JP7259639B2 - 全固体電池 - Google Patents

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Description

本開示は、全固体電池に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。
電池の中でもリチウム二次電池は、金属の中で最大のイオン化傾向を持つリチウムを負極として用いるため、正極との電位差が大きく、高い出力電圧が得られるという点で注目されている。
また、全固体電池は、正極と負極の間に介在する電解質として、有機溶媒を含む電解液に替えて固体電解質を用いるという点で注目されている。
特許文献1には、負極集電体を被覆し、充電時にリチウム合金層を介して金属リチウムが析出可能な被覆層と、を備えることを特徴とする、全固体型二次電池用負極が開示され、被覆層には亜鉛を含むことが記載されている。
特許文献2には、表面に誘電体を有し、前記誘電体の間から前記表面の少なくとも一部が露出している、リチウム二次電池用集電体が開示され、前記誘電体の間から露出する露出面の面積は、前記表面の面積の30%以上であり、前記誘電体はBaTiOを有し、電解液として非水電解質溶液を用いることが記載されている。
特開2018-129159号公報 特開2018-170128号公報
特許文献2に記載の技術を全固体電池に適用した場合、集電体の露出面を有するため集電体と固体電解質層との接触性が悪くなり、集電体の露出面からは金属リチウムが析出し難く、結果として固体電解質層と接触している誘電体の部分に電流が集中しLiデンドライトが発生し、不可逆容量が大きくなり、電池の充放電効率が低下するという問題がある。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、充放電効率が高い全固体電池を提供することを主目的とする。
本開示においては、負極の反応として金属リチウムの析出-溶解反応を利用した全固体電池であって、
前記全固体電池の満充電時において、負極集電体と、負極層と、Li-Ba-TiO複合酸化物を含む保護層と、固体電解質層と、正極層と、をこの順に有し、
前記Li-Ba-TiO複合酸化物中のリチウム元素の元素比率が0.2atomic%以上3.6atomic%以下であることを特徴とする全固体電池を提供する。
本開示は、充放電効率が高い全固体電池を提供することができる。
本開示の全固体電池の一例を示す断面模式図である。 各評価用電池の平均充放電効率を示すグラフである。
本開示においては、負極の反応として金属リチウムの析出-溶解反応を利用した全固体電池であって、
前記全固体電池の満充電時において、負極集電体と、負極層と、Li-Ba-TiO複合酸化物を含む保護層と、固体電解質層と、正極層と、をこの順に有し、
前記Li-Ba-TiO複合酸化物中のリチウム元素の元素比率が0.2atomic%以上3.6atomic%以下であることを特徴とする全固体電池を提供する。
本開示において、リチウム二次電池とは、負極活物質に金属リチウム及びリチウム合金の少なくともいずれか一方を用い、負極の反応として金属リチウムの析出-溶解反応を利用した電池をいう。また、本開示において負極とは、負極層を含むものを意味する。
本開示において、全固体電池の満充電時とは、全固体電池の充電状態値(SOC:State of Charge)が100%の状態の時を意味する。SOCは、電池の満充電容量に対する充電容量の割合を示すものであり、満充電容量がSOC100%である。
SOCは、例えば、全固体電池の開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)から推定してもよい。
全固体電池において、負極層に金属Liを用いた場合、Liは高い反応性(還元力)を示すため、硫化物系固体電解質(SE)と反応して高抵抗層が生成する。
例えば、全固体電池のサイクル試験中に固体電解質層と負極層との間に高抵抗層が発生し、全固体電池の充放電効率が低下し、電池寿命が速く尽きるという問題がある。
上記問題を解決するために負極集電体上にZnOを含むZnO層を形成した場合、当該ZnO層を保護層として備える全固体電池は、1~3サイクル程度の比較的初期の段階における充放電効率が低いという問題がある。
全固体電池の充放電効率が低いのは、以下の理由によると考えられる。
