JP7010177B2 - 正極層の製造方法 - Google Patents
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Description
全固体電池の中でも全固体リチウムイオン電池は、リチウムイオンの移動を伴う電池反応を利用するためエネルギー密度が高いという点、また、正極と負極の間に介在する電解質として、有機溶媒を含む電解液に替えて固体電解質を用いるという点で注目されている。
また、非晶質のニオブ酸リチウムの結晶化を抑制するために、ニオブ酸リチウムの前駆体の加熱温度を低くし過ぎると、ニオブ酸リチウムの水分含有量が増加し、当該ニオブ酸リチウムを全固体電池の材料に用いた場合、ニオブ酸リチウムに含まれる水分が硫化物系固体電解質と反応し、硫化物系固体電解質が変質し、電池の出力が低下するという問題がある。
本開示は、上記実情に鑑み、電池に用いたときに当該電池の出力を向上させることができる正極層の製造方法を提供することを目的とする。
前記正極活物質粒子に、ニオブイオンとリチウムイオンとを含有する溶液を噴霧し、当該正極活物質粒子の表面に当該溶液を付着させる工程と、
前記溶液を乾燥させ、前記正極活物質粒子の表面に前記ニオブ酸リチウムの前駆体を形成させる工程と、
前記前駆体を表面に付着させた前記正極活物質粒子を200℃~300℃の温度で、1分以上60分以下の時間、加熱することにより前記複合活物質粒子を得る工程を有することを特徴とする正極層の製造方法を提供する。
前記正極活物質粒子に、ニオブイオンとリチウムイオンとを含有する溶液を噴霧し、当該正極活物質粒子の表面に当該溶液を付着させる工程と、
前記溶液を乾燥させ、前記正極活物質粒子の表面に前記ニオブ酸リチウムの前駆体を形成させる工程と、
前記前駆体を表面に付着させた前記正極活物質粒子を200℃~300℃の温度で、1分以上60分以下の時間、加熱することにより前記複合活物質粒子を得る工程を有することを特徴とする正極層の製造方法を提供する。
本開示によれば、ニオブ酸リチウムの前駆体を60分以下の時間加熱することにより、生成した非晶質のニオブ酸リチウムの結晶化の進行を抑制できる。結晶化したニオブ酸リチウムは、非晶質のニオブ酸リチウムと比較してリチウムイオン伝導度が低いことが知られている。そのため、本開示で用いるニオブ酸リチウムは、従来のニオブ酸リチウムと比較して、含有水分量が低く、且つ、リチウムイオン伝導度が高いと考えられる。そして、本開示で用いるニオブ酸リチウムを全固体電池の正極層の材料として用いることにより、電池の出力を向上することができると考えられる。
また、本開示によれば、ニオブ酸リチウムが、従来の5時間よりも短時間(10分以下)のニオブ酸リチウムの前駆体の加熱により得られるため、製造コストを低減することができる。
以下、各工程について順に説明する。
噴霧工程は、前記正極活物質粒子に、ニオブイオンとリチウムイオンとを含有する溶液を噴霧し、当該正極活物質粒子の表面に当該溶液を付着させる工程である。
ニオブイオンとリチウムイオンとを含有する溶液としては、ニオブのペルオキソ錯体とリチウムイオンとを含有する錯体溶液(以下、錯体溶液と称する場合がある)、ニオブイオンとリチウムイオンとを含有するアルコキシド溶液(以下、アルコキシド溶液と称する場合がある)等が挙げられ、製造コストを低減する観点から、錯体溶液が好ましい。なお、本開示においてニオブイオンは、錯イオンの状態であってもよい。
図1に、ニオブのペルオキソ錯体([Nb(O2)4]3-)の構造式を示す。
錯体溶液は、例えば、過酸化水素水、ニオブ酸、及び、アンモニア水を用いることにより透明溶液を作製した後、作製した透明溶液にリチウム化合物を添加することによって得られる水溶液等を挙げることができる。錯体溶液中のニオブ酸の含水率が変わっても、ニオブのペルオキソ錯体は合成可能なため、ニオブ酸の含水率は特に限定されない。ニオブのペルオキソ錯体を合成可能であれば、ニオブ酸及びアンモニア水の混合比率は特に限定されない。また、リチウム化合物としては、LiOH、LiNO3、Li2SO4等を例示することができる。
