以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(第1実施形態)
第1実施形態の半導体装置1について、図1、図2を参照して説明する。
図1は、図2に示すI-I間の断面図である。図2では、後述する第1の外部露出層152および第2の外部露出層153を分かり易くするため、断面を示すものではないが、外部露出層152、153にハッチングを施している。
〔構成〕
本実施形態の半導体装置1は、例えば図1に示すように、導電材10と、第1電極13および第2電極14が形成された半導体素子11と、封止材12と、再配線層15とを備える。半導体装置1は、半導体素子11が自身よりも平面サイズの大きい導電材10上に搭載され、これらの側面が封止材12で覆われると共に、半導体素子11および封止材12上に再配線層15が形成された構造である。半導体装置1は、半導体素子11の図示しない電極パッドに第1電極13の一端が接続され、他の図示しない電極パッドに第2電極14の一端が接続され、他端が半導体素子11の外郭よりも外側まで延設された、ファンアウト型のパッケージ構造である。以下、説明の簡便化のため、ファンアウト型のパッケージ構造を「FOP構造」と称することがある。
導電材10は、例えば図1に示すように半導体素子11のうち再配線層15に覆われる面を表面11aとして、その反対面である裏面11bを覆う部材である。導電材10は、半導体素子11の裏面11bに電気的に接続されており、例えば、Cu(銅)、焼結Ag(銀)やはんだ等の任意の導電性材料により構成される。導電材10は、はんだ等により構成される場合には、半導体素子11の裏面11bに直接接合され、Cu板等により構成される場合には図示しないはんだ等の任意の導電性接合材を介して接合される。導電材10は、例えば、半導体素子11と向き合う上面10aが、半導体素子11の裏面11bに形成される図示しない電極に接続されると共に、上面10aとは反対面である下面10bが封止材12から露出しており、裏面電極として機能する。また、導電材10は、Cuなどの熱伝導性の高い材料で構成された場合には、半導体素子11の熱を外部に逃がす役割も果たす。
なお、導電材10は、半導体素子11の反り抑制の観点から、半導体素子11および半導体素子11との接合に用いられる図示しない接合材よりも剛性が高い材料で構成されることが好ましい。
導電材10は、本実施形態では、その平面サイズが半導体素子11よりも大きく、かつ半導体素子11の裏面11b全域がその外郭よりも内側に位置するように接続される。これは、半導体素子11のうち表面11aと裏面11bとを繋ぐ面を側面11cとして、半導体素子11の側面11cと封止材12との境界が導電材10で覆われた構造とし、これらの界面の密着性、ひいては半導体装置1の信頼性を向上させるためである。この詳細については、後述の半導体装置1の製造方法と共に説明する。
半導体素子11は、主としてシリコン、シリコンカーバイド等の半導体材料により構成され、例えばMOSトランジスタ、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のパワー半導体素子であり、通常の半導体プロセスにより製造される。
半導体素子11は、例えば、表面11aにAl(アルミニウム)等によりなる図示しない複数の電極パッドを備え、当該電極パッド上にCu(銅)等の金属材料で構成される第1電極13および複数の第2電極14を有する。半導体素子11は、例えば、裏面11bに図示しない電極パッドおよびこれを覆う図示しない第3電極が形成されており、第3電極が導電材10を介して外部に接続される構成となっている。第1電極13および図示しない第3電極は、例えば、一対とされ、半導体素子11の主な電流経路とされる。複数の第2電極14は、少なくとも1つがゲート電極とされ、第1電極13と第3電極との間の電流のオンオフを制御するために用いられる。第1電極13は、図示しない電極パッド上に積層され、再配線層15の内部に配置された内層電極であり、図1に示すように、第1の外部露出層152に接続されている。複数の第2電極14は、第1電極13と同様に図示しない電極パッド上に積層された内層電極であり、それぞれ第2の外部露出層153に接続されている。また、複数の第2電極14は、再配線層15内において第2の外部露出層153と半導体素子11の図示しない電極パッドとを繋ぐ内部配線としての役割を果たす。これは、第1電極13についても同様であり、第1電極13を再配線層15内における「第1配線」と称した場合、第2電極14は「第2配線」と称され得る。
封止材12は、図1に示すように、導電材10のうち下面10b以外の部分および半導体素子11の側面11cを覆う部材であり、例えばエポキシ樹脂等の任意の樹脂材料により構成される。具体的には、封止材12は、導電材10のうち半導体素子11と向き合う上面10aおよび端面10cと、半導体素子11のうち側面11cとをそれぞれ覆っている。封止材12の一部は、導電材10の下面10bと共に半導体装置1の裏面1bを構成している。
再配線層15は、図1に示すように、半導体素子11の表面11aおよび封止材12の一部によりなる一面を覆っており、第1電極13および第2電極14のほか、絶縁層151と、第1の外部露出層152と、第2の外部露出層153とを有してなる。再配線層15は、例えば、公知の再配線形成技術により形成される。
絶縁層151は、例えば、ポリイミド等の絶縁性材料によりなり、任意の塗布工程等により形成される。
第1の外部露出層152および第2の外部露出層153は、例えば、Ni(ニッケル)の金属材料等によりなり、無電解メッキ等により形成される。第1の外部露出層152は、上面視にて、半導体素子11の外郭内側に形成されると共に、図2に示すように、半導体装置1の表面1a側において一部が絶縁層151から露出しており、外部からの第1電極13への電気的接続を可能としている。第2の外部露出層153は、第2電極14のうち半導体素子11の外郭よりも外側に位置する一部の領域を覆っている。第2の外部露出層153は、例えば第2電極14と同数形成され、図2に示すように、半導体装置1の表面1a側において絶縁層151から露出しており、外部からの第2電極14を介して半導体素子11への電気的接続を可能としている。また、外部露出層152、153は、他の部材と半導体素子11とを電気的に接続する媒体であればよく、Niなどによるめっき層に限定されるものではなく、はんだなどによるバンプとされてもよいし、めっき層とバンプとが積層された構成であってもよい。
なお、図2では、第2の外部露出層153が5つ形成され、それぞれが異なる第2電極14の一部を覆う例を示しているが、これに限定されるものではなく、第2電極14およびこれを覆う第2の外部露出層153の数については任意である。
以上が、本実施形態の半導体装置1の基本的な構成である。半導体装置1は、半導体素子11の裏面11bに導電材10が接続され、半導体素子11の代わりに導電材10が露出するFOP構造である。そのため、半導体装置1は、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面が露出しておらず、これらの界面における密着性向上の効果が得られる。
〔製造方法〕
次に、半導体装置1の製造方法の一例について、図3A~図3Jを参照して説明する。
まず、導電材10および通常の半導体プロセスで製造され、図示しない電極パッドを備える半導体素子11を用意する。そして、図示しないはんだ等により、例えば図3Aに示すように、半導体素子11の裏面11bと導電材10とを接合する。
