JP2020201383A - 電子写真感光体、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】熱履歴に伴い各層の界面に微小な空隙が生じるのを防止し、黒ポチやドット再現性低下等の画質欠陥の発生を防止できる電子写真感光体を提供する。【解決手段】導電性支持体上に、少なくとも、中間層、感光層の順に積層された複数の層を有する感光体であって、前記複数の層のうち少なくとも一層が負膨張材料を含有する電子写真感光体。【選択図】なし

Description

本発明は、電子写真感光体、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置に関し、特に、中間層、感光層の順に積層された複数の層を有する感光体の層間の熱膨張の差を小さくすることができるとともに、界面の微小な空隙の発生を防止することができ、黒ポチ発生等の画質低下を防止できる電子写真感光体等に関する。
電子写真方式の画像形成装置(単に電子写真画像形成装置ともいう)では、形成しようとする画像に対応した静電潜像を形成するために電子写真感光体(単に感光体ともいう)が使用されている。前記静電潜像は、帯電している感光体の表面に光を照射することにより形成される。静電潜像が形成された感光体にトナーが供給されるとトナー像が形成される。当該トナー像は、記録媒体に転写される。
前記感光体は、導電性支持体の上に中間層、感光層、保護層といった複数の層を積層することにより形成される。しかしながら、導電性支持体およびこれら層(中間層、感光層、保護層等)の熱膨張係数(線膨張係数)が異なるため、感光体製造、製品の輸送あるいは連続印刷における加熱や冷却の温度変化履歴により、感光体を構成する各層の界面に微小な空隙が生じる問題があった。特に、導電性支持体と中間層との間に空隙が生じると、白地上の黒ポチ発生につながり、画質の低下をもたらしてしまう。
一般に、導電性支持体は、アルミニウム(線膨張係数23ppm/K)等の金属導体を用いている。一方、中間層の主成分は、熱可塑性あるいは熱硬化性の樹脂であることが多く、これらの樹脂は、線膨張係数が100ppm/Kを超えることもある。そのため、前述の加熱や冷却の温度履歴変化により、導電性支持体と中間層の界面に微小な空隙が生じやすい状況となる。
中間層の電荷輸送性を向上させるために、酸化チタンなどの金属酸化物を含有させる技術が検討されている(例えば、特許文献1)。
特開2005−136924号公報
しかしながら、特許文献1で用いられている金属酸化物の線膨張係数は、樹脂に比べれば小さく(例えば、酸化チタンは9ppm/K)、中間層の熱膨張を抑制する効果は見られるが、まだ不十分であり、結果として白地上の黒ポチ発生による画質の低下を充分なレベルで防止できていない。
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、熱履歴に伴い各層の界面に微小な空隙が生じるのを防止し、黒ポチやドット再現性低下等の画質欠陥の発生を防止できる電子写真感光体、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、感光体を構成する層に負膨張材料を含有させることによって、熱履歴に伴う黒ポチやドット再現性低下等の画質欠陥の発生を防止できる電子写真感光体、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置を提供することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.導電性支持体上に、少なくとも、中間層、感光層の順に積層された複数の層を有する感光体であって、
前記複数の層のうち少なくとも一層が負膨張材料を含有する、電子写真感光体。
2.前記中間層が前記負膨張材料を含有する、上記1に記載の電子写真感光体。
3.前記負膨張材料がタングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ハフニウム、モリブデン酸ジルコニウムおよびモリブデン酸ハフニウムからなる群より選択される少なくとも1種である、上記1または2に記載の電子写真感光体。
4.前記負膨張材料がタングステン酸ジルコニウムである、上記1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
5.前記中間層が酸化チタン、酸化亜鉛および酸化スズからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、上記1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
6.上記1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いる、電子写真画像形成方法。
7.上記1〜5のいずれか一項に記載の電子写真感光体を具備する、電子写真画像形成装置。
