JP7218734B2 - 全固体電池 - Google Patents
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Description
リチウムイオン電池等の電池の分野において、正極と負極の間に介在する電解質として、有機溶媒を含む電解液の代わりに固体電解質を使用する全固体電池の開発が行われている。全固体電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。全固体電池では、各層間の物理的な接触により導通をとっているため、各層が互いに接触するように配置される。
本開示は、上記実情に鑑み、固体電解質層の剥離強度を維持しながら電池抵抗を低減することができる全固体電池を提供することを目的とする。
前記固体電解質層は、バインダーとして、フッ化物系バインダーを含み、
前記固体電解質層は、当該固体電解質層の正極層との接触面から所定の深さまでの第1の領域と、当該固体電解質層の負極層との接触面から所定の深さまでの第3の領域と、当該第1の領域と当該第3の領域の中間に位置する第2の領域と、に分けられ、
前記第1の領域及び前記第3の領域のそれぞれの領域のバインダー含有量をW1とし、
前記第2の領域のバインダー含有量をW2としたとき、
W2に対するW1の比が、0.25≦W1/W2≦0.40を満たし、
前記固体電解質層の充填密度が95%以上であることを特徴とする全固体電池を提供する。
前記固体電解質層は、バインダーとして、フッ化物系バインダーを含み、
前記固体電解質層は、当該固体電解質層の正極層との接触面から所定の深さまでの第1の領域と、当該固体電解質層の負極層との接触面から所定の深さまでの第3の領域と、当該第1の領域と当該第3の領域の中間に位置する第2の領域と、に分けられ、
前記第1の領域及び前記第3の領域のそれぞれの領域のバインダー含有量をW1とし、
前記第2の領域のバインダー含有量をW2としたとき、
W2に対するW1の比が、0.25≦W1/W2≦0.40を満たし、
前記固体電解質層の充填密度が95%以上であることを特徴とする全固体電池を提供する。
本研究者は、電極層-固体電解質層間の剥離強度について、バインダーを固体電解質層表面および電極層表面に偏析させることによって、剥離強度を向上させることを考えた。しかし、電極層側にバインダーが偏析した固体電解質層を用いた電池の抵抗が高いことを見出した。
これは、バインダーが偏析することによって、電極層-固体電解質層間のイオン伝導を阻害するためであると考えられる。これを解決するためには電極層-固体電解質層間でのバインダー量を減らす必要があるが、背反として電極層-固体電解質層間の剥離強度が低下する。さらにハンドリング性を考慮すると固体電解質層からバインダーを完全になくすことは困難である。したがって、固体電解質層中のバインダー総量は維持しながら、固体電解質層内部の所定の部位のバインダー量のみを減らし、固体電解質層の剥離強度を維持しながら電池抵抗を低減することが課題となる。
本開示の全固体電池は、負極集電体と負極層と固体電解質層と正極層と正極集電体をこの順に積層してなる。
図2は、本開示の固体電解質層の一例を示す断面模式図である。
図1~2に示すように、本開示において固体電解質層は、固体電解質層を高さ方向(積層方向)に3分割(3等分であってもよく、3等分でなくてもよい)した場合、固体電解質層の正極層との接触面から所定の深さまでの第1の領域と、固体電解質層の負極層との接触面から所定の深さまでの第3の領域と、第1の領域と第3の領域の中間に位置する第2の領域と、に分けられる。第1の領域と第3の領域のバインダーの濃度分布は不均一であってもよく、正極層又は負極層の接触面から深さ方向に進むにしたがってバインダー濃度が濃くなるように、バインダー濃度を変化させてもよい。
負極は、負極層を有し、必要に応じ負極集電体を有する。
負極層は、負極活物質を含み、任意成分として、バインダー、固体電解質、及び導電材等が含まれていてもよい。
リチウム合金としては、LiSn、LiSi、LiAl、LiGe、LiSb、LiP、及びLiIn等が挙げられる。
Si合金としては、Li等の金属との合金等が挙げられ、その他、Sn、Ge、及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属との合金であってもよい。
負極活物質の形状については、特に限定されるものではないが、例えば粒子状、薄膜状とすることができる。
