以下、本発明を具体化した最良の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、本発明に係る1つの具体例である第1実施形態について説明し、その後、第1実施形態とは異なる具体例である第2実施形態について説明する。
(第1実施形態)
<成形品>
まず、第1実施形態に係る射出成形装置により製造される成形品について説明する。図1に、成形品の具体的な例としてのバンパー10を示している。本形態のバンパー10は、図1に示すように、車両1の前方部分に取り付けられる車両部品である。バンパー10は、車両1における前方面を構成する本体部20と、本体部20から屈曲部30を介して車両1の後方側に延びる本体外縁部40とを有している。本体外縁部40の後方側の端縁部50は、車両1の前輪のタイヤハウスに対応した形状をしている。また、端縁部50の付近には、本体外縁部40から車両1の内側へと起立して設けられたフランジ部100が設けられている。フランジ部100は、端縁部50に沿って連続して設けられている。この端縁部50に沿った方向を、フランジ部100の延伸方向とする。
図2に、バンパー10の図1に示すA-A位置における断面図を示す。図2に示すように、バンパー10は、本体部20と、本体部20の左右方向における両端からそれぞれ屈曲部30を介して設けられた本体外縁部40と、本体外縁部40の端縁部50付近から内側に起立したフランジ部100とを有している。本形態のバンパー10は、図2において、本体部20の中央位置に示す線Cについて線対称の形状である。このため、バンパー10は全体として壺状の形状をしている。また、バンパー10の表面である意匠面11は、主に、本体部20の本体表面21と、屈曲部30の屈曲表面31と、本体外縁部40の外縁表面41とにより構成されている。この意匠面11は、車両1の表面の一部を構成する面である。よって、本形態では特に、意匠面11への不具合箇所の発生について抑制することが重要である。なお、意匠面11の裏面12は、主に、本体部20の本体裏面22、屈曲部30の屈曲裏面32、本体外縁部40の外縁裏面42により構成されている。
図3に、図2に示す矢印Bの向きから見たときのフランジ部100を示す。フランジ部100は、本体外縁部40の端縁部50に沿って設けられている端フランジ部110と、端縁部50から離れた位置に設けられている中フランジ部120と、端フランジ部110と中フランジ部120との間に設けられ、これらをつなぐ接続フランジ部130とを有している。つまり、中フランジ部120は、端縁部50よりも、屈曲部30側に変位した位置に設けられている。このため、本体外縁部40には、外縁裏面42側にて、中フランジ部120と接続フランジ部130により区画された端部領域45が存在している。このため、端部領域45は、本体外縁部40における中フランジ部120よりも端縁部50側の範囲である。また、外縁裏面42のうち、端部領域45の範囲内の箇所を端部裏面46として示している。
また、フランジ部100の表面は、端フランジ部110の端フランジ表面111、中フランジ部120の中フランジ表面121、接続フランジ部130の接続フランジ表面131により構成されている。フランジ部100の裏面は、端フランジ部110の端フランジ裏面112、中フランジ部120の中フランジ裏面122、接続フランジ部130の接続フランジ裏面132により構成されている。なお、図2は、図3にA-A位置を示すように、端フランジ部110の位置におけるバンパー10の断面図である。
<射出成形装置>
次に、本発明に係る射出成形装置について説明する。まず、射出成形装置200の構造について、図4~図6により説明する。
図4は、射出成形装置200の型閉じ状態における断面図である。なお、図4は、図3に示すA-A位置、すなわち端フランジ部110の位置における断面図である。また、図4には、射出成形装置200のバンパー10における一方の本体外縁部40の側のみを示しており、他方の本体外縁部40側については図4と対称の構造である。
図4に示すように、射出成形装置200は、固定型300と可動型400とを有しており、型閉じ状態にて型閉じ位置に位置する可動型400と固定型300との間に形成されるキャビティ201に溶融樹脂を充填することで、バンパー10を成形することができる。なお、成形されたバンパー10が取り出される際には、射出成形装置200は型開き状態となる。型開き状態における射出成形装置200では、可動型400が固定型300から離間した型開き位置をとる。図4には、可動型400の移動方向である型開閉方向ODを示している。型開閉方向ODは、バンパー10における端フランジ部110の起立している方向と交差する方向である。
固定型300は、バンパー10の意匠面11を成形する成形面301を有している。つまり、成形面301は、本体部20の本体表面21、屈曲部30の屈曲表面31、本体外縁部40の外縁表面41に対応した形状をしている。
