JP3279781B2 - コンクリート中の鉄筋の発錆進行状況判定方法 - Google Patents

コンクリート中の鉄筋の発錆進行状況判定方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄筋コンクリート構造
物(鉄骨鉄筋コンクリート構造物を含む)の中の鉄筋の
発錆の程度を非破壊試験にて測定することを可能とする
コンクリート中の鉄筋の発錆進行状況判定方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】コンクリート構造物の寿命はコンクリー
ト表面からコンクリート中に埋め込まれている鉄筋表面
までのコンクリートが中性化し、コンクリート中の鉄筋
が錆びはじめた時点とされている。このため、従来コン
クリート構造物の寿命予測は、コンクリート表面からの
中性化深さを測定することによって行ってきた。これ
は、コンクリートが健全(アルカリ性を保持している)
である限り鉄筋は錆びないということに基づいている。
ところが、近年、海砂使用による塩分による鉄筋の発
錆、山砕石使用によるアルカリ骨材反応によるコアのひ
び割れ多発によって、雨水などが浸透することによる鉄
筋の発錆、或いは、酸性雨によるコンクリート中のカル
シウム分の溶出によるコンクリートの防水性劣化に起因
する鉄筋の発錆など、材料環境の悪化に伴って、コンク
リートはアルカリ性を保持していてもコンクリート中の
鉄筋はおびただしく錆が進行し、コンクリートを破壊す
るまでに至っている構造物もかなりの数になってきてい
る。従って、従来のコンクリートの中性化深さを測定す
るだけではコンクリート構造物の劣化程度並びに寿命予
測は不可能になってきている。
【0003】この問題点を解決するためには、直接鉄筋
の発錆を測定する方法が必要である。ところが、現時点
では、コンクリート中に埋め込まれた鉄筋の発錆を調べ
る方法はコンクリート表面を破壊して鉄筋表面を露出さ
せる方法以外にない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、コンクリート
表面を破壊し鉄筋表面を露出させる方法は、構造物を損
傷する点と測定箇所が限定される欠点があった。また、
コンクリート中の鉄筋の錆の進行速度を測定しようと思
っても、コンクリートを破壊し、鉄筋を露出させてしま
うので不可能である。
【0005】そこで、本発明は、建造物を破壊すること
なく非破壊の状態で任意箇所におけるコンクリート中の
鉄筋の錆の程度を測定することができ、しかも、同一箇
所を何回も測定できるので、錆の進行速度(経年変化)
も測定可能であるなどの特色ある方法を提供しようとす
るものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等はコンクリー
ト中の鉄筋の錆の状況を非破壊で測定すべく検討し、鉄
筋を加熱した際に鉄筋から放射される電磁波のうち、マ
イクロ波は大部分がコンクリートを貫通するので構造物
の外部でその強度を測定できること、及びその強度は鉄
筋の表面状態(錆の有無)に応じて変化することに着目
し、表面状態の異なる鉄筋に対するマイクロ波の出力状
態を測定した。図1はその測定に用いたテスト装置を示
すものである。1はテスト材であり、表面が黒皮状態の
鉄板(以下黒皮鉄板という)、その黒皮鉄板の表面に一
様に錆を生じさせたもの(以下錆鉄板という)、表面が
黒皮状態の丸棒(以下黒皮丸棒という)、その黒皮丸棒
を錆びさせたもの(以下錆丸棒という)、表面が黒皮状
態の異形断面鉄筋(以下黒皮異形という)、その黒皮異
径を錆びさせたもの(以下錆異形という)を用意した。
2はテスト材1の上に置かれた厚さ50mmのコンクリ
ートブロック、3はそのテスト材1の温度を測定する熱
電対、4は温度表示器、5はテスト材1を電磁誘導加熱
する電磁誘導コイル、6は電源装置、7はコンクリート
ブロック表面に押し当てるマイクロ波測定用の電磁ホー
ン、8はマイクロ波強度を測定するためのラジオメータ
である。このテスト装置を用い、テスト材1を加熱しな