続いて、図3Bに示すように、半導体素子11の表面11aを支持基板200に貼り付け、導電材10が接合された半導体素子11を保持する。支持基板200としては、例えば、その表面にシリコンに対する密着性が高い図示しない粘着性シートを備える任意のものが用いられる。
次いで、図示しない金型を用意し、コンプレッション成形等により、支持基板200に保持された半導体素子11をエポキシ樹脂等の樹脂材料で覆い、加熱等により硬化することで、図3Cに示すように、封止材12を成形する。これにより、半導体素子11の側面11cおよび導電材10は、封止材12に覆われた状態となる。その後、封止材12により覆われた導電材10および半導体素子11を支持基板200から剥離する。
そして、半導体素子11のうち封止材12から露出した表面11a上に、例えば、ポリイミド等の感光性の樹脂材料を含む溶液をスピンコート法等により塗布して乾燥し、図3Dに示すように、絶縁層151を構成する第1層1511を形成する。この第1層1511は、例えば、フォトリソグラフィエッチング法により、半導体素子11の表面11aのうち第1電極13および第2電極14を形成する部分(図示しない電極パッド)以外の領域および封止材12を覆う所定のパターン形状とされる。第1層1511のパターニング後、第1層1511および半導体素子11の露出部分を覆うシード層16を例えばスパッタリング法等の真空成膜により形成する。このシード層16は、例えばCu等の導電性材料によりなる。
続いて、第1層1511およびシード層16を覆うレジスト層17を形成する。レジスト層17は、例えば、感光性および絶縁性のある樹脂材料を用い、第1層1511と同様にスピンコート法等の湿式成膜法により成膜され、フォトリソグラフィエッチング法により所定のパターン形状とされる。これにより、図3Eに示すように、半導体素子11のうち第1電極13および第2電極14が形成される図示しない電極パッド、および第1層1511の一部がレジスト層17から露出した状態となる。
次いで、例えば電解メッキ等により、図3Fに示すように、Cu等によりなる第1電極13および第2電極14を形成する。
そして、図3Gに示すように、例えば、レジスト層17を剥離液等により除去した後、エッチング液によりシード層16のうちレジスト層17の除去によって露出した部分を除去する。
その後、例えば、第1層1511と同じように感光性および絶縁性のある樹脂材料を用い、スピンコート法により、絶縁層151を構成する第2層1512を形成した後、フォトリソグラフィエッチング法によりパターニングを行う。これにより、図3Hに示すように、再配線層15を構成する絶縁層151が形成され、第1電極13および第2電極14の一部が絶縁層151から外部に露出した状態となる。
次いで、図3Hに示すように、例えば無電解メッキ等によりNi等によりなり、第1電極13を覆う第1の外部露出層152および複数の第2電極14の一部を覆う第2の外部露出層153を形成する。これにより、半導体素子11および封止材12上に、第1電極13、第2電極14、絶縁層151、および外部露出層152、153を備える再配線層15が形成される。
最後に、図3Jに示すように、封止材12を半導体素子11の裏面11b側の面から研削等により薄肉化し、導電材10を露出させる。半導体素子11の裏面11bに導電材10を接合しておき、封止材12の研削等による薄肉化により導電材10を露出させることで、薄肉化後に改めて半導体素子11の裏面11bに電極を形成する必要がなくなり、製造コストを低減することができる。
例えば、上記の工程により、本実施形態の半導体装置1を製造することができる。
なお、上記の製造方法は、あくまで一例であり、これに限定されるものではない。例えば、第1電極13、第2電極14や他の配線を上記した再配線形成工程を繰り返すことにより形成し、より多層構成とされた再配線層15を形成してもよい。さらに、第1電極13および第2電極14を電解メッキに代えて、スクリーン印刷法により形成してもよい。
具体的には、電極パッド11d、11eが形成された半導体素子11を用意し、図3A~図3Cで説明した手順と同様に、半導体素子11と導電材10との接合、および封止材12の形成を行う。その後、図4Aに示すように、絶縁層151の一部である第1層1511の成膜およびパターニングをし、電極パッド11d、11eを絶縁層151から露出させる。続けて、図4Bに示すように、例えば焼結Cuペースト材を図示しないスクリーンマスクを用いてスクリーン印刷により成膜した後に焼結することで、電極パッド11dに接続された第1電極13と電極パッド11eに接続された第2電極14とを形成してもよい。
この工程の場合、電極13、14の形成工程が簡素化されると共に、電極13、14の厚みを電解メッキに比べて厚くすることができる。なお、スクリーン印刷法により電極13、14を形成した場合、その厚みを20μm以上とすることが容易となり、低抵抗化に伴う低インダクタンス化や厚膜化による配線の低熱抵抗化が可能となる。
また、図4Cに示すように、第1電極13と第2電極14とを異なるペースト材料を用いて形成してもよい。例えば、第1電極13がエミッタに接続され、第2電極14がゲート等に接続され、信号の伝送に用いられる場合、第1電極13を焼結Cuペースト材により形成した後、第2電極14を低応力ペースト材により形成してもよい。低応力ペースト材としては、例えば、樹脂材料に銀フィラーを含有する導電性ペースト材等が挙げられる。これにより、第1電極13および第2電極14を必要な特性に合わせた材料により構成することが電解メッキで形成する場合に比べて容易となる。
〔導電材による効果〕
導電材10は、薄肉化工程において、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面が研削の際に晒されることを防ぎ、これらの界面における剥離の発生や剥離界面への水分侵入を抑制する役割を果たす。
具体的には、例えば図5に示すように、従来のFOP構造の半導体装置300は、半導体素子301のうち再配線層303に覆われる表面301aとは反対側の裏面303bが封止材302から露出した構造である。
この半導体装置300は、例えば図6に示すように、半導体素子301を封止材302で覆い、再配線層303を形成したワークについて、封止材302を半導体素子301の裏面301b側の面からグラインダー210で研削除去することにより製造される。この封止材302の研削除去に際して、半導体素子301の側面301cと封止材302との境界部分がグラインダー210の表面に晒されることとなる。
このとき、半導体素子301の側面301cと封止材302との界面に研削時の力が加わることで、例えば図7に示すように、これらの界面で剥離が生じることがある。このような剥離が生じると、界面剥離が再配線層303にまで到達して再配線層303における配線の断線が生じ得る。
また、この剥離界面に水分が侵入すると、再配線層303における金属材料の腐食や半導体装置300をリフローにより他の部材に接合する際に侵入した水分が蒸発して、再配線層303の剥離や配線の断線の原因となり得る。さらに、剥離界面に侵入した水分が半導体素子301の表面と再配線層303との界面にまで到達し、これらの界面に滞留すると、半導体素子301と再配線層303との密着が低下してしまう。半導体素子301と再配線層303との密着低下が起きると、複数の半導体装置300を一度に製造する場合には、加熱時やダイシング時などに半導体素子301が再配線層303から剥離するチップ飛びやウェハ割れの原因にもなり得る。