負極活物質が粒子である場合の当該粒子の平均粒径(D50)は、例えば1nm以上100μm以下であることが好ましく、10nm以上30μm以下であることがより好ましい。
負極層におけるバインダーの含有量は、特に限定されず、負極層の総質量を100質量%としたとき、1質量%以上であってもよく、イオン伝導性を高める観点から、10質量%以下であってもよい。
負極層における導電材の含有量は特に限定されないが、負極層の総質量を100質量%としたとき、イオン伝導性を高める観点から、1質量%以上であってもよく、負極容量を高める観点から、10質量%以下であってもよい。
負極集電体の形態は特に限定されるものではなく、箔状、メッシュ状等、種々の形態とすることができる。
負極集電体には、外部端子と接続するための負極リードを備えていてもよい。
固体電解質層は、少なくとも固体電解質とバインダーを含む。
固体電解質は、硫化物系固体電解質、及び酸化物系固体電解質等が挙げられる。
本開示では、硫化物系固体電解質が200℃までの比較的低い温度で加圧することにより、硫化物系固体電解質同士を接着できる特性を利用し、硫化物系固体電解質同士の接着力によって固体電解質層と電極層を接着することにより固体電解質層の剥離強度をより維持することができる観点から硫化物系固体電解質であってもよい。
硫化物系固体電解質における各元素のモル比は、原料における各元素の含有量を調製することにより制御できる。また、硫化物系固体電解質における各元素のモル比や組成は、例えば、ICP発光分析法で測定することができる。
硫化物系固体電解質の結晶状態は、例えば、硫化物系固体電解質に対してCuKα線を使用した粉末X線回折測定を行うことにより確認することができる。
メカニカルミリングは、原料組成物を、機械的エネルギーを付与しながら混合する方法であれば特に限定されるものではないが、例えばボールミル、振動ミル、ターボミル、メカノフュージョン、ディスクミル等を挙げることができ、中でもボールミルが好ましく、特に遊星型ボールミルが好ましい。所望のガラスを効率良く得ることができるからである。
また、結晶は、例えば、ガラスを熱処理すること、又は、原料組成物に対して固相反応処理すること等により得ることができる。
熱処理温度は、ガラスの熱分析測定により観測される結晶化温度(Tc)よりも高い温度であればよく、通常、195℃以上である。一方、熱処理温度の上限は特に限定されない。
ガラスの結晶化温度(Tc)は、示差熱分析(DTA)により測定することができる。
熱処理時間は、所望の結晶化度が得られる時間であれば特に限定されるものではないが、例えば1分間~24時間の範囲内であり、中でも、1分間~10時間の範囲内が挙げられる。
熱処理の方法は特に限定されるものではないが、例えば、焼成炉を用いる方法を挙げることができる。
また、固体電解質の粒子の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、下限が0.5μm以上であることが好ましく、上限が2μm以下であることが好ましい。
固体電解質は、1種単独で、又は2種以上のものを用いることができる。また、2種以上の固体電解質を用いる場合、2種以上の固体電解質を混合してもよい。
第1の領域のバインダー含有量W1又は第3の領域のバインダー含有量W1は、第1の領域又は第3の領域の総質量を100質量%としたとき、0.50質量%以上であってもよく、イオン伝導性を高める観点から、0.90質量%以下であってもよい。
第2の領域のバインダー含有量W2は、第2の領域の総質量を100質量%としたとき、1.50質量%以上であってもよく、イオン伝導性を高める観点から、3.60質量%以下であってもよい。
固体電解質層に含有させるバインダーは、固体電解質層の総質量を100質量%としたとき、1質量%以上であってもよく、イオン伝導性を高める観点から、3質量%以下であってもよい。
固体電解質層の充填密度は95%以上であればよい。
充填密度は、固体電解質層の質量を測定した上で、例えば、断面SEMや厚みゲージを用いて固体電解質層の実厚みを測定し、実厚みに対する固体電解質層の成分から算出される真密度から求めた厚みから、下記式を用いて算出してもよい。
充填密度(%)=(真密度から求めた厚み/実測した厚み) × 100
正極は、正極層を有し、必要に応じ正極集電体を有する。
正極層は、正極活物質を含み、任意成分として、バインダー、固体電解質、及び導電材等が含まれていてもよい。
