JP7353485B2 - 損傷図作成支援方法及び装置 - Google Patents

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Description

本発明は、損傷図作成支援方法及び装置に係り、特に、構造物の検査結果に基づく損傷図の作成を支援する損傷図作成支援方法及び装置に関する。
構造物の表面を撮影した画像に対し、画像処理によってひび割れ等の損傷(変状)を自動検出し、表示する技術が知られている(たとえば、特許文献1等)。
特開2014-6222号公報
しかしながら、従来、この種の損傷の自動検出技術では、検出された損傷が一律に表示されるため、必要以上の情報が表示される問題があった。たとえば、近年、ひび割れについては、検出精度の向上により、より細かなひび割れの検出が可能になっているが、要求されるレベル以上のひび割れが表示されると、却って結果の確認がしづらくなるという問題がある。一方、同じ検査対象領域内であっても場所によっては、細かなひび割れも確認したい場合もある。たとえば、内部に損傷がある領域については、表面の状態を細かに確認する必要がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、画像から自動で検出したひび割れの検出結果を適切に記録できる損傷図作成支援方法及び装置を提供することを目的とする。
(1)検査対象領域内で構造物の内部に損傷を有する領域の情報を取得するステップと、検査対象領域を可視光カメラで撮影した可視光画像を取得するステップと、可視光画像内で構造物の表面に現れたひび割れを検出するステップと、可視光画像内で検出されたひび割れをトレースした損傷図を作成するステップであって、内部に損傷を有する領域以外の領域は、幅が第1閾値以上のひび割れをトレースし、内部に損傷を有する領域は、幅が第1閾値よりも小さい第2閾値以上のひび割れをトレースして、損傷図を作成するステップと、を含む損傷図作成支援方法。
(2)可視光画像は、少なくとも幅が0.1mmまでのひび割れを検出できる画素分解能で撮影した画像であり、第1閾値は、0.2mmであり、第2閾値は、0.1mmである、(1)の損傷図作成支援方法。
(3)検査対象領域の内部状態を非破壊で計測して、内部に損傷を有する領域を検出するステップを更に含む、(1)の損傷図作成支援方法。
(4)検査対象領域の内部状態を可視化した画像を撮影して、検査対象領域の内部状態を非破壊で計測する、(3)の損傷図作成支援方法。
(5)電磁波又は超音波を用いて検査対象領域の内部状態を可視化した画像を撮影する、(4)の損傷図作成支援方法。
(6)ミリ波、マイクロ波又はテラヘルツ波を用いて検査対象領域の内部状態を可視化した画像を撮影する、(5)の損傷図作成支援方法。
(7)検査対象領域の内部状態を非接触音響探査法で計測する、(2)の損傷図作成支援方法。
(8)構造物の内部に損傷を有する領域として、浮きの領域を検出する、(1)から(7)のいずれか一の損傷図作成支援方法。
(9)構造物の表面に現れたひび割れを記録した損傷図の作成を支援する損傷図作成支援装置であって、プロセッサを有し、プロセッサは、検査対象領域内で構造物の内部に損傷を有する領域の情報を取得する処理と、検査対象領域を可視光カメラで撮影した可視光画像を取得する処理と、可視光画像内で構造物の表面に現れたひび割れを検出する処理と、可視光画像内で検出されたひび割れをトレースした損傷図を作成する処理であって、内部に損傷を有する領域以外の領域は、幅が第1閾値以上のひび割れをトレースし、内部に損傷を有する領域は、幅が第1閾値よりも小さい第2閾値以上のひび割れをトレースして、損傷図を作成する処理と、を実行する損傷図作成支援装置。
(10)可視光画像は、少なくとも幅が0.1mmまでのひび割れを検出できる画素分解能で撮影した画像であり、第1閾値は、0.2mmであり、第2閾値は、0.1mmである、(9)の損傷図作成支援装置。
本発明によれば、画像から自動で検出したひび割れの検出結果を適切に記録できる。
損傷図作成支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図 損傷図作成支援装置が有する主な機能のブロック図 内部損傷領域の指定を行う画面の表示の一例を示す図 床版の概略構成を示す平面図 検査から損傷図の作成までの手順を示すフローチャート 分割撮影の撮影手法の一例を示す図 損傷図作成支援装置による損傷図の作成の手順を示すフローチャート 可視光画像上で検出されたすべてのひび割れをトレースした場合に作成される損傷図の一例を示す図 損傷図作成支援装置で作成される損傷図の一例を示す図 ひび割れの種類ごとにレイヤを分けて生成した損傷図の一例を示す図
