JP6717452B2 - 鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法 - Google Patents

鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、電磁波レーダを用いて鉄筋コンクリート構造物の内部に発生するひび割れ及び鉄筋の腐食の少なくとも一方を検出する鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法に関するものである。
特許文献1及び非特許文献1,2に開示されているように、電磁波を用いたコンクリート構造物の検査方法は、種々提案されている。非特許文献1,2には、鉄筋コンクリート構造物に対して適用される非破壊試験の概要が記載されている。
また、特許文献1には、コンクリート構造物の内部に発生する空洞やジャンカなどの欠陥部の種別を、電磁波レーダの反射波の測定結果から判別する方法が記載されている。
特開2005−43197号公報
桝田佳寛、外2名、「電磁波レーダおよび電磁誘導による鉄筋探査の日本非破壊検査協会規格の制定」、コンクリート工学、Vol.49,No.4,2011.4,pp.15-21 森雅司、葛目和宏、「コンクリートの非破壊試験の理論と実際 (2)電磁波法の理論と実際」、コンクリート工学、Vol.51,No.3,2013.3,pp.278-282
しかしながら空洞やジャンカなどの比較的に広い範囲(厚さ10cm-20cm程度)に広がる内部の欠陥部を、電磁波レーダ法によって検出する技術は確立されて各方面で適用されているが、この方法ではコンクリートの内部に発生するヘアークラック(幅0.3mm以下)などの幅が小さなひび割れを検出することはできない。
すなわち、検出したい対象物が大きいか又はコンクリートの比誘電率との差が大きい物であれば、比誘電率が異なる物質の境界において電磁波反射波形の最大振幅が増減するため検出しやすくなるが、コンクリート内部に発生する水平ひび割れのような幅が微小な物は、電磁波レーダ法では検出が難しい。一方、内部に発生して表面に露出しない水平ひび割れをそのまま放置しておくと、コンクリート片の剥離や落下などへの対応が遅れるおそれがある。
そこで、本発明は、鉄筋コンクリート構造物の内部に発生するひび割れが微小であっても検出することが可能な鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法は、電磁波レーダを用いて鉄筋コンクリート構造物の内部に発生するひび割れ及び鉄筋の腐食の少なくとも一方を検出する鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法であって、検査対象となる鉄筋コンクリート構造物の表面に対して電磁波レーダによる電磁波伝搬特性の測定を行う検査対象測定ステップと、比較対象となるコンクリート構造物の表面に対して電磁波レーダによって測定された電磁波伝搬特性の測定結果と前記検査対象の測定結果との関係性指標を算出する関係性算出ステップと、前記算出された関係性指標をクラスタ分析して2次元平面上に可視化する可視化ステップと、前記可視化された結果から内部ひび割れ又は鉄筋の腐食と推定される異常が起きている範囲を特定する判定ステップとを備えたことを特徴とする。
ここで、前記比較対象となるコンクリート構造物は、鉄筋が埋設されていない健全な状態のコンクリートによって形成されている構成とすることができる。また、前記可視化ステップは、自己組織化マップを用いて行われることが好ましい。さらに、前記関係性指標には、共分散と積率相関係数を使用することができる。
また、前記関係性算出ステップでは、電磁波反射波形データから共分散と積率相関係数を算出するとともに、電磁波反射波形データをフーリエ変換したパワースペクトルデータからも共分散と積率相関係数を算出し、これらの4種類の関係性指標を前記クラスタ分析の入力データにすることができる。
このように構成された本発明の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法は、検査対象となる鉄筋コンクリート構造物と比較対象となるコンクリート構造物との表面に対して電磁波レーダによる電磁波伝搬特性の測定を行い、それらの測定結果から関係性指標を算出し、その算出された関係性指標をクラスタ分析して2次元平面上に可視化する。そして、その可視化された結果からひび割れの状態を推定する。
