しかしながら、シーラーと柱台座とを用いた防水構造は、芯材である支柱アンカとそのカバー材である支柱とを有する場合において用いられる防水構造であるので、笠木に立設されるカバー材のない場合には用いることができない。そのため、カバー材のない支柱の場合において土台への水の浸入を防止することができる防水構造が望まれている。しかも、カバー材のない支柱の場合には、防水構造が外部に露出しないように、その防水構造を笠木の内側に配置することが好適である。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、外部床の立ち上がり部に設けられる手摺の手摺支柱にカバー材が設けられない場合において、立ち上がり部に水が浸入するのを防止することにある。この際、手摺の外観を損なわないようにするのが好ましい。
上記目的を達成するための本発明に係る水密材押さえ具は、外部床の屋外縁の立ち上がり部を上方から覆うように配置されて上面に貫通穴が形成された捨て水切り材に設けられ、前記貫通穴を囲むよう前記上面に設けられた水密材の押さえ具であって、板状で貫通孔が形成されると共に、前記貫通孔の周囲に放射状にスリットが前記貫通孔に連続して形成され、隣接する前記スリット間が前記水密材の押さえ部とされ、前記貫通穴に手摺面材を保持する手摺支柱が貫通して、前記立ち上がり部を上方から覆うよう配置された前記捨て水切り材の上面に、前記貫通孔に前記手摺支柱が貫通した状態で設け、前記押さえ部が前記水密材に接触して立ち上がるように弾性変形しつつ前記水密材を前記手摺支柱および前記捨て水切り材に押し付けることを特徴とする。
また、本発明に係る水密材押さえ具は、前記貫通孔は、前記手摺支柱の水平断面形状よりも大きい面積を有していることを特徴とする。
さらに、本発明に係る水密材押さえ具は、外周端部の内、前記外部床側の端部と前記外部床側の端部とは逆側の端部とを残して、前記捨て水切り材の上面に接着されることを特徴とする。
上記目的を達成するための本発明に係る手摺の防水構造は、前記外部床の屋外縁の前記立ち上がり部を上方から覆うように配置され、上面に前記貫通穴が形成された前記捨て水切り材と、前記捨て水切り材の上面に前記貫通穴を囲むように設けられる前記水密材と、板状で前記貫通孔が形成されると共に、前記貫通孔の周囲に放射状にスリットが前記貫通孔に連続して形成され、隣接する前記スリット間が前記水密材の押さえ部とされる前記水密材押さえ具と、前記捨て水切り材を上方から覆うように配置され、上面に挿通穴が貫通して形成された下笠木材と、前記下笠木材に設けられ、前記水密材押さえ具を押圧する押圧材と前記手摺面材を保持する前記手摺支柱とを備え、前記貫通穴に前記手摺支柱が貫通すると共に前記挿通穴に前記手摺支柱が貫通した状態で、前記立ち上がり部を上方から覆う前記捨て水切り材を上方から覆うように前記下笠木材を配置し、前記水密材押さえ具で前記手摺支柱および前記捨て水切り材に押し付けられた前記水密材を、前記下笠木材に設けられた押圧材が前記押さえ部を下方へ押圧して前記手摺支柱および前記捨て水切り材にさらに押し付けることを特徴とする。
また、本発明に係る手摺の防水構造は、前記押圧材は、前記下笠木材の下面に前記挿通穴を囲むようにして設けられており、前記押圧材と前記手摺支柱との間に充填されるシーリング材をさらに備えることを特徴とする。
さらに、本発明に係る手摺の防水構造は、前記押圧材は、前記下笠木材の下面に前記挿通穴を囲むように設けられる弾性変形可能な弾性材からなることを特徴とする。
上記目的を達成するための本発明に係る手摺の防水構造の施工方法は、前記外部床の屋外縁の前記立ち上がり部に設けられ、前記手摺面材を保持する前記手摺支柱を有する手摺の防水構造の施工方法であって、前記立ち上がり部から上方へ延出した前記手摺支柱が前記貫通穴を貫通した状態で前記立ち上がり部を上方から覆うように、前記水密材が設けられた前記捨て水切り材を配置する水切り配置工程と、前記水密材が設けられた前記捨て水切り材の上面に前記水密材押さえ具を設ける押さえ具配置工程と、前記立ち上がり部を上方から覆うように配置された前記捨て水切り材を上方から覆うように下笠木材を配置する下笠木配置工程とを含み、前記下笠木材は、上面に挿通穴が貫通して形成され、前記水密材押さえ具を押圧する押圧材が設けられており、前記下笠木配置工程では、前記挿通穴に前記手摺支柱が貫通した状態で前記捨て水切り材を上方から覆うように前記下笠木材を配置し、前記水密材押さえ具で前記手摺支柱および前記捨て水切り材に押し付けられた前記水密材を、前記押圧材が前記押さえ部を下方へ押圧して前記手摺支柱および前記捨て水切り材にさらに押し付けることを特徴とする。
