JP7217599B2 - 偏光フィルムの製造方法及び製造システム - Google Patents
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Description
偏光フィルムは、可撓性の偏光フィルム前駆体が複数の処理設備を通過するようにすることにより得られる。処理設備は、例えば処理槽であり、その中の槽液の条件が、偏光フィルムの品質に対して影響をもたらすため、適切な方式で槽液の変化を一定範囲内に制御する必要がある。例えば、一般に、必要な処理槽に各種平衡用の薬剤を投入し、かつ定期的に槽液を交換する。
ある実施形態では、照光環境は、波長550nm~780nmの光の中にあることである。
ある実施形態では、非酸化性雰囲気は、窒素雰囲気及び/又は不活性ガス雰囲気である。
ある実施形態では、非酸化雰囲気を処理槽に注入する通気量は、5L/min~100L/minとしてもよく、好ましくは5L/min~10L/minである。雰囲気環境の制御気圧は、システムのこの処理槽以外の部分の環境気圧よりも大きくすることができる。例えば、この制御気圧とこの環境気圧の気圧差は、1Pa(パスカル)~30Paとしてもよい。
ある実施形態では、処理槽中の雰囲気環境は第1の体積を有し、処理槽中の槽液は第2の体積を有し、第1の体積を第2の体積で除した比は、0.01と0.5の間であってもよく、好ましくは0.01と0.05の間である。
ある実施形態では、この処理槽の中で還元剤を合わせて使用してもよい。還元剤は、重量%が10%±2%の水溶液としてもよい。還元剤を槽液に注入する流量は、0.1L/min~1L/minとしてもよい。
ある実施形態では、偏光フィルム前駆体がこの処理槽を通過するときに、この槽液が波長550nm~780nmの光の照射を受けるようにする。
ある実施形態では、偏光フィルム前駆体がこの処理槽を通過するときに、槽液が窒素雰囲気及び/又は不活性ガス雰囲気下にあるようにする。非酸化性雰囲気の制御気圧を、システムのこの処理槽以外の部分の環境気圧よりも大きくしてもよい。例えば、この制御気圧とこの環境気圧の気圧差は、1Pa~30Paとしてもよい。
ある実施形態では、この処理槽の槽液中のヨウ素イオン含有量を定期的にモニタリングし、ヨウ素イオン含有量が0.5mM以上であるときに、還元剤を槽液中に投入するか、又は槽液を交換してもよい。
図1に示すように、システムの処理設備は、処理スペース30の中に設けてもよく、処理スペース30は、例えば処理室又は処理部屋としてもよいが、それに限定されない。
偏光フィルム前駆体10は、システムの複数のロール31により搬送され、各処理設備(21~26)を順次通過して、偏光フィルム10’を形成する。偏光フィルム10’は、光線を非偏光から偏光に変換することができ、例えば、二色性色素を吸着配向させたポリビニルアルコール(PVA)フィルム又は液晶材料に染料分子を吸収させて形成される。
ある実施形態では、槽液は、ホウ酸を1重量部~10重量部、及びヨウ化カリウムを1重量部~30重量部含む水溶液である。
ある実施形態では、架橋処理の温度は10℃~70℃としてもよく、架橋処理の時間は1秒~600秒である。
ある実施形態では、架橋処理は、酸性環境下で行い、pHは例えば2~5である。そのため、架橋槽の槽液は、さらにpH調整剤を含有してもよい。
pH調整剤は、過塩素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、フッ化水素酸、ギ酸、アスコルビン酸、及び/又は酢酸を用いてもよい。
ある実施形態では、前記のヨウ素系光学調整剤を用いることにより、槽液中に形成されるヨウ素イオン(I-)が、架橋処理で用いる酸性環境下で、自発的に酸化してヨウ素分子(I2)となるが、ヨウ素イオン、ヨウ素分子の濃度を維持及び制御するために、架橋槽の槽液にさらに還元剤を含有してもよい。還元剤は、硫酸塩、チオ硫酸塩、亜ジチオン酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸、亜硝酸塩、鉄塩、及び/又はスズ塩を用いてもよい。
ある実施形態では、光源32の数は、20~60個としてもよく、例えば30~40個である。
ある実施形態では、光源32の槽液からの垂直高さd3は、2~10メートルとしてもよい。
