JP7267700B2 - アルコール飲料、アルコール飲料の製造方法、及び、アルコール飲料の香味改善方法 - Google Patents
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そして、特許文献1では、低アルコール飲料のアルコール濃度は3~5v/v%が好ましいと記載されている。
ただ、このような低いアルコール度数の飲料に関し、短いライフサイクルの商品が次々と生み出されているという現状を考慮すると、現在の消費者のニーズにしっかりと適合するような商品が存在するとはいえないことがわかる。
しかしながら、果実酢(果実酢に含まれる酢酸)の香味が、アルコール飲料のやさしい味わいを大幅に損なわせてしまうことを確認した。
(1)アルコール度数が3.0%以上4.0%未満であり、酢酸とナトリウムとを含有し、前記ナトリウムはクエン酸塩として含有し、前記酢酸の含有量をCw/v%とし、前記ナトリウムの含有量をBmg/100mLとした場合に、B/Cが20.0~600.0であり、Cが0.100以下であるアルコール飲料(ただし、ビールを含むものを除く)。
(2)前記ナトリウムの含有量が2.0~40.0mg/100mLである前記1に記載のアルコール飲料。
(3)アルコール度数を3.0%以上4.0%未満とし、酢酸とナトリウムとを含有させ、前記ナトリウムをクエン酸塩として含有させ、前記酢酸の含有量をCw/v%とし、前記ナトリウムの含有量をBmg/100mLとした場合に、B/Cを20.0~600.0とし、Cを0.100以下とする工程を含むアルコール飲料(ただし、ビールを含むものを除く)の製造方法。
(4)アルコール度数が3.0%以上4.0%未満であって酢酸を含有するアルコール飲料(ただし、ビールを含むものを除く)をやさしい味わいとする香味改善方法であって、前記アルコール飲料にナトリウムを含有させ、前記ナトリウムをクエン酸塩として含有させ、前記酢酸の含有量をCw/v%とし、前記ナトリウムの含有量をBmg/100mLとした場合に、B/Cを20.0~600.0とし、Cを0.100以下とする香味改善方法。
本発明に係るアルコール飲料は、アルコール度数を所定範囲とし、果実酢の含有量に対するナトリウムの含有量の比率を所定範囲とする工程を含むことから、やさしい味わいを呈するアルコール飲料を製造することができる。
本発明に係るアルコール飲料の香味改善方法は、アルコール度数が所定範囲であるとともに果実酢を含有するアルコール飲料について、果実酢の含有量に対するナトリウムの含有量の比率を所定範囲とすることから、アルコール飲料をやさしい味わいとすることができる。
本実施形態に係るアルコール飲料は、アルコール度数が所定範囲であり、果実酢の含有量に対するナトリウムの含有量の比率が所定範囲である飲料である。
ここで、アルコール飲料とは、アルコールを含有する飲料であり、特定の種類の飲料に限定されないものの、果実酢(酢酸)が奏する酸味を果実様または野菜様の香味として生かすことのできる果実風味アルコール飲料または野菜風味アルコール飲料であるのが好ましく、果実風味アルコール飲料であるのが特に好ましい。なお、果実風味アルコール飲料とは、果実の風味(香味)を飲用者に与える飲料であり、野菜風味アルコール飲料とは、野菜の風味(香味)を飲用者に与える飲料であり、例えば、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料、サワーテイスト飲料等が挙げられる。
果実酢は、醸造酢であって、原材料として1種又は2種以上の果実を使用したもので、その使用総量が醸造酢1Lにつき果実の搾汁として300g以上であるものをいう。詳細には、果実酢とは、「醸造酢の日本農林規格」(平成28年2月24日農林水産省告示第489号)において規定されているとおりであり、酢酸の含有量が4.5%以上(好ましくは、4.5%~5.5%)のものである。
そして、果実酢は、低アルコール度数(3.0%以上4.0%未満)の飲料に含有させることによって、各種果実の香味と酢のスッキリとした香味とを飲料に付与することができるものの、当該飲料のやさしい味わいを損なわせてしまう。
果実酢の含有量は、0.30w/v%以上が好ましく、0.40w/v%以上、0.60w/v%以上、0.80w/v%以上、0.90w/v%以上がより好ましい。果実酢の含有量が所定値以上であることによって、本発明の課題(やさしい味わいが損なわれる)が明確となる。
果実酢の含有量は、5.00w/v%以下が好ましく、4.00w/v%以下、3.00w/v%以下、2.50w/v%以下、2.10w/v%以下、1.80w/v%以下、1.50w/v%以下、1.10w/v%以下がより好ましい。果実酢の含有量が所定値以下であることによって、やさしい味わいとするという効果をしっかりと発揮させることができる。
酢酸は、カルボン酸の一種であり、エタン酸(ethanoic acid)とも呼ばれる。
そして、前記のとおり、果実酢を低アルコール度数(3.0%以上4.0%未満)の飲料に含有させると、当該飲料のやさしい味わいを損なわせてしまうが、このような事態は、果実酢に含まれる酢酸が原因であると考える。詳細には、酢酸の独特なツンとした刺激的な味や臭い(酢酸臭)が、低アルコール度数の飲料のやさしい味わいを低減させていると考える。
よって、本実施形態のアルコール飲料は、果実酢の含有量に代えて、酢酸の含有量を用いて規定することもできる。