これに対して、本実施形態の半導体装置1は、半導体素子11の裏面に半導体素子11よりも平面サイズが大きい導電材10が接合され、半導体素子11が導電材10の外郭よりも内側に配置されている。言い換えると、この半導体装置1は、半導体素子11の側面11cと封止材12との境界部分が導電材10により覆い隠された構造である。そのため、封止材12を半導体素子11の裏面側の面から研削除去する工程(以下「裏面研削」という)にて、半導体素子11の側面11cと封止材12との境界部分がグラインダー等の研削具に晒されることはない。これにより、裏面研削において、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面にかかるストレスが軽減され、当該界面に剥離が生じることが抑制され、これらの界面への水分侵入ひいてはこれに伴う上記の不具合を防止することができる。
なお、図5~図7では、半導体素子301の表面側の電極を省略すると共に、半導体素子301の図示しない電極に接続される配線を含む再配線層303については簡略化したものを示している。
〔半導体モジュールへの適用例〕
次に、本実施形態の半導体装置1を用いた半導体モジュールの一例については、図8を参照して説明する。図8では、後述する第2ヒートシンク3のうち別断面において外部に接続される配線部分を破線で示している。
半導体装置1は、例えば図8に示すように、両面放熱構造の半導体モジュールS1に適用されると、半導体モジュールの薄型化および高放熱化が可能となり、好適である。なお、本明細書では、半導体装置1が両面放熱構造の半導体モジュールに適用された場合を代表例として説明するが、この適用例に限定されるものではない。
半導体モジュールS1は、図8に示すように、半導体装置1と、第1ヒートシンク2と、第2ヒートシンク3と、リードフレーム4と、接合材5と、封止材6とを有してなる。半導体モジュールS1は、2つのヒートシンク2、3が半導体装置1を挟んで対向配置されており、半導体装置1で生じる熱がこれらのヒートシンク2、3を介して両面から外部に放出される両面放熱構造である。
第1ヒートシンク2は、図8に示すように、表裏の関係にある上面2aおよび下面2bを備える板状とされ、例えばCuやFe(鉄)等の金属材料等により構成される。第1ヒートシンク2は、上面2aにはんだによりなる接合材5を介して半導体装置1が搭載されると共に、下面2bが封止材6から露出している。第1ヒートシンク2は、例えば、半導体装置1の通電における電流経路とされており、上面2a側の一部が封止材6の外部まで延設されている。つまり、第1ヒートシンク2は、本実施形態では、放熱部材および配線の2つの役割を果たす。なお、第1ヒートシンク2は、「第1放熱部材」と称され得る。
半導体装置1は、裏面1b側が第1ヒートシンク2に、表面1a側が第2ヒートシンク3に、それぞれ接合材5を介して接続される。半導体装置1は、裏面1bの全域が第1ヒートシンク2の上面2aの外郭内側に収まるように配置される。第2ヒートシンク3のうち外部に露出する面を一面3aとし、半導体装置1に向き合う面を他面3bとして、半導体装置1は、例えば、第2の外部露出層153を含む一部の領域が第2ヒートシンク3の他面3bの外郭よりも外側に位置するように配置される。半導体装置1の第2の外部露出層153は、例えば、接合材5を介してリードフレーム4が接続される。
第2ヒートシンク3は、図8に示すように、表裏の関係にある一面3aおよび他面3bを備える板状とされ、第1ヒートシンク2と同様の材料により構成される。第2ヒートシンク3は、他面3bが半導体装置1の上面2aの一部と対向配置されると共に、一面3aが封止材6から露出している。第2ヒートシンク3は、接合材5を介して第1の外部露出層152および第1電極13と電気的に接続されており、第1ヒートシンク2と同様に半導体素子11の電流経路となっている。また、第2ヒートシンク3は、図1の別断面において、他面3b側の一部が封止材6の外部まで延設されており、放熱部材および電気配線の2つの役割を果たす。なお、第2ヒートシンク3は、「第2放熱部材」と称され得る。
リードフレーム4は、例えば、CuやFe等の金属材料によりなり、図8に示すように、半導体装置1のうち第2の外部露出層153と接合材5を介して電気的に接続される。リードフレーム4は、例えば第2電極14と同数の複数のリードを備える。
なお、これらのリードは、例えば、封止材6の形成までは、図示しないタイバーにより隣接する複数のリードが連結されているが、封止材6の形成後にプレス打ち抜き等によりタイバーが除去されることで分離した状態となる。また、リードフレーム4は、第2ヒートシンク3と同一の部材として構成され、封止材6の形成まで図示しないタイバーにより連結されていてもよい。この場合であっても、リードフレーム4は、封止材6の形成後にプレス打ち抜き等によりタイバーが除去されることで、第2ヒートシンク3と分離した状態となる。
接合材5は、半導体モジュールS1の構成要素同士を接合する接合材であり、電気的に接続するために導電性を有する材料、例えばはんだなどが用いられる。なお、接合材5は、はんだに限定されるものではない。
封止材6は、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等によりなり、図8に示すように、半導体装置1、ヒートシンク2、3の一部、リードフレーム4の一部および接合材5を覆っている。封止材6は、半導体装置1の一部を構成する封止材12を「第1の封止材」とした場合、半導体装置1を覆う「第2の封止材」といえる。
この半導体モジュールS1は、半導体装置1の第2の外部露出層153とリードフレーム4とが接合材5で接合された構造である。そのため、特開2001-156225号公報に記載の従来の半導体モジュールのように、半導体装置1とリードフレーム4とのワイヤ接続が不要となる。また、ワイヤを用いないことで、ワイヤと第2ヒートシンク3との接触防止のための放熱ブロックを半導体装置1と第2ヒートシンク3との間に配置する必要もなくなる。これにより、放熱ブロックの分だけ半導体モジュールの厚みを薄くすることができ、放熱ブロックの熱抵抗がなくなるため、半導体装置1から第2ヒートシンク3までの熱抵抗が小さくなる。
よって、半導体モジュールS1は、半導体装置1を用いることにより、従来よりも薄型化および低熱抵抗化がなされた構造となる。
本実施形態によれば、半導体素子11の側面11cと封止材12との境界部分が導電材10により覆われることで、封止材12の研削工程時にこれらの境界部分にかかる力が低減され、当該境界における剥離が抑制されたFOP構造の半導体装置1となる。また、半導体装置1は、半導体素子11の裏面11bに導電材10が接合され、封止材12の研削工程時に半導体素子11よりも先に導電材10が封止材12から露出するため、研削時に半導体素子11の裏面電極まで削られてしまうことがない。つまり、半導体装置1は、従来よりも製造工程が簡素化されると共に、薄肉化後に裏面11bでの電極形成工程が不要となるため、その製造コストが低減される構造である。さらに、半導体装置1は、第2の外部露出層153に接合材5を介して接合し、リードフレーム4とファンアウト配線である第2電極14とを電気的に接続できるため、特に両面放熱構造の半導体モジュールの薄型化および低熱抵抗化に適する。
(第1実施形態の第1変形例)
半導体装置1は、例えば図9に示すように、導電材10のうち半導体素子11の外郭よりも外側に位置する部分に厚み方向に延設された貫通孔101を有していてもよい。貫通孔101は、導電材10の端面10cと封止材12との界面における剥離が生じることを抑制するために設けられる。
