JP7222670B2 - 電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真感光体の製造方法に関する。
円筒状の電子写真感光体(以下、単に電子写真感光体とも記載する)の表面には、帯電やクリーニングなどの電気的外力や機械的外力が加えられるため、これらの外力に対する耐久性(耐摩耗性など)が要求される。
この要求に対して、従来から、電子写真感光体の表面層に耐摩耗性の高い樹脂(硬化性樹脂など)を用いるなどの改良技術が用いられている。
一方、電子写真感光体の表面の耐摩耗性を高めることによって生じる主な課題として、クリーニングブレードによって行われるクリーニング性能への影響が挙げられる。この課題を克服する方法として、電子写真感光体に凹部や凸部を形成し、表面を適度に粗面化することにより、電子写真感光体表面とクリーニングブレードとの接触面積を減少させ、摩擦力を低減する方法が提案されてきた。
例えば、電子写真感光体表面に微細な形状を高精度に転写するための方法が特許文献1に開示されている。この方法は転写される形状の多様性、制御性という観点で優れている。
電子写真感光体の表面の粗面化は必要な範囲に均一に行われるのが一般的であり、従来はクリーニングブレードが当接する領域に対して行われてきた。
特許第4059518号公報
一方、電子写真感光体は電子写真装置内で、クリーニングブレード以外にも様々な部材と当接している。これらは電子写真プロセスの中で電子写真感光体の軸方向に微小なずれを生じながら用いられている。
特許文献1のように型部材を用いて形状を転写する場合、電子写真感光体の軸方向における凹凸部形成領域の端部は、周方向に直線である。
電子写真感光体の軸方向において、クリーニングブレードが当接する領域よりも外側には凹凸部形成領域の端が存在し、電子写真感光体と当接する部材の端部がこの凹凸部形成領域の端部を跨いでずれると電子写真感光体との摩擦力が大きく変化する。その結果、当接部材の端部に応力が集中し、当接部材の劣化の原因となる傷や摩耗を発生する。
本発明の目的は、電子写真感光体表面と当接部材との間の摩擦力の大きな変化を抑制し、電子写真感光体と当接する部材の寿命を長くすることができる電子写真感光体を製造することができる電子写真感光体の製造方法を提供することにある
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明にかかる電子写真感光体の製造方法は、複数の凹部と凸部との少なくとも一方を有する凹凸部形成領域を表面に有する円筒状の電子写真感光体の製造方法であって、該製造方法が、表面に該凹凸部形成領域が形成される前の円筒状の電子写真感光体の表面に型部材を押し付け、該型部材の形状を転写することで、該円筒状の電子写真感光体の表面に、該円筒状の電子写真感光体の軸方向における中央部から両端部に亘り以下の関係式(1)を満たすように該凹凸部形成領域を形成する工程を有する
0.006≦(Lmax-Lmin)/Lmax≦0.116 ・・・関係式(1)
(関係式(1)中、
Lmaxは、該電子写真感光体の軸方向における、該凹凸部形成領域の中央部から片端部までの距離Lの最大値であり、
Lminは、該電子写真感光体の軸方向における、該凹凸部形成領域の中央部から片端部までの距離Lの最小値である。)
電子写真感光体表面と当接部材との間の摩擦力の大きな変化を抑制し、電子写真感光体と当接する部材の寿命を長く保つことができる電子写真感光体を製造することができる電子写真感光体の製造方法が提供される。
本発明の一態様に係る電子写真感光体の一例の外観を示す図である。 本発明の一態様に係る電子写真感光体の表面の凹部のフィッティングの一例を示す図である。 本発明の一態様に係る電子写真感光体の表面における基準面、平坦部、凹部等の関係を模式的に示す図である。 本発明の一態様に係る電子写真感光体の表面における基準面、平坦部、凸部等の関係を模式的に示す図である。 本発明の一態様に係る電子写真感光体の表面が有する凹部の開口部または凸部の底部の形状および断面の形状の一例を示す図である。 本発明の一態様に係る電子写真感光体の表面に凹部を形成する方法の一例を示す図である。 本発明の一態様に係る電子写真感光体の表面に凹部と凸部の少なくとも一方を形成するための型部材の一例を示す図である。 本発明の一態様に係る電子写真感光体の表面に凹部と凸部の少なくとも一方を形成するための型部材の一例を示す図である。 本発明の一態様に係る電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の例を示す図である。 本発明の一態様に係る電子写真感光体の表面に凹部と凸部の少なくとも一方を形成するための型部材の一例を示す図である。 本発明の一態様に係る電子写真感光体の表面に凹部と凸部の少なくとも一方を形成するための型部材の一例を示す図である。 本発明の一態様に係る電子写真感光体の表面に凹部を形成する方法の一例を示す図である。 本発明の一態様に係る電子写真感光体の表面の一例を示す展開図である。
本発明に係る電子写真感光体の製造方法は、以下の本発明の一態様に係る電子写真感光体を製造することができる。
すなわち、本発明の一態様に係る電子写真感光体は、円筒状の電子写真感光体であって、複数の凹凸部が形成された凹凸部形成領域を、該電子写真感光体の軸方向における中央部から両端部に亘ってその表面に有する。
また、該電子写真感光体の表面の軸方向における中央部から該凹凸部形成領域の片端部までの距離Lの、最大値Lmaxと最小値Lminとが以下の関係式(1)を満たす。
0.006≦(Lmax-Lmin)/Lmax≦0.116 ・・・式(1)
本発明の一態様に係る電子写真感光体と、表面に凹凸部が形成された従来知られている電子写真感光体との主な相違点について述べる。
以下では電子写真感光体と当接する部材として中間転写体を例に説明する。
表面に凹凸部が形成された従来知られている電子写真感光体の凹凸部形成領域は、少なくともクリーニングブレードの当接する領域よりも広く設けられていた。また、型部材を用いて形状を転写する場合、電子写真感光体の軸方向における凹凸部形成領域の端部は型のパターンエリアに従い、電子写真感光体の周方向に直線であった。
つまり、電子写真感光体の表面の軸方向における中央部から凹凸部形成領域の片端部までの距離Lが、電子写真感光体の周方向に亘っておよそ同じ長さを有していた。
