JP7234460B2 - 車体側部構造及び車体側部構造の製造方法 - Google Patents

車体側部構造及び車体側部構造の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、車体側部構造及び車体側部構造の製造方法に関する。
本願は、2020年4月17日に出願された日本国特願2020-073874号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
車体側部の上部には、車体前後方向に延びるインナパネルが配設され、その外側にサイドパネルアウタが配設され、補強部材を介在させることにより、車体骨格となる閉断面を有するルーフサイド部が設けられる構成が知られている。ルーフサイド部において、閉断面を形成する複数の板部材同士の結合、及び車体側の部材に対する板部材の結合を行うための技術が種々提案されている。
例えば特許文献1には、軽量化のためアルミニウム製とするサイドパネルアウタと、第一接合部を介してサイドパネルアウタと接合される鋼製のインナパネルと、第二接合部を介してサイドパネルアウタと接合される同じく軽量化のためアルミニウム製とするルーフパネルと、を備えた構成が開示されている。第一接合部と第二接合部とは互いに離間している。特許文献1に記載の技術によれば、アルミニウム製のルーフパネルは、アルミニウム製のサイドパネルアウタを介して間接的に鋼製のインナパネルと繋がっている。これにより、アルミニウムと鋼との線膨張係数の違いによってアルミニウム製のルーフパネルに生じる歪みを、アルミニウム製のサイドアウタパネルによって吸収することができるとされている。
日本国特開2018-149828号公報
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、アルミニウムと鋼という異材接合に使うリベット結合が複数の板部材を一度に重ね合わせて結合する手法であるため、ルーフアーチとインナパネルとを結合する際に、インナパネルに対して車室内側の一方からしか結合することができず、ルーフサイド部の取り付け強度を高めることが難しかった。よって、従来技術にあっては、ルーフサイド部の結合強度を高め、車体側部構造における剛性を向上する点において課題があった。
本発明の態様は、鋼製のモノコック構造のアルミニウムによる車体軽量化において、従来技術と比較して剛性を向上可能な車体側部構造及び車体側部構造の製造方法を提供する。
(1)本発明に係る一態様の車体側部構造は、車体のドア開口を有する開口フランジを形成するアルミニウム合金製のサイドパネルアウタと、前記サイドパネルアウタより前記車体の車幅方向の内側に重ねられる鋼製の補強部材と、前記補強部材より前記車幅方向の内側に重ねられる鋼製のインナパネルと、接着剤により前記サイドパネルアウタと前記補強部材とが接着された状態で、前記開口フランジの長手方向に沿って40mm以上80mm以下の間隔で複数設けられ、機械的結合により前記サイドパネルアウタと前記補強部材とを結合する機械的結合部と、前記長手方向において複数の前記機械的結合部の間に設けられ、前記サイドパネルアウタ、前記補強部材及び前記インナパネルが3枚重ねられた状態で、前記補強部材と前記インナパネルとを接合する溶接部と、を備える。
(2)上記(1)の態様において、前記長手方向に沿う前記機械的結合部の間隔は、前記長手方向に沿う前記溶接部の間隔より大きくてもよい。
(3)上記(1)又は(2)の態様において、前記ドア開口の角部と対応する前記開口フランジのコーナ部には、前記溶接部が設けられていてもよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記開口フランジの上部は、前記サイドパネルアウタと前記補強部材と前記インナパネルとが重ねられた3層構造となっていてもよく、前記開口フランジの下部は、前記補強部材と前記インナパネルとが重ねられた2層構造となっていてもよい。
(5)上記(4)の態様において、前記補強部材のうち、前記開口フランジの上部に対応する部分は、前記開口フランジの下部に対応する部分より低い強度を有するように形成されてもよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれかの態様において、前記補強部材は、1500MPa以上の引張強度を有する超高張力鋼板により形成されてもよく、前記補強部材のうち前記機械的結合部が設けられる部分は、490MPa以上1000MPa以下の引張強度を有する高張力鋼板により形成されてもよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかの態様において、前記開口フランジは環状に周回してもよく、前記機械的結合部と前記溶接部とは、前記開口フランジの周回方向に沿って連続して設けられてもよい。
(8)上記(1)から(7)のいずれかの態様において、前記サイドパネルアウタの電気抵抗は、前記補強部材の電気抵抗及び前記インナパネルの電気抵抗より小さくてもよく、前記サイドパネルアウタの板厚は、前記補強部材の板厚及び前記インナパネルの板厚より薄くてもよい。
(9)上記(1)から(8)のいずれかの態様において、前記機械的結合部は、前記サイドパネルアウタと前記補強部材との間に接着剤を有してもよい。
(10)本発明に係る一態様の車体側部構造の製造方法は、上記(1)から(9)のいずれかの態様の車体側部構造を製造するための車体側部構造の製造方法であって、前記サイドパネルアウタと前記補強部材とを機械的結合により結合して車体側部ユニットを形成する側部ユニット形成工程と、前記インナパネルをフロアに結合するフロア結合工程と、を有し、前記フロア結合工程は、フロアを基準として複数の部材を取り付けることにより前記車体を製造するメインラインに設けられ、前記側部ユニット形成工程は、前記メインラインとは異なるサブラインに設けられる。