具体的には、貫通孔101は、上記第1実施形態の半導体装置1の製造工程のうち図3Iに示した状態から封止材12を半導体素子11の裏面11b側から研削する際、導電材10の端面10cと封止材12との境界にかかる力を分散させる。導電材10に貫通孔101がない場合、この研削工程において研削時の力は、導電材10の端面10cと封止材12との境界部分に作用し、これらを剥離させるおそれがある。
これに対して、導電材10が貫通孔101を備える場合、研削時の力は、導電材10の端面10cと封止材12との境界、および貫通孔101と封止材12との境界にかかることとなる。言い換えると、導電材10に貫通孔101を設けることにより、封止材12の研削工程において、導電材10の端面10cと封止材12との境界にかかる力が低減され、これらの界面で剥離が生じることが抑制される。なお、貫通孔101の数、大きさや配置については任意であり、適宜変更され得る。
仮に、図10の矢印で示すように、導電材10の端面10cと封止材12との界面剥離P1が生じたとしても、端面10cよりも内側に貫通孔101が存在しているため、界面剥離P1がより内部に進行しようとしても上面10aの貫通孔101で止められる。また、貫通孔101の内部を充填する封止材12は貫通孔101の内壁により冷熱サイクル時の動きが制限されるため、貫通孔101と封止材12との界面剥離P2が生じたとしても、界面剥離P2は内部に進行しにくい。その結果、界面剥離P1、P2のどちらが生じたとしても、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面にまで剥離が進行することが抑制される。
本変形例によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。また、導電材10の端面10cと封止材12の界面剥離が抑制され、導電材10と封止材12との界面剥離が生じたとしても、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面に到達しにくく、より信頼性が高くなるとの効果が得られる半導体装置1となる。
(第1実施形態の第2変形例)
半導体装置1は、例えば図11に示すように、導電材10のうち半導体素子11の外郭よりも外側に位置する部分に溝部102を有していてもよい。溝部102は、導電材10の端面10cと封止材12との界面における剥離が生じた場合に、当該界面剥離を食い止め、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面への進行を妨げるために設けられる。
溝部102は、例えば、半導体素子11を囲む環状とされるが、導電材10と封止材12との界面剥離が半導体素子11側に向かうことを抑制できればよく、その形状については任意である。溝部102は、例えば、プレス加工やレーザ加工等の任意の加工方法により形成される。
本変形例によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。また、導電材10と封止材12との界面剥離が生じたとしても、当該剥離が溝部102により食い止められ、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面密着の信頼性が高くなるとの効果が得られる半導体装置1となる。
(第1実施形態の第3変形例)
半導体装置1は、例えば図12に示すように、導電材10の端面10cに突起部103を有していてもよい。突起部103は、導電材10の端面10cと封止材12との界面剥離が生じた場合に、当該界面剥離の進行を抑制するために設けられる。
突起部103は、例えば、導電材10の端面10cの全域に環状に形成されるが、導電材10の端面10cと封止材12との界面剥離を抑制できればよく、その形状等については任意である。突起部103は、例えば、切削加工等の任意の加工方法により形成される。
本変形例によっても、上記第2変形例と同様の効果が得られる半導体装置1となる。
(第1実施形態の第4変形例)
半導体装置1は、例えば図13に示すように、導電材10の上面10aのうち半導体素子11の外郭よりも外側に位置する部分に、導電材10よりも封止材12との密着性が高い高密着部104を有していてもよい。高密着部104は、封止材12との密着性を高め、導電材10の端面10cと封止材12との界面剥離が生じた場合に、当該界面剥離が半導体素子11まで進行することを抑制するために設けられる。
高密着部104は、例えば、ポリイミド等の樹脂材料とされ、ディスペンサー塗布等の任意の湿式成膜法により形成される。高密着部104は、例えば、上面10aにおいて半導体素子11を枠状に囲む環状とされるが、これに限定されるものではなく、その配置や形状等については適宜変更され得る。
本変形例によっても、上記第2変形例と同様の効果が得られる半導体装置1となる。
(第1実施形態の第5変形例)
半導体装置1は、例えば図14に示すように、導電材10の上面10aのうち半導体素子11の外郭よりも外側に位置する部分に、マイクロメートルオーダー以下の凹凸形状を有する粗化部105を有していてもよい。粗化部105は、アンカー効果により封止材12との密着性を高め、導電材10の端面10cと封止材12との界面剥離が生じた場合に、当該界面剥離が半導体素子11まで進行することを抑制するために設けられる。
粗化部105は、例えば、上面10aにおいて半導体素子11を枠状に囲む環状とされるが、これに限定されるものではなく、その配置や形状等については適宜変更され得る。粗化部105は、例えば、レーザ加工等の任意の加工方法により形成される。
本変形例によっても、上記第2変形例と同様の効果が得られる半導体装置1となる。
(第1実施形態の第6変形例)
半導体装置1は、例えば図15に示すように、半導体素子11の側面11cにマイクロメートルオーダー以下の凹凸形状を有する粗化部111を有していてもよい。粗化部111は、アンカー効果により封止材12との密着性を高め、仮に導電材10と封止材12との界面剥離が生じたとしても、その剥離が進行することを抑制するために設けられる。
粗化部111は、例えば、シリコンウェハから半導体素子11をダイシングカットの際にレーザ加工による粗化処理を行うことにより形成され得る。以下、説明の簡便化のため、前述した半導体素子11の側面11cのレーザ加工による粗化処理を「レーザダイシング」と称することがある。
本変形例によれば、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。また、導電材10と封止材12との界面剥離が生じたとしても、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面の密着性を高めることで当該剥離が再配線層15にまで進行することを抑制でき、より信頼性が高い半導体装置1となる。
(第1実施形態の第7変形例)
半導体装置1は、例えば図16に示すように、半導体素子11の裏面11bに凹部112が設けられ、導電材10が凹部112に収容されると共に、凹部112の底部112aに接合された構成であってもよい。なお、「凹部112の底部112a」とは、例えば、裏面11b側に対する法線方向から見て、凹部112の底面に位置する部分をいう。
この場合、半導体素子11の厚みが上記第1実施形態よりも大きくなることで、半導体素子11の側面11cと封止材12との接触面積が大きくなり、封止材12の裏面研削時における半導体素子11の側面11cと封止材12との界面剥離が抑制される。また、導電材10は、本変形例では、半導体素子11よりも平面サイズが小さくされ、凹部112の深さと同じ厚みとされる。