アルコキシド溶液は、例えば、エトキシリチウム粉末を脱水エタノールに溶解させた後、これを攪拌しながら、モル比でリチウム:ニオブ=1:1となる量のペンタエトキシニオブを加えることにより作製することができる。アルコキシド溶液に用いる溶媒としては、脱水エタノール、脱水プロパノール、脱水ブタノール等を例示することができる。アルコキシド溶液に含まれているリチウムイオンとニオブイオンとのモル比は、特に限定されないが、例えば、1:1であってもよい。
正極活物質の粒子の平均粒径(D50)は、例えば1nm以上100μm以下であることが好ましく、10nm以上30μm以下であることがより好ましい。
乾燥工程は、前記溶液を乾燥させ、前記正極活物質粒子の表面に前記ニオブ酸リチウムの前駆体を形成させる工程である。
乾燥工程により、正極活物質粒子の表面に付着させた溶液に含まれている、溶媒や水和水等の揮発成分を除去する。溶液は、乾燥後、ニオブ酸リチウムの前駆体となる。ニオブ酸リチウムの前駆体は、ニオブ酸リチウムの原料の混合物であってもよい。
ここで、溶液として、上記錯体溶液を用いた場合、錯体溶液に含まれている過酸化水素は、強力な酸化作用を有している。それゆえ、長時間に亘って錯体溶液を正極活物質粒子に接触させると、過酸化水素によって正極活物質粒子が浸食される虞があり、浸食された正極活物質粒子は劣化する。そこで、正極活物質粒子の劣化を抑制するため、正極活物質粒子に錯体溶液を噴霧することにより錯体溶液を正極活物質粒子の表面に付着させた直後に、正極活物質粒子の表面に存在している錯体溶液を乾燥してもよい。このような形態にすることにより、電池の反応抵抗を低減することが可能な複合活物質粒子を製造することが可能になる。
噴霧工程の直後に乾燥工程を行う方法としては、例えば、転動流動コーティング装置やスプレードライヤー等を用いる方法等が挙げられる。転動流動コーティング装置としては、パウレック社製のマルチプレックスや、フロイント産業株式会社製のフローコーター等を例示することができる。転動流動コーティング装置を用いる場合、1つの正極活物質粒子に着目すると、正極活物質粒子に錯体溶液が噴霧された直後に錯体溶液が乾燥され、その後、正極活物質粒子の表面に付着しているニオブ酸リチウムの前駆体の層の厚さが目的の厚さになるまで、正極活物質粒子へ向けた錯体溶液の噴霧、及び、正極活物質粒子に噴霧された錯体溶液の乾燥が繰り返される。
加熱工程は、前記前駆体を表面に付着させた前記正極活物質粒子を200℃~300℃の温度で、1分以上60分以下の時間、加熱することにより前記複合活物質粒子を得る工程である。
加熱工程により、正極活物質粒子と、当該正極活物質粒子の表面を被覆するニオブ酸リチウムを含む被覆層とを有する複合活物質粒子を得ることができる。
前駆体を所定の温度で所定の時間加熱することにより、非晶質のニオブ酸リチウムが生成される。そして、前駆体を所定の温度を超えて加熱すること、及び、所定の時間を超えて加熱することの少なくともいずれか一方により、生成した非晶質のニオブ酸リチウムの結晶化が進行すると考えられる。
加熱方法は特に限定されず、ホットプレートを用いる方法等が挙げられる。
加熱工程における加熱時の雰囲気は特に限定されないが、大気雰囲気であってもよいが、複合活物質粒子を、硫化物系固体電解質を含む全固体電池に用いた場合に当該硫化物系固体電解質が複合活物質粒子に含まれる水分と反応し変質することを抑制する観点から、真空雰囲気、乾燥空気雰囲気、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等が好ましい。
また、加熱工程では、加熱時間を1分以上とすることにより、溶液中の溶媒や水和水等の不純物(揮発成分)の残存量を低減することができる。
水和水はリチウムイオン伝導の妨げとなるため、この残存量を低減することにより、複合活物質粒子のリチウムイオン伝導度を向上させることが可能になる。
また、加熱工程では、加熱時間を60分以下にすることにより、前駆体の加熱により生成した非晶質のニオブ酸リチウムの結晶化を抑制することができる。
結晶化したニオブ酸リチウムは非晶質のニオブ酸リチウムよりもリチウムイオン伝導度が低いため、電池の反応抵抗増加の一因になる。
