JP3081917B1 - ホスファチジルエタノールアミンn−メチル転移酵素活性を有する耐熱性酵素 - Google Patents

ホスファチジルエタノールアミンn−メチル転移酵素活性を有する耐熱性酵素

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Abstract

【要約】 【課題】 耐熱性のホスファチジルエタノール N-メチ
ル転移酵素およびその製法を提供すること。 【解決手段】 パイロコッカス属等の超好熱性古細菌由
来で至適温度90℃以上の、ホスファチジルエタノール
アミンN-メチル転移酵素活性を有する耐熱性酵素、この
酵素をコードするDNA、このDNAを含む発現ベクタ
ーで形質転換した宿主細胞を培養することを含む耐熱性
酵素の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐熱性のホスファ
チジルエタノールアミンN-メチル転移酵素、該酵素をコ
ードするDNA、および該酵素の製法に関する。本発明
の酵素は光学純度の高い極性脂質の合成等に有効に使用
し得る。
【0002】
【従来の技術】ホスファチジルエタノールアミン(PE) N
-メチル転移酵素は、リン脂質代謝のPE N-メチル化経路
を触媒する酵素であり、PEのアミノ基にS-アデノシル-L
-メチオニンのメチル基を転移して、二つの中間体のホ
スファチジルN-モノメチルエタノールアミン(PME)とホ
スファチジルN,N-ジメチルエタノールアミン(PDE)を経
てホスファチジルコリン(PC)を合成する(図2参照)。
【0003】この種の酵素は細菌、酵母、ラット肝の膜
画分から精製或いは遺伝子クローニングされ、その性質
が報告されている(Somerville et al., J. Biol. Che
m., 268:16002-16008 (1993); Yamashita et al., J. B
iol. Chem., 15:15428 (1987); Vance et al., J. Bio
l. Chem., 268:16655-16663 (1993))。酵母(Saccharom
yces cerevisiae)では二つの異なった酵素によってPE N
-メチル化経路が触媒されており、細菌(Zymomonas mobi
lis, Rhodobacter spheroides)やラット肝では一つの酵
素でPEからPCが合成される。このようにホスファチジル
エタノールアミン N-メチル転移酵素は光学純度の高いP
Cの合成に有用な酵素である。
【0004】PCは脂質人工膜の主成分として、生体膜の
研究、再構成膜の研究等に広く利用されている。さら
に、消化可能な界面活性剤として多くの食品に含まれ、
薬剤、低分子化合物などのマイクロカプセル剤として、
医学、薬学分野で重要な役割を担っている。PCの合成に
有用なホスファチジルエタノールアミンN-メチル転移酵
素が細菌、酵母、ラットから発見されているが、多くが
常温生物由来のため、熱安定性に乏しく、有機溶媒等も
併用される苛酷な合成反応には不適当であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】パイロコッカス属の含
まれる古細菌の主要脂質はエーテル型脂質であり、グリ
セロールと炭化水素鎖はエステル結合ではなくエーテル
結合で結ばれている。一方、細菌、真核生物で主要なエ
ステル型脂質は古細菌からは見つかっていない。このた
め、古細菌由来のホスファチジルエタノールアミンN-メ
チル転移酵素はエーテル型脂質に含まれるコリン残基の
合成に関与している可能性が示唆され、新規な脂質人工
膜成分として注目されるアキチジールコリンやカルドア
キチジールコリンの合成に有益な酵素と期待される。古
細菌由来で耐熱性かつ有機溶媒中で活性なホスファチジ
ルエタノールアミン N-メチル転移酵素が発見されれ
ば、脂質人工膜成分として重要なPE、アキチジールエタ
ノールアミン、カルドアキチジールエタノールアミン等
に高効率でメチル基を導入し、光学純度の高い極性脂質
を合成する新規合成法の開発が可能と考えられる。
【0006】しかし、これまで極限環境下で活性なホス
ファチジルエタノールアミン N-メチル転移酵素が得ら
れたことはなく、そのような酵素が渇望されてきた。本
発明の目的は、耐熱性のホスファチジルエタノールアミ
ン N-メチル転移酵素を提供することである。本発明の
別の目的は、耐熱性のホスファチジルエタノールアミン
N-メチル転移酵素をコードする遺伝子、および、該遺
伝子を利用した該酵素の製造方法を提供することであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、以上の課題
を解決すべく、90〜100℃で生育する超好熱性菌、
特にパイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshi
i)に着目し、その遺伝子配列からホスファチジルエタ
ノールアミン N-メチル転移酵素活性を示すと推測され
る遺伝子を見い出した。さらに、大腸菌を使ってその遺
伝子から酵素を生産し、この酵素が高温(90℃以上)
で安定に存在し、かつホスファチジルエタノールアミン
N-メチル転移酵素活性を示すことを確認し、本発明を完
成するに至った(以下、ホスファチジルエタノールアミ
ンN-メチル転移酵素をPE N-メチル転移酵素と称するこ
ともある。)。
【0008】従って、本発明は以下のように要約され
る。 (1)超好熱性古細菌ピロコッカス・ホリコシ(Pyroco
ccus horikoshii)由来で至適温度90℃以上の、ホスフ
ァチジルエタノールアミンN-メチル転移酵素活性を有す
る耐熱性酵素。 (2)以下の性質を有する、ホスファチジルエタノール
アミンN-メチル転移酵素活性を有する超好熱性古細菌由