凹部112は、例えば、半導体素子11の裏面11bに所定のパターン形状の保護膜を成膜した後、シリコンエッチングに用いられる任意のアルカリ液等により保護膜から露出した部分においてシリコンの異方性エッチングを行う等の方法により形成される。また、凹部112は、導電材10の外寸よりも内径が大きい環状のシリコン基板を別途用意し、半導体素子11の裏面11bに陽極接合をするなどの方法で形成されてもよい。なお、後者の場合には、半導体素子11の裏面11bが凹部112の底部112aとなる。
本変形例では、封止材12の裏面研削時に、半導体素子11の側面11cと封止材12との境界部分がグラインダーの表面に接触することとなるが、半導体素子11の側面11cと封止材12との接触面積が増大することで当該境界での剥離が抑制される。また、封止材12の裏面研削時においてグラインダーなどの研削具と接触する境界部分は、半導体素子11の側面11c-封止材12に加えて、導電材10-封止材12、および凹部112-封止材12が加わる。そのため、裏面研削時の力が分散され、半導体素子11の側面11c-封止材12の境界にかかる力が低減され、当該境界における剥離発生が抑制される。
よって、本変形例によっても、上記第1実施形態と同様に、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面剥離が抑制され、信頼性の高い半導体装置1となる。
(第2実施形態)
第2実施形態の半導体装置1について、図17~図19を参照して説明する。
本実施形態の半導体装置1は、例えば図17に示すように、半導体素子11の側面11cが絶縁性材料によりなる側壁絶縁部18により覆われている点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
本実施形態の半導体装置1は、例えば、図18A~図18Dに示す製造工程を経て製造される。
具体的には、まず、図18Aに示すように、導電材10の上面10aのうち後ほど半導体素子11を接合する領域を含む所定の領域に仮保護材110を成膜する。仮保護材110は、封止材12を形成後に剥離可能な任意の材料、例えば粘着材や感光性のある樹脂材料などにより構成される。仮保護材110は、例えば、粘着材で構成される場合には紫外線照射や加熱等により導電材10との粘着力が低下する材料が用いられ、感光性のある樹脂材料で構成される場合にはポジ型のレジスト材などが用いられ得る。
なお、仮保護材110は、後述する凹部121を設けるために用いられるが、凹部121の深さを所定以上(限定するものではないが、例えば20μm以上)としたい場合には、粘着材と仮部材とにより構成されることが好ましい。この場合、仮部材は、封止材12の構成材料と相溶性がなく、封止材12の成形工程における加熱に耐えられる耐熱性のある材料であればよく、任意の材料が用いられる。仮保護材110は、後ほど形成される凹部121に半導体素子11が収まるようにするため、その平面サイズが半導体素子11よりも大きくされる。
続いて、図18Bに示すように、仮保護材110を支持基板200に貼り付け、図示しない金型を用いてコンプレッション成形等により導電材10および仮保護材110を覆う封止材12を成形する。
次いで、図18Cに示すように、封止材12で仮保護材110および導電材10が覆われたワークを支持基板200から剥離し、導電材10の下面10b側の面から封止材12の研削を行い、導電材10の下面10bを露出させる。そして、仮保護材110を導電材10から剥離することで、例えば図18Cに示すように、導電材10を露出させる凹部121を有した封止材12を形成する。
その後、図18Dに示すように、凹部121に半導体素子11を収容し、図示しない接合材により導電材10と半導体素子11の裏面11bとを接合する。なお、半導体素子11は、次に形成する側壁絶縁部18と側面11cとの密着性をさらに高めるため、レーザダイシング等により側面11cに図15に示す粗化部111を有する構成としてもよい。
そして、図18Eに示すように、絶縁層151の第1層1511を例えばスピンコート等の湿式成膜法により形成する。このとき、絶縁層材料が凹部121と半導体素子11の側面11cとの隙間に流れ込んで硬化することで、第1層1511および側壁絶縁部18が形成される。つまり、側壁絶縁部18は、例えばポリイミド等の絶縁層151と同じ絶縁性材料により構成される。
以下、上記第1実施形態で説明した製造方法と同様の工程により、再配線層15を形成することで、本実施形態の半導体装置1を製造することができる。
上記第1実施形態の製造方法では、封止材12の成形時に支持基板200と半導体素子11の表面11aとの間に何らかの原因により封止材12を構成する樹脂材料が入り込むおそれがある。この場合において、封止材12を放熱フィラー等のフィラーを含む絶縁性材料により構成するとき、図19に示すように、再配線層15の一部である絶縁層151と半導体素子11の表面11aとの間にフィラー122が入り込み得る。このようなフィラー122が絶縁層151と半導体素子11との間に存在すると、フィラー122上における絶縁層151の厚みが薄くなり、絶縁不良の原因となり得る。
これに対して、本実施形態の半導体装置1は、封止材12を成形した後、導電材10と半導体素子11とを接合し、絶縁層151を成膜することで製造されるため、半導体素子11の表面11aに封止材12の構成材料が存在することはない。そのため、半導体装置1は、封止材12にフィラー122を含む絶縁性材料により構成する場合であっても、フィラー122に起因する絶縁不良が生じない構成となる。
また、封止材12の裏面研削の後に、導電材10と半導体素子11とを接合するため、半導体素子11の側面11cと側壁絶縁部18との間に研削時のストレスがかかることがなく、裏面研削に起因する界面剥離も生じない。
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる半導体装置1となる。
(第3実施形態)
第3実施形態の半導体装置1について、図20~図22を参照して説明する。
本実施形態の半導体装置1は、例えば図20に示すように、導電材10を有しておらず、封止材12のうち再配線層15とは反対側の面に凹部123が形成され、半導体素子11の裏面11bの一部または全部が凹部123内において封止材12から露出している。本実施形態の半導体装置1は、この点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
本実施形態の半導体装置1は、封止材12の他面12bが半導体素子11の裏面11bよりも突出すると共に、他面12bに凹部123を備え、凹部123において半導体素子11の裏面11bが封止材12から露出した構造である。封止材12の他面12bが半導体素子11の裏面11bよりも突出した構造であるため、封止材12の研削時に半導体素子11の側面11cと封止材12との境界部分が研削具に晒されない。そのため、半導体装置1は、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面剥離が抑制された構造となる。
〔製造方法〕
本実施形態の半導体装置1は、例えば図21A~図21Dに示す製造工程を経て製造される。