上記(a)~(c)の工程を経て正極活物質粒子と、当該正極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆するニオブ酸リチウムを含む被覆層と、を有する複合活物質粒子が得られる。
図2は、本開示の複合活物質粒子を説明する図である。図2では、1粒の複合活物質粒子を抽出し、且つ、この複合活物質粒子を簡略化して示している。便宜上、図2には、1つの正極活物質粒子の表面にニオブ酸リチウムを付着(被覆)させている形態を図示したが、本開示の複合活物質粒子は、当該形態に限定されない。本開示の複合活物質粒子は、複数の正極活物質粒子が集合した二次粒子の形態である正極活物質粒子の表面にニオブ酸リチウムを付着(被覆)させた形態であっても良い。
図2に示すように、複合活物質粒子20は、正極活物質粒子21と、当該正極活物質粒子21の表面を被覆するニオブ酸リチウムからなる被覆層22と、を有している。
被覆層の厚さは、下限が例えば、0.1nm以上であり、1nm以上であっても良い。一方、被覆層の厚さは、上限が例えば、100nm以下であり、20nm以下であっても良い。被覆層が正極活物質粒子の表面を被覆する面方向の被覆率は、例えば、70%以上であり、90%以上であっても良い。被覆率は、粒子の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像等を観測することにより算出してもよい。
例えば、複合活物質粒子と、後述する導電材及びバインダーを溶媒中に投入し、撹拌することにより、正極用スラリーを作製し、当該スラリーを正極集電体等の基板の一面上に塗布して乾燥させることにより、正極層が得られる。
溶媒は、例えば酢酸ブチル、ヘプタン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
正極集電体としては、電池の集電体として使用可能な公知の金属を用いることができる。そのような金属としては、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Cr、Zn、Ge、Inからなる群から選択される一又は二以上の元素を含む金属材料を例示することができる。
正極集電体の形態は特に限定されるものではないが、箔状が好ましい。
正極集電体等の基板の一面上に正極用スラリーを塗布する方法は、特に限定されず、ドクターブレード法、メタルマスク印刷法、静電塗布法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
また、正極層の形成方法の別の方法として、複合活物質粒子及び必要に応じ他の成分を含む正極合剤の粉末を加圧成形することにより正極層を形成してもよい。
本開示の正極層は、種々の電池の正極層として用いることができるが、電池の反応抵抗低減効果を顕著に発現するために、全固体電池に用いられることが好ましく、硫化物系固体電解質を含む全固体電池に用いられることがより好ましい。
本開示に用いられる全固体電池は、本開示の複合活物質粒子を含有する正極層を含む正極と、負極層を含む負極と、当該正極層及び当該負極層の間に配置される固体電解質層と、を備える。
本開示の全固体電池は、本開示の複合活物質粒子を含有した正極層を含む正極を備えていることにより、電池の反応抵抗を低減することができる。
図3に示すように、全固体電池100は、正極層12及び正極集電体14を含む正極16と、負極層13及び負極集電体15を含む負極17と、正極16と負極17の間に配置される固体電解質層11を備える。
正極は、少なくとも正極層と、正極集電体を有する。
正極層は、本開示の複合活物質粒子を含み、任意成分として、固体電解質、導電材、バインダーが含まれていてもよい。
正極層における固体電解質の含有量は特に限定されるものではない。
正極層における導電材の含有量は特に限定されるものではない。
正極の全体としての形状は特に限定されるものではないが、シート状が好ましい。この場合、正極の全体としての厚みは特に限定されるものではなく、目的とする性能に応じて、適宜決定すればよい。
固体電解質層は、少なくとも固体電解質を有する。