(11)本発明に係る一態様の車体側部構造の製造方法は、上記(1)から(9)のいずれかの態様の車体側部構造を製造するための車体側部構造の製造方法であって、前記サイドパネルアウタ及び前記インナパネルの両側から一対の溶接チップを接触させて通電することにより前記溶接部を形成する溶接工程を有し、前記溶接工程において、前記サイドパネルアウタと一方の前記溶接チップとの接触面積は、前記インナパネルと他方の前記溶接チップとの接触面積よりも大きい。
上記(1)の態様によれば、接着剤及び機械的結合部によりサイドパネルアウタと補強部材とが結合され、溶接部により補強部材とインナパネルとが結合される。これにより、車体側の部材であるルーフパネルやルーフアーチ等のルーフ部材とインナパネルとを結合した後に、サイドパネルアウタ、補強部材及びインナパネルの3枚が重ねられたルーフサイド部を形成できる。よって、閉断面を有するルーフサイド部を形成した後にインナパネルとルーフ部材とを結合する従来技術と比較して、閉断面を有するルーフサイド部を形成する前にインナパネルとルーフ部材とを結合できる。したがって、インナパネルの外側は開放されているため溶接ガンがアクセスできる範囲が広くなり、インナパネルとルーフ部材とを確実かつ強固に結合できる。よって、ルーフ部材とインナパネルとの取り付け強度を高め、車体側部構造の剛性を向上できる。さらに、アルミニウム合金製のサイドパネルアウタと鋼製の補強部材との間には接着剤が介在するので、異種金属同士が接触することによる電食の発生を抑制できる。よって、サイドパネルアウタ及び補強部材における電食による錆の発生を抑制し、より一層ルーフサイド部の剛性を高めることができる。
機械的結合部は、開口フランジの長手方向に沿って40mm以上80mm以下の間隔で設けられている。これにより、機械的結合部の間隔が40mm未満に設定された場合と比較して、複数の機械的結合部とその間に設けられる溶接部との干渉を抑制できる。機械的結合部の間隔が80mmより大きい場合と比較して、加熱によるアルミニウム合金製のサイドパネルアウタの浮き量を小さく抑えることができる。これにより、浮き量の増加による車体の捩り剛性の低下を抑制できる。よって、車体側部構造全体の剛性を高めることができる。
したがって、鋼製のモノコック構造のアルミニウムによる車体軽量化において、従来技術と比較して剛性を向上可能な車体側部構造を提供できる。
上記(2)の態様によれば、機械的結合部の間隔は、溶接部の間隔より大きい。これにより、鋼製の補強部材及びインナパネルを結合する溶接部の間隔を相対的に小さくできる。補強部材及びインナパネルはルーフサイド部の骨格を形成するので、補強部材及びインナパネル間を接合する溶接部の間隔を小さくすることで、ルーフサイド部の捩り剛性を高めることができる。よって、車体側部構造全体の剛性を向上することができる。
上記(3)の態様によれば、開口フランジのコーナ部には、溶接部が設けられている。溶接に用いる治具は、機械的結合部を形成するための治具と比較して先端が小さく、狭い領域でも結合作業を実施できる。このため、コーナ部に溶接部を設けた場合には、コーナ部に機械的結合部を設ける場合と比較して、狭い部分であっても確実に部材同士を結合することができる。よって、コーナ部における結合強度を向上し、車体側部構造の剛性を向上できる。
上記(4)の態様によれば、開口フランジの上部は、サイドパネルアウタと補強部材とインナパネルとが重ねられた3層構造となっている。このため、例えばルーフパネル及びサイドパネルアウタをアルミニウム合金製の材料で形成することにより、車体側部構造の軽量化を図るとともに熱歪吸収効果を高めることができる。
一方、開口フランジの下部は、補強部材とインナパネルとが重ねられた2層構造となっている。これにより、開口フランジの下部を軽量化しつつ、鋼製の補強部材及びインナパネルにより下部を形成することで、耐衝撃性能を高めることができる。よって、軽量化と耐衝撃性能の向上とを両立した車体側部構造とすることができる。
上記(5)の態様によれば、補強部材のうち、開口フランジの上部に対応する部分の強度は、開口フランジの下部に対応する部分の強度より低い。上部に位置する補強部材は、例えば下部に位置する補強部材と比較して板厚が薄く形成されることにより、下部よりも低強度に形成される。このように上部に位置する補強部材の板厚を薄くすることで、開口フランジの上部と対応する部分の軽量化を図ることができる。同様に、上部に位置する補強部材は、例えば下部に位置する補強部材と比較して比重の小さい脆弱な材料により形成されてもよい。このように上部に位置する補強部材の材料を比重の小さい材料とすることで、開口フランジの上部と対応する部分のさらなる軽量化を図ることができる。乗員が乗るために上部と比較して高い耐衝撃性が要求される下部は、上部より高強度に形成されている。よって、下部において高い耐衝撃性能を有するとともに、上部において好適に軽量化した車体側部構造とすることができる。
上記(6)の態様によれば、補強部材は、1500MPa以上の引張強度を有する超高張力鋼板により形成されている。これにより、補強部材の板厚を薄くした場合であっても高い強度を維持できる。よって、補強部材を薄肉化することでさらなる軽量化を図ることができる。補強部材のうち機械的結合部が設けられる部分は、例えば焼きなまし等による軟質化処理が施されることにより、490MPa以上1000MPa以下の引張強度を有する高張力鋼板となっている。これにより、機械的結合を行う際の材料の成形性を向上し、容易に機械的結合部を形成することができる。これらの軟質化処理は、補強部材の局所的な領域にのみ施されるため、補強部材全体での強度低下を抑制し、開口フランジの剛性を高い状態に維持できる。よって、開口フランジの剛性を低下させることなく軽量化と製造性の向上を実現できる。
