JP7233264B2 - 複合フィラーおよび樹脂組成物 - Google Patents
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ところで、放熱部材の熱伝導率を向上させるためには、上記放熱部材中で高熱伝導性を有するフィラーが相互に接触し、熱伝導パスを形成することが重要である。良好な熱伝導パスを形成させる方法として、大粒径のフィラーにより熱伝導パスの距離を稼ぎその間にサブフィラーとして小粒径粒子のフィラーを埋める手段が採用されている。
従って、本発明の目的は、窒化アルミニウム粉末の高い熱伝導性を活かしながら、伝導効率を高く樹脂充填が可能な複合フィラーを提供することにある。
少なくとも2面の平坦面を有する面構造を備えた多面体粒子であり、粒度分布曲線における累積50%値(D50)が20μm~200μmの窒化アルミニウム粉末(A)を60体積%~90体積%と、
熱伝導率が45W/m・K~60W/m・K、モース硬度が7以下、粒度分布曲線における累積50%値(D50)が2μm~20μmの無機粉末(B)を10体積%~40体積%とを含有することを特徴とする複合フィラーが提供される。
樹脂組成物中の複合フィラーの含有量が50体積%~80体積%であることが熱伝導性向上の観点で好ましい。樹脂成分としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種を本発明の複合フィラーと組み合わせると効果が高いので好ましい。
本発明の複合フィラーは、窒化アルミニウム粉末(A)を60体積%~90体積%、好ましくは65体積%~85体積%と、無機粉末(B)を10体積%~40体積%、好ましくは15体積%~35体積%とを含有する。
窒化アルミニウム粉末(A)は、少なくとも2面の平坦面を有する面構造を備えた多面体粒子であり、粒度分布曲線における累積50%値(D50)が20μm~200μm、好ましくは30μm~100μmの範囲にある。
尚、上記面積比は、前記SEM写真で観察される状態を画像解析により算出した値である。
本発明の複合フィラーは、上記窒化アルミニウム粉末(A)に加えて、特定の熱伝導性を有し、窒化アルミニウム粉末より低い硬度を有し、且つ、窒化アルミニウム粉末より粒径が小さい無機粉末(B)をも含む。以下、無機粉末(B)が有する熱伝導性、硬度および粒径についての数値等について、詳述する。
本発明の複合フィラーは、フィラーを構成する全構成粉末の体積の合計を100体積%として、窒化アルミニウム粉末(A)を60体積%~90体積%と、無機粉末(B)を10体積%~40体積%とを含有する。
(a) 窒化アルミニウム粉末より低い硬度を有し、且つ、粒径が十分に小さい無機粉末を無機粉末(B)として使用し窒化アルミニウム粉末(A)に配合することにより、樹脂への充填を行った後に得られる樹脂組成物において、窒化アルミニウム粉末(A)の粒子周囲に該無機粉末(B)の粒子の周囲に密着性良く安定して存在する;
(b) そして、窒化アルミニウム粉末(A)と無機粉末(B)とがこのような態様で共存することにより、密度の高い窒化アルミニウム粉末の間隙に無機粉末(B)が存在することになり、窒化アルミニウムの高熱伝導性が十分発揮されると共に、(ii) 無機粉末(B)自体もある程度の熱伝導性を有することで、総じて、より一層高い熱伝導性を発揮するものと推定している。
本発明の複合充填材は、上述したとおり、上記窒化アルミニウム粉末(A)と無機粉末(B)とを特定の割合で含む。ここで、本発明の複合フィラーは、上記窒化アルミニウム粉末(A)と無機粉末(B)とのみからなるものであってもよく、そのような複合充填材は、本発明の好適な実施態様の1つである。なお、この実施態様では、上記窒化アルミニウム粉末(A)の全体積と上記無機粉末(B)の全体積との合計が100体積%ということになる。
本発明に係る樹脂組成物は、上述した本発明の複合充フィラーと樹脂とを含む樹脂組成物である。
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸類(ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステル)、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、アイオノマーなどの熱可塑性樹脂;並びに、