がらコンクリート2の表面から放射されるマイクロ波を
測定し、テスト材1の温度とマイクロ波強度の関係を求
めた。
【0007】図2はこの実験によって得た結果を示すグ
ラフであり、横軸にはテスト材の温度を、縦軸にはラジ
オメータで求めたマイクロ波強度をとっている。図2か
ら良く分かるように、コンクリート表面から放射される
マイクロ波の強度はテスト材の形態によって異なっては
いるが、いずれの場合においても、鉄筋表面が錆びるこ
とによって増大しており、且つその強度は温度とほぼ直
線的な関係に保たれている。これは、黒皮材より発錆材
の方がマイクロ波の放射率が大であることと整合してお
り、従って、コンクリート表面からのマイクロ波強度を
測定し、その強度と鉄筋温度との関係より表面状態を推
定することが可能である。また、図3は図2のデータか
ら、同一テスト材についての鉄筋温度Tに対するマイク
ロ波強度xの傾きΔx/ΔTを求め、その傾きΔx/Δ
Tをテスト材の表面状態に対して示したグラフである。
この図3から良く分かるように、テスト材の表面が錆び
ると傾きΔx/ΔTも増大しており、従って、この傾き
Δx/ΔTを測定することによっても表面状態を推定す
ることが可能である。この傾きの方がマイクロ波強度そ
のものよりは外乱を受けにくいので、測定数は増すがよ
り好ましい方法であるといえる。
【0008】本発明はかかる知見に基づいてなされたも
ので、本願請求項1の発明は、鉄筋コンクリート構造物
の中の鉄筋を、前記構造物の外側から電磁誘導加熱によ
って適当な温度に加熱し、前記構造物の外側において、
加熱された鉄筋から放射されるマイクロ波の強度を測定
し、この強度と鉄筋温度との関係から鉄筋の発錆進行状
況を判定することを特徴とするコンクリート中の鉄筋の
発錆進行状況判定方法を要旨とする。
【0009】また、本願請求項2の発明は、鉄筋コンク
リート構造物の中の鉄筋を、前記構造物の外側から電磁
誘導加熱によって第一の温度に加熱し、前記構造物の外
側において、加熱された鉄筋から放射されるマイクロ波
の強度を測定し、次いで、前記鉄筋を、同じく電磁誘導
加熱によって前記第一の温度とは異なる第二の温度と
し、その状態で前記構造物の外側において、鉄筋から放
射されるマイクロ波の強度を測定し、得られたマイクロ
波強度対鉄筋温度特性から温度に対するマイクロ波強度
の傾きを求め、その傾きから、鉄筋の発錆進行状況を判
定することを特徴とするコンクリート中の鉄筋の発錆進
行状況判定方法を要旨とする。
【0010】以下、本発明を更に詳細に説明する。鉄筋
コンクリート構造物の内部に埋設されている鉄筋の加熱
に本発明では電磁誘導加熱を用いる。一般に鉄筋コンク
リート構造物では鉄筋がコンクリート表面近傍に(表面
から50mm程度の深さ位置に)配置されているので、
この程度の深さ位置にある鉄筋であればコンクリート表
面に電磁誘導コイルを配置することで加熱可能である。
電磁誘導コイルの形状としては、円形ないしは偏平させ
た円形の平面状スパイラルコイルが好適であり、例え
ば、太い鉄筋には円形スパイラルコイルが、細い鉄筋に
は偏平円形スパイラルコイルが好ましい。誘導コイルに
よる鉄筋の加熱領域の大きさは、マイクロ波測定用の電
磁ホーンの先端寸法と同程度であれば良いので、通常、
鉄筋の10cm程度の長さの部分がほぼ均一に昇温する
ように定めればよい。誘導コイルに印加する周波数は低
過ぎない方がコイルの巻数が少なくて済む。被加熱体
(鉄筋)との距離が離れているので、周波数を高くした
分集中加熱ができることにならないので、設備技術的に
見て10〜50kHzが適切である。また、本発明では
誘導コイルと被加熱体との間隔が通常の誘導加熱に比べ
て大きいので、効率良く被加熱体(鉄筋)を加熱するた
め、当然ながら電源と負荷とのインピーダンスの高度な
整合を行うことが好ましい。
【0011】鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋の誘導加
熱は、極力急速加熱することが好ましい。加熱を急速に