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
[損傷図作成支援装置]
図1は、損傷図作成支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
同図に示すように、損傷図作成支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、HDD(Hard Disk Drive)14、操作部15、表示部16、入出力インターフェース(Interface,IF)17、通信インターフェース18等を備えて構成される。すなわち、損傷図作成支援装置10は、コンピュータで構成され、コンピュータが、所定のプログラムを実行することで、損傷図作成支援装置10として機能する。損傷図作成支援装置10を構成するコンピュータには、たとえば、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータを使用できる。CPU11は、プロセッサの一例である。ROM13及び/又はHDD14には、CPU11が実行するプログラム及び各種データが記憶される。操作部15は、たとえば、キーボード、マウス等で構成される。表示部16は、たとえば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display,LCD)、有機ELディスプレイ(Organic Light Emitting Diode display,OLED display)等で構成される。
図2は、損傷図作成支援装置が有する主な機能のブロック図である。
同図に示すように、損傷図作成支援装置10は、画像データ取得部10A、ひび割れ検出部10B、パノラマ合成部10C、内部損傷領域情報取得部10D、及び、損傷図作成部10E等の機能を有する。これらの機能は、CPU11が、所定のプログラムを実行することにより実現される。
画像データ取得部10Aは、検査対象領域を撮影した可視光画像の画像データを取得する。画像データ取得部10Aは、入出力インターフェース17又は通信インターフェース18を介して、可視光画像の画像データを取得する。取得した可視光画像の画像データは、HDD14に格納される。
ひび割れ検出部10Bは、可視光画像を解析して、構造物の表面に現れたひび割れを検出する。ひび割れの検出には、種々の手法を採用できる。たとえば、ひび割れを含む画像を学習用データとして機械学習した学習済みモデルを用いて、ひび割れを検出する手法を採用できる。機械学習アルゴリズムの種類については、特に限定されず、たとえば、RNN(Recurrent Neural Network/再帰型ニューラルネットワーク)、CNN(Convolutional Neural Network/畳み込みニューラルネットワーク)又はMLP(Multilayer Perceptron/多層パーセプトロン)等のニューラルネットワークを用いたアルゴリズムを用いることができる。また、たとえば、画像の輝度分布及びRGB値分布に基づいて、ひび割れを検出する手法を採用することもできる。ひび割れを有する領域は、他の領域と異なる輝度分布及びRGB値分布となるため、輝度値及びRGB値の変化を探索することにより、画像からひび割れを検出できる。
ひび割れ検出部10Bは、ひび割れの検出と同時に、検出したひび割れの幅を計測する。ひび割れの幅の計測には、公知の画像計測の技術を採用できる。
パノラマ合成部10Cは、分割撮影した可視光画像の画像データ群を取得した場合に、パノラマ合成して1枚の画像を生成する。分割撮影とは、検査対象領域を複数の領域に分割し、領域ごとに撮影する手法である。撮影の際は、隣接する領域の一部を重複させて撮影する。パノラマ合成部10Cは、各領域を撮影した画像を繋ぎ合わせて、1枚の画像を生成する。パノラマ合成自体は、公知の技術であるので、その詳細についての説明は省略する。パノラマ合成部10Cは、必要に応じて、各画像に拡縮補正、あおり補正及び回転補正等の補正を施して、パノラマ合成の処理を行う。なお、ひび割れの検出は、パノラマ合成後の画像に対して行う構成とすることもできる。
内部損傷領域情報取得部10Dは、検査対象領域内で構造物の内部に損傷を有する領域(内部損傷領域)の情報を取得する。本実施の形態では、検査対象領域を撮影した可視光画像を利用して、内部損傷領域の情報を取得する。具体的には、検査対象領域を撮影した可視光画像を表示部16に表示し、画面上で内部損傷領域の指定を受け付けることにより、内部損傷領域の情報を取得する。
