JP7353235B2 - 液状シリコーンゴムコーティング剤組成物 - Google Patents

液状シリコーンゴムコーティング剤組成物 Download PDF

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Description

本発明は、液状シリコーンゴムコーティング剤組成物に関するものである。
シリコーンゴムは、耐熱性、耐寒性、安全性、電気絶縁性、耐候性などの良さから、コネクターシールやスパークプラグブーツなどの自動車部品、複写機用のロールや電子レンジのパッキンなどの電気・電子用部品、シーラントなどの建築用部品、その他哺乳瓶用乳首やダイビング用品などあらゆる分野に広く使用されている。これら各種の用途の中には、有機樹脂などと組み合わせた部品として使用される事例も少なくない。
従来より、付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物と被着体とが一体化した成型物を得る方法は数多く提案されている。成型樹脂表面にプライマーを塗布し、その上から未硬化のシリコーンゴム組成物を塗布・硬化させて接着させる方法、接着剤を界面に塗布して一体化させる方法、2色成形で両者の嵌合等により一体化させる方法、自己接着性シリコーンゴム材料を成形樹脂の上から硬化させる方法などが代表的である。しかしながら、接着剤やプライマーを使用する方法は、工程が増えてしまうだけでなく、塗布方法によっては非接着面を汚してしまうなどの問題点もあった。また、2色成形による方法では、一体化品の形状が制約されたり、界面の密着性は不十分などの問題があった。
そこで、シリコーンゴム組成物に接着剤を添加した自己接着性シリコーンゴム組成物を用いることが、前記塗布工程が不要となるため作業時間の短縮、およびコスト削減ができ、作業性も向上するため、被着体との一体成型体を製造する上で有効な手段である。
付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の成型において、被着体と接着させる方法は数多く報告されている。その一つに被着体上で自己接着性シリコーンゴム組成物を硬化させる方法が提案されている。例えば、付加硬化型シリコーンゴム組成物に接着促進剤、及び耐薬品性を改良するためのフルオロオルガノポリシロキサンを添加し、有機樹脂または金属と接着させる方法(特許文献1)、付加硬化型シリコーンゴム組成物に毒性成分を含まない二重結合含有接着促進剤を配合することにより、有機樹脂に接着させる方法(特許文献2)などが開示されている。
また、このような付加硬化型液状シリコーンゴム組成物としては、特定構造のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを架橋剤とし、接着性付与成分として、1分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物、並びにチタニウム化合物及びジルコニウム化合物のいずれか一方又は両方を含有することで、基布に接着させる方法(特許文献3)などが開示されている。
しかしながら、従来の付加硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化させる時には、高温に加熱する工程が必要であるため、工程時間が長くなる。
また、液状シリコーンゴム組成物をエアーバッグ用基布にコーティングし、電子線で架橋、硬化して得られる接着性や耐ブロッキング性に優れるシリコーンコーティングエアーバッグ基布の製造方法(特許文献4)が開示されている。しかしながら、硬化の際に照射する電子線照射線量が非常に高く、時間を要するため、実用性が低い。
特表2007-502346号公報 特表2013-533368号公報 特開2011-080037号公報 特開2015-085271号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、シリコーンゴムコーティング層の被着体への優れた接着性が得られる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物に関する。
上記課題を解決するために、本発明では、
(A)粘度が1,000~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)(メタ)アクリル基を1分子中に2個以上有する有機化合物:0.1~10質量部、
(C)前記(B)成分以外の接着性向上剤:0.1~10質量部
を含むことを特徴とする液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を提供する。
このような液状シリコーンゴムコーティング剤組成物であれば、シリコーンゴムコーティング層の被着体への優れた接着性が得られるものとなる。
また、本発明では、(C)成分が、イソシアネート基、(メタ)アクリル基、アルコキシ基、アルケニル基、エステル基の群から選ばれる1つ以上の官能基を1分子中に2つ以上有する液状シリコーンゴムコーティング剤組成物であることが好ましい。
このような液状シリコーンゴムコーティング剤組成物であれば、被着体に対する接着性をより向上させることができる。