来耐熱性酵素。 (a)至適温度:90℃以上 (b)基質特異性:ホスファチジルN−モノメチルエタノー
ルアミンを基質として該酵素を作用したときメチル基の
取り込みがホスファチジルN,N-ジメチルエタノールアミ
ンのみに認められホスファチジルコリンには認められ
ず、また、ホスファチジルエタノールアミンを基質とし
て該酵素を作用したときメチル基の取り込みがホスファ
チジルN−モノメチルエタノールアミンとホスファチジ
ルN,N-ジメチルエタノールアミンのみに認められホスフ
ァチジルコリンには認められない (c)至適pH:約8〜約9
【0009】(3)以下の(a)または(b)に示す蛋白質
からなるホスファチジルエタノールアミンN-メチル転移
酵素活性を有する耐熱性酵素。 (a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を有する
蛋白質 (b)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において
1以上のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミ
ノ酸配列を有し、かつホスファチジルエタノールアミン
N-メチル転移酵素活性を有し至適温度が90℃以上であ
る蛋白質
【0010】(4)上記(1)または(2)に記載の耐
熱性酵素をコードするDNA。 (5)上記(3)に記載の耐熱性酵素をコードするDN
A。 (6)配列番号2に示すヌクレオチド配列を有する上記
(5)に記載のDNA。 (7)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐熱性酵
素の製造方法であって、上記(4)、(5)または
(6)に記載のDNAを含む発現ベクターを作製し、該
ベクターで宿主細胞を形質転換し、該形質転換された宿
主細胞を培地中に培養し、生成した該耐熱性酵素を回収
することを含む方法。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明は、第1の態様において、
パイロコッカス・ホリコシ由来で至適温度90℃以上
の、ホスファチジルエタノールアミンN-メチル転移酵素
活性を有する耐熱性酵素を提供する。本発明の具体例で
は、パイロコッカス・ホリコシ(登録番号JCM997
4)からそのゲノム遺伝子のcDNAクローニングによ
って目的酵素をコードする遺伝子を取得し、これを適す
る発現ベクターに組み込み、次いでこのベクター宿主細
胞を形質転換し、該遺伝子を発現させて目的とするホス
ファチジルエタノールアミンN-メチル転移酵素を回収し
た。
【0012】本発明の酵素は、90℃で4時間保持した
ときには活性の減少は認められないし、また100℃に
2時間保持した後でさえも76%の活性が維持されてい
る。従来この種の酵素で耐熱性のものは全く知られてい
なかったことから、この高い耐熱特性は驚くべきことで
あった。本発明はまた、第2の態様において、ホスファ
チジルエタノールアミンN-メチル転移酵素活性を有する
超好熱性古細菌由来耐熱性酵素を提供する。
【0013】この酵素の特徴は、至適温度90℃以上、
至適pH約8〜約9、特に約8.5であることに加えて、従
来公知のPE N-メチル転移酵素の基質特異性と異なる特
異性によって特徴付られる。すなわち、基質としてのホ
スファチジルN−モノメチルエタノールアミン(PME)に
本酵素を作用したとき、メチル基の取り込みがホスファ
チジルN,N-ジメチルエタノールアミン(PDE)のみに認め
られホスファチジルコリン(PC)には認められず、ま
た、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を基質として
本酵素を作用したときメチル基の取り込みがホスファチ
ジルN−モノメチルエタノールアミン(PME)とホスファチ
ジルN,N-ジメチルエタノールアミン(PDE)のみに認めら
れホスファチジルコリン(PC)には認められない、という
特徴を有する。一方、紅色非硫黄細菌(Rhodobacte
r)、酵母(S. cerevisia)またはラット肝に由来の従
来のPE N-メチル転移酵素では、PEを基質としたとき、
メチル基の取り込みはPME、PDEおよびPCに認められ、こ
れらの酵素の基質特異性は本発明の酵素のものと明らか
に異なる。上記のような特性をもつ本発明の酵素はこれ
まで見出されたことはなく、この点では全く新しい酵素
ということができる。
【0014】本発明における超好熱性古細菌としては、
グリセロールと炭化水素鎖がエーテル結合で結ばれたエ
ーテル型脂質を主要脂質として含む、至適温度約90℃
以上で生育可能な古細菌のいずれも包含される。そのよ
うな超好熱性古細菌の例は、以下のものに限定されない
が、ピロコッカス属(例えばピロコッカス・ホリコシ、
ピロコッカス・フリオサス、ピロコッカス・アビシーな
ど)、アエロピラム(Aeropyrum)属(例えばアエロピ
ラム・ペルニクスなど)、スルホロブス属、等に属する
古細菌である。
【0015】後述の実施例ではピロコッカス属に属する
硫黄代謝超好熱性古細菌、特にピロコッカス・ホリコシ
(登録番号JCM9974)を例示し、この細菌由来の
ホスファチジルエタノールアミンN-メチル転移酵素活性
を有する耐熱性酵素が調製されている。この酵素は、上
記範囲の至適温度、基質特異性、至適pHを有してお
り、かつ分子量23,377ダルトンを有する。cDN
Aクローニングによって決定されたこの酵素のアミノ酸
配列およびそれをコードするDNA配列はそれぞれ、配
列表中配列番号1、配列番号2として示した。
【0016】したがって本発明は、第3の態様におい
て、以下の(a)または(b)に示す蛋白質からなるホスフ
ァチジルエタノールアミンN-メチル転移酵素活性を有す