このように関係性指標を使用してクラスタ分析を行うことによって、鉄筋コンクリート構造物の内部に発生するひび割れが微小であっても検出することができるようになる。また、鉄筋コンクリート構造物の内部に発生する鉄筋の腐食などの異常状態も検出することができる。
本実施の形態の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法を説明するフローチャートである。 本実施の形態の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法を検証するために行われた実験を説明する図であって、(a)は実験に使用した供試体の側面図、(b)は供試体の平面図である。 検証実験において着目する供試体の断面を説明するための平面図である。 供試体に発生した内部ひび割れの状況を切断した断面で確認した実測結果を説明する図であって、(a)は内部ひび割れ幅の平面分布図、(b)は内部ひび割れ深さの平面分布図である。 供試体に発生した内部ひび割れの状況を切断した断面で確認した実測結果に基づく実腐食率の分布図である。 自己組織化マップの生成のための入力データを概念的に示した説明図である。 参考例として電磁波反射波形データそのものを自己組織化マップにした例を説明する図であって、(a)は腐食率0%のときの可視化結果を示した図、(b)は腐食率11.1%のときの可視化結果を示した図である。 自己組織化マップへの入力データとなる関係性指標を説明する図である。 本実施の形態の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法による可視化結果を説明する図であって、(a)は腐食率0%のときのクラスタ分布図、(b)は腐食率11.1%のときのクラスタ分布図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法を説明するフローチャートである。
本実施の形態の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法によれば、鉄筋コンクリート構造物の内部に発生する微小なひび割れであっても検出することができる。例えば、鉄筋コンクリート構造物の内部から発生して表面にひび割れが到達していないような状態の水平ひび割れなどの内部ひび割れを検出することができる。
このような内部ひび割れには、鉄筋腐食によって発生して進展するものがある。そのメカニズムは、まず鉄筋腐食により錆が生成して、その膨張圧によって鉄筋周辺からひび割れが生じる。さらに、錆が生成するとひび割れ中に錆が滲入し、錆の移動がひび割れの進展に影響を及ぼす。よって、本実施の形態の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法によれば、鉄筋コンクリート構造物の内部に発生する鉄筋の腐食などの異常状態も検出することができる。
本実施の形態の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法であるひび割れ検出方法では、電磁波レーダによる測定結果(測定データ)を使用する。電磁波レーダによって測定を行う場合は、鉄筋などが埋設されたコンクリート構造物の表面に設定された走査線に沿って電磁波レーダ機を走査させることによって、電磁波伝搬特性の測定を行う。
電磁波レーダ機は、電磁波レーダを使ってコンクリート構造物の内部の埋設物の位置や大きさを検出することが可能な装置である。電磁波レーダ機は、電磁波を出射して、埋設物や空洞などの物性が変化する境界面などで反射された電磁波を受信することで、埋設物や空洞等の位置や大きさを検出することができる。例えば電磁波レーダ機は、車両状の外観をしており、複数の車輪によって検査させたい箇所を自由に走行させることができる。
以下で説明する実験に使用した電磁波レーダ機は、測定深度が2mm-300mm、アンテナ中心の周波数が2.6GHz、並行方向輻射間隔が1.25mm-2.5mmの性能を有している。また、推定水平分解能力は、鉄筋のかぶりとピッチとの比で、かぶり:ピッチ=1:0.14以上である。
本実施の形態のひび割れ検出方法では、検査対象となる鉄筋コンクリート構造物と比較対象となるコンクリート構造物との表面に対して電磁波レーダによる電磁波伝搬特性の測定を行い、それらの測定結果から関係性指標を算出する。そこで、このひび割れ検出方法の効果の検証に使用する測定データを得るために行った実験について、以下に説明する。