別の実施形態では、制御しようとする少なくとも1つの処理槽(23、24)と他の処理設備(21、22、25、26)とを光学的に隔離して、この処理槽を単独で制御し、少なくとも偏光フィルム前駆体がこの処理槽を通過するときに、処理槽中の槽液が波長430nm以下の光の照射を受けないようにしてもよい。例えば、偏光フィルム前駆体がこの処理槽を通過するときに、処理槽を暗い場所に置いてもよい。又は、システムのモニタリング、又は手作業の補助操作処理等を行う目的のために、特別に、この処理槽に1つの光源を提供し、この光源が発する光の波長は430nm以上であり、好ましくは550nm~780nmである。
図1に示すように、雰囲気制御設備33は、例えばタンクカバーである。タンクカバーは、気体注入口34を含む。タンクカバーは、気体排出口も提供する。例えば、このタンクカバー及びこの少なくとも1つの処理槽(23、24)は、偏光フィルム前駆体10が処理槽を出入りする位置に、気体排出口35が形成されている。
ある実施形態では、ガス雰囲気は、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気を選ぶことが好ましい。
ある実施形態では、この窒素雰囲気及び/又は不活性ガス雰囲気の制御気圧P1は、システムのこの少なくとも1つの処理槽以外の部分の環境気圧P2よりも大きくしてもよい。このようにして、制御気圧P1と環境気圧P2の気圧差により、偏光フィルム前駆体10がこの少なくとも1つの処理槽を出入りする位置が封止されていなくても、気体排出口35が自然に形成され、この少なくとも1つの処理槽(23、24)中の槽液が非酸化性雰囲気下にあるようにし、酸化性ガスの環境雰囲気(例えば空気)により影響を受けないようにする。
ある実施形態では、制御気圧P1と環境気圧P2の気圧差は、1Pa~30Paとしてもよい。すなわち、P1-P2=1~30Paである。
ある実施形態では、非酸化雰囲気を処理槽に注入する通気量は、5L/min~100L/minであり、例えば5L/min~10L/minである。
ある実施形態では、処理槽中の雰囲気環境は第1の体積V1を有し、処理槽中の槽液は第2の体積V2を有し、第1の体積V1を第2の体積V2で除した比は、0.01と0.5の間であり、例えば0.01と0.05の間である。
ある実施形態では、1つのタンクカバーは1つの処理槽に対応する。
別の実施形態では、1つのタンクカバーは、複数の処理槽に対応してもよく、例えば、1つのタンクカバーを用いて、雰囲気を制御する必要のあるすべての処理槽を覆ってもよい。
例えば、ある実施形態では、架橋槽23(及び補色槽24)の槽液中のヨウ素イオン含有量を定期的にモニタリングし、ヨウ素イオン含有量が所定値(例えば0.5mM)以上であるとき、還元剤を槽液中に投入するか、又は槽液を交換する(例えば、槽液自体は、還元剤をすでに含有しているが、基準を超える状況が発生した場合)。
ある実施形態では、架橋槽23(及び補色槽24)の槽液中のヨウ素イオン含有量が0.5mM以上であるとき、偏光フィルム10’の品質が明らかに影響を受けていることがわかるため、それを前記所定値とする。架橋槽23(及び補色槽24)が照光及び雰囲気の制御を受ける場合、1つの側面として、還元剤の用量を減らし、還元剤のアニオンが槽液中で累積して偏光フィルム10’の品質に影響をもたらす状況を軽減することができる。また、活性炭の使用を省略又は減少することもできる。もう1つの側面として、槽液の交換時間を延長し、システムを停止する必要がある時間を短くすることができ、生産量を高め、又は製造速度を速めることができる。
ある実施形態では、槽液交換の過程で、ろ過等の処理も行ってもよい。前記制御を受けたい少なくとも1つの処理槽(染色槽22、架橋槽23、補色槽24)に連通した外部タンクは、同じ槽液を有するため、類似の方式を用いて制御してもよい。図2に示すように、外部タンク40は、処理スペース30の外に設けられており、染色槽22、架橋槽23、補色槽24のいずれかに連通している。外部タンク40中には、ヨウ素イオンを含有する槽液を有する。この槽液は、照光環境及び雰囲気環境の少なくともいずれかにおいて、槽液のある照光環境が波長430nm以上の光の中にあり、且つ/又は槽液のある雰囲気環境が非酸化性雰囲気であるようにする。
純水60g、ホウ酸2.5g、ヨウ化カリウム7.2g及び硫酸0.1gを均等に混ぜ、沈殿物がなくなるまで撹拌し、架橋槽/補色槽中の槽液を模した試料とした。
[実験配置]