固体電解質は、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等が挙げられ、電池の出力を向上させる観点から、硫化物系固体電解質が好ましい。
硫化物系固体電解質としては、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、LiX-Li2S-SiS2、LiX-Li2S-P2S5、LiX-Li2O-Li2S-P2S5、LiX-Li2S-P2O5、LiX-Li3PO4-P2S5、Li3PS4等が挙げられる。なお、上記「Li2S-P2S5」の記載は、Li2SおよびP2S5を含む原料組成物を用いてなる材料を意味し、他の記載についても同様である。また、上記LiXの「X」は、ハロゲン元素を示す。さらに、原料組成物中にLiXは、1種含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。硫化物系固体電解質の具体例としては、10LiI-15LiBr-37.5Li3PS4、20LiI-80(75Li2S-25P2S5)等が挙げられる。なお、例示した硫化物系固体電解質の原料組成比はモル比である。
硫化物系固体電解質は、ガラスであってもよく、結晶材料であってもよく、ガラスセラミックスであってもよい。ガラスは、原料組成物(例えばLi2SおよびP2S5の混合物)を非晶質処理することにより得ることができる。非晶質処理としては、例えば、メカニカルミリングが挙げられる。メカニカルミリングは、乾式メカニカルミリングであっても良く、湿式メカニカルミリングであっても良いが、後者が好ましい。容器等の壁面に原料組成物が固着することを防止できるからである。また、ガラスセラミックスは、ガラスを熱処理することにより得ることができる。また、結晶材料は、例えば、原料組成物に対して固相反応処理することにより得ることができる。
酸化物系固体電解質としては、例えばLi6.25La3Zr2Al0.25O12、Li3PO4、Li3+xPO4-xNx(LiPON)等が挙げられる。
また、固体電解質の粒子の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、下限が0.5μm以上であることが好ましく、上限が2μm以下であることが好ましい。
負極は、負極層と負極集電体を有する。
負極層は、負極活物質を含む。
リチウム合金としては、LiSn、LiSi、LiAl、LiGe、LiSb、LiP、及びLiIn等が挙げられる。
Si合金としては、Li等の金属との合金等が挙げられ、その他、Sn、Ge、Alからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属との合金であってもよい。
なお、Siは、全固体電池を組み立てた後に行われる初期充電によって、Li等の金属と反応してアモルファス合金を形成する。そして、合金となった部分は、放電によってリチウムイオン等の金属イオンが放出された後にもアモルファス化されたままとなる。したがって、本開示においてSiを用いた負極層は、Siがアモルファス合金化された状態を含む。
負極活物質の形状については、特に限定されるものではないが、例えば粒子状、薄膜状とすることができる。
負極活物質が粒子である場合の当該粒子の平均粒径(D50)は、例えば1nm以上100μm以下であることが好ましく、10nm以上30μm以下であることがより好ましい。
負極集電体の形態は特に限定されるものではなく、箔状、メッシュ状等、種々の形態とすることができる。
外装体の形状としては、特に限定されないが、ラミネート型等を挙げることができる。
外装体の材質は、電解質に安定なものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、アクリル樹脂等の樹脂等が挙げられる。
全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、及び角型等を挙げることができる。
この場合、固体電解質材料の粉末、正極合剤の粉末、及び負極合剤の粉末を加圧成形する際のプレス圧は、通常1MPa以上600MPa以下程度である。
加圧方法としては、特に制限されないが、例えば、平板プレス、ロールプレス等を用いて圧力を付加する方法等が挙げられる。