具体的には、例えば図21Aに示すように、半導体素子11を用意し、裏面11bの全域を裏面保護材120で覆う。裏面保護材120は、封止材12を形成後に剥離可能な任意の材料、例えば、紫外線照射や加熱により半導体素子11の裏面11bへの粘着力が低下する粘着材などにより構成される。ここでは、紫外線照射により粘着力が低下する粘着材を裏面保護材120として用いた場合を代表例として説明する。この場合、裏面保護材120としては、例えば、PVCやポリオレフィンなどの任意の基材上に紫外線で硬化するアクリル系またはシリコン系の粘着材を備える任意のテープ等が使用され得る。
続いて、図21Bに示すように、半導体素子11の表面11aを支持基板200に貼り付け、図示しない金型を用いてコンプレッション成形等により導電材10および裏面保護材120を覆う封止材12を成形する。
次いで、図21Cに示すように、例えば上記第1実施形態と同様の工程により再配線層15を半導体素子11の表面11a側に形成する。
その後、封止材12のうち裏面保護材120を覆う側の面を研削し、図21Dに示すように、裏面保護材120を露出させる。なお、この封止材12の研削工程において、半導体素子11の裏面11bまで誤って研削されないようにするため、裏面保護材120の厚みは、限定するものではないが、例えば60μm以上とされることが好ましい。
そして、図21Eに矢印で示すように、封止材12の他面12b側から紫外線(UV)を照射し、裏面保護材120の粘着力を低下させ、裏面保護材120と半導体素子11の裏面11bとの密着を低下させる。
最後に、図示しないダイシングテープによりUV照射後の裏面保護材120を剥離することで、図20に示すように、半導体素子11の裏面11bを露出させる凹部123を備えた封止材12が形成される。
例えば、上記の製造方法により半導体装置1を製造できる。裏面保護材120を剥離することで凹部123が形成され、半導体素子11の裏面11bが露出することとなるため、封止材12の研削後における半導体素子11の裏面11bでの電極形成工程が不要となる。また、この半導体装置1を用いて上記第1実施形態と同様の構造の半導体モジュールを構成することもでき、この場合、凹部123に接合材5を塗布して放熱部材などの他の部材と半導体素子11の裏面11bとを接合することとなる。
〔製造方法の変形例1〕
裏面保護材120を剥離する際、紫外線により粘着力が低下する粘着テープ(以下「UVテープ」という)を介して裏面保護材120を剥離してもよい。
具体的には、紫外線を照射後に、図22に示すように、封止材12の他面12bおよび裏面保護材120にUVテープTを貼り付け、マスクMを用いて、UVテープTのうち裏面保護材120に貼り付けられた部分に紫外線を照射する。その後、図示しないダイシングテープをUVテープTに貼り付け、UVテープTごと裏面保護材120を剥離することで、図20に示す半導体装置1となる。これにより、裏面保護材120とは強粘着、封止材12とは低粘着の状態となったUVテープTを介して裏面保護材120を剥離することとなり、裏面保護材120以外へのダイシングテープによるピール力の負荷が低減され、半導体装置1の変形が抑制される。つまり、UVテープTを用いることで、本実施形態の半導体装置1の製造における歩留まりが向上する効果が得られる。
〔製造方法の変形例2〕
上記では、裏面保護材120として粘着材を用い、ダイシングテープにより剥離する例について説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、熱可塑性樹脂により裏面保護材120を構成し、封止材12の研削後に薬液で裏面保護材120を溶解除去することで凹部123を形成してもよい。例えば、この場合において、裏面保護材120としてポリブタジエンを用いたとき、裏面保護材120を溶解除去するために用いる薬液としては、封止材12を溶解させず、ポリブタジエンを溶解させる溶媒が用いられる。このような薬液としては、例えば、溶解度パラメータの値(SP値)がポリブタジエンの8.1~8.6に近い、トルエン(8.9)、ジメチルエーテル(8.8)、エポキシ(10.9)などが挙げられる。
なお、この場合、図21Aに示す半導体素子11の裏面11bへの裏面保護材120の貼り付けについては、熱圧着により行うことができる。
この方法によっても、裏面保護材120を除去する際に、封止材12に物理的な力が作用しないため、半導体装置1の変形が抑制され、製造時の歩留まりを向上する効果が得られる。
〔製造方法の変形例3〕
裏面保護材120としては、加熱により半導体素子11の裏面11bとの密着力が低下する任意の材料が使用されてもよい。
この場合、裏面保護材120は、封止材12を成形後に支持基板200から剥離する際の加熱温度よりも高い温度で密着力が低下する特性を有する材料が用いられる。例えば、支持基板200と封止材12を成形後のワークとを剥離する温度が190℃である場合、裏面保護材120としては、190℃を超える温度で密着力が低下するものが用いられ得る。この場合、例えば、支持基板200の粘着材としては、190℃で剥離可能な日東電工社製のリバアルファ(登録商標)3195Vが用いられ得る。また、裏面保護材120としては、230℃で剥離可能な同社製のリバアルファ(登録商標)3195Eが用いられ得る。ただ、上記の使用材料については、あくまで一例であり、他の公知の材料が用いられてもよい。また、剥離温度についても適宜変更され得る。
なお、裏面保護材120は、半導体素子11の反り抑制の観点から、低弾性の材料により構成されることが好ましい。これは、剥離時における加熱による半導体素子11の反りを妨げることで、剥離後の反りの原因となる半導体素子11の内部応力が生じることを抑制するためである。
この方法によっても、裏面保護材120の剥離時において、封止材12に物理的な力が作用しないため、半導体装置1の変形が抑制され、製造時の歩留まりを向上する効果が得られる。
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果が得られる半導体装置1となる。また、凹部123を有することで、接合材5を用いて半導体装置1のうち半導体素子11の裏面11bを他の部材に接合する場合、接合材5の厚みが凹部123の深さ以上となるため、接合材5の厚みを所定以上に確保できるとの効果も得られる。さらに、接合材5として例えばはんだ箔を用いる場合、予め凹部123にはんだ箔を設けた後に他の部材に組み付けることも可能となり、組み付け時の接合材5の位置決めが不要となる効果も得られる。
(第3実施形態の第1変形例)
凹部123は、図20に示すように半導体素子11の外形と同一である例に限られず、例えば図23に示すように、半導体素子11の裏面11bの平面サイズよりも小さくされ、かつ半導体素子11の裏面11bの外郭内側に収まるように形成されてもよい。
この半導体装置1は、半導体素子11の側面11cと封止材12との境界が封止材12により覆われているため、上記第3実施形態に比べて、封止材12の研削時において当該境界部分にかかる力がより低減される構造である。
また、この場合、封止材12のうち裏面11bを覆う部分は、半導体素子11の裏面11bに向かってはみ出した「はみ出し部」となっている。はみ出し部は、半導体素子11を抑え込み、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面密着を安定させる。また、はみ出し部は、シリコンウェハを用いて複数の半導体装置1を一度に製造する場合において、半導体素子11を抑え込むことで、封止材12の研削時やダイシングカット時におけるチップ飛びやウェハの割れを抑制する役割も果たす。
本変形例によれば、上記第3実施形態の効果に加えて、複数個の半導体装置1を一度に製造する際のチップ飛びやウェハの割れを抑制する効果も得られる。
(第3実施形態の第2変形例)
