JP7283469B2 - エタノールアミンリン酸リアーゼ組成物 - Google Patents
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Description
項1.(a)エタノールアミンリン酸リアーゼ、並びに(b)糖、糖アルコール、有機酸およびポリペプチドよりなる群から選ばれるいずれか1つ以上の化合物を含有するエタノールアミンリン酸リアーゼ組成物。
項2.(b)の化合物がα-シクロデキストリン、トレハロース、イノシトール、クエン酸牛血清アルブミン(BSA)、HSP70サブユニットDnaKフラグメントおよびセリシンよりなる群から選ばれるいずれか1つ以上である、項1に記載のエタノールアミンリン酸リアーゼ組成物。
項3.(b)の化合物がトレハロース、クエン酸およびHSP70サブユニットDnaKよりなる群から選ばれるいずれか1つ以上である、項2に記載のエタノールアミンリン酸リアーゼ組成物。
項4.(b)の化合物がエタノールアミンリン酸リアーゼのタンパク質量に対し、50~100重量%含まれる項1~3のいずれかに記載のエタノールアミンリン酸リアーゼ組成物。
項5.エタノールアミンリン酸リアーゼが下記(a)~(c)のいずれかのタンパク質である項1~4のいずれかに記載のエタノールアミンリン酸リアーゼ組成物。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、挿入、付加もしくは置換されているアミノ酸配列を有するタンパク質であって、PEAリアーゼ活性を有するタンパク質
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、エタノールアミンリン酸リアーゼ活性を有するポリペプチド
項6.項1~5のいずれかに記載の組成物を含むうつ病診断薬。
項7.エタノールアミンリン酸リアーゼに、糖、糖アルコール、有機酸およびポリペプチドよりなる群から選ばれるいずれか1つ以上の化合物を共存させることによりエタノールアミンリン酸リアーゼを安定化する方法。
1.PEAリアーゼ
1-1.PEAリアーゼ活性
「PEAリアーゼ(Ethanolamine-phosphate phospho-lyase)」は、エタノールアミンリン酸(PEA)からアセトアルデヒド、リン酸およびアンモニアを生成する反応を触媒する活性(即ち、PEAリアーゼ活性)を持つ酵素であり、微生物から哺乳類動物まで広く同定されている。
<試薬>
反応液(1)
25mM Tris-HCl緩衝液(pH8.5)
100mM KCl水溶液
0.8mM エチレングリコールビス(2-アミノエチルエーテル)‐N,N,N’,N'-四酢酸(EGTA)溶液
5.0μM ピリドキサール-5’-リン酸(PLP)溶液
20U/mL ALDH溶液
反応液(2)
20mM NADH溶液
反応液(3)
600mM PEA溶液
酵素希釈溶液
50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.0)
300mM NaCl溶液
<手順1>
PEAリアーゼ溶液を、予め氷冷した上記酵素希釈溶液で0.6~1.2U/mlに希釈し、氷冷保存したものを酵素溶液とする。
<手順2>
予め調製した反応液(1)10mLに対し、反応液(2)0.1mL、反応液(3)0.1mLを混合し、37℃にて5分間予備加温したものを反応混液とする。
反応混液2.9mLに酵素溶液0.1mLを添加し、ゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計(光路長1.0cm)で、340nmの吸光度変化を2~3分間記録し、その後直線部分から(即ち、反応速度が一定になってから)1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検は酵素溶液の代わりにPEAリアーゼを溶解する酵素希釈溶液を反応混液に加えて、同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってPEAリアーゼ活性を求める。ここでPEAリアーゼ活性における1単位(U)とは、上記の測定条件で1分間に1μmоlのNADHを減少させる酵素量である。