本発明によれば、熱履歴に伴って各層の界面に微小な空隙が生じるのを防止し、黒ポチやドット再現性低下等の画質欠陥の発生を防止することができる電子写真感光体、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置を提供することができる。
本発明の電子写真画像形成装置の一例を示す模式断面図である。
以下、本発明の一実施形態について、添付した図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃の範囲)/相対湿度40〜50%RHの条件下で行うものとする。
本発明の一実施形態による電子写真感光体は、導電性支持体上に、少なくとも、中間層、感光層の順に積層された複数の層を有する感光体であって、前記複数の層のうち少なくとも一層が負膨張材料を含有することを特徴とするものである。この特徴は、電子写真感光体を用いた電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置の実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
上記した実施形態の電子写真感光体においては、上記構成を有することで、上記した発明の効果を有効に奏することができる。すなわち、本実施形態の電子写真感光体は、上記構成を有することで、導電性支持体上に、少なくとも、中間層、感光層の順に積層された複数の層を有する感光体の層間の熱膨張の差を小さくすることができ、界面の微小な空隙の発生を防止することができ、熱履歴に伴う黒ポチ発生等の画質低下を防止することができる。
なぜ、上記構成を有する電子写真感光体により上記効果が得られるのか、詳細は不明であるが、下記のような発現機構又は作用機構が考えられる。なお、下記の発現機構又は作用機構は推測によるものであり、本発明は下記発現機構又は作用機構に何ら制限されるものではない。
負膨張材料、すなわち線膨張係数が負の値を示す材料を感光体の中間層に用いれば、導電性支持体と中間層との熱膨張の差を充分なレベルまで小さくすることができ、熱履歴によるストレスがかかる状況下でも、導電性支持体と中間層との界面の微小な空隙の発生を充分なレベルまで抑制することができる。結果として、白地上の黒ポチ発生による画質の低下を充分なレベルで防止することができる。感光体を帯電させる際は、感光体全面を均一にかつ同一の電位に帯電させるのが理想であるが、局所的な欠陥(例えば、導電性支持体と中間層の界面の微小な空隙)があると、局所的に帯電性が悪くなり、白ベタ画像上の黒ポチ画像欠陥の発生につながると考えられる。一方、本実施形態では導電性支持体と中間層との界面の微小な空隙の発生を充分なレベルまで抑制することができる。そのため局所的に帯電性が悪くなるのを抑制することができるので黒ポチの発生を十分に抑制することができ、黒ポチ発生による画質の低下を充分なレベルで防止することができると考えられる。
負膨張材料を感光層などの中間層以外の層に含有させる場合でも、層間界面の熱膨張の差を調整する機能を発現するので、同様に熱履歴ストレスによる微小な空隙発生の防止につながる。この場合は、ドット再現性の向上による画質の低下を充分なレベルで防止することができる。すなわち、露光プロセスに伴う感光体の層内部での電荷移動は、感光体積層方向に対して垂直方向なのが理想であるが、実際には塗布面の平行方向への電荷拡散を生じる。層間界面に空隙が生じた場合は、空隙がない場合に比べてこの電荷拡散の影響が大きく、静電潜像のドットが広がってしまうため、ドット再現性が低下すると考えられる。一方、本実施形態では層間界面の微小な空隙発生を充分なレベルまで抑制することができる。そのため、塗布面平行方向への電荷拡散の影響を小さくなるように抑制することができ、静電潜像のドットが広がってしまうのを十分抑制することができる。これにより、ドット再現性が低下するのを抑制でき、画質の低下を充分なレベルで防止することができると考えられる。
なお、上記発現機構又は作用機構は推測によるものであり、本発明は上記発現機構又は作用機構に何ら制限されるものではない。
以下、本実施形態の電子写真感光体につき説明する。
本実施形態の電子写真感光体は、導電性支持体上に、少なくとも、中間層、感光層の順に積層された複数の層のうち少なくとも一層が負膨張材料を含有することを特徴とする。これにより、上記した発明の効果を奏することができる。