円筒状の電子写真感光体は回転しながら中間転写体と接する。電子写真感光体の軸方向のある点に着目した時、周方向に常に凹凸部がある箇所では摩擦力は低く、常に凹凸部がない箇所では摩擦力が高くなる。
従来の電子写真感光体を用いた装置において、まず中間転写体の端部が凹凸部形成領域よりも内側にある状態から電子写真プロセスが始まる。その後、装置の使用中に、中間転写体の端部の位置が凹凸部形成領域よりも外側までずれを生じたとき、凹凸部形成領域の端部境界で摩擦力が大きく増加する。そのため、中間転写体の端部に応力が集中する。凹凸部形成領域の外側から内側にずれるときも同様で、これらを繰り返すことによって中間転写体の端部に、表層の剥がれの原因となる折れや傷が発生し、中間転写体の寿命が短くなってしまう。
一方、本発明の一態様に係る電子写真感光体は、凹凸部形成領域の電子写真感光体の表面の軸方向における中央部から凹凸部形成領域の片端部までの距離Lが、電子写真感光体の周方向についてみたとき、あえて不均一となっていることを主な特徴とする。つまり、電子写真感光体の表面の軸方向における中央部から凹凸部形成領域の片端部までの距離Lが、最大値Lmaxと最小値Lminを有する。
このような電子写真感光体の軸方向の端部は、電子写真感光体の周方向についてみたとき、凹凸部形成領域を有する部分と有しない部分とが混在する領域を有することが特徴的である。この凹凸部形成領域を有する部分と有しない部分とが混在する領域における電子写真感光体と中間転写体との間の平均的な摩擦力は、常に凹凸部がある箇所と常に凹凸部がない箇所との間の値となる。そのため、中間転写体が軸方向にずれた場合に摩擦力の変化が緩やかになる。これによって中間転写体の劣化を抑制することができる。
以後、電子写真感光体表面上の上記凹凸部形成領域を有する部分と有しない部分とが混在する領域を領域Aと呼称する。領域Aをより詳細に表現すると、次のようになる。すなわち、電子写真感光体表面の軸方向端部における領域であって、上記Lminが測定される凹凸部形成領域の端部位置における電子写真感光体の軸方向に垂直な面と、上記Lmaxが測定される凹凸部形成領域の端部位置における電子写真感光体の軸方向に垂直な面とで挟まれる領域である。
本発明の一態様に係る電子写真感光体について、図面を参照して、さらに詳細に説明する。図1は、本発明の一態様に係る電子写真感光体の一例の外観を示す図であり、図1に示すように、円筒状の電子写真感光体1は、円筒状基体2とその表面に設けられた表面層を有する。そして、表面層の表面には多数の凹部と凸部の少なくとも一方が設けられている。
凹凸部形成領域3の端部は、電子写真感光体の周方向に直線でなく、波形になっている。電子写真感光体の表面の軸方向における中央部から凹凸部形成領域の片端部までの距離Lは、最大値Lmaxと、最小値Lminとを有する。
凹凸部形成領域3は、電子写真感光体1の軸方向両端部のそれぞれにおいてLmaxとLminとを有することが好ましい。このとき、両端部のLmaxはそれぞれ互いに異なる値であってよく、また両端部のLminはそれぞれ互いに異なる値であってよい。
LmaxとLminの関係は以下の式(1)を満たすことが重要である。
0.006≦(Lmax-Lmin)/Lmax≦0.116 ・・・式(1)
つまり、本発明の効果を得るためには電子写真感光体表面の軸方向に一定以上の領域Aを有することが必要である。(Lmax-Lmin)/Lmaxが0.006以上であると本発明の効果を高く得ることができる。また、(Lmax-Lmin)/Lmaxが0.116以下であれば領域Aが広くなりすぎず、凹凸部形成領域を設ける効果を高く得ることができる。LmaxおよびLminは以下の関係式(2)を満たすことがより好ましい。
0.011≦(Lmax-Lmin)/Lmax≦0.087 ・・・式(2)
本発明のさらに好ましい形態はLmax、Lminおよび電子写真感光体の軸方向に垂直な断面の直径Pが、以下の式(3)を満たすことである。
0.100≦(Lmax-Lmin)/P≦0.333 ・・・式(3)
上記式(3)は、電子写真感光体の軸方向に垂直な断面の直径が大きいほど領域Aは広くある必要があることを示す。該直径が大きいほど中間転写体との接触面積が大きくなるため、電子写真感光体の軸方向のずれに対して必要な領域Aの面積も大きくなる。
領域Aにおける凹凸部形成領域の面積は、その役割から大きすぎず小さすぎないことが好ましい。具体的には、領域Aにおいて、領域Aの面積に対する凹凸部形成領域の面積の割合が20%以上80%以下であると、より本発明の効果を得やすい。
ここで、本発明の一態様に係る円筒状の電子写真感光体の表面における凹部、凸部、および平坦部等の判定(定義)などについて説明する。
まず、円筒状である電子写真感光体の表面を顕微鏡で拡大観察する。電子写真感光体の表面(周面)は周方向に曲がった曲面となっているので、その曲面の断面プロファイルを抽出し、得られた円弧をフィッティングする。図2に、フィッティングの例を示す。図2中、実線の501は電子写真感光体の表面(曲面)の断面プロファイルであり、破線の502は断面プロファイル501にフィッティングした曲線である。その曲線502が直線になるように断面プロファイル501の補正を行い、得られた直線を電子写真感光体の長手方向(周方向に直交する方向)に拡張した面を基準面とする。
得られた基準面から電子写真感光体断面の中心に向かう方向(基準面の下方)に0.2μm離れて位置し、基準面に平行な面を第二基準面とする。また、基準面から電子写真感光体断面の中心に向かう方向と逆の方向(基準面の上方)に0.2μm離れて位置し、基準面に平行な面を第三基準面とする。
図3に凹部の判定例として、基準面601、第二基準面602、第三基準面603、上記補正後の断面プロファイル604、凹部606、などの関係を模式的に示す。また、図4に凸部の判定例として、基準面601、第二基準面602、第三基準面603、上記補正後の断面プロファイル604、凸部607などの関係を模式的に示す。
ここで、平坦部、凸部、凹部、凹部の深さ、凹部の開口部、凹部の開口面積、凸部の高さ、凸部の底部および凸部の底面積をそれぞれ次のように定義する。
・第二基準面602と第三基準面603に挟まれる部分を平坦部。
・第三基準面603よりも電子写真感光体断面の中心方向から離れる方向に位置する部分を凸部。
