本発明は、導電性支持体上に少なくとも、中間層、電荷発生層、および電荷輸送層がこの順に積層された電子写真感光体であって、前記中間層は、平均短径が5nm以上50nm以下であり、かつ平均アスペクト比が300を超え3000以下であるn型半導体特性を示す金属酸化物を含有することを特徴とする、電子写真感光体である。
本発明によれば、長期間にわたって画像メモリの発生を防止できるとともに、カブリ等の画像欠陥の発生を防止することができる電子写真感光体を提供することができる。
本発明の効果の発現機構または作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
《中間層における露光により発生した負電荷の導電性支持体への輸送性の向上》
画像メモリのうち、ネガメモリの発生原因は、露光時に電荷発生層で生じた電子が中間層にとどまり、逆向きの局所電場による次の露光時での減感作用をもたらすため、印画履歴部分の画像濃度の低下につながることであると考えられる。これらの電子を中間層から導電性支持体へ効果的に掃き出すためには、中間層の電子伝導性を向上させることが有効である。
しかしながら、図1A(a)に示すように、アスペクト比が小さいn型半導体特性を示す金属酸化物粒子を含有する中間層を有する感光体では、中間層内部で電荷が移動する際に電荷が粒子界面を通過する回数が相対的に多く、これが電子伝導性の低下につながる。特に、n型半導体特性を示す金属酸化物粒子の表面をシリカあるいはアルミナで被覆した場合は、電子伝導性の低下が顕著であり、画像メモリがより発生しやすい状況となる。
これに対して、本発明では、中間層に平均アスペクト比が300超であるn型半導体特性を示す金属酸化物を有する。図1A(b)に示すように、上記金属酸化物は中間層においてランダムな配向で分布していると考えられる。一般に、金属酸化物構造体においては、内部の電子伝導性は界面での電子伝導性に比べて大きいことから、長軸方向が中間層の膜厚方向に対して垂直に近い角度で配向する金属酸化物構造体を主に介して電子伝導パスが形成される。この場合、アスペクト比が小さい金属酸化物粒子を用いた場合と比較して、電荷が粒子界面を通過する回数が大幅に少なくなることから、電子伝導性の低下が軽減される。これにより、画像メモリの発生を抑制することができるものと考えられる。
なお、平均アスペクト比が300以下であっても、例えば、金属酸化物粒子が50nmを超えるサイズの板状あるいは粒子状の形状を有する場合は、同様の機構により電荷が粒子界面を通過する回数は少なくなるものと考えられる。しかしながら、この場合は、電荷発生層と中間層との界面において電荷発生物質と金属酸化物粒子との接触性が大幅に低下することから、所望の効果を得ることができない。
《中間層における金属酸化物と電荷発生物質の熱励起キャリアとの相互作用による帯電時の感光体表面の電位の局所的な低下の防止》
白地部のカブリ発生原因のひとつとして、電荷発生物質の熱励起キャリアと中間層の金属酸化物の粒子界面との相互作用が考えられる。感光体表面が負に帯電しているとき、電荷発生物質の熱励起キャリアの一部が感光体内部の電場により電荷分離して、感光体表面の電位を局所的に低下させる現象が発生し、白地部のカブリ発生につながる。この現象は、電荷発生物質の熱励起により生じた負電荷と、金属酸化物表面に局在する正電荷との相互作用により促進されると考えられる。一般に、金属酸化物においては酸化物イオンの欠損が発生するが、この欠損は金属酸化物粒子のエッジ部分で最も顕著であり、その結果、金属酸化物粒子のエッジ部分に正電荷が局在する傾向がある。
ここで、図1Bに示すように、電荷発生層および中間層の界面において、電荷発生物質の粒子の一つの面とその近傍に存在する金属酸化物の配置状況をモデル化して検討する。電荷発生物質の粒子サイズは一般に数百nmであり、金属酸化物の粒子径より一桁以上大きいので、電荷発生物質の粒子の一つの面とその近傍に存在する金属酸化物の配置については、電荷発生物質の底面に対して最近傍の位置に複数の金属酸化物粒子が存在しているモデルを仮定しても差し支えない。ここで、金属酸化物のアスペクト比が小さい場合のモデルとして、図2B(a)のように、電荷発生物質を立方体の粒子と仮定し、その1つの立方体の底面に最近傍の位置に存在する最密充填された金属酸化物のそれぞれの粒子を、一辺長さaの立方体の粒子と仮定する。そして、金属酸化物のアスペクト比が大きい場合のモデルとして、図B(b)のように、電荷発生物質を立方体の粒子と仮定し、その1つの立方体の底面に最近傍の位置に存在する最密充填された金属酸化物のそれぞれの粒子を、断面が一辺長さaの正方形である棒状(長軸長さは立方体の電荷発生物質の一辺の長さよりも大きい)の直方体の粒子であると仮定する。この場合、図2B(b)の場合、電荷発生物質に接する金属酸化物のエッジ部分の長さの合計値は図2B(a)場合の電荷発生物質に接する金属酸化物のエッジ部分の長さの合計値の1/2の値となる。例えば、図2B(a)のように金属酸化物が一辺の長さaの立方体の粒子であり、電荷発生物質が一辺の長さn×aの立方体の粒子であり、電荷発生物質の底面にn2個の金属酸化物の粒子が接して存在するモデルを仮定すると、電荷発生物質の最近傍の位置に存在する金属酸化物粒子1個あたりの電荷発生物質に接するエッジ部分の長さは4×aとなり、n2個の金属酸化物の粒子のエッジ部分の長さの合計は4×a×n2となる。一方、図2(b)のように、金属酸化物が断面の一辺の長さがaの直方体の粒子である場合、電荷発生物質の最近傍の位置に存在する金属酸化物粒子1個あたりのエッジ部分の長さは2×(n×a)となり、電荷発生物質の最近傍の位置に存在するn個の金属酸化物の粒子のエッジ部分の長さの合計は2×a×n2となる。したがってアスペクト比の小さい場合と比較してエッジ部分の長さが大幅に低減されると考えられる。このことから、平均アスペクト比が300を超える金属酸化物を用いると、電荷発生層と中間層との界面において、電荷発生物質の粒子の最近傍の位置に存在する金属酸化物の粒子のエッジ部分長さの合計値が、球状の金属酸化物粒子を用いた場合と比較して小さくなる傾向があるものと考えられる。このため、電荷発生物質の粒子の表面に最近傍の位置に存在する金属酸化物の表面に局在する正電荷の密度が減少する傾向となる。これにより、電荷発生物質の熱励起によって生じる負電荷と上記した正電荷との相互作用によって生じる感光体表面の局所的な電位低下が抑制されることから、カブリなどの画像欠陥が生じにくくなるものと考えられる。
以上のようなメカニズムにより本発明では、所定の形状を有するn型半導体特性を有する金属酸化物を電子写真感光体の中間層に含有することで、上記効果を得ることができる。なお、上記のメカニズムは推測によるものであり、本発明は上記メカニズムに何ら制限されるものではない。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
[電子写真感光体の層構成]
本発明の電子写真感光体(以下、単に感光体ともいう)は、負帯電型の電子写真感光体であり、導電性支持体上に、少なくとも中間層を有し、この中間層上に電荷発生層および電荷輸送層がこの順に積層されてなるものである。
本発明の電子写真感光体において、電荷発生層および電荷輸送層から感光層が構成され、電荷発生層および電荷輸送層は、それぞれ、露光によって電荷を発生させる機能および発生させた電荷(正孔)を感光体表面に輸送する機能を有する。本発明の電子写真感光体は、感光層上にさらに保護層が形成されていてもよい。
[中間層]
中間層は、感光層で生成した電子を導電性支持体側へ輸送する機能(電子輸送機能)と、導電性支持体から感光層への正孔の注入を防止する機能(ブロッキング機能)を有するものであり、導電性支持体と有機感光層との間に接着機能とを付与するものである。
本発明において、中間層は、平均短径が5nm以上50nm以下であり、かつ平均アスペクト比が300を超え3000以下であるn型半導体特性を示す金属酸化物を含有する。好ましくは、前記中間層はバインダー樹脂(以下、「中間層用バインダー樹脂」ともいう。)をさらに有する。
(n型半導体特性を示す金属酸化物)
n型半導体特性を示す金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化鉄、酸化タングステンなどが挙げられ、複合酸化物であってもよい。中でも、導電性や分散性を高める観点から酸化チタンまたは酸化亜鉛が好ましく、中間層の電子輸送性と正孔ブロッキング性の両立を図る観点から酸化チタンが特に好ましい。すなわち、酸化チタンは電子伝導性に優れるため、濃度ムラの発生をより抑制することができ、かつ、導電性支持体からの正孔注入に対するブロッキング性に優れるため、カブリなど画像欠陥の発生をより抑制することができる。加えて、酸や塩基に対しての化学的な安定性にも優れるため、感光体の長期使用後の性能低下をより防止することができるので好ましい。
酸化チタンを用いる場合、その結晶型は、アナターゼ型、ルチル型およびアモルファス型などのいずれであってもよく、2種以上の結晶型の混合物であってもよい。この中でも、ルチル型酸化チタンは、電荷発生物質の熱励起キャリアに対する電荷ブロッキング性に優れるため、白地部へのカブリ発生をより防止することができることから、前記n型半導体特性を示す金属酸化物はルチル型酸化チタンであることがより好ましい。
酸化チタンの結晶系は、X線回折ピーク位置により判別できる。ルチル型酸化チタンでは、CuKα線に対して、回折角27.4°、36.1°、41.2°、54.3°のピークが現れ、アナターゼ型酸化チタンでは、25.3°、37.8°、48.0°、53.9°、55.1°のピークが現れる。
(平均短径および平均アスペクト比)
本発明に用いられる金属酸化物は、平均短径が5nm以上50nm以下であり、平均アスペクト比が300を超え3000以下である。
金属酸化物の短径は、電界放射走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて20000~100000倍で観測した画像から直接測定することができ、長径は1000~10000倍で観測した画像から同様に測定することができる。金属酸化物の平均短径および平均長径の値はそれぞれ画像中の100個平均値を採用する。本明細書中、金属酸化物の平均アスペクト比は上記で求めた平均長径を平均短径で除した値として定義される。
本発明に用いられる金属酸化物は、中間層用バインダー樹脂に対して凝集せずに分散できるという観点から、平均短径が5nm以上であることが求められる。
また、平均アスペクト比が300以下であると、シリカやアルミナで表面被覆した場合に中間層の電子伝導性を向上させる効果が十分に得られないことから、画像メモリが発生しやすくなり、表面被覆を行わない場合には電荷発生層内部で発生する熱励起キャリアのブロック機能が不十分になることから白地部へのカブリが生じやすい。そのため、画像メモリの発生の抑制と白地部へのカブリの発生の抑制とを高い水準で両立するためには、平均アスペクト比が300超であることが求められる。一方で、平均アスペクト比が3000を超えると、金属酸化物の長径が過度に大きくなることから金属酸化物が凝集しやすくなり、中間層を形成するための分散液(中間層形成用塗布液)の安定性が悪化し、カブリの発生につながる。
