JP2017091913A - 硫化物全固体リチウム電池の複合正極活物質の製造方法 - Google Patents

硫化物全固体リチウム電池の複合正極活物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】抵抗が低減された複合正極活物質を提供する。【解決手段】転動流動コーティング装置を用いて、LixMyPOz(MはFe、Mn、Co、Niから選ばれる少なくとも1種であり、0.5≦x≦1.5、0.5≦y≦1.5、2≦z≦7である。)で示されるオリビン構造を有する正極活物質の二次粒子に、ニオブ酸リチウムの前駆体溶液を、1g/min未満の速度でスプレー噴霧する工程を備える、硫化物全固体リチウム電池の複合正極活物質の製造方法とする。【選択図】なし

Description

本発明は、硫化物全固体リチウム電池の複合正極活物質の製造方法に関する。
特許文献1〜3に開示されているように、転動流動コーティング装置を用いて、正極活物質の二次粒子に、ニオブ酸リチウムの前駆体溶液を噴霧してコートし、硫化物全固体リチウム電池の複合正極活物質を製造する方法が知られている。
国際公開第2012/160707号 特開2013−037950号公報 特開2013−243107号公報
本発明者らが鋭意研究したところ、特許文献1〜3に開示された条件にて、転動流動コーティング装置を用いて、オリビン型正極活物質の二次粒子にニオブ酸リチウムの前駆体溶液を噴霧して、硫化物全固体リチウム電池の複合正極活物質を製造した場合において、新たな課題を見出した。すなわち、当該複合正極活物質を硫化物全固体リチウム電池の正極活物質として適用した場合、転動流動コーティング装置におけるスプレー噴霧条件に起因して、電池抵抗が高くなることを知見した。
そこで本発明は、抵抗が低減された複合正極活物質の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を採る。すなわち、
本発明は、転動流動コーティング装置を用いて、LiPO(MはFe、Mn、Co、Niから選ばれる少なくとも1種であり、0.5≦x≦1.5、0.5≦y≦1.5、2≦z≦7である。)で示されるオリビン構造を有する正極活物質の二次粒子に、ニオブ酸リチウムの前駆体溶液を、1g/min未満の速度でスプレー噴霧する工程を備える、硫化物全固体リチウム電池の複合正極活物質の製造方法である。
本発明によれば、抵抗が低減された複合正極活物質の製造方法を提供することができる。転動流動コーティング装置におけるスプレー噴霧の速度を低速とすることで、正極活物質二次粒子の空隙の内部に前駆体溶液を浸透させることができ、空隙の内部にリチウムイオン伝導性のニオブ酸リチウムを配置できたものと推測される。
実施例1に係る複合正極活物質の断面TEM−EDXマッピングを示す図である。
1.硫化物全固体リチウム電池の複合正極活物質の製造方法
本発明は、硫化物全固体リチウム電池の複合正極活物質の製造方法であって、転動流動コーティング装置を用いて、LiPO(MはFe、Mn、Co、Niから選ばれる少なくとも1種であり、0.5≦x≦1.5、0.5≦y≦1.5、2≦z≦7である。)で示されるオリビン構造を有する正極活物質の二次粒子に、ニオブ酸リチウムの前駆体溶液を、1g/min未満の速度でスプレー噴霧する工程を備えることを特徴とする。
1.1.転動流動コーティング装置
転動流動コーティング装置は、装置内に活物質粉末を収容・配置可能とされており、さらに、装置内に流動ガスを導入するための導入口と、装置内に前駆体溶液を噴霧するためのスプレーノズルとを備えている。本発明では、後述の二次粒子を装置内に配置したうえで、導入口から装置内に導入された流動ガスによって、当該二次粒子を巻き上げて、装置内部で二次粒子を循環させる。そして、二次粒子を循環させつつ、スプレーノズルから二次粒子へと前駆体溶液が噴霧される。このような転動流動コーティング装置自体は公知であり、例えば、パウレック社製MP−01を用いることができる。
1.2.オリビン構造を有する正極活物質の二次粒子
本発明においては、LiPO(MはFe、Mn、Co、Niから選ばれる少なくとも1種であり、0.5≦x≦1.5、0.5≦y≦1.5、2≦z≦7)で示されるオリビン構造を有する正極活物質の二次粒子を用いる。正極活物質の組成は、活物質−硫化物固体電解質界面においてMが硫化物固体電解質と反応して正極から脱離し、界面にLiPO層が残って保護層として機能する構成が適しており、中でもLiFePOで表されるFe系オリビン化合物が好ましい。