全固体電池の初回充電時にリチウムイオンがZnO層を通過して負極集電体上に金属Liが析出する。そして、保護層に含まれるZnOと、析出した金属Liとの界面で合金化反応が進行し、Li-Zn-O複合酸化物が生成し、固体電解質層と析出した金属Liとの間に保護層であるLi-Zn-O複合酸化物層が形成される。
この時、Li-Zn-O複合酸化物層内に多量のリチウム元素が含まれるため、全固体電池の不可逆容量が大きくなり、その結果、全固体電池の充放電効率が低下すると考えられる。
本研究者らは、負極集電体と固体電解質層との間にLi-Ba-TiO複合酸化物を含む保護層を配置することで充放電効率が高い全固体電池を提供することができることを明らかにした。
Li-Ba-TiO複合酸化物は、Li伝導体であり、Li-Ba-TiO複合酸化物層が固体電解質層と析出した金属Liとの直接接触を防ぐように配置されることにより、固体電解質層と析出した金属Liとの界面での金属Liによる固体電解質の還元分解を抑制する保護層として働き、且つ、当該Li-Ba-TiO複合酸化物を含む保護層中に含まれるリチウム元素の元素比率が同じ厚みのLi-Zn-O複合酸化物を含む保護層と比較して少ないため、全固体電池の不可逆容量が少なく、全固体電池の充放電効率が高い。
図1は、本開示の満充電時の全固体電池の一例を示す断面模式図である。
図1に示すように、全固体電池100は、負極集電体11と固体電解質層12と正極層13と正極集電体14をこの順に備え、負極集電体11と固体電解質層12との間に負極集電体11側から順に負極層15とLi-Ba-TiO複合酸化物を含む保護層16を備える。なお、負極層15が金属リチウムからなる場合、初回充電前や完全放電後の全固体電池100は、負極層15が溶解して消失していてもよい。
[負極集電体]
負極集電体の材料は、Liと合金化しない材料であってもよく、例えばSUS、銅、及び、ニッケル等を挙げることができる。負極集電体の形態としては、例えば、箔状、及び、板状等を挙げることができる。負極集電体の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば、円状、楕円状、矩形状、及び、任意の多角形状等を挙げることができる。また、負極集電体の厚さは、形状によって異なるものであるが、例えば1μm~50μmの範囲内であり、5μm~20μmの範囲内であってもよい。
[負極層]
負極層は、負極活物質を含む。
負極活物質としては、金属リチウム(Li)及びリチウム合金等が挙げられ、リチウム合金としては、Li-Au、Li-Mg、Li-Sn、Li-Si、Li-Al、Li-B、Li-C、Li-Ca、Li-Ga、Li-Ge、Li-As、Li-Se、Li-Ru、Li-Rh、Li-Pd、Li-Ag、Li-Cd、Li-In、Li-Sb、Li-Ir、Li-Pt、Li-Hg、Li-Pb、Li-Bi、Li-Zn、Li-Tl、Li-Te、及びLi-At等が挙げられる。負極層には負極活物質として金属リチウム又はリチウム合金が主成分として含まれていれば、その他、従来公知の負極活物質が含まれていてもよい。本開示において、主成分とは、全固体電池の満充電時の負極層の総質量を100質量%としたとき50質量%以上含まれる成分を意味する。
負極層の厚みは、特に限定されないが、全固体電池の満充電時において30nm以上5000nm以下であってもよい。
本開示においては、例えば全固体電池の初回充電により、負極活物質として金属リチウムを析出させてなる負極層を設けても良い。
[保護層]
保護層は、Li-Ba-TiO複合酸化物を含み、負極集電体と固体電解質層との間に配置される層であり、全固体電池の満充電時には負極層と固体電解質層との間に配置されていてもよい。
保護層が負極集電体と固体電解質層との間に配置されることにより、保護層が固体電解質層と析出した金属Liとの直接接触を防ぎ、析出した金属Liによる固体電解質の還元分解を抑制し、且つ、Li-Ba-TiO複合酸化物を含む保護層中に含まれるリチウム元素の元素比率が同じ厚みのLi-Zn-O複合酸化物を含む保護層と比較して少ないため、全固体電池の不可逆容量が少なく、全固体電池の充放電効率が高い。
Li-Ba-TiO複合酸化物は、リチウム元素とバリウム元素とチタン元素と酸素元素を所定の割合で含むものであれば特に限定されない。
Li-Ba-TiO複合酸化物中のリチウム元素の元素比率は、0.2atomic%以上3.6atomic%以下であってもよい。Li-Ba-TiO複合酸化物中のリチウム元素の元素比率は、例えば、保護層の原料層であるBaTiO層の厚みを制御することによって制御することができる。