まず、鉄筋コンクリート構造物を段階的に腐食させて、電磁波レーダによる電磁波伝搬特性の測定を行う。図2には、実験で用いる鉄筋コンクリート構造物を模した供試体1の概要を示した。この供試体1の寸法は、幅500mm×長さ1000mm×高さ200mmで、幅方向の中心位置に異形鉄筋(D19)である鉄筋2をかぶり厚さ60mmで一本配置した。この鉄筋2は、錆汁が鉄筋を伝って供試体1の外部に流出することを防ぐために、全体をコンクリート中に埋設させた。
この鉄筋2は、全長を一様に腐食させるのではなく、部分腐食させるために、鉄筋2の中央部の直上に長さ200mm、幅80mmの水槽3を電食実験のために設置した。電食実験は、水槽3内に3%NaCl水溶液と銅板を入れ、銅板及び鉄筋2が電源装置を介して直列回路となるように接続して行った。
一方、電磁波レーダ機による測定は、図2(b)に示す測定範囲12に対して、鉄筋2の軸直交方向に25mmの間隔で走査して行った。そして確認のために、すべての電食実験及び電磁波レーダ機による測定が終了した後に、図3の50mm間隔の鉄筋軸直交方向の破線位置で供試体1を湿式コンクリートカッターにより切断し、内部のひび割れ性状を確認した。その際、ひび割れ幅をクラックゲージで測定した。
まず、電食実験後の供試体1の表面11には、最大で0.25mmのひび割れ幅のひび割れが発生した。鉄筋軸方向のひび割れは、埋設した鉄筋2の直上に広い範囲で見られ、水槽3の設置箇所から離れるにつれ幅が狭くなっていた。鉄筋軸直交方向のひび割れは、供試体1の中央に縦断するように見られ、水槽3から離れるにつれ幅が広くなる状態であった。
また、切断面によって供試体1の内部を確認すると、鉄筋軸方向に水槽3の端から200mm離れた位置であるI断面(図3参照)において、鉄筋2と表面11とが繋がる縦のひび割れが確認された。さらに、鉄筋軸方向に水槽3の端から100mm離れた位置であるII断面では、鉄筋2と表面11とが繋がる縦のひび割れが確認されるとともに、鉄筋2から左右横方向に伸びるひび割れが確認された。
そして、III断面及びIV断面においても、鉄筋2から左右横方向に伸びる内部のひび割れが確認された。
図4(a)に、内部ひび割れ幅の平面分布を示す。この図は、図3中の破線で示す供試体1の各切断面で、内部ひび割れの幅をクラックゲージで測定して、平面状にコンター図としたものである。ひび割れ幅は最大で0.4mmであり、水槽3の直下の鉄筋2から離れるにつれて小さくなる。ひび割れ分布の範囲は、鉄筋軸直交方向では約380mmの広さ、鉄筋軸方向では約500mmの広さであり、概ね水槽3の設置位置を中心に拡がっている。
図4(b)に、内部ひび割れ深さの平面分布を示す。この図は、図3中の破線で示す供試体1の各切断面で、表面11から内部ひび割れまでの深さを定規で測定して、平面状にコンター図としたものである。最も深い場所では約80mmで、鉄筋2のかぶり(60mm)より深いところへの進展が見られた。他方、最も浅い場所では、約30mmであった。内部ひび割れが見られた深さの範囲は、鉄筋かぶりから上下に20mm-30mmの範囲に広がっていることが確認できた。また、鉄筋軸直交方向の250mm-500mmの範囲については、内部ひび割れがお椀のような深さ分布であることが確認できた。
ここで、内部ひび割れ面の状態は、鉄筋軸方向の250mm-500mmの範囲については錆の堆積が見られ、ひび割れに滲入した錆を見ると、ひび割れ幅が0.2mm以上の範囲に多く堆積していることが確認できた。
図5には、実腐食率の分布を示す。実腐食率は、最大で13.1%、水槽3の直下で11.1%の腐食率となり、想定に近い腐食状態が再現されている。実腐食率は、水槽3から離れるにつれて急激に小さくなり、水槽3の端から200mm程度離れれば、ほぼ腐食していない状態であった。
一方、本実施の形態のひび割れ検出方法では、電磁波レーダによって測定された電磁波伝搬特性に基づいたデータによりクラスタ分析を行い、その分析結果を2次元平面上に可視化させる。そして、このクラスタ分析に、自己組織化マップを適用する。
自己組織化マップ(Self-Organizing Maps;SOM)とは、Kohonenによって開発された大脳皮質の神経機能をモデル化したニューラルネットワークである。自己組織化マップは、階層型ニューラルネットワークの一つであり、多次元データの類似性を2次元データに可視化する手法である。