図3は、内部損傷領域の指定を行う画面の表示の一例を示す図である。なお、同図は、橋梁における床版の1つの格間を撮影した場合の例を示している。すなわち、床版の1つの格間を検査対象領域とした場合の例を示している。
同図に示すように、表示部16の画面16Aに検査対象領域を撮影した可視光画像IMが表示される。なお、検査対象領域を分割撮影した場合は、パノラマ合成した画像が表示部16に表示される。図3は、パノラマ合成した画像を表示した場合の例を示している。ユーザは、操作部15を介してポインタPを操作し、表示部16の画面16A上で内部損傷領域の位置及び範囲を指定する。図3は、内部損傷領域を矩形の枠Fで囲んで指定する場合の例を示している。符号Wは、内部の損傷を模式的に示している。
損傷図作成部10Eは、ひび割れの情報を記録した損傷図を作成する。本実施の形態では、検査対象領域を撮影した可視光画像上でひび割れをトレースして損傷図を作成する。したがって、損傷図作成部10Eは、ひび割れ検出部10Bによるひび割れの検出結果に基づいて、損傷図を作成する。また、損傷図作成部10Eは、損傷図を作成する際、内部損傷領域情報取得部10Dで取得された内部損傷領域の情報に基づいて、損傷図を作成する。具体的には、内部損傷領域以外の領域は、幅が第1閾値以上のひび割れをトレースする。一方、内部損傷領域は、幅が第2閾値以上のひび割れをトレースする。第1閾値及び第2閾値の関係は、第1閾値>第2閾値である。すなわち、第2閾値は、第1閾値よりも小さい値に設定される。本実施の形態では、第1閾値が0.2mmに設定され、第2閾値が0.1mmに設定される。したがって、内部損傷領域以外の領域は、幅が0.2mm以上のひび割れがトレースされ、内部損傷領域は、幅が0.1mm以上のひび割れがトレースされて、損傷図が作成される。
作成された損傷図は、表示部16に表示される。また、ユーザからの指示に応じて、HDD14に記録される。HDD14に記録する際は、可視光画像の画像データも記録される。可視光画像の画像データは、損傷図に関連付けられて、HDD14に記録される。
[検査から損傷図の作成までの手順(損傷図作成支援方法)]
ここでは、橋梁、特に、橋梁の床版を検査(点検)する場合を例に説明する。橋梁は、構造物の一例である。また、床版は、鉄筋コンクリート製の構造物の一例である。
図4は、床版の概略構成を示す平面図である。
一般に床版1の検査は、格間単位で実施される。したがって、各格間2、2、…が、検査対象領域に設定される。格間2は、床版1において、主桁3及び横桁4によって区分けされる一区画である。なお、図4では、床版1の面内で、床版1の長手方向(主桁3の方向)をx方向、x方向と直交する方向(横桁4の方向)をy方向としている。また、床版1と直交する方向(垂直下方向)をz方向としている。
図5は、検査から損傷図の作成までの手順を示すフローチャートである。
まず、検査対象領域の内部状態を非破壊で検査する(ステップS1)。次に、検査対象領域を可視光カメラで撮影する(ステップS2)。次に、撮影した可視光画像を損傷図作成支援装置10に取り込み、損傷図を作成する(ステップS3)。以下、各工程を詳細に説明する。
(1)S1:内部状態の検査
本実施の形態では、検査対象領域の内部状態を可視化した画像を撮影して、検査対象領域の内部状態を非破壊で計測する。
本実施の形態では、ミリ波カメラ(ミリ波イメージング装置)を用いて、検査対象領域の内部状態を可視化した画像(ミリ波画像)を撮影する。ミリ波カメラには、たとえば、能動型(アクティブ)のミリ波カメラを使用できる。能動型のミリ波カメラは、ミリ波を被写体に照射し、その反射波を受信して、被写体の内部状態を可視化した画像を生成する。ミリ波とは、波長が1~10mm、周波数が30~300GHzの電磁波である。ミリ波カメラは、たとえば、ミリ波ビームを電子的又は機械的に走査して、画角内の被写体の内部状態を二次元画像化する。複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを使用することで、撮影を高速化することができる。たとえば、複数の受信アンテナを一方向に配列し、配列方向と直交する方向に走査して、二次元画像化することができる。複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを使用する場合は、いわゆるMIMO(Multiple Input Multiple Output)レーダ技術を採用することで、分解能を向上できる。MIMOは、複数アンテナから信号を送信することで、実装されている受信アンテナ数以上の仮想受信アンテナを生み出す技術である。