行う理由は、鉄筋の熱がコンクリートに伝達してコンク
リート温度が上昇し、コンクリート自身が発射するマイ
クロ波による誤差を避けるためである。一方、加熱速度
に応じて給電系が大となり、可搬性に影響する。よっ
て、これらの兼ね合いにより数10秒ないし2〜3分で
所定の昇温を行うのがよい。なお、コンクリート表面に
空気を吹き付ける等によってコンクリート表面の温度上
昇を抑えることも、コンクリートからの放射による誤差
を無くすために有効であり、そのため、マイクロ波測定
用の電磁ホーンの先端に、コンクリート面に空気を吹き
付ける手段を設けておくのもよい。
【0012】本発明において、マイクロ波強度を測定す
るための鉄筋温度は、高くするほどマイクロ波強度から
は有利である。しかしながら、鉄筋を200°C以上の
高温とすると鉄筋とコンクリートとの温度差による熱膨
張長さに差異が生じ、鉄筋とコンクリート間に付着剥離
が起こり、構造部材の耐力低下をもたらすなどの弊害が
起こる。このため、鉄筋温度は通常200°C以下、好
ましくは100°Cより僅かに低い温度に設定される。
この温度は、沸点よりも低く且つマイクロ波強度も大き
いので好ましい。従って、請求項1の発明においてマイ
クロ波強度を測定する時の鉄筋温度は、80〜90°C
程度に選定することが好ましく、また、請求項2の発明
における第一の温度及び第二の温度は、高い方が80〜
90°C程度に、低い方はそれよりも40°C程度低い
温度に選定することが好ましい。
【0013】コンクリート内部の鉄筋を誘導加熱する際
には、電磁誘導コイルを鉄筋の真上に配置することが望
ましく、そのためには、コンクリート内の鉄筋位置を知
る必要がある。この鉄筋位置検出には、公知の非破壊方
式の検出方法、例えば、特開昭56−16882号(鉄
筋コンクリートにおける鉄筋の位置、方向及びパターン
の検知方法)に開示されている方法を使用すればよい。
因にこの方法は、電磁誘導加熱された鉄筋からの熱伝導
によってコンクリート表面に生ずる鉄筋の位置に従った
赤外線放射映像を可視化して鉄筋の位置を検知するもの
である。赤外線にとって、厚いコンクリートは不透明体
であり、鉄筋から放射される赤外線を、コンクリートの
表面で観測することはできず、よって鉄筋表面の放射率
の差異も観測できない。これに対して本発明方法に用い
るマイクロ波は赤外線よりはるかに(数10万倍)周波
数の低い電磁波であることから、多少の減衰はあるが厚
いコンクリートを透過することができる。即ち、加熱さ
れた鉄筋からのマイクロ波放射を、コンクリート表面で
観測できるものであり、コンクリートを介して伝熱に依
存するものではない(伝熱はむしろ外乱要因となる)。
しかも、上記マイクロ波放射の強度は鉄筋の表面の放射
率に比例するので、放射率の異なる黒皮材と発錆材との
差異が検知できることになる。
【0014】鉄筋から放射されるマイクロ波は鉄筋温度
によって変化するから、本発明の実施に際しては、マイ
クロ波強度を測定した時点での鉄筋温度を特定し、ない
しは一定としておくことが必要である。コンクリート内
の鉄筋温度の特定方法としては、本出願人が先に開発
し、特許された特公昭58−21395号公報(高周波
誘導加熱に於ける温度測定方法)の原理を利用すること
ができる。この公報に開示の原理は、材質の特定された
被加熱体の加熱前後の複素インピーダンス(インピーダ
ンスの値と位相角)を測定することによって固有抵抗及
び比透磁率を求め、既知の温度係数データから昇温量を
算出するものである。従って、この原理を本発明に適用
した温度特定方法は、構造物中の鉄筋を加熱する際、前
記構造物の外側に電磁誘導コイルを配置しておき、該電
磁誘導コイルによって測定した鉄筋のインピーダンス
の、加熱後の値と加熱前の値とから鉄筋の昇温量を求
め、加熱後の鉄筋の温度を特定する方法である。
【0015】上記した温度特定方法を実施するに際し、
インピーダンス判定に使用する電磁誘導コイルとして
は、鉄筋加熱のために使用する電磁誘導コイルで兼用し
てもよいし、或いは測定器に適合しやすい専用の電磁誘