る耐熱性酵素を提供する: (a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を有する
蛋白質;および (b)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において
1以上のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミ
ノ酸配列を有し、かつホスファチジルエタノールアミン
N-メチル転移酵素活性を有し至適温度が90℃以上であ
る蛋白質。
【0017】本発明には上記(b)に示す蛋白質も包含
するが、PE N-メチル転移酵素活性を有し至適温度が90
℃以上であるという性質を保持する限り、変異の仕方や
程度には限定されない。1以上のアミノ酸の変異は、た
とえば上記(a)の蛋白質をコードするDNA配列を基
にオリゴヌクレオチド部位特異的突然変異法やカセット
変異法などの部位特異的突然変異技術(Proc. Natl. Ac
ad. Sci. USA, 81:5662-5666, 1984; PCT WO85/00817;S
hort Protocols In Molecular Biology, Third Editio
n, A Compendium of Methods from Current Protocols
in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc.な
ど)、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法、クンケル法
などの技術を用いて行なうことができる。本発明は、第
4の態様において、上記に規定した本発明の耐熱性酵素
をコードするDNAを提供する。具体的には、該DNA
は上記(a)および(b)の蛋白質をコードするDNA、例
えば配列番号2に示すヌクレオチド配列を有するDNA
およびその変異体である。
【0018】本発明のDNAは、本酵素を産生する超好
熱性古細菌から、ゲノムクローニングまたはcDNAク
ローニング法(J. Sambrook et al., Molecular Clonin
g, ALaboratory Manual, Second Edition, Cold Spring
Harbor Laboratory Press,1989)を用いて得ることが
できる。例えば、超好熱性古細菌のゲノム遺伝子を基に
ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーを作製
し、適切なプローブを用いて本酵素をコードするDNA
を含むクローンをハイブリダイゼーションを利用して選
抜するか、あるいは、適切なプライマーを用いて直接P
CR増幅することによって目的のDNAを取得すること
ができる。必要に応じて、種々の制限酵素によりDNA
の制限酵素地図を作成し、これに基づき目的DNAを切
り出すことができる。また、得られたDNAをジデオキ
シ法(Proc. Natl. Acad. Sci.USA, 74:5463, 1977)等
の塩基配列決定法にかけて、そのヌクレオチド配列を決
定し、目的のDNAであることを確認することができ
る。あるいは、決定されたDNA配列に基いて、DNA
合成機にて目的のDNAを合成することも可能であろ
う。
【0019】ここで使用されるプローブまたはプラーマ
ーは、配列番号1に示されるアミノ酸配列または配列番
号2に示されるヌクレオチド配列、その相補的配列に基
いて作製することができ、5塩基以上、通常5〜60塩
基、好ましくは15〜30塩基である。それらは特に保
存性の高い領域の配列を有していることが望ましい。ハ
イブリダイゼーション条件は、融解温度(Tm)、イオン
強度等を適宜考慮して決定することができ、好ましくは
ストリンジェントな条件でのハイブリダイゼーションと
洗浄が行なわれる。PCR条件としては、二本鎖DNA
を変性させる変性段階(例えば94℃、15〜30
秒)、一本鎖鋳型DNAとプライマーをアニーリングさ
せるアニーリング段階(例えば55℃、30秒〜1
分)、耐熱性DNAポリメラーゼと4種類の基質(dNTP
s)の共存下でのプライマーの伸長段階(例えば72
℃、30秒〜10分)を1サイクルとして通常20サイ
クル以上含む条件が使用できるが、鋳型DNAの濃度、
増幅断片のサイズ等によって条件を適宜変え得る。PC
R法については、例えば蛋白核酸酵素41巻第5号「PC
R法最前線」(1996年4月号増刊)を参照することがで
きる。
【0020】本発明はさらに、第5の態様において、上
記に規定したDNAを含む発現ベクターを作製し、該ベ
クターで宿主細胞を形質転換し、該形質転換された宿主
細胞を培地中に培養し、生成した該耐熱性酵素を回収す
ることを含む、上記に規定した耐熱性酵素の製造方法を
提供する。本発明の酵素は、分泌形態または非分泌形態
のいずれで産生されてもよく、分泌形態の場合には任意
のシグナルペプチドをコードするDNA配列を酵素遺伝
子の上流に連結することができるし、一方非分泌形態の
場合には酵素の単離を容易にする配列(例えばヒスチジ
ンタグ)または成熟蛋白質の切断分離を容易にする配列
との融合蛋白質として得ることができる。発現ベクター
としては、原核または真核生物宿主細胞において自律複
製可能または染色体中への組込み可能であって、DNA
の転写が可能な位置にプロモーターを含有しているもの
が使用できる。ベクターは、プラスミド、ファージ等の
ウイルスベクター、コスミドなどである。プロモーター
の存在は必須であるが、その他に適宜、選択マーカー、
エンハンサー、リボソーム結合部位、複製開始点、ター
ミネーター、ポリリンカーなどを含むことができる。発
現ベクターは市販のもの、または、文献記載のものを適
宜選んで使用可能である。