1回の撮影で検査対象領域のすべてを撮影できない場合は、撮影個所をずらしつつ複数回に分けて撮影する。すなわち、分割撮影を実施する。
ミリ波画像を撮影することにより、外観からは検出できない内部の損傷を検出できる。本実施の形態では、とくに、内部の損傷として、コンクリートの浮きを検出する。コンクリートの浮きとは、コンクリートの表面付近が浮いた状態のことをいう。コンクリートの浮きは、コンクリートの内部でひび割れが連続するなどして、表面付近のコンクリートが、内部のコンクリートと一体性を失いつつある状態を意味する。
(2)S2:可視光画像の撮影
可視光画像の撮影は、可視光カメラを用いて行われる。可視光カメラは、可視光の波長帯域(一般に380nmから780nm)に感度をもって被写体を撮影するカメラである。可視光カメラには、CMOSイメージセンサ(complementary metal-oxide semiconductor device image sensor)、CCDイメージセンサ(charge coupled device image sensor)等を搭載した一般的なデジタルカメラ(携帯端末等に搭載されているものを含む)を使用できる。本実施の形態では、カラー撮影が可能なデジタルカメラが使用される。したがって、可視光画像として、カラー画像が撮影される。カラー画像は、画素単位でR(red;赤)、G(green;緑)及びB(blue;青)の各強度値(輝度値)を有する画像(いわゆるRGB画像)である。
1回の撮影で検査対象領域のすべてを撮影できない場合は、撮影個所をずらしつつ、複数回に分けて撮影する。すなわち、分割撮影を実施する。
図6は、分割撮影の撮影手法の一例を示す図である。
同図において、符号Aで示す破線の枠は、1回の撮影範囲(可視光カメラの視野)を示す枠である。同図に示す例では、y方向及びx方向に順次移動しながら、検査対象領域である格間2を撮影する様子を示している。図中の矢印aは、移動方向を示している。
撮影者(検査技術者)は、床版に対して正対し、一定距離から撮影する。また、隣り合う撮影領域において、互いに一部が重なり合うように撮影する。たとえば、30%以上重複するように撮影する。これにより、パノラマ合成する際に適切に画像を合成できる。
撮影は、所定の画素分解能で実施する。撮影した可視光画像から少なくとも幅が第2閾値以上のひび割れを検出できる画素分解能で撮影する。本実施の形態では、第2閾値が0.1mmであるので、撮影した可視光画像から少なくとも幅が0.1mm以上のひび割れを検出できる画素分解能で撮影する。より具体的には、損傷図作成支援装置10のひび割れ検出部10Bにおいて、幅が0.1mm以上のひび割れを検出できる画素分解能で撮影する。
ここで、「画素分解能」とは、可視光カメラに搭載されるイメージセンサの1画素当たりの視野の大きさのことをいう。画素分解能は、イメージセンサの1画素が何mmに相当するかを表す。単位は「mm/画素」である。
画素分解能は、視野サイズ及び画素数によって定まる。「視野サイズ」は、検査対象物を撮影する範囲(撮影範囲)である。画素分解能、視野サイズ及び画素数の関係は、次の式で表される。
垂直方向の画素分解能=垂直方向の視野サイズ(mm)÷イメージセンサの垂直方向の画素数
水平方向の画素分解能=水平方向の視野サイズ(mm)÷イメージセンサの水平方向の画素数
イメージセンサの画素が、正方画素の場合、垂直方向の画素分解能と水平方向の画素分解能は同じになる。
上記のように、本実施の形態では、撮影された可視光画像から幅が0.1mmまでのひび割れを検出できる画素分解能で撮影される。撮影された可視光画像から少なくとも幅が0.1mmまでのひび割れを検出できる画素分解能としては、たとえば、0.3[mm/画素]である。
一例として、使用する可視光カメラに搭載されたイメージセンサの画素数が、垂直方向に3000画素、水平方向に4000画素であるとする。この場合、画素分解能0.3[mm/画素]の条件で撮影するための視野サイズは、次のように設定される。
垂直方向の視野サイズ:0.3mm×3000画素=900[mm]
水平方向の視野サイズ:0.3mm×4000画素=1200[mm]
(3)S3:損傷図の作成
損傷図の作成は、損傷図作成支援装置10を用いて行われる。ユーザ(検査技術者)は、可視光カメラで撮影した検査対象領域の可視光画像を損傷図作成支援装置10に入力し、損傷図を作成させる。