可動型400は、端フランジ部110の位置における断面において、可動本体型410、端縁成形コア500、フランジ押出コア600を有している。端縁成形コア500およびフランジ押出コア600は、可動本体型410に対して移動可能に設けられている。型閉じ状態において、可動本体型410、端縁成形コア500、フランジ押出コア600はいずれも、バンパー10の外面を成形する際の位置である成形位置に位置している。
可動本体型410は、バンパー10の意匠面11の裏面12を成形する成形面411を有している。つまり、成形面411は、本体部20の本体裏面22、屈曲部30の屈曲裏面32、本体外縁部40の外縁裏面42に対応した形状をしている。また、可動本体型410は、端フランジ部110の端フランジ裏面112を成形する成形面412と、端フランジ部110の突出方向における先端に位置する先端面113に対向して設けられた外側面415とを有している。そして、可動本体型410の外側面415の外側には、フランジ押出コア600および端縁成形コア500がこの順で配置されている。
フランジ押出コア600は、端フランジ部110の端フランジ表面111を成形する成形面601と、先端面113を成形する成形面602とを有している。また、フランジ押出コア600は、可動本体型410の外側面415と対向する内側面605と、内側面605の裏面である外側面610とを有している。なお、成形位置に位置するフランジ押出コア600は、内側面605が、可動本体型410の外側面415に接触した状態となっている。また図4には、内側面605と外側面610との距離であるフランジ押出コア600の厚みXを示している。この厚みXであるフランジ押出コア600の部分を、フランジ押出コア600の端フランジ範囲600Xとする。さらに、フランジ押出コア600には、外側面610に開口するばね収容部680が形成されている。
フランジ押出コア600は、バンパー10の脱型の際には、成形面602により、端フランジ部110の先端面113を押圧する向きに移動する。そして、フランジ押出コア600の脱型位置は、成形面602が可動本体型410の成形面411から突出するまで、脱型時の移動方向に移動した位置である。
端縁成形コア500は、端縁部50に設けられた端縁曲面43を成形する成形面501を有している。つまり、本形態のバンパー10は、端縁部50の角部が曲面(R面)とされている。また、端縁部50の端縁曲面43は、外縁表面41と端フランジ表面111とをつなぐ曲面である。そして、成形面501は、端縁曲面43に対応した凹形状の曲面である。また、端縁成形コア500は、フランジ押出コア600の外側面610と対向する内側面505を有している。なお、成形位置に位置する端縁成形コア500は、内側面505が、フランジ押出コア600の外側面610に接触した状態となっている。
さらに、端縁成形コア500には、内側面505に開口するばね収容部570が形成されている。そして、フランジ押出コア600のばね収容部680と端縁成形コア500のばね収容部570とにはそれぞれ、付勢手段である圧縮ばね580の両端が収容されている。これにより、圧縮ばね580は、フランジ押出コア600と端縁成形コア500とを互いに遠ざける向きの付勢力を発生させることができる。また、端縁成形コア500には、その内側面505より突出して設けられ、先端が折れ曲がった全体としてL字状の鉤部材520が設けられている。鉤部材520の先端内面521はフランジ押出コア600の内側面605との間に隙間を設けつつ対向しており、その隙間の大きさをG1により示している。
端縁成形コア500は、バンパー10の脱型の際には、成形面501が、端縁曲面43から離れる向きに移動する。本形態では、端縁成形コア500の脱型時の移動方向は、フランジ押出コア600の脱型時の移動方向と同じである。
図5は、図3に示すD-D位置、すなわち中フランジ部120の位置における型閉じ状態の射出成形装置200の断面図である。図5においても、射出成形装置200のバンパー10における一方の本体外縁部40の側のみを示しており、他方の本体外縁部40側については図5と対称の構造である。ここでは、中フランジ部120の位置における断面について、端フランジ部110の位置における断面と異なる箇所について説明する。
図5に示すように、可動本体型410は、中フランジ部120の中フランジ裏面122を成形する成形面413を有している。また、可動本体型410には、貫通孔417が形成されている。貫通孔417の一方の開口部は、可動本体型410の成形面411に開口している。可動本体型410の貫通孔417には、エジェクタピン420が挿入されている。型閉じ状態において成形位置にあるエジェクタピン420は、先端421により、可動本体型410の成形面411における貫通孔417の開口部を塞いでいる。このため、エジェクタピン420の先端421は、本体部20の本体裏面22の成形面としても機能する。また、エジェクタピン420の先端421とは反対側の端には、押出可動部430が接続されている。押出可動部430は、所定の駆動源の駆動力により移動し、エジェクタピン420の先端421を成形面411よりも突出させることができる。押出可動部430の駆動源としては、空気圧シリンダや油圧シリンダ等を使用することができる。