【0021】発現ベクターの例は次のとおりである。原
核生物用ベクターとしては、pBtrp2, pBTac1, pBTac2
(ベーリンガーマンハイム)、pSE280(インビトローゲ
ン)、pQEシリーズ(プロメガ)、pETシリーズ(ノバジ
ェン)、pBluescript IIシリーズ(ストラタジーン)な
どが例示される。真核生物用ベクターとしては、酵母菌
用としてpHS19, pHS15, pG-1, pXT1, pSG5(ストラタジ
ーン)、pSVK3, pBPV, pMSG(ファルマシア)など、動
物細胞用としてpcDNAI, pcDM8(フナコシ)、pcDNAI/Am
p, pREP4(インビトローゲン)など、昆虫細胞用として
pVL1392, pVL1393,pBlueBacIII(インビトローゲン)な
ど、植物細胞用としてTiプラスミド、タバコモザイク
ウイルスベクターなどを例示できる。
【0022】プロモーターとしては、以下のものに制限
されないが、例えば原核生物用としてtrpプロモータ
ー、lacプロモーター、Pプロモーター、Pプロモー
ター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロ
モーターなど、酵母菌用としてPHO5プロモーター、PGK
プロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、GP
Dプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモータ
ーなど、動物細胞用としてサ イトメガロウイルスのI
E(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の
初期プロモーター、レトロウイルスプロモーター、ヒー
トショックプロモーター、乳腺細胞特異的プロモーター
など、植物細胞用としてカリフラワーモザイクウイルス
の35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーターな
どが挙げられる。
【0023】宿主細胞としては、例えば原核生物として
エシェリシア属、セラチア属、バチルス属、シュウドモ
ナス属などに属する微生物、真核生物としてサッカロマ
イセス属、シゾサッカロマイセス属、ピチア属などの酵
母類、ヒト胎児腎細胞、チャイニーズハムスター卵巣
(CHO)細胞、マウスミエローマ細胞などの動物細
胞、Spodopterafrugiperda卵巣細胞、Trichoplusiani卵
巣細胞などの昆虫細胞、双子葉および単子葉植物などが
挙げられる。形質転換方法としては、カルシウムイオン
を用いる方法、リン酸カルシウム法、酢酸リチウム法、
エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、プロ
トプラスト法、リポフェクション法、アグロバクテリウ
ム法などを例示することができ、宿主細胞の種類に応じ
て前記方法を適宜選択することができる。
【0024】上記の方法によって形質転換された宿主細
胞を、選択された細胞に適した培養条件下で培養したの
ち、通常の蛋白質分離精製法を用いて分離精製すること
ができる。本酵素が分泌形態で産生されたときには、培
地から酵素を直接精製することができるが、一方、非分
泌形態で産生されたときには、細胞を遠心分離等によっ
て分離したのち、緩衝液中に懸濁して超音波破砕機、フ
レンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー等によ
り細胞を破砕し無細胞抽出液を得、得られた抽出液から
酵素を精製することができる。培地または抽出液からの
本酵素の精製は、溶媒抽出、塩析、脱塩、有機溶媒によ
る沈殿、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、疎
水性相互作用クロマトグラフィー、HPLC、ゲル濾過
クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィ
ー、電気泳動、等電点電気泳動などの技法を適宜組み合
わせて行うことができる。
【0025】後述の実施例では、硫黄代謝好熱性古細菌
パイロコッカス、ホリコシ(登録番号JCM9974)の
遺伝子配列から本酵素活性を示すと思われる遺伝子を、
PCR反応で増幅し抽出した後、蛋白質発現プラスミドpET
15bに挿入、そのプラスミドを大腸菌に組み込み、本酵
素の生産をおこなった。生産された酵素は加熱処理およ
びカラムクロマトグラフィーで単離精製した。精製され
た酵素は、分子量23,377ダルトンのタンパク質
で、PE N-メチル転移酵素であることがわかった。本酵
素の耐熱性は、当該酵素遺伝子を保持する形質転換大腸
菌より膜画分を調製し、これを100℃に保持し、一定時
間後残存活性を測定することにより求めた。2時間経過
後でも76%の活性が保持されていた。90℃では、4時間
後でも活性の減少はなく安定していた。また、活性の至
適pHは約8〜約9、特にpH約8.5で、至適温度はpH8.0で
90℃超であった。
【0026】
【実施例】以下に本発明を実施例をあげてさらに具体的
に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に制限さ
れないものである。実施例1 好熱性古細菌パイロコッカス・ホリコシ(登録番号JCM
9974)由来のPE N-メチル転移酵素遺伝子のクロー
ニングと配列決定 1.菌の培養 好熱性古細菌パイロコッカス・ホリコシ(登録番号JCM
9974、理化学研究所内(埼玉、和光市))は次の方
法で培養した。13.5gの食塩、4gのNaSO,0.7 gのKC
l, 0.2g のNaHCO、0.1gのKBr、30 mg のHBO、1
0gのMgCl・6H2O、1.5gのCaCl、25mgのSrCl、1.
