JP7243421B2 - 固体電解質層の製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、固体電解質層の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池等の電池の分野において、電解液の代わりに固体電解質を使用する全固体電池の開発が行われている。全固体電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないため、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
全固体電池では物理的な接触により導通をとっているため、固体電解質に割れが生じると、イオン伝導性が低下したり、短絡を起こしたりするという問題がある。特許文献1は、頑健な固体電解質として、有機材料に埋設された無機材料を含む電解質を提案している。
一方、本出願人は、特許文献2において、硫化物固体電解質の製造方法に関し、簡易な工程で単体硫黄の残留量を低減することが可能な方法として、少なくともLiS、Pを含む電解質原料と単体硫黄との混合物を非晶質化した硫化物固体電解質材料を、単体硫黄の融点以上の温度で熱処理する熱処理工程を有する方法を開示している。
特表2018-521173号公報 特開2018-80095号公報
しかしながら、従来の技術では、割れを生じ難くするために固体電解質層の強度を向上させると、イオン伝導性が低下する場合があり、イオン伝導性と耐割れ性の両立が望まれている。
本開示は、上記実情に鑑み、割れ難く、イオン伝導性の低下が抑制された固体電解質層の製造方法を提供することを目的とする。
本開示の固体電解質層の製造方法は、硫化物固体電解質と、融点が215℃以下のポリマーとを含み、全固形分中の前記ポリマーの含有量が5体積%以上20体積%以下である固体電解質組成物を調製する工程と、
前記固体電解質組成物の塗膜を形成する工程と、
前記固体電解質組成物の塗膜を、前記ポリマーの融点以上215℃以下の温度でプレスする工程と、を有することを特徴とする。
本開示の製造方法によれば、硫化物固体電解質と、前記特定量の融点が215℃以下のポリマーとを組み合わせて含む固体電解質組成物の塗膜を、ポリマーの融点以上215℃以下の温度でプレスすることにより、割れ難く、イオン伝導性の低下が抑制された固体電解質層を提供することができる。
本開示の固体電解質層の製造方法は、硫化物固体電解質と、融点が215℃以下のポリマーとを含み、全固形分中の前記ポリマーの含有量が5体積%以上20体積%以下である固体電解質組成物を調製する工程(以下、固体電解質組成物を調製する工程と称する場合がある)と、
前記固体電解質組成物の塗膜を形成する工程(以下、塗膜形成工程と称する場合がある)、
前記固体電解質組成物の塗膜を、前記ポリマーの融点以上215℃以下の温度でプレスする工程(以下、プレス工程と称する場合がある)と、を有することを特徴とする。
本研究者は、固体電解質層のイオン伝導性が低下する原因として、固体電解質層を形成する際に、低Liイオン伝導相の結晶化が進むことが一因となっていることを知見した。本開示において、低Liイオン伝導相とは、CuKα線を用いたX線回折測定において、2θ=21.0°、28.0°にピークを有し、2θ=20.2°、23.6°にピークを有する結晶相よりも、相対的にLiイオン伝導性が低い結晶相のことをいう。ここで、ピーク位置は、±0.5°の範囲内で前後していても良く、例えば、2θ=21.0°のピークは、厳密な2θ=21.0°のピークのみならず、2θ=21.0°±0.5°の範囲内にあるピークをいう。
本開示の製造方法においては、固体電解質層を形成する際の塗膜のプレス温度を、215℃以下、即ち低Liイオン伝導相の結晶化温度以下とすることにより、低Liイオン伝導相の結晶化が抑制されるため、イオン伝導性の低下を抑制することができる。また、本開示の製造方法においては、融点が215℃以下のポリマーを用いて、固体電解質層を形成する際の塗膜のプレス温度をポリマーの融点以上の温度とすることにより、プレスの際に塗膜中のポリマーの流動性が高まって、硫化物固体電解質の粒子間に生じた空隙にポリマーが入り込み、硫化物固体電解質の粒子同士をポリマーが接着すると推定される。硫化物固体電解質の粒子間に空隙があると、当該空隙から割れが発生しやすく、特に、外部から力が加わった場合に固体電解質層が割れやすい。本開示の製造方法により得られる固体電解質層は、硫化物固体電解質の粒子間に空隙が生じ難く、更に、硫化物固体電解質の粒子同士がポリマーで接着されていることにより、固体電解質層は柔軟性を有し、外部から力が加わった際に変形することができるため割れ難く、耐割れ性に優れると推定される。