Liイオン伝導性酸化物としては、例えば、LiNbO3、Li4Ti5O12、及び、Li3PO4等が挙げられる。コート層の厚さは、例えば、0.1nm以上であり、1nm以上であっても良い。一方、コート層の厚さは、例えば、100nm以下であり、20nm以下であっても良い。正極活物質の表面におけるコート層の被覆率は、例えば、70%以上であり、90%以上であっても良い。
正極活物質の表面をLiイオン伝導性酸化物で被覆する方法は特に限定されず、例えば、転動流動式コーティング装置(株式会社パウレック製)を用いて、大気環境において正極活物質にLiイオン伝導性酸化物をコーティングし、大気環境において焼成を行う方法等が挙げられる。また、例えば、スパッタリング法、ゾルゲル法、静電噴霧法、及び、ボールミリング法等が挙げられる。
正極層における正極活物質の含有量は、特に限定されないが、正極層の総質量を100質量%としたとき、例えば、50質量%~90質量%であってもよい。
正極層における固体電解質の含有量は、特に限定されないが、正極層の総質量を100質量%としたとき、例えば1質量%~80質量%であってもよい。
正極層におけるバインダーの含有量は、特に限定されず、正極層の総質量を100質量%としたとき、1質量%以上であってもよく、イオン伝導性を高める観点から、10質量%以下であってもよい。
正極層における導電材の含有量は特に限定されるものではない。
溶媒は、例えば酢酸ブチル、酪酸ブチル、ヘプタン、及びN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
正極集電体等の支持体の一面上に正極層用スラリーを塗布する方法は、特に限定されず、ドクターブレード法、メタルマスク印刷法、静電塗布法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、及びスクリーン印刷法等が挙げられる。
支持体としては、自己支持性を有するものを適宜選択して用いることができ、特に限定はされず、例えばCu及びAlなどの金属箔等を用いることができる。
加圧方法としては、特に制限されないが、例えば、平板プレス、及びロールプレス等を用いて圧力を付加する方法等が挙げられる。
正極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、及びメッシュ状等を挙げることができる。
本開示の全固体電池としては、負極の反応として金属リチウムの析出-溶解反応を利用した全固体リチウム電池、正極と負極との間をリチウムイオンが移動する全固体リチウムイオン電池、全固体ナトリウム電池、全固体マグネシウム電池及び全固体カルシウム電池等を挙げることができ、全固体リチウムイオン電池であってもよい。また、全固体電池は、一次電池であってもよく二次電池であってもよい。
全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、及び角型等を挙げることができる。
本開示の全固体電池の製造方法は、例えば、まず、バインダーの含有量がW1であり且つバインダーと固体電解質を含む第1の領域及び第3の領域用の固体電解質材料の粉末を加圧成形することにより固体電解質層Bを2つ形成する。そして、バインダーの含有量がW2であり且つバインダーと固体電解質を含む第2の領域用の固体電解質材料の粉末を加圧成形することにより固体電解質層Aを形成する。そして、固体電解質層B-固体電解質層A-固体電解質層Bとなるようにこれらを積層し、固体電解質層を形成する。そして、固体電解質層の一面上で正極活物質を含む正極合剤の粉末を加圧成形することにより正極層を得る。その後、固体電解質層の正極層を形成した面とは反対側の面上に負極活物質を含む負極合剤の粉末を加圧成形することにより負極層を形成する。そして、得られた正極層-固体電解質層-負極層接合体に必要に応じて100℃以上200℃以下の温度でホットプレスし、集電体を取り付けることにより本開示の全固体電池としてもよい。
この場合、正極層-固体電解質層-負極層接合体、固体電解質材料の粉末、及び正極合剤の粉末を加圧成形する際のプレス圧は、通常1MPa以上600MPa以下程度である。
加圧方法としては、特に制限されないが、正極層の形成において例示した加圧方法が挙げられる。
また、加圧(プレス)温度は、特に限定されないが、硫化物系固体電解質同士の接着力によって固体電解質層と電極層を接着する観点から、100℃以上200℃以下であってもよい。