さらに、本発明に係る手摺の防水構造の施工方法は、前記押圧材は、前記下笠木材の下面に前記挿通穴を囲むようにして設けられる部材とされており、前記押圧材と前記手摺支柱との間にシーリング材を充填するシーリング工程をさらに含むことを特徴とする。
本発明に係る水密材押さえ具によれば、板状で貫通孔の周囲に放射状にスリットが前記貫通孔と連続するように形成されており、隣接するスリット間が捨て水切り材に設けられる水密材の押さえ部とされる。捨て水切り材は、上面に手摺面材を保持する手摺支柱の貫通穴が形成されており、その貫通穴を囲むようにして上面に水密材が設けられる。従って、外部床の立ち上がり部を上方から覆う捨て水切り材の上面に水密材押さえ具を設けることで、次に述べるように、立ち上がり部に水が浸入するのを防止することができる。すなわち、捨て水切り材は、その貫通穴に手摺支柱が貫通した状態で、外部床の立ち上がり部を上方から覆うよう配置される。ここで、捨て水切り材の上面には、前述したように水密材が設けられている。そして、水密材押さえ具は、その貫通孔に手摺支柱が貫通した状態で、捨て水切り材の上面に設けられる。この際、水密材押さえ具の押さえ部は、水密材に接触して立ち上がるように弾性変形しつつ、水密材を手摺支柱の外側面および捨て水切り材の上面に押し付ける。
また、本発明に係る水密材押さえ具によれば、貫通孔が手摺支柱の水平断面形状よりも大きい面積を有しているので、水密材の手摺支柱への押付時において、押さえ部の先端部と手摺支柱との間に弾性変形した水密材が挟まれた状態とされる。従って、水密材をより強く手摺支柱へ押し付けることができる。
さらに、本発明に係る水密材押さえ具によれば、外周端部の内、外部床側の端部とその外部床側の端部とは逆側の端部とを残して、捨て水切り材の上面に接着される。すなわち、水密材押さえ具の外部床側の端部と捨て水切り材の上面とは非接着状態とされ、その非接着部分では、水密材押さえ具と捨て水切り材との間に隙間が形成される。同様にして、水密材押さえ具の外部床側とは逆側において、水密材押さえ具と捨て水切り材との間に隙間が形成される。従って、水密材押さえ具のスリットから、水密材押さえ具と捨て水切り材との間の空間に水が浸入した場合、その浸入した水を前述した両隙間から外部へ排出することができる。
本発明に係る手摺の防水構造によれば、捨て水切り材に設けられた水密材が水密材押さえ具によって手摺支柱および捨て水切り材に押し付けられるので、上記水密材押さえ具の作用効果を奏することができる。しかも、この防止構造では、押圧材によって水密材押さえ具の押さえ部が下方へ押圧されるので、水密材をより強く手摺支柱および捨て水切り材に押し付けることができる。なお、水密材とその押さえ具とは、捨て水切り材とその上方に配置される下笠木材との間に配置されるので、外部に露出することがない。
また、本発明に係る手摺の防水構造によれば、水密材およびその押さえ具による防水と、シーリング材による防水とがなされるので、防水性をより向上させることができる。この際、押圧材は、シーリング材を充填する際のバックアップ材としての機能も果たす。
さらに、本発明に係る手摺の防水構造によれば、押圧材は、下笠木材の下面に挿通穴を囲むようにして設けられる弾性変形可能な弾性材から形成されている。従って、押圧材が水密材押さえ具に接触して弾性変形しつつ水密材押さえ具を押圧するので、水密材を手摺支柱および捨て水切り材により強く押し付けることができる。
本発明に係る手摺の防水構造の施工方法によれば、水切り配置工程、押さえ具配置工程、および下笠木配置工程が順次実行される。従って、上記水密材押さえ具の作用効果を奏する防水構造を施工することができ、しかも押圧材で水密材押さえ具が押圧されるので、水密材を手摺支柱および捨て水切り材により強く押し付ける防水構造を施工することができる。