・第二基準面602よりも電子写真感光体断面の円筒中心方向に位置する部分を凹部。
・凹部について、第二基準面602から電子写真感光体断面の中心方向に向かって最も離れた点までの距離を凹部の深さ。
・凹部を電子写真感光体表面の直上より見下ろしたときに、窪んでいる部分がその周囲の平坦部と接する線は、第二基準面602と凹部が交わる線であり、この線に囲われた部分を凹部の開口部。
・凹部の開口部の面積を凹部の開口面積。
・凸部について、第三基準面603から、電子写真感光体断面の中心から離れる方向に向かって最も離れた点までの距離を凸部の高さ。
・凸部を電子写真感光体表面の直上より見下ろしたときに、隆起した部分がその周囲の平坦部と接する線は、第三基準面603と凸部が交わる線であり、この線に囲われた部分を凸部の底部。
・凸部の底部の面積を凸部の底面積。
本発明の一態様に係る電子写真感光体の表面に設けられる凹部の形状や凸部の形状は特に限定されない。図5の(a)に示すように、凹部の開口部や凸部の底面の形状は多様であってよく、例えば、円、楕円、正方形、長方形、三角形、五角形、六角形などが挙げられる。また、図5の(b)に示すように凹部や凸部の断面形状は多様であってよい。例えば、略半円型等の曲線からなる形状、連続した曲線からなる波型や、三角形、四角形、多角形などのエッジを有するものや、三角形、四角形、多角形のエッジの一部または全部を曲線に変形したものなどが挙げられる。
電子写真感光体の表面に設けられる複数の凹部および凸部は、形状、開口面積および深さについて異なるものが混在していてもよい。また、凹部と凸部が混在していてもよい。
電子写真感光体の表面に凹部および凸部を形成する方法として、形成すべき凹部に対応した凸部や、形成すべき凸部に対応した凹部を有する型部材(モールド)を電子写真感光体の表面に圧接し形状転写を行う方法が挙げられる。
図6に、電子写真感光体の表面に凹部や凸部を形成するための圧接形状転写加工装置の例を示す。図6(a)は圧接形状転写加工装置の概略を示す側面図であり、図6(b)は圧接形状転写加工装置の概略を示す上面図である。
図6の圧接形状転写加工装置は、支持部材9の上に、被転写体である電子写真感光体1に近い方から順に、型部材5、金属層6、弾性層7、位置決め部材8の順に各部材が配置されたものである。このような圧接形状転写加工装置を用い、電子写真感光体1に挿入部材4を挿入し、この挿入部材4に荷重をかけると共に型部材5をスライド機構等で図6(a)に示すY方向に移動させる。このようにして、電子写真感光体1を回転させながら、その表面(外周面)に連続的に型部材5を加圧接触させることにより、電子写真感光体1の表面に凹部または凸部を形成することができる。形状転写を効率的に行う観点から、型部材5や電子写真感光体1を加熱することが好ましい。
図7(a)~(d)は、電子写真感光体の表面に凹部と凸部の少なくとも一方を形成するための型部材5を示す上面図である。
型部材の図示縦方向の端の不均一な形状は図7(a)~(d)に例示するように矩形波状、円弧状、山切り状、波形状など、領域Aに求められる摩擦力を発現するものであればどのような形状でも用いることができる。
型部材に設けられた凸形状部および凹形状部の概略を図8に示す。図8(a)および(c)はそれぞれ型部材に設けられた凸形状部および凹形状部の上面図であり、図8(b)および(d)はそれぞれ図8(a)のA-A’線断面図および図8(c)のA-A’線断面図である。図8に示すように、凸形状部および凹形状部は、例えば、半球形状が連続して設けられ、所定のピッチX、半球形状の直径Yおよび半球形状の高さZを有する。
型部材5としては、微細な表面加工された金属や樹脂フィルム、シリコンウエハーの表面にレジストによりパターニングをしたもの、微粒子が分散された樹脂フィルム、微細な表面形状を有する樹脂フィルムに金属コーティングを施したものが挙げられる。
<電子写真感光体の構成>
本発明の一態様に係る円筒状の電子写真感光体は、支持体および支持体上に形成された感光層を有する。
感光層は、電荷輸送物質と電荷発生物質を同一の層に含有する単層型感光層と、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とに分離した積層型(機能分離型)感光層が挙げられる。電子写真特性の観点から、積層型感光層が好ましい。また、電荷発生層を積層構成としてもよいし、電荷輸送層を積層構成としてもよい。
支持体としては、導電性を示すもの(導電性支持体)であることが好ましい。支持体の材質としては、例えば、鉄、銅、金、銀、アルミニウム、亜鉛、チタン、鉛、ニッケル、スズ、アンチモン、インジウム、クロム、アルミニウム合金、ステンレスなどの金属(合金)が挙げられる。また、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化インジウム-酸化スズ合金などを用いて真空蒸着によって形成した被膜を有する金属製支持体やプラスチック製支持体を用いることもできる。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子などの導電性粒子をプラスチックや紙に含浸してなる支持体や、導電性結着樹脂製の支持体を用いることもできる。
支持体の表面は、レーザー光の散乱による干渉縞の抑制を目的として、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理などを施してもよい。
支持体と、後述の下引き層または感光層(電荷発生層、電荷輸送層)との間には、レーザー光の散乱による干渉縞の抑制や、支持体の傷の被覆などを目的として、導電層を設けてもよい。
導電層は、導電性粒子を結着樹脂および溶剤とともに分散処理して得られる導電層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。
導電層に用いられる導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属の粒子や、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、ITOなどの金属酸化物の粒子などが挙げられる。また、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンやタンタルをドープした酸化スズを用いてもよい。
