である。SiCエピタキシャル層2の積層は、公知の方法で行うことができる。例えば、化学気相成長法等により行うことができる。積層するSiCエピタキシャル層は、任意の構成とすることができるが、例えば1~65μmの厚さとすることが好ましく、5~35μmの厚さとすることがより好ましい。
「欠陥位置決定工程」
欠陥位置決定工程は、マーカー欠陥10と三角欠陥11とに基づいてSiC基板1およびSiCエピタキシャルウェハ100の少なくとも一方の欠陥の位置を決定する工程である。好ましくは、SiC基板1およびSiCエピタキシャルウェハ100の両方の欠陥の位置を決定する。
欠陥位置決定工程は、SiC基板1およびSiCエピタキシャルウェハ100の検査像でマーカー欠陥10や三角欠陥11の位置や角度等に基づいてSiC基板1またはSiCエピタキシャルウェハ100に存在する欠陥の位置を決定する工程である。用いることのできるSiC基板1およびSiCエピタキシャルウェハ100の検査像は、例えばSiC基板1のX線トポ像とSiCエピタキシャルウェハ100のPL検査像とである。
マーカー欠陥10は、X線トポ像及びPL検査像で観察することができる。マーカー欠陥10に起因して形成される三角欠陥11は、SiCエピタキシャル層11に存在し、PL検査像で観察することができる。PL検査像において、三角欠陥11は、マーカー欠陥10よりも容易に見つけることができる。そのため、マーカー欠陥10に起因して形成される三角欠陥11の周辺を探すことで、PL検査像においてもマーカー欠陥10を容易に見つけることができる。観測したマーカー欠陥10を基に対応する位置を観察したX線トポ像およびPL検査像を重ね合わせることで、位置合わせを行うことができる。
位置合わせを行ったX線トポ像とPL検査像とを比較することで、X線トポ像で観測されるBPDのうちのどれがSiCエピタキシャル層2に引き継がれたかを確認することができる。また、マーカー欠陥10および/または三角欠陥11からの距離や角度によりBPDの位置を決定することができる。欠陥がBPDである場合の例を上述したが、この例に限定されずBPD以外の欠陥に対しても同様の手法を行うことにより位置を決定することができる。
SiC基板1及びSiCエピタキシャルウェハ100の欠陥の両方の位置を決定した場合、両方の位置を比較することで、積層工程の前後における欠陥の位置を比較することができる。SiC基板1を用いてMOSFETを形成すると、SiC基板1上のBPDは、SiCエピタキシャル層2が成膜された際に、貫通刃状転位に変換するものとBPDのまま残存するものと、に分類される。MOSFETのボディダイオードに順方向電流を流すとBPDのまま残存するものは高抵抗でありデバイス特性を悪化させる積層欠陥(SF)に拡張する場合がある。SiC基板1及びSiCエピタキシャルウェハ100の欠陥の両方の位置を決定した場合、両方の位置を比較することで、デバイス特性を悪化させる恐れのある欠陥等を分類し、特性不良を示す位置を把握することができる。
尚、X線トポ像のみまたはPL検査像のみを基に位置合わせマーカーからの距離や角度を用いることのみで欠陥の位置決定を行ってもよい。また、X線トポ像及びPL検査像以外の検査像を適宜組み合わせることや代用することで位置決定工程を行ってもよい。
X線トポ像及びPL検査像以外の検査像を組み合わせて用いる場合、X線トポ像及びPL検査像の倍率と位置合わせマーカーの位置関係を他の検査像に適用することができる。X線トポ像及びPL検査像に代用して検査像を用いる場合、X線トポ像及びPL検査像を用いる場合と同様にして位置合わせ及び欠陥の位置決定を行うことができる。
本実施形態に係るSiC基板及びSiCエピタキシャルウェハの評価方法は、位置合わせマーカーを基準としてそれぞれ欠陥位置を決定することで、高精度にSiC基板及びSiCエピタキシャルウェハの欠陥の位置を決定することができる。
<SiCデバイスの製造方法>
本実施形態にかかるSiCデバイスは、マーカー欠陥形成工程と、積層工程と、欠陥位置決定工程と、NGチップ決定工程と、デバイス形成工程とを有する。マーカー欠陥形成工程と、積層工程と、欠陥位置決定工程と、は上述のSiCエピタキシャルウェハの評価方法に記載した工程を行うことができる。デバイス形成工程は、SiCチップを用いて、公知の方法でデバイス形成を行うことができる。
「NGチップ決定工程」
NGチップ決定工程は、欠陥位置決定工程において決定したSiC基板1及びSiCエピタキシャルウェハ100の少なくとも一方の欠陥の位置に基づいて、SiCエピタキシャルウェハ100のチップ化切断によって得られる複数のチップのうち、NGチップを決定する工程である。NGチップは、SiCデバイスを形成するチップに混ざらないよう区別される。
チップ化切断は、公知の方法で行うことができるが、欠陥の位置がチップに含まれることを避けて切断してもよい。NGチップは、SiCデバイスを形成した際に特性不良を示すチップである。NGチップは例えば、デバイスを形成する領域にデバイスキラー欠陥が含まれるチップである。
