JP7243421B2 - 固体電解質層の製造方法 - Google Patents
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Description
本開示は、上記実情に鑑み、割れ難く、イオン伝導性の低下が抑制された固体電解質層の製造方法を提供することを目的とする。
前記固体電解質組成物の塗膜を形成する工程と、
前記固体電解質組成物の塗膜を、前記ポリマーの融点以上215℃以下の温度でプレスする工程と、を有することを特徴とする。
前記固体電解質組成物の塗膜を形成する工程(以下、塗膜形成工程と称する場合がある)、
前記固体電解質組成物の塗膜を、前記ポリマーの融点以上215℃以下の温度でプレスする工程(以下、プレス工程と称する場合がある)と、を有することを特徴とする。
本開示の製造方法においては、固体電解質層を形成する際の塗膜のプレス温度を、215℃以下、即ち低Liイオン伝導相の結晶化温度以下とすることにより、低Liイオン伝導相の結晶化が抑制されるため、イオン伝導性の低下を抑制することができる。また、本開示の製造方法においては、融点が215℃以下のポリマーを用いて、固体電解質層を形成する際の塗膜のプレス温度をポリマーの融点以上の温度とすることにより、プレスの際に塗膜中のポリマーの流動性が高まって、硫化物固体電解質の粒子間に生じた空隙にポリマーが入り込み、硫化物固体電解質の粒子同士をポリマーが接着すると推定される。硫化物固体電解質の粒子間に空隙があると、当該空隙から割れが発生しやすく、特に、外部から力が加わった場合に固体電解質層が割れやすい。本開示の製造方法により得られる固体電解質層は、硫化物固体電解質の粒子間に空隙が生じ難く、更に、硫化物固体電解質の粒子同士がポリマーで接着されていることにより、固体電解質層は柔軟性を有し、外部から力が加わった際に変形することができるため割れ難く、耐割れ性に優れると推定される。
以下、本開示の固体電解質層の製造方法の各工程について詳細に説明する。
本開示の製造方法に用いられる固体電解質組成物は、少なくとも硫化物固体電解質と、融点が215℃以下のポリマーとを含み、必要に応じて溶剤等のその他の成分を更に含んでいてもよい。
硫化物固体電解質としては、全固体電池に用いられる公知の硫化物固体電解質を適宜選択して用いることができ、特に限定はされず、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI、Li2S-P2S5-LiI-LiBr、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn(ただし、m、nは正の数を表し、Zは、Ge、Zn又はGaを表す。)、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LixMOy(ただし、x、yは正の数を表し、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga又はInを表す。)等を挙げることができる。前記硫化物固体電解質としては、中でも、本開示の製造方法によりイオン伝導性の低下が抑制されやすい点から、熱処理により結晶化が進行する結晶性材料であることが好ましく、熱処理によってガラスセラミックスとなるものがより好ましい。更に、イオン伝導性が高い点から、Li2S-P2S5を含むものであることが好ましく、Li2S-P2S5-LiI-LiBrが特に好ましい。なお、前記「Li2S-P2S5」の記載は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
なお、本開示において固形分とは、溶剤以外のもの全てであり、液状の結着剤等も含まれる。
融点が215℃以下のポリマーとしては、特に限定はされないが、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系ポリマー、ポリプロピレン、ポリブタジエン等が挙げられ、中でも、固体電解質層の耐割れ性の向上及びイオン伝導性の向上を両立しやすい点から、前記融点が215℃以下のポリマーとしては、ポリエチレン系ポリマーが好ましい。
前記ポリマーとしては、これらを1種単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
本開示の製造方法に用いられる固体電解質組成物は、効果を損なわない範囲でその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、例えば、塗工性を向上するための溶剤を挙げることができる。溶剤としては、前記融点が215℃以下のポリマーを分散可能なものを適宜選択して用いることができ、特に限定はされないが、例えば、ヘプタン、酪酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド等の有機溶剤を挙げることができる。中でも、塗工性が良好になりやすく、乾燥させやすい点から、前記溶剤は、アルコール類を含有することが好ましい。
前記固体電解質組成物が溶剤を含有する場合、前記溶剤の含有量は、固体電解質組成物の塗工性が良好になるように適宜調整され、特に限定はされない。
前記固体電解質組成物の製造方法は、特に限定はされず、例えば、前記固体電解質組成物に含まれる各成分を混合し、撹拌することにより、前記固体電解質組成物を得ることができる。
前記融点が215℃以下のポリマーが、前記硫化物固体電解質間に入り込みやすくなる点から、前記撹拌は、超音波処理による撹拌が好ましい。
前記撹拌の条件は、前記ポリマーの添加量及び種類等に応じて、適宜調整され、特に限定はされないが、前記融点が215℃以下のポリマーが、前記硫化物固体電解質間に入り込みやすくなる点から、90秒以上撹拌することが好ましい。
前記固体電解質組成物の塗膜は、例えば、支持体上に前記固体電解質組成物を塗布し、乾燥することにより形成することができる。
前記固体電解質組成物を塗布する方法は、前記固体電解質組成物の粘度等に応じて適宜選択され、特に限定はされないが、例えば、前記固体電解質組成物がペーストの場合は、支持体上に前記固体電解質組成物を垂らすことにより、前記固体電解質組成物を塗布することができる。