1.負極層の作製
分散媒としての酪酸ブチル、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を溶媒としての酪酸ブチルに溶解した5質量%酪酸ブチル溶液、負極活物質としてのチタン酸リチウムの粒子、固体電解質としての硫化物ガラスセラミックス(10LiI-10LiBr-80(0.75Li2S-0.25P2S5)mol%)、及び導電材としてのVGCF(気相法炭素繊維)を、ポリプロピレン製容器に加えて、超音波分散装置で30秒間撹拌した。その後、ポリプロピレン製容器を振とう器で30分間振とうして、負極層用ペーストを作製した。
負極層用ペーストを、アプリケーターを使用して、ドクターブレード法にて負極集電体としてのニッケル箔に塗工し、その後、100℃に加熱したホットプレート上で30分間乾燥することにより、負極層及び負極集電体を有する負極を作製した。
分散媒としての酪酸ブチル、バインダーとしてのPVdFを溶媒としての酪酸ブチルに溶解した5質量%酪酸ブチル溶液、ニオブ酸リチウムでコーティングされた正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、固体電解質としての硫化物ガラスセラミックス(10LiI-10LiBr-80(0.75Li2S-0.25P2S5)mol%)、及び導電材としてのVGCF(気相法炭素繊維)を、ポリプロピレン製容器に加えて、超音波分散装置で30秒間撹拌した。その後、ポリプロピレン製容器を振とう器で3分間振とうし、さらに超音波分散装置で30秒間撹拌して、正極層用ペーストを作製した。
正極層用ペーストを、アプリケーターを使用して、ドクターブレード法にて基板としてのアルミニウム箔に塗工し、その後、100℃に加熱したホットプレート上で30分間乾燥することにより、正極層及び正極集電体を有する正極を作製した。
3-1.固体電解質層A(第2の領域用固体電解質層)
分散媒としての酪酸ブチル、バインダーとしてのPVdFを溶媒としての酪酸ブチルに溶解した10質量%酪酸ブチル溶液、及び固体電解質としての硫化物ガラスセラミックス(10LiI-10LiBr-80(0.75Li2S-0.25P2S5)mol%)を、ポリプロピレン製容器に加えて、超音波分散装置で30秒間撹拌した。
その後、ポリプロピレン製容器を振とう器で30秒間振とうして、固体電解質層用ペーストを作製した。
固体電解質層用ペーストを、アプリケーターを使用して、ブレード法にて基板としてのアルミニウム箔に塗工し、その後、自然乾燥30分後に、100℃に加熱したホットプレート上で30分間乾燥することにより、固体電解質層A(厚さ10μm)を作製した。
実施例1~4及び比較例3~6においては、上記に対して、自然乾燥を実施せず、固体電解質層用ペーストを、アプリケーターを使用して、ブレード法にて基板としてのアルミニウム箔に塗工した直後に150℃に加熱したホットプレート上で30分間乾燥することにより、固体電解質層B(厚さ10μm)を作製した。同様の方法で固体電解質層Bを合計2つ作製した。
比較例1~2、7においては、固体電解質層Bとして、固体電解質層Aを作製した方法と同様の方法で固体電解質層A(厚さ10μm)を合計2つ作製した。
3-3-A.積層体A-A―A
比較例1~2、7においては、固体電解質層Aと固体電解質層Aを重ねてプレスして積層し積層体A-Aを得た。次に、積層体A-Aの固体電解質層Aの基板としてのアルミ箔を剥離し、積層体A-A上にさらに固体電解質層Aを重ねてプレスして積層体A-A―Aを得た。積層体A-A―Aを固体電解質層とし、積層体A-A―Aにおいて順に、第1の領域(固体電解質層A)-第2の領域(固体電解質層A)-第3の領域(固体電解質層A)とした。
3-3-B.積層体B-A―B
実施例1~4及び比較例3~6においては、固体電解質層Aと固体電解質層Bを重ねてプレスして積層し積層体B-Aを得た。次に、積層体B-Aの固体電解質層Aの基板としてのアルミ箔を剥離し、積層体B-Aの固体電解質層A上にさらに固体電解質層Bを重ねてプレスして積層し、積層体B-A―Bを得た。積層体B-A―Bを固体電解質層とし、積層体B-A―Bにおいて順に、第1の領域(固体電解質層B)-第2の領域(固体電解質層A)-第3の領域(固体電解質層B)とした。
実施例1~4および比較例1~7の固体電解質層中の固体電解質層Aと固体電解質層Bの組み合わせについては表2に示した。
4-A.