上記(7)の態様によれば、機械的結合部及び溶接部は、開口フランジの周回方向に沿って連続して設けられる。これにより、開口フランジの縁部における結合強度を向上できる。よって、開口フランジ全体の強度を向上できる。
上記(8)の態様によれば、サイドパネルアウタは、補強部材及びインナパネルと比較して、電気抵抗が小さく、板厚が薄い。これにより、サイドパネルアウタ、補強部材及びインナパネルが重ねられた状態で溶接を行った場合に、サイドパネルアウタと比較して抵抗の大きい補強部材及びインナパネル間で溶接を行うことができる。よって、サイドパネルアウタに溶接用の切欠きや孔を設けることなく、鋼製の補強部材及びインナパネルを結合できる。
上記(9)の態様によれば、機械的結合部は、アルミニウム合金製のサイドパネルアウタと鋼製の補強部材との間に接着剤を有する。これにより、アルミニウムと鋼との異種金属材料同士が接触することによる電食の発生を抑制できる。よって、サイドパネルアウタ及び補強部材における錆の発生を抑制し、より一層車体側部構造の剛性を高めることができる。
上記(10)の態様によれば、側部ユニット形成工程と、フロア結合工程と、により車体側部構造が製造される。フロア結合工程は、車体の製造ラインにおけるメインラインに設けられ、側部ユニット形成工程は、車体の製造ラインにおけるサブラインに設けられる。これにより、側部ユニット形成工程を追加する際に、既存の製造設備を大幅に変更することなく、サブラインを追加することにより容易に側部ユニット形成工程を製造ラインに組み込むことができる。よって、既存の設備を有効に利用した、汎用性の高い車体側部構造の製造方法とすることができる。
したがって、鋼製のモノコック構造のアルミニウムによる車体軽量化において、従来技術と比較して剛性を向上可能な車体側部構造を容易に製造可能な、汎用性の高い車体側部構造の製造方法を提供できる。
上記(11)の態様によれば、サイドパネルアウタと一方の溶接チップとの接触面積は、インナパネルと他方の溶接チップとの接触面積よりも大きい。これにより、通電時にサイドパネルアウタと溶接チップとの接触部における発熱量を低減できる。よって、鋼製の補強部材及びインナパネル間でのみ抵抗溶接が行われ、補強部材とインナパネルとを効率的に抵抗溶接により結合できる。アルミニウム合金は鋼よりも電気抵抗が低いので、サイドパネルアウタの発熱量を低減することにより、サイドパネルアウタと補強部材とが溶接されることを抑制できる。よって、アルミニウム合金と鋼との異種金属同士の溶接に起因する脆い金属間化合物の発生を抑制できる。
実施形態に係る車体側部構造の正面図。 実施形態に係る車体側部構造の上面図。 実施形態に係るルーフサイド部の断面斜視図。 図1のIV-IV線に沿う断面図。 実施形態に係るセンターピラーの断面斜視図。 図3のVI-VI線に沿う断面図。 実施形態に係る機械的結合部が形成される補強部材の斜視図。 実施形態に係るクリンチングの工程を示す説明図。 実施形態に係る溶接工程を示す説明図。 実施形態に係る車体側部構造の製造方法を示す説明図。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の説明において、図中の矢印FRは車体前方を指し、矢印UPは車体上方を指し、矢印OUTは車体の車幅方向外側を指している。
(車体側部構造)
図1は、実施形態に係る車体側部構造1の正面図である。図2は、実施形態に係る車体側部構造1の上面図である。
図1及び図2に示すように、車体側部構造1は、複数のドア開口11を形成する開口フランジ10を備える。開口フランジ10は、車体の両側部に左右一対設けられている。車体側部構造1は、フロントピラー14と、センターピラー15と、リアピラー16と、ルーフサイド部12と、ロッカ部13と、を有する。
フロントピラー14、センターピラー15、及びリアピラー16は、車体の前方から後方に向かって順に配設されている。フロントピラー14、センターピラー15、及びリアピラー16は、それぞれ上下方向に沿って延びている。フロントピラー14とセンターピラー15との間に前側ドアのドア開口11が設けられている。センターピラー15とリアピラー16との間に後側ドアのドア開口11が設けられている。
ルーフサイド部12は、開口フランジ10の上部を形成している。ルーフサイド部12には、フロントピラー14、センターピラー15、及びリアピラー16の上端部が接続されている。ルーフサイド部12は、前後方向に沿って延びている。ルーフサイド部12は、車体の上方を覆うルーフパネル9と接続されている。
ロッカ部13は、開口フランジ10の下部を形成している。ロッカ部13には、フロントピラー14、センターピラー15、及びリアピラー16の下端部が接続されている。ロッカ部13は、前後方向に沿って延びている。
車体側部構造1のうち、各ドア開口11の縁部に沿って環状に周回する縁部分が開口フランジ10となっている。車体側部構造1は、サイドパネルアウタ2と、インナパネル3(図3参照)と、補強部材4と、機械的結合部5(図6参照)と、抵抗溶接部6(請求項の溶接部、図6参照)と、を備える。