フランジ押出コア600は、中フランジ部120の位置では、成形面602が、中フランジ部120の突出方向における先端に位置する先端面123を成形する面となっている。また、フランジ押出コア600は、中フランジ部120の位置では、端フランジ部110の位置よりも、厚みが薄くされている。具体的に、本形態において、中フランジ部120の位置におけるフランジ押出コア600は、内側面605の裏面である外側面611が、成形面602と同一面となっている。図5には、内側面605と外側面611との距離であるフランジ押出コア600の厚みYを示している。この厚みYであるフランジ押出コア600の部分を、フランジ押出コア600の中フランジ範囲600Yとする。また、フランジ押出コア600は、外側面611に設けられたブロック620を有している。ブロック620には、貫通孔621が形成されている。
中フランジ部120の位置において、可動型400には、中スライドコア700が設けられている。中スライドコア700は、フランジ押出コア600と端縁成形コア500との間に設けられている。このため、中スライドコア700は、フランジ押出コア600の外側面611と対向する内側面705と、内側面705の裏面である外側面706とを有している。そして、中スライドコア700は、内側面705が、フランジ押出コア600の外側面611に接触している。
中スライドコア700は、中フランジ部120の中フランジ表面121を成形する成形面701を有している。また、中フランジ部120は、本体外縁部40につながる部分である基端部125が、それよりも先端側に位置する先端部126よりも厚みが薄くされている。本形態では、中フランジ部120の中フランジ表面121が、先端部126よりも基端部125の位置において凹んでいる。そして、中スライドコア700は、基端部125に対応する部分に隆起部710を有しており、これにより、成形面701は、先端部126に対応する箇所よりも基端部125に対応する部分がもり上がっている。
また、中スライドコア700は、本体外縁部40の端部領域45における端部裏面46を成形する成形面703と、本体外縁部40の屈曲部30側とは反対側の端面47を成形する成形面704とを有している。さらに、中スライドコア700は、成形面701の反対側に、非押圧面711を有している。非押圧面711は、外側面706側の箇所ほど、成形面701との距離が近くなる向きに傾斜したカム面である。加えて、中スライドコア700には、外側面706に開口する止まり穴740が形成されている。止まり穴740は、外側面706に対して傾斜して設けられており、その傾斜の程度は非押圧面711と同じ傾斜とされている。
また、中スライドコア700には、非押圧面711から突出したばねガイドピン720が設けられている。ばねガイドピン720は、先端部721が中スライドコア700に固定されている。また、ばねガイドピン720は、フランジ押出コア600に設けられたブロック620の貫通孔621の内部に挿入されているとともに、その頭部722が、ブロック620よりも突き出ている。そして、ばねガイドピン720の頭部722とブロック620との間には、付勢手段である圧縮ばね730が設けられている。よって、圧縮ばね730は、中スライドコア700に対し、中スライドコア700を中フランジ部120から遠ざける向きの付勢力を作用させることができる。中スライドコア700は、バンパー10の脱型の際には、成形面701が、バンパー10の中フランジ部120から離れる向きに移動する。すなわち、中スライドコア700の脱型時の移動方向は、圧縮ばね730の付勢の向きと同じである。
中フランジ部120の位置において、成形位置に位置する端縁成形コア500は、内側面505が、中スライドコア700の外側面706に接触した状態となっている。また、中フランジ部120の位置において、端縁成形コア500は、内側面505より突出した押圧ブロック510を有している。押圧ブロック510は、内側面505から突出している部分に、中スライドコア700の非押圧面711に対応した押圧面511を有している。型閉じ状態において、押圧ブロック510の押圧面511は、非押圧面711に接触している。つまり、端縁成形コア500が成形位置に位置するとき、押圧面511は、中スライドコア700を、圧縮ばね730の付勢力に抗って押圧することができるカム面である。そして、圧縮ばね730の付勢力と押圧面511からの押圧力とにより、中スライドコア700は、その成形位置にて固定されている。
また、端縁成形コア500には、中フランジ部120の位置において、内側面505から突出したピン560が設けられている。ピン560は、中スライドコア700の止まり穴740に対応した位置に、止まり穴740に対応した傾斜角度で設けられている。そして、ピン560の先端は、中スライドコア700の止まり穴740の内部に挿入されている。