また、金属酸化物の平均短径が50nmを超えると、中間層を形成するための分散液(中間層形成用塗布液)の安定性を確保しつつ、画像メモリの発生の抑制と白地部へのカブリの発生の抑制とを高い水準で両立しうる上記の平均アスペクト比を達成することが困難になる。
上記金属酸化物の平均短径は、好ましくは30nm以下である。上記範囲であると電荷発生物質と金属酸化物との界面接触がより緻密になるため、濃度ムラの発生をより抑制することができるので好ましい。また、平均短径が10nm以上であると、製造工程に用いる中間層形成用塗布液の分散性が高まるので好ましい。また、平均アスペクト比が1000以下であると、製造工程に用いる中間層形成用塗布液の分散性が高まるので好ましい。したがって、本発明の好ましい一実施形態において、前記金属酸化物は、平均短径が10~30nmであり、平均アスペクト比が300超1000以下である。
なお、上記平均長径、平均短径、平均アスペクト比は、金属酸化物が後述のようにシリカまたはアルミナで被覆処理された場合や、シランカップリング剤で表面処理された場合は、処理後の平均長径、平均短径、平均アスペクト比を指す。
(金属酸化物の製造方法)
本発明に用いられる平均短径が5nm以上50nm以下であり、かつ平均アスペクト比が300を超え3000以下であるn型半導体特性を示す金属酸化物は、公知の方法で製造することができる。例えば、水熱合成法、種結晶成長法、VLS法(Vapor-Liquid-Solid)、DNAやゼオライト空孔を鋳型としたテンプレート法などがあり、そのいずれの方法を用いてもよいが、量産性の点で水熱合成法または種結晶成長法を用いるのが好ましい。
水熱合成法で金属酸化物を調製する場合の具体的な手順も特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。例えば、所定の平均短径および平均アスペクト比を有する酸化チタンを作製する場合、酸化チタンナノ粒子の粉末を原料として、高濃度のアルカリ水溶液において加熱するアルカリ水熱処理を用いて調製することができる。ここで、酸化チタンナノ粒子としては、例えば、平均一次粒径が10~100nmのものを用いることができる。酸化チタンナノ粒子の入手手段は特に制限されず、市販のものを用いることもできる。アルカリ水溶液としては、例えばKOH水溶液を用いることができ、アルカリ水溶液の濃度は、例えば、16~18モル/L程度である。アルカリ水溶液中の酸化チタンナノ粒子の濃度は特に制限されないが、例えば、上記アルカリ水溶液100質量部に対して、固形分比で、1~5質量部である。水熱処理の温度および時間は、所望の平均短径、平均アスペクト比に応じて適宜選択することができるが、水熱処理の温度は、好ましくは100~170℃であり、より好ましくは110~150℃である。水熱処理の時間は、特に制限されないが、好ましくは1~50時間であり、より好ましくは5~40時間である。
その後、反応生成物から余剰のアルカリ金属イオンを除去するために反応液を酸で中和し、次いでイオン交換水で洗浄し、遠心分離を、例えば3~10回繰り返し行って生成物を洗浄することが好ましい。その後、例えば凍結乾燥によって、洗浄した生成物を乾燥する。
上記のアルカリ水熱処理を用いて調製した金属酸化物は、好ましくは、その後、焼成処理を行う。焼成処理の温度、時間は特に制限されない。焼成処理の温度は、好ましくは100~200℃であり、より好ましくは110~150℃である。水熱処理の時間は、特に制限されないが、好ましくは1~100時間であり、より好ましくは5~40時間である。
ここで、金属酸化物が酸化チタンである場合、焼成温度が600℃以上で、結晶系がルチル型となり、550℃以下でアナターゼ型となる。また、焼成温度400℃以下では酸化チタンが結晶化せず、アモスファス状態になる傾向になる。
また、金属酸化物の平均長径、平均短径、平均アスペクト比は、水熱処理の温度および時間、焼成の温度および時間を調節することで制御することができる。
具体的には、水熱処理の温度を高くすると、平均短径が小さく、平均アスペクト比が大きくなる傾向にある。また、水熱処理の時間が長いほど、平均アスペクト比が大きくなる傾向にあるが、平均短径は平均長径に比べると水熱処理の時間による変化が小さい。また、焼成温度が高いほど、平均短径が大きく、平均アスペクト比が小さくなる傾向にある。
また、種結晶成長法で金属酸化物を調製する場合の具体的な形態も特に制限されず、従来公知の方法が適宜採用されうる。例えば、酸化亜鉛の結晶を得る場合、シリコンなどの基板上に、ゾルゲル法で作製した酸化亜鉛薄膜をコーティングする。この酸化亜鉛薄膜を種結晶として、水熱法で結晶を成長させる。例えば、上記酸化亜鉛薄膜を、硝酸亜鉛およびヘキサメチレンテトラミンを含む水溶液中に、80~100℃で1~20時間浸漬処理することで結晶を成長させることができる。金属酸化物の平均短径や平均アスペクト比は種結晶となる金属酸化物薄膜の調製条件や浸漬処理の際の温度や時間などの条件を調節することで調整することができる。
(シリカまたはアルミナによる表面被覆)
本発明で用いられる金属酸化物は、シリカまたはアルミナで表面被覆されていることが好ましい。金属酸化物がシリカまたはアルミナで表面被覆されていると、電荷発生物質の熱励起キャリアに対する電荷ブロッキング性が向上するので、白地部へのカブリ発生をより防止することができるので好ましい。
上記金属酸化物がシリカまたはアルミナで表面被覆されていることは、例えば、(1)電界放射透過型電子顕微鏡(FE-TEM)を用い、粒子のコアの部分と表面部分とが別個の無機化合物からなる構造を観測すること、(2)エネルギー分散型X線分析(EDX)において、金属酸化物を構成する原子の他、ケイ素、アルミニウムおよび酸素原子に由来するピークを観測することによって判別することができる。
上記金属酸化物は、その表面の少なくとも一部がシリカまたはアルミナで被覆されていればよい。好ましくは、シリカまたはアルミナで被覆した金属酸化物におけるシリカまたはアルミナの被覆量は、金属酸化物とシリカまたはアルミナの総量に対して2~10質量%の範囲内である。被覆量が2質量%以上であるとき、金属酸化物のほぼ全表面をシリカまたはアルミナで被覆することができるので、中間層の正孔をブロックする機能が向上し、カブリの発生の防止につながり好ましい。加えて、感光体の長期使用後の性能低下をより防止することができるので好ましい。また、10質量%以下であるとき、中間層に含有される金属酸化物の電子受容性が弱まるため、電荷発生層内部で発生する熱励起キャリアをブロックすることができ、感光体周期での黒ポチ発生を防止することができるので好ましい。
前記シリカまたはアルミナで被覆した金属酸化物におけるシリカまたはアルミナの被覆量は、エネルギー分散型X線分析(EDX)のピークの積分強度比に各化学種の式量を乗じて、質量割合として得ることができる。
金属酸化物の表面をシリカまたはアルミナで被覆する方法は特に限定されない。例えば、シリカで表面被覆する場合は、特開2007-16111号公報に記載の方法が、アルミナで表面被覆する場合は、特開平2-181158号公報に記載の方法を参照して行うことができる。
金属酸化物の表面をシリカで被覆する場合、例えば、はじめに、金属酸化物に強塩酸を加えて分散させ、攪拌および懸濁させる。この懸濁液中の金属酸化物濃度は、例えば、5~30質量%である。この懸濁液にケイ酸塩水溶液を添加し、攪拌することで表面に第1の含水シリカ層を形成することができる。
ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどのケイ酸アルカリ金属塩が用いられうる。ケイ酸塩水溶液の濃度は、例えば、SiO2換算で、10~30質量%である。ケイ酸塩の使用量は特に制限されないが、金属酸化物100質量部に対して、例えば、1~10質量部となるように添加することができる。上記ケイ酸塩水溶液の添加の際の温度や時間は特に制限されないが、例えば、室温~60℃で、攪拌下で添加を行い、添加後5~20分間攪拌を行うことができる。
このように金属酸化物表面に含水シリカの層を形成した後、濾過、水洗する。この濾過によって得られたケーキは約40~60質量%の固形分を有するが、これを乾燥せず、上記ケーキに2-プロパノール、エタノール、ブタノールなどの低級アルコールを加えて攪拌混合する。さらに水と、必要に応じてアンモニア水とを添加して攪拌し、強分散する。この際、pHを8以上にすることが好ましい。この混合液を攪拌しながら、テトラメトキシシランなどのアルコキシシラン(低級アルコール溶液として用いてもよい)を徐々に添加する。アルコキシシランの添加量は、特に制限されないが、金属酸化物100質量部に対して、例えば、1~10質量部である。添加時間は4~8時間であることが好ましい。この際、金属酸化物の分散手段としては、例えば、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、サンドミルおよびホモミキサーなどを用いることができる。このようにしてアルコキシシランの加水分解を進行させ、金属酸化物表面に第2の含水シリカ層をさらに形成することができる。
その後、得られた混合液から、加熱、減圧により水や低級アルコールを留去する。さらに、例えば140~160℃で加熱することで第1の含水シリカ層および第2の含水シリカ層がシリカ層に変化する。
なお、アルミナを被覆する場合は、上記の方法において、ケイ酸アルカリ金属塩をアルミン酸ナトリウムなどのアルミン酸金属塩に変更し、アルコキシシランをトリエトキシアルミニウムなどのアルコキシアルミニウムに変更して、その他は同様に行うことができる。
(表面処理)
本発明に用いられる金属酸化物は、シランカップリング剤によって表面処理(表面修飾)されていることが好ましい。特に、前記金属酸化物は、上記のようにシリカまたはアルミナで表面被覆された後、さらにシランカップリング剤によって表面処理されていることが好ましい。金属酸化物をシランカップリング剤で表面処理することにより、製造工程に用いる塗布液分散性が高まるため好ましい。また、金属酸化物表面の親水性基サイトが減少して使用環境の温湿度差による感光体電気特性の変動が少なくなるので好ましい。シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、メチルトリメトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、および後述する保護層に用いられる(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤(具体的には、後述する式S-1~S-35で表される化合物)が用いられうる。上記の(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤のなかでも、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(後述の式S-30で表される化合物)、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(後述の式S-35で表される化合物)が好ましく用いられうる。上記シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤による金属酸化物の表面処理は、公知の方法により行うことができる。例えば、湿式処理として、シランカップリング剤を水または有機溶媒に分散させた溶液に、金属酸化物を添加して混合・攪拌する、または、金属酸化物を水または有機溶媒中に分散させ、その中にシランカップリング剤を添加して付着させることができる。その後、得られた溶液をろ過、乾燥し、得られた金属酸化物粒子をアニール処理(焼き付け)することに表面処理を行うことができる。