図3は、実施形態に係るルーフサイド部12の断面斜視図である。図4は、図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図1及び図3に示すように、開口フランジ10の上部から後部に亘る第一領域21(図1の斜線で示す領域参照)には、サイドパネルアウタ2が設けられている。第一領域21は、車幅方向から見てルーフサイド部12、リアピラー16、及びロッカ部13の後端部を含む領域である。サイドパネルアウタ2は、アルミニウム合金により形成されている。図3に示すように、サイドパネルアウタ2は、開口フランジ10における車幅方向の最も外側に配置されている。換言すれば、サイドパネルアウタ2は、開口フランジ10を形成している。図4に示すように、サイドパネルアウタ2は、ルーフサイド部12において、車幅方向の外側及び上方の間の斜め方向に向けて凸となる断面ハット状に形成されている。断面ハット状に形成されたサイドパネルアウタ2の車幅方向内側の端部は、ルーフパネル9と接続されている。
具体的に、ルーフサイド部12を形成するサイドパネルアウタ2は、アウタ外フランジ2aと、アウタ下壁部2bと、アウタ頂壁部2cと、アウタ上壁部2dと、アウタ内フランジ2eと、を有する。アウタ外フランジ2aは、上下方向に沿って延びている。アウタ下壁部2bは、アウタ外フランジ2aの上端部から屈曲されて車幅方向外側に向かって延びている。アウタ頂壁部2cは、アウタ下壁部2bの車幅方向外側の端部から屈曲されて上方及び車幅方向の内側へ向かって延びるとともに、車幅方向の外側に凸となるように緩やかに湾曲している。アウタ上壁部2dは、アウタ頂壁部2cの上端部から屈曲されて車幅方向の内側へ向かって延びている。アウタ上壁部2dの車幅方向内側の端部には、ルーフパネル9が接続されている。アウタ内フランジ2eは、アウタ上壁部2dの車幅方向内側の端部から屈曲されて上方へ延びている。
インナパネル3は、サイドパネルアウタ2より車幅方向の内側に設けられている。インナパネル3は、鋼製の材料により形成されている。インナパネル3は、鋼板を折り曲げて形成されている。具体的に、インナパネル3は、インナ外フランジ3aと、インナ横壁部3bと、インナ縦壁部3cと、インナ内フランジ3dと、を有する。インナ外フランジ3aは、上下方向に沿って延びている。インナ外フランジ3aは、結合部7においてアウタ外フランジ2aと結合されている。インナ横壁部3bは、インナ外フランジ3aの上端部から屈曲されて車幅方向内側に向かって延びている。インナ縦壁部3cは、インナ横壁部3bの車幅方向内側の端部から屈曲されて上方へ向かって延びている。インナ内フランジ3dは、インナ縦壁部3cの上端部から屈曲されて車幅方向内側に向かって延びている。インナ内フランジ3dは、結合部7においてアウタ内フランジ2eと結合されている。これによりインナパネル3は、断面ハット状に形成されたサイドパネルアウタ2の開口を覆っている。
補強部材4は、車幅方向においてサイドパネルアウタ2とインナパネル3との間に設けられている。換言すれば、補強部材4は、サイドパネルアウタ2より車幅方向の内側に重ねられる。インナパネル3は、補強部材4より車幅方向の内側に重ねられる。補強部材4は、鋼製の材料により形成されている。補強部材4は、1500MPa以上の引張強度を有する超高張力鋼板により形成されている。ルーフサイド部12において、補強部材4は、車幅方向の外側及び上方の間の斜め方向に向けて凸となる断面ハット状に形成されている。
具体的に、ルーフサイド部12を形成する補強部材4は、第一フランジ4aと、膨出部4bと、第二フランジ4cと、を有する。第一フランジ4aは、上下方向に沿って延びている。第一フランジ4aは、アウタ外フランジ2a及びインナ外フランジ3aに挟まれた状態で結合部7において結合されている。膨出部4bは、第一フランジ4aの上端部から屈曲されて車幅方向内側に向かって延びるとともに、車幅方向の外側及び上方の間の斜め方向に向かって凸となるように膨出している。第二フランジ4cは、膨出部4bの車幅方向内側の端部から屈曲されて車幅方向の内側に向かって延びている。第二フランジ4cは、アウタ内フランジ2e及びインナ内フランジ3dに挟まれた状態で結合部7において結合されている。
よって、結合部7では、内側から外側に向かって順にインナパネル3、補強部材4及びサイドパネルアウタ2が3枚重ねられている。3枚の部材が重ねられて結合された状態で、補強部材4の開口をインナパネル3が覆うことにより、補強部材4とインナパネル3との間に閉断面8が形成されている。
図5は、実施形態に係るセンターピラー15の断面斜視図である。
図1及び図5に示すように、インナパネル3及び補強部材4は、開口フランジ10の第一領域21及び第一領域21以外の第二領域22を含む全領域に設けられている。第二領域22は、フロントピラー14、センターピラー15及びロッカ部13を含む領域である。換言すれば、第二領域22は、車幅方向から見て、開口フランジ10全体のうちサイドパネルアウタ2が設けられていない領域である。
図5に示すように、第一領域21(すなわち、開口フランジ10の上部)は、サイドパネルアウタ2と、補強部材4と、インナパネル3と、が重ねられた3層構造となっている。第二領域22(すなわち、開口フランジ10の下部)は、補強部材4と、インナパネル3と、が重ねられた2層構造となっている。
センターピラー15等が位置する第二領域22において、インナパネル3は、車幅方向の内側に凸となる断面ハット状に形成されている。第二領域22において、補強部材4は、車幅方向の外側に凸となる断面ハット状に形成されている。インナパネル3及び補強部材4は、開口同士が向き合って配置されることにより、閉断面8を形成している。
補強部材4のうち、第一領域21に対応する部分の強度は、第二領域22に対応する部分の強度より低くなるように形成されている。本実施形態において、第一領域21に設けられた補強部材4の板厚は、第二領域22に設けられた補強部材4の板厚より薄く形成される。これにより、第二領域22と比較して第一領域21における補強部材4の強度が低くなっている。