酢酸の含有量は、0.015w/v%以上が好ましく、0.020w/v%以上、0.030w/v%以上、0.040w/v%以上、0.045w/v%以上がより好ましい。酢酸の含有量が所定値以上であることによって、本発明の課題(やさしい味わいが損なわれる)が明確となる。
酢酸の含有量は、0.250w/v%以下が好ましく、0.200w/v%以下、0.150w/v%以下、0.125w/v%以下、0.105w/v%以下、0.090w/v%以下、0.075w/v%以下、0.055w/v%以下がより好ましい。酢酸の含有量が所定値以下であることによって、やさしい味わいとするという効果をしっかりと発揮させることができる。
アルコール飲料の酢酸の含有量は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定することができる。
ナトリウム(Na)は、アルカリ金属元素の一つである。
そして、ナトリウムは、低アルコール度数(3.0%以上4.0%未満)であるとともに果実酢を含む飲料に含有させることによって、驚くべきことに当該飲料をやさしい味わいとすることができる。
ナトリウムの含有量は、2.0mg/100mL以上が好ましく、3.0mg/100mL以上、4.0mg/100mL以上、7.0mg/100mL以上、8.0mg/100mL以上、9.0mg/100mL以上、15.0mg/100mL以上、19.0mg/100mL以上がより好ましい。ナトリウムの含有量が所定値以上であることによって、アルコール飲料をより確実にやさしい味わいとすることができる。
ナトリウムの含有量は、40.0mg/100mL以下が好ましく、35.0mg/100mL以下、30.0mg/100mL以下、25.0mg/100mL以下、21.0mg/100mL以下がより好ましい。ナトリウムの含有量が所定値以下であることによって、アルコール飲料をやさしい味わいとする効果をしっかりと発揮させることができる。
アルコール飲料のナトリウムの含有量は、例えば、原子吸光法やイオンクロマトグラフィーによって測定することができる。
本実施形態に係るアルコール飲料の果実酢の含有量をAw/v%とし、ナトリウムの含有量をBmg/100mLとした場合に、B/Aが所定範囲となるのが好ましい。
詳細には、B/Aは、1.0以上が好ましく、2.0以上、4.0以上、7.0以上、8.0以上、9.0以上、15.0以上、19.0以上がより好ましい。B/Aが所定値以上であることによって、アルコール飲料をやさしい味わいとすることができる。
B/Aは、30.0以下が好ましく、28.0以下、25.0以下、23.0以下、21.0以下がより好ましい。B/Aが所定値以下であることによって、アルコール飲料をやさしい味わいとする効果をしっかりと発揮させることができる。
本実施形態に係るアルコール飲料の酢酸の含有量をCw/v%とし、ナトリウムの含有量をBmg/100mLとした場合に、B/Cが所定範囲となるのが好ましい。
詳細には、B/Cは、20.0以上が好ましく、40.0以上、80.0以上、140.0以上、160.0以上、180.0以上、300.0以上、380.0以上がより好ましい。B/Cが所定値以上であることによって、アルコール飲料をやさしい味わいとすることができる。
B/Cは、600.0以下が好ましく、560.0以下、500.0以下、460.0以下、420.0以下がより好ましい。B/Cが所定値以下であることによって、アルコール飲料をやさしい味わいとする効果をしっかりと発揮させることができる。
本実施形態に係るアルコール飲料は、アルコールを含有する。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、本発明の所望の効果が阻害されない範囲であれば、種類、製法、原料などに限定されることがないが、蒸留酒又は醸造酒であることが好ましい。蒸留酒としては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。醸造酒としては、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、甘味果実酒などを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
アルコール度数は、3.0%(v/v%)以上であり、4.0%未満である。アルコール度数が所定値未満であることによって、アルコール特有の香味が抑制され、果実酢(酢酸)からの香味の影響を受けやすくなり、その結果、本発明の課題(やさしい味わいが損なわれる)がより明確となる。
本実施形態に係るアルコール飲料は、非発泡性のものでも、発泡性のものでもよい。ここで、本実施形態における発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.5kg/cm2以上であることをいい、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.5kg/cm2未満であることをいう。
本実施形態に係るアルコール飲料は、前記した果実風味アルコール飲料または野菜風味アルコール飲料とするために、果汁を含んでいてもよいが、果実フレーバーまたは野菜フレーバーによって飲料の香味のタイプが果実様または野菜様となるように調製されていれば、無果汁又は低果汁であってもよい。
果汁の含有量(果汁率換算)は、「含有量(果汁率換算)%(詳細には、w/w%)」=「果汁配合量(g)」×「濃縮倍率」/100g×100により算出することができる。なお、「濃縮倍率」(ストレート果汁を100%としたときの果汁の相対的濃縮倍率)を算出するにあたり、JAS規格に準ずるものとし、各果実に特有の糖用屈折指示度の基準(Bx)又は酸度の基準(%)に基づいて換算できる。