本開示の全固体電池の製造方法の別の例としては、例えば、まず、固体電解質材料の粉末を加圧成形することにより固体電解質層を形成する。そして、正極集電体の一面上に正極用スラリーを塗布し、当該正極用スラリーを乾燥させることにより正極層を含む正極を得る。その後、負極集電体の一面上に負極用スラリーを塗布し、当該負極用スラリーを乾燥させることにより負極層を含む負極を得る。そして、正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層、負極集電体の順となるように固体電解質層を正極層と負極層の間に配置することにより全固体電池を得ることができる。
全固体電池の製造は、系内の水分をできるだけ除去した状態で行うとよい。例えば、各製造工程において、系内を減圧すること、系内を不活性ガス等の水分を実質的に含まないガスで置換すること等が有効と考えられる。
[正極活物質粒子の準備]
正極活物質粒子としてLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(日亜化学工業株式会社製)の粒子を準備した。
濃度30質量%の過酸化水素水870.4gを入れた容器へ、イオン交換水987.4g、及び、ニオブ酸(Nb2O5・3H2O(Nb2O5含水率72%))44.2gを添加した。次に、上記容器へ、濃度28質量%のアンモニア水87.9gを添加した。そして、アンモニア水を添加した後に容器内の内容物を十分に攪拌することにより、透明溶液を得た。さらに、得られた透明溶液に、水酸化リチウム・1水和物(LiOH・H2O)10.1gを加えることにより、ニオブのペルオキソ錯体及びリチウムイオンを含有する錯体溶液を得た。得られた錯体溶液における、Li及びNbのモル濃度は、何れも0.12mol/kgであった。
得られた錯体溶液2840g、及び、1000gの正極活物質粒子と、転動流動コーティング装置(MP-01、パウレック社製)とを用いて、正極活物質粒子に錯体溶液を噴霧し、且つ、これと並行して錯体溶液を乾燥することにより、ニオブ酸リチウムの前駆体を含む層を正極活物質粒子の表面に被覆した。なお、転動流動コーティング装置の運転条件は、吸気ガス:窒素、吸気温度:120℃、吸気風量:0.4m3/min、ロータ回転数:毎分400回転、噴霧速度:4.5g/minとした。
噴霧及び乾燥により得られた、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉末について、ホットプレートを用いて150℃で1分間加熱することにより、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2と、その表面に付着させたニオブ酸リチウムとを有する複合活物質粒子(比較例1の複合活物質粒子)を得た。
カールフィッシャー滴定法を用いて、複合活物質粒子の水分量を測定した。200℃に設定された加熱部で複合活物質粒子から放出される水分を、窒素ガスをキャリアとして、測定部にフローし計測した。測定時間は40分とした。結果を、表1に示す。
得られた比較例1の複合活物質粒子と硫化物系固体電解質(10LiI-15LiBr-37.5Li3PS4)とを、体積比で複合活物質粒子:硫化物系固体電解質=6:4となるように秤量し、これを、ヘプタンを入れた容器へと投入した。さらに、3質量%となる量の導電材(気相法炭素繊維、昭和電工株式会社製)及び、0.7質量%となる量のバインダー(ブチレンラバー、JSR株式会社製)を、ヘプタン等を入れた容器へと投入することにより、正極用混合物を作製した。
次いで、作製した正極用混合物を超音波ホモジナイザー(UH-50、株式会社エスエムテー製。以下において同じ。)で分散させることにより得た正極用スラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔の上面に塗工し、引き続き、100℃で30分間乾燥させることにより、アルミニウム箔の上面に正極層を形成した。次に、上面に正極層が形成されている状態のアルミニウム箔を1cm2の大きさに打ち抜くことにより、アルミニウム箔上に正極層を有する正極を得た。