例えば、エポキシ樹脂、硬化性アクリル樹脂、硬化性ウレタン樹脂、硬化性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、硬化性ポリイミド樹脂、硬化型変性PPE、および硬化型PPEなどの硬化性樹脂等が挙げられる。これら樹脂の中でも、板状成形体や薄膜状成形体などの成形体を作製する上では、硬化性樹脂が好ましく、液状の硬化性樹脂が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上記複合充填材、上記樹脂、その他、上記添加剤など必要に応じて含まれる成分を混合することにより製造できる。この場合、これら各成分の混合は、熱可塑性樹脂の場合、例えば、押出機にて溶融混合することによって得ることができ、また、熱硬化性樹脂の場合、例えば、未硬化或いは半硬化の樹脂と公知の手段により混合後、硬化させることにより得ることができる。
そして、以上のような本発明の樹脂組成物を公知の手段により適当な形状に成形することにより、高い熱伝導性を持った成形体を得ることができる。
尚、本発明において、各種試験方法は、以下の通り行った。
試料をホモジナイザーにて5%ピロリン酸ソーダ水溶液中に分散させ、レーザー回折粒度分布装置(日機装株式会社製MICROTRAC HRA)にて粒径を測定し、D50を求めた。
複合充填材を樹脂に充填した樹脂組成物を、試験片に成形し、熱拡散率、密度および比熱から、下記式に基づき求めた。
熱伝導率(W/m・K)=熱拡散率×密度×比熱
尚、熱拡散率は、レーザーフラッシュ法にて、密度は、アルキメデス法にて、また、比熱は、DSC法にて、それぞれ測定した。
実施例で使用した窒化アルミニウム多面体粒子は以下のようにして調製した。
・アルミナ粉末
α-アルミナ:D50 3.518μm
・カーボン粉末
カーボン粉末B:平均粒径 20nm、DBP吸収量 115cm3/100g、含有
硫黄量 3000ppm
・硫黄成分
硫黄粉末:純度 98%以上
上記原料混合物を、カーボン製のセッターに、20mm厚となるように収納し、窒素を流通可能な反応容器内にセットし、窒素ガスを流通させながら、加熱温度1775℃で還元窒化を行った。
窒化アルミニウム粉末に焼結助剤として酸化イットリウム、有機結合剤及び溶媒を添加混合しスラリーを作製後、スプレードライヤーで得られた約30μm球状造粒粉を得た。球状造粒粉を100℃で乾燥後、500℃の酸素雰囲気下で有機結合剤を燃焼除去したのち、1750℃で焼結し、焼結顆粒よりなる窒化アルミニウム粉末を製造した。
製造例1で調製した多面体粒子を窒化アルミニウム粉末(A)とし、無機粉末(B)として、D50が5μmの酸化マグネシウム粉末、D50が5μmの酸亜鉛粉末と表1の粉体割合となるように混合した。
なお、樹脂としてエポキシ樹脂(三菱化学株式会社jER828)100重量部と硬化剤(イミダゾール系硬化剤、四国化成工業株式会社製キュアゾール2E4MZ)5重量部との混合物を、基材樹脂として準備した。複合フィラーを混合して樹脂組成物を作製した。その時、粉末の充填率は70vol%であった。
無機粉末(B)を使用せず、粉末100質量%を窒化アルミニウム粉末(A)で構成して、実施例と同様に熱伝導率を評価した。
窒化アルミニウム粉末(A)を使用せず、粉末100質量%を無機粉末(B)で構成して、実施例と同様に熱伝導率を評価した。
実施例1において、製造例1で調製した多面体粒子の代わりに、製造例2で調製した真球状粒子を用いて複合フィラーを構成し、この複合フィラーを使用して実施例と同様にして、熱伝導率を評価した。
その結果、本発明によれば、高い熱伝導性の複合フィラーが得られることが判明した。なお、粉末(A)および(B)を単独使用しても、また球状粒子で構成される窒化アルミニウムフィラーを使用しても、熱伝導性の高い組成物は得られなかった。
Claims (4)
- 全構成粉末の体積の合計を100体積%として、
少なくとも2面の平坦面を有する面構造を備えた多面体粒子であり、粒度分布曲線における累積50%値(D50)が20μm~200μmの窒化アルミニウム粉末(A)を60体積%~90体積%と、
熱伝導率が45W/m・K~60W/m・K、モース硬度が7以下、粒度分布曲線における累積50%値(D50)が2μm~20μmの無機粉末(B)を10体積%~40体積%とを含有することを特徴とする複合フィラー。 - 無機粉末(B)が、MgO、ZnOから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の複合フィラー。
- 請求項1または2に記載の複合フィラーと樹脂成分とを含み、該複合フィラーの含有量が50体積%~80体積%である樹脂組成物。
- 樹脂成分が、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載の樹脂組成物。
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