導コイルを用いてもよい。後者の場合には加熱用の電磁
誘導コイルによる影響が生じないよう、加熱回路を開く
か或いは加熱用の電磁誘導コイルを系外に遠ざける必要
がある。
【0016】また、鉄筋を加熱した際の鉄筋温度を一定
とする方法としては、電磁誘導コイルの積算消費電力を
一定とする方法を採用することも可能である。すなわ
ち、同一仕様の鉄筋に対する昇温量は積算消費電力に比
例するので、あらかじめ、検査すべき鉄筋と同一仕様の
鉄筋について昇温量対積算消費電力の関係のデータを求
めておき、そのデータから望ましい昇温量に対応する積
算消費電力を求めて積算消費電力設定値とし、その積算
消費電力設定値で誘導加熱することにより、鉄筋をほぼ
所望の一定温度に昇温させることができる。この方法に
おいては電磁誘導加熱系毎に固有のロスが存在するの
で、加熱系毎に昇温対電力データを求める必要がある。
また、温度を一定とする観点からも、加熱が急速である
方が熱放散の影響が少なく好ましい。なお、鉄筋コンク
リート構造物中に埋設されている鉄筋の仕様は、通常設
計図等から判断できる。もし、設計図等がなく、鉄筋の
仕様が分からない場合には、コンクリートの一部のハツ
リを行って鉄筋を露出させて調べれば良い。
【0017】上記したインピーダンス判定による鉄筋温
度の特定方法と、積算消費電力を用いた鉄筋温度の一定
方法とはそれぞれ単独で用いてもよいが、両者を併用す
るのが当然好ましい。
【0018】請求項1の発明は、検査しようとする鉄筋
コンクリート構造物(以下被検体という)の表面で測定
したマイクロ波強度と鉄筋温度との関係から、内部の鉄
筋の発錆状況を判定するものであるが、その判定を具体
的に行うには、少なくとも錆の無い状態の鉄筋(通常、
表面が黒皮状態)を埋設したコンクリート構造物からの
マイクロ波強度を測定した基準データを作成し、その基
準データと被検体からの測定データを比較すればよい。
ここで基準データは、鉄筋が未だ錆びていない時の被検
体そのものを用いて予め作成したものであってもよい
し、或いは被検体と実質的に同仕様の、且つ錆びていな
い状態の鉄筋を入れたコンクリートブロックを用意し、
そのブロックを用いて作成してもよい。
【0019】鉄筋の発錆状況を判定するための基準デー
タとしては、図4に示すように、単に或る一つの温度
H )におけるマイクロ波強度 H のみであってもよ
いが、複数の温度におけるマイクロ波強度(例えば、二
つの温度 L H に対するマイクロ波強度 L
H )を求め、基準線S0 としておくことが好ましい。
基準データが単一温度( H )に対するマイクロ波強度
のみの場合には、被検体の鉄筋をその基準データを得た
温度( H )に昇温させてマイクロ波強度を測定し、そ
の測定値xを基準データの数値( H )に対比させ、両
者の差から被検体の鉄筋が正常であるか、錆が発錆して
いるかを判定することとなる。一方、基準データが基準
線S0 として求められている場合には、被検体の鉄筋温
度は必ずしも基準データを得た時の温度に完全に一致さ
せる必要はなく、適当な温度T′においてマイクロ波強
度x′を測定し、その測定したマイクロ波強度x′を基
準線S0に対比することで、発錆状態を判定することが
できる。
【0020】基準データとしては、単に錆の無い状態の
鉄筋を用いて測定したデータのみでもよいが、被検体と
同仕様のコンクリートブロックを作成してデータを集め
る場合には、錆の程度の異なる複数の鉄筋〔例えば、錆
(少)、錆(多)等〕をそれぞれ埋設したコンクリート
ブロックを作成し、各コンクリートブロックから鉄筋温
度とマイクロ波強度の関係を測定し、図5に示すように
各鉄筋に応じて基準線S0 、S1 、S2 等を求めてお
き、これらを基準データとすることが好ましい。このよ
うな錆の進行状態を含んだ基準データを用いると、被検
体について実測したデータ(温度Tとマイクロ波強度
x)から、錆の有無のみならず、錆の程度を判定するこ
とも可能となる。
【0021】請求項2の発明においても、発錆状況の判
定には、被検体について実測したデータ(マイクロ波強