凹部123は、例えば図24に示すように、半導体素子11の裏面11bの平面サイズよりも大きくされ、かつ半導体素子11の裏面11bが凹部123の内部に収まるように形成されてもよい。言い換えると、凹部123は、封止材12の他面12bのうち凹部123による段差部分が、半導体素子11の裏面11bの外郭よりも外側に位置するように形成される。
この半導体装置1は、接合材5を介して半導体素子11の裏面11bに放熱部材などを接合したとき、半導体素子11の熱が凹部123に充填された接合材5によって、より広範囲に拡散されることとなるため、放熱性が高められた構造となる。つまり、本変形例にかかる半導体装置1は、高放熱化された半導体モジュールを構成するために適した構造となっている。
本変形例によれば、上記第3実施形態の効果に加えて、実装された半導体装置1の半導体素子11の放熱性がより向上する効果も得られる。
(第4実施形態)
第4実施形態の半導体装置1について、図25~図26Dを参照して説明する。
本実施形態の半導体装置1は、例えば図25に示すように、半導体素子11の側面11cを覆う略枠体状の枠体被覆部19を備える点で上記第3実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
半導体素子11は、本実施形態では、側面11cが枠体被覆部19により覆われる一方で、裏面11bが枠体被覆部19に覆われておらず、外部に露出している。
枠体被覆部19は、封止材12よりも半導体素子11への密着性が高い任意の絶縁性材料、例えば、ポリイミド、ポリアミドや酢酸ブチルなどにより構成される。枠体被覆部19は、図25に示すように、半導体素子11よりもその厚さ方向における寸法が大きく、再配線層15側において膜平面方向に沿って突き出たフランジ部分を有する略筒形状とされている。枠体被覆部19は、封止材12の厚みと同じ厚みとされ、半導体素子11の裏面11bを外部に露出させる開口部191を備える。この開口部191は、上記第3実施形態における凹部123に相当する。
枠体被覆部19は、後述する半導体装置1の製造工程のうち封止材12の成形から封止材12の研削までの間、半導体装置1の裏面11bおよび側面11cを覆っており、封止材12の研削時に半導体素子11の裏面11bを保護する役割を果たす部材である。枠体被覆部19は、封止材12の研削後、半導体素子11の裏面11bを覆う部分が除去されることにより、上記の形状とされる。
本実施形態の半導体装置1は、例えば図26A~図26Dに示す製造工程を経て製造される。
まず、例えば図26Aに示すように、半導体素子11の表面11aを支持基板200に貼り付けた後、ポリイミド等によりなる樹脂シート190を半導体素子11に貼り付ける。これにより、半導体素子11は、裏面11bおよび側面11cが樹脂シート190で覆われて保護された状態となると共に、支持基板200から浮くチップ浮きや支持基板200上での位置ズレが抑制される。
続けて、例えば図26Bに示すように、図示しない金型を用意し、コンプレッション成形等により樹脂シート190ごと半導体素子11を覆う封止材12を成形する。その後、加熱等の任意の方法により、ワークを支持基板200から剥離し、半導体素子11の表面11aを外部に露出させる。
次いで、例えば図26Cに示すように、半導体素子11の表面11a、枠体被覆部19の一部および封止材12の一面12aを覆う再配線層15を上記第1実施形態と同様の工程により形成する。
その後、例えば図26Dに示すように、封止材12のうち樹脂シート190を覆う側の面からグラインダーなどの研削具を用いて、封止材12を研削し、樹脂シート190のうち半導体素子11の裏面11bを覆う部分を封止材12から露出させる。
最後に、フォトリソグラフィエッチング法やレーザ加工などの任意の方法により、樹脂シート190のうち半導体素子11の裏面11bを覆う部分を除去して開口部191を形成し、半導体素子11の裏面11bを外部に露出させる。
このような製造方法により半導体装置1を製造することができ、封止材12の研削時に樹脂シート190で半導体素子11の裏面11bを保護することで、封止材12の研削後における裏面11b側の電極形成工程が不要となる。また、樹脂シート190のうち半導体素子11の裏面11bを覆う部分を任意のエッチング方法で選択的に除去するため、半導体素子11の側面11cと枠体被覆部19との境界部分に物理的な力が作用しにくい。さらに、封止材12よりも半導体素子11への密着性が高い樹脂材料により枠体被覆部19を構成することで、半導体素子11の側面11cと枠体被覆部19との界面がより密着した状態となり、当該界面での剥離が抑制される。
本実施形態によっても、上記第3実施形態と同様の効果が得られる。また、半導体素子11を支持基板200にマウントした後に樹脂シート190で覆うため、チップ浮きや位置ズレが抑制されるため、製造における歩留まりが向上する効果も得られる。
なお、一度に複数個の本実施形態の半導体装置1を製造する場合には、樹脂シート190は、支持基板200にマウントされた複数の半導体素子11すべてを覆うように貼り付けられる。この場合、枠体被覆部19のフランジ部分は、再配線層15の膜平面に沿って半導体装置1の端面まで延設された状態となる。
(第5実施形態)
第5実施形態の半導体装置1について、図27~図29Fを参照して説明する。
本実施形態の半導体装置1は、例えば図27に示すように、半導体素子11の裏面11bを覆う導電材10のうち半導体素子11の外郭外側に位置する突出部106が、導電材10の他の部位よりも低密度のポーラス構造である点で上記第1実施形態と相違する。本実施形態では、この相違点について主に説明する。
導電材10は、本実施形態では、例えば、金属焼結体で構成されている。ここでいう「金属焼結体」とは、少なくとも導電性を有する金属材料を主成分とし、所定の圧力がかからない一部の箇所において、後述する低密度なポーラス構造が形成されるものである。金属焼結体としては、例えば、銀を主成分とする焼結銀や銅を主成分とする焼結銅等が挙げられるが、これらの材料に限定されるものではない。本実施形態では、導電材10が焼結銀で構成される場合を代表例として説明する。
導電材10は、本実施形態では、半導体素子11よりも平面サイズが大きく、半導体素子11の裏面11bの全域を覆う配置とされている。導電材10は、図27に示すように、下面10bのうち半導体素子11の外郭内側、すなわち直下に位置する領域が外部に露出している。一方、導電材10のうち半導体素子11の外郭外側に位置する部位を突出部106として、下面10bのうち突出部106に位置する領域の一部は、半導体素子11側に向かって傾斜すると共に、封止材12に覆われている。
突出部106は、導電材10の他の部位よりも低密度なポーラス構造となっている。具体的には、突出部106は、例えば図28に示すように、マイクロメートルオーダー以下の空隙、すなわちマイクロポアが複数形成された多孔質体であり、導電材10の残部よりも低密度となっている。これは、突出部106が、導電材10を形成する工程において、導電材10の構成材料の一部を半導体素子11の外郭よりも外側にはみ出させ、敢えて加圧されない領域として生じさせたバリの部位であることに起因する。この導電材10の形成工程については、後述する。