図7は、損傷図作成支援装置による損傷図の作成の手順を示すフローチャートである。
まず、検査対象領域を撮影した可視光画像の画像データを取り込む(ステップS31)。画像データは、入出力インターフェース17又は通信インターフェース18を介して、損傷図作成支援装置10に入力される。
画像データが入力されると、ひび割れの検出が行われる(ステップS32)。本実施の形態では、少なくとも幅が0.1mm以上のひび割れが検出される。
ひび割れの検出が完了すると、パノラマ合成の処理が行われる(ステップS33)。なお、この処理は、分割撮影された画像が入力された場合だけである。
次に、内部損傷領域の情報を取得する(ステップS34)。上記のように、本実施の形態では、検査対象領域を撮影した可視光画像を表示部16に表示して、ユーザから内部損傷領域の指定を受け付ける。ユーザは、内部状態の検査の結果に基づいて、内部損傷領域を指定する。
次に、ひび割れの検出結果、及び、内部損傷領域の情報に基づいて、損傷図を作成する(ステップS35)。損傷図は、検査対象領域を撮影した可視光画像上でひび割れをトレースして作成する。その際、内部損傷領域以外の領域は、幅が0.2mm以上のひび割れをトレースし、内部損傷領域は、幅が0.1mm以上のひび割れをトレースして、損傷図を作成する。
図8は、可視光画像上で検出されたすべてのひび割れをトレースした場合に作成される損傷図の一例を示す図である。
同図において、太線L1は、幅が0.2mm以上のひび割れをトレースした線を示している。一方、細線L2は、0.1mm以上、0.2mm未満のひび割れをトレースした線を示している。また、同図において、矩形の枠Fは、内部損傷領域を示している。
図9は、本実施の形態の損傷図作成支援装置で作成される損傷図の一例を示す図である。
同図に示すように、本実施の形態の損傷図作成支援装置10で作成される損傷図では、幅が0.1mm以上のひび割れは、内部損傷領域においてのみ表示される。すなわち、全体として、幅が0.2mm以上のひび割れが表示され、内部損傷領域についてのみ、幅が0.1mm以上のひび割れが表示される。
作成された損傷図は、表示部16に表示される。また、ユーザからの指示に応じて、HDD14に記録される。HDD14には、検査対象領域を撮影した可視光画像の画像データも記録される。可視光画像の画像データは、損傷図に関連付けられて、HDD14に記録される。
以上説明したように、本実施の形態の損傷図作成支援装置10によれば、用途に応じて適切にひび割れを記録した損傷図を作成できる。すなわち、表面の性状を詳細に確認する必要がある領域についてのみ、微細なひび割れ(0.2mm未満のひび割れ)の検出結果が表示される。これにより、確認しやすい損傷図を作成できる。
[変形例]
[ひび割れの検出]
上記実施の形態では、検査対象領域のすべての領域において、幅が0.1mm以上のひび割れ(第2閾値以上のひび割れ)を検出する構成としているが、内部損傷領域と、内部損傷領域以外の領域とを分けて、ひび割れを検出する構成としてもよい。この場合、内部損傷領域では、幅が0.1mm以上のひび割れを検出し、内部損傷領域以外の領域では、幅が0.2mm以上のひび割れを検出する。
[損傷図の作成]
検査対象領域のすべての領域で幅が0.1mm以上のひび割れを記録した損傷図(図8参照)を別途作成してもよい。これにより、必要に応じて、全ひび割れを記録した損傷図を表示させることができる。また、ひび割れの種類ごとにレイヤを分けた損傷図を作成してもよい。
図10は、ひび割れの種類ごとにレイヤを分けて生成した損傷図の一例を示す図である。
同図は、損傷図が3つのレイヤ(第1レイヤLy1~第3レイヤLy3))で構成される場合の例を示している。第1レイヤLy1は、幅が0.2mm以上のひび割れを記録したレイヤで構成される。第2レイヤLy2は、幅が0.1mm以上、0.2mm未満のひび割れを記録したレイヤで構成される。第3レイヤLy3は、内部損傷領域についてのみ幅が0.1mm以上、0.2mm未満のひび割れを記録したレイヤで構成される。このような構成の損傷図によれば、たとえば、第1レイヤLy1と第3レイヤLy3とを選択して表示させることにより、内部損傷領域については、幅が0.1mm以上のひび割れが表示され、その他の領域は、幅が0.2mm以上のひび割れが表示された損傷図が表示される。また、第1レイヤLy1と第2レイヤLy2とを選択して表示させることにより、すべての領域で幅が0.1mm以上のひび割れが表示された損傷図が表示される。
また、検出されたひび割れについては、たとえば、個別にナンバリングし、ひび割れごとに幅の情報を管理するようにしてもよい。