一方、負極活物質(層状炭素)と硫化物系固体電解質(10LiI-15LiBr-37.5Li3PS4)とを、体積比で負極活物質:硫化物系固体電解質=6:4となるように秤量し、これを、ヘプタンを入れた容器へと投入した。さらに、1.2質量%となる量のバインダー(ブチレンラバー、JSR株式会社製)をヘプタンや負極活物質等を入れた容器へと投入することにより、負極用混合物を作製した。
次いで、作製した負極用混合物を超音波ホモジナイザーで分散させることにより得た負極用スラリーを、負極集電体としての銅箔の上面に塗工し、引き続き、100℃で30分間乾燥させることにより、銅箔の上面に負極層を形成した。
次に、上面に負極層が形成されている状態の銅箔を1cm2の大きさに打ち抜くことにより、銅箔上に負極層を有する負極を得た。
次に、内径断面積1cm2の筒状セラミックスに、硫化物系固体電解質(10LiI-15LiBr-37.5Li3PS4)64.8mgを入れ、表面を平滑にしてから98MPaでプレスすることにより、固体電解質層を形成した。
その後、この固体電解質層が正極層と負極層との間に配置されるように、正極及び負極を筒状セラミックスに入れ、421.4MPaでプレスした後、正極側、及び、負極側にステンレス棒を入れ、これを98MPaで拘束することにより、比較例1の全固体電池を作製した。
上記[加熱工程]において、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉末の加熱時間を10分としたこと以外は、比較例1と同様に、複合活物質粒子を作製し、当該複合活物質粒子の水分量を測定し、その後、比較例1と同様に、全固体電池を作製した。
上記[加熱工程]において、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉末の加熱時間を30分としたこと以外は、比較例1と同様に、複合活物質粒子を作製し、当該複合活物質粒子の水分量を測定し、その後、比較例1と同様に、全固体電池を作製した。
上記[加熱工程]において、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉末の加熱温度を200℃としたこと以外は、比較例1と同様に、複合活物質粒子を作製し、当該複合活物質粒子の水分量を測定し、その後、比較例1と同様に、全固体電池を作製した。
上記[加熱工程]において、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉末の加熱温度を200℃、加熱時間を10分としたこと以外は、比較例1と同様に、複合活物質粒子を作製し、当該複合活物質粒子の水分量を測定し、その後、比較例1と同様に、全固体電池を作製した。
上記[加熱工程]において、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉末の加熱温度を200℃、加熱時間を30分としたこと以外は、比較例1と同様に、複合活物質粒子を作製し、当該複合活物質粒子の水分量を測定し、その後、比較例1と同様に、全固体電池を作製した。
上記[加熱工程]において、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉末の加熱温度を200℃、加熱時間を60分としたこと以外は、比較例1と同様に、複合活物質粒子を作製し、当該複合活物質粒子の水分量を測定し、その後、比較例1と同様に、全固体電池を作製した。
上記[加熱工程]において、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉末の加熱温度を300℃としたこと以外は、比較例1と同様に、複合活物質粒子を作製し、当該複合活物質粒子の水分量を測定し、その後、比較例1と同様に、全固体電池を作製した。
上記[加熱工程]において、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉末の加熱温度を300℃、加熱時間を10分としたこと以外は、比較例1と同様に、複合活物質粒子を作製し、当該複合活物質粒子の水分量を測定し、その後、比較例1と同様に、全固体電池を作製した。