また、本発明では、更に、(D)成分として補強性シリカ微粉末を、(A)成分100質量部に対して1~100質量部含有する液状シリコーンゴムコーティング剤組成物であることが好ましい。
このような液状シリコーンゴムコーティング剤組成物であれば、機械的強度に優れたシリコーンゴムを得ることができる。
また、本発明では、(D)成分が、BET法における比表面積が50m/g以上のヒュームドシリカである液状シリコーンゴムコーティング剤組成物であることが好ましい。
このような液状シリコーンゴムコーティング剤組成物であれば、機械的強度により優れたシリコーンゴムを得ることができる。
また、本発明では、上記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を被着体上に厚さ0.5mm以下の薄膜状に塗布した後、電子線を照射することで塗布した前記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を硬化させるシリコーンゴムの成型方法を提供する。
このようなシリコーンゴムの成型方法であれば、被着体への接着性に優れたシリコーンゴムを成型することができる。
また、本発明では、前記シリコーンゴムの成型方法を用いるシリコーンコーティングエアーバッグの製造方法であって、前記被着体が、合成繊維製基布であるシリコーンコーティングエアーバッグの製造方法を提供する。
このようなエアーバッグの製造方法であれば、接着性に優れたシリコーンゴムコーティング層を有するエアーバッグとすることができる。
本発明によれば、シリコーンゴムコーティング層の被着体への優れた接着性が得られる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を得ることができる。例えば電子線照射にて架橋することで、短時間で架橋させることが可能である。
上述のように、シリコーンゴムコーティング層の被着体への優れた接着性が得られる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の開発が求められていた。
本発明者らは、上記目的を達成するために、シリコーンゴムコーティング剤組成物とその硬化方法に関して種々検討した結果、後述する(A)~(C)成分を必須成分とする液状シリコーンゴムコーティング剤組成物であれば、これを架橋させる際に、例えばシリコーンゴム層が0.5mm以下になるように被着体に塗布(塗工)し、電子線を照射することにより、短時間に架橋させることが可能であり、また前記方法により製造された被着体は、接着性に優れることを知見し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、
(A)粘度が1,000~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)(メタ)アクリル基を1分子中に2個以上有する有機化合物:0.1~10質量部、
(C)前記(B)成分以外の接着性向上剤:0.1~10質量部
を含むことを特徴とする液状シリコーンゴムコーティング剤組成物である。
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<液状シリコーンゴムコーティング剤組成物>
本発明の液状シリコーンゴムコーティング剤組成物は、以下の(A)~(C)成分を含有してなるものであって、室温(25℃)で液状のものである。さらに、(A)~(C)成分以外に、補強性シリカ微粉末、縮合助触媒、非補強性充填剤などを含んでもよい。以下、各成分について詳細に説明する。
[(A)成分]
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、本発明で使用する液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の主剤(ベースポリマー)となる成分であり、25℃における粘度が1,000~1,000,000mPa・s、好ましくは1,500~500,000mPa・s、より好ましくは3,000~100,000mPa・sである。
また(A)成分のオルガノポリシロキサンは、通常、平均重合度が50~1,500、好ましくは100~1,100程度であることが望ましい。なお、本発明において、平均重合度(又は平均分子量)は、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等を展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の重量平均重合度(又は重量平均分子量)として測定することができる(以下、同じ)。
本成分のオルガノポリシロキサン分子中において、ケイ素原子に結合した有機基(以下、「ケイ素原子結合有機基」という)は、特に限定されず、例えば、非置換又は置換の、炭素原子数が、通常、1~12、好ましくは1~10の炭化水素基等が挙げられる。この非置換又は置換の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等の不飽和結合を含むアルケニル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、ビニル基である。