比較例2~7においては、以下のようにして全固体電池を作製した。
固体電解質層が負極層と接するように、固体電解質層を負極に積層し、プレス温度を室温とし、プレス圧1ton/cmで1分間プレスし、固体電解質層の基板としてのアルミニウム箔を剥がして、固体電解質層と負極の積層体を作製した。
その後、この積層体の固体電解質層側に正極層が固体電解質層と接するように、正極を積層し、プレス温度を室温とし、プレス圧1ton/cmで1分間プレスし、正極、固体電解質層と負極の積層体を作成し、さらにプレス温度を室温とし、プレス圧4ton/cmで1分間プレスして緻密化し、緻密化された正極/固体電解質/負極の積層体を作成し、これを全固体電池とした。
比較例1、実施例1~4においては、以下のようにして全固体電池を作製した。
固体電解質層が負極層と接するように、固体電解質層を負極に積層し、プレス温度を室温とし、プレス圧1ton/cmで1分間プレスし、固体電解質層の基板としてのアルミニウム箔を剥がして、固体電解質層と負極の積層体を作製した。
その後、この積層体の固体電解質層側に正極層が固体電解質層と接するように、正極を積層し、プレス温度を室温とし、プレス圧1ton/cmで1分間プレスし、正極、固体電解質層と負極の積層体を作成し、さらにプレス温度を150℃とし、プレス圧4ton/cmで1分間ホットプレスして緻密化し、緻密化された正極/固体電解質/負極の積層体を作成し、これを全固体電池とした。
したがって、比較例1、実施例1~4においては、積層体に対してホットプレス処理を行い、比較例2~7においては、積層体に対してホットプレス処理を行わなかった。
各実施例、及び比較例におけるホットプレス処理の有無は表2に示した。
固体電解質層中の組成は、作製した全固体電池の断面をSEM-EDXのライン分析によって測定した。結果を表1に示す。
固体電解質層中の厚み方向のバインダー含有量は、固体電解質層の正極層との接触面から負極層の接触面に向けて、ライン分析を行うことで、調べた。バインダー含有量は、固体電解質層中の固体電解質とバインダーを構成する元素の比から求めることができる。例えば、硫化物系固体電解質の場合、P、S、I、Br、Iであり、バインダーにPVDFを用いた場合は、C、Fである。なお、固体電解質層の組成が分析できれば、SEM-EDXである必要はない。
実施例1~4および比較例1~7の第2の領域中のバインダーの含有量W2と、第1の領域及び第3の領域中のバインダーの含有量W1は表1に示した。
また、固体電解質層全体中のバインダー含有量を算出し、結果を表2に示した。
固体電解質層の充填密度は、全固体電池を分解して、使用していた固体電解質層の質量を測定した上で、断面SEM及び厚みゲージを用いて実厚みを測定し、実厚みに対する固体電解質層の成分から算出される真密度から求めた厚みから、下記式を用いて算出した。結果を表1に示す。
充填密度=(真密度から求めた厚み/実測した厚み) × 100
前述で作製した全固体電池について、充電率50%になるように調整し、7C(1Cは1時間で電池容量を放電もしくは充電できる電流値)を印加し、0.1秒後の電圧降下から、電池抵抗を算出した。結果を表1に示す。
得られた全固体電池の負極と固体電解質層との接着性(剥離の有無)及び正極と固体電解質層との接着性(剥離の有無)を確認した。評価方法は、全固体電池を5個作成し5個中一個でも負極と固体電解質層又は正極と固体電解質層との接着不良があれば接着性が悪いとして×とし、5個全て剥離が確認されなければ接着性良好として○とした。結果を表1に示す。
一方、比較例1、2、7では、固体電解質層の剥離強度は良好であるが、全固体電池の電池抵抗が9.8Ω以上と高く、固体電解質層の剥離強度の向上と電池抵抗の低減の両立ができていないことが確認された。
また、比較例3~6では、固体電解質層の剥離強度は悪く、全固体電池の電池抵抗が8.3Ω以上と高いことが確認された。
以上の結果から、本開示によれば、バインダー含有量の分布を特定の範囲で制御した固体電解質層は剥離強度が良好であり、当該固体電解質層を用いた全固体電池は電池抵抗が低く、固体電解質層の剥離強度の向上と電池抵抗の低減の両立が可能であることが実証された。
Claims (1)
- 正極層と、負極層と、当該正極層及び当該負極層の間に配置される固体電解質層とを備える全固体電池であって、
前記固体電解質層は、バインダーとして、フッ化物系バインダーを含み、
前記固体電解質層は、当該固体電解質層の正極層との接触面から所定の深さまでの第1の領域と、当該固体電解質層の負極層との接触面から所定の深さまでの第3の領域と、当該第1の領域と当該第3の領域の中間に位置する第2の領域と、に分けられ、
前記第1の領域及び前記第3の領域のそれぞれの領域のバインダー含有量をW1とし、
前記第2の領域のバインダー含有量をW2としたとき、
W2に対するW1の比が、0.25≦W1/W2≦0.40を満たし、
前記固体電解質層の充填密度が95%以上であることを特徴とする全固体電池。
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