導電層用塗布液の溶剤としては、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素溶剤等が挙げられる。導電層の膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、さらには0.5μm以上40μm以下であることがより好ましく、さらには1μm以上30μm以下であることがより好ましい。
導電層に用いられる結着樹脂としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン等のビニル化合物の重合体および共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂が挙げられる。
支持体または導電層と、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)との間には、下引き層(中間層)を設けてもよい。
下引き層は、結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる下引き層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
下引き層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ-N-ビニルイミダゾール、ポリエチレンオキシド樹脂、エチルセルロース、エチレン-アクリル酸共重合体、カゼイン、ポリアミド樹脂、N-メトキシメチル化6ナイロン樹脂、共重合ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。
下引き層には、さらに、金属酸化物粒子を含有させてもよい。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムを含有する粒子が挙げられる。また、金属酸化物粒子は、金属酸化物粒子の表面がシランカップリング剤などの表面処理剤で処理されている金属酸化物粒子であってもよい。
下引き層用塗布液に用いられる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素系溶剤、芳香族化合物などの有機溶剤が挙げられる。下引き層の膜厚は、0.05μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上25μm以下であることがより好ましい。下引き層には、さらに、有機樹脂微粒子、レベリング剤を含有させてもよい。
感光層に用いられる電荷発生物質としては、例えば、ピリリウム、チアピリリウム染料や、フタロシアニン顔料、アントアントロン顔料、ジベンズピレンキノン顔料、ピラントロン顔料、アゾ顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔や、非対称キノシアニン顔料、キノシアニン顔料などが挙げられる。これら電荷発生物質は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
感光層に用いられる電荷輸送物質としては、例えば、ヒドラゾン化合物、N,N-ジアルキルアニリン化合物、ジフェニルアミン化合物、トリフェニルアミン化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物などが挙げられる。
感光層が積層型感光層である場合、電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂および溶剤とともに分散処理することによって得られた電荷発生層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
電荷発生物質と結着樹脂の質量比は、1:0.3~1:4の範囲内であることが好ましい。
分散処理方法としては、例えば、ホモジナイザー、超音波分散、ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミルなどを用いる方法が挙げられる。
電荷輸送層は、電荷輸送物質および結着樹脂を溶剤に溶解させることによって得られる電荷輸送層用塗布液を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させることによって形成することができる。
電荷発生層および電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、例えば、ビニル化合物の重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
電荷発生層の膜厚は、5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
電荷輸送層の膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、10μm以上35μm以下であることがより好ましい。
また、感光層(積層型感光層の場合には、電荷輸送層)上には、導電性粒子または電荷輸送物質と結着樹脂とを含有する保護層を設けてもよい。保護層には、潤滑剤などの添加剤をさらに含有させてもよい。また、保護層の樹脂(結着樹脂)自体に導電性や電荷輸送性を有させてもよく、その場合、保護層には、当該樹脂以外の導電性粒子や電荷輸送物質を含有させなくてもよい。また、保護層の結着樹脂は、熱可塑性樹脂でもよいし、熱、光、放射線(電子線など)などにより硬化させてなる硬化性樹脂であってもよい。
保護層の膜厚は、0.1μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましい。
電子写真感光体の各層には、添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの劣化防止剤や、フッ素原子含有樹脂粒子、アクリル樹脂粒子などの有機樹脂粒子や、シリカ、酸化チタン、アルミナなどの無機粒子などが挙げられる。
<プロセスカートリッジおよび電子写真装置の構成>
本発明の別の態様に係るプロセスカートリッジは、これまで述べてきた電子写真感光体と該電子写真感光体に接触配置されたクリーニングブレードを有するクリーニング手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