本成分のオルガノポリシロキサンの分子構造は、特に限定されず、例えば、直鎖状、一部分岐した直鎖状、環状、分岐鎖状等が挙げられるが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、直鎖状ジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
本成分のオルガノポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジビニルメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、式:R SiO1/2(式中、Rは脂肪族不飽和結合を有しない非置換又はハロゲン置換等の置換の一価炭化水素基である。以下、同じ)で表されるシロキサン単位と式:R SiO1/2(式中、Rはアルケニル基である。以下、同じ)で表されるシロキサン単位と式:R SiOで表されるシロキサン単位と少量の式:SiOで表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:R SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:SiOで表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:R SiO1/2で表されるシロキサン単位と式:R SiOで表されるシロキサン単位と少量の式:SiOで表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、式:RSiOで表されるシロキサン単位と少量の式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位もしくは少量の式:RSiO3/2で表されるシロキサン単位とからなるオルガノシロキサン共重合体、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物等が挙げられる。
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
[(B)成分]
(B)成分である(メタ)アクリル基を1分子中に2個以上有する有機化合物は、液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の硬化性を向上させるための成分である。この硬化性向上剤は、EB照射によるシリコーンゴムコーティング剤の硬化性を向上させることができるものであれば特に限定されない。具体例としては、1分子中にアクリル基を2つ以上、好ましくは3つ以上有する有機化合物などが挙げられる。
具体的には、2官能を有するアクリル化合物としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等;3官能を有するアクリル化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等;4官能以上を有するアクリル化合物としては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
このようなアクリル基含有有機化合物の具体例として好ましくは、下記に示すジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
Figure 0007353235000001
式中、Rは水素原子、又はメチル基である。
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが必要であり、好ましくは0.5~5質量部である。この配合量が0.1質量部未満である場合には、硬化物は十分に硬化しないことがあり、この配合量が10質量部を超える場合には、粘度が高くなり作業性が悪化することがある。
(B)成分の(メタ)アクリル基を1分子中に2個以上有する有機化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
[(C)成分]
(C)成分である(B)成分以外の接着性向上剤は、被着体である有機樹脂、エアーバッグ用の合成繊維織物基材、不織布基材等に対する、液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の硬化物(ゴムコーティング層)の接着性を向上させるための成分である。この接着性向上剤は、硬化物の自己接着性を向上させることができるものであれば特に限定されない。
その具体例としては、有機ケイ素化合物や非ケイ素有機化合物等が挙げられ、中でも、イソシアネート基、アクリル基、メタクリル基、アルコキシ基、アルケニル基、エステル基の群から選ばれる1つ以上の官能基を1分子中に少なくとも1種有するものが好ましく、2種以上有するものがより好ましい。