以下、本開示の固体電解質層の製造方法の各工程について詳細に説明する。
1.固体電解質組成物を調製する工程
本開示の製造方法に用いられる固体電解質組成物は、少なくとも硫化物固体電解質と、融点が215℃以下のポリマーとを含み、必要に応じて溶剤等のその他の成分を更に含んでいてもよい。
(硫化物固体電解質)
硫化物固体電解質としては、全固体電池に用いられる公知の硫化物固体電解質を適宜選択して用いることができ、特に限定はされず、例えば、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-LiI-LiBr、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-Z(ただし、m、nは正の数を表し、Zは、Ge、Zn又はGaを表す。)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(ただし、x、yは正の数を表し、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga又はInを表す。)等を挙げることができる。前記硫化物固体電解質としては、中でも、本開示の製造方法によりイオン伝導性の低下が抑制されやすい点から、熱処理により結晶化が進行する結晶性材料であることが好ましく、熱処理によってガラスセラミックスとなるものがより好ましい。更に、イオン伝導性が高い点から、LiS-Pを含むものであることが好ましく、LiS-P-LiI-LiBrが特に好ましい。なお、前記「LiS-P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質を意味し、他の記載についても同様である。
前記硫化物固体電解質の形状は、特に限定はされないが、粒子状であることが、後述する融点が215℃以下のポリマーとの組み合わせにより、固体電解質層のイオン伝導性及び耐割れ性を向上しやすい点から好ましい。
前記硫化物固体電解質の含有量は、特に限定はされないが、固体電解質層のイオン伝導性及び耐割れ性の観点から、固体電解質組成物に含まれる全固形分中、70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、一方、後述するポリマーを十分に含有させる点から、95体積%以下であることが好ましい。
なお、本開示において固形分とは、溶剤以外のもの全てであり、液状の結着剤等も含まれる。
(融点が215℃以下のポリマー)
融点が215℃以下のポリマーとしては、特に限定はされないが、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系ポリマー、ポリプロピレン、ポリブタジエン等が挙げられ、中でも、固体電解質層の耐割れ性の向上及びイオン伝導性の向上を両立しやすい点から、前記融点が215℃以下のポリマーとしては、ポリエチレン系ポリマーが好ましい。
前記ポリマーとしては、これらを1種単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
前記融点が215℃以下のポリマーは、後述するプレス工程前の前記固体電解質組成物中において粒子であることが、前記硫化物固体電解質の粒子間に生じた空隙に、前記ポリマーの粒子が入り込みやすい点から好ましい。
前記融点が215℃以下のポリマーとしては市販品を用いてもよい。前記融点が215℃以下のポリマーの市販品としては、例えば、Cospheric社製のポリエチレン粒子等を挙げることができる。