本発明に適用されるPEAリアーゼは、下記(a)~(c)のいずれかのポリペプチドで構成されることが好ましい。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入、付加および/または逆位したアミノ酸配列からなり、PEAリアーゼ活性を有するポリペプチド;
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列との同一性が80%以上であるアミノ酸配列からなり、PEAリアーゼ活性を有するポリペプチド。
配列番号1で示されるアミノ酸配列は、ヒト由来のPEAリアーゼのアミノ酸配列である。
本発明に適用されるPEAリアーゼを製造する方法は特に限定されないが、例えば、PEAリアーゼを発現する微生物を培養し、得られた培養液を精製することによって製造することができる。
一般に、目的のタンパク質を、該タンパク質を発現する微生物を培養し、得られた培養液を精製することによって製造する方法は既に当該技術分野において確立されている。よって、当業者はその知見を適用してPEAリアーゼを製造することができ、その態様は特に制限されない。
本発明に適用される糖、糖アルコール、有機酸およびポリペプチドから選ばれる化合物は特に限定されないが、好ましい例として、糖ではシュークロース、ガラクトース、アラビノース、リボース、メリビオース、メレジトース、デキストリン、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、糖アルコールではイノシトール、ソルビトール、アラビトール、キシリトール、グルシトール、リビトール、D-マンニトール、有機酸ではクエン酸3ナトリウム二水和物、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、ポリペプチドでは牛血清アルブミン(BSA)、大腸菌由来HSP70のメジャーサブユニットであるDnaKのATPase領域を欠損させたフラグメント(例えばBPF-301;東洋紡製)、セリシンなどが例示される。より好ましくは、トレハロース、クエン酸、BPF-301等を挙げることができる。
乾燥粉末あるいは凍結乾燥物などの中においては緩衝剤の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1%(重量比)以上、特に好ましくは0.1~80%(重量比)の範囲で使用される。
これらは、種々の市販の試薬を用いることができる。
本発明の組成物は、上記1で示したPEAリアーゼ、並びに上記2で説明した糖、糖アルコール、有機酸、およびポリペプチドよりなる群から選ばれるいずれか1つ以上の化合物を含むことを特徴とする組成物である。
本発明の組成物の形態は特に限定されない。凍結乾燥や粉末などの乾燥状態および液体状態のどちらでもよい。
本発明のPEAリアーゼの安定化方法は、(a)PEAリアーゼ、並びに(b)糖、糖アルコール、有機酸およびポリペプチドよりなる群から選ばれるいずれか1つ以上の化合物を共存させることを特徴とする。
上記(a)、(b)以外に他の成分が共存していても良く、その組成は特に限定されない。PEAリアーゼの用途に応じて、特に制限を受けることなく適宜選択することが出来る。
後述のPEAリアーゼ酵素活性の測定方法に記載の活性測定法において、乾燥化を行った後の乾燥品重量あたりのPEAリアーゼ活性値(a)と、一定温度で一定期間保存した後の乾燥品重量あたりのPEAリアーゼ活性値(b)を測定し、測定値(a)を100とした場合に対する相対値((b)/(a)×100)を求めた。この相対値を残存率とした。そして、該化合物の添加の有無を比較して、添加により残存率が増大した場合、安定性が向上したものと判断した。
本発明の別の態様は、上記の3で説明したPEAリアーゼ組成物を含むうつ病診断薬である。具体的には、測定サンプルに、PEAリアーゼを添加し、アセトアルデヒド、リン酸、およびアンモニアを生成させる第1の酵素反応を行う第1の工程と、生成した前記アセトアルデヒド、前記リン酸、前記アンモニアの少なくともいずれかを定量して、前記測定サンプル中のPEA量を決定する第2の工程とを含む、PEAの測定方法を利用した、うつ病診断薬である。