湿式処理の際の混合・攪拌時の温度は、30~150℃程度であることが好ましく、40~60℃がより好ましい。混合・攪拌時間は、0.5~10時間であることが好ましく、1~5時間がより好ましい。アニール処理温度は、例えば100~220℃、好ましくは110~150℃とすることができる。アニール処理時間は0.5~10時間が好ましく、より好ましくは1~5時間である。
シランカップリング剤の使用量は特に制限されないが、表面処理前の金属酸化物100質量部に対して0.1~20質量部、より好ましくは1~15質量部、さらに好ましくは1~10質量部を使用することができる。水または有機溶媒の添加量は、特に制限されないが、表面処理前の金属酸化物100質量部に対して100~600質量部、より好ましくは200~500質量部であることが好ましい。
シランカップリング剤の使用量がそれぞれ上記範囲であれば、金属酸化物粒子に対して十分な表面処理を行えるため、中間層の正孔ブロッキング性を維持することができ、黒ポチやカブリなどの画像欠陥の発生を十分に抑制することができる。また、金属酸化物の表面に均一な被膜が付着されるため好ましい。
中間層に含まれる金属酸化物がシランカップリング剤で表面処理されているかどうかは、金属酸化物の表面の無機分析を、透過型エネルギー分散型X線分析法(TEM-EDX)や、波長分散型蛍光X線分析(WDX)によって行い確認することができる。
(金属酸化物の含有量)
本発明に用いられる平均短径が5nm以上50nm以下であり、かつ平均アスペクト比が300を超え3000以下であるn型半導体特性を示す金属酸化物は、特に制限されないが、中間層用バインダー樹脂100質量部に対して200~600質量部の範囲内で含有させることが好ましく、より好ましくは250~550質量部の範囲である。200質量部以上であれば、中間層の電子輸送性が容易に確保できるため、画像メモリの発生を抑制する効果がより高くなる。また、600質量部以下であれば、中間層の製膜性に優れ、生産性に優れるため好ましい。なお、上記金属酸化物を2種以上組み合わせて用いる場合はその合計量が上記範囲であることが好ましい。
(その他の金属酸化物粒子)
本発明の感光体の中間層は、上記した平均短径が5nm以上50nm以下であり、かつ平均アスペクト比が300を超え3000以下であるn型半導体特性を示す金属酸化物以外の金属酸化物粒子(その他の金属酸化物粒子)をさらに含んでもよい。
その他の金属酸化物微粒子としては特に制限はなく、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化ケイ素)、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウムなどの金属酸化物粒子、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズおよび酸化ジルコニウムなどの粒子を用いることができる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記その他の金属酸化物粒子の平均粒径(数平均一次粒径)は特に制限されないが、好ましくは10~100nmの範囲内である。金属酸化物粒子の平均粒径は、試料となる粒子を走査型電子顕微鏡により倍率100000倍で撮影し、自動画像処理解析装置を使用して試料となる粒子について2値化処理し、無作為に選んだ粒子100個についての水平方向フェレ径を算出し、その平均値(数平均一次粒径)を「平均粒径」として求めることができる。ここで水平方向フェレ径とは、試料となる粒子の画像を2値化処理したときの外接長方形のx軸に平行な辺の長さをいう。
金属酸化物の含有量)
上記その他の金属酸化物粒子の含有量は、特に制限されないが、上記した平均短径が5nm以上50nm以下であり、かつ平均アスペクト比が300を超え3000以下であるn型半導体特性を示す金属酸化物100質量部に対して、例えば0質量部以上100質量部未満である。上記その他の金属酸化物粒子を含む場合、その含有量は、好ましくは10~30質量部の範囲内である。
(バインダー樹脂)
中間層用バインダー樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ニトロセルロース、エチレン-アクリル酸共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂およびゼラチンなどが挙げられる。これらの中でも、後述する電荷発生層形成用塗布液を中間層上に塗布するときに当該中間層用バインダー樹脂が溶解されることを抑制する観点などから、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、アルコール可溶性のポリアミド樹脂を用いることが好ましい。
[導電性支持体]
導電性支持体は、中間層、感光層および保護層を支持し、かつ、導電性を有する部材である。
導電性支持体の例としては、金属製のドラムまたはシート、ラミネートされた金属箔を有するプラスチックフィルム、蒸着された導電性物質の層を有するプラスチックフィルム、導電性物質、または導電性物質とバインダー樹脂とからなる塗料を塗布してなる導電層を有する金属部材やプラスチックフィルム、紙などが挙げられる。
上記金属の例としては、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛およびステンレス鋼が挙げられる。加工性、堅牢性および軽量性の観点からは、上記金属は、アルミニウムであることが好ましい。
上記導電性物質としては、上記金属、酸化インジウムおよび酸化スズが挙げられる。
[感光層]
感光層は、後述する露光により所期の画像に対応する静電潜像を上記感光体の表面に形成するための層である。
感光層は、例えば、電荷発生層用のバインダー樹脂および電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送層用のバインダー樹脂および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層体により構成されうる。
[電荷発生層]
電荷発生層用のバインダー樹脂としては、電荷発生層用のバインダー樹脂として用いられている公知の樹脂を使用することができる。例えば、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂の内2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂)およびポリ-ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、ポリビニルブチラール樹脂である。電荷発生層用のバインダー樹脂の重量平均分子量としては、特に制限はないが、10000~150000であることが好ましく、さらに好ましくは15000~100000である。電荷発生層用のバインダー樹脂は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
電荷発生物質の例には、スーダンレッドやダイアンブルーなどのアゾ原料;ピレンキノンやアントアントロンなどのキノン化合物;キノシアニン化合物;ペリレン化合物;インジゴやチオインジゴなどのインジゴ化合物;ピランスロン、ジフタロイルピレン多環キノン化合物;およびフタロシアニン化合物が含まれる。電荷発生物質は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
フタロシアニン化合物は、中心金属を有していてもよいし、有していなくてもよい。当該中心金属の例には、Ti、Fe、V、Ga、Si、Pb、Al、ZnおよびMgが含まれる。当該中心金属は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。電荷発生層の感度を高める観点から、フタロシアニン化合物は、中心金属としてGaを有するガリウムフタロシアニン化合物または中心金属としてTiを有するチタニルフタロシアニン化合物であることが好ましく、チタニルフタロシアニン化合物であることがより好ましい。すなわち、本発明の好ましい実施形態による感光体は、電荷発生層がチタニルフタロシアニン化合物を含有する。
また、上記観点から、当該チタニルフタロシアニン化合物は、Y型チタニルフタロシアニンまたはブタンジオール付加チタニルフタロシアニン(特には2,3-ブタンジオール付加チタニルフタロシアニン)を用いることが好ましい。ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンは単独で用いられてもよく、非付加体との混合物として用いられてもよい。
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2)27.3°に最大回折ピークを有し、7.4°、9.7°および24.2°に明瞭な回折ピークを有する。
2,3-ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンは、ブタンジオールの付加比率によって異なる結晶型をとりうる。良好な感度を得るためには、チタニルフタロシアニン1モルに対してブタンジオール化合物を1モル以下となるように反応させて得られる結晶型のものが好ましい。そのような結晶型を有する2,3-ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンは、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角8.3°、24.7°、25.1°および26.5°に明瞭な回折ピークを有する。
ガリウムフタロシアニン化合物としては、例えば、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが用いられうる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンは、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角7.3°、16.0°、24.9°および28.0°に明確なピークを有する。
電荷発生物質の含有量は、電荷発生層用のバインダー樹脂100質量部に対して20~600質量部の範囲内であることが好ましく、50~500質量部の範囲内であることがより好ましい。電荷発生物質の含有量が上記範囲内であれば、電荷発生物質の分散性を高め、電荷発生層の電気抵抗を低減することができる。結果として、感光体の使用に伴う残留電荷の増加がより抑制される。
電荷発生層の厚さは、特に制限されないが、0.01~2μmの範囲内が好ましく、0.15~1.5μmの範囲内であることがより好ましい。電荷発生層の厚さは、電荷発生層用のバインダー樹脂の種類、並びに電荷発生物質の種類および含有量に応じて適宜調整されうる。
[電荷輸送層]