有機ケイ素化合物としては、例えば、ケイ素原子に結合したビニル基、アリル基等のアルケニル基;γ-グリシドキシプロピル基、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基等の、アルキレン基等の炭素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基;γ-アクリロキシプロピル基、γ-メタクリロキシプロピル基等の、アルキレン基等の炭素原子を介してケイ素原子に結合したアクリロキシ基やメタクリロキシ基;アルキレン基等の炭素原子を介してケイ素原子に結合したトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基等のアルコキシシリル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のケイ素原子に直接結合したアルコキシ基;エステル構造、ウレタン構造、エーテル構造、イソシアネート基;及びケイ素原子に結合した水素原子からなる群から選ばれる少なくとも2個の官能基を有する、オルガノシラン及びケイ素原子数3~100、好ましくは3~50、より好ましくは5~20の、直鎖状、環状又は分岐鎖状のシロキサンオリゴマー、トリアリルイソシアヌレートの(アルコキシ)シリル変性物、そのシロキサン誘導体(即ち、該トリアリルイソシアヌレートのアルコキシシリル変性物の加水分解縮合物)から選ばれる窒素含有有機ケイ素化合物などの有機ケイ素化合物等が挙げられ、中でも、官能基を1分子中に2種以上有するものが好ましく、特にはイソシアネート基、(メタ)アクリル基、アルコキシ基、アルケニル基、エステル基の群から選ばれる1つ以上の官能基を1分子中に2つ以上有するものが好ましい。
このような有機ケイ素化合物の具体例としては、下記に示す化合物が挙げられる。
Figure 0007353235000002
非ケイ素系有機化合物としては、例えば、1分子中に1個のアルケニル基と少なくとも1個のエステル基とを有する有機酸アリルエステル等が挙げられる。有機酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸等の不飽和カルボン酸;安息香酸、フタル酸、ピロメリト酸等の芳香族カルボン酸;酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸等の飽和脂肪酸等が挙げられる。これらの有機酸を含む有機酸アリルエステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸等の不飽和カルボン酸アリルエステル;安息香酸アリルエステル、フタル酸ジアリルエステル、ピロメリト酸テトラアリルエステル等の芳香族カルボン酸アリルエステル;酢酸アリルエステル、プロピオン酸アリルエステル、酪酸アリルエステル、吉草酸アリルエステル、ラウリン酸アリルエステル等の飽和脂肪酸アリルエステル等が挙げられる。
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部であることが必要であり、好ましくは0.5~5質量部である。この配合量が0.1質量部未満である場合には、硬化物は十分な接着性を有しないことがあり、この配合量が10質量部を超える場合には、粘度が高くなり作業性が悪化することがある。
(C)成分の接着性向上剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
[(D)成分]
本発明の液状シリコーンゴムコーティング剤組成物としては、更に(D)成分として補強性シリカ微粉末を配合することが好ましい。
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、1~100質量部が好ましい。
(D)成分である補強性シリカ微粉末は、機械的強度の優れたシリコーンゴムを得るために適宜添加されるものであるが、この目的のためには、BET法による比表面積が50m/g以上(通常、100~500m/g)であることが好ましく、より好ましくは120~400m/gである。比表面積が50m/g以上であれば補強性が十分であり、ゴム強度が低下してしまう恐れもない。
補強性シリカ微粉末としては、ヒュームドシリカ(乾式シリカ)、沈殿シリカ(湿式シリカ)、比表面積の高いゲル法シリカ(湿式シリカ)が例示され、特にヒュームドシリカ(BET比表面積が50m/g以上)が好ましく、BET比表面積が120~350m/gがより好ましい。
上記補強性シリカ微粉末は、例えば、クロロシラン、アルコキシシラン、オルガノシラザン等の(通常、加水分解性の)有機ケイ素化合物等の表面処理剤で、表面が疎水化処理されたシリカ微粉末を用いることができる。その場合、これらのシリカ微粉末は、予め粉体の状態で、表面処理剤により、直接表面疎水化処理されたものを用いてもよいし、シリコーンオイル(例えば、上記(A)成分のオルガノポリシロキサン)との混練時に表面処理剤を添加して、表面疎水化処理したものを用いてもよい。
(D)成分の通常の処理法として、公知の技術により表面処理することができ、例えば、常圧で密閉された機械混練装置又は流動層に上記未処理のシリカ微粉末と表面処理剤とを入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において、室温(25℃)あるいは熱処理(加熱)下にて混合処理することができる。場合により、水又は触媒(加水分解促進剤等)を使用して表面処理を促進してもよい。混練後、乾燥することにより、表面処理シリカ微粉末を製造し得る。表面処理剤の配合量は、その表面処理剤の被覆面積から計算される量以上であればよく、通常、未処理のシリカ微粉末100質量部に対し、1~50質量部、好ましくは5~40質量部、より好ましくは10~30質量部とすることができる。