上記負膨張材料とは、線膨張係数が負の値を示す材料であり、加熱により収縮する材料である。負膨張材料としては、例えば、窒化マンガン系(例えば、Mn3.4Zn0.4Sn0.2N(線膨張係数:−40ppm/K)など)、硫化サマリウム系、ビスマス・ニッケル・鉄酸化物系などの磁性体、および、タングステン酸ジルコニウム(ZrW)(線膨張係数:−9ppm/K)、タングステン酸ハフニウム(HfW)(線膨張係数:−9ppm/K)、モリブデン酸ジルコニウム(ZrMo)(線膨張係数:−5ppm/K)、モリブデン酸ハフニウム(HfMo)(線膨張係数:−4ppm/K)、リン酸ジルコニウム系化合物(KZr(PO(線膨張係数:−0.4ppm/K)、ZrWO(PO(線膨張係数:−4ppm/K)など)、β−ユークリプタイト(LiAlSiO)(線膨張係数:−1ppm/K)、タングステン酸ルテチウム(Lu12)(線膨張係数:−7ppm/K)、タングステン酸スカンジウム(Sc12)(線膨張係数:−2ppm/K)などの非磁性体がある。これらは1種単独で用いてもよいが、2種以上を併用してもよい。現像プロセスに対する影響を考慮すると、後者の非磁性体であることが好ましく、この中でも、タングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ハフニウム、モリブデン酸ジルコニウムおよびモリブデン酸ハフニウムからなる群より選択される少なくとも1種が、広い温度領域で安定に等方的な負の熱膨張特性を示すので好ましい。すなわち、これらの4つの化合物は等方的な熱膨張を示し、かつ0〜400℃にわたって安定した負の熱膨張を示すのに対し、他の化合物は非等方的な熱膨張を示し、かつ熱膨張を示す温度範囲が限定されているため(おおよそ100℃以下)、前記の4つの化合物の方が好ましいともいえる。これらの化合物の中でも、タングステン酸ジルコニウムが、露光後の残留電荷がより低下し、感光体の残留電位の低下に寄与するので特に好ましい。
前記負膨張材料の線膨張係数は、負の値であれば制限はないが、−1ppm/K以下(絶対値が1ppm/K以上)のときに、塗布法で感光体を製造する際に、負膨張材料を含有する塗布膜(層)全体の線膨張係数を調整する効果が大きくなるので好ましい。負膨張材料の線膨張係数の下限値には特に制限はないが、現在知られている物質から鑑みると、−100ppm/Kが下限である。
前記負膨張材料の線膨張係数の測定方法としては、温度を変化させながら、粉末X線回折により単位格子体積を求め、温度に対する単位格子体積の傾きから線膨張係数を求める方法が挙げられる。
前記負膨張材料(粒子)の平均一次粒径は、好ましくは10〜300nmの範囲であり、より好ましくは10〜100nmの範囲である。負膨張材料の平均一次粒径が10nm以上であれば、感光体の製造工程に用いる負膨張材料を含有する層形成用塗布液の分散性が高まるので好ましく、負膨張材料の平均一次粒径が300nm以下であれば、感光体製造時に負膨張材料を含有する層形成用塗布液により形成した塗布膜(層)の均一性が高まり局所欠陥の発生が防止できるので好ましい。
負膨張材料の平均一次粒径の測定方法は、電界放射型透過型電子顕微鏡(例えば、HF−3300:株式会社日立ハイテクノロジーズ製等)により10万倍で撮影した画像より一次粒子の平均粒径(平均一次粒径)を算出することができる。
層中の負膨張材料の含有量は、特に制限はないが、層中のバインダー樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部以上1000質量部以下の範囲であり、より好ましくは50質量部以上500質量部以下の範囲である。層中の負膨張材料の含有量が10質量部以上であれば、塗布膜全体の線膨張係数を調整する効果が十分に発現するので好ましく、1000質量部以下であれば、感光体製造時に負膨張材料を含有する層形成用塗布液中で極度に増粘することなく分散するので好ましい。
前記負膨張材料は、少なくとも、中間層、感光層の順に積層された複数の層のうち少なくとも一層に含有されればよい。複数の層としては、中間層、電荷発生層、電荷輸送層、電荷発生材料と電荷輸送材料とを含む単層の感光層、保護層等が挙げられる。前記負膨張材料は、好ましくは、前記した複数の層のうち、中間層に含有されるのが好ましい。すなわち、加熱や冷却の温度変化履歴により発生する界面の微小な空隙の発生による画質低下の影響は、導電性支持体と中間層との間で空隙が発生した場合に特に大きくなる。一般に、中間層の熱膨張係数は、導電性支持体の数倍と大きいが、本形態の負膨張材料を中間層に導入することにより、導電性支持体と中間層との熱膨張の差を充分なレベルまで小さくすることができ、熱履歴によるストレスがかかる状況下でも、導電性支持体と中間層の界面の微小な空隙の発生を充分なレベルまで抑制することができる。結果として、白地上の黒ポチ発生による画質の低下を充分なレベルで防止することができるので好ましい。
前記負膨張材料は、前記した複数の層のうち、中間層以外のいずれかの層に含有されてもよい。負膨張材料を中間層以外のいずれかの層に用いることで、層間界面の熱膨張の差を調整する機能を発現するので、熱履歴によるストレスがかかる状況下でも、層間界面の微小な空隙の発生の防止につながる。その結果、ドット再現性の低下による画質の低下を充分なレベルで防止することができる。
なお、負膨張材料は単独でも2種以上を混合しても用いることができる。また、負膨張材料は、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。負膨張材料の合成方法としては、例えば、実施例に記載の方法が挙げられる。
