JP6526451B2 - 複合フィラーおよびこれを含む樹脂組成物 - Google Patents
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窒化アルミニウム粉末(A)
本発明に係る複合フィラーを構成する窒化アルミニウム粉末(A)(本明細書において、単に「窒化アルミニウム粉末(A)」と呼ばれる場合がある。)は、燐酸アルミニウム被膜が形成された窒化アルミニウム粉末であって、粒度分布曲線における累積50%値(D50(A))が0.5μm〜100μmの範囲にある。この累積50%値(D50(A))は、1μm〜80μmの範囲にあることが好ましい。ここで、本発明において、粒度分布曲線は、粉末サンプルにおける粒子径に対する粒子量の関係を表した曲線であり、レーザー回折散乱法の測定により得られたものである。なお、本明細書において、数値範囲を示す際に用いられる「X〜Y」(X,Yは適当な数値)なる記載は、別途の記載がない限り、上限値及び下限値を含む意味で用いられる。
本発明に係る複合フィラーを構成する無機粉末(B)(本明細書において、単に「無機粉末(B)」と呼ばれる場合がある。)は、負に帯電した無機粉末であって、粒度分布曲線における累積50%値(D50(B))に対する前記D50(A)の比 D50(A)/D50(B)が10〜100の範囲にある。すなわち、本発明では、無機粉末(B)として、上述した窒化アルミニウム粉末(A)よりも、平均の粒径が小さいものを用いることが重要である。このように無機粉末(B)として粒径の小さい負に帯電した無機粉末を用いると、負電荷による静電反発効果によって無機粉末(B)を構成する粒子同士の凝集が抑制され分散性が向上するほか、粒径が小さいために、窒化アルミニウム粉末(A)を構成する粒子間の隙間に入り、滑車効果により粉体の流動性が向上する。その結果、窒化アルミニウム粉末(A)を構成する粒子の間に無機粉末(B)を構成する粒子が入り込みやすくなり、これにより複合フィラーの流動性が向上し、樹脂に添加して得られる樹脂組成物の粘度を低減させることができる。
本発明に係る複合フィラーは、上述した窒化アルミニウム粉末(A)と上述した無機粉末(B)を含む。このような本発明の複合フィラーは、樹脂に添加して樹脂組成物としたときに、当該樹脂組成物において分散しやすく、且つ、燐酸アルミニウム被膜が形成された窒化アルミニウム粉末のみからなるフィラーに比べて、樹脂に添加して得られる樹脂組成物の粘度を低く抑えることができるという効果が得られる。このような効果が得られる理由としては、おそらく、上記窒化アルミニウム粉末(A)は燐酸アルミニウム被膜が形成された窒化アルミニウム粉末であることから、これを構成する粒子表面は負に帯電している一方、上記無機粉末(B)を構成する粒子表面もまた負に帯電していることにより、上記窒化アルミニウム粉末(A)を構成する粒子と上記無機粉末(B)を構成する粒子とが互いに凝集することなく反発し合うという電荷反発効果が挙げられる。
本発明に係る樹脂組成物は、上述した複合フィラーと樹脂とを含む樹脂組成物である。
本発明の樹脂組成物に含有される樹脂に特に限定はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリアセタール、フッ素樹脂(ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ABS樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、変性PPE樹脂、脂肪族ポリアミド類、芳香族ポリアミド類、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメタクリル酸類(ポリメタクリル酸メチル等のポリメタクリル酸エステル)、ポリアクリル酸類、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリケトン、液晶ポリマー、アイオノマーなどの熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、硬化性アクリル樹脂、硬化性ウレタン樹脂、硬化性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、硬化性ポリイミド樹脂、硬化型変性PPE、および硬化型PPEなどの硬化性樹脂等が挙げられる。これら樹脂の中でも、板状成形体や薄膜状成形体などの成形体を作製する上では、硬化性樹脂が好ましく、液状の硬化性樹脂が特に好ましい。
また、上記樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤、カップリング剤などの添加剤を含んでもよい。