また、必ずしも特性不良を示す領域ではないが、特性不良を示す恐れのある領域をTEGなどのデバイスに使用しない領域にしても良い。例えば、SiCエピタキシャル層の厚さがd(μm)のとき、[11-20]方向2×d×{1/tan(4°)}以下の領域をTEGなどのデバイスとして使用しない領域にすることが好ましく、[11-20]方向にd×{1/tan(4°)}以下の領域をTEGなどデバイスに使用しない領域にすることがより好ましい。当該構成によりNGチップの発生を抑制することができる。尚、ここで図3におけるマーカー欠陥10からのY方向距離がd×{1/tan(4°)}以上の領域は、マーカー欠陥10からのX方向距離が当該範囲であったとしても特性不良を示す恐れが低く、デバイスとして用いることができる。
位置合わせマーカー10は、特定の区画に選択的に形成されている場合、マーカー欠陥10が形成された区画に隣接した区画は、例えばSiCエピタキシャルウェハ100を用いてSiCデバイスを作成する際に、TEG(Test Element Group)などのデバイスとして用いない領域とすることができる。三角欠陥11が形成される予定の区画をTEG領域とする構成により特性不良を示すNGチップが過剰に発生することを抑制することができる。
本実施形態に係るSiCデバイスの製造方法は、SiCデバイス形成する前にNGチップ決定工程によりNGチップを事前に決定し、スクリーニングすることができる。本実施形態に係るSiCデバイスの製造方法は、欠陥の位置を数μmの精度で決定することができることにより、NGチップを高精度に区別し、歩留まりを向上することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
1 SiC基板
2 SiCエピタキシャル層
10 マーカー欠陥
11 三角欠陥
100 SiCエピタキシャルウェハ

Claims (9)

  1. 主面にマーカー欠陥を有するSiC基板と、
    前記主面上に形成されたSiCエピタキシャル層と、を有するSiCエピタキシャルウェハであって
    前記マーカー欠陥に起因して形成された三角欠陥を有する、SiCエピタキシャルウェハ。
  2. 前記マーカー欠陥の深さは前記SiC基板の主面から0.4μm以上である、請求項1に記載のSiCエピタキシャルウェハ。
  3. 前記マーカー欠陥を複数有する、請求項1又は2に記載のSiCエピタキシャルウェハ。
  4. 前記マーカー欠陥の最大径は、4μm以上20μm以下である、請求項1~のいずれか一項に記載のSiCエピタキシャルウェハ。
  5. SiC基板の主面にマーカー欠陥を形成するマーカー欠陥形成工程と、
    前記SiC基板の主面上にSiCエピタキシャル層を形成することによって、前記マーカー欠陥に起因して形成された三角欠陥を有するSiCエピタキシャルウェハを製造する積層工程と、
    前記マーカー欠陥と前記三角欠陥とに基づいて、SiC基板及び前記SiCエピタキシャルウェハの少なくとも一方の欠陥の位置を決定する欠陥位置決定工程と、を有するSiC基板及びSiCエピタキシャルウェハの評価方法。
  6. 前記マーカー欠陥形成工程の前に、予定されているSiCエピタキシャル層の厚さに基づいて、前記SiC基板の主面上に形成する前記マーカー欠陥の位置を決定するマーカー欠陥位置決定工程を有する、請求項に記載のSiC基板及びSiCエピタキシャルウェハの評価方法。
  7. 前記欠陥位置決定工程は、前記SiCエピタキシャル層の厚さをdとすると、
    前記マーカー欠陥の間隔をd×{1/tan(4°)}とする、請求項またはに記載のSiC基板及びSiCエピタキシャルウェハの評価方法。
  8. 前記欠陥位置決定工程は、前記SiC基板及び前記SiCエピタキシャルウェハの欠陥の両方の位置を決定し、前記積層工程の前後における欠陥の位置を比較する工程をさらに有する、請求項のいずれか一項に記載のSiC基板及びSiCエピタキシャルウェハの評価方法。
  9. SiC基板の主面にマーカー欠陥を形成するマーカー欠陥形成工程と、
    前記SiC基板の主面上にSiCエピタキシャル層を形成することによって、前記マーカー欠陥に起因して形成された三角欠陥を有するSiCエピタキシャルウェハを製造する工程と、
    前記マーカー欠陥と前記三角欠陥とに基づいて、SiC基板及び前記SiCエピタキシャルウェハの少なくとも一方の欠陥の位置を決定する欠陥位置決定工程と、
    前記欠陥位置決定工程において、決定したSiC基板及び前記SiCエピタキシャルウェハの少なくとも一方の欠陥の位置に基づいて、前記SiCエピタキシャルウェハのチップ化切断によって得られる複数のチップのうち、NGチップを決定するNGチップ決定工程と、を有する、SiCデバイスの製造方法。
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