前記融点が215℃以下のポリマーの含有量は、固体電解質組成物に含まれる全固形分中、5体積%以上20体積%以下であればよい。前記含有量が5体積%以上であることにより、固体電解質層の耐割れ性を向上することができ、20体積%以下であることにより、固体電解質層のイオン伝導性の低下を抑制することができる。前記融点が215℃以下のポリマーの含有量は、中でも、固体電解質層の耐割れ性を向上する点からは、10体積%以上であることが好ましく、固体電解質層のイオン伝導性を向上する点からは、15体積%以下であることが好ましい。
(その他の成分)
本開示の製造方法に用いられる固体電解質組成物は、効果を損なわない範囲でその他の成分を含んでいてもよい。当該その他の成分としては、例えば、塗工性を向上するための溶剤を挙げることができる。溶剤としては、前記融点が215℃以下のポリマーを分散可能なものを適宜選択して用いることができ、特に限定はされないが、例えば、ヘプタン、酪酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等のアルコール類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド等の有機溶剤を挙げることができる。中でも、塗工性が良好になりやすく、乾燥させやすい点から、前記溶剤は、アルコール類を含有することが好ましい。
前記固体電解質組成物が溶剤を含有する場合、前記溶剤の含有量は、固体電解質組成物の塗工性が良好になるように適宜調整され、特に限定はされない。
本開示の製造方法に用いられる固体電解質組成物は、固体電解質層の耐割れ性の向上及びイオン伝導性の向上を両立しやすい点から、融点が215℃超過のポリマーの含有量は、固体電解質組成物に含まれる全固形分中、5質量体積%以下であることが好ましく、1質量体積%以下であることがより好ましく、融点が215℃超過のポリマーを含有しないことがより更に好ましい。
本開示の製造方法に用いられる固体電解質組成物は、前記ポリマーの分散性及び固体電解質組成物の塗工性の観点から、ペースト又はスラリーであることが好ましい。
(固体電解質組成物の製造方法)
前記固体電解質組成物の製造方法は、特に限定はされず、例えば、前記固体電解質組成物に含まれる各成分を混合し、撹拌することにより、前記固体電解質組成物を得ることができる。
前記融点が215℃以下のポリマーが、前記硫化物固体電解質間に入り込みやすくなる点から、前記撹拌は、超音波処理による撹拌が好ましい。
前記撹拌の条件は、前記ポリマーの添加量及び種類等に応じて、適宜調整され、特に限定はされないが、前記融点が215℃以下のポリマーが、前記硫化物固体電解質間に入り込みやすくなる点から、90秒以上撹拌することが好ましい。
2.塗膜形成工程
前記固体電解質組成物の塗膜は、例えば、支持体上に前記固体電解質組成物を塗布し、乾燥することにより形成することができる。
前記固体電解質組成物を塗布する方法は、前記固体電解質組成物の粘度等に応じて適宜選択され、特に限定はされないが、例えば、前記固体電解質組成物がペーストの場合は、支持体上に前記固体電解質組成物を垂らすことにより、前記固体電解質組成物を塗布することができる。
前記固体電解質組成物を塗布した後、乾燥する際の乾燥条件は、前記固体電解質組成物に含まれる溶剤の種類及び含有量等に応じて適宜調整されるものであり、特に限定はされないが、前記ポリマーが前記硫化物固体電解質の粒子間に入り込みやすくなる点から、20±5℃の室温で自然乾燥することが好ましく、乾燥時間を1時間以上3時間以下とすることが好ましい。
前記固体電解質組成物を塗布する支持体としては、自己支持性を有するものを適宜選択して用いることができ、特に限定はされず、例えば金属箔等を用いることができる。本開示の製造方法においては、剥離可能な支持体を用いて、固体電解質層を形成した後に支持体を剥離してもよいし、電極板等を支持体として用いて、支持体上に固体電解質層を形成したものをそのまま全固体電池に組み込んでもよい。剥離可能な支持体としては、例えば、アルミニウム箔等の金属箔を用いることができる。
3.プレス工程