本実施の形態のひび割れ検出方法では、Viscovery SOMine 7.0を用いて自己組織化マップを作成する。この際、パラメータの設定は、ノード数1000、テンション(近傍半径)0.5とし、クラスタ手法は、凝集性のあるクラスタを算出するSOM-Wardに設定した。また、トレーニングスケジュールは、クラスタリングの精度を重視してAccurateに設定した。そして、自己組織化マップの生成時の縦横比については、入力データが最適にクラスタリングされた2次元データに処理されることを優先するために、「自動」に設定した。
図6は、自己組織化マップの生成のための入力データを説明するための図である。図の左上には、電磁波レーダによって測定された電磁波伝搬特性である電磁波反射波形を例示した。ここで、電磁波レーダの出力の反応強度を反応値とする。また、「健全コンクリート波形」は、鉄筋などの埋設物がない健全な状態のコンクリート構造物から測定された電磁波反射波形を示している。一方、「測定地点波形」は、検査対象となる腐食した鉄筋コンクリート構造物から測定された電磁波反射波形を示している。
まずは参考例として、測定された電磁波反射波形(例えば「測定地点波形」)をそのまま自己組織化マップの入力データとした場合の検討結果について説明する。以下の検討では、電食実験前の腐食率0%の状態と電食実験後の腐食率11.1%の状態の測定データを使用した。また、入力データに適用する電磁波反射波形のデータ範囲は、それぞれ表面11となる0mmから供試体1の厚さである200mmまでを対象とした1mmピッチ201次元である。
図7は、参考例として電磁波反射波形データそのものを入力データとして自己組織化マップにより可視化した例示であり、図7(a)には腐食率0%のときのクラスタ分布を示し、図7(b)には腐食率11.1%のときのクラスタ分布を示している。
ここでクラスタリングは、入力データの類似性に基づいて行われる。類似性の高いデータがより近い距離に配置されることでデータ群が形成され、クラスタ分割が行われる。図7では、自己組織化マップ(SOM)によって得られたクラスタごとの番号を、測定平面の位置ごとに反映させて示している。このクラスタの分割数は、自己組織化マップ(SOM)が自動的に分類したクラスタとその番号に従っている。
図7(a)の腐食前の可視化結果を見ると、鉄筋軸に沿うように同じクラスタの分布が確認でき、コンクリートのみの範囲についても同じクラスタで分類されていることから、類似性を持つ位置とクラスタ分類とが一致していることが分かる。
一方、図7(b)の腐食後の可視化結果を見ると、鉄筋位置を認識できるようなクラスタの分類は確認することができるが、内部ひび割れを示すようなクラスタは確認することができなかった。このため、電磁波反射波形データそのものを自己組織化マップに入力データとして与えても、評価対象の深度範囲の中でひび割れのような微小な影響を含む範囲は非常に小さく、適切な類似性の評価に至らないことが示唆され、実構造物に適用できるような内部ひび割れの検出方法にはならないと考えられる。
そこで、測定した電磁波反射波形データのみを使うのではなく、測定データを演算処理した結果も使うことで、内部ひび割れのようなひび割れの検出を可能にする。測定データの演算処理として、図6の右上に示したように、電磁波反射波形データをフーリエ変換したパワースペクトルデータを作成することが考えられる。
さらに、本実施の形態のひび割れ検出方法では、自己組織化マップ(SOM)への入力データの検討として、埋設物の有無や損傷の有無などによるコンクリート中の状態の違いに着目して、これらがコンクリートを基準に加算された情報であり、電磁波反射波形に影響を与えていると考えた。
そこで、埋設物がない健全なコンクリートの電磁波反射波形データと、検査対象となる測定地点の電磁波反射波形データという2つのデータの関係性を数値化した関係性指標を、自己組織化マップ(SOM)への入力データにすることとした。ここで、埋設物なしの健全な状態のコンクリート構造物としては、例えば無筋の打設直後(劣化前)、気中で充分に乾燥したコンクリート供試体が挙げられる。
2つのデータの関係性を評価する関係性指標としては、例えば図6の右下に示したような共分散や積率相関係数などが挙げられる。