さらに、可動型400は、端縁成形コア500の下方に示す駆動源800を有している。駆動源800としては、例えば、空気圧シリンダや油圧シリンダ等を用いることができる。駆動源800は、固定された駆動本体部801と、駆動本体部801に対して移動する可動部802とを有している。可動部802には、フローティングジョイント810が設けられており、フローティングジョイント810は、端縁成形コア500に固定されたジョイントブロック530に接続されている。よって、駆動源800の駆動力により、端縁成形コア500が移動できる構成となっている。
図6は、図5に示すE-E位置における断面図である。図6に示すように、フランジ押出コア600には、凹部630が形成されている。その凹部630の底面が、外側面611である。外側面611には、中スライドコア700をその移動方向についてガイドするガイドブロック780が、中スライドコア700を挟み込むように設けられている。ガイドブロック780は、中スライドコア700の外面のうち、フランジ部100の延伸方向における両方の端面708をガイドするものである。これにより、中スライドコア700は、フランジ部100の中フランジ部120に近づく向きおよび中フランジ部120から遠ざかる向きに移動することができる。
次に、射出成形装置200からバンパー10を取り出す際の可動型400の動きについて、図7から図11により説明する。
図7は、型閉じ状態から型開き状態へと移行する途中における射出成形装置200の、中フランジ部120における断面図である。すなわち、図5に示す型閉じ状態から型開きが行われる際には、可動型400が、固定型300から離れる向きに移動する。この型開きの際に、バンパー10は、固定型300から離れ、可動型400に保持された状態となる。
次に、駆動源800により、端縁成形コア500を、成形位置から脱型位置に向けて移動させる。図8には、端縁成形コア500および中スライドコア700が脱型位置まで移動したときを示している。
図8に示すように、端縁成形コア500の脱型位置は、その成形位置においては鉤部材520の先端内面521とフランジ押出コア600の内側面605と間に形成されていた隙間の大きさG1だけ、駆動源800の駆動力により、成形位置から移動した位置である。脱型位置における端縁成形コア500は、成形面501が、端縁曲面43から離間している。また図8では、鉤部材520の先端内面521とフランジ押出コア600の内側面605とが接触している。さらに、端縁成形コア500が中スライドコア700から離れる向きに移動したことで、端縁成形コア500の内側面505と中スライドコア700の外側面706との間には、大きさG1の隙間が形成されている。なお、前述したように、フランジ押出コア600と端縁成形コア500との間には、これらを互いに遠ざける向きの付勢力を発生させる圧縮ばね580が設けられている。このため、端縁成形コア500が距離G1だけ移動する間、フランジ押出コア600が端縁成形コア500と一緒に移動してしまうことは抑制されている。
また、図8に示すように、中スライドコア700の脱型位置は、成形面701が、成形位置よりも距離Hだけ、中フランジ部120の中フランジ表面121から離間した位置である。すなわち、脱型時には、端縁成形コア500が中スライドコア700から離れる向きに移動したことで、中スライドコア700の非押圧面711を押圧する押圧面511についても同様に移動する。これに伴い、非押圧面711の押圧面511への接触箇所は、中スライドコア700の脱型時の移動方向に移動する。また、端縁成形コア500が成形位置から脱型位置へと距離G1だけ移動したときには、その移動に伴い、中スライドコア700は、成形位置から脱型位置へと距離Hだけ移動する。そして、中スライドコア700の脱型位置では、中スライドコア700の成形面701と中フランジ部120の中フランジ表面121との間には、距離Hの大きさの隙間が形成されている。
図9には、フランジ押出コア600を脱型位置まで移動させたときを示している。図9に示すように、フランジ押出コア600の脱型位置は、成形面602が、可動本体型410の成形面411から突出する位置である。本形態において、フランジ押出コア600の脱型位置は、図9に示すように、内側面605が、可動本体型410の外側面415から距離G2だけ離れた位置である。
フランジ押出コア600の脱型位置への移動は、図8の状態からさらに、駆動源800の駆動力により、端縁成形コア500を脱型時の移動方向へ移動させることでなされる。すなわち、鉤部材520の先端内面521とフランジ押出コア600の内側面605とが接触した後には、フランジ押出コア600は、その脱型時の移動方向に、駆動源800の駆動力によって、端縁成形コア500と一体となって移動する。よって、本形態の駆動源800は、脱型時には、距離G1と距離G2とを合わせた距離だけ移動する駆動力を発生させる。なお、端縁成形コア500および中スライドコア700は、フランジ押出コア600が成形位置から脱型位置へと移動する間、それぞれの脱型位置をとった状態を維持したまま、フランジ押出コア600とともに移動している。