以上が、本実施形態の特徴部分である、負膨張材料についての説明である。以下、本実施形態の感光体の上記特徴部分以外の他の構成要件(導電性支持体や各層の構成等)につき説明する。
[導電性支持体]
導電性支持体は、中間層、感光層、更に必要に応じて設けられる保護層等を支持し、かつ、導電性を有する部材である。
導電性支持体の例には、金属製のドラム又はシート、ラミネートされた金属箔を有するプラスチックフィルム、蒸着された導電性物質の層を有するプラスチックフィルム、導電性物質又は導電性物質及びバインダー樹脂からなる塗料を塗布してなる導電層を有する金属部材、プラスチックフィルム、紙などが含まれる。
金属の例には、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレス鋼が含まれる。
導電性物質の例には、上記金属、酸化インジウム及び酸化スズが含まれる。加工性、堅牢性及び軽量性の観点からは、上記金属は、アルミニウムであることが好ましい。
[中間層]
中間層は、感光層で生成した電子を導電性支持体側へ輸送する機能(電子輸送機能)と、導電性支持体から感光層への正孔の注入を防止する機能(ブロッキング機能)とを有するものであり、導電性支持体と感光層とを接着する機能を有するものである。
中間層は、バインダー樹脂(以下、「中間層用バインダー樹脂」ともいう)中に各種金属酸化物粒子等の無機粒子が含有されてなるものである。本実施形態の感光体は、好ましくは当該無機粒子として、上記した負膨張材料(粒子)を用いるが、負膨張材料に関しては上記した通りであるので、ここでの説明は省略ずる。
中間層用バインダー樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール樹脂、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂及びゼラチンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂及びゼラチンのような熱可塑性樹脂であることが、樹脂部分に反応残基がないため、使用環境の温湿度差による感光体電気特性の変動が少なくなる点で好ましい。特に、後述する電荷発生層形成用塗布液を中間層上に塗布するときに当該中間層用バインダー樹脂が溶解されることを抑制する観点などから、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、メトキシメチロール化ポリアミド樹脂などのアルコール可溶性のポリアミド樹脂を用いることがより好ましい。
中間層には、本実施形態での負膨張材料以外に、その他の金属酸化物粒子が含まれていてもよい。その他の金属酸化物粒子としては特に制限はなく、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化ケイ素)、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウムなどの金属酸化物微粒子、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズおよび酸化ジルコニウムなどの微粒子、酸素欠損型酸化スズが被覆されている酸化チタン粒子などを用いることができる。なかでも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズが好ましく用いられる。中間層が、酸化チタン、酸化亜鉛および酸化スズの少なくとも一つを含有することにより、露光時の電荷発生材料から中間層への電荷注入および中間層での電荷輸送がより円滑に行われるので好ましい。これらの無機粒子は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上である場合には、前記金属酸化物粒子は、固溶体であってもよいし、融着体であってもよい。
負膨張材料の平均一次粒径は上記した通りである。また、負膨張材料(粒子)以外の他の無機粒子(金属酸化物粒)の平均一次粒径は、好ましくは10nm以上300nm以下の範囲であり、より好ましくは10nm以上100nm以下の範囲である。無機粒子の平均一次粒径が10nm以上であれば、感光体の製造工程に用いる当該無機粒子を含有する中間層形成用塗布液の分散性が高まるので好ましい。無機粒子の平均一次粒径が300nm以下であれば、感光体製造時に当該無機粒子を含有する中間層形成用塗布液により形成した塗布膜(中間層)の均一性が高まり局所欠陥の発生が防止できるので好ましい。
負膨張材料(粒子)以外の他の無機粒子(金属酸化物粒子)の平均一次粒径は、試料となる粒子を走査型電子顕微鏡により倍率100000倍で撮影し、自動画像処理解析装置を使用して試料となる粒子について2値化処理し、無作為に選んだ粒子100個についての水平方向フェレ径を算出し、その平均値(数平均一次粒径)を「平均一次粒径」として求めることができる。ここで水平方向フェレ径とは、試料となる粒子の画像を2値化処理したときの外接長方形のx軸に平行な辺の長さをいう。