正極活物質の二次粒子は、正極活物質の一次粒子の集合体(凝集体)である。一次粒子の粒子径は50nm以上1μmであることが好ましい。二次粒子は一次粒子が2個以上1000個以下凝集してなるものである。二次粒子の粒子径は特に限定されるものではないが、例えば、0.1μm以上100μm以下とすることができる。好ましくは0.5μm以上10μm以下である。
1.3.ニオブ酸リチウムの前駆体溶液
本発明においては、上述の二次粒子に、ニオブ酸リチウム(LiαNbβγ)の前駆体溶液をスプレー噴霧する。前駆体溶液には、リチウム源とニオブ源が溶解されていればよい。ニオブ酸リチウムの前駆体溶液自体は公知である。例えば、上記の特許文献1〜3に記載されたような前駆体溶液を用いればよい。具体的には、ニオブアルコキシドとリチウムアルコキシドとをアルコールなどの溶媒に溶解させた溶液が挙げられる。前駆体溶液中のリチウム源とニオブ源とのモル比は、特に限定されるものではないが、リチウム1モルに対して、ニオブ1モルとなるようにすることが好ましい。これにより、高リチウムイオン伝導性のLiNbOを生成し易くなる。
1.4.スプレー噴霧条件
本発明においては、上述の二次粒子に、上述の前駆体溶液をスプレー噴霧する際、噴霧速度を1g/min未満の低速度としたことに一つの特徴がある。噴霧速度は好ましくは0.2g/min以下である。尚、噴霧速度以外の条件については、従来の条件と同様とすることができる。例えば、転動流動コーティング装置内に100g以上1000g以下の上記二次粒子を設置し、導入口から装置内へと流動ガス(特に限定されないが、例えば空気や不活性ガス等)を30℃以上100℃以下の温度で0.1m/min以上3m/min以下の流量にて導入し、二次粒子を巻き上げて循環させる。装置内で二次粒子を循環させながら、スプレーノズルから1g/min未満の低速度で上記前駆体溶液をスプレー噴霧し、二次粒子に前駆体溶液を付着させる。噴霧時間はコーティングすべき前駆体溶液の量によって調整可能であるが、例えば、30分以上20時間以下とすることが好ましい。
尚、スプレー噴霧の速度については、以下のように規定することもできる。すなわち、本発明において、転動流動コーティング装置における、正極活物質二次粒子1kg当たりの前駆体溶液のスプレー噴霧速度は、5g/min未満とすることが好ましく、2g/min以下とすることがより好ましい。言うまでもないが、スプレー噴霧すべき正極活物質二次粒子の量が10kgである場合は、スプレー噴霧速度を上記の10倍とすればよい。
従来においては、正極活物質粒子の表面全体をニオブ酸リチウムで「コート」することが知られていた。しかしながら、本発明では、正極活物質粒子の表面全体を「コート」することは必ずしも必要ない。すなわち、本発明は、正極活物質の二次粒子の空隙の内部にリチウムイオン伝導性のニオブ酸リチウム(LiαNbβγ)を配置することで、抵抗を低減する趣旨である。上述したように、本発明においては、転動流動コーティング装置におけるスプレー噴霧の速度を低速とすることが重要である。これにより、二次粒子の空隙の内部に前駆体溶液を供給し易くなる(前駆体溶液が空隙の内部に適切に浸透し易くなる)と考えられる。空隙の内部に供給された前駆体溶液は、任意に加熱工程を経て、ニオブ酸リチウム(LiαNbβγ)となる。
1.5.加熱工程
上記二次粒子に上記前駆体溶液をスプレー噴霧した後、好ましくは加熱工程を経て、二次粒子の表面にニオブ酸リチウムを生成させることができる。加熱工程の条件は、特許文献1〜3に開示されたような従来の条件と同様とすればよい。例えば、不活性雰囲気下、300℃以上500℃以下で0.5時間以上48時間以下加熱すればよい。
1.6.硫化物全固体リチウム電池
本発明により製造される複合正極活物質は、硫化物全固体リチウム電池の正極活物質として使用されるものである。硫化物全固体リチウム電池とは後述するように、電解質として硫化物固体電解質を含むとともに、固体物質のみからなり、正極−負極間のリチウムイオンの伝導によって放電する電池である。電池は一次電池であっても二次電池であっても良いが、二次電池とすることが好ましい。
以上の通り、本発明により製造される複合正極活物質は、二次粒子の空隙の内部にニオブ酸リチウムを配置することができると考えられ、当該空隙の内部においてイオン伝導性を確保することができ、抵抗を低減することができる。