また、本発明のさらに別の態様に係る電子写真装置は、これまで述べてきた電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、および該電子写真感光体に接触配置されたクリーニングブレードを有するクリーニング手段を有することを特徴とする。
図9に、本発明の一態様に係る電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の例を示す。
図9において、円筒状の本発明の電子写真感光体201は、軸202を中心に矢印方向に所定の周速度(プロセススピード)をもって回転駆動される。電子写真感光体201の表面は、回転過程において、帯電手段203(一次帯電手段:例えば、帯電ローラーなど)により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、均一に帯電された電子写真感光体201の表面は、露光手段(画像露光手段)(不図示)から照射される露光光(画像露光光)204を受ける。このようにして、電子写真感光体201の表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
本発明は、放電を利用した帯電手段を用いた場合において、効果が特に大きい。
電子写真感光体201の表面に形成された静電潜像は、次いで現像手段205内のトナーで現像(正規現像または反転現像)されてトナー像が形成される。電子写真感光体201の表面に形成されたトナー像が、転写手段(例えば、転写ローラーなど)206からの転写バイアスによって、転写材P上に転写されていく。このとき、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体201と転写手段206との間(当接部)に電子写真感光体201の回転と同期して取り出されて給送される。また、転写手段には、トナーの保有電荷とは逆極性のバイアス電圧がバイアス電源(不図示)から印加される。
トナー像が転写された転写材Pは、電子写真感光体の表面から分離されて定着手段208へ搬送されてトナー像の定着処理を受けることにより、画像形成物(プリント、コピー)として電子写真装置外へプリントアウトされる。
トナー像転写後の電子写真感光体201の表面は、クリーニングブレードを有するクリーニング手段207によって転写残トナーなどの付着物の除去を受けて清浄面化される。なお、クリーニングブレードは、電子写真感光体201の表面に、電子写真感光体201の母線方向のほぼ全域に接触配置(当接)されている。さらに、清浄面化された電子写真感光体201の表面は前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図9に示すように、帯電手段203が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光手段は必ずしも必要ではない。本発明においては、上記特定の電子写真感光体201を用いているため、電子写真感光体表面とクリーニングブレードとの摩擦力が低減されてクリーニングブレード先端の摩耗が抑えられ、長期間に亘って良好なクリーニング特性を維持することができる。
本発明においては、電子写真感光体201、帯電手段203、現像手段205、転写手段206およびクリーニング手段207などから選択される構成要素のうち、複数の構成要素を容器に納めてプロセスカートリッジ209として一体に支持する。そして、このプロセスカートリッジ209を複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成することができる。図9では、電子写真感光体201、帯電手段203、現像手段205およびクリーニング手段207を一体に支持してカートリッジ化している。また、電子写真装置本体のレールなどの案内手段210を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ209としている。
露光光204は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合、原稿からの反射光や透過光である。または、センサーで原稿を読み取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイや液晶シャッターアレイの駆動などにより照射される光である。
以下に、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。また、電子写真感光体を、以下単に「感光体」ともいう
(感光体の製造例)
直径30.0mm、長さ357.5mmのアルミニウムシリンダーを円筒状基体2(円筒状支持体)とした。
次に、金属酸化物として酸化亜鉛粒子(比表面積:19m/g、粉体抵抗:4.7×10Ω・cm)100部をトルエン500部と撹拌混合した。これにシランカップリング剤(化合物名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、商品名:KBM602、信越化学工業(株)製)0.8部を添加し、6時間攪拌した。その後、トルエンを減圧留去して、130℃で6時間加熱乾燥し、表面処理された酸化亜鉛粒子を得た。
次に、以下の材料を用意した。
・ポリオール樹脂としてブチラール樹脂(商品名:BM-1、積水化学工業(株)製)15部
・ブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住友バイエルウレタン社製)15部
これらをメチルエチルケトン73.5部と1-ブタノール73.5部の混合溶液に溶解させた。この溶液に前記表面処理された酸化亜鉛粒子80.8部、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン0.8部(東京化成工業(株)社製 )を加え、これを直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下で3時間分散した。分散後、以下の材料を加えて攪拌し、下引き層用塗布液を調製した。
・シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レダウコーニングシリコーン社製)0.01部