Li-Ba-TiO複合酸化物中の元素比率は、誘導結合プラズマ(ICP)分析又はX線光電子分光法(XPS)によりLi-Ba-TiO複合酸化物の解析を行うことにより算出することができる。また、Li-Ba-TiO複合酸化物中の元素比率は、Li-Ba-TiO複合酸化物中に含まれる元素の原子量と、原料に対するLi-Ba-TiO複合酸化物の質量の変化量から算出することもできる。
保護層の形成方法は特に限定されず、例えば、電子ビーム蒸着装置を用いて、負極集電体の少なくとも一面上又は固体電解質層の少なくとも一面上に保護層の原料としてBaTiOを蒸着してBaTiOを含むBaTiO層(原料層)を形成し、その後の前駆体電池の充電により、正極層から移動してきたリチウムイオンとBaTiOとを反応させ、BaTiOをLi-Ba-TiO複合酸化物にして保護層としてもよい。
BaTiO層の厚みは、特に限定されないが30nm以上100nm以下であってもよい。
保護層の形成方法の別の例としては、電子ビーム蒸着装置を用いて、負極集電体の少なくとも一面上又は固体電解質層の少なくとも一面上にLi-Ba-TiO複合酸化物を蒸着して保護層としてもよい。
[固体電解質層]
固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含む。
固体電解質層に含有させる固体電解質としては、全固体電池に使用可能な公知の固体電解質を適宜用いることができ、酸化物系固体電解質、及び硫化物系固体電解質等が挙げられる。
硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiS-SiS、LiX-LiS-SiS、LiX-LiS-P、LiX-LiO-LiS-P、LiX-LiS-P、LiX-LiPO-P、及びLiPS等が挙げられる。なお、上記「LiS-P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる材料を意味し、他の記載についても同様である。また、上記LiXの「X」は、ハロゲン元素を示す。上記LiXを含む原料組成物中にLiXは1種又は2種以上含まれていてもよい。LiXが2種以上含まれる場合、2種以上の混合比率は特に限定されるものではない。
硫化物系固体電解質における各元素のモル比は、原料における各元素の含有量を調整することにより制御できる。また、硫化物系固体電解質における各元素のモル比や組成は、例えば、ICP発光分析法で測定することができる。
硫化物系固体電解質は、硫化物ガラスであってもよく、結晶化硫化物ガラス(ガラスセラミックス)であってもよく、原料組成物に対する固相反応処理により得られる結晶質材料であってもよい。
硫化物系固体電解質の結晶状態は、例えば、硫化物系固体電解質に対してCuKα線を使用した粉末X線回折測定を行うことにより確認することができる。
硫化物ガラスは、原料組成物(例えばLiSおよびPの混合物)を非晶質処理することにより得ることができる。非晶質処理としては、例えば、メカニカルミリングが挙げられる。
ガラスセラミックスは、例えば、硫化物ガラスを熱処理することにより得ることができる。
熱処理温度は、硫化物ガラスの熱分析測定により観測される結晶化温度(Tc)よりも高い温度であればよく、通常、195℃以上である。一方、熱処理温度の上限は特に限定されない。
硫化物ガラスの結晶化温度(Tc)は、示差熱分析(DTA)により測定することができる。
熱処理時間は、ガラスセラミックスの所望の結晶化度が得られる時間であれば特に限定されるものではないが、例えば1分間~24時間の範囲内であり、中でも、1分間~10時間の範囲内が挙げられる。
熱処理の方法は特に限定されるものではないが、例えば、焼成炉を用いる方法を挙げることができる。
酸化物系固体電解質としては、例えばLi6.25LaZrAl0.2512、LiPO、及びLi3+xPO4-x(1≦x≦3)等が挙げられる。
固体電解質の形状は、取扱い性が良いという観点から粒子状であってもよい。
また、固体電解質の粒子の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、下限が0.5μm以上であってもよく、上限が2μm以下であってもよい。
本開示において、粒子の平均粒径は、特記しない限り、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定により測定される体積基準のメディアン径(D50)の値である。また、本開示においてメディアン径(D50)とは、粒径の小さい粒子から順に並べた場合に、粒子の累積体積が全体の体積の半分(50%)となる径(体積平均径)である。