度の傾き)を、基準データと比較することにより行うこ
とができる。ここで用いる基準データも、請求項1の発
明と同様に、内部の鉄筋が未だ錆びていない時の被検体
そのものを用いて作成してもよいし、或いは被検体と実
質的に同仕様のコンクリートブロックを用いて作成して
もよい。また、その際、基準データは、単に錆の無い鉄
筋を用いたもののみでもよいし、錆の程度の異なるもの
についてのデータを含んだものであってもよい。このよ
うな基準データの作成及び被検体についての実測データ
の作成には、当然異なる二つの温度でのマイクロ波強度
を測定して求めることになるが、その際の二つの温度
(第一の温度及び第二の温度)は、各データの作成毎に
同じとすること(例えば、常に80°Cと40°Cでマ
イクロ波測定を行うこと)が誤差を小さくできるので望
ましいが、必ずしも同じとしなくてもよい。すなわち、
基準データを求める時の鉄筋温度を L H とした時
において、被検体の鉄筋を加熱してマイクロ波強度を測
定する時の温度は、必ずしも L H とする必要はな
く、適当な二つの温度でデータを採り、温度に対するマ
イクロ波強度の傾きを計算し、その傾きを基準データの
傾きと対比すればよい。
【0022】請求項2の発明では、被検体の鉄筋を二つ
の異なる温度としてマイクロ波強度を測定している。こ
の測定のために鉄筋温度を変える手順としては、鉄筋
をまず第一の温度に昇温させてマイクロ波強度を測定
し、次いでその鉄筋を放冷して常温に戻し、その後その
鉄筋を第二の温度に昇温させてマイクロ波強度を測定す
る方法、鉄筋をまず第一の温度に昇温させてマイクロ
波強度を測定し、次いでその鉄筋を直ちに加熱して第二
の温度まで昇温させ、その時のマイクロ波強度を測定す
る方法、等を挙げることができる。
【0023】上記したように請求項1及び2の発明は、
被検体について得たデータを基準データに対比すること
で発錆状況を判定するものであるが、被検体におけるコ
ンクリートのかぶり厚さ(鉄筋からコンクリート表面ま
での距離)が、基準データを作成した対象物とは異なる
場合がある。このコンクリートのかぶり厚さはマイクロ
波の吸収量に影響するため、もし、かぶり厚さが異なる
場合には、被検体について得たデータを補正する必要が
ある。この補正は、予めコンクリートの厚みに対するマ
イクロ波の吸収率を測定したデータを作成しておき、そ
のデータによって行えばよい。
【0024】一般に鉄筋コンクリート構造物では設計図
等によってコンクリートのかぶり厚さは分かっている。
しかし、場合によっては分からない場合もある。この場
合には、市販の電磁式膜厚計(例えば、ドイツ、フィッ
シャー社製)の原理を利用して測定可能であり、従っ
て、構造物中の鉄筋を電磁誘導加熱するに先立って、電
磁式膜厚計方式を用いて鉄筋の構造物表面からの位置を
特定しておけばよい。
【0025】本発明方法は、単に所望の時期に被検体に
対して適用することにより、その時点での鉄筋の発錆状
況を判定するために使用するのみでもよいが、同一の鉄
筋コンクリート構造物に対し経年的に適用することが好
ましい。このように経年的に適用すると、鉄筋の発錆度
合いの経年変化を把握することが可能である。
【0026】
【作用】上記した請求項1の発明では、鉄筋コンクリー
ト構造物の中の鉄筋を電磁誘導加熱によって構造物の外
部から加熱し、次いで加熱された鉄筋から放射され、コ
ンクリートを貫通して外部に放射されるマイクロ波の強
度を測定することにより、マイクロ波強度に影響を与え
る鉄筋表面の錆状況を判定でき、コンクリートを破壊す
ることなく内部の鉄筋の表面の錆状況を判定できる。
【0027】また、請求項2の発明では、請求項1の発
明と同様に鉄筋コンクリート構造物の内部の鉄筋を加熱
し、その鉄筋から構造物外に放射されるマイクロ波の強
度を測定し且つそのマイクロ波強度を、少なくとも鉄筋
の二つの温度について測定し、鉄筋温度に対するマイク
ロ波強度の傾きを求めることにより、その傾きに影響を
与える鉄筋表面の錆状況を判定でき、コンクリートを破
壊することなく内部の鉄筋の表面の錆状況を判定でき