表面処理剤として、具体的には、へキサメチルジシラザン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン等のシラザン類、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール及びヒドロキシペンタメチルジシロキサン等のシランカップリング剤、ポリメチルシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物が挙げられ、これらで表面処理した疎水性シリカ微粉末を用いることができる。表面処理剤としては、特にシラザン類又はクロロシラン類が好ましい。
[その他の成分]
本発明に係る組成物には、前記(A)~(D)成分以外にも、目的に応じて、その他の任意の成分を配合することができる。その具体例としては、以下のものが挙げられる。これらのその他の成分は、各々、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
・縮合助触媒
接着促進のための縮合助触媒として作用する有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物を用いることができる。上記成分の具体例としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド、チタンテトラオクチルオキシド(チタン酸オクチル)等の有機チタン酸エステル、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、チタンテトラアセチルアセトネート等の有機チタンキレート化合物等のチタン系縮合助触媒(チタニウム化合物)、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド等の有機ジルコニウムエステル、ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート、ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等の有機ジルコニウムキレート化合物等のジルコニウム系縮合助触媒(ジルコニウム化合物)が挙げられる。上記成分は1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
・非補強性充填剤
(D)成分の補強性シリカ微粉末以外の充填剤として、例えば、結晶性シリカ(例えば、BET法比表面積が50m2/g未満の石英粉)、有機樹脂製中空フィラー、ポリメチルシルセスキオキサン微粒子(いわゆるシリコーンレジンパウダー)、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、カーボンブラック、ケイ藻土、タルク、カオリナイト、ガラス繊維等の充填剤;これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物により表面疎水化処理した充填剤;シリコーンゴムパウダー;シリコーンレジンパウダー等が挙げられる。
・その他の成分
上記の他にも、例えば、三次元網状構造のオルガノポリシロキサンレジン、有機溶剤、クリープハードニング防止剤、可塑剤、チキソ性付与剤、顔料、染料、防かび剤等を配合することができる。
<液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の調製>
上記(A)~(C)成分、必要に応じて配合される(D)成分、その他の任意成分を均一に混合することにより、液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を調製することができる。
こうして得られる液状シリコーンゴムコーティング剤組成物は、25℃で液状の組成物であり、JIS K 7117-1:1999に記載の方法で測定した25℃における粘度は、好ましくは1,000~1,000,000mPa・sであり、より好ましくは10,000~700,000mPa・sである。この粘度範囲内であれば、エアーバッグ用基布に塗工する際に、塗工むらや硬化後の基布への接着力不足などが生じにくいため、好適に用いることができる。
<被着体>
本発明において、被着体として使用される有機樹脂としては、通常の熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的にはアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ウレタン(PU)樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ナイロン6(PA6)樹脂、ナイロン66(PA66)樹脂、ポリフタルアミド(PPA)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリイミド樹脂及び液晶樹脂等が挙げられる。
<エアーバッグ用基布>
本発明において、上記組成物の硬化物からなるシリコーンゴム層が形成されるエアーバッグ用基布(繊維布からなる基材)としては、公知のものが用いられ、その具体例としては、6,6-ナイロン、6-ナイロン、アラミド繊維などの各種ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの各種ポリエステル繊維などの各種合成繊維の織生地が挙げられる。