また、「果実フレーバー」とは、果実様の香味を飲料に付加する香料であり、例えば、前記「果実酢に使用する果実」で列挙した各果実のフレーバーが挙げられる。
また、「野菜フレーバー」とは、野菜様の香味を飲料に付加する香料であり、例えば、トマト、ニンジン、ピーマン、サツマイモ、ショウガ等のフレーバーが挙げられる。
本実施形態に係るアルコール飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
本実施形態に係るアルコール飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器にアルコール飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
この混合工程において、B/A、B/C、アルコール度数、果実酢(酢酸)の含有量、ナトリウムの含有量等が前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
次に、本実施形態に係るアルコール飲料の香味改善方法を説明する。
本実施形態に係るアルコール飲料の香味改善は、アルコール度数が3.0%以上4.0%未満であって果実酢を含有するアルコール飲料をやさしい味わいとする香味改善方法であって、B/A(又は、B/C)を所定範囲とする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「アルコール飲料」において説明した値と同じである。
表に示す量となるように、飲用アルコール、果糖ぶどう糖液糖、クエン酸(無水)、クエン酸三ナトリウム、りんご酢(果実酢)、炭酸水を配合してサンプルを準備した。
なお、サンプルの20℃におけるガス圧は約2.0kg/cm2であった。
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル8名が下記評価基準に則って「やさしい味わい」について、-2点~0点~2点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、この評価は、サンプルを飲んで評価した。また、この評価は、サンプル1(+1点)とサンプル2(-2点)を基準として評価した。
やさしい味わいの評価については、「やさしい味わいであると強く感じる」場合を2点、「やさしい味わいであると全く感じない」場合を-2点として5段階で評価した。そして、やさしい味わいの評価は、点数が高いほど好ましいと判断できる。
なお、「やさしい味わいと感じる」場合とは、果実酢(酢酸)に特有の酢酸の刺激感や酢酸臭が低減されており、全体的に香味が穏やか(マイルド)である状態を示している。一方、「やさしい味わいと感じない」場合とは、果実酢(酢酸)に特有の酢酸の刺激感や酢酸臭が低減されていないことに起因して、酢の味が固く感じたり、舌触りが不快に感じたりしてしまうため、結果として全体的に香味が荒々しくなっている状態を示している。
サンプル1~3の結果から明らかなように、低アルコール度数の飲料に酢酸を含有させると、やさしい味わいが大きく損なわれるが(サンプル1→2)、ナトリウムを更に含有させることによって、やさしい味わいの点数が上昇する(サンプル2→3)ことが確認できた。
また、サンプル2~10の結果から明らかなように、ナトリウムの含有量を上昇させ、B/A(又は、B/C)が所定範囲となると、やさしい味わいを呈するという効果をしっかりと発揮できることが確認できた。
また、サンプル2~10の結果によると、果実酢(酢酸)の含有量を変化させたとしても、B/A(又は、B/C)が所定範囲となっていれば、やさしい味わいを呈するという効果が発揮されることも確認できた。
なお、これらのサンプルの中でも、サンプル7、8については、やさしい味わいを呈するという効果が特に顕著に現れたことも確認できた。
Claims (4)
- アルコール度数が3.0%以上4.0%未満であり、
酢酸とナトリウムとを含有し、
前記ナトリウムはクエン酸塩として含有し、
前記酢酸の含有量をCw/v%とし、前記ナトリウムの含有量をBmg/100mLとした場合に、B/Cが20.0~600.0であり、Cが0.100以下であるアルコール飲料(ただし、ビールを含むものを除く)。 - 前記ナトリウムの含有量が2.0~40.0mg/100mLである請求項1に記載のアルコール飲料。
- アルコール度数を3.0%以上4.0%未満とし、酢酸とナトリウムとを含有させ、前記ナトリウムをクエン酸塩として含有させ、前記酢酸の含有量をCw/v%とし、前記ナトリウムの含有量をBmg/100mLとした場合に、B/Cを20.0~600.0とし、Cを0.100以下とする工程を含むアルコール飲料(ただし、ビールを含むものを除く)の製造方法。
- アルコール度数が3.0%以上4.0%未満であって酢酸を含有するアルコール飲料(ただし、ビールを含むものを除く)をやさしい味わいとする香味改善方法であって、
前記アルコール飲料にナトリウムを含有させ、前記ナトリウムをクエン酸塩として含有させ、前記酢酸の含有量をCw/v%とし、前記ナトリウムの含有量をBmg/100mLとした場合に、B/Cを20.0~600.0とし、Cを0.100以下とする香味改善方法。
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