2.正極合剤の製造方法
本発明は、正極合剤の製造方法としての側面も有する。すなわち、上記の複合正極活物質の製造方法により製造された複合正極活物質と、硫化物固体電解質とを混合する工程を備える、正極合剤の製造方法である。正極合剤の製造方法においては、複合正極活物質と硫化物固体電解質とに加えてさらにバインダーや導電助剤を混合してもよい。
硫化物固体電解質は、硫化物全固体リチウム電池に適用され得る硫化物であれば、その種類は特に限定されるものではない。例えば、Li及びSを含むリチウムイオン伝導性固体電解質を用いることができる。中でも、Li、S及びPを含むものが好ましい。硫化物固体電解質としては、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P、LiS−P、LiPS等を例示することができる。バインダーとしては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を用いることができる。導電助剤としてはアセチレンブラックやケッチェンブラック等の炭素材料やニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料を用いることができる。正極合剤における複合正極活物質、硫化物固体電解質、バインダー及び導電助剤の含有量等は、従来と同様とすればよい。
尚、上述した通り、本発明においては、複合正極活物質において、表面全体がニオブ酸リチウムでコートされている必要はない。それゆえ、正極合剤において、複合正極活物質のLiPOと硫化物固体電解質とが直接接触し得る。この場合であっても、本発明では、複合正極活物質の空隙の内部にニオブ酸リチウムが配置されているため、抵抗低減効果が奏される。或いは、活物質−硫化物固体電解質界面においてMが硫化物固体電解質と反応して正極から脱離し、界面にLiPO層が残って保護層として機能することで、当該界面における高抵抗層の生成を抑制することができる。
3.硫化物全固体リチウム電池の製造方法
本発明は、硫化物全固体リチウム電池の製造方法としての側面も有する。すなわち、上記の正極合剤の製造方法により製造された正極合剤を用いて正極を作製する工程と、少なくとも硫化物固体電解質を用いて硫化物固体電解質層を作製する工程と、負極合剤を用いて負極を作製する工程と、作製した正極、硫化物固体電解質層及び負極をこの順に一体化する工程とを備える、硫化物全固体リチウム電池の製造方法である。
正極は、例えば、上記の正極合剤を溶媒に投入した後、これを、超音波ホモジナイザー等を用いて分散させることにより作製したスラリー状の正極合剤組成物を、正極集電体の表面に塗工し、その後、乾燥する過程を経て、作製することができる。このような湿式法以外に、正極合剤と正極集電体とを乾式成形することによって正極を作製することも可能である。或いは、これら以外の公知の方法をいずれも適用できる。正極集電体の構成材料としては、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Cr、Zn、Ge、Inからなる群から選択される一又は二以上の元素を含む金属材料を例示することができる。正極集電体の形態は特に限定されるものではない。箔状、メッシュ状等、種々の形態とすることができる。
硫化物固体電解質層は、上記の硫化物固体電解質と任意に上述のバインダーとを混合して成形することで容易に作製可能である。硫化物固体電解質層の成形は、乾式法、湿式法のいずれであってもよい。公知の方法をいずれも採用できる。
負極は、負極合剤を用いて正極と同様の方法にて容易に作製可能である。負極合剤には、負極活物質と任意に固体電解質とバインダーと導電助剤とが含まれている。これらは、従来公知のものを用いればよい。
正極、硫化物固体電解質及び負極をこの順に一体化する方法としては、従来の方法を採用すればよい。例えば、各層を重ね合わせたうえでプレスすることによって一体化することができる。
本発明により製造される硫化物全固体リチウム電池は、正極に活物質として上述の複合正極活物質が含まれているため、電池全体としての抵抗を低減することができる。
1.複合正極活物質の作製、硫化物全固体リチウム電池の作製
<実施例1>
(複合正極活物質の作製)