<シリコーンゴムの成型方法>
上記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を、有機樹脂やエアーバッグ用基布(繊維布からなる基材)等の被着体の少なくとも一方の表面、特には一方の表面に最大厚みが0.5mmの薄膜状に塗布した後、例えば30~300kGyの電子線を照射することで、これを架橋、硬化させてシリコーンゴム層(硬化被膜層)を形成する。このようにしてシリコーンゴム層(硬化被膜層)を形成させることができる。
<電子線照射方法>
本発明においては、上記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物の硬化方法として、例えば照射線量30~300kGyの電子線を照射することにより、好ましくは電子線成形装置を用いて照射線量30~300kGyの電子線を照射することによって硬化させることができる。加速電圧は、例えば50~500kV、好ましくは80~300kVとすることができる。
電子線硬化手段として例えばCB-300型の電子線成形装置(Energy Sciencec、Inc)で電子線硬化を実施することができる。この場合エアーバッグに使用される基布に上記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物をコーティングし、装置の不活性化されたチャンバに通過させる(<50ppm酸素)。その後、不活性化されたチャンバ中で、電子線照射に暴露し、例えば照射線量で30~300kGy、好ましくは300kGy未満、特に50~200kGyの電子線を与えることで硬化させることができる。30kGy以上であれば、硬化が十分であり、300kGy以下の照射線量であれば、シリコーンゴム層の硬度が高くなりすぎず、クラッキングが発生することがない。
また、電子線硬化は、公知の方法を採用できるが、バッチ式よりもベルトコンベア式が好ましい。ベルトコンベア式であると架橋対象物を炉の中に入れるときに一時的にチャンバ内酸素濃度が上昇することがなく、表面架橋性が悪化するおそれがない。
<シリコーンコーティングエアーバッグの製造方法>
上記シリコーンゴムの成型方法により得たシリコーンゴム層を用いて、シリコーンゴムコーティングエアーバッグを製造することができる。この時、上記被着体が合成繊維製基布であることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明について具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら制限するものではない。なお、「部」とは「質量部」を表し、粘度は25℃における回転粘度計による測定値である。また、実施例中で用いたアクリル基含有化合物(B1)、接着性向上剤(C1)、(C2)、(C3)は、下記化学式で表される構造を有するものである。
・アクリル基含有化合物(B1)
Figure 0007353235000003
・接着性向上剤(C1)
Figure 0007353235000004
・接着性向上剤(C2)
Figure 0007353235000005
・接着性向上剤(C3)
Figure 0007353235000006
[実施例1]
25℃における粘度が約30,000mPa・sであり、平均重合度が750である分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(A1)60質量部、へキサメチルジシラザン8質量部、水2質量部、およびBET法による比表面積が約300m/gである補強性シリカ微粉末(D)(商品名:アエロジル300、日本アエロジル社製)40質量部を、ニーダー中で1時間混合した。次にニーダー内の温度を150℃に昇温し、引き続き2時間混合した。次いで、該温度を100℃まで降温した後、粘度が約30,000mPa・sであり、平均重合度が750である分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(A1)30質量部を添加し、均一になるまで混合することで、ベースコンパウンド(BC1)を得た。
得られたベースコンパウンド(BC1)55質量部に、分子鎖両末端がビニルジメチルシロキシ基で封鎖された25℃の粘度が30,000mPa・s(平均重合度:約750)である分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(A1)35質量部、アクリル基含有化合物(B1)0.9質量部、接着性向上剤(C1)0.9質量部を均一に混合し、液状シリコーンゴムコーティング剤組成物(組成物A、粘度:172,000mPa・s)を調製した。
<シリコーンゴム成型体1>
寸法が幅25mm、長さ100mmからなる被着体に上記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を厚さ0.5mm以下の薄膜状になるように塗工した後に、加速電圧200kV、電流7.8mA、搬送速度5m/min、照射線量150kGyの電子線で照射を行い、シリコーンゴム層を有する成型体を作製した。被着体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ナイロン6(PA6)樹脂、ナイロン66(PA66)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を選択した。下記の測定方法に従って、接着性の試験を行った。得られた結果を表1に示す。