・架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子(商品名:TECHPOLYMER SSX-102、積水化成品工業(株)社製、平均一次粒径2.5μm)
5.6部
この下引き層用塗布液を上記円筒状基体2上に浸漬塗布し、得られた塗膜を40分間160℃で乾燥させて、膜厚が18μmの下引き層を形成した。
次に、以下の材料を用意した。
・CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°および28.2°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)20部
・下記構造式(A)で示されるカリックスアレーン化合物0.2部
・ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業(株)製)10部
・シクロヘキサノン600部
これらを、直径1mmガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、4時間分散処理した後、酢酸エチル700部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を15分間80℃で乾燥させることによって、膜厚0.17μmの電荷発生層を形成した。
Figure 0007222670000001
次に、以下の材料を用意した。
・下記構造式(B)で示される化合物30部(電荷輸送物質)
・下記構造式(C)で示される化合物60部(電荷輸送物質)
・下記構造式(D)で示される化合物10部(電荷輸送物質)
・ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ビスフェノールZ型のポリカーボネート)100部
・下記構造式(E)で示されるポリカーボネート(粘度平均分子量Mv:20000)0.02部
これらを、混合キシレン600部およびジメトキシメタン200部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を前記電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を30分間100℃で乾燥させることによって、膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。
Figure 0007222670000002
(式(E)中、0.95および0.05は2つの構造単位のモル比(共重合比)である。)
次に、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)20部/1-プロパノール20部の混合溶剤を濾過した。濾過にはポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋(株)製)を用いた。その後、下記構造式(F)で示される正孔輸送性化合物(電荷輸送物質)90部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン70部、および、1-プロパノール70部を上記混合溶剤に加えた。これをポリフロンフィルター(商品名:PF-020、アドバンテック東洋(株)製)で濾過することによって、第二電荷輸送層(保護層)用塗布液を調製した。この第二電荷輸送層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布し、得られた塗膜を大気中において6分間50℃で乾燥させた。その後、窒素中において、支持体(被照射体)を200rpmで回転させながら、加速電圧70kV、吸収線量8000Gyの条件で1.6秒間、電子線を塗膜に照射した。引き続いて、窒素中において25℃から125℃まで30秒かけて昇温させ、塗膜の加熱を行った。電子線照射およびその後の加熱時の雰囲気の酸素濃度は15ppmであった。次に、大気中において30分間100℃で加熱処理を行うことによって、電子線により硬化された膜厚5μmの第二電荷輸送層(保護層)を形成した。
Figure 0007222670000003
なお、本実施例の作製において塗布した全ての層の塗膜は、その各塗布工程の最後において塗布引き上げ方向の下端部を、溶剤を用いて剥離処理した。そして、全ての層の塗布領域は、塗布引き上げ方向の円筒状基体2の上端部から1mm、かつ下端部から1mmになるようにした。
このようにして、表面に形状を形成する前の円筒状の電子写真感光体(形状形成前の電子写真感光体)を作製した。
(実施例1)
(表面加工)
上記のようにして得られた円筒状の電子写真感光体1に、図6(a)に示すような、挿入部材4を、予め55℃に加熱した状態で挿入した。挿入に際しては、電子写真感光体1の軸芯方向中心位置との軸芯方向中心位置が合致するように挿入した。挿入部材の材料は、縦弾性係数が540×10N/mmの炭化タングステンを主材料とした超硬合金を用いた。
支持部材9の上に、被転写体である電子写真感光体1に近い方から順に、型部材5、金属層6、弾性層7、位置決め部材8の順に各部材を配置した。支持部材9の材質はSUS430製とし、内部に加熱用のヒーターを設置した。また支持部材9に、図6(a)のY方向に移動するスライド機構を設けた。位置決め部材8は、厚さ6mmのSS400製の板の表面に無電解ニッケルメッキを施して用いた。弾性層7は厚さ8mmのシリコンゴムを用いた。金属層6は厚み2mmのSUS301CSP-3/4H製の平板を用いた。
型部材5の種類は図10(a)に示すような形状を有する、厚さ300μmのニッケル材質の平板モールドを使用した。そして型部材5は図示縦方向を電子写真感光体の軸方向にあてがって使用するものとし、型部材5が感光体と接する面上の、感光体表面に凹部を形成するための凸形状部が形成された領域である凸形状部形成領域51の各寸法は以下のようにした。線分aの長さが348mm、線分bの長さが94mm、線分cの長さが7mm、線分dの長さが23.5mm、線分eが23.5mm。
凸形状部形成領域51の表面には、全面に亘って図8(a)および(b)に示すような凸型の半球形状の凸形状部を連続して設けた。凸形状部形成領域51の全ての半球形状のピッチXは57μmとした。そして凸形状部形成領域51の全ての半球形状の直径Yは50μm、高さZは2.5μmとした。