固体電解質は、1種単独で、又は2種以上のものを用いることができる。また、2種以上の固体電解質を用いる場合、2種以上の固体電解質を混合してもよく、又は2層以上の固体電解質それぞれの層を形成して多層構造としてもよい。
固体電解質層中の固体電解質の割合は、特に限定されるものではないが、例えば50質量%以上であり、60質量%以上100質量%以下の範囲内であってもよく、70質量%以上100質量%以下の範囲内であってもよく、100質量%であってもよい。
固体電解質層には、可塑性を発現させる等の観点から、バインダーを含有させることもできる。そのようなバインダーとしては、後述する正極層に用いられるバインダーとして例示した材料等を例示することができる。ただし、高出力化を図り易くするために、固体電解質の過度の凝集を防止し且つ均一に分散された固体電解質を有する固体電解質層を形成可能にする等の観点から、固体電解質層に含有させるバインダーは5質量%以下としてもよい。
固体電解質層の厚みは特に限定されるものではなく、通常0.1μm以上1mm以下である。
固体電解質層を形成する方法としては、固体電解質及び必要に応じ他の成分を含む固体電解質材料の粉末を加圧成形する方法等が挙げられる。固体電解質材料の粉末を加圧成形する場合には、通常、1MPa以上600MPa以下程度のプレス圧を負荷する。
加圧方法としては、特に制限されないが、後述する正極層の形成において例示する加圧方法が挙げられる。
[正極層]
正極層は、正極活物質を含み、任意成分として、固体電解質、導電材、及びバインダー等が含まれていてもよい。
正極活物質の種類について特に制限はなく、全固体電池の活物質として使用可能な材料をいずれも採用可能である。全固体電池が全固体リチウム二次電池の場合は、正極活物質は、例えば、金属リチウム(Li)、リチウム合金、LiCoO、LiNiCo1-x(0<x<1)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiMnO、異種元素置換Li-Mnスピネル(例えばLiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Al0.5、LiMn1.5Mg0.5、LiMn1.5Co0.5、LiMn1.5Fe0.5、及びLiMn1.5Zn0.5等)、チタン酸リチウム(例えばLiTi12)、リン酸金属リチウム(例えばLiFePO、LiMnPO、LiCoPO、及びLiNiPO等)、LiCoN、LiSiO、及びLiSiO等のリチウム化合物、遷移金属酸化物(例えばV、及びMoO等)、TiS、Si、SiO、並びにリチウム貯蔵性金属間化合物(例えばMgSn、MgGe、MgSb、及びCuSb等)等を挙げることができる。リチウム合金としては、負極活物質に用いられるリチウム合金として例示したリチウム合金等が挙げられる。
正極活物質の形状は特に限定されるものではないが、粒子状であってもよい。
正極活物質の表面には、Liイオン伝導性酸化物を含有するコート層が形成されていても良い。正極活物質と、固体電解質との反応を抑制できるからである。
Liイオン伝導性酸化物としては、例えば、LiNbO、LiTi12、及び、LiPO等が挙げられる。コート層の厚さは、例えば、0.1nm以上であり、1nm以上であっても良い。一方、コート層の厚さは、例えば、100nm以下であり、20nm以下であっても良い。正極活物質の表面におけるコート層の被覆率は、例えば、70%以上であり、90%以上であっても良い。
固体電解質は、そのような固体電解質としては、上述した固体電解質層に含有させることが可能な固体電解質を例示することができる。
正極層における固体電解質の含有量は、特に限定されないが、全固体電池の初回充電前の正極層の総質量を100質量%としたとき、例えば1質量%~80質量%の範囲内であってもよい。
導電材としては、公知のものを用いることができ、例えば、炭素材料、及び金属粒子等が挙げられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラックやファーネスブラック等のカーボンブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、及び、カーボンナノファイバーからなる群より選ばれる少なくとも一種を挙げることができ、中でも、電子伝導性の観点から、VGCF、カーボンナノチューブ、及び、カーボンナノファイバーからなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。金属粒子としては、Ni、Cu、Fe、及びSUS等の粒子が挙げられる。