中間層中の負膨張材料の含有量は上記した通りである。また、中間層中の酸化チタン等の無機粒子の含有量は、中間層用バインダー樹脂100質量部に対して、100質量部以上1000質量部以下の範囲であり、より好ましくは200質量部以上500質量部以下の範囲である。酸化チタン等の無機粒子の含有量が100質量部以上であれば、中間層の電荷輸送性が十分大きくなるため好ましく、1000質量部以下であれば、中間層形成用塗布液中で極度に増粘することなく分散するので好ましい。
負膨張材料および他の無機粒子は、表面修飾剤によって表面が修飾されていることが好ましい。表面修飾剤としては、例えば、無機化合物、有機化合物が挙げられ、有機化合物としては、反応性有機ケイ素化合物、有機チタン化合物などが挙げられる。反応性有機ケイ素化合物の一例としてシランカップリング剤を挙げることができ、後述する保護層に用いられる(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤が好ましく、具体的には、後述する式S−1〜S−34で表される化合物が含まれる。負膨張材料および他の無機粒子をシランカップリング剤で表面修飾することにより、製造工程に用いる負膨張材料や他の無機粒子を含有する中間層形成用塗布液の分散性が高まるため好ましい。また、負膨張材料(粒子)や他の無機粒子の粒子表面の親水性基サイトが減少して使用環境の温湿度差による感光体の電気特性の変動が少なくなるので好ましい。また、表面修飾剤は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
中間層の厚さは、0.5μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。中間層の厚さが0.5μm以上であると、導電性支持体の表面全体を十分に被覆することができるため、導電性支持体からの正孔の注入を十分にブロックすることができ、その結果、黒ポチやドット再現性の低下などの画像欠陥の発生をより防止できる。中間層の厚さが20μm以下であると、電気抵抗を適切にでき、十分な電子輸送性が得られ、その結果、濃度ムラの発生をより抑制することができる。
[電子輸送性材料(ETM)含有薄膜]
本実施形態においては、必要に応じて、中間層と感光層の一つである電荷発生層との間に別途、電子輸送性材料(ETM)含有薄膜を設けてもよい。ETM含有薄膜を設けることで帯電スジの抑制効果をより高めることができる。本実施形態では、ETM含有薄膜に負膨張材料をさらに含有させてもよい。これによりドット再現性の低下などの画像欠陥の発生を防止できる。当該負膨張材料に関しては、上記した通りである。
ETM含有薄膜には、必要に応じて、接着機能及びバリアー機能を有するETM含有薄膜用バインダー樹脂を含有させてもよい。ETM含有薄膜用バインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレンオキシド、エチルセルロース、カゼイン、ポリウレタン及びポリエーテルウレタン等の熱可塑性樹脂やメラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
ETM含有薄膜は、還元電位−0.60V以上−0.45V以下の下記式(1)で示される電子輸送性材料(例えば、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミドなど)を含有する。ETM含有薄膜には、さらに金属酸化物粒子を含有させてもよい。また、電子輸送性材料、金属酸化物粒子に加え更にシランカップリング剤又は有機金属酸化物を含有していることが帯電スジの抑制の点から好ましい。
上記式(1)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン基、ニトロ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、又は置換基を有してもよいアルキル基を示す。R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有してもよくエーテル基で中断されていてもよいアルキル基、置換基を有してもよくエーテル基で中断されていてもよいアルケニル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアラルキル基、アルキル基で置換されたカルボニル基、又はアルキル基で置換されたスルホニル基を示す。上記置換基とは、アルキル基、アルケニル基、ニトロ基、ハロゲン基及びハロゲン置換アルキル基等が挙げられる。