なお、第二領域22と比較して第一領域21の補強部材4を低強度とする手段については、上述の板厚を変更する手段に限定されない。例えば、第二領域22の補強部材4と比較して比重の小さい脆弱な材料を用いることにより、第一領域21における補強部材4の強度を低下させてもよい。第一領域21の補強部材4に切欠き等を形成することで強度を低下させてもよい。これらの手段を併用してもよい。
図6は、図3のVI-VI線に沿う断面図である。
結合部7において、サイドパネルアウタ2、インナパネル3及び補強部材4は、機械的結合部5と抵抗溶接部6とを併用して結合されている。
機械的結合部5は、クリンチングによりサイドパネルアウタ2及び補強部材4を塑性変形させることにより、サイドパネルアウタ2と補強部材4とを機械的に結合している。図1に示すように、機械的結合部5は、開口フランジ10におけるドア開口11の周縁部に沿って複数設けられている。換言すれば、機械的結合部5は、開口フランジ10の周回方向に沿って設けられている。図2に示すように、機械的結合部5は、ルーフパネル9における窓孔18の縁部にも同様に設けられている。図6に示すように、サイドパネルアウタ2と補強部材4との間には、接着剤20が塗布されている。機械的結合部5は、接着剤20によりサイドパネルアウタ2と補強部材4とが接着された状態で、開口フランジ10の長手方向(周回方向)に沿って所定の間隔P1で複数設けられている。すなわち、機械的結合部5は、接着剤20を含む。機械的結合部5における所定の間隔P1は、加熱時において鋼製の補強部材4に対するアルミニウム合金製のサイドパネルアウタ2の浮きが生じない値に設定されている。本実施形態において、機械的結合部5における所定の間隔P1は、40mm以上80mm以下となっている。
図7は、実施形態に係る機械的結合部5が形成される補強部材4の斜視図である。
補強部材4のうち機械的結合部5が形成される部分は、軟質化部31となっている。軟質化部31は、490MPa以上1000MPa以下の引張強度を有する高張力鋼板により形成されている。軟質化部31は、例えば母材に焼きなまし等の軟質化処理を施すことにより、補強部材4の一部において局所的に形成されている。軟質化部31は、補強部材4の板厚方向から見て円形状に形成されている。
図8は、実施形態に係るクリンチングの工程を示す説明図である。
図8に示すように、機械的結合部5は、サイドパネルアウタ2と、補強部材4の軟質化部31と、が重ねられた状態でクリンチングを行うことにより形成される。クリンチングの実施時には、予め加熱された補強部材4が用いられる。加熱により局所的に軟質化部31が形成された状態で塑性変形することにより、機械的結合部5が形成される。
なお、機械的結合部5は、クリンチングの代わりにリベット加工により形成されてもよい。
図6に示すように、抵抗溶接部6は、隣り合う機械的結合部5の間に設けられている。抵抗溶接部6は、サイドパネルアウタ2、補強部材4及びインナパネル3が3枚重ねられた状態で、補強部材4とインナパネル3とを抵抗溶接により接合する。抵抗溶接部6において、サイドパネルアウタ2の電気抵抗は、補強部材4の電気抵抗及びインナパネル3の電気抵抗よりも小さい。抵抗溶接部6において、サイドパネルアウタ2の板厚は、補強部材4の板厚及びインナパネル3の板厚より薄い。本実施形態において、サイドパネルアウタ2の板厚は、t1.0となっている。補強部材4及びインナパネル3の板厚は、t1.6となっている。これにより、アルミニウム合金と比較して電気抵抗が大きい鋼製の補強部材4及びインナパネル3間の発熱量が大きくなる。よって、補強部材4及びインナパネル3間のみに抵抗溶接部6が形成される。
図1に示すように、抵抗溶接部6は、開口フランジ10の周回方向に沿って設けられている。機械的結合部5と溶接部とは、開口フランジ10の周回方向に沿って連続して設けられる。ドア開口11の角部と対応する開口フランジ10のコーナ部17には、抵抗溶接部6が設けられている。
図6に示すように、抵抗溶接部6は、開口フランジ10の長手方向(周回方向)に沿って所定の間隔P2で複数設けられている。抵抗溶接部6同士の間隔P2は、機械的結合部5同士の間隔P1より小さい。
(車体側部構造の製造方法)
次に、上述の車体側部構造1を製造するための車体側部構造1の製造方法について説明する。
図9は、実施形態に係る溶接工程を示す説明図である。図10は、実施形態に係る車体側部構造1の製造方法を示す説明図である。
車体側部構造1の製造方法は、溶接工程と、側部ユニット形成工程と、フロア結合工程と、を有する。
始めに、溶接工程について説明する。図9に示すように、溶接工程では、サイドパネルアウタ2及びインナパネル3の両側から一対の溶接チップ35,36を接触させて通電することにより抵抗溶接部6を形成する。
溶接工程では、まず、サイドパネルアウタ2、補強部材4及びインナパネル3が順に3枚重ねられた状態で、板厚方向の両側からサイドパネルアウタ2及びインナパネル3にそれぞれ接触するように一対の溶接チップ35,36を配置する。サイドパネルアウタ2又はインナパネル3と接触する各溶接チップ35,36の表面は、所定の半径を持つ球面状に形成されている。サイドパネルアウタ2側に位置する溶接チップ35とサイドパネルアウタ2との接触面積は、インナパネル3側に位置する溶接チップ36とインナパネル3との接触面積よりも大きい。具体的に、サイドパネルアウタ2側の溶接チップ35の表面に形成された球面状部35qの半径は、インナパネル3側の溶接チップ36の表面に形成された球面状部36qの半径より大きい。つまり、サイドパネルアウタ2側の溶接チップ35の表面は、インナパネル3側の溶接チップ36の表面よりも緩やかな曲率となっている。