型部材5、金属層6、弾性層7、位置決め部材8および支持部材9を図6(a)に示す位置関係で固定した。なお、型部材5は、図10(a)の図示左側が、図6(a)および(b)の図示左側になる方向で固定した。また、型部材5は、図6(b)の電子写真感光体1の軸方向中央を基準に位置決めした。そして上面が略水平になるように設置した状態で支持部材9のヒーターを昇温させ、型部材5の表面を150℃に加熱した。
電子写真感光体1の表面を型部材5に押し付けるために、挿入部材4の両端部分に、図示しない荷重機構を設けた。それぞれの荷重機構は、鉛直方向にガイドレールとボールネジを設け、さらにボールネジとガイドレールに連結して上下する連結支持部材を設けた。ボールネジの下側にはサーボモーターを連結させて回転させ、連結支持部材をガイドレールにならって上下させるようにした。連結支持部材と挿入部材4の端部は球形ジョイントで連結した。なお、球形ジョイントと連結支持部材はロードセルを介して連結させるようにし、挿入部材4の両端それぞれにかかる荷重量をモニターできるようにした。
電子写真感光体1の表面への加工としては、電子写真感光体1を型部材5に前記荷重機構を用いて押しつけ、かつ型部材5を前記スライド機構で図6(a)に示すY方向に移動させた。これにより、電子写真感光体1を転動させながらその表面に型部材5の形状を転写した。
上記加工に際しては、先ず支持部材9の位置を調整して、型部材5の凸形状部形成領域51の図6図示左端部分が電子写真感光体1の真下になるようにした。次に前記荷重機構のサーボモーターを回転させて挿入部材4を型部材5の方向に20mm/sec(Vz1)の速度で移動させた。その後電子写真感光体1が型部材5に接触し、さらに前記ロードセルによって挿入部材4にかかる荷重量が6000Nに到達したことを検出した時点で荷重機構の移動を停止させた。
次に支持部材9を図6(a)のY方向に10mm/secの速度で移動を開始させ、電子写真感光体1を従動的に図6(a)図示時計回りに回転させた。このようにして型部材5の表面の凸形状部の形状を電子写真感光体1の表面に転写させた。
そして、その状態を維持しながらスライド機構を94mm移動した時点で停止させ、その後荷重機構によって挿入部材4を20mm/secの速度で型部材5から離間させる方向に移動させ、電子写真感光体1と型部材5を離間させた。
上記のようにして、電子写真感光体1を転動させながらその表面に型部材5の表面の凸形状部の形状を転写することで、電子写真感光体1の表面に型部材5の表面の凸形状部に対応する凹部を形成した。以上の方法で、表面に凹部が形成された実施例1に係る電子写真感光体を作製した。
(加工結果の測定)
続いて、このように加工して電子写真感光体の表面に形成された凹凸部形成領域について、電子写真感光体の表面の軸方向における中央部から、該凹凸部形成領域の片端部までの距離Lの測定を行った。測定方法について以下に説明する。
得られた電子写真感光体の表面を、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、商品名:VK-9500)で10倍レンズにより拡大観察し、電子写真感光体の表面に設けられた凹凸部形成領域の判定を行った。観察時には、電子写真感光体の長手方向に傾きが無いように、また、周方向については、電子写真感光体の円弧の頂点にピントが合うように、調整を行った。
電子写真感光体の表面の軸方向における中央部から、該凹凸部形成領域の片端部までの距離Lを周方向に亘って測定し、最大値Lmaxと最小値Lminを得た。これらの値から、(Lmax-Lmin)/Lmax、(Lmax-Lmin)/Pの値を算出した。結果を表2に示す。また、上記領域Aにおける凹凸部形成領域の面積の割合を測定した結果を表2に示す。
なお、電子写真感光体の表面を、他のレーザー顕微鏡((株)キーエンス製、商品名:X-200)を用い、上記と同様の方法で観察を行ったところ、上記のレーザー顕微鏡((株)キーエンス製、商品名:VK-9500)を用いた場合と同様の結果が得られた。以下の例では、電子写真感光体の表面の観察に、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、商品名:VK-9500)および10倍レンズを用いた。
(評価)
実施例1で作製した電子写真感光体を電子写真複写機(キヤノン(株)製、iR-ADV C5560)の改造機に装着し、中間転写体の端部の表面における傷発生について、および電子写真感光体上のトナー汚れ度合いについて評価を行った。
電子写真感光体は、上記電子写真複写機用のドラムカートリッジに装着した。
中間転写体は上記電子写真複写機用のドラムカートリッジに装着されていたもの(基層上に表層が設けられた中間転写体)をそのまま使用した。
評価は25℃/50%RH環境下で、画像比率1%の画像を10万枚連続して形成した。なお画像の形成においては、走行駆動時の中間転写体の位置を補正する制御を、幅方向中心位置から左右5mm以内に収まる範囲で補正するようにして行った。
10万枚通紙後に中間転写体の端部の観察を行い、下記基準で評価した。評価ランクはAが最も優れており、Eが最も劣っている。
A:中間転写体端部の表層上に寄り移動による傷は確認されない。
B:中間転写体端部の表層上に寄り移動による軽微な傷が確認される。
C:中間転写体端部の表層上に寄り移動による中程度の傷が確認される。
D:中間転写体端部の表層に寄り移動による折れ跡が見られるが表層の剥がれ・破断には至っていない。
E:中間転写体端部の表層に寄り移動による表層の剥がれ・破断が見られる。
また、10万枚通紙後の電子写真感光体上のトナー汚れ度合いを下記基準で評価した。評価ランクはAが最も優れており、Dが最も劣っている。
A:クリーニングブレードの端部と接する辺りの電子写真感光体表面のトナー汚れが中央部と同等である。
B:クリーニングブレードの端部と接する辺りの電子写真感光体表面のトナー汚れが中央部と比較してわずかに多い。
C:クリーニングブレードの端部と接する辺りの電子写真感光体表面のトナー汚れが中央部と比較して多いが、その領域は通紙幅の外側である。
D:クリーニングブレードの端部と接する辺りの電子写真感光体表面のトナー汚れが中央部と比較して多く、その領域は通紙幅の内側にまで及んでいる。