上記[加熱工程]において、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉末の加熱温度を300℃、加熱時間を30分としたこと以外は、比較例1と同様に、複合活物質粒子を作製し、当該複合活物質粒子の水分量を測定し、その後、比較例1と同様に、全固体電池を作製した。
上記[加熱工程]において、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉末の加熱温度を200℃、加熱時間を300分としたこと以外は、比較例1と同様に、複合活物質粒子を作製し、その後、比較例1と同様に、全固体電池を作製した。比較例4の複合活物質粒子については水分量を測定しなかった。
上記[加熱工程]において、正極活物質粒子と、該正極活物質粒子の表面に形成されたニオブ酸リチウムの前駆体を含む層とを有する粉末の加熱温度を200℃、加熱時間を300分としたこと以外は、比較例1と同様に、複合活物質粒子を作製し、その後、正極、負極、及び固体電解質層に用いた硫化物系固体電解質を20LiI-80(75Li2S-25P2S5)に変更したこと以外は、比較例1と同様に、全固体電池を作製した。比較例5の複合活物質粒子については水分量を測定しなかった。
上述の方法で作製した実施例5の全固体電池、及び、比較例4~5の全固体電池のそれぞれを、電圧4.55Vまで充電し、次いで2.5Vまで放電した後に、3.6Vまで充電し、3.6Vにおいて交流インピーダンス測定を行った。そして、ナイキストプロット(Nyquistプロット)により得られた円弧から、各全固体電池の反応抵抗[Ω・cm2]を特定した。小数第3位を四捨五入することによって得られる反応抵抗の値を、表1に示す。
上述の方法で作製した実施例1~7の全固体電池、及び、比較例1~4の全固体電池のそれぞれを、開回路電圧(OCV)3.66V、カットオフ電圧2.5Vの条件で、各全固体電池を上記開回路電圧に調整後、定電力放電法で、5秒間で放電可能な最大の電力値を測定し、当該電力値を各全固体電池の電池出力とした。結果を、表1に示す。
また、比較例4の全固体電池は、実施例1~4の全固体電池と比較して、電池出力が低い。また、比較例4の全固体電池は、実施例5の全固体電池と比較して反応抵抗が高い。これは、ニオブ酸リチウムの前駆体を表面に付着させた正極活物質粒子を長時間加熱したことにより、非晶質のニオブ酸リチウムの結晶化が促進され、リチウムイオン伝導度の低いニオブ酸リチウムが得られたためである。
また、実施例5の全固体電池は、比較例5の全固体電池と比較して反応抵抗が顕著に低い。そのため、本開示の製造方法により得られる正極層を備える全固体電池は、従来の正極層を備える全固体電池と比較して、全固体電池の反応抵抗を低減することができることが実証された。
なお、表1に示すように、実施例7の複合活物質粒子は実施例4の複合活物質粒子よりも水分量が少ない。そのため、300℃で60分間、ニオブ酸リチウムの前駆体を表面に付着させた正極活物質粒子を加熱して得られた複合活物質粒子を正極層に用いた全固体電池は、実施例4の全固体電池と同等の電池出力が得られると推定される。
12 正極層
13 負極層
14 正極集電体
15 負極集電体
16 正極
17 負極
20 複合活物質粒子
21 正極活物質粒子
22 被覆層
100 全固体電池
Claims (1)
- 正極活物質粒子と、当該正極活物質粒子の表面の少なくとも一部を被覆するニオブ酸リチウムを含む被覆層と、を有する複合活物質粒子を含有する正極層の製造方法であって、
前記正極活物質粒子に、ニオブイオンとリチウムイオンとを含有する溶液を噴霧し、当該正極活物質粒子の表面に当該溶液を付着させる工程と、
前記溶液を乾燥させ、前記正極活物質粒子の表面に前記ニオブ酸リチウムの前駆体を形成させる工程と、
前記前駆体を表面に付着させた前記正極活物質粒子を300℃の温度で、1分以上10分以下の時間、加熱することにより前記複合活物質粒子を得る工程を有することを特徴とする正極層の製造方法。
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