図8に、自己組織化マップへの入力データとなる関係性指標の概要を示す。まず、電磁波レーダでの測定によって得られた埋設物がない健全なコンクリートの電磁波反射波形データと、検査対象となる測定地点の電磁波反射波形データとの2つの関係を、<関係性1>とする。
一方、埋設物がない健全なコンクリートの電磁波反射波形データと測定地点の電磁波反射波形データとをそれぞれフーリエ変換したパワースペクトルデータの2つの関係を、<関係性2>とする。
そして、<関係性1>と<関係性2>のそれぞれについて、共分散と積率相関係数とを算出する。このようにして得られた4種類の関係性指標を、4次元の入力データとして図6の左下に示すように作成する。
図9は、4種類の関係性指標を入力データとした自己組織化マップ(SOM)による可視化結果を示している。ここで、図9(a)は腐食率0%のときのクラスタ分布、図9(b)は腐食率11.1%のときのクラスタ分布を示している。
腐食前の状態を検査対象とした自己組織化マップ(SOM)である図9(a)を見ると、クラスタ3の分布が鉄筋位置を示すように現れていることが確認できる。コンクリートの範囲については、2つのクラスタに分類されており、鉄筋周辺にクラスタ1、その外側にクラスタ2が分布している。このように4種類の関係性指標を入力データとしても、鉄筋のようにコンクリート中の特異な情報は明確に分類されていることが確認できる。
一方、腐食後の状態を検査対象とした自己組織化マップ(SOM)である図9(b)では、鉄筋位置を示すようにクラスタ3とクラスタ4の分布が確認できた。クラスタ3に着目すると、図中の範囲は図5の鉄筋2が腐食した範囲に集中していることから、鉄筋2に何らかの変化があった範囲と関係があるものと考えられ、鉄筋の腐食の有無を判断することが可能であると言える。
鉄筋位置から離れた範囲には、クラスタ1とクラスタ2の分布が確認できる。また、クラスタ2とクラスタ3は、繋がるように分布の広がりが見られる。図9(b)には、図4(a)に示した内部ひび割れ幅の範囲を「ひび割れ範囲」として実線で示し、内部ひび割れ幅が0.1mm以上の範囲を、「ひび割れ幅0.1mm」として点線で示した。
このようにして図4(a)に示したひび割れ平面分布とクラスタ分布とを比較すると、概ね「ひび割れ幅0.1mm」以上の範囲を検出していることが確認できる。これらの結果から、電磁波伝搬特性の測定結果に基づいて関係性指標を算出して入力データとすることで、0.1mm-0.4mm程度の微細な内部ひび割れが定量的な判断に基づいて検出可能になると言える。
次に、本実施の形態の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法であるひび割れ検出方法、及びその作用について説明する。図1は、本実施の形態のひび割れ検出方法の各ステップを説明するフローチャートである。
まずステップS1では、埋設物がなく健全な状態のコンクリート構造物の表面に対して、比較対象とするために電磁波レーダによる測定を行う。比較対象となるコンクリート構造物の測定は、検査対象となる鉄筋コンクリート構造物との差異を抽出するための基準となる。
検査対象測定ステップとなるステップS2では、構築から腐食が起きる程度の時間が経過した鉄筋コンクリート構造物の表面に対して、検査対象とするために電磁波レーダによる測定を行う。例えば、維持管理のために行われる定期的な測定結果を、検査対象の測定データとして利用することができる。
そして関係性算出ステップとなるステップS3では、検査対象と比較対象の電磁波反射波形データに対して、フーリエ変換によってそれぞれパワースペクトルを算出するとともに、それぞれの関係性指標の算出を行う。要するに、検査対象と比較対象の電磁波反射波形データから共分散と積率相関係数を算出するとともに、検査対象と比較対象のパワースペクトルデータからも共分散と積率相関係数を算出する。
さらに可視化ステップ(ステップS4)では、ステップS3で算出された4種類の関係性指標を入力データとして、自己組織化マップ(SOM)を用いてクラスタ分析を行い、その結果を2次元平面上に可視化させる。図9(b)は、腐食が起きている状態のコンクリート構造物を検査対象とした可視化結果を示している。
この図9(b)に示すように、可視化結果はクラスタ分布となっているため、分類されたクラスタによって、内部ひび割れの有無などを判定することができる(ステップS5)。要するにこの判定ステップでは、可視化された出力結果を見て、鉄筋コンクリート構造物の内部のひび割れの状態又は鉄筋の腐食と推定される異常が起きている範囲を特定する。