次に、サイドパネルアウタ2、補強部材4及びインナパネル3を板厚方向に圧接しながら両側の溶接チップ35,36間に所定の電圧を印可して通電を行う。通電すると、電気抵抗が小さく発熱量の小さいサイドパネルアウタ2及び補強部材4間では、サイドパネルアウタ2及び補強部材4が溶融しない。したがって、サイドパネルアウタ2及び補強部材4間では抵抗溶接が行われない。一方、サイドパネルアウタ2及び補強部材4間と比較して電気抵抗が大きく発熱量の大きい補強部材4及びインナパネル3間では抵抗溶接が行われる。これにより、3枚の部材を重ねて通電した場合であっても、補強部材4及びインナパネル3間のみが抵抗溶接により結合される。なお、本実施形態の抵抗溶接はスポット溶接であるが、例えば機械的結合部5間にシーム溶接を施してもよい。
溶接工程は、インナパネル3と、ルーフパネル9やルーフアーチ(不図示)等のルーフ部材と、を結合する工程の後に実施されることが望ましい。つまり、インナパネル3、補強部材4及びサイドパネルアウタ2により閉断面8を形成する前にインナパネル3とルーフ部材とが結合されることが望ましい。この場合、インナパネル3とルーフ部材との結合時に、板厚方向の両側からインナパネル3及びルーフ部材を結合できるので、インナパネル3の固定強度が高められる。
次に、側部ユニット形成工程及びフロア結合工程について説明する。
側部ユニット形成工程では、サイドパネルアウタ2と補強部材4とを機械的結合により結合して車体側部ユニット(不図示)を形成する。車体側部ユニットは、例えば上述の車体側部構造1においてインナパネル3を有する前の状態である。
フロア結合工程では、側部ユニット形成工程の後、インナパネル3をフロアに結合する。
このように側部ユニット形成工程とフロア結合工程とを経ることにより、車体側部構造1が製造される。
図10に示すように、フロア結合工程は、フロアを基準として複数の部材を取り付けることにより車体側部構造1を有する車体を製造するメインライン51に設けられている。側部ユニット形成工程は、メインライン51とは異なるサブライン52に設けられている。
(作用、効果)
次に、上述の車体側部構造1及び車体側部構造1の製造方法の作用、効果について説明する。
本実施形態の車体側部構造1によれば、接着剤20及び機械的結合部5によりサイドパネルアウタ2と補強部材4とが結合され、抵抗溶接部6により補強部材4とインナパネル3とが結合される。これにより、車体側の部材であるルーフパネル9やルーフアーチ等のルーフ部材とインナパネル3とを結合した後に、サイドパネルアウタ2、補強部材4及びインナパネル3の3枚が重ねられたルーフサイド部12を形成できる。よって、閉断面8を有するルーフサイド部12を形成した後にインナパネル3とルーフ部材とを結合する従来技術と比較して、閉断面8を有するルーフサイド部12を形成する前にインナパネル3とルーフ部材とを結合できる。したがって、インナパネル3の外側は開放されているため溶接ガンがアクセスできる範囲が広くなり、インナパネル3とルーフ部材とを確実かつ強固に結合できる。よって、ルーフ部材とインナパネル3との取り付け強度を高め、車体側部構造1の剛性を向上できる。さらに、アルミニウム合金製のサイドパネルアウタ2と鋼製の補強部材4との間には接着剤20が介在するので、異種金属同士が接触することによる電食の発生を抑制できる。よって、サイドパネルアウタ2及び補強部材4における電食による錆の発生を抑制し、より一層ルーフサイド部12の剛性を高めることができる。 機械的結合部5は、開口フランジ10の長手方向に沿って40mm以上80mm以下の間隔P1で設けられている。これにより、機械的結合部5の間隔P1が40mm未満に設定された場合と比較して、複数の機械的結合部5とその間に設けられる抵抗溶接部6との干渉を抑制できる。機械的結合部5の間隔P1が80mmより大きい場合と比較して、加熱によるアルミニウム合金製のサイドパネルアウタ2の浮き量を小さく抑えることができる。これにより、浮き量の増加による車体の捩り剛性の低下を抑制できる。よって、車体側部構造1全体の剛性を高めることができる。
したがって、鋼製のモノコック構造のアルミニウムによる車体軽量化において、従来技術と比較して剛性を向上可能な車体側部構造1を提供できる。
機械的結合部5の間隔P1は、抵抗溶接部6の間隔P2より大きい。これにより、鋼製の補強部材4及びインナパネル3を結合する抵抗溶接部6の間隔P2を相対的に小さくできる。補強部材4及びインナパネル3はルーフサイド部12の骨格を形成するので、補強部材4及びインナパネル3間を接合する抵抗溶接部6の間隔P2を小さくすることで、ルーフサイド部12の捩り剛性を高めることができる。よって、車体側部構造1全体の剛性を向上することができる。
開口フランジ10のコーナ部17には、抵抗溶接部6が設けられている。抵抗溶接に用いる治具は、機械的結合部5を形成するための治具と比較して先端が小さく、狭い領域でも結合作業を実施できる。このため、コーナ部17に抵抗溶接部6を設けた場合には、コーナ部17に機械的結合部5を設ける場合と比較して、狭い部分であっても確実に部材同士を結合することができる。よって、コーナ部17における結合強度を向上し、車体側部構造1の剛性を向上できる。
開口フランジ10の上部は、サイドパネルアウタ2と補強部材4とインナパネル3とが重ねられた3層構造となっている。このため、例えばルーフパネル及びサイドパネルアウタ2をアルミニウム合金製の材料で形成することにより、車体側部構造1の軽量化を図るとともに熱歪吸収効果を高めることができる。