評価結果を表2に示す。
(実施例2~13、比較例1~3)
実施例1において、型部材の種類と、型部材の各寸法を表1に示すように変更した。それ以外は実施例1と同様にして実施例2~13、比較例1~3に係る電子写真感光体を作製した。また、得られた電子写真感光体について、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表2に示す。
なお、図10(b)および(c)に示す種類の型部材は、凸形状部形成領域51の形状が異なる以外は、図10(a)に示す種類の型部材と同様である。
(実施例14~17)
実施例1において、直径30.6mm、長さ357.5mmのアルミニウムシリンダーを円筒状基体2(円筒状支持体)として使用した。また、型部材の種類と、型部材の各寸法を表1に示すように変更した。それ以外は実施例1と同様にして実施例14~17に係る電子写真感光体を作製した。また、得られた電子写真感光体について、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例18)
実施例1において、表面の加工に際して図12に示す型ユニットを用いた。
実施例1で用いた型ユニットと、図12に示す型ユニットとの違いは、弾性層7の厚みが10mmであり、型部材5の中央部と端部の高さが異なって配設されている点である。型部材5の種類は図11に示すものを使用した。
表面加工に際しては、先ず支持部材9の位置を調整して、型部材5の凸形状部形成領域51の図11の図示左端部分が電子写真感光体1の真下になるようにした。次に実施例1で使用したものと同じ荷重機構のサーボモーターを回転させて挿入部材4を型部材5の方向に20mm/sec(Vz1)の速度で移動させた。その後電子写真感光体1が型部材5に接触し、さらに前記ロードセルによって挿入部材4にかかる荷重量が6000Nに到達したことを検出した時点で荷重機構の移動を停止させた。
次に支持部材9を図6(a)のY方向に10mm/secの速度で移動を開始させ、電子写真感光体1を従動的に図6(a)図示時計回りに回転させた。このようにして型部材5の表面の凸部を電子写真感光体1の表面に転写させた。
ここで、荷重量が6000Nの状態を維持しながらスライド機構を47mm移動した時点で一旦停止させ、前記ロードセルによって挿入部材4にかかる荷重量が2000Nになるように荷重機構を動作させた。続いて、荷重量が2000Nの状態を維持しながらスライド機構をさらに47mm移動した時点で停止させた。その後、荷重機構によって挿入部材4を20mm/secの速度で型部材5から離間させる方向に移動させ、電子写真感光体1と型部材5を離間させた。
このようにして加工された電子写真感光体表面の展開図を図13に示す。実施例18に係る電子写真感光体には6000Nで加工された範囲にLmaxを有する凹凸部形成領域が形成され、2000Nで加工された範囲にLminを有する凹凸部形成領域が形成された。
得られた電子写真感光体について、実施例1と同様にして測定および評価を行った。評価結果を表2に示す。
Figure 0007222670000004
Figure 0007222670000005
1.電子写真感光体
2.円筒状基体
3.凹凸部形成領域
4.挿入部材
5.型部材
6.金属層
7.弾性層
8.位置決め部材
9.支持部材
51.凸形状部形成領域
201.電子写真感光体
202.軸
203.帯電手段
204.露光光
205.現像手段
206.転写手段
207.クリーニング手段
208.定着手段
209.プロセスカートリッジ
210.案内手段
501.断面プロファイル
502.フィッティングした曲線
601.基準面
602.第二基準面
603.第三基準面
604.補正後の断面プロファイル
606.凹部
607.凸部

Claims (3)

  1. 複数の凹部と凸部との少なくとも一方を有する凹凸部形成領域を表面に有する円筒状の電子写真感光体の製造方法であって
    製造方法が、
    表面に該凹凸部形成領域が形成される前の円筒状の電子写真感光体の表面に型部材を押し付け、該型部材の形状を転写することで、該円筒状の電子写真感光体の表面に、該円筒状の電子写真感光体の軸方向における中央部から両端部に亘り以下の関係式(1)を満たすように該凹凸部形成領域を形成する工程
    を有する、ことを特徴とする電子写真感光体の製造方法
    .006≦(Lmax-Lmin)/Lmax≦0.116 ・・・関係式(1)
    (関係式(1)中、
    Lmaxは、該電子写真感光体の軸方向における、該凹凸部形成領域の中央部から片端部までの距離Lの最大値であり、
    Lminは、該電子写真感光体の軸方向における、該凹凸部形成領域の中央部から片端部までの距離Lの最小値である。)
  2. 前記工程以下の関係式(2)を満たすように前記凹凸部形成領域を形成する工程である、請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法
    .011≦(Lmax-Lmin)/Lmax≦0.087 ・・・関係式(2)
    (関係式(2)中、
    Lmaxは、関係式(1)中のLmaxと同義であり、前記電子写真感光体の軸方向における、該凹凸部形成領域の中央部から片端部までの距離Lの最大値であり、
    Lminは、関係式(1)中のLminと同義であり、前記電子写真感光体の軸方向における、該凹凸部形成領域の中央部から片端部までの距離Lの最小値である。)
  3. 前記工程以下の関係式(3)を満たすように前記凹凸部形成領域を形成する工程である、請求項1は2に記載の電子写真感光体の製造方法
    0.100≦(Lmax-Lmin)/P≦0.333 ・・・関係式(3)
    (関係式(3)中、
    Lmaxは、関係式(1)中のLmaxと同義であり、前記電子写真感光体の軸方向における、該凹凸部形成領域の中央部から片端部までの距離Lの最大値であり、
    Lminは、関係式(1)中のLminと同義であり、前記電子写真感光体の軸方向における、該凹凸部形成領域の中央部から片端部までの距離Lの最小値であり、
    Pは、前記円筒状の電子写真感光体の軸方向に垂直な断面の直径である。)
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