0mlのレザスリン溶液(0.2g/L),1.0gの酵母エキ ス、5
gのバクトペプトンを1Lに溶かし、この溶液のpHを6.8に
調整し加圧殺菌し た。ついで、乾熱滅菌した元素硫黄
を0.2%となるように加え、この培地をアル ゴンで飽和
して嫌気性とした後、JCM9974を植菌した。培地が
嫌気性となっ たか否かはNaS溶液を加えて、培養液中
でNaSによるレザスリン溶液のピンク色が着色しない
ことにより確認した。この培養液を95℃で2〜4日培養
し、その後 遠心分離し集菌した。
【0027】2.染色体DNAの調製 JCM9974の染色体DNAは以下の方法により調製した。
培養終了後5000rpm、10分間の遠心分離により菌体を集
菌し、菌体を10mM Tris(pH 7.5) 1mM EDTA溶液で2回洗
浄後InCert Agarose(FMC社製)ブロック中に封入し、
このブロックを1%N-lauroylsarcosine, 1mg/mlプロテ
アーゼK溶液中で処理することにより、染色体DNAをAgar
oseブロック中に分離調製した。
【0028】3.染色体DNAを含むライブラリークロー
ンの作製 上記2で得られた染色体DNAを制限酵素HindIIIにより部
分分解後アガロースゲル電気泳動により約40kb長の断片
を調製した。このDNA断片と制限酵素HindIIIによって完
全分解したBacベクターpBAC108L(ストラタジーン製)
及びpFOS1(ストラタジーン製)とをT4リガーゼを用い
て結合させた。前者のベクターを用いた場合には結合終
了後のDNAをただちに大腸菌内へ電気窄孔法により導入
した。後者のベクターpFOS1を用いた場合には結合終了
後のDNAをGIGA Pack Gold(ストラタジーン社製)によ
り試験管内でλファージ粒子内に詰め込み、この粒子を
大腸菌に感染させることによりDNAを大腸菌内に導入し
た。これらの方法により得られた抗生物質クロラムフェ
ニコール耐性の大腸菌集団をBAC及びFosmidライブラリ
ーとした。ライブラリーからJCM9974の染色体をカ
バーするのに適したクローンを選択して、クローンの整
列化を行った(Y. Kawarabayashi et al., DNA Researc
h. 5:55 (1998))。
【0029】4.各BAC或いはFosmidクローンの塩基配
列決定 整列化されたBAC或いはFosmidクローンについて順次以
下の方法で塩基配列を決定していった。大腸菌より回収
した各BAC或いはFosmidクローンのDNAを超音波処理する
ことにより断片化し、アガロースゲル電気泳動により1k
b及び2kb長のDNA断片を回収した。この断片をプラスミ
ドベクターpUC118のHincII制限酵素部位に挿入したショ
ットガンクローンを各BAC或いはFosmidクローン当たり5
00クローン作製した。各ショットガンクローンの塩基配
列をパーキンエルマー、ABI社製自動塩基配列読み取り
装置373型または377型を用いて決定した。各ショットガ
ンクローンから得られた塩基配列を塩基配列自動連結ソ
フトSequencherを用いて連結編集し、各BAC或いはFosmi
dクローンの全塩基配列を決定した。
【0030】5.PE N-メチル転移酵素遺伝子の同定 上記で決定された各BAC或いはFosmidクローンの塩基配
列の大型計算機による解析を行い、PE N-メチル転移酵
素をコードする遺伝子のヌクレオチド配列(配列番号
2、図1)および該酵素のアミノ酸配列(配列番号1、
図1)を決定した。本酵素のアミノ酸配列と類似性を示
すタンパク質をデーターベースで検索した結果、Rhodob
acter sphaeroidesのPE N-メチル転移酵素のアミノ酸配
列と27.6%の類似性を示した。R. sphaeroidesの酵素の
アミノ酸配列では他のメチル基転移酵素と相同性の高い
配列(RGGRVLEVG)が存在しており(Arondel, V. et al.