転動流動コーティング装置(パウレック社製MP−01)を用いて、正極活物質の二次粒子に、ニオブ酸リチウムの前駆体溶液を噴霧、浸透させた。正極活物質の二次粒子としては、LiFePOの一次粒子(粒子径50〜1μm)が凝集し約10μmの二次粒子となったものを用いた。前駆体溶液としては、ニオブエトキシドとリチウムエトキシドとを、モル比でLi:Nb=1:1となるような組成にて、脱水エタノールに溶解させたものを用いた。
転動流動コーティング装置における噴霧条件は下記の通りとした。すなわち、装置内に、正極活物質の二次粒子500gを設置し、流動ガスとして0.25m/分、50℃の乾燥空気を導入して、二次粒子を装置内で巻き上げて循環させた。二次粒子を循環させながら、スプレーノズルから所定の噴霧速度にて前駆体溶液をスプレー噴霧することで、前駆体を付着させた複合正極活物質を得た。噴霧時の狙いコート膜厚は2nmとした。その後、電気炉にて、大気中で、300℃にて10時間、空気雰囲気で加熱することで、実施例1に係る複合正極活物質を得た。
尚、上記二次粒子は、多孔質な二次粒子であるため、下記表1に示すように、従来のLiCoOへの処理に比べて、転動流動コーティング装置におけるスプレー速度を下げて処理することで、二次粒子表面へのコートではなく、二次粒子の空隙の内部に前駆体を浸透させるものとした。
(硫化物全固体リチウム電池の作製)
上記の複合正極活物質と硫化物固体電解質(LiS−P)とを体積比50:50で混合し、正極合剤を作製した。また、天然黒鉛と硫化物固体電解質とを体積比50:50で混合し、負極合剤を作製した。正極合剤を20mg、硫化物固体電解質を50mg、負極合剤20mgを順に積層・一体化し、硫化物全固体リチウム電池を作製した。
<比較例1>
複合正極活物質の作製時、スプレー噴霧の速度を1g/minとしたこと以外は実施例1と同様にして複合正極活物質を作製し、硫化物全固体リチウム電池を作製した。
<比較例2>
正極活物質の二次粒子に対して前駆体溶液のスプレー噴霧を行わず、当該正極活物質の二次粒子をそのまま用いて、実施例1と同様の方法にて硫化物全固体リチウム電池を作製した。
2.硫化物全固体リチウム電池の抵抗測定
作製した硫化物全固体リチウム電池について、1.5V−4Vにて60℃にて20サイクル充放電を行った後、SOCを60%とし、3Cレートで10秒放電した時の過電圧から電池抵抗を求めた。結果を下記表2に示す。
表2の結果から明らかなように、実施例1は比較例1、2に比べて、電池抵抗を飛躍的に低減することができた。転動流動コーティング装置におけるスプレー噴霧の速度を低速とすることで、正極活物質二次粒子の空隙の内部に前駆体溶液を供給することができ、当該空隙における抵抗を低減できたものと考えられる。一方、スプレー速度が大きいと、処理後の粉末状態が悪く、均一にコートできなかったか、或いは、前駆体溶液が二次粒子の空隙の内部に適切に浸み込んで行かなかったものと考えられ、これが抵抗増加に繋がったものと考えられる。実施例1、比較例1、2の結果から、スプレー速度が1g/min未満であれば、比較例1よりも電池抵抗を低減することができると言える。
3.TEM観察
実施例1に係る硫化物全固体リチウム電池を解体して断面の切り出しを行い、正極における複合正極活物質と硫化物固体電解質との界面部分について、TEM−EDXマッピングを行った。結果を図1に示す。
図1に示すように、LiFePO粒子の周りにNb元素が存在していることが分かる。すなわち、前駆体溶液をスプレー噴霧することで、浸透圧により、正極活物質二次粒子の空隙の内部に前駆体溶液が浸み込み、空隙の内部にニオブ酸リチウム相が形成されたものと考えられる。このように、空隙の内部に存在するニオブ酸リチウムがリチウムイオン伝導相として働くことで、電池抵抗の低減に寄与したものと考えられる。
本発明により製造される複合正極活物質は、硫化物全固体リチウム電池の正極活物質として好適に利用できる。

Claims (1)

  1. 転動流動コーティング装置を用いて、
    LiPO(MはFe、Mn、Co、Niから選ばれる少なくとも1種であり、0.5≦x≦1.5、0.5≦y≦1.5、2≦z≦7である。)で示されるオリビン構造を有する正極活物質の二次粒子に、
    ニオブ酸リチウムの前駆体溶液を、
    1g/min未満の速度でスプレー噴霧する工程を備える、
    硫化物全固体リチウム電池の複合正極活物質の製造方法。
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