突出部106は、少なくとも突出部106の最表面に繋がる多数のマイクロポアが形成されると共に、封止材12がこのマイクロポアに入り込んだ状態となっている。なお、突出部106のマイクロポアは、封止材12の形成時に封止材12を構成する樹脂材料が入り込めるように、突出部106の最表面に位置する開口部の最小幅が10nm以上となっている。これにより、アンカー効果が生じ、突出部106と封止材12との密着力が向上することで、導電材10の下面10b側を起点とする突出部106と封止材12との界面剥離が抑制される。また、突出部106は、最表面のなす凹凸形状、すなわちマクロな凹凸形状を有しており、マイクロポアによるアンカー効果のほか、封止材12がマクロな凹凸形状に追従することに起因するアンカー効果も生じさせる。その結果、本実施形態の半導体装置1は、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面剥離が抑制され、信頼性が高い構造となっている。
一方、導電材10のうち平面視にて半導体素子11の直下に位置する直下部は、導電材10の形成工程において、導電材10の構成材料のうち半導体素子11を介して加圧される領域である。そのため、導電材10のうち直下部は、例えば図28に示すように、突出部106よりも緻密化されて空隙が少なく、密度が高い状態となっている。
〔製造方法〕
次に、本実施形態の半導体装置1の製造方法について説明するが、ここでは、図29A~図29Fを参照し、上記第1実施形態とは異なる工程について主に説明する。
まず、例えば図29Aに示すように、後に導電材10を構成する導電シート100およびその下敷きとなる下地シート201を用意する。導電シート100としては、例えば、焼結が可能な、銀ナノ粒子あるいは銀マイクロ粒子等の金属微粒子を含むフィルム等を用いることができる。下地シート201としては、ゴムなどの樹脂材料によりなるシート材であって、後述する打ち抜き工程の温度に耐えられるもの(例えばシリコンゴムシートなど)を用いることができる。
なお、導電シート100は、例えば、厚み10μm~100μm、弾性率20GPa~80GPa程度とされる。下地シート201は、例えば、厚み0.1mm~1mm、弾性率5MPa程度とされる。
続いて、例えば図29Bに示すように、導電シート100と下地シート201とを重ね合わせ、別途用意した半導体素子11を導電シート100上に載置する。なお、ここでは、工程を分かり易くするため、導電シート100上に1つの半導体素子11を載置する場合を代表例として説明するが、これに限定されるものではなく、複数の半導体素子11を載置し、一度に複数の半導体装置1を製造してもよい。
次いで、例えば図29Cに示すように、半導体素子11の表面11a側から図示しない加圧機構を用いて加圧し、導電シート100の一部を押圧する。このとき、下地シート201のうち半導体素子11の直下に位置する領域を含む一部の領域が弾性変形をすることで、導電シート100は、半導体素子11の直下に位置する直下部位とこれに隣接する部位との間に剪断力が生じる。その結果、導電シート100のうち半導体素子11の直下部分およびその周辺部位は、図29Dに示すように、打ち抜かれ、半導体素子11に転写される。
なお、上記の打ち抜き工程は、例えば、大気中にて、100℃~200℃、1MPa~5MPaの条件で行うことができるが、温度や圧力等については導電シート100や下地シート201の材料に応じて適宜変更され得る。また、この打ち抜き工程により、導電材10のうち突出部106に位置する下面10bの一部は、半導体素子11側、すなわち上側に向かって傾斜した状態となる。
その後、例えば、図示しない加熱ステージ上で、半導体素子11および転写された導電材料を200℃~300℃の焼成温度で加熱し、導電材料を焼結させる。これにより、突出部106が多数のマイクロポアを有するポーラス構造とされつつ、半導体素子11の直下部が突出部106よりも緻密化された導電材10を形成することができる。また、この焼結工程により、導電材10は、半導体素子11の裏面11bに接合された状態となる。
そして、例えば図29Eに示すように、半導体素子11の表面11aを支持基板200に貼り付け、導電材10が接合された半導体素子11を保持する。
続いて、図示しない金型を用意し、コンプレッション成形等により、支持基板200に保持された半導体素子11をエポキシ樹脂等の樹脂材料で覆い、加熱等により硬化することで、図29Fに示すように、封止材12を成形する。これにより、半導体素子11の側面11cおよび導電材10は、封止材12に覆われた状態となる。特に、導電材10のうち多数のマイクロポアを有する突出部106は、アンカー効果により、導電材10の他の部位よりも封止材12と高密着した状態となる。
次いで、例えば図3D~図3Jに示す上記第1実施形態の半導体装置1と同様の工程を行うことにより、本実施形態の半導体装置1を製造することができる。本実施形態の製造方法によれば、導電材10の形成工程において封止材12との高密着領域、すなわち突出部106が形成される。そのため、上記第1実施形態の第3変形例ないし第6変形例のように、導電材10の形成工程とは別に、導電材10-封止材12の界面の剥離伸展を抑制する領域、あるいは封止材12との高密着領域を形成する必要がなく、製造工程が簡素化される。よって、本実施形態の半導体装置1は、上記第1実施形態の第3変形例ないし第6変形例よりも、製造コストが低減される構造となる。
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様に、半導体素子11の側面11cと封止材12との境界部分が導電材10により覆われているため、封止材12の研削工程時にこれらの境界部分にかかる力が低減される構造の半導体装置1となる。そのため、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。また、導電材10のうち突出部106が多孔質体であり、封止材12が入り込んでアンカー効果が生じるため、封止材12と突出部106との密着力がより向上し、半導体素子11の側面11cと封止材12との界面剥離がより抑制される効果も得られる。
なお、上記では、導電シート100および下地シート201を用いて、打ち抜きおよび転写の工程を経て、導電材10を形成する例について説明したが、この工程に限定されるものではない。例えば、銀ナノ粒子等の金属微粒子によりなる焼結可能なペースト材などをディスペンサー塗布し、塗布された銀ペースト上に半導体素子11を載置し、半導体素子11を介して加圧した後に、焼結を行うことで導電材10を形成してもよい。この場合、導電材10は、例えば図30に示すように、下面10bの全域がフラットな面となり、下面10bの全域が封止材12から露出することになるが、突出部106と封止材12との高密着が確保されるため、特に支障はない。つまり、導電材10は、本実施形態では、突出部106が直下部よりも低密度な多孔質体であればよく、その外形については製造工程に応じて変わってもよい。
(他の実施形態)
本発明は、実施例に準拠して記述されたが、本発明は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらの一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範疇や思想範囲に入るものである。
例えば、上記第2実施形態ないし第5実施形態において、半導体素子11の側面11cに粗化部111が形成されていてもよい。また、上記第1実施形態の半導体装置1に限られず、他の実施形態に係る半導体装置1についても半導体モジュールを構成するために用いられ得る。例えば、図31に示すように、第3実施形態の半導体装置1を用いた場合であっても、半導体素子11の側面11cの界面剥離が抑制されると共に、薄型化および高放熱化がなされた構造の半導体モジュールとなる。