<被着体への接着性試験方法>
成型体の表面を削った時のコーティング部分の破壊状況を目視で確認し、シリコーンゴム層が上記被着体(有機樹脂)のコーティング面から剥離していない場合を「接着」と評価し、剥離するが力を加える必要がある場合を「密着」と評価し、容易に剥離する場合を「×」と評価した。
<シリコーンゴム成型体2>
エアーバッグ用PET基布(495デニール)に表面塗布量が10~20g/mになるようにコーティングした後に、約150kGyの電子線照射線量で照射を行い、シリコーンゴム硬化物でコーティングされたエアーバッグ基布(シリコーンゴム被覆PET基布)を作製した。下記の測定方法に従って、接着性の試験を行った。得られた結果を表2に示す。
<エアーバッグ用基布への接着性試験方法>
上記のシリコーンゴム被覆PET基布について、ISO 5981に記載の方法で、スクラブ試験機(SERVONETIC Control Instruments製)を用いて接着性を評価した。600回スクラブ試験を行った後、コーティング部分の破壊状況を目視で確認し、シリコーンゴム層がコーティング面から剥離していない場合を合格と評価し、剥離している場合を不合格と評価した。
[実施例2]
実施例1の接着性向上剤(C1)を接着性向上剤(C2)に置き換えたこと以外は同様にして組成物B(粘度:148,000mPa・s)を調製し、実施例1と同様に接着性試験を行った。得られた結果を表1、2に示す。
[比較例1]
実施例1の接着性向上剤(C1)を配合しなかったこと以外は同様にして組成物C(粘度:172,000mPa・s)を調製し、実施例1と同様に接着性試験を行った。得られた結果を表1、2に示す。
[比較例2]
実施例1のアクリル基含有化合物(B1)を配合しなかったこと以外は同様にして組成物D(粘度:186,000mPa・s)を調製し、実施例1と同様に接着性試験を行った。得られた結果を表1、2に示す。
[比較例3]
実施例2のアクリル基含有化合物(B1)を配合しなかったこと以外は同様にして組成物E(粘度:126,000mPa・s)を調製し、実施例1と同様に接着性試験を行った。得られた結果を表1、2に示す。
[比較例4]
比較例2の接着性向上剤(C1)を接着性向上剤(C3)に変えて配合したこと以外は同様にして組成物F(粘度:122,000mPa・s)を調製し、シリコーンゴム成型体2について実施例1と同様に接着性試験を行った。得られた結果を表2に示す。
被着体への接着性試験結果
Figure 0007353235000007
エアーバッグ用基布への接着性試験結果
Figure 0007353235000008
上記のように、本発明(実施例1、2)は、被着体やエアーバッグ用基布への接着性に優れている。
一方で比較例1~3は被着体、特にナイロン6(PA6)樹脂とナイロン66(PA66)樹脂への接着性に劣る結果となった。また、比較例1~4はエアーバッグ用基布(PET)への接着性に劣る結果となった。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

Claims (6)

  1. (A)粘度が1,000~1,000,000mPa・sであるオルガノポリシロキサン:100質量部、
    (B)(メタ)アクリル基を1分子中に2個以上有する有機化合物:0.1~10質量部、
    (C)前記(B)成分以外の接着性向上剤:0.1~10質量部
    を含むことを特徴とする液状シリコーンゴムコーティング剤組成物。
  2. (C)成分が、イソシアネート基、(メタ)アクリル基、アルコキシ基、アルケニル基、エステル基の群から選ばれる1つ以上の官能基を1分子中に2つ以上有するものであることを特徴とする請求項1に記載の液状シリコーンゴムコーティング剤組成物。
  3. 更に、(D)成分として補強性シリカ微粉末を、(A)成分100質量部に対して1~100質量部含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液状シリコーンゴムコーティング剤組成物。
  4. 前記(D)成分が、BET法における比表面積が50m/g以上のヒュームドシリカであることを特徴とする請求項3に記載の液状シリコーンゴムコーティング剤組成物。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を被着体上に厚さ0.5mm以下の薄膜状に塗布した後、電子線を照射することで塗布した前記液状シリコーンゴムコーティング剤組成物を硬化させることを特徴とするシリコーンゴムの成型方法。
  6. 請求項5に記載のシリコーンゴムの成型方法を用いるシリコーンコーティングエアーバッグの製造方法であって、前記被着体が、合成繊維製基布であることを特徴とするシリコーンコーティングエアーバッグの製造方法。
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