配列番号1のポリペプチドをコードする構造遺伝子をEurofin社により合成した。合成遺伝子から制限酵素処理によりpET28b(+)ベクターへ導入し、これを組換え発現プラスミドpET-EPLと命名した。この発現プラスミドをエシェリヒア・コリー(Escherichia coli)BL21(DE3)株コンピテントセルに形質転換し、SOC培地中で1hr、37℃で前培養後、LB-amp寒天培地に展開し、コロニーである該形質転換体を取得した。得られた形質転換体を、エシェリヒア・コリーBL21(DE3)(pET-EPL)と命名した。
実施例1にて取得した形質転換体、エシェリヒア・コリーL21(DE3)(pET-EPL)のコロニーを一白金耳試験管5mlのLB-amp液体培地に植菌し、30℃で16時間培養した。これを種培養とした。
次に、TB液体培地(トリプトン1.2%、イーストイクストラクト2.4%、グリセロール0.4%、KH2PO4 0.23%、K2HPO4 1.25%、pH7.0)を試験管に入れ、オートクレーブで滅菌し、本培養培地の培地とした。
TB培地500mLを2L坂口フラスコに入れ、オートクレーブで滅菌し、本培養培地とした。5mLの種培養液を本培養培地に植菌し、培養温度37℃、180rpmでおよそ3時間振とう培養した。OD660がおよそ3.0に到達したことを確認した後、終濃度が1mMになるようIPTGを添加し、PEAリアーゼ発現を誘導して、さらに培養温度20℃、180rpmでおよそ21時間培養した。その後、菌体を遠心分離により集菌し、菌体を回収した。得られた菌体を300mM NaCl、40μM PLP、5%Glycerolを含む50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.0)に懸濁した。
エシェリヒア・コリーL21(DE3)(pET-EPL)由来の精製酵素を用いて、α-シクロデキストリン、イノシトール(myo-イノシトール)、グリシン、グルコン酸ナトリウム、クエン酸3ナトリウム二水和物、BSA、セリシン、BPF-301(東洋紡製)が安定化効果を奏するか否かを検討した。表1にPEAリアーゼと安定化剤の影響を示す。
次に、実施例3で安定化効果が見られた化合物に対して、エシェリヒア・コリーL21(DE3)(pET-EPL)由来の精製酵素を用いて、2種類以上の化合物を添加した場合の安定化効果を検証した。表2に、PEAリアーゼと安定化剤の影響を示す。
さらに、実施例3において、3種類の化合物を同時に添加することにより、相乗効果を検討した。安定化効果が見られたクエン酸3ナトリウム二水和物とBPF-301の組み合わせに対し、エシェリヒア・コリーL21(DE3)(pET-EPL)由来の精製酵素を用いて、3種類目の化合物を同時に添加した場合の安定化効果を検証した。表3に、PEAリアーゼと安定化剤の影響を示す。
Claims (6)
- (a)エタノールアミンリン酸リアーゼ、並びに(b)クエン酸およびHSP70サブユニットDnaKを含有する、エタノールアミンリン酸リアーゼ組成物。
- (b)の化合物として、さらにトレハロースを含有する、請求項1に記載のエタノールアミンリン酸リアーゼ組成物。
- (a)エタノールアミンリン酸リアーゼ、並びに(b)α-シクロデキストリン、イノシトール、牛血清アルブミン(BSA)、およびセリシンよりなる群から選ばれるいずれか1つ以上の化合物を含有する、エタノールアミンリン酸リアーゼ組成物。
- (b)の化合物がエタノールアミンリン酸リアーゼのタンパク質量に対し、50~100重量%含まれる請求項1~3のいずれかに記載のエタノールアミンリン酸リアーゼ組成物。
- エタノールアミンリン酸リアーゼが下記(a)~(c)のいずれかのタンパク質である請求項1~4のいずれかに記載のエタノールアミンリン酸リアーゼ組成物。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、挿入、付加もしくは置換されているアミノ酸配列を有するタンパク質であって、PEAリアーゼ活性を有するタンパク質
(c)配列番号1に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列からなり、エタノールアミンリン酸リアーゼ活性を有するポリペプチド - 請求項1~5のいずれかに記載の組成物を含むうつ病診断薬。
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