る。
【0028】
【実施例】直径19mmの鉄筋コンクリート用丸棒鋼を
下記イ、ロ、ハ、ニのように処理した上で、かぶり厚さ
50mmにて長手方向に1本ずつ埋め込んだ200mm
角×500mm長さのコンクリートブロックを、イ、
ロ、ハ、ニ各3体ずつ用意した。 イ.黒皮のまま ロ.面積率10%発錆処理 ハ.面積率100%発錆処理 ニ.面積率100%発錆処理後、更に同じ時間の発錆処
理を追加 (錆厚さが増大)
【0029】上記コンクリートブロック試験体のイ〜ニ
各1体について、図6(a)に示すように、コンクリー
トブロック12の鉄筋に近い側の面に偏平形状の誘導コ
イル13を配し、鉄筋の温度を熱電対(図示せず)で測
定しながら上記誘導コイル13に30kHz、6kWの
高周波通電を行い、室温22°Cから40°Cへの昇温
及び30秒後に引き続いて行う80°Cへの昇温のため
の所要時間を求めたところ、3体の平均でそれぞれ21
秒及び45秒であった。次いで、残りの試験体に上記2
1秒、66秒の加熱を適用したところ、それぞれ±2°
Cの精度で40°C及び80°Cの加熱を実現できるこ
とが確かめられた。
【0030】この後、常温に復帰させた試験体に対して
上記と同じスケジュールの加熱を適用し、図6(b)の
構成にて40°C及び80°Cの設定条件でのマイクロ
波強度を測定した。この操作を、イ〜ニの全試験体に適
用した結果を表1に、イ〜ニそれぞれの平均値で示す。
【0031】
【表1】
【0032】表1の結果を図示したものが図7、図8に
示すグラフである。以上の結果に見る通り、本発明方法
によって、コンクリート中の鉄筋の発錆程度を非破壊的
に判定可能であることが確認された。
【0033】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、鉄筋コンクリート構造物中に埋設されている
鉄筋の錆の有無を非破壊で判定することが可能であり、
建物の梁や柱、高速道路橋などの橋桁等を何ら損傷する
ことなく、その内部の鉄筋の錆を判定して寿命や剥落事
故の予知を行うことができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】鉄筋からのマイクロ波強度の測定テストに用い
た装置の概略側面図
【図2】図1の装置で測定したマイクロ波強度と温度と
の関係を示すグラフ
【図3】図1の装置で測定した温度に対するマイクロ波
強度の傾きと、錆の有無との関係を示すグラフ
【図4】本願請求項1の発明において、錆の有無を判定
する際に使用する基準データの1例を示すグラフ
【図5】本願請求項1の発明において、錆の有無を判定
する際に使用する基準データの他の例を示すグラフ
【図6】本発明の実施例による測定手順を示すもので、
(a)は鉄筋を加熱する状態を示す概略斜視図(b)は
鉄筋からのマイクロ波強度を測定する状態を示す概略斜
視図
【図7】図6に示す実施例で測定したデータのうち、マ
イクロ波強度と温度との関係を示すグラフ
【図8】図6に示す実施例で測定したデータのうち、錆
の程度とマイクロ波強度の傾きとの関係を示すグラフ
【符号の説明】
1 テスト材 2 コンクリートブロック 3 熱電対 4 温度表示器 5 電磁誘導コイル 6 電源装置 7 電磁ホーン 8 ラジオメータ 11 鉄筋 12 コンクリートブロック 13 電磁誘導コイル 14 電源装置 15 電磁ホーン 16 ラジオメータ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−16882(JP,A) 特開 昭60−39514(JP,A) 特開 平3−195958(JP,A) 特開 昭64−18051(JP,A) 特開 平5−45314(JP,A) 特開 平6−258264(JP,A) 特開 平4−248451(JP,A) 特開 昭64−483(JP,A) 特公 昭58−21395(JP,B1) 特表 平1−500613(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 25/72 G01N 22/02 JICSTファイル(JOIS)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄筋コンクリート構造物の中の鉄筋を、