さらに、本発明に係る手摺の防水構造の施工方法によれば、水密材およびその押さえ具による防水と、シーリング材による防水とがなされる防水構造を施工することができる。この際、押圧材は、シーリング材を充填する際のバックアップ材としての機能も果たす。
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の水密材押さえ具の一実施例を用いた手摺の防水構造の一例を示す概略側面図であり、一部を省略して示すと共に一部を断面にして示している。図2は、図1の手摺の防水構造を示す概略正面図であり、一部を省略して示すと共に一部を断面にして示している。なお、以下の説明においては、図1の紙面における左右方向を前後方向(左側が前方)とし、図1の紙面における上下方向を上下方向とし、図1における紙面と直交方向を左右方向(手前側を右方)とする。
本実施例の手摺の防水構造1は、外部床2の屋外縁に形成される立ち上がり部3に設けられる手摺の防水構造であって、立ち上がり部3を上方から覆うように配置される捨て水切り材4と、捨て水切り材4に設けられる水密材5と、捨て水切り材4に設けられる水密材5の押さえ具である水密材押さえ具6と、捨て水切り材4を上方から覆うように配置される下笠木材7と、水密材押さえ具6の押圧材8と、手摺の支柱である手摺支柱9と、押圧材8と手摺支柱9との間に充填されるシーリング材10とを備える。ここでは、外部床2は、集合住宅の共用廊下である外廊下とされるが、これに限定されるものではなく、たとえば、バルコニまたは屋上であってもよい。本実施例の外部床2は、集合住宅の外壁から屋外側へ延出して設けられ、同一階に並んでいる複数の住居にわたって設けられる。
外部床2の立ち上がり部3は、捨て水切り材4を支持する複数の支持フレーム12と、支持フレーム12の後側に配置される下地部材13と、支持フレーム12の前側に配置される面材14とを有している。各支持フレーム12は、リップ溝形鋼(C形鋼)が門形状または枠形状に組み立てられて構成される。下地部材13は、合板から形成されており、板面を前後に向けて配置される。面材14は、板状に形成されており、板面を前後に向けて配置される。
本実施例では、複数の支持フレーム12は、隣接する支持フレーム12,12同士が互いにボルトナットなどで連結された状態で、外部床2の立ち上がり部3が形成される位置に配置される。この際、支持フレーム12は、後述する手摺支柱9にボルトナット15などで固定される。支持フレーム12の前端部には、面材14がネジなどで固定される。なお、本実施例では、上下に隣接する面材14,14間の隙間は、バックアップ材16を介して設けられる目地材17によって閉塞される。一方、支持フレーム12の後端部には、下地部材13がネジなどで固定される。このような構成の立ち上がり部3は、床部18の前端部である屋外側端部に形成される。床部18は、梁材19,19間に架け渡される基礎材20上に下地材21を介して設けられる防水シート22を有しており、その防水シート22は、下地部材13の後面および上面の後端部まで覆っている。
立ち上がり部3には、手摺面材23を保持する手摺支柱9が立設される。手摺支柱9は、水平断面が前後方向を長手方向とする略長方形の柱材とされる。この手摺支柱9は、下端部のプレート部24が梁材19に載せ置かれた状態で、プレート部24および梁材19を貫通して設けられたボルト25にナット26がねじ込まれることで、梁材19に固定される。この際、手摺支柱9は、面材14と下地部材13との間の空間を通って、立ち上がり部3から上方へ延出して配置される。
ところで、手摺支柱9の左右に配置される支持フレーム12,12は、手摺支柱9にボルトナット15で固定される。すなわち、手摺支柱9の付近において左右に隣接する支持フレーム12,12は、手摺支柱9を挟んだ状態で手摺支柱9に固定され、互いに連結される。
手摺支柱9の立ち上がり部3からの延出部には、手摺面材23の枠材27が設けられる。枠材27は、隣接する手摺支柱9,9それぞれに設けられるL字部材28に下端部が載せ置かれた状態で、手摺支柱9に固定される。枠材27の内部には、断面略コ字形状で弾性変形可能なグレイジングチャンネル29を介して、正面視略矩形板状の手摺面材23が設けられる。