本開示の製造方法においては、前記固体電解質組成物の塗膜を、前記ポリマーの融点以上215℃以下の温度でプレスすることにより、固体電解質層を形成する。前記プレスの際の温度が前記ポリマーの融点以上であると、プレス時にポリマーの流動性が高まって、硫化物固体電解質の粒子間の空隙にポリマーが入り込むため、前記硫化物固体電解質の粒子間にポリマーが存在しやすくなることにより、固体電解質層の変形時には、前記ポリマーが硫化物固体電解質の粒子同士を繋ぎ止める働きをして、耐割れ性を向上すると推定される。また、結晶性材料である硫化物固体電解質は、熱が加わると結晶化が進行するが、215℃以下の熱では、低Liイオン伝導相の結晶化が進行し難いため、イオン伝導性の低下が抑制されると推定される。前記プレスの際の温度は、中でも、前記ポリマーを前記硫化物固体電解質の粒子間に入り込みやすくして、固体電解質層の耐割れ性を向上する点から、前記ポリマーの融点よりも10℃以上高い温度であることが好ましく、20℃以上高い温度であることがより好ましく、30℃以上高い温度であることがより更に好ましい。また、低Liイオン伝導相の結晶化を抑制して、固体電解質層のイオン伝導性の低下を抑制する点から、前記プレスの際の温度は、210℃以下であることが好ましい。
前記プレスの際の圧力は、特に限定はされないが、固体電解質層の耐割れ性及びイオン伝導性を向上しやすい点から、線圧を1ton/cm以上10ton/cm以下とすることが好ましい。
本開示の製造方法により形成される固体電解質層は、イオン伝導性の観点から、イオン伝導度が1.5mS/cm以上であることが好ましく、1.8mS/cm以上であることがより好ましい。前記イオン伝導度は、前記固体電解質層を粉末状に解砕し、プレスすることにより作製した圧粉セルを用いて、インピーダンス測定を行い、Cole-Coleプロットを得て、当該Cole-Coleプロットから求められる抵抗値を用いて算出することができる。
以下に、実施例を挙げて、本開示を更に具体的に説明するが、本開示は、この実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例1~4は参考例である。
[実施例1]
(1)固体電解質組成物の調製
融点が215℃以下のポリマーとしては、ポリエチレン粒子(Cospheric社製、融点:115℃)を用いた。
硫化物固体電解質としては、LiS:P:LiBr:LiIのモル比が240:80:10:5となるように、各原料を配合して硫化物固体電解質(5LiI-10LiBr-80(3LiS-P)を得た。
ヘプタンに、前記ポリエチレン粒子、及び前記硫化物固体電解質を入れ、超音波ホモジナイザー((株)エスエムテー製、超音波分散機、型式:UH-50)を用いて90秒間撹拌し、固体電解質組成物のペーストを得た。固体電解質組成物に含まれる全固形分中の前記ポリエチレン粒子の含有量は5体積%であった。
(2)塗膜の形成
得られた固体電解質組成物のペーストを、撹拌直後にAl箔上に垂らし、塗工した後、室温で2時間自然乾燥させることで、塗膜を形成した。このように、Al箔上に固体電解質組成物の塗膜を形成した積層体を2つ準備した。
(3)固体電解質層の形成
Cu箔に前記固体電解質組成物の塗膜が接するように、Cu箔の両面に各々前記積層体を重ね、線圧3ton/cm、150℃の条件にてロールプレス機(テスター産業(株)製、型番:SA-602)でプレスすることにより、Cu箔の両面に各々固体電解質層を形成した。その後、JIS K 6251で規定されるダンベル型試験片(引張6号形)の形状に打ち抜き、固体電解質層の表面にあるAl箔を剥離して、測定サンプルとした。
[実施例2~6、比較例1~6]
実施例1において、固体電解質組成物に含まれる全固形分中のポリエチレン粒子の含有量が表1に示す量となるようにポリエチレン粒子の添加量を変更し、実施例5、6及び比較例2~4においては更に、固体電解質組成物の塗膜をプレスする際の温度を、表1に示す温度に変更した以外は、実施例1と同様にして、固体電解質組成物を調製し、固体電解質層を形成して、測定サンプルを作製した。
[評価]
(1)耐割れ性評価
測定サンプルについて、引張試験機((株)エー・アンド・デイ製、型名:STB-1225S)を用いて、試験速度1mm/1minで引張試験を行った。
引張試験を行っている間に、測定サンプルが有する固体電解質層を、高速度カメラ((株)フォトロン製、FASTCAM mini AX200)を用いて、フレームレート60fpsにて観察した。引張試験データ(変位)及び高速カメラの録画データから、固体電解質層の割れが入った時点でのひずみ量を算出した。ひずみ量を表1に示す。固体電解質層に加わる外力が大きくなるほど、固体電解質層が割れやすくなるか、変形が大きくなるため、ひずみ量が大きいほど、固体電解質層が割れ難かったことを意味する。前記ひずみ量が6%以上の場合に、固体電解質層に入る割れの数が顕著に減少したため、前記ひずみ量が6%以上であると、固体電解質層の耐割れ性が顕著に向上している。