正極層における導電材の含有量は特に限定されるものではない。
バインダーとしては、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を例示することができる。正極層におけるバインダーの含有量は特に限定されるものではない。
正極層の厚みについては特に限定されるものではない。
正極層は、従来公知の方法で形成することができる。
例えば、正極活物質、及び、必要に応じ他の成分を溶媒中に投入し、撹拌することにより、正極層用スラリーを作製し、当該正極層用スラリーを正極集電体等の支持体の一面上に塗布して乾燥させることにより、正極層が得られる。
溶媒は、例えば酢酸ブチル、酪酸ブチル、ヘプタン、及びN-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
正極集電体等の支持体の一面上に正極層用スラリーを塗布する方法は、特に限定されず、ドクターブレード法、メタルマスク印刷法、静電塗布法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、及びスクリーン印刷法等が挙げられる。
支持体としては、自己支持性を有するものを適宜選択して用いることができ、特に限定はされず、例えばCu及びAlなどの金属箔等を用いることができる。
また、正極層の形成方法の別の方法として、正極活物質及び必要に応じ他の成分を含む正極合剤の粉末を加圧成形することにより正極層を形成してもよい。正極合剤の粉末を加圧成形する場合には、通常、1MPa以上600MPa以下程度のプレス圧を負荷する。
加圧方法としては、特に制限されないが、例えば、平板プレス、及びロールプレス等を用いて圧力を付加する方法等が挙げられる。
[正極集電体]
全固体電池は、通常、正極層の集電を行う正極集電体を有する。
正極集電体としては、全固体電池の集電体として使用可能な公知の金属を用いることができる。そのような金属としては、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Cr、Zn、Ge、及びInからなる群から選択される一又は二以上の元素を含む金属材料を例示することができる。正極集電体としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等が挙げられる。
正極集電体の形態は特に限定されるものではなく、箔状、及びメッシュ状等、種々の形態とすることができる。
全固体電池は、必要に応じ、正極層、負極層、及び、固体電解質層等を収容する外装体を備える。
外装体の形状としては、特に限定されないが、ラミネート型等を挙げることができる。
外装体の材質は、電解質に安定なものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、アクリル樹脂等の樹脂等が挙げられる。
全固体電池としては、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であってもよい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。また、全固体電池は、全固体リチウム二次電池であってもよい。
全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、及び角型等を挙げることができる。
本開示の全固体電池の製造方法は、例えば、まず、固体電解質材料の粉末を加圧成形することにより固体電解質層を形成する。そして、固体電解質層の一面上でリチウム元素を含む正極活物質を含む正極合剤の粉末を加圧成形することにより正極層を得る。その後、負極集電体の一面上にBaTiOを、電子ビーム蒸着装置を用いて蒸着してBaTiO層を形成し負極集電体-BaTiO層積層体を得て、固体電解質層の正極層を形成した面とは反対側の面上にBaTiO層が固体電解質層と接するように負極集電体-BaTiO層積層体を取り付ける。そして、必要に応じて正極層の固体電解質層とは反対側の面上に正極集電体を取り付けて前駆体電池とし、前駆体電池を充電することによりBaTiO層をLi-Ba-TiO複合酸化物を含む保護層にして本開示の全固体電池としてもよい。
この場合、固体電解質材料の粉末、及び正極合剤の粉末を加圧成形する際のプレス圧は、通常1MPa以上600MPa以下程度である。
加圧方法としては、特に制限されないが、正極層の形成において例示した加圧方法が挙げられる。
(実施例1)