一方、開口フランジ10の下部は、補強部材4とインナパネル3とが重ねられた2層構造となっている。これにより、開口フランジ10の下部を軽量化しつつ、鋼製の補強部材4及びインナパネル3により下部を形成することで、耐衝撃性能を高めることができる。よって、軽量化と耐衝撃性能の向上とを両立した車体側部構造1とすることができる。
補強部材4のうち、開口フランジ10の上部に対応する部分の強度は、開口フランジ10の下部に対応する部分の強度より低い。上部に位置する補強部材4は、例えば下部に位置する補強部材4と比較して板厚が薄く形成されることにより、下部よりも低強度に形成される。このように上部に位置する補強部材4の板厚を薄くすることで、開口フランジ10の上部と対応する部分の軽量化を図ることができる。同様に、上部に位置する補強部材4は、例えば下部に位置する補強部材4と比較して比重の小さい脆弱な材料により形成されてもよい。このように上部に位置する補強部材4の材料を比重の小さい材料とすることで、開口フランジ10の上部と対応する部分のさらなる軽量化を図ることができる。乗員が乗るために上部と比較して高い耐衝撃性が要求される下部は、上部より高強度に形成されている。よって、下部において高い耐衝撃性能を有するとともに、上部において好適に軽量化した車体側部構造1とすることができる。
補強部材4は、1500MPa以上の引張強度を有する超高張力鋼板により形成されている。これにより、補強部材4の板厚を薄くした場合であっても高い強度を維持できる。よって、補強部材4を薄肉化することでさらなる軽量化を図ることができる。補強部材4のうち機械的結合部5が設けられる部分(軟質化部31)は、例えば焼きなまし等による軟質化処理が施されることにより、490MPa以上1000MPa以下の引張強度を有する高張力鋼板となっている。これにより、機械的結合を行う際の材料の成形性を向上し、容易に機械的結合部5を形成することができる。これらの軟質化処理は、補強部材4の局所的な領域にのみ施されるため、補強部材4全体での強度低下を抑制し、開口フランジ10の剛性を高い状態に維持できる。よって、開口フランジ10の剛性を低下させることなく軽量化と製造性の向上を実現できる。
機械的結合部5及び抵抗溶接部6は、開口フランジ10の周回方向に沿って連続して設けられる。これにより、開口フランジ10の縁部における結合強度を向上できる。よって、開口フランジ10全体の強度を向上できる。
サイドパネルアウタ2は、補強部材4及びインナパネル3と比較して、電気抵抗が小さく、板厚が薄い。これにより、サイドパネルアウタ2、補強部材4及びインナパネル3が重ねられた状態で溶接を行った場合に、サイドパネルアウタ2と比較して抵抗の大きい補強部材4及びインナパネル3間で溶接を行うことができる。よって、サイドパネルアウタ2に溶接用の切欠きや孔を設けることなく、鋼製の補強部材4及びインナパネル3を結合できる。
機械的結合部5は、アルミニウム合金製のサイドパネルアウタ2と鋼製の補強部材4との間に接着剤20を有する。これにより、アルミニウムと鋼との異種金属材料同士が接触することによる電食の発生を抑制できる。よって、サイドパネルアウタ2及び補強部材4における錆の発生を抑制し、より一層車体側部構造1の剛性を高めることができる。
本実施形態の車体側部構造1の製造方法によれば、側部ユニット形成工程と、フロア結合工程と、により車体側部構造1が製造される。フロア結合工程は、車体の製造ラインにおけるメインライン51に設けられ、側部ユニット形成工程は、車体の製造ラインにおけるサブライン52に設けられる。これにより、側部ユニット形成工程を追加する際に、既存の製造設備を大幅に変更することなく、サブライン52を追加することにより容易に側部ユニット形成工程を製造ラインに組み込むことができる。よって、既存の設備を有効に利用した、汎用性の高い車体側部構造1の製造方法とすることができる。
したがって、鋼製のモノコック構造のアルミニウムによる車体軽量化において、従来技術と比較して剛性を向上可能な車体側部構造1を容易に製造可能な、汎用性の高い車体側部構造1の製造方法を提供できる。
溶接工程において、サイドパネルアウタ2と一方の溶接チップ35との接触面積は、インナパネル3と他方の溶接チップ36との接触面積よりも大きい。これにより、通電時にサイドパネルアウタ2と溶接チップ35との接触部における発熱量を低減できる。よって、鋼製の補強部材4及びインナパネル3間でのみ抵抗溶接が行われ、補強部材4とインナパネル3とを効率的に抵抗溶接により結合できる。アルミニウム合金は鋼よりも電気抵抗が低いので、サイドパネルアウタ2の発熱量を低減することにより、サイドパネルアウタ2と補強部材4とが溶接されることを抑制できる。よって、アルミニウム合金と鋼との異種金属同士の溶接に起因する脆い金属間化合物の発生を抑制できる。
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
上述の実施形態及び図1に図示する例では、開口フランジ10のドア開口11周縁部のうち第一領域21と対応する部分に機械的結合部5及び抵抗溶接部6が形成される構成について説明したが、これに限られない。開口フランジ10のドア開口11周縁部のうち第二領域22と対応する部分にも機械的結合部5や抵抗溶接部6等を形成してもよい。これらの結合部7と併せて接着剤20による接着結合部を設けてもよい。