本開示の製造方法においては、前記固体電解質組成物の塗膜を、前記ポリマーの融点以上215℃以下の温度でプレスすることにより、固体電解質層を形成する。前記プレスの際の温度が前記ポリマーの融点以上であると、プレス時にポリマーの流動性が高まって、硫化物固体電解質の粒子間の空隙にポリマーが入り込むため、前記硫化物固体電解質の粒子間にポリマーが存在しやすくなることにより、固体電解質層の変形時には、前記ポリマーが硫化物固体電解質の粒子同士を繋ぎ止める働きをして、耐割れ性を向上すると推定される。また、結晶性材料である硫化物固体電解質は、熱が加わると結晶化が進行するが、215℃以下の熱では、低Liイオン伝導相の結晶化が進行し難いため、イオン伝導性の低下が抑制されると推定される。前記プレスの際の温度は、中でも、前記ポリマーを前記硫化物固体電解質の粒子間に入り込みやすくして、固体電解質層の耐割れ性を向上する点から、前記ポリマーの融点よりも10℃以上高い温度であることが好ましく、20℃以上高い温度であることがより好ましく、30℃以上高い温度であることがより更に好ましい。また、低Liイオン伝導相の結晶化を抑制して、固体電解質層のイオン伝導性の低下を抑制する点から、前記プレスの際の温度は、210℃以下であることが好ましい。
前記プレスの際の圧力は、特に限定はされないが、固体電解質層の耐割れ性及びイオン伝導性を向上しやすい点から、線圧を1ton/cm以上10ton/cm以下とすることが好ましい。
(1)固体電解質組成物の調製
融点が215℃以下のポリマーとしては、ポリエチレン粒子(Cospheric社製、融点:115℃)を用いた。
硫化物固体電解質としては、Li2S:P2S5:LiBr:LiIのモル比が240:80:10:5となるように、各原料を配合して硫化物固体電解質(5LiI-10LiBr-80(3Li2S-P2S5)を得た。
ヘプタンに、前記ポリエチレン粒子、及び前記硫化物固体電解質を入れ、超音波ホモジナイザー((株)エスエムテー製、超音波分散機、型式:UH-50)を用いて90秒間撹拌し、固体電解質組成物のペーストを得た。固体電解質組成物に含まれる全固形分中の前記ポリエチレン粒子の含有量は5体積%であった。
得られた固体電解質組成物のペーストを、撹拌直後にAl箔上に垂らし、塗工した後、室温で2時間自然乾燥させることで、塗膜を形成した。このように、Al箔上に固体電解質組成物の塗膜を形成した積層体を2つ準備した。
Cu箔に前記固体電解質組成物の塗膜が接するように、Cu箔の両面に各々前記積層体を重ね、線圧3ton/cm、150℃の条件にてロールプレス機(テスター産業(株)製、型番:SA-602)でプレスすることにより、Cu箔の両面に各々固体電解質層を形成した。その後、JIS K 6251で規定されるダンベル型試験片(引張6号形)の形状に打ち抜き、固体電解質層の表面にあるAl箔を剥離して、測定サンプルとした。
実施例1において、固体電解質組成物に含まれる全固形分中のポリエチレン粒子の含有量が表1に示す量となるようにポリエチレン粒子の添加量を変更し、実施例5、6及び比較例2~4においては更に、固体電解質組成物の塗膜をプレスする際の温度を、表1に示す温度に変更した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質組成物を調製し、固体電解質層を形成して、測定サンプルを作製した。
(1)耐割れ性評価
測定サンプルについて、引張試験機((株)エー・アンド・デイ製、型名:STB-1225S)を用いて、試験速度1mm/1minで引張試験を行った。
引張試験を行っている間に、測定サンプルが有する固体電解質層を、高速度カメラ((株)フォトロン製、FASTCAM mini AX200)を用いて、フレームレート60fpsにて観察した。引張試験データ(変位)及び高速カメラの録画データから、固体電解質層の割れが入った時点でのひずみ量を算出した。ひずみ量を表1に示す。固体電解質層に加わる外力が大きくなるほど、固体電解質層が割れやすくなるか、変形が大きくなるため、ひずみ量が大きいほど、固体電解質層が割れ難かったことを意味する。前記ひずみ量が6%以上の場合に、固体電解質層に入る割れの数が顕著に減少したため、前記ひずみ量が6%以上であると、固体電解質層の耐割れ性が顕著に向上している。
なお、表1においては、前記耐割れ性評価で求められる前記ひずみ量を、引張破断ひずみ量と表記する。
各実施例及び各比較例で用いた固体電解質組成物のペーストを、撹拌直後にAl箔上に垂らし、塗工した後、室温で2時間自然乾燥させることで、塗膜を形成した。当該塗膜上にCu箔を重ねて、線圧3ton/cm、150℃の条件にてロールプレス機(テスター産業(株)製、型番:SA-602)でプレスすることにより、固体電解質層を形成した。その後、固体電解質層を粉末状に解砕し、圧粉セルを作製した。得られた圧粉セルについて、インピーダンス測定を行い、Cole-Coleプロットを得て抵抗値を求め、抵抗値からイオン伝導度を算出した。イオン伝導度を表1に示す。固体電解質層のイオン伝導性は、前記イオン伝導度が1.5mS/cm以上であれば良好である。
実施例1と、ポリマーを添加しなかった比較例1との対比により、ポリマーを5体積%含有させることで、引張破断ひずみ量が増加し、耐割れ性が向上することが明らかにされた。固体電解質層中のポリマーは、硫化物固体電解質の粒子同士を繋ぎ止める働きをすると推定される。
Claims (1)
- 硫化物固体電解質と、融点が215℃以下のポリマーであるポリエチレン系ポリマーとを含み、全固形分中の前記ポリマーの含有量が5体積%以上15体積%以下である固体電解質組成物を調製する工程と、
前記固体電解質組成物の塗膜を形成する工程と、
前記固体電解質組成物の塗膜を、前記ポリマーの融点以上且つ180℃以上、215℃以下の温度でプレスする工程と、を有することを特徴とする、固体電解質層の製造方法。
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