[検査対象領域の内部状態を非破壊で計測する手段]
上記実施の形態では、ミリ波カメラにより構造物の内部状態を可視化した画像を撮影して、構造物の内部状態を非破壊で計測する構成としている。構造物の内部状態を非破壊で計測する手段及び方法は、これに限定されるものではない。たとえば、マイクロ波、テラヘルツ波等の電磁波を用いて内部状態を可視化する装置(マイクロ波イメージング装置、テラヘルツイメージング装置等)を使用して、構造物の内部状態を計測する構成とすることもできる(電磁波レーダ法)。また、超音波を用いて内部状態を可視化する装置(超音波イメージング装置等)を使用して、構造物の内部状態を計測する構成とすることもできる(いわゆる、超音波法)。この他、赤外線写真法、X線造影撮影法、非接触音響探査法等の公知の非破壊探査法を採用して、構造物の内部状態を計測する構成とすることができる。
[内部損傷領域の情報を取得する手段]
上記実施の形態では、内部損傷領域をユーザが手動で入力する構成としているが、内部損傷領域の情報を取得する手法は、これに限定されるものではない。たとえば、内部に損傷を有する領域をチョーク等で示し、可視光画像からチョーク等で示された領域を自動認識して、内部損傷領域の情報を取得する構成とすることもできる。また、内部損傷領域の情報が記録された損傷図の情報を取得して、内部損傷領域の情報を取得する構成とすることもできる。更に、構造物の内部状態を可視化した画像を撮影して、構造物の内部状態を計測する場合には、撮影した画像データを取得して、内部損傷領域の情報を取得する構成とすることもできる。この場合、構造物の内部状態を可視化した画像を解析して、損傷領域を検出し、内部損傷領域の情報を自動で取得する。
[検査対象]
本発明は、橋梁、トンネル、ダム、建築物などの鉄筋コンクリート製の構造物を検査する場合に特に有効に作用する。ただし、本発明の適用は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、表面がタイル、レンガ等で構成された構造物を検査する場合にも同様に適用できる。
また、上記実施の形態では、構造物の内部の損傷として、コンクリートの浮きを検査する場合を例に説明したが、検査対象とする内部の損傷の種類は、これに限定されるものではない。
[撮影手法]
可視光カメラによる撮影は、たとえば、可視光カメラを無人航空機(いわゆるドローン)、無人走行車等に搭載して行うこともできる。
また、可視光カメラを無人航空機等に搭載して検査対象を撮影する場合は、自動で撮影する構成とすることもできる。たとえば、あらかじめ定められたルートを自動で飛行し、検査対象を撮影する構成としてもよい。
構造物の内部状態を可視化した画像を撮影して、構造物の内部状態を非破壊で計測する場合についても同様に、カメラ(イメージング装置)を無人航空機、無人走行車等に搭載して撮影することができる。
[システム構成]
上記実施の形態では、損傷図作成支援装置が、いわゆるスタンドアローンコンピュータで実現されているが、クライアントサーバ型のシステムで実現することもできる。たとえば、ひび割れ検出部10B、パノラマ合成部10C、内部損傷領域情報取得部10D、及び、損傷図作成部10E等の機能については、サーバが実現する構成としてもよい。この場合、クライアント端末には、サーバに対して画像を送信する機能、サーバから結果(パノラマ合成した画像、損傷図のデータ等)を受信する機能等が備えられる。
また、損傷図作成支援装置を実現するハードウェアは、各種のプロセッサで構成できる。各種プロセッサには、プログラムを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU及び/又はGPU(Graphic Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device,PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。点検支援装置を構成する1つの処理部は、上記各種プロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。たとえば、1つの処理部は、複数のFPGA、あるいは、CPUとFPGAの組み合わせによって構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第一に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第二に、システムオンチップ(System on Chip,SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種プロセッサを1つ以上用いて構成される。更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