(1993) J. Biol. Chem.,268, 16002-16008)、パイロコ
ッカス・ホリコシ(P. horikoshii)酵素のアミノ酸配
列でも同様な配列が存在していた。しかし、パイロコッ
カス・ホリコシ酵素と酵母やラット肝由来のPE N-メチ
ル転移酵素との間にはアミノ酸レベルでの相同性は見ら
れなかった。
【0031】実施例2 発現プラスミドの構築と遺伝子発現 1.発現プラスミドの構築 PE N-メチル転移酵素の構造遺伝子領域の前後に制限酵
素NdeIおよびBamHIサイトを構築する目的で下記のDNAプ
ライマーを合成し、PCRでその遺伝子の前後に制限酵
素サイトを導入した。 Upper primer(配列番号3):5'-TTTTGAATTCTTACATAT
GAGTTATAGGGAGAAGTACAATAGAATAGGGTCCAAGTATGATATTCTA-
3' Lower primer(配列番号4):5'-TTTTGGTACCTTTGGATC
CTTAAGCCATCGATCACCACAATG-3'
【0032】PCR反応後、制限酵素NdeIとBamHIで完
全分解(37℃で2時間)した後、その構造遺伝子を精製
した。pET15b(Novagen社製)を制限酵素NdeIとBamHIで
切断・精製した後、上記の構造遺伝子とT4リガーゼで
16℃、2時間反応させ連結した。連結したDNAの一
部を大腸菌XL2-Blue MRF'のコンピテントセルに導入し
形質転換体のコロニーを得た。得られたコロニーから発
現プラスミドをアルカリ法で精製した。
【0033】2.組換え遺伝子の発現 大腸菌 BL21(DE3) (Novagen社製)のコンピテントセル
を融解して、ファルコンチューブに0.1mL移す。その
中に上記1の精製発現プラスミドの溶液0.005mLを加
え氷中に30分間放置した後42℃でヒートショックを30秒
間行い、SOC培地0.9mLを加え、37℃で1時間振とう培
養する。その後アンピシリンを含む2YT寒天プレート
に適量まき、37℃で一晩培養し、形質転換体を得た。こ
の形質転換大腸菌(識別記号:E.coli BL21(DE3)/pET15
b/PEM trans)を工業技術院生命工学工業技術研究所
(茨城県、つくば市)に平成11年3月29日付で寄託
し、受託番号FERM P-17349が与えられている。得られた
形質転換体をアンピシリンを含む2YT培地(2リット
ル)で600nmの吸収が1に達するまで培養した後、IPTG
(Isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)を加え、さら
に6時間培養しPE N-メチル転移酵素遺伝子を発現した。
培養後遠心分離(6,000rpm, 20min)で集菌した。
【0034】実施例3 膜画分からの耐熱性PE N-メチル転移酵素の精製 1.膜画分の調製 IPTG添加後5時間培養した菌体を集菌し、氷冷したA バ
ッファ (80mM Tris-HCl,10%グリセロール, 20mM L-シス
テイン, pH8.5)で2回洗浄し、湿菌体1 g当たり2 mlのA
バッファで菌体を懸濁した。超音波処理(180w, 4 min)
によって菌体を破壊し、この破壊液から遠心分離(9000
×g, 10 min)によって未破壊菌体を除去し、その上層を
遠心分離(39,000×g, 1 h)し、その残渣を膜画分とし
た。調製した膜画分を少量の80mM Tris-HCl buffer (pH
8.5)に懸濁した後、直ちに可溶化操作に供した。
【0035】2.耐熱性酵素の精製 (1)可溶化 調製した膜画分に界面活性剤トライトンX-100を最終濃
度1%になるように加え、氷冷下で1時間テフロンホモ
ジナイザーで攪拌して可溶化を行った。超遠心分離(10
5,000×g, 1 h)によって不溶性の膜断片を除去し、その
上清を可溶化画分とした。得られた可溶化画分は、上記
A バッファで25倍に希釈してトライトンX-100の濃度を
0.04%にした後、DEAE-Sepharose CL-6B(Pharmacia Fine
Chemical社)カラムクロマトグラフィーに供した。
【0036】(2)DEAE-Sepharose CL-6Bカラムクロマ
トグラフィー Aバッファで平衡化したDEAE-Sepharose CL-6Bカラム(Ph
armacia Fine Chemical社)に可溶化画分を添加し、素通
り画分のタンパク質が完全に流出した後に、Aバッファ
で洗浄し、0.5 M NaClの直線的勾配で溶出した。その結
果、酵素活性が0.3 M付近に溶出することが明らかにな
った。この活性画分を集め、B バッファ (50 mM NaHP
O, 300 mM NaCl, 10% glycine, pH8.0)に対して12
時間透析 した後にNi-NTA agaroseカラムクロマトグラ
フィーに供した。
【0037】(3)Ni-NTA agaroseカラムクロマトグラ
フィー Bバッファで平衡化したNi-NTA agaroseカラム(キアー
ゲン社)に透析した活性画分添加し、素通り画分のタン
パク質が完全に流出した後に、20 mM イミダゾールを含
むA バッファで洗浄し、200 mMイミダゾールを含むA バ
ッファで溶出した。酵素活性は素通り画分にほとんど認
められず、溶出画分に局在した。SDS-ポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動によってその均一性を検討した。本酵素
精製標品は単一バンドを示した。
【0038】実施例4 酵素の特徴付け 1.分析条件 (1)PE N-メチル転移酵素活性の測定 PE N-メチル転移酵素活性は[14C-メチル]-S-アデノ
シル-L-メチオニン(SAM)のメチル基のPDEへの取り込み
によって測定した。反応系は1 mlのA バッファ中に1.7
μM [14C-メチル]-SAM (59.8μCi/μmol, New Engl
and Nuclear社)、58μM PME (Avanti Polar Lipid社)、
0.04% Triton X-100および酵素液を含む。反応は90℃で
30分行った。クロロホルム-メタノール-1N 塩酸 (1 :
2 : 0.2v/v)からなる混液を4 ml加えて反応を停止し、
反応系の脂質画分をBligh-Dyer法で 抽出した。反応生
成物のマーカーとしてPDE (Avanti Polar Lipid社)の5
μgを 抽出した脂質画分に加え、シリカゲル 60プレー
ト(Merck社)を用いたクロロホルム-メタノール-水 (6
5 : 25 : 4, v/v)の1次元薄層クロマトグラフィーで分
離した。ヨウ素蒸気で脂質を発色させ、PDEに相当する