    前記構造物の外側から電磁誘導加熱によって適当な温度
    に加熱し、前記構造物の外側において、加熱された鉄筋
    から放射されるマイクロ波の強度を測定し、この強度と
    鉄筋温度との関係から鉄筋の発錆進行状況を判定するこ
    とを特徴とするコンクリート中の鉄筋の発錆進行状況判
    定方法。
  2. 【請求項2】 鉄筋コンクリート構造物の中の鉄筋を、
    前記構造物の外側から電磁誘導加熱によって第一の温度
    に加熱し、前記構造物の外側において、加熱された鉄筋
    から放射されるマイクロ波の強度を測定し、次いで、前
    記鉄筋を、同じく電磁誘導加熱によって前記第一の温度
    とは異なる第二の温度とし、その状態で前記構造物の外
    側において、鉄筋から放射されるマイクロ波の強度を測
    定し、得られたマイクロ波強度対鉄筋温度特性から温度
    に対するマイクロ波強度の傾きを求め、その傾きから、
    鉄筋の発錆進行状況を判定することを特徴とするコンク
    リート中の鉄筋の発錆進行状況判定方法。
  3. 【請求項3】 構造物中の鉄筋を加熱する際、前記構造
    物の外側に電磁誘導コイルを配置しておき、該電磁誘導
    コイルによって測定した鉄筋のインピーダンスの、加熱
    後の値と加熱前の値とから鉄筋の昇温量を求め、その昇
    温量から加熱後の鉄筋の温度を特定することを特徴とす
    る請求項1又は2に記載のコンクリート中の鉄筋の発錆
    進行状況判定方法。
  4. 【請求項4】 構造物中の鉄筋を加熱するための電磁誘
    導コイルを温度測定用としても兼用することを特徴とす
    る請求項3に記載のコンクリート中の鉄筋の発錆進行状
    況判定方法。
  5. 【請求項5】 構造物中の鉄筋を加熱するための電磁誘
    導コイルとは別に、測定用の電磁誘導コイルを用いるこ
    とを特徴とする請求項3に記載のコンクリート中の鉄筋
    の発錆進行状況判定方法。
  6. 【請求項6】 構造物中の鉄筋を加熱する際、鉄筋の仕
    様に応じて求めた所定の積算消費電力による電磁誘導加
    熱を行うことにより、前記鉄筋を一定温度に昇温させる
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載
    のコンクリート中の鉄筋の発錆進行状況判定方法。
  7. 【請求項7】 構造物中の鉄筋を電磁誘導加熱するに先
    立って、電磁式膜厚計を用いて鉄筋の構造物表面からの
    位置を特定することを特徴とする請求項1から6のいず
    れか1項に記載のコンクリート中の鉄筋の発錆進行状況
    判定方法。
  8. 【請求項8】 検査すべき鉄筋コンクリート構造物と実
    質的に同仕様の、且つ少なくとも錆びていない状態の鉄
    筋を入れたコンクリートブロックを用意し、検査すべき
    鉄筋コンクリート構造物と前記コンクリートブロックに
    対して請求項1から7のいずれか1項に記載の方法をそ
    れぞれ適用し、両者に対するデータを比較することによ
    って鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋の発錆の度合いを
    判定することを特徴とするコンクリート中の鉄筋の発錆
    進行状況判定方法。
  9. 【請求項9】 同一の鉄筋コンクリート構造物に対し、
    請求項1から8のいずれか1項に記載の方法を経年的に
    適用することにより、鉄筋の発錆度合いの経年変化を把
    握することを特徴とするコンクリート中の鉄筋の発錆進
    行状況判定方法。
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