電荷輸送層用のバインダー樹脂としては、電荷輸送層用のバインダー樹脂として用いられている公知の樹脂を使用することができる。電荷輸送層用のバインダー樹脂の例には、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、これらの樹脂の繰り返し単位のうち2以上を有する共重合樹脂などの絶縁性樹脂;およびポリ-N-ビニルカルバゾールなどの有機半導体が含まれる。電荷発生物質の分散性を高め、上記感光体の特性を高める観点からは、電荷輸送層用のバインダー樹脂は、ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。電荷輸送層用のバインダー樹脂は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
電荷輸送物質の例には、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物およびブタジエン化合物が含まれる。電荷輸送物質は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層用のバインダー樹脂100質量部に対して10~200質量部の範囲内であることが好ましい。
電荷輸送層の厚さは、10~40μmの範囲内であることが好ましい。感光体の内部電場を強め、感光体の使用に伴う残留電荷の増加を抑制する観点から、電荷輸送層の厚さは、10~30μmの範囲内であることがより好ましい。電荷輸送層の厚さは、電荷輸送層用のバインダー樹脂の種類、並びに電荷輸送物質の種類および含有量に応じて適宜調整されうる。
電荷輸送層は、必要に応じて他の成分を含有していてもよい。当該他の成分の例には、酸化防止剤、電子導電剤、安定剤、シリコーンオイルが含まれる。
[保護層]
本発明の電子写真感光体は、保護層を有していてもよい。保護層は、感光層を保護するための層である。
保護層は、感光層の上に配置されるとともに感光体の表面を構成する。保護層は、例えば、保護層用のバインダー樹脂と、保護層用の金属酸化物粒子と、保護層用の電荷輸送物質とを含む。
保護層用のバインダー樹脂としては、保護層用のバインダー樹脂として用いられている公知の樹脂を使用することができる。保護層用のバインダー樹脂の例には、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂および塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が含まれる。保護層用のバインダー樹脂は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
感光体の耐久性の観点からは、保護層用のバインダー樹脂は、ラジカル重合性モノマーを含むラジカル重合性組成物の重合硬化物であることが好ましい。この場合、ラジカル重合性組成物は、保護層用の金属酸化物粒子および保護層用の電荷輸送物質をさらに含んでいてもよい。
ラジカル重合性モノマーは、2以上のラジカル重合性官能基を有する。当該ラジカル重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する上記ラジカル重合性モノマーの例には、下記式M1~M15で表される化合物が含まれる。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリロイル基」は、ラジカル重合性官能基であり、アクリロイル基(CH2=CHCO-)およびメタクリロイル基(CH2=C(CH3)CO-)の一方または両方を意味する。
上記式M1~M15において、Rはアクリロイル基(CH2=CHCO-)を示し、R’はメタクリロイル基(CH2=C(CH3)CO-)を示す。
保護層の電気抵抗を適切に調整して画質安定性を高めるとともに、保護層の強度を高める観点からは、保護層は、保護層用の金属酸化物粒子を含むことが好ましい。
保護層用の金属酸化物粒子を構成する金属酸化物の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化ケイ素)、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム、スズがドープされた酸化インジウム、アンチモンがドープされた酸化スズおよび酸化ジルコニウムが含まれる。保護層用の金属酸化物粒子は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。保護層用の金属酸化物粒子が、2種以上である場合には、当該金属酸化物粒子は、固溶体であってもよいし、融着体であってもよい。
保護層用の金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、例えば、1~300nmの範囲内であることが好ましく、3~100nmの範囲内であることがより好ましい。保護層用の金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、中間層における他の金属酸化物粒子の数平均一次粒径と同様の方法により測定されうる。
保護層用の金属酸化物粒子の含有量は、例えば、保護層中のバインダー樹脂100体積部に対して5~100体積部の範囲内であることが好ましく、15~30体積部の範囲内であることがより好ましい。保護層用の金属酸化物粒子の含有量が上記範囲内であることは、保護層の強度、画質安定性および成膜性を高める観点から好ましい。
保護層用の金属酸化物粒子の分散性を高める観点から、保護層用の金属酸化物粒子は、表面処理剤(表面修飾剤)により表面処理されていることが好ましい。保護層の強度をより高める観点から、当該表面処理剤は、上記ラジカル重合性モノマーと反応しうる反応性官能基を有することが好ましい。当該反応性官能基は、ラジカル反応性官能基であることが好ましい。
当該ラジカル反応性官能基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
表面処理剤の例には、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、無機酸化物、フッ素変性シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤およびフッ素系グラフトポリマーが含まれる。表面処理剤は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
表面処理剤は、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の例には、下記式S-1~S-35で表される化合物が含まれる:
S-1:CH2=CHSi(CH3)(OCH3)2
S-2:CH2=CHSi(OCH3)3
S-3:CH2=CHSiCl3
S-4:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S-5:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OCH3)3
S-6:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OC2H5)(OCH3)2
S-7:CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3
S-8:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S-9:CH2=CHCOO(CH2)2SiCl3
S-10:CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S-11:CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3
S-12:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S-13:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(OCH3)3
S-14:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2
S-15:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3
S-16:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S-17:CH2=C(CH3)COO(CH2)2SiCl3
S-18:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S-19:CH2=C(CH3)COO(CH2)3SiCl3
S-20:CH2=CHSi(C2H5)(OCH3)2
S-21:CH2=C(CH3)Si(OCH3)3
S-22:CH2=C(CH3)Si(OC2H5)3
S-23:CH2=CHSi(OCH3)3
S-24:CH2=C(CH3)Si(CH3)(OCH3)2
S-25:CH2=CHSi(CH3)Cl2
S-26:CH2=CHCOOSi(OCH3)3
S-27:CH2=CHCOOSi(OC2H5)3
S-28:CH2=C(CH3)COOSi(OCH3)3
S-29:CH2=C(CH3)COOSi(OC2H5)3
S-30:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OC2H5)3
S-35:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OC2H5)2。
保護層用の金属酸化物粒子に対する表面処理剤の処理量は、例えば、保護層用の金属酸化物粒子100質量部に対して0.1~100質量部の範囲内であることが好ましい。
上記処理量は、上記保護層用の金属酸化物粒子の数平均一次粒径および表面処理剤の種類に応じて適宜調整されうる。
保護層用の金属酸化物粒子の表面が、上記表面処理剤により表面処理されている場合には、保護層中の金属酸化物粒子の表面には、表面処理剤の反応後の成分が、担持されている。保護層用の金属酸化物粒子の表面処理は、公知の方法により行われうる。
保護層は、画像メモリの発生をより抑制する観点から、保護層用の電荷輸送物質を含むことが好ましい。
保護層用の電荷輸送物質は、保護層に電荷輸送能を付与する化合物である。保護層用の電荷輸送物質は、当該機能を発揮できればよく、公知の化合物から適宜選択されうる。例えば、保護層が、上記ラジカル重合性組成物の紫外線による重合硬化膜により構成されている場合には、保護層用の電荷輸送物質は、紫外線に対して吸収が小さいか、または紫外線を吸収しない化合物であることが好ましい。
保護層用の電荷輸送物質は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
上記一般式(3)において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、炭素数1~7のアルキル基、または炭素数1~7のアルコキシ基を表す。k、pおよびnは、それぞれ独立して、0~5の整数を表し、mは0~4の整数を表す。ただし、k、p、mまたはnが2以上である場合は、複数存在するR1、R2、R3およびR4は、互いに同一のものであっても、異なるものであってもよい。