捨て水切り材4は、下方へ開口する側面視略コ字形の板状に形成されている。具体的には、捨て水切り材4は、支持フレーム12に載置される上片30と、上片30の前端部に下方へ延出して形成される前片31と、上片30の後端部に下方へ延出して形成される後片32とを有している。捨て水切り材4の上片30の上面には、上下に貫通して貫通穴33が形成されている。貫通穴33は、前後方向を長手方向とする平面視略長方形状に形成されている。
捨て水切り材4は、貫通穴33に手摺支柱9が貫通した状態で、立ち上がり部3を上方から覆うように配置される。本実施例では、捨て水切り材4は、上片30が支持フレーム12上に載せ置かれた状態で、ネジなどで支持フレーム12に固定される。この際、捨て水切り材4の前片31は、立ち上がり部3の面材14の前方に配置され、捨て水切り材4の後片32は、立ち上がり部3の下地部材13の後方に配置される。なお、本実施例では、捨て水切り材4が立ち上がり部3に固定された状態において、立ち上がり部3の後端部と捨て水切り材4との間に水密材34が設けられる。水密材34は、捨て水切り材4の上片30と立ち上がり部3の下地部材13の上端部との間に設けられ、これにより、上片30と下地部材13との間が水密状態に維持される。
水密材5は、前後方向を長手方向とする平面視長方形の枠状に形成され、枠の内部の開口35(図6)が前後方向を長手方向とする平面視略長方形状に形成される。本実施例では、水密材5の開口35は、捨て水切り材4に形成された貫通穴33よりも小さく形成される。すなわち、水密材5の開口35の前後長さは、貫通穴33の前後長さよりも短く、水密材5の開口35の左右幅は、貫通穴33の左右幅よりも小さい。この水密材5は、捨て水切り材4の貫通穴33を囲むようにして、捨て水切り材4の上面に両面テープなどで固定される。捨て水切り材4に水密材5が固定された状態では、前述したように開口35が貫通穴33よりも小さいので、水密材5の内周縁部が貫通穴33の上側に配置されて、水密材5によって貫通穴33が狭められる。なお、本実施例では、水密材5は、貫通穴33の前辺、後辺、左辺および右辺にそれぞれ対応して設けられる複数の部材から形成されたが、矩形枠状に一体形成してもよい。
図3および図4は、図1の手摺の防水構造に用いられる水密材押さえ具を示す図であり、図3は平面図、図4は斜視図である。水密材押さえ具6は、弾性変形可能な金属製(たとえば鉄製)で、前後方向を長手方向とする平面視略長方形の板状に形成されている。この水密材押さえ具6には、上下方向へ貫通して、前後方向を長手方向とする平面視略長方形状の貫通孔36が形成されている。貫通孔36は、手摺支柱9の水平断面形状よりも大きい面積を有している。すなわち、本実施例では、貫通孔36の前後長さが手摺支柱9の前後長さよりも長く、貫通孔36の左右幅が手摺支柱9の左右幅よりも大きい。
また、水密材押さえ具6には、貫通孔36の四隅の各隅部から外方へ延出してスリット37が形成されている。図示例では、貫通孔36の四隅の内、前側の左隅部から延出するスリット37は、前方へ行くに従って左方へ傾斜して形成されている。前側の右隅部から延出するスリット37は、前方へ行くに従って右方へ傾斜して形成されている。また、後側の左隅部から延出するスリット37は、後方へ行くに従って左方へ傾斜して形成されている。後側の右隅部から延出するスリット37は、後方へ行くに従って右方へ傾斜して形成されている。各スリット37は、上下方向へ貫通しており、内部が貫通孔36と連通するように、貫通孔36と連続して形成されている。隣接するスリット37,37間である平面視略台形状の部分は、後述するように水密材5の押さえ部38とされる。このようにして、水密材押さえ具6は、板状で貫通孔36が形成されると共に、貫通孔36の周囲に放射状にスリット37が貫通孔36と連続して形成されており、隣接するスリット37,37間が水密材5の押さえ部38とされる。
水密材押さえ具6の下面には、両面テープ39(たとえば両面ブチルテープ)が設けられる。図示例では、水密材押さえ具6の下面に左辺部に沿って両面テープ39が設けられると共に、水密材押さえ具6の下面に右辺部に沿って両面テープ39が設けられ、水密材押さえ具6の前辺部中央と後辺部中央には、両面テープ39が設けられない。