また、上記式(1)で示される電子輸送性材料は、サイクリックボルタンメトリーの還元電位測定(アセトニトリル溶媒、支持電解質:テトラブチルアンモニウムパークロレート、作用極:白金電極、掃印速度:50mV/s、飽和カロメル電極を基準電極とし、還元側のピーク電位と酸化側のピーク電位の中間電位を還元電位とする)において、−0.60V以上−0.45V以下の還元電位を有する。
電子輸送性材料の含有量は、ETM含有薄膜全量に対して3質量%以上90質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは10質量%以上70質量%以下の範囲である。上記範囲であれば、帯電スジの抑制効果を高めて良好な画像が得られる点で好ましい。
乾燥後のETM含有薄膜の膜厚は0.05μm以上10μm以下の範囲が好ましく、特には0.3μm以上5μm以下の範囲である。
ETM含有薄膜に含有され得る金属酸化物粒子は、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化スズ等の導電性金属酸化物であることが好ましい。特には、酸化チタンがより好ましい。
また、ETM含有薄膜には、帯電スジの抑制効果を高める観点から、従来公知のシランカップリング剤や有機金属化合物を含有させることが好ましい。前記有機金属化合物としてはチタン及びジルコニウム化合物が好ましい。チタン化合物としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、チタニウムブトキサイド、チタニウムプロポキサイド等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。また、ジルコニウム化合物としては、従来公知のものを用いることができ、例えば、ジルコニウムブトキサイド、ジルコニウムアセト酢酸エチル等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
[感光層]
感光層は、後述する露光により所期の画像に対応する静電潜像を上記感光体の表面に形成するための層である。
感光層は、例えば、電荷発生層用のバインダー樹脂及び電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送層用のバインダー樹脂及び電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層物により構成されうる。また、感光層は、感光層用のバインダー樹脂、電荷発生物質、および電荷輸送物質を含有する単層の感光層により構成されうる。本実施形態では、電荷発生層や電荷輸送層や単層の感光層に負膨張材料をさらに含有させてもよい。これによりドット再現性の低下などの画像欠陥の発生を防止できる。当該負膨張材料に関しては、上記した通りである。
[電荷発生層]
電荷発生層用のバインダー樹脂としては、電荷発生層用のバインダー樹脂として用いられている公知の樹脂を使用することができる。
電荷発生層用のバインダー樹脂の例には、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂及びフェノキシ樹脂が含まれる。電荷発生層用のバインダー樹脂は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
電荷発生物質の例には、スーダンレッドやダイアンブルーなどのアゾ原料;ピレンキノンやアントアントロンなどのキノン化合物;キノシアニン化合物;ペリレン化合物;インジゴやチオインジゴなどのインジゴ化合物;ピランスロン、ジフタロイルピレン多環キノン化合物;及びフタロシアニン化合物などが含まれる。電荷発生物質は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
フタロシアニン化合物は、中心金属を有していてもよいし、有していなくてもよい。当該中心金属の例には、Ti、Fe、V、Si、Pb、Al、Zn及びMgが含まれる。当該中心金属は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。電荷発生層の感度を高める観点から、フタロシアニン化合物は、中心金属としてTiを有するチタニルフタロシアニン化合物であることが好ましい。
また、上記観点から、当該チタニルフタロシアニン化合物は、CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角(2θ±0.2)27.3°に最大ピークを有し、7.4°、9.7°及び24.2°に明瞭な回折ピークを有するY型チタニルフタロシアニン化合物、又はブラッグ角8.3°、24.7°、25.1°及び26.5°に明瞭な回折ピークを有する2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンであることが好ましい。
電荷発生物質の含有量は、電荷発生層用のバインダー樹脂100質量部に対して20質量部以上600質量部以下の範囲であることが好ましく、50質量部以上500質量部以下の範囲であることがより好ましい。電荷発生物質の含有量が上記範囲内であれば、電荷発生物質の分散性を高め、電荷発生層の電気抵抗を低減することができる。結果として、感光体の使用に伴う残留電荷の増加がより抑制される。