上記一般式(3)で表される電荷輸送物質の例には、下記式CTM-1~CTM-22で表される化合物が含まれる。
保護層用の電荷輸送物質の含有量は、例えば、上記保護層用のバインダー樹脂100質量部に対して、20~100質量部の範囲内であり、40~70質量部の範囲内であることがより好ましい。保護層用の電荷輸送物質の含有量が20質量部以上であることは、所期の電気特性を得て、画像メモリの発生を抑制する観点から好ましい。保護層用の電荷輸送物質の含有量が100質量部以下であることは、所期の膜強度を得る観点から好ましい。保護層用の電荷輸送物質の含有量は、保護層の所期の膜強度および電気特性に応じて適宜調整されうる。
保護層は、必要に応じて他の成分を含有していてもよい。当該他の成分の例には、滑剤粒子および酸化防止剤が含まれる。
滑剤粒子の例には、フッ素樹脂粒子が含まれる。当該フッ素樹脂粒子を構成するフッ素樹脂の例には、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂およびこれらの共重合体が含まれる。フッ素樹脂は、四フッ化エチレン樹脂またはフッ化ビニリデン樹脂であることが好ましい。滑剤粒子は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
滑剤粒子の数平均一次平均粒径は、0.01~1μmの範囲内であることが好ましく、0.05~0.5μmの範囲内であることがより好ましい。
滑剤粒子の含有量は、保護層用のバインダー樹脂100質量部に対して5~70質量部の範囲内の割合で含有されることが好ましく、10~60質量部の範囲内であることがより好ましい。
保護層の厚さは、例えば、0.2~10μmの範囲内であることが好ましく、0.5~6μmの範囲内であることがより好ましい。
[感光体の製造方法]
本発明の電子写真感光体の製造方法は、特に制限されず、従来公知の方法が使用できる。好ましくは、(1)平均短径が5nm以上50nm以下であり、かつ平均アスペクト比が300を超え3000以下であるn型半導体特性を示す金属酸化物を準備する工程と、(2)前記金属酸化物を用いて、導電性支持体上に中間層を形成する工程と、(3)中間層上に感光層を形成する工程と、を有する。任意で(4)感光層上に保護層を形成する工程をさらに有してもよい。
(1)金属酸化物を準備する工程
本工程では、平均短径が5nm以上50nm以下であり、かつ平均アスペクト比が300を超え3000以下であるn型半導体特性を示す金属酸化物を準備する。
上記の所定の平均短径および平均アスペクト比を有する金属酸化物の調製方法については上記した通りであるためここでは説明を省略する。
前記金属酸化物は、シリカまたはアルミナで表面被覆したものを用いてもよく、シランカップリング剤で表面処理したものを用いてもよく、前記表面被覆と前記表面処理との両方を施したものであってもよい。前記表面被覆および前記表面処理の具体的な手順は上記したものと同様である。
(2)中間層を形成する工程
中間層は、例えば、中間層用バインダー樹脂を溶媒に溶解または分散させ、次いで、上記の所定の平均短径および平均アスペクト比を有する金属酸化物を均質に分散させて中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を導電性支持体の表面に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥することにより形成することができる。なお、中間層用バインダー樹脂を溶解または分散させ、次いで金属酸化物を分散させて得られた分散液を静置後、濾過して、中間層形成用塗布液として用いてもよい。
中間層の形成に用いられる溶媒としては、中間層用バインダー樹脂を溶解させることができ、かつ、上記の金属酸化物の良好な分散性が得られるものであればよく、例えば中間層用バインダー樹脂としてポリアミド樹脂を用いる場合には、ポリアミド樹脂について良好な溶解性と塗布性能とを発現することができることから、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、t-ブタノール、sec-ブタノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。これらの溶媒は1種単独でまたは2種以上の混合溶媒として用いることができる。
また、保存性や上記の金属酸化物の分散性を向上させるために、助溶媒を併用してもよい。助溶媒としては、例えばベンジルアルコール、トルエン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
上記の金属酸化物の分散手段としては、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、サンドミルおよびホモミキサーなどを用いることができる。
中間層形成用塗布液における中間層用バインダー樹脂の濃度は、中間層の厚さや塗布方法によっても異なるが、例えば中間層用バインダー樹脂100質量部に対する溶媒の使用量が100~3000質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは500~2000質量部の範囲内である。
中間層形成用塗布液の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法などが挙げられる。
塗布膜の乾燥方法は、溶媒の種類や形成する中間層の厚さに応じて公知の乾燥方法を適宜に選択することができ、特に熱乾燥することが好ましい。乾燥条件は、例えば100~150℃で10~60分間とすることができる。
中間層の厚さは、0.5~20μmの範囲内であることが好ましい。中間層の厚さが0.5μm以上であれば、導電性支持体の表面全体を十分に被覆することができるため、導電性支持体からの正孔の注入を十分にブロックすることができ、この結果、黒ポチ、カブリなど画像欠陥の発生をより抑制することができる。一方、中間層の厚さが20μm以下であれば、電気抵抗を適切にでき、十分な電子輸送性が得られ、この結果、濃度ムラの発生をより抑制することができる。
(3)感光層を形成する工程
感光層を形成する工程は、中間層上に電荷発生層を形成する工程と、当該電荷発生層上に電荷輸送層を形成する工程とを含むことが好ましい。
まず、電荷発生層形成用塗布液を調製する。次いで、電荷発生層形成用塗布液を中間層上に塗布して、中間層上に電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成する。次いで、当該塗膜を乾燥させることにより電荷発生層を形成する。
電荷発生層形成用塗布液は、例えば、公知の溶剤に、上記電荷発生層用のバインダー樹脂や上記電荷発生物質などの上記電荷発生層用の材料を分散させることで調製されうる。
電荷発生層形成用塗布液に使用される溶剤は、上記成分の分散性と中間層への塗布性とに応じて、適宜選択されうる。電荷発生層形成用塗布液に使用される溶剤の例には、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジエチレングリコール ジメチルエーテル、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸t-ブチル、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロエタンおよびトリクロロエタンが含まれる。溶剤は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。より好ましくはメチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンである。
電荷発生層用の材料の分散手段は、公知の分散装置から適宜選択されうる。電荷発生層用の材料の分散手段としては、上記した中間層形成用塗布液の調製におけるn型半導体特性を示す金属酸化物の分散手段と同様の方法が採用できる。
電荷発生層形成用塗布液の塗布方法は、電荷発生層形成用塗布液の組成に応じて公知の塗布方法から適宜選択されうる。電荷発生層形成用塗布液の塗布方法の例は、上記中間層形成用塗布液の塗布方法の例と同じである。
電荷発生層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法は、溶剤の種類や、電荷発生層の所期の厚さなどに応じて適宜選択されうる。
次いで、電荷発生層上に電荷輸送層を形成する。具体的には、まず、電荷輸送層形成用塗布液を調製する。次いで、電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層上に塗布して、電荷発生層上に電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成する。最後に、当該塗膜を乾燥させることにより電荷輸送層を形成することができる。
電荷輸送層形成用塗布液は、例えば、公知の溶剤に、上記電荷輸送層用のバインダー樹脂や上記電荷輸送物質などの上記電荷輸送層用の材料を分散させることで調製されうる。電荷輸送層形成用塗布液に使用される溶剤の例は、電荷発生層形成用塗布液に使用される溶剤の例と同じである。
電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法は、電荷輸送層形成用塗布液の組成に応じて公知の塗布方法から適宜選択されうる。電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法の例は、中間層形成用塗布液の塗布方法の例と同じである。
電荷輸送層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法は、溶剤の種類や上記電荷輸送層の所期の厚さなどに応じて適宜選択されうる。
(4)保護層を形成する工程
保護層を形成する工程は、電荷輸送層上に保護層を形成する。具体的には、まず、保護層形成用塗布液を調製する。次いで、保護層形成用塗布液を電荷輸送層上に塗布して、電荷輸送層上に保護層形成用塗布液の塗膜を形成する。最後に、当該塗膜を硬化させることにより保護層を形成する。
保護層形成用塗布液は、例えば、公知の溶剤に、上記ラジカル重合性モノマーや、上記保護層用の金属酸化物粒子、上記保護層用の電荷輸送物質などの保護層用の材料を分散させることで調製されうる。
保護層形成用塗布液に使用される溶剤の例には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、t-ブタノール、sec-ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジンおよびジエチルアミンが含まれる。上記溶剤は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
保護層用の材料の分散手段としては、上記した中間層形成用塗布液の調製におけるn型半導体特性を示す金属酸化物の分散手段と同様の方法が採用できる。保護層形成用塗布液の塗布方法の例は、上記中間層形成用塗布液の塗布方法の例と同じである。