そして、図9に示すように、フランジ押出コア600が脱型位置をとることで、中フランジ部120の先端面123を、可動本体型410の成形面411よりも外側へと移動させることができている。この先端面123が成形面411よりも外側へと移動した位置が、中フランジ部120の脱型位置である。つまり、フランジ押出コア600は、脱型位置まで移動することで、中フランジ部120をその脱型位置まで移動させることができる。また、中フランジ部120の脱型位置は、バンパー10がエジェクタピン420の移動方向である、バンパー10の可動型400からの取り外し方向に移動したときに、中フランジ部120の可動本体型410への干渉が生じない位置である。
図10には、フランジ押出コア600を脱型位置まで移動させたときの端フランジ部110の位置における断面を示している。図10に示すように、脱型位置におけるフランジ押出コア600は、端フランジ部110の位置においても、その成形面602が可動本体型410の成形面411よりも突出するまで移動している。そして、フランジ押出コア600が脱型位置をとることで、端フランジ部110の先端面113についても可動本体型410の成形面411よりも外側へと移動させ、端フランジ部110をその脱型位置まで移動させることができている。
すなわち、図9および図10に示すように、バンパー10のアンダーカット部であるフランジ部100は、その延伸方向におけるどの位置においても、可動本体型410の成形面411よりも外側の脱型位置へと移動されている。また、バンパー10は、その裏面のうちのフランジ部100に近い部分ほど可動本体型410の成形面411から離れるように、屈曲部30の屈曲の向きとは反対側に反った状態となっている。
フランジ押出コア600を脱型位置に位置させた後、図11に示すように、押出可動部430の駆動源により、エジェクタピン420を、その先端421が成形面411から突出するように移動させる。これにより、バンパー10の裏面は、可動本体型410の成形面411から離間されることで取り外される。その後、バンパー10は射出成形装置200内から取り出され、後工程へと送られる。
なお、次のバンパー10を製造する際には、射出成形装置200は、上記で説明した型開きおよび脱型時の動作とは逆の手順で各部を動作させることで、型閉じ状態となる。
ここで、図12から図16を参照しつつ、脱型時のフランジ部100周辺にかかる応力について説明する。
まず、脱型時における端フランジ部110周辺について説明する。図12および図13は、端フランジ部110の位置における拡大断面図である。図12は、端縁成形コア500およびフランジ押出コア600がともに、成形位置に位置する状態を示す図である。図13は、端縁成形コア500が脱型位置に移動した後、フランジ押出コア600が成形位置から脱型位置へと移動する途中の状態を示す図である。
図12および図13に示すように、端フランジ部110は、成形後、厚み方向に拘束された状態で脱型される。具体的に、端フランジ部110は、フランジ押出コア600の成形面601と可動本体型410の成形面412との間に挟み込まれた状態のまま、フランジ押出コア600によって押し出されることで脱型される。このため、端フランジ部110の脱型の際には、端フランジ部110は、図13に二点鎖線で示す自由状態よりも、端フランジ裏面112側へと湾曲した状態となる。
つまり、端フランジ部110には、その脱型時において、端フランジ部110を端フランジ裏面112側へと曲げる向きの曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントにより、端フランジ部110における端フランジ表面111側については引張応力が、端フランジ裏面112側については圧縮応力が発生する。ただし、端フランジ部110の脱型時において、外縁表面41および端縁曲面43に接触している型部材はない。さらに、端フランジ部110の脱型時において、端フランジ部110と本体外縁部40とがつながる箇所である屈曲箇所は拘束されていない状態である。このため、端フランジ部110に作用する曲げモーメントは、本体外縁部40、および、端フランジ部110と本体外縁部40とがつながる箇所である屈曲箇所がある程度、変形することで緩和される。これにより、端フランジ部110に発生する引張応力、圧縮応力は低減されている。よって、端フランジ部110は、その脱型時に白化等が生じにくくされている。また、端フランジ部110に作用する曲げモーメントが緩和されていることで、端フランジ部110につながる本体外縁部40およびこれらの間の屈曲箇所にも、それほど大きな引張応力、圧縮応力が発生しない。よって、端フランジ部110の箇所では、バンパー10の意匠面11に白化等の不良箇所が生じてしまうことが抑制されている。なお、端フランジ部110は、その端フランジ表面111および端フランジ裏面112のどちらも、意匠面11ではない面である。このため、端フランジ部110については、意匠面11とは異なり、脱型時に多少、白化等が生じても、ただちにバンパー10が不良となってしまうものではない。