保護層の原料としてBaTiOを準備し、電子ビーム蒸着装置を用いて、負極集電体としてのCu箔の一面上に厚さ30nmのBaTiOを成膜して、Cu箔の一面上に保護層の原料層としてBaTiO層を形成した。
そして、硫化物系固体電解質として、LiBrおよびLiIを含むLiS-P系材料を101.7mg準備し、当該硫化物系固体電解質を6ton/cmの圧力でプレスし、固体電解質層(厚さ500μm)を得た。
次に、金属Li箔(厚さ150μm)を固体電解質層の一面上に配置し、固体電解質層の金属Li箔を配置した面とは反対側の面上に固体電解質層とBaTiO層とが接触するようにBaTiO層を一面上に有するCu箔を配置し、これらを1ton/cmの圧力でプレス成型して、その後、成型体を2N・mで拘束し、Li金属箔、固体電解質層、BaTiO層、Cu箔をこの順に有する評価用電池1を得た。
(実施例2)
電子ビーム蒸着装置を用いて、Cu箔の一面上にBaTiO層を100nm成膜したこと以外は実施例1と同様の方法で評価用電池2を得た。
(比較例1)
電子ビーム蒸着装置を用いて、Cu箔の一面上にBaTiO層の代わりにZnO層を30nm成膜したこと以外は実施例1と同様の方法で評価用電池C1を得た。
(比較例2)
電子ビーム蒸着装置を用いて、Cu箔の一面上にBaTiO層の代わりにZnO層を100nm成膜したこと以外は実施例1と同様の方法で評価用電池C2を得た。
[充放電試験]
25℃の恒温槽に評価用電池1を1時間静置し、評価用電池1内の温度を均一化した。
次に評価用電池1を、電流密度435μA/cmの一定電流で充電してLi-Ba-TiO複合酸化物を含む保護層と負極層を形成し、評価用電池1の充電容量が4.35mAh/cmに到達した時点で充電を停止した。これにより、評価用電池1は、Li-Ba-TiO複合酸化物を含む保護層と負極層を有する構成の全固体リチウム二次電池となった。
そして、10分後に評価用電池1を電流密度435μA/cmの一定電流で放電し金属Liを溶解させ、評価用電池1の電圧が1.0Vに到達した時点で放電を終了した。
評価用電池1の充放電効率を下記の式より求めた。
充放電効率(%)=(放電容量;1.0V到達時点の容量[mAh/cm]÷充電容量;4.35[mAh/cm])×100
そして、上記充電開始から放電終了までを1サイクルとして、合計3サイクル充放電を繰り返した。評価用電池1の1~3サイクルまでの各サイクルの充放電効率から平均充放電効率を算出した。結果を表1及び図2に示す。
また、初回充電時に形成した保護層の複合酸化物中のLi元素の元素比率は1サイクル目の充電時の充電開始時の負極の開回路電位から負極電位0V(Li基準)までの充電容量から算出した。結果を表1に示す。
評価用電池2、C1~C2についても、評価用電池1と同様の方法で、各評価用電池の平均充放電効率及び各保護層のLi-Ba-TiO複合酸化物又はLi-Zn-O複合酸化物中のLi元素の元素比率を算出した。結果を表1に示す。
Figure 0007259639000001
[評価結果]
Li-Zn-O複合酸化物を含む保護層を有する比較例1の評価用電池C1の平均充放電効率は98.1%である。
一方、原料層厚みを比較例1と同じ30nmとして形成したLi-Ba-TiO複合酸化物を含む保護層を有する実施例1の評価用電池1の平均充放電効率は、98.7%であり、比較例1の評価用電池C1の平均充放電効率よりも高い。
また、Li-Zn-O複合酸化物を含む保護層を有する比較例2の評価用電池C2の平均充放電効率は97.9%である。
一方、原料層厚みを比較例2と同じ100nmとして形成したLi-Ba-TiO複合酸化物を含む保護層を有する実施例2の評価用電池2の平均充放電効率は、100.0%であり、比較例2の評価用電池C2の平均充放電効率よりも高く、約2.1%向上している。
したがって、本開示によれば、充放電効率が高い全固体電池を提供することができることが実証された。
11 負極集電体
12 固体電解質層
13 正極層
14 正極集電体
15 負極層
16 保護層
100 全固体電池

Claims (1)

  1. 負極の反応として金属リチウムの析出-溶解反応を利用した全固体電池であって、
    前記全固体電池の満充電時において、負極集電体と、負極層と、Li-Ba-TiO複合酸化物からなる保護層と、固体電解質層と、正極層と、をこの順に有し、
    前記Li-Ba-TiO複合酸化物中のリチウム元素の元素比率が0.2atomic%以上3.6atomic%以下であることを特徴とする全固体電池。
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