照光制御実験の実験配置は、図3に示すように、容器141の中に前記方式で調製した試料142を入れ、全体を空気中に暴露した。光源132で照射し、光源132と試料142の距離d1は25cmとした。実施例1~3及び比較例1~3について、それぞれ波長610nmの赤い光の光源、波長550nmの緑の光の光源、波長500nmの青緑の光の光源、波長430nmの青い光の光源、波長340nmの紫外光光源、及び波長280nmの紫外光光源を用い、照度はいずれも700ルーメンとした。照射を行う前及び照射の1時間後に、それぞれ試料142を取り出し、紫外可視分光光度計(UV-2450,Shimadzu)を用いて、吸収波長350nmに設定されたヨウ素の極大吸収ピークを計測し、これにより試料142のヨウ素分子濃度(mM)を測定した。
照光制御実験の実験結果は、表1に記載する通りであった。表1の比較例1~3からわかるように、照射した光の波長が430nm以下であるとき、1時間以内に還元剤の投入又は槽液の交換を行う必要があった。
これに対し、実施例1~3のように波長430nm以上の光を用いて照射したとき、少なくとも1時間間隔でモニタリングした場合、槽液中のヨウ素イオン含有量は、注意していないときに所定値(例えば0.5mM)を超えておらず、形成された偏光フィルムの品質に影響を及ぼしていない。表1の実施例1~2からさらにわかるように、波長550nm~780nmの範囲内の光源を用いたとき、架橋槽/補色槽の調整/交換時間は、倍以上まで延長することができた。
[実験配置]
雰囲気制御実験の実験配置は、図4に示すように、容器241の中に前記方式で調製した試料242を入れ、容器241をプラグ233により封止し、試料242まで延伸した管234を挿入して気体注入口とし、試料242に接しない管235を挿入して気体排出口とした。実施例4~5及び比較例4~5について、試料242を入れた後、プラグ233を用いて密閉空間を構成し、真空引きし、さらに管234によりアルゴン、窒素、酸素、空気をそれぞれ注入し、気体流量は300cc/minとした。光源232で照射し、光源232と試料242の距離d2は30cmとした。白い光の光源を用い、照度は700ルーメンとした。照射を行う前及び照射の1日後に、それぞれ試料242を取り出し、紫外可視分光光度計(UV-2450,Shimadzu)を用いて、吸収波長350nmに設定されたヨウ素の極大吸収ピークを計測し、これにより試料242のヨウ素分子濃度(mM)を測定した。
照光制御実験の実験結果は、表2に記載する通りであった。表2の実施例4~5と比較例4~5を比較してわかるように、非酸化性ガスと、酸化性ガスを含む酸素及び空気とを用いて、ヨウ素分子の増加濃度は、1桁の差が認められた。そのため、架橋槽/補色槽の槽液を非酸化性ガス下で制御すると、調整/交換時間を大幅に延長することもできる。
Claims (19)
- 偏光フィルムを形成するよう、偏光フィルム前駆体を処理するために用いられる複数の処理設備を含む、偏光フィルムを製造するためのシステムであって、
前記処理設備は、ヨウ素イオンを含有する槽液をその中に有する処理槽を含み、
前記偏光フィルム前駆体が前記処理槽を通過するときに、
前記槽液のある照光環境が波長550nm~780nmの光の中にある、又は、
前記槽液のある照光環境が波長550nm~780nmの光の中にあり、且つ前記槽液のある雰囲気環境が非酸化性雰囲気であるようにする、偏光フィルムの製造システム。 - 偏光フィルムを形成するよう、偏光フィルム前駆体を処理するために用いられ、処理槽を含む複数の処理設備と、
[i]前記処理槽に連通し、ヨウ素イオンを含有する槽液をその中に有し、前記槽液のある照光環境が波長550nm~780nmの光の中にあるようにする外部タンク、又は、[ii]前記処理槽に連通し、ヨウ素イオンを含有する槽液をその中に有し、前記槽液のある照光環境が波長550nm~780nmの光の中にあり、且つ前記槽液のある雰囲気環境が非酸化性雰囲気であるようにする外部タンクと、を含む、偏光フィルムの製造システム。 - 前記非酸化性雰囲気は、窒素雰囲気及び/若しくは不活性ガス雰囲気であり、且つ/又は前記非酸化性雰囲気の通気量は5L/min~100L/minである、請求項1又は2に記載のシステム。
- 前記雰囲気環境の制御気圧は、環境気圧よりも大きい、請求項1又は2に記載のシステム。
- 前記制御気圧と前記環境気圧の気圧差は、1Pa~30Paである、請求項4に記載のシステム。
- 1つ又は複数の光源を含み、前記光源は、波長550nm~780nmの光を発して前記照光環境をもたらし、且つ/又は前記光源の照度は、150~1000ルーメンであり、且つ/又は前記1つ又は複数の光源の数は、20~60個であり、且つ/又は前記光源の前記槽液からの垂直高さは、2~10メートルである、請求項1又は2に記載のシステム。