次に、脱型時における中フランジ部120周辺について説明する。図14および図15は、中フランジ部120の位置における拡大断面図である。図14は、端縁成形コア500および中スライドコア700が成形位置から脱型位置に移動し、フランジ押出コア600がまだ成形位置に位置する状態を示す図である。図15は、フランジ押出コア600が成形位置から脱型位置へと移動する途中の状態を示す図である。
図14および図15に示すように、中フランジ部120は、中スライドコア700が脱型位置に移動した後に、フランジ押出コア600により押し出されることで脱型される。つまり、中フランジ部120がフランジ押出コア600により押し出されるときには、すでに、中フランジ部120の中フランジ表面121と中スライドコア700の成形面701との間には、距離Hの隙間が形成されている。このため、中フランジ部120は、厚み方向に拘束されていない状態で脱型される。よって、本形態では、中フランジ部120の脱型時に、中フランジ部120に大きな曲げモーメントが作用してしまうことが抑制されている。
また、図16に、図15に矢印Fで示す方向から見たときの意匠面11について、脱型時の応力分布をシミュレーションした結果を示す。図16においては、ドットハッチングの密度が高い箇所ほど、大きな引張応力がかかっていることを示している。図16に示すように、脱型時の意匠面11には引張応力が生じていることが分かる。また、意匠面11に発生した引張応力は、裏面側に中フランジ部120または接続フランジ部130が設けられた箇所である。ただし、意匠面11に発生している引張応力は、それほど大きなものではないことがわかる。よって、本形態においては、意匠面11に白化等の不具合箇所が生じてしまうことなく、フランジ部100の脱型処理を行うことができる。
次に、本形態とは異なる構成を用いて中フランジ部120を脱型する比較例について説明する。図17および図18に示す比較例は、端的には、本形態にて端フランジ部110の脱型処理を行う構成を、中フランジ部120にも適用した例である。
具体的に、比較例では、本形態に係る中スライドコア700を設けておらず、中スライドコア700が有する成形面を、フランジ押出コア900に設けている。このため、比較例に係るフランジ押出コア900は、図17に示すように、中フランジ部120の中フランジ表面121を成形する成形面901、先端面123を成形する成形面902、端部裏面46を成形する成形面903、端面47を成形する成形面904を有している。また、フランジ押出コア900は、成形位置では、内側面905が可動本体型410の外側面415に、外側面906が端縁成形コア500の内側面505にそれぞれ接触する。そして、比較例においても、まず、端縁成形コア500が成形位置から脱型位置へと移動した後、フランジ押出コア900が成形位置から脱型位置に移動することで脱型処理がなされる。
図18は、フランジ押出コア900が成形位置から脱型位置へと移動する途中の状態を示す図である。図18に示すように、比較例において、中フランジ部120は、成形後、厚み方向に拘束された状態で脱型される。具体的に、中フランジ部120は、フランジ押出コア900の成形面901と可動本体型410の成形面412との間に挟み込まれた状態のまま、フランジ押出コア900によって押し出されることで脱型される。このため、比較例における中フランジ部120の脱型の際には、中フランジ部120は、図18に二点鎖線で示す自由状態よりも、中フランジ裏面122側へと湾曲した状態となる。
つまり、中フランジ部120には、その脱型時において、中フランジ部120を端フランジ裏面112側へと曲げる向きの曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントにより、中フランジ部120における端フランジ表面111側については引張応力が、端フランジ裏面112側については圧縮応力が発生する。このような曲げモーメントは、前述したように、端フランジ部110においてはそれほど問題とはならない。しかし、中フランジ部120においては、中フランジ部120よりも端縁部50側に、本体外縁部40の端部領域45がある。そして、中フランジ部120に図18に示すような曲げモーメントが作用した場合、中フランジ部120の基端部125の中フランジ表面121側から、そこにつながる本体外縁部40の端部領域45の端部裏面46側の部分に、大きな引張応力が生じてしまうこととなる。