このように構成された本実施の形態の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法は、検査対象となる鉄筋コンクリート構造物と比較対象となるコンクリート構造物との表面に対して電磁波レーダによる電磁波伝搬特性の測定を行い、それらの測定結果から関係性指標を算出する。
そして、その算出された関係性指標を自己組織化マップ(SOM)の入力データとしてクラスタ分析を行い、2次元平面上に可視化する。さらに、その可視化された結果から、ひび割れの状態や鉄筋の腐食などの異常が起きている範囲を推定する。
このように関係性指標を使用してクラスタ分析を行うことによって、鉄筋コンクリート構造物の内部に発生するひび割れが微小であっても検出することができるようになる。
例えば、従来の弾性波法に基づくコンクリートの内部欠陥の検出では、厚さが5mm以上でないと検出できなかったが、本実施の形態のひび割れ検出方法であれば、0.1mm-0.4mmという非常に幅の狭いひび割れであっても検出することができる。また、鉄筋コンクリート構造物の内部に発生する鉄筋の腐食などの異常状態も検出することができる。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば前記実施の形態では、検査対象の鉄筋コンクリート構造物の測定を行う前に比較対象のコンクリート構造物の測定を行う工程について説明したが、比較対象の測定は毎回行う必要はなく、事前に一度行っておけばよい。要するに、検査対象の測定は、維持管理のために時間をおいて繰り返し行われることになるが、比較対象の測定は最初に一度行うだけでもよいし、基準データとして予め用意された測定データを利用することもできる。
また、前記実施の形態では、埋設物及び損傷の無いコンクリート構造物を比較対象として説明したが、これに限定されるものではなく、検査対象となる鉄筋コンクリート構造物との間で、ひび割れ又は鉄筋の腐食が検出できる程度の差異がある比較対象であればよい。
1 供試体(鉄筋コンクリート構造物)
11 表面
2 鉄筋

Claims (5)

  1. 電磁波レーダを用いて鉄筋コンクリート構造物の内部に発生するひび割れ及び鉄筋の腐食の少なくとも一方を検出する鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法であって、
    検査対象となる鉄筋コンクリート構造物の表面に対して電磁波レーダによる電磁波伝搬特性の測定を行う検査対象測定ステップと、
    比較対象となるコンクリート構造物の表面に対して電磁波レーダによって測定された電磁波伝搬特性の測定結果と前記検査対象の測定結果との関係性指標を算出する関係性算出ステップと、
    前記算出された関係性指標をクラスタ分析して2次元平面上に可視化する可視化ステップと、
    前記可視化された結果から内部ひび割れ又は鉄筋の腐食と推定される異常が起きている範囲を特定する判定ステップとを備えたことを特徴とする鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法。
  2. 前記比較対象となるコンクリート構造物は、鉄筋が埋設されていない健全な状態のコンクリートによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法。
  3. 前記可視化ステップは、自己組織化マップを用いて行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法。
  4. 前記関係性指標は、共分散と積率相関係数であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法。
  5. 前記関係性算出ステップでは、電磁波反射波形データから共分散と積率相関係数を算出するとともに、電磁波反射波形データをフーリエ変換したパワースペクトルデータからも共分散と積率相関係数を算出し、これらの4種類の関係性指標を前記クラスタ分析の入力データとすることを特徴とする請求項4に記載の鉄筋コンクリート構造物の内部異常状態検出方法。
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