水密材押さえ具6は、貫通孔36に手摺支柱9が貫通した状態で、捨て水切り材4の上面に設けられる。本実施例では、水密材押さえ具6は、前述した両面テープ39によって捨て水切り材4の上面に接着される。従って、水密材押さえ具6が捨て水切り材4に接着された状態では、水密材押さえ具6の前辺部中央と捨て水切り材4との間、および水密材押さえ具6の後辺部中央と捨て水切り材4との間に、隙間が形成される。このようにして、水密材押さえ具6は、その外周端部の内、外部床2側の端部(後端部)と外部床2側の端部とは逆側の端部(前端部)とを残して、捨て水切り材4の上面に接着される。
また、水密材押さえ具6には、前述したように略台形状の押さえ部38が形成されている。従って、水密材押さえ具6を捨て水切り材4に設けることで、複数の押さえ部38が捨て水切り材4の水密材5に接触して立ち上がるように弾性変形しつつ水密材5を手摺支柱9および捨て水切り材4に押し付ける。本実施例では、手摺支柱9が横断面略四角形状に形成され、その手摺支柱9の周囲の水密材5が矩形枠状に形成されている。従って、水密材押さえ具6によって、水密材5が手摺支柱9の前後面および左右面に押圧され、捨て水切り材4の貫通穴33に手摺支柱9が水密に通される。
下笠木材7は、下方へ開口する側面視略コ字形の板状に形成されており、板面を上下に向けて配置される上片40と、上片40の屋外側端部に下方へ延出して形成される前片41と、上片40の屋内側端部に下方へ延出して形成される後片42とを有している。下笠木材7の上片40の上面には、手摺支柱9が通される挿通穴43が上下に貫通して形成されている。挿通穴43は、前後方向を長手方向とする平面視略長方形状に形成されており、手摺支柱9の水平断面形状よりも大きい面積を有している。すなわち、挿通穴43の前後長さが手摺支柱9の前後長さよりも長く、挿通穴43の左右幅が手摺支柱9の左右幅よりも大きい。
下笠木材7は、その挿通穴43に手摺支柱9が貫通した状態で、捨て水切り材4を上方から覆うように配置される。本実施例では、下笠木材7は、上片40が捨て水切り材4の上片30に上下に対応するよう配置されると共に、前後片41,42がそれぞれ捨て水切り材4の前後片31,32に前後に対応するよう配置された状態で、捨て水切り材4に設けられる。この際、下笠木材7の上片40と捨て水切り材4の上片30との間、下笠木材7の前片41と捨て水切り材4の前片31との間、および下笠木材7の後片42と捨て水切り材4の後片32との間には、隙間が形成される。本実施例では、下笠木材7は、下笠木材7に設けられる取付具44が捨て水切り材4に設けられる被取付具45に取り付けられることで、捨て水切り材4に着脱可能に設けられる。取付具44は、下方へ開口する側面視略コ字形の弾性を有する板状に形成されており、屋外側端部および屋内側端部にそれぞれ内方へ延出する係合部46と、内面から下方へ延出する脚部47とを有している。被取付具45は、下方へ開口する側面視略コ字形の板状に形成されており、屋外側端部および屋内側端部にそれぞれ、係合部46が係合される段状の被係合部48を有している。
取付具44は、屋外側端部および屋内側端部がそれぞれ、下笠木材7の屋外側端部および屋内側端部にそれぞれ内方へ延出して形成された載置部49に載せ置かれた状態で、下笠木材7の内面に沿って設けられる。一方、被取付具45は、捨て水切り材4の外面に沿って設けられる。従って、下笠木材7および取付具44を外方へ広げつつ捨て水切り材4に被せ、取付具44の係合部46を被取付具45の被係合部48に係合することで、取付具44が弾性力によって被取付具45に係合する。これにより、下笠木材7は、捨て水切り材4を上方から覆うようにして、捨て水切り材4に設けられる。下笠木材7が捨て水切り材4に設けられた状態では、取付具44の脚部47の下端部が被取付具45の上面に接触しており、下笠木材7と捨て水切り材4とが隙間をあけて配置される。この隙間内において、前述した水密材押さえ具6による水密材5の手摺支柱9への押し付けがなされる。なお、本実施例では、取付具44と被取付具45とのセットは、左右方向へ互いに間隔をあけて複数セットが用いられる。