- 前記雰囲気環境は第1の体積を有し、前記槽液は第2の体積を有し、前記第1の体積を前記第2の体積で除した比は、0.01と0.5の間である、請求項1又は2に記載のシステム。
- 気体通入口を含むタンクカバーを含み、前記タンクカバーは、気体排出口も提供する、請求項1又は2に記載のシステム。
- 前記槽液は、さらに還元剤を含有し、前記還元剤は、重量%が10%の水溶液であり、且つ前記還元剤を前記槽液に注入する流量は、0.1L/min~1L/minである、請求項1又は2に記載のシステム。
- 前記処理槽は、染色槽、架橋槽及び補色槽からなる群より選ばれる、請求項1に記載のシステム。
- 偏光フィルムを形成するよう、偏光フィルム前駆体を処理するために用いられる複数の処理設備を含む、偏光フィルムを製造するためのシステムであって、
前記処理設備は、ヨウ素イオンを含有する槽液をその中に有する処理槽を含み、前記槽液のある照光環境及び雰囲気環境の少なくともいずれかにおいて、前記偏光フィルム前駆体が前記処理槽を通過するときに、前記槽液のある前記照光環境が波長430nm以上の光の中にあり、且つ/又は前記槽液のある前記雰囲気環境が非酸化性雰囲気であるようにし、
前記槽液は、さらに還元剤を含有し、前記還元剤は、重量%が10%の水溶液であり、且つ前記還元剤を前記槽液に注入する流量は、0.1L/min~1L/minである、偏光フィルムの製造システム。 - 偏光フィルムを形成するよう、偏光フィルム前駆体を処理するために用いられ、処理槽を含む複数の処理設備と、
前記処理槽に連通し、ヨウ素イオンを含有する槽液をその中に有し、前記槽液のある照光環境及び雰囲気環境の少なくともいずれかにおいて、前記槽液のある前記照光環境が波長430nm以上の光の中にあり、且つ/又は前記槽液のある前記雰囲気環境が非酸化性雰囲気であるようにする外部タンクと、を含み、
前記槽液は、さらに還元剤を含有し、前記還元剤は、重量%が10%の水溶液であり、且つ前記還元剤を前記槽液に注入する流量は、0.1L/min~1L/minである、偏光フィルムの製造システム。 - 偏光フィルムを形成するよう、ヨウ素イオンを含有する槽液をその中に有する処理槽を含む複数の処理設備に偏光フィルム前駆体を通過させることと、
[iii]前記偏光フィルム前駆体が前記処理槽を通過するときに、前記槽液のある照光環境が波長550nm~780nmの光の中にあるように制御すること、又は、[iv]前記偏光フィルム前駆体が前記処理槽を通過するときに、前記槽液のある前記照光環境が波長550nm~780nmの光の中にあり、且つ前記槽液のある雰囲気環境が非酸化性雰囲気であるように制御することと、を含む、偏光フィルムの製造方法。 - 前記偏光フィルム前駆体が前記処理槽を通過するときに、前記槽液が窒素雰囲気及び/又は不活性ガス雰囲気下にあるようにする、請求項13に記載の方法。
- 前記複数の処理設備は、システムに含まれ、
前記非酸化性雰囲気の制御気圧を、前記システムの前記処理槽以外の部分の環境気圧よりも大きくする、請求項13に記載の方法。 - 前記制御気圧と前記環境気圧の気圧差は、1Pa~30Paである、請求項15に記載の方法。
- 前記処理槽の前記槽液中のヨウ素イオン含有濃度を定期的にモニタリングし、前記ヨウ素イオン含有濃度が0.5mM以上であるときに、還元剤を前記槽液中に投入するか、又は前記槽液を交換することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
- 前記処理槽は、染色槽、架橋槽及び補色槽からなる群より選ばれる、請求項13に記載の方法。
- 偏光フィルムを形成するよう、ヨウ素イオンを含有する槽液をその中に有する処理槽を含む複数の処理設備に偏光フィルム前駆体を通過させることと、
前記槽液のある照光環境及び雰囲気環境の少なくともいずれかにおいて、前記偏光フィルム前駆体が前記処理槽を通過するときに、前記槽液のある前記照光環境が波長430nm以上の光の中にあり、且つ/又は前記槽液のある前記雰囲気環境が非酸化性雰囲気であるように制御することと、
前記処理槽の前記槽液中のヨウ素イオン含有濃度を定期的にモニタリングし、前記ヨウ素イオン含有濃度が0.5mM以上であるときに、還元剤を前記槽液中に投入するか、又は前記槽液を交換することと、を含む、偏光フィルムの製造方法。
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