上述の実施形態では、抵抗溶接部6が設けられるサイドパネルアウタ2は、補強部材4及びインナパネル3と比較して電気抵抗が小さい材料により形成され、かつ板厚が薄い構成について説明したが、これに限られない。サイドパネルアウタ2は、抵抗溶接時におけるサイドパネル及び補強部材4間の電気抵抗が、補強部材4及びインナパネル3間の電気抵抗よりも全体として小さくなっていればよい。すなわち、例えば板厚が同等とされた場合であっても、補強部材4及びインナパネル3と比較して電気抵抗の小さい材料によりサイドパネルアウタ2を形成することにより、サイドパネルアウタ2の電気抵抗を低減してもよい。但し、サイドパネルアウタ2の発熱量を抑えて効率良く補強部材4及びインナパネル3間を溶接できる点で、電気抵抗が小さい材料により形成され、かつ板厚が薄いサイドパネルアウタ2を用いた本実施形態の構成は優位性がある。
ルーフサイド部12におけるサイドパネルアウタ2、インナパネル3及び補強部材4の断面形状は、閉断面8が形成可能であれば上述した実施形態の形状に限定されない。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
1 車体側部構造
2 サイドパネルアウタ
3 インナパネル
4 補強部材
5 機械的結合部
6 抵抗溶接部(溶接部)
10 開口フランジ
11 ドア開口
17 コーナ部
20 接着剤
35,36 溶接チップ
51 メインライン
52 サブライン
P1 機械的結合部の間隔
P2 抵抗溶接部の間隔

Claims (11)

  1. 車体のドア開口を有する開口フランジを形成するアルミニウム合金製のサイドパネルアウタと、
    前記サイドパネルアウタより前記車体の車幅方向の内側に重ねられる鋼製の補強部材と、
    前記補強部材より前記車幅方向の内側に重ねられる鋼製のインナパネルと、
    接着剤により前記サイドパネルアウタと前記補強部材とが接着された状態で、前記開口フランジの長手方向に沿って40mm以上80mm以下の間隔で複数設けられ、機械的結合により前記サイドパネルアウタと前記補強部材とを結合する機械的結合部と、
    前記長手方向において複数の前記機械的結合部の間に設けられ、前記サイドパネルアウタ、前記補強部材及び前記インナパネルが3枚重ねられた状態で、前記補強部材と前記インナパネルとを接合する溶接部と、
    を備える、車体側部構造。
  2. 前記長手方向に沿う前記機械的結合部の間隔は、前記長手方向に沿う前記溶接部の間隔より大きい、請求項1に記載の車体側部構造。
  3. 前記ドア開口の角部と対応する前記開口フランジのコーナ部には、前記溶接部が設けられている、請求項1又は請求項2に記載の車体側部構造。
  4. 前記開口フランジの上部は、前記サイドパネルアウタと前記補強部材と前記インナパネルとが重ねられた3層構造となっており、
    前記開口フランジの下部は、前記補強部材と前記インナパネルとが重ねられた2層構造となっている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車体側部構造。
  5. 前記補強部材のうち、前記開口フランジの上部に対応する部分は、前記開口フランジの下部に対応する部分より低い強度を有するように形成されている、請求項4に記載の車体側部構造。
  6. 前記補強部材は、1500MPa以上の引張強度を有する超高張力鋼板により形成され、
    前記補強部材のうち前記機械的結合部が設けられる部分は、490MPa以上1000MPa以下の引張強度を有する高張力鋼板により形成されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車体側部構造。
  7. 前記開口フランジは環状に周回し、
    前記機械的結合部と前記溶接部とは、前記開口フランジの周回方向に沿って連続して設けられる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の車体側部構造。
  8. 前記サイドパネルアウタの電気抵抗は、前記補強部材の電気抵抗及び前記インナパネルの電気抵抗より小さく、
    前記サイドパネルアウタの板厚は、前記補強部材の板厚及び前記インナパネルの板厚より薄い、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の車体側部構造。
  9. 前記機械的結合部は、前記サイドパネルアウタと前記補強部材との間に接着剤を有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の車体側部構造。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車体側部構造を製造するための車体側部構造の製造方法であって、
    前記サイドパネルアウタと前記補強部材とを機械的結合により結合して車体側部ユニットを形成する側部ユニット形成工程と、
    前記インナパネルをフロアに結合するフロア結合工程と、
    を有し、
    前記フロア結合工程は、フロアを基準として複数の部材を取り付けることにより前記車体を製造するメインラインに設けられ、
    前記側部ユニット形成工程は、前記メインラインとは異なるサブラインに設けられる、車体側部構造の製造方法。
  11. 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車体側部構造を製造するための車体側部構造の製造方法であって、
    前記サイドパネルアウタ及び前記インナパネルの両側から一対の溶接チップを接触させて通電することにより前記溶接部を形成する溶接工程を有し、
    前記溶接工程において、前記サイドパネルアウタと一方の前記溶接チップとの接触面積は、前記インナパネルと他方の前記溶接チップとの接触面積よりも大きい、車体側部構造の製造方法。
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