そして、以上のような本発明の樹脂組成物を従来公知の適当な方法により成形することにより、高い熱伝導性を持った成形体を得ることができる。
尚、本発明において、各種試験方法は、以下の通り行った。
(1)樹脂組成物の粘度:
樹脂組成物の粘度は、レオメーター(AR2000ex:TA Instruments社製)を用い、せん断速度5/s、25.5℃にて測定した。
(2)粒径
試料をホモジナイザーにて5%ピロリン酸ソーダ水溶液中に分散させ、レーザー回折粒度分布装置(日機装株式会社製MICROTRAC HRA)にて粒径を測定した。
(3)成形体の熱伝導率
樹脂組成物を成形して得られる成形体(ペレット)の熱伝導率は、熱拡散率、密度および比熱から、下記式に基づき求めた。
熱伝導率=熱拡散率×密度×比熱
熱拡散率は、レーザーフラッシュ法にて測定を行なった。
密度は、アルキメデス法にて測定を行なった。
比熱は、DSC法にて測定を行なった。
本例は、基材樹脂としてエポキシ樹脂を用いて樹脂組成物の作製する例である。
具体的にはエポキシ樹脂(三菱化学株式会社製jER828)100重量部と硬化剤(イミダゾール系硬化剤、四国化成工業株式会社製キュアゾール2E4MZ)5重量部との混合物を、基材樹脂として準備した。次に、基材樹脂100重量部と、燐酸処理AlN粉末 602重量部と、平均粒径0.3μmのシリカ粉末21重量部とを自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製ARE−500)にて混合して樹脂組成物(以下、「第1の樹脂組成物」)を得た。その時、粉末の充填率は70vol%であった。ここで、使用した燐酸処理AlN粉末およびシリカ粉末の物性を表1Aに示す。
基材樹脂に対する燐酸処理AlN粉末およびシリカ粉末の量を表1Bに示す量とした以外は実施例1と同様にして、第1の樹脂組成物及びペレットを作製した。得られたペレットの熱伝導率を測定した結果を表1Bに示した。
基材樹脂に対する燐酸処理AlN粉末およびシリカ粉末の量を表1Bに示す量とした以外は実施例1と同様にして、第1の樹脂組成物及びペレットを作製した。得られたペレットの熱伝導率を測定した結果を表1Bに示した。
基材樹脂に対する燐酸処理AlN粉末の量を表1Bに示す量とし、シリカ粉末を配合しなかった以外は実施例1と同様にして、第1の樹脂組成物及びペレットを作製した。得られたペレットの熱伝導率を測定した結果を表1Bに示した。
使用した燐酸処理AlN粉末およびシリカ粉末の種類を、それぞれ表1Aに示す粒度分布を有するものに置き換えた以外は実施例3と同様にして、第1の樹脂組成物及びペレットを作製した。得られたペレットの熱伝導率を測定した結果を表1Bに示した。
Claims (9)
- 燐酸アルミニウム被膜が形成された窒化アルミニウム粉末(A)と負に帯電した無機粉末(B)とを含む複合フィラーであり、
前記窒化アルミニウム粉末(A)の粒度分布曲線における累積50%値(D50(A))が1〜100μmの範囲であり、かつ
前記無機粉末(B)の粒度分布曲線における累積50%値(D50(B))に対するD50(A)の比 D50(A)/D50(B)が10〜100である複合フィラー。 - 前記窒化アルミニウム粉末(A)の粒度分布曲線における累積90%値(D90(A))と累積10%値(D10(A))との比 D90(A)/D10(A)が3〜100である請求項1に記載の複合フィラー。
- 前記窒化アルミニウム粉末(A)と前記無機粉末(B)の合計100体積%に対する前記無機粉末(B)の割合が、5体積%以上30体積%以下である請求項1または2に記載の複合フィラー。
- 前記窒化アルミニウム粉末(A)と前記無機粉末(B)の合計100体積%に対する前記無機粉末(B)の割合が、10体積%以上30体積%以下である請求項1または2に記載の複合フィラー。
- 前記累積50%値(D50(A))が1〜80μmの範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合フィラー。
- 前記窒化アルミニウム粉末(A)の真球度が0.7〜0.99である請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合フィラー。
- 前記無機粉末(B)の真球度が0.7〜0.99である請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合フィラー。
- 上記請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合フィラーと樹脂とを含む樹脂組成物であり、該樹脂組成物中の複合フィラーの含有量が50体積%〜80体積%である樹脂組成物。
- 前記樹脂が液状の硬化性樹脂である請求項8に記載の樹脂組成物。
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