1 床版
2 格間
3 主桁
4 横桁
10 損傷図作成支援装置
10A 画像データ取得部
10B ひび割れ検出部
10C パノラマ合成部
10D 内部損傷領域情報取得部
10E 損傷図作成部
11 CPU
12 RAM
13 ROM
14 HDD
15 操作部
16 表示部
16A 表示部の画面
17 入出力インターフェース
18 通信インターフェース
a 撮影の移動方向
F 内部損傷領域を囲う枠
IM 可視光画像
L1 幅が0.2mm以上のひび割れをトレースした線
L2 幅が0.1mm以上、0.2mm未満のひび割れをトレースした線
Ly1 損傷図の第1レイヤ
Ly2 損傷図の第2レイヤ
Ly3 損傷図の第3レイヤ
P ポインタ
W 構造物の内部の損傷
S1~S3 検査から損傷図の作成までの手順
S31~S35 損傷図作成支援装置による損傷図の作成の手順

Claims (10)

  1. 検査対象領域内で構造物の内部に損傷を有する領域の情報を取得するステップと、
    前記検査対象領域を可視光カメラで撮影した可視光画像を取得するステップと、
    前記可視光画像内で前記構造物の表面に現れたひび割れを検出するステップと、
    前記可視光画像内で検出されたひび割れをトレースした損傷図を作成するステップであって、内部に損傷を有する領域以外の領域は、幅が第1閾値以上のひび割れをトレースし、内部に損傷を有する領域は、幅が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以上のひび割れをトレースして、前記損傷図を作成するステップと、
    を含む損傷図作成支援方法。
  2. 前記可視光画像は、少なくとも幅が0.1mmまでのひび割れを検出できる画素分解能で撮影した画像であり、
    前記第1閾値は、0.2mmであり、
    前記第2閾値は、0.1mmである、
    請求項1に記載の損傷図作成支援方法。
  3. 前記検査対象領域の内部状態を非破壊で計測して、内部に損傷を有する領域を検出するステップを更に含む、
    請求項1に記載の損傷図作成支援方法。
  4. 前記検査対象領域の内部状態を可視化した画像を撮影して、前記検査対象領域の内部状態を非破壊で計測する、
    請求項3に記載の損傷図作成支援方法。
  5. 電磁波又は超音波を用いて前記検査対象領域の内部状態を可視化した画像を撮影する、
    請求項4に記載の損傷図作成支援方法。
  6. ミリ波、マイクロ波又はテラヘルツ波を用いて前記検査対象領域の内部状態を可視化した画像を撮影する、
    請求項5に記載の損傷図作成支援方法。
  7. 前記検査対象領域の内部状態を非接触音響探査法で計測する、
    請求項2に記載の損傷図作成支援方法。
  8. 前記構造物の内部に損傷を有する領域として、浮きの領域を検出する、
    請求項1から7のいずれか1項に記載の損傷図作成支援方法。
  9. 構造物の表面に現れたひび割れを記録した損傷図の作成を支援する損傷図作成支援装置であって、
    プロセッサを有し、
    前記プロセッサは、
    検査対象領域内で前記構造物の内部に損傷を有する領域の情報を取得する処理と、
    前記検査対象領域を可視光カメラで撮影した可視光画像を取得する処理と、
    前記可視光画像内で前記構造物の表面に現れたひび割れを検出する処理と、
    前記可視光画像内で検出されたひび割れをトレースした損傷図を作成する処理であって、内部に損傷を有する領域以外の領域は、幅が第1閾値以上のひび割れをトレースし、内部に損傷を有する領域は、幅が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以上のひび割れをトレースして、前記損傷図を作成する処理と、
    を実行する損傷図作成支援装置。
  10. 前記可視光画像は、少なくとも幅が0.1mmまでのひび割れを検出できる画素分解能で撮影した画像であり、
    前記第1閾値は、0.2mmであり、
    前記第2閾値は、0.1mmである、
    請求項9に記載の損傷図作成支援装置。
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