保護層形成用塗布液は、本実施形態の効果が得られる範囲において、上記成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。当該他の成分の例には、ラジカル重合開始剤が含まれる。当該ラジカル重合開始剤は、熱重合開始剤であってもよいし、光重合開始剤であってもよい。当該重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニル-ケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-2-モルフォリノ(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシムなどのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2-ベンゾイルナフタレン、4-ベンゾイルビフェニル、4-ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4-ベンゾイルベンゼンなどのベンゾフェノン系光重合開始剤;および2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤が含まれる。
光重合開始剤のほかの例には、エチルアントラキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10-フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、およびイミダゾール系化合物が含まれる。
重合開始剤は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。重合開始剤の含有量は、上記ラジカル重合性モノマー100質量部に対して0.1~20質量部の範囲内であり、0.5~10質量部の範囲内であることが好ましい。
保護層形成用塗布液の塗膜を硬化させるための方法の例には、当該塗膜への活性光線の照射、および上記塗膜の加熱が含まれる。活性光線の上記塗膜への照射は、例えば、ラジカル反応性成分のラジカル反応によって保護層を形成する公知の条件で行うことが可能である。
活性光線の照射エネルギーや照射時間などは、使用される光源の種類や光源の出力、保護層を形成するためのラジカル反応性官能基の種類などに応じて適宜設定されうる。活性光線の照射エネルギーは、5~500mJ/cm2の範囲内であることが好ましく、5~100mJ/cm2の範囲内であることがより好ましい。また、照射時間は、0.1秒~10分であることが好ましく、0.1秒~5分であることがより好ましい。
活性光線の光源の種類の例には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノン、紫外線LEDが含まれる。活性光線の光源の出力は、0.1~5kWの範囲内であることが好ましく、0.5~3kWの範囲内であることがより好ましい。活性光線の種類の例には、可視光、紫外線、電子線、X線およびガンマ線が含まれる。活性光線の波長は、250~400nm(紫外線)であることが好ましい。
最後に、保護層形成用塗布液の塗膜を乾燥し、上記塗膜を硬化させることによって、上記保護層を形成する。保護層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法は特に制限されない。
以上のようにして、感光体を製造することができる。
[電子写真画像形成方法および電子写真画像形成装置]
本発明の電子写真画像形成方法は、上述した本発明の電子写真感光体を用いることを特徴とする。また、本発明の電子写真画像形成装置は、上述した本発明の電子写真感光体を具備していることを特徴とする。
具体的には、本発明の電子写真画像形成装置は、本発明の電子写真感光体を具備し、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することが好ましい。
以下に、本発明の電子写真感光体を用いた電子写真画像形成装置とともに電子写真画像形成方法について説明する。図2は、本発明の実施形態の一例を示すフルカラーの電子写真画像形成装置の断面構成図である。なお、以下の説明において、感光体1Y、1M、1Cおよび1Bkに本発明の電子写真感光体が用いられているものとする。
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成ユニット10Y、10M、10Cおよび10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7aと、給紙手段21および定着手段24とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
イエロー色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、一次転写手段としての一次転写ローラー5Yおよびクリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラー5Mおよびクリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラー5Cおよびクリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成ユニット10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラー5Bkおよびクリーニング手段6Bkを有する。
前記画像形成ユニット10Y、10M、10Cおよび10Bkは、感光体1Y、1M、1Cまたは1Bkに、それぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、「帯電器2Y」ともいう。)、露光手段3Y、現像手段4Yおよびクリーニング手段6Yを配置し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体1Y、帯電手段2Y、現像手段4Yおよびクリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
帯電手段2Yは、感光体1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名:セルフォック(登録商標)レンズ)とから構成されるものまたはレーザー光学系などが用いられる。
現像手段4Yは、例えば、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブおよび感光体と、この現像スリーブとの間に直流および交流バイアス電圧または直流若しくは交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
無端ベルト状中間転写体ユニット7aは、複数のローラーにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10Cおよび10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、5M、5Cおよび5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22Dおよびレジストローラー23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体という。
一方、二次転写手段としての二次転写ローラー5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、一次転写ローラー5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラー5Y、5Mおよび5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1Mまたは1Cに当接する。
二次転写ローラー5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
また、画像形成装置の本体Aから筐体8を支持レール82Lおよび82Rを介して引き出し可能にしてある。
筐体8は、画像形成ユニット10Y、10M、10Cおよび10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7aとから成る。
画像形成ユニット10Y、10M、10Cおよび10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1Cおよび1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7aが配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7aは、ローラー71、72、76、73および74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkおよびクリーニング手段6bとから成る。
<除電工程>
なお、従来、電子写真画像形成装置においては、転写後に光照射による除電工程を行うことができる構成のものがあり、この工程を行う除電手段(光除電装置)としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
しかしながら、本発明の感光体を採用した電子写真画像形成装置においては、上記除電手段を用いなくても、長期間にわたる耐メモリ性と、カブリ等の画像欠陥の発生の防止とを両立できるため、除電手段を有さない構成とすることができる。このように光除電装置を有さない構成とした場合、画像形成装置の省スペース化、低コスト化を実現することが可能であり、感光体への光ダメージ低減にもつながるため好ましい。
<プロセスカートリッジ>
本発明の電子写真画像形成装置としては、本発明の電子写真感光体と、上述の帯電手段(帯電器)、露光手段(露光器)、現像手段(現像器)またはクリーニング手段(クリーニング器)の少なくとも一つとを一体として有したプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として構成し、この画像形成ユニットを電子写真画像形成装置本体に対して出し入れ可能(着脱自在)に構成されていることが好ましい。また、帯電手段、露光手段、現像手段の他、転写手段(転写器)、分離手段(分離器)の少なくとも一つを感光体とともに一体として有したプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
本発明の電子写真画像形成装置は電子写真複写機、レーザープリンター、LEDプリンターおよび液晶シャッター式プリンター等の電子写真画像形成装置一般に適応するが、さらに、電子写真技術を応用したディスプレイ、記録、軽印刷、製版およびファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り、「質量部」または「質量%」を表す。
[感光体1の作製]
(1)導電性支持体の作製
直径60mmの円筒状のアルミニウム支持体の表面を切削加工することにより、表面が細かい粗面とされた導電性支持体〔1〕を得た。
(2)中間層の形成
(2-1)金属酸化物の母体の作製