押圧材8は、弾性変形可能な弾性材からなり、たとえば、ゴムなどの硬質発泡材から形成されている。この押圧材8は、前後方向を長手方向とする平面視略長方形の枠状に形成されており、下笠木材7の上片40の下面に挿通穴43を囲むようにして設けられる。本実施例では、両面テープによって、押圧材8が下笠木材7に固定される。従って、前述したように下笠木材7を設けることで、下笠木材7に設けられた押圧材8が弾性変形しつつ水密材押さえ具6の押さえ部38を下方へ押圧して、水密材押さえ具6により手摺支柱9および捨て水切り材4に押し付けられた水密材5をさらに手摺支柱9および捨て水切り材4に押し付ける。なお、本実施例では、押圧材8は、挿通穴43の前辺、後辺、左辺および右辺にそれぞれ対応して設けられる複数の部材から形成されたが、矩形枠状に一体形成してもよい。
シーリング材10は、前述したように下笠木材7が配置された状態において、押圧材8の内周面と手摺支柱9の外周面との間に充填される。これにより、シーリング材10によって、押圧材8と手摺支柱9との隙間が埋められる。なお、シーリング材10は、その構成を特に問わないが、たとえば、ポリウレタン系、シリコン系またはポリサルファイド系などの従来公知の湿式のシーリング材が用いられる。
次に、本実施例の手摺の防水構造1の施工方法について説明する。本実施例の施工方法は、外部床2の屋外縁の立ち上がり部3に設けられる手摺の防水構造の施工方法であって、その手摺は前述した手摺支柱9を有している。図5は、本実施例の手摺の防水構造の施工方法を示すフローチャートである。また、図6から図8は、本実施例の手摺の防水構造の施工方法を時系列に示す概略図である。本実施例では、水切り配置工程S1、押さえ具配置工程S2、下笠木配置工程S3およびシーリング工程S4が順次に実行される。なお、手摺支柱9は、水切り配置工程S1が行われる前に、前述したように立ち上がり部3から上方へ延出して配置される。
水切り配置工程S1は、立ち上がり部3を上方から覆うようにして、水密材5が設けられた捨て水切り材4を配置する工程である。この工程S1では、予め、捨て水切り材4の上面に、貫通穴33を囲むようにして水密材5が設けられる。水密材5が設けられた捨て水切り材4は、手摺支柱9の上方から貫通穴33および水密材5に手摺支柱9を通すようにして、支持フレーム12に載せ置かれる。そして、捨て水切り材4は、ネジなどで支持フレーム12に固定される。従って、捨て水切り材4は、貫通穴33に手摺支柱9が貫通した状態で、立ち上がり部3を上方から覆うようにして配置される。
押さえ具配置工程S2は、水密材5が設けられた捨て水切り材4の上面に水密材押さえ具6を配置する工程である。この工程S2では、水密材押さえ具6は、手摺支柱9の上方から貫通孔36に手摺支柱9を通すようにして、捨て水切り材4の上面に両面テープ39で接着される。前述したように水密材押さえ具6は押さえ部38を有しているので、水密材押さえ具6を捨て水切り材4に設けることで、押さえ部38が水密材5に接触して立ち上がるように弾性変形しつつ水密材5を手摺支柱9および捨て水切り材4に押し付ける。この際、水密材5は、潰れるように弾性変形しつつ手摺支柱9および捨て水切り材4に押し付けられる。また、前述したように、水密材押さえ具6の前後両端部には、両面テープ39が設けられていない。従って、水密材押さえ具6が捨て水切り材4に設けられた際、水密材押さえ具6の前端部と捨て水切り材4との間に前方へ開口する隙間が形成されると共に、水密材押さえ具6の後端部と捨て水切り材4との間に後方へ開口する隙間が形成される。
下笠木配置工程S3は、立ち上がり部3に配置された捨て水切り材4を上方から覆うようにして下笠木材7を配置する工程である。この工程S3では、予め、下笠木材7の下面に、挿通穴43を囲むようにして押圧材8が設けられる。押圧材8が設けられた下笠木材7は、手摺支柱9の上方から挿通穴43および押圧材8に手摺支柱9を通すようにして、捨て水切り材4の上方に配置される。この際、下笠木材7は、前述したように取付具44および被取付具45によって捨て水切り材4に設けられる。従って、下笠木材7は、挿通穴43に手摺支柱9が貫通した状態で、捨て水切り材4を上方から覆うようにして配置される。下笠木材7が捨て水切り材4の上方に配置されることで、水密材押さえ具6により手摺支柱9および捨て水切り材4に押し付けられている水密材5は、下笠木材7の押圧材8によって水密材押さえ具6の押さえ部38が下方へ押圧されるので、手摺支柱9および捨て水切り材4にさらに押し付けられる。