なお、表1においては、前記耐割れ性評価で求められる前記ひずみ量を、引張破断ひずみ量と表記する。
(2)イオン伝導度の測定
各実施例及び各比較例で用いた固体電解質組成物のペーストを、撹拌直後にAl箔上に垂らし、塗工した後、室温で2時間自然乾燥させることで、塗膜を形成した。当該塗膜上にCu箔を重ねて、線圧3ton/cm、150℃の条件にてロールプレス機(テスター産業(株)製、型番:SA-602)でプレスすることにより、固体電解質層を形成した。その後、固体電解質層を粉末状に解砕し、圧粉セルを作製した。得られた圧粉セルについて、インピーダンス測定を行い、Cole-Coleプロットを得て抵抗値を求め、抵抗値からイオン伝導度を算出した。イオン伝導度を表1に示す。固体電解質層のイオン伝導性は、前記イオン伝導度が1.5mS/cm以上であれば良好である。
Figure 0007243421000001
表1より、実施例1~6では、硫化物固体電解質と、融点が215℃以下のポリマーとを組み合わせて含有させた固体電解質組成物を用いて、固体電解質組成物の塗膜をプレスする際の温度を、ポリマーの融点以上215℃以下の温度として固体電解質層を形成したため、得られた固体電解質層は、前記耐割れ性評価でのひずみ量が大きく、割れ難いものであり、更に、イオン伝導度の低下が抑制されていた。
実施例1と、ポリマーを添加しなかった比較例1との対比により、ポリマーを5体積%含有させることで、引張破断ひずみ量が増加し、耐割れ性が向上することが明らかにされた。固体電解質層中のポリマーは、硫化物固体電解質の粒子同士を繋ぎ止める働きをすると推定される。
プレス温度を150℃とした実施例1~4及び比較例1、5、6を対比すると、ポリマーの添加量が5体積%以上であれば、引張破断ひずみ量が6%以上となり、耐割れ性が顕著に向上していた。一方、比較例5では、ポリマーの添加量が5体積%未満であったため、ポリマーを添加しなかった比較例1に比べて引張破断ひずみ量が増加せず、耐割れ性が向上していなかった。ポリマーの添加量が5体積%未満の場合は、ポリマーが硫化物固体電解質の粒子同士を繋ぎ止める働きが不十分なためと推定される。また、比較例6では、ポリマーの添加量が20体積%超過であったため、イオン伝導度が低下した。ポリマーの添加量が20体積%超過であると、硫化物固体電解質の粒子間に存在するポリマーが、硫化物固体電解質同士のLiイオン伝導パスを阻害すると推定される。
ポリマーの添加量を10体積%とした実施例2、5、6、及び比較例2、3、4を対比すると、プレス時の温度が215℃以下であれば、イオン伝導度の低下が抑制されていた。比較例2では、プレス時の温度が215℃超過であったため、イオン伝導度が低下していた。比較例2では、215℃超過の熱が加わったことにより低Liイオン伝導相の結晶化が進行して、Liイオン伝導性の低い結晶が析出したため、イオン伝導度が低下したと推定される。比較例3、4では、プレス時の温度がポリマーの融点(115℃)より低い温度であったため、引張破断ひずみ量の増加量が少なく、耐割れ性に劣っていた。プレス時の温度がポリマーの融点未満の場合は、プレス時にポリマーの流動性が十分高くならないため、硫化物固体電解質の粒子間の空隙に存在するポリマーが少なくなり、ポリマーによる硫化物固体電解質の粒子同士を繋ぎ止める働きが不十分となるため、耐割れ性が劣ると推定される。

Claims (1)

  1. 硫化物固体電解質と、融点が215℃以下のポリマーであるポリエチレン系ポリマーとを含み、全固形分中の前記ポリマーの含有量が5体積%以上15体積%以下である固体電解質組成物を調製する工程と、
    前記固体電解質組成物の塗膜を形成する工程と、
    前記固体電解質組成物の塗膜を、前記ポリマーの融点以上且つ180℃以上、215℃以下の温度でプレスする工程と、を有することを特徴とする、固体電解質層の製造方法。
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