酸化チタンナノ粒子(P25;日本アエロジル株式会社製;平均一次粒径(メーカー公称値):20nm)200質量部を濃度17モル/Lの水酸化カリウム水溶液10000質量部とともにテフロン(登録商標)製管中に封入したものを耐圧ガラス容器中に密閉し、110℃で20時間保持して水熱処理を行った。反応生成物を濃度1モル/Lの塩酸水溶液で中和した後、イオン交換水による洗浄と遠心分離とを繰り返し、得られた白色沈殿を乾燥し、引き続き650℃で30分間焼成処理を行って白色粉末を得た。RINT2000(株式会社リガク製)を用いたX線回折スペクトル(CuKα)測定において、ルチル型酸化チタンに起因する27.4°、36.1°、41.2°、54.3°の回折ピークを確認した。電界放射透過型電子顕微鏡(HF-3300:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により10万倍で撮影し、ワイヤ状構造体の短径の100個平均値(平均短径)が15nmであることを確認し、また、2000倍で撮影してワイヤ状構造体の長径の100個平均値(平均長径)が7.5μmであることを確認したので、平均アスペクト比は500と算出された。
(2-2)金属酸化物への被覆処理
前節で得た白色粉末200質量部に、濃度12モル/Lの濃塩酸を800質量部加えて室温下で攪拌しながら、濃度20質量%のケイ酸ソーダ水溶液を30質量部添加して15分間攪拌した。得られたスラリーを濾過および水洗した後、2-プロパノール10000質量部、イオン交換水2000質量部およびアンモニア水100質量部を加えてpHを10~11に調整し、テトラメトキシシラン10質量部を徐々に添加しながら、ビーズミルによりミル滞留時間6時間として分散させた。得られたスラリーから加熱減圧により水および2-プロパノールを留去した後、150℃で2時間熱してシリカ被覆処理体を得た。蛍光X線分析装置(XRF-1700:株式会社島津製作所製)を用いて、Ti 1sピーク強度(4.51keV)とSi 1sピーク強度(1.74keV)との比から、酸化チタンのワイヤ状構造体に対するシリカ被覆量が、酸化チタン及びシリカの総量に対して5質量%であることを確認した。
前記シリカ被覆処理体200質量部をトルエン800質量部と攪拌混合し、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503;信越化学工業株式会社製)4.8質量部を添加し、50℃で3時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去した後、120℃で2時間焼き付けを行って被覆処理済みの酸化チタン粉末〔1〕を得た。示差走査熱量計(DSC-60A:株式会社島津製作所製)を用いて、300℃から600℃における重量減少率を測定したところ1.8%であり、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの有機部分の式量を考慮すると、2.4%の表面付着量に相当することから、添加した3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのほぼ全量が前記シリカ被覆処理体に被覆されていると判断できる。
なお、シリカ被覆体、および被覆処理済みの酸化チタン粉末〔1〕についても、それぞれ、電界放射透過型電子顕微鏡(HF-3300:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により10万倍で撮影し、ワイヤ状構造体の短径の100個平均値が15nmであることを確認し、また、2000倍で撮影してワイヤ状構造体の長径の100個平均値が7.5μmであることを確認し、平均アスペクト比は500であることを確認した。
(2-3)中間層形成用塗布液の調製
下記化学式(N-1)で表されるポリアミド樹脂40質量部を、エタノール/n-プロピルアルコール/テトラヒドロフラン(体積比50/20/30)の混合溶媒740質量部に加え、20℃で攪拌混合し、この溶液に、被覆処理済みの酸化チタン粉末〔1〕200質量部を添加し、ビーズミルにより、ミル滞留時間2時間として分散させることにより、中間層形成用塗布液〔1〕を調製した。
(2-4)中間層の形成
このようにして得られた中間層形成用塗布液〔1〕を、導電性支持体〔1〕の外周面に浸漬塗布法で塗布し、120℃で30分間乾燥することにより、乾燥膜厚1.5μmの中間層〔1〕を形成した。
(3)電荷発生層の形成
(3-1)電荷発生物質〔CG-1〕の調製
1,3-ジイミノイソインドリン29.2質量部をo-ジクロロベンゼン200質量部に分散し、チタニウムテトラ-n-ブトキシド20.4質量部を加え、窒素雰囲気下において150~160℃で5時間加熱した。放冷後、析出した結晶を濾過し、クロロホルム、2%塩酸水溶液、水、メタノールで順次洗浄し、乾燥することにより、26.2質量部(収率91%)の粗チタニルフタロシアニンを得た。
次いで、この粗チタニルフタロシアニンを5℃以下において濃硫酸250質量部中で1時間攪拌して溶解し、これを20℃の水5000質量部に注ぎ、析出した結晶を濾過し、水洗してウェットペースト品225質量部を得た。
このウェットペースト品を冷凍庫にて凍結し、再度解凍した後、濾過、乾燥することにより、無定形チタニルフタロシアニン24.8質量部(収率86%)を得た。
この無定形チタニルフタロシアニン10.0質量部と、(2R,3R)-2,3-ブタンジオール0.94質量部(0.6当量比)(当量比はチタニルフタロシアニンに対する当量比、以後同じ)をo-ジクロロベンゼン(ODB)200質量部中に混合し60~70℃で6.0時間加熱攪拌した。一夜放置後、この反応液にメタノールを加えて生じた結晶を濾過し、濾過後の結晶をメタノールで洗浄することにより、(2R,3R)-2,3-ブタンジオール付加チタニルフタロシアニンを含有する顔料からなる電荷発生物質〔CG-1〕10.3質量部を得た。電荷発生物質〔CG-1〕のX線回折スペクトルにおいては、8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークが生じ、マススペクトルにおいては576と648にピークが生じ、IRスペクトルにおいては970cm-1付近にTi=O、630cm-1付近にO-Ti-Oの両吸収が現れた。また、熱分析(TG)においては390~410℃に約7%の質量減少が生じた。以上のことより、電荷発生物質〔CG-1〕は、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)-2,3-ブタンジオールの1:1付加体と非付加体(付加していない)チタニルフタロシアニンの混合物(下記表1にはY-TiOPcと示す)と推定される。
(3-2)電荷発生層形成用塗布液〔1-1〕の調製
下記原料を混合し、循環式超音波ホモジナイザー「RUS-600TCVP」(株式会社日本精機製作所製、19.5kHz、600W)を用いて循環流量40L/Hで分散し、電荷発生層形成用塗布液〔1-1〕を調製した。
・電荷発生物質〔CG-1〕 24質量部
・ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL-1」(積水化学工業株式会社製)
12質量部
・溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=4/1(V/V) 600質量部。
(3-3)電荷発生層の形成
電荷発生層形成用塗布液〔1-1〕を上記中間層〔1〕上に、浸漬塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥し、層厚0.5μmの電荷発生層〔1〕を形成した。
(4)電荷輸送層の形成
下記原料を混合して溶解し、電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・電荷輸送物質:下記化学式(A)で表される化合物 225質量部
・電荷輸送層用バインダー樹脂:ポリカーボネート樹脂「ユーピロン(登録商標)Z300」(三菱ガス化学株式会社製) 300質量部
・酸化防止剤「Irganox(登録商標)1010」(BASFジャパン社製)
6質量部
・溶媒:THF 1600質量部
・溶媒:トルエン 400質量部
・シリコーンオイル「KF-50」(信越化学工業株式会社製) 1質量部。
上記電荷発生層〔1〕上に、この電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を円形スライドホッパー塗布装置を用いて塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥し、層厚25μmの電荷輸送層〔1〕を形成した。
〔感光体2の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における焼成温度を700℃に変更したことの他は、同様にして感光体2を得た。
〔感光体3の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における水熱処理温度を120℃に変更したことの他は、同様にして感光体3を得た。
〔感光体4の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における水熱処理時間を10時間に変更したことの他は、同様にして感光体4を得た。
〔感光体5の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における水熱処理温度を120℃に変更し、焼成温度を700℃に変更したことの他は、同様にして感光体5を得た。
〔感光体6の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における水熱処理温度を150℃に変更したことの他は、同様にして感光体6を得た。
〔感光体7の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における水熱処理温度を150℃に変更し、水熱処理時間を40時間に変更したことの他は、同様にして感光体7を得た。
〔感光体8の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における焼成温度を750℃に変更したことの他は、同様にして感光体8を得た。
〔感光体9の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における水熱処理温度を130℃に変更し、水熱処理時間を5時間に変更したことの他は、同様にして感光体9を得た。
〔感光体10の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-2)におけるケイ酸ソーダをアルミン酸ソーダに、テトラメトキシシランをトリエトキシアルミニウムにそれぞれ変更したことの他は、同様にして感光体10を得た。
〔感光体11の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-2)における3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503;信越化学工業株式会社製)を3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-502;信越化学工業株式会社製)に変更したことの他は、同様にして感光体11を得た。