シーリング工程S4は、押圧材8と手摺支柱9との間にシーリング材10を充填する工程である。この工程S4では、挿通穴43に手摺支柱9が貫通した状態において、上方から挿通穴43を介して、押圧材8と手摺支柱9との間にシーリング材10が充填される。シーリング材10が充填される箇所である押圧材8と手摺支柱9との間の底部には、水密材押さえ具6および水密材5が配置されており、その水密材押さえ具6が押圧材8により押圧されていると共に、水密材5が手摺支柱9に押し付けられている。従って、シーリング材10は、押圧材8と手摺支柱9とを側部とし、水密材押さえ具6および水密材5を底部とする平面視略矩形枠状の溝に充填される。
本実施例の場合、水密材押さえ具6は、貫通孔36に手摺支柱9が貫通した状態で、捨て水切り材4の上面に、水密材5と接触するようにして設けられる。この際、水密材押さえ具6の押さえ部38は、水密材5に接触して立ち上がるように弾性変形しつつ、水密材5を手摺支柱9の外側面および捨て水切り材4の上面に押し付ける。従って、捨て水切り材4の貫通穴33を介して立ち上がり部3内(面材14と下地部材13との間の空間)に水が浸入するのを防止することができる。これに加えて、本実施例の場合、下笠木材7に水密材押さえ具6を下方へ押圧する押圧材8が設けられる。従って、下笠木材7を捨て水切り材4に設けることで、押圧材8によって水密材押さえ具6の押さえ部38が下方へ押圧されるので、水密材5をより強く手摺支柱9および捨て水切り材4に押し付けることができる。
また、本実施例の場合、押圧材8は、弾性変形可能な弾性材から形成されているので、水密材押さえ具6に接触して弾性変形しつつ水密材押さえ具6の押さえ部38を下方へ押圧する。従って、水密材5を手摺支柱9および捨て水切り材4により強く押し付けることができる。また、本実施例の場合、下笠木材7などによって水密材5と水密材押さえ具6とが外部に露出することがなく、手摺の外観を損なうことがない。
また、本実施例の場合、水密材押さえ具6の貫通孔36が手摺支柱9の水平断面形状よりも大きい面積を有している。従って、水密材押さえ具6による水密材5の押圧時において、押さえ部38の先端部と手摺支柱9の外周面との間に弾性変形した水密材5が挟まれた状態とされる。これにより、水密材押さえ具6によって水密材5をより強く手摺支柱9へ押し付けることができる。また、本実施例の場合、水密材押さえ具6の貫通孔36が手摺支柱9の水平断面形状よりも大きい面積を有しているので、水密材押さえ具6を設置する際に、押さえ部38の先端部と手摺支柱9の外周面との間に隙間を形成することができる。従って、押さえ部38の先端部が手摺支柱9の外周面に接触しないように水密材押さえ具6を容易に設置することができ、手摺支柱9の損傷を防止することができる。
また、本実施例の場合、水密材押さえ具6の前後両端部には、両面テープ39が設けられない。従って、水密材押さえ具6が捨て水切り材4に接着された際に、水密材押さえ具6の前端部と捨て水切り材4との間に前方へ開口する隙間が形成され、水密材押さえ具6の後端部と捨て水切り材4との間に後方へ開口する隙間が形成される。これにより、水密材押さえ具6と捨て水切り材4との間に水が浸入しても、前記両開口を介して外部へ排出することができる。
また、本実施例の場合、水密材5による立ち上がり部3内への水の浸入防止に加えて、シーリング材10による前記水の侵入防止がなされるので、立ち上がり部3内への水の浸入をより確実に防止することができる。また、本実施例の場合、押圧材8がシーリング材10を充填する際のバックアップ材となるので、別途バックアップ材を設ける必要がなく、簡易な構成とすることができる。
さらに、本実施例の場合、水切り配置工程S1、押さえ具配置工程S2、下笠木配置工程S3およびシーリング工程S4が順次に実行される。従って、水密材5による水の浸入防止と、シーリング材10による水の浸入防止とが行われる防水構造1を容易に施工することができる。
なお、本発明は、前記実施例の構成に限らず、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。