また、図19に、図18に矢印Jで示す方向から見たときの意匠面11について、比較例における脱型時の応力分布をシミュレーションした結果を示す。図19に示すように、比較例では、本形態に係る図16と比較して、脱型時の意匠面11に、大きな引張応力が生じていることが分かる。なお、引張応力は、裏面側において、中フランジ部120と接続フランジ部130とのつながる箇所が存在している部分の周辺にて特に大きくなっている。これは、中フランジ部120と接続フランジ部130とがつながる箇所では、これらが互いにリブの役割となっているために剛性が高く、フランジ押出コア900からの押出力が集中的に作用したためであると考えられる。そして、比較例では、大きな引張応力が生じた意匠面11の箇所では、白化等の不具合箇所が生じてしまうおそれがある。よって、このような比較例との比較により、本形態では、脱型処理時の不具合箇所の形成が抑制され、品質の高いバンパー10が製造されることが分かる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。図20は、第2実施形態に係る成形品であるバンパー80を示す図である。図20には、バンパー80のフランジ部100の斜視図を拡大して示している。バンパー80では、中フランジ部120に、貫通孔150が設けられている。本形態にて中フランジ部120に設けられている貫通孔150は、バンパー80の車両1への固定に用いられる取付孔である。具体的に、車両1には、中フランジ部120の中フランジ裏面122に対応する箇所にバンパー取付面が設けられており、バンパー取付面の貫通孔150に対応する箇所には、めねじ穴が設けられている。そして、バンパー80は、ねじのおねじ部が中フランジ表面121側より貫通孔150に挿入され、そのねじの締結によって車両1へと固定される。本形態のバンパー80は、中フランジ部120に貫通孔150が形成されていること以外、第1実施形態のものと同様である。
このようなバンパー80を成形する本形態の射出成形装置では、中フランジ部120の成形に係る型構成が、第1実施形態と異なる。そこで、本形態の射出成形装置の第1実施形態と異なる点について説明する。図21は、中フランジ部120の貫通孔150の位置における断面図である。本形態の射出成形装置の可動型には、第1実施形態とは異なる中スライドコア790が設けられている。なお、中スライドコア790以外の射出成形装置の構成については、第1実施形態のものと同様である。
図21に示すように、中スライドコア790は、成形面701に凸部791を有している。凸部791は、中フランジ部120の貫通孔150に対応した位置に設けられており、その成形面701からの突出高さは、中フランジ部120の厚みと同じ厚みである。このため、凸部791の側面が、中フランジ部120の貫通孔150の内壁を成形する成形面である。本形態の中スライドコア790についても、成形面701に凸部791が設けられていること以外、第1実施形態のものと同様である。
そして、本形態においても、中フランジ部120の脱型時には、端縁成形コア500が成形位置から脱型位置に移動した後、フランジ押出コア600が成形位置から脱型位置へと移動する。また、端縁成形コア500が成形位置から脱型位置へと移動することに伴い、中スライドコア790が、成形位置から脱型位置へと移動する。なお、本形態では、中スライドコア790の成形位置から脱型位置への移動距離Hは、凸部791の成形面701からの突出高さ(つまり、中フランジ部120の貫通孔150の位置での厚み)よりも大きくされている。
図22は、端縁成形コア500が脱型位置に移動した後、フランジ押出コア600が成形位置から脱型位置へと移動する途中の状態を示す図である。図22に示すように、フランジ押出コア600が成形位置から脱型位置へと移動するときには、中スライドコア790はすでに脱型位置へと移動している。つまり、凸部791が貫通孔150の内部から抜けた後に、中フランジ部120をフランジ押出コア600によって押し出すことができる。よって、その中フランジ部120の押し出しの際に、凸部791が貫通孔150に干渉することがない。
これにより、本形態では、中フランジ部120の貫通孔150を射出成形装置により成形することができる。すなわち、本形態では、後工程として、貫通孔150を形成するための特段の工程を設ける必要がない。従って、バンパー80を効率良く製造することができる。
<作用効果>
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る射出成形装置は、可動型400と固定型300とを備えている。また、型閉じ位置に位置する可動型400と固定型300との間に形成されるキャビティ201に溶融樹脂を充填することで、成形品であるバンパーを射出成形することができる。バンパーには、本体部20、屈曲部30、本体外縁部40、フランジ部100が備えられている。本体外縁部40は、本体部20から屈曲部30を介して本体部20の本体裏面22側へ延伸された部分である。フランジ部100は、本体外縁部40の端縁部50より屈曲部30側に変位した位置に設けられ、本体外縁部40の外縁裏面42から型開閉方向ODと交差する方向へ起立している中フランジ部120を有する。可動型400は、中スライドコア700、790と、フランジ押出コア600とを有する。中スライドコア700、790は、中フランジ部120の中フランジ表面121を成形する成形面701、および、本体外縁部40の端部領域45の端部裏面46を成形する成形面703を有する。フランジ押出コア600は、中フランジ部120の先端面123を成形する成形面602を有し、脱型時には中フランジ部120をその脱型位置へと押し出す。