〔感光体12の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-2)における3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503;信越化学工業株式会社製)をN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573;信越化学工業株式会社製)に変更したことの他は、同様にして感光体12を得た。
〔感光体13の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-2)における3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503;信越化学工業株式会社製)の被覆処理を行わなかったことの他は、同様にして感光体13を得た。
〔感光体14の作製〕
感光体9の作製において、過程(2-2)における3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503;信越化学工業株式会社製)の被覆処理を行わなかったことの他は、同様にして感光体14を得た。
〔感光体15の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-2)におけるケイ酸ソーダおよびテトラメトキシシランによるシリカ表面被覆処理を行わなかったことの他は、同様にして感光体15を得た。
〔感光体16の作製〕
感光体9の作製において、過程(2-2)におけるケイ酸ソーダおよびテトラメトキシシランによるシリカ表面被覆処理を行わなかったことの他は、同様にして感光体16を得た。
〔感光体17の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における焼成温度を500℃に変更し、X線回折スペクトル(CuKα)測定において、アナターゼ型酸化チタンに起因する25.3°、37.8°、48.0°、53.9°、55.1°の回折ピークを確認したことの他は、同様にして感光体17を得た。
〔感光体18の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における金属酸化物の母体作製工程を下記の通りに変更した他は、同様にして感光体18を得た。
(2-1)金属酸化物の母体作製
硝酸亜鉛47質量部とヘキサメチレンテトラミン35質量部とをイオン交換水10000質量部に溶解した水溶液中に、酸化亜鉛で表面コーティングしたシリコンウェハーを入れ、90℃で20時間浸漬処理した。ウェハー表面上に形成した白色粉末を回収しイオン交換水で洗浄した後、充分に乾燥した。この工程を繰り返すことにより、白色粉末を200質量部得た。この白色粉末のX線回折装置(RINT2000、株式会社リガク製)を用いたX線回折スペクトル(CuKα)測定において、酸化亜鉛に起因する31.7°、34.4°、36.2°、47.5°、56.6°および62.8°の回折ピークを確認した。電界放射透過型電子顕微鏡(HF-3300:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により10万倍で撮影し、ワイヤ状構造体の短径の100個平均値(平均短径)が20nmであることを確認し、また、2000倍で撮影してワイヤ状構造体の長径の100個平均値(平均長径)が8μmであることを確認したので、平均アスペクト比は400と算出された。
なお、シリカ被覆体、および被覆処理済みの酸化亜鉛粉末についても、それぞれ、電界放射透過型電子顕微鏡(HF-3300:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により10万倍で撮影し、ワイヤ状構造体の短径の100個平均値が20nmであることを確認し、また、2000倍で撮影してワイヤ状構造体の長径の100個平均値が8μmであることを確認し、平均アスペクト比は400であることを確認した。
〔感光体19の作製〕
感光体18の作製において、過程(2-2)におけるケイ酸ソーダおよびテトラメトキシシランによるシリカ表面被覆処理を行わなかったことの他は、同様にして感光体19を得た。
〔感光体20の作製〕
感光体1の作製において、電荷発生物質をX線回折スペクトルにおいて7.3°、16.0°、24.9°、および28.0°に明確なピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンに変更したことの他は、同様にして感光体20を得た。
〔感光体21の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-3)において、市販の酸化チタン粒子(SMT-150MK;テイカ株式会社製;平均一次粒径(メーカー公称値)15nm)に対して、上記過程(2-2)における3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた表面処理と同様にして、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503;信越化学工業株式会社製)の被覆処理を実施したものを40質量部追加したことの他は、同様にして感光体21を得た。
〔感光体22の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-3)において、被覆処理済みの酸化チタン粉末〔1〕を、市販の酸化チタン粒子(SMT-150MK;テイカ株式会社製;平均一次粒径(メーカー公称値)15nm)に対して、上記過程(2-2)における3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた表面処理と同様にして、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503;信越化学工業株式会社製)の被覆処理を実施したものに変更したことの他は、同様にして感光体22を得た。
〔感光体23の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-3)において、被覆処理済みの酸化チタン粉末〔1〕を、市販のシリカ表面処理済みの酸化チタン粒子(MT-100WP;テイカ株式会社製;平均一次粒径(メーカー公称値):15nm)に対して、上記過程(2-2)における3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた表面処理と同様にして、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503;信越化学工業株式会社製)の被覆処理を実施したものに変更したことの他は、同様にして感光体23を得た。
〔感光体24の作製〕
感光体8の作製において、過程(2-1)における水熱処理温度を90℃に変更したことの他は、同様にして感光体24を得た。
〔感光体25の作製〕
感光体8の作製において、過程(2-1)における水熱処理温度を100℃に変更したことの他は、同様にして感光体25を得た。
〔感光体26の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における水熱処理温度を150℃に変更し、水熱処理時間を60時間に変更したことの他は同様にして感光体26を得た。
〔感光体27の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における水熱処理時間を1時間に変更し過程(2-2)におけるケイ酸ソーダおよびテトラメトキシシランによるシリカ表面被覆処理を行わなかったことの他は、同様にして感光体27を得た。
〔感光体28の作製〕
感光体17の作製において、過程(2-1)における焼成温度を300℃に変更したことの他は同様にして感光体28を得た。
〔感光体29の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における水熱処理温度を90℃に変更し、水熱処理時間を120時間に変更したことの他は、同様にして感光体29を得ることを試みたが、中間層形成用塗布液〔1〕が凝集沈降しやすく塗布することができなかった。
〔感光体30の作製〕
感光体1の作製において、過程(2-1)における水熱処理時間を3時間に変更したことの他は、同様にして感光体30を得た。
[評価方法]
〔感光体1~28、30の評価〕
市販のフルカラー複合機「bizhub Press(登録商標)C1070」(コニカミノルタ株式会社製)に感光体1~28、30をそれぞれ搭載した電子写真画像形成装置1~28、30を使用して評価を行った。
まず、画像比率5%の文字画像をA4横送りで各5万枚両面連続プリントを行う耐久試験(以下、「長期印刷」ともいう。)を実施し、長期印刷前(初期)および長期印刷後に、パターンメモリおよびカブリについての評価を行った。
(1)パターンメモリの評価
長期印刷の前後に、温度10℃、湿度15%RHの環境下において、縦方向の帯ベタ画像を、転写材:「A3/PODグロスコート(A3サイズ、100g/m2)」(王子製紙株式会社製)上に20枚連続印刷し、続けて全面ベタ画像を3枚印刷した。得られた全面ベタ画像の帯ベタ部の履歴発生、すなわちパターンメモリの発生を、以下の評価基準に従って評価した。濃度計(RD-918;グレタグ・マクベス社製)を用いて、得られた全面ベタ画像のうち帯ベタ履歴部に対応する領域の反射濃度と、帯ベタ履歴部に該当しない領域の反射濃度とを測定した。そして、測定された2つの反射濃度差(ΔID)を算出した。結果を下記表1に示す。
-評価基準-
A◎:全面ベタ画像のΔIDが0.005未満(合格)
B○:全面ベタ画像のΔIDが0.005以上0.010未満(合格)
C×:全面ベタ画像のΔIDが0.010以上0.030未満(不合格)
D××:全面ベタ画像のΔIDが0.030以上(不合格)。
(2)カブリの評価
長期印刷の前後に、温度30℃、湿度80%RHの環境下において、転写材:「A3/PODグロスコート(A3サイズ、100g/m2)」(王子製紙株式会社製)上に、グリッド電圧-900V、現像バイアス-720Vの条件で、無地画像(白ベタ画像)を形成し、ドットアナライザー(DA-7000;王子計測機器株式会社製)を用いた黒化率の計測により、白地部へのカブリを評価した。結果を表1に示す。
-カブリ評価基準-
A◎:黒化率が0.20%未満(合格)
B○:黒化率が0.20%以上0.50%未満(合格)
C△:黒化率が0.50%以上1.00%未満(合格)
D×:黒化率が1.00%以上5.00%未満(不合格)
E××:黒化率が5.00%以上(不合格)。
なお、表1に記載の平均短径および平均アスペクト比は、金属酸化物を表面被覆および/または表面処理した後の平均短径および平均アスペクト比であるが、表面被覆および/または表面処理の前の金属酸化物の平均短径および平均アスペクト比と変わらない値である。
上記結果に示されるように、本発明の感光体(感光体1~21)を用いた場合、比較例の感光体(感光体22~28、30)に比べて、パターンメモリおよびカブリの発生を防止することができることが分かる。