スポットをシリカゲルご と掻き取り、その放射活性を
液体シンチレーションカウンター(LSC-700,Aloka 社)で
測定した。本酵素活性1Uは、1分間当たりに合成される
PDEのpmolとして表示される。
【0039】(2)反応生成物の同定 本酵素による反応生成物は1次元薄層クロマトグラフィ
ーで分離し、ヨウ素蒸気で脂質を発色させた後、RIスキ
ャナー(Aloka社)にかけられた。これで放射能の高い部
分を調べ、それと標準品のPDEやPC (Sigma社)のヨウ素
蒸気による発色部分との比較により、反応生成物を同定
した。 (3)至適温度と至適pH 至適温度は上記反応条件で反応温度を60℃から100℃ま
で変化させ、PDEへの放射活性の取り込みを測定し、そ
の相対活性より求めた。至適pHは上記測定条件における
酵素反応液のpHを50 mM Tris-HCl bufferを用い6.5から
9.5まで変化させ、相対活性の変化量より決定された。 (4)熱安定性 本酵素の耐熱性は、形質転換大腸菌より調製した膜画分
を用い、これを90℃と100℃に一定時間保持し、上記反
応条件で残存活性を測定することにより求めた。
【0040】2.酵素の諸性質 (1)タンパク質化学的性質 本酵素は200アミノ酸残基より構成されており、その推
定分子量は23,377 Daであった。 (2)基質特異性 図3に示すように、PMEを基質として用いた時の生成物
は、PDEのみにSAMからのメチル基の取り込みが認めら
れ、PCへの取り込みは認められなかった。PEを基質とし
た時はPMEと同時にPDEも検出されたが、PCは認められな
かった。さらに、PDEを基質として用いた時は、主たる
反応産物は認められなかった。従って、本酵素活性はPE
N-メチル経路の1番目と2番目の段階を触媒してPDEを
合成しているものと考えられる。また、PEとPMEに対す
る活性の比は1 : 2.5であった。表1にP. horikoshii由
来の本酵素と他の生物起源のPE N-メチル酵素との諸性
質の比較を示した。P. horikoshii酵素はPEおよびPMEを
基質としてPDEを合成したが、PDEに活性を示さなかった
ので、これまでに報告されているどのPE N-メチル酵素
とも基質特異性が異なっていた(表1参照)。
【0041】
【表1】
【0042】(3)至適温度と至適pH 図4に示すように至適温度は90℃以上であることが明か
となった。また、図5に示すように、酵素活性の至適pH
は約8〜約9、特に約8.5であった。 (4)熱安定性 本酵素の耐熱性は、100℃に膜画分を保持し、一定時間
後に残存活性を測定することにより求めた。2時間経過
後でも76%の活性が保持されていた。90℃では、4時間
後でも活性の減少はなく非常に安定であった(図6)。
【0043】
【発明の効果】本発明により、反応の至適温度が90℃以
上である耐熱性PE N-メチル転移酵素が提供できる。ま
た、基質特異性が今まで報告されている常温生物由来の
PE N-メチル転移酵素と異なるため、本酵素を用いた光
学純度の高い新規極性脂質の開発が可能になる。
【0044】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Director General of Agency of Industrial Science and Technology <120> Heat-resistant enzyme with phosphatidylethanolamine N-methyltransferase activity <130> 11900263 <170> PatentIn Version 2.0 <210> 1 <211> 200 <212> PRT <213> Pyrococcus horikoshii <400> 1 Lys Ser Tyr Arg Glu Lys Tyr Asn Arg Ile Gly Ser Lys Tyr Asp Ile 1 5 10 15 Leu Glu Ser Pro Leu Glu Arg Tyr Phe Glu Pro Leu Arg Lys Lys Ala 20 25 30 Val Ser Leu Val Arg Gly Lys Val Leu Glu Ile Gly Ile Gly Thr Gly 35 40 45 Lys Thr Leu Lys Tyr Tyr Pro Asn Asp Val Gln Leu Tyr Ala Ile Asp 50 55 60 Gly Ser Glu Glu Met Leu Lys Val Ala Arg Glu Lys Ala Arg Gln Leu 65 70 75 80 Gly Ile Asn Val Lys Phe Phe Lys Ala Glu Ala Glu Asp Leu Pro Phe 85 90 95 Pro Asn Asp Phe Phe Asp Phe Val Ile Ser Ser Phe Val Phe Cys Thr 100 105 110 Ile Pro Asn Pro Lys Lys Ala Met Arg Glu Ile Ile Arg Val Leu Lys 115 120 125 Pro Ser Gly Lys Val Ile Phe Leu Glu His Thr Leu Ser Asp Ser Phe 130 135 140 Leu Ile Asn Met Leu Phe Leu Ala Pro Leu Glu Leu Ile Leu Arg Pro 145 150 155 160 Leu Ile Asp Asp Ser Thr Thr Arg Glu Thr His Lys Leu Val Arg Lys 165 170 175 Phe Phe Arg Val Glu Arg Glu Glu Ser Tyr Tyr Lys Gly Ile Val Arg 180 185 190 Phe Ile Val Ala Arg Pro Leu Trp 195 200 <210> 2 <211> 600 <212> DNA <213> Pyrococcus horikoshii <400> 2 ttgagttata gggagaagta caatagaata ggatccaagt atgatattct agagtctcca 60 ttggagagat actttgagcc actgagaaag aaagctgtta gcttggttag aggtaaagtt 120 ctggagatag gtatcggaac cgggaaaacg ctaaaatact atccaaatga tgttcagctt 180 tacgcaattg atggaagcga ggagatgctt