そして、バンパーを可動型400から脱型させる際には、型開き状態において、中スライドコア700、790を成形位置から脱型位置へ移動させた後に、フランジ押出コア600を成形位置から脱型位置まで移動させる。すなわち、中スライドコア700、790を予め脱型位置へ移動させていることにより、フランジ押出コア600が中フランジ部120を押し出したときに、中フランジ部120が拘束されてしまうことが抑制されている。このため、押し出される際の中フランジ部120の自由度が高く、本体外縁部40の中フランジ部120が接続されている箇所における白化等の不具合箇所が生じてしまうことが抑制されている。さらに、このような射出成形装置では、アンダーカット部となる中フランジ部120の脱型処理を行う構成が安価なものである。よって、品質の高い成形品を安価に製造することができる射出成形装置が実現されている。
また、可動型400は、本体外縁部40の端縁部50における角部に端縁曲面43を成形する端縁成形コア500を有する。これにより、端縁部50に型分割線(パーティングライン)が形成されることを回避できる。また、脱型時には、端縁成形コア500を成形位置から脱型位置へと移動させた後に、フランジ押出コア600を成形位置から脱型位置まで移動させる。これにより、端縁部50が脱型時に端縁成形コア500に干渉することを回避できる。
また、可動型400は、駆動源800と圧縮ばね730とを有する。駆動源800は、端縁成形コア500を成形位置と脱型位置との間で移動させる駆動力を発生させるものである。圧縮ばね730は、中スライドコア700、790を成形位置から脱型位置へ向けて付勢する付勢力を発生させる付勢手段である。さらに、端縁成形コア500には、中スライドコア700、790を、圧縮ばね730の付勢力に抗して成形位置へ移動させるカム面である押圧面511が設けられている。これにより、1つの駆動源800により、端縁成形コア500および中スライドコア700、790を、成形位置と脱型位置との間で移動させることができる。よって、射出成形装置を簡素な構成としつつ、その装置コストを低減することができる。
また、脱型時における駆動源800のストロークは、距離G1と距離G2とを合わせた距離である。そして、駆動源800がまず距離G1だけ動作する際には、端縁成形コア500に、その成形位置から脱型位置へと向かう向きの駆動力が伝達される。その距離G1だけ動作する間、鉤部材520の先端内面521はフランジ押出コア600に接触しておらず、駆動源800の駆動力がフランジ押出コア600に伝達されることはない。そしてその後、駆動源800が距離G2だけ動作する際には、フランジ押出コア600に、その成形位置から脱型位置へと向かう向きの駆動力が伝達される。すなわち、駆動源800の駆動力が伝達される駆動力伝達経路には、端縁成形コア500にその成形位置から脱型位置へと向かう向きの駆動力を伝達する第1の駆動力伝達経路がある。さらには、第1の駆動伝達経路により端縁成形コア500に対して駆動力の伝達が開始された後に、フランジ押出コア600にその成形位置から脱型位置へと向かう向きの駆動力を伝達する第2の駆動力伝達経路がある。これにより、1つの駆動源800により、端縁成形コア500およびフランジ押出コア600を、成形位置から脱型位置へと移動させることができる。よって、射出成形装置を簡素な構成としつつ、その装置コストを低減することができる。
また、中フランジ部120は、本体外縁部40へとつながる箇所が端縁部50から変位した箇所である。このため、本形態とは異なり基端部125の厚みが厚い場合、中フランジ部120と本体外縁部40とのつながる箇所の体積が大きくなり、その箇所に充填された溶融樹脂の温度が他の箇所よりも下がりにくい状態になりがちである。これにより、中フランジ部120と本体外縁部40とのつながる箇所における充填樹脂の硬化が、その周辺箇所よりも遅くなると、ヒケ等が生じやすくなってしまう。これに対し、本形態では、中フランジ部120は、その基端部125が、先端部126の肉厚よりも薄くされている。よって、中フランジ部120と本体外縁部40とがつながる箇所における充填樹脂の硬化タイミングを、その周辺箇所と同程度とすることができる。これにより、本形態では、ヒケの発生を抑制し、品質の高い成形品を製造することができる。
また、第2実施形態においては、中スライドコア790の成形面701に凸部791を設け、これにより、中フランジ部120に、他の部品への取付孔である貫通孔150を形成している。よって、貫通孔150を、射出成形装置にて形成することができる。よって、中フランジ部120への貫通孔150の形成を、安価に行うことができる。
なお、本実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、上記の実施形態では、成形品の一例としての車両のバンパーに係る射出成形装置に本発明を適用した例について説明した。しかし、車両のバンパーに限らず、上記のような構成の中フランジ部を有する成形品に係る射出成形装置に本発明を適用してもよい。