aaagtagcaa gggaaaaagc gagacaactt 240 gggatcaatg taaagttctt taaagcggaa gctgaggatc taccttttcc taacgacttt 300 ttcgacttcg taatttcatc tttcgtcttc tgcacaattc caaatccgaa gaaggccatg 360 agggagataa taagagtttt aaagccaagc ggaaaggtca tattccttga acatacgctc 420 agcgatagct tcctaataaa catgctattt ctagcaccat tagagcttat attaagacct 480 ttaatagatg acagcactac cagagaaacc cacaagcttg tgagaaaatt cttcagagtg 540 gagagggaag agagctacta taaggggatt gtgaggttca tagtggccag gccattgtgg 600 <210> 3 <211> 67 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Designated is a forward primer for introducing restriction enzyme sites NdeI and BamHI at the ends of a structural gene for PE N-methyl tran sferase. <400> 3 ttttgaattc ttacatatga gttataggga gaagtacaat agaatagggt ccaagtatga 60 tattcta 67 <210> 4 <211> 42 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Designated is a reverse primer for introducing restriction enzyme sites NdeI and BamHI at the ends of a structural gene for PE N-methyl transferase. <400> 4 ttttggtacc tttggatcct taagccatcg atcaccacaa tg 42
【0045】
【配列表フリーテキスト】配列番号3:PEN−メチル
トランスフェラーゼの構造遺伝子の末端に制限酵素部位
NdeIおよびBamHIを導入するための順方向プラ
イマーを示す。 配列番号4:PEN−メチルトランスフェラーゼの構造
遺伝子の末端に制限酵素部位NdeIおよびBamHI
を導入するための逆方向プライマーを示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐熱性ホスファチジルエタノールアミンN-メチ
ル転移酵素のアミノ酸配列および該酵素をコードする遺
伝子のヌクレオチド配列。
【図2】PEメチル化経路およびCDP−コリン経路。
【図3】耐熱性ホスファチジルエタノールアミンN-メチ
ル転移酵素の基質特異性。
【図4】耐熱性ホスファチジルエタノールアミンN-メチ
ル転移酵素に対する温度の影響。
【図5】耐熱性ホスファチジルエタノールアミンN-メチ
ル転移酵素に対するpHの影響。
【図6】耐熱性ホスファチジルエタノールアミンN-メチ
ル転移酵素の熱安定性。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小杉 佳次 茨城県つくば市東1丁目1番3 工業技 術院 生命工学工業技術研究所内 (72)発明者 田原 康孝 静岡県静岡市大谷836 静岡大学農学部 応用生物化学内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) WPI(DIALOG) BIOSIS(DIALOG) DDBJ/EMBL/GenBank/G eneseq

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 以下の性質を有し、かつホスファチジル
    エタノールアミンN-メチル転移酵素活性を有する、超好
    熱性古細菌ピロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horik
    oshii)由来の耐熱性酵素: (1)至適温度:90℃以上; (2)基質特異性:ホスファチジルN−モノメチルエタ
    ノールアミンを基質として該酵素を作用したときメチル
    基の取り込みがホスファチジルN,N-ジメチルエタノール
    アミンのみに認められホスファチジルコリンには認めら
    れず、また、ホスファチジルエタノールアミンを基質と
    して該酵素を作用したときメチル基の取り込みがホスフ
    ァチジルN−モノメチルエタノールアミンとホスファチ
    ジルN,N-ジメチルエタノールアミンのみに認められホス
    ファチジルコリンには認められない;および (3)至適pH:約8〜約9。
  2. 【請求項2】 以下の(a)または(b)に示す蛋白質から
    なるホスファチジルエタノールアミンN-メチル転移酵素
    活性を有する耐熱性酵素: (a)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列を有する
    蛋白質;または (b)配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列において
    1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加さ
    れたアミノ酸配列を有し、かつホスファチジルエタノー
    ルアミンN-メチル転移酵素活性を有し至適温度が90℃
    以上である蛋白質。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の耐熱性酵素を
    コードするDNA。
  4. 【請求項4】 配列番号2に示すヌクレオチド配列を有
    する請求項3に記載のDNA。
  5. 【請求項5】 請求項1または2に記載の耐熱性酵素の
    製造方法であって、請求項3または4に記載のDNAを
    含む発現ベクターを作製し、該ベクターで宿主細胞を形
    質転換し、該形質転換された宿主細胞を培地中に培養
    し、生成した該耐熱性酵素を回収することを含む方法。
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