電荷発生層の厚さは、例えば、0.01μm以上2μm以下の範囲が好ましく、0.15μm以上1.5μm以下の範囲であることがより好ましい。電荷発生層の厚さが上記範囲内であれば、電荷発生物質の分散性を高め、電荷発生層の電気抵抗を低減することができる。結果として、感光体の使用に伴う残留電荷の増加がより抑制される。電荷発生層の厚さは、電荷発生層用のバインダー樹脂の種類、並びに電荷発生物質の種類及び含有量に応じて適宜調整されうる。
[電荷輸送層]
電荷輸送層用のバインダー樹脂としては、電荷輸送層用のバインダー樹脂として用いられている公知の樹脂を使用することができる。電荷輸送層用のバインダー樹脂の例には、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、これらの樹脂の繰り返し単位のうち2以上を有する共重合樹脂などの絶縁性樹脂;及びポリ−N−ビニルカルバゾールなどの有機半導体が含まれる。電荷発生物質の分散性を高め、上記感光体の特性を高める観点からは、電荷輸送層用のバインダー樹脂は、ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。電荷輸送層用のバインダー樹脂は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
電荷輸送物質の例には、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物及びブタジエン化合物が含まれる。電荷輸送物質は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層用のバインダー樹脂100質量部に対して10質量部以上200質量部以下の範囲であることが好ましい。電荷輸送物質の含有量が上記範囲内であれば、感光体の内部電場を強め、感光体の使用に伴う残留電荷の増加を抑制することができる。
電荷輸送層の厚さは、10μm以上40μm以下の範囲であることが好ましい。感光体の内部電場を強め、感光体の使用に伴う残留電荷の増加を抑制する観点から、電荷輸送層の厚さは、10〜20μmの範囲であることがより好ましい。電荷輸送層の厚さは、電荷輸送層用のバインダー樹脂の種類、並びに電荷輸送物質の種類及び含有量に応じて適宜調整されうる。
電荷輸送層は、必要に応じて他の成分を含有していてもよい。当該他の成分の例には、酸化防止剤、電子導電剤、安定剤、シリコーンオイルが含まれる。
なお、本発明に係る感光層は、単層で構成されていてもよい。この場合、感光層は、例えば、感光層用のバインダー樹脂、上記電荷輸送物質及び上記電荷発生物質を含む材料により構成されうる。
感光層の厚さは、10〜50μmの範囲が好ましく、20〜40μmの範囲であることがより好ましい。感光層の厚さが上記範囲内であれば、感光体の内部電場を強め、感光体の使用に伴う残留電荷の増加を抑制することができる。
感光層が、単層で構成されている場合、感光層用のバインダー樹脂の例には、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、これらの樹脂のうち2以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂)、ポリ−ビニルカルバゾール樹脂、ポリアクリレート樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、及びスチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、が含まれる。
[保護層]
保護層は、感光層を保護するための層である。保護層は、必ずしも設けなくてもよいが、感光層保護の観点から設けるのが好ましい。
保護層は、感光層の上に配置されるとともに感光体の表面を構成する。保護層は、例えば、保護層用のバインダー樹脂と、保護層用の金属酸化物粒子と、必要に応じて保護層用の電荷輸送物質とを含む。本実施形態では、保護層に負膨張材料をさらに含有させてもよい。これによりドット再現性の低下などの画像欠陥の発生を防止できる。当該負膨張材料に関しては、上記した通りである。
保護層用のバインダー樹脂としては、保護層用のバインダー樹脂として用いられている公知の樹脂を使用することができる。保護層用のバインダー樹脂の例には、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が含まれる。保護層用のバインダー樹脂は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
感光体の耐久性の観点からは、保護層用のバインダー樹脂は、ラジカル重合性モノマーを含むラジカル重合性組成物の重合硬化物であることが好ましい。この場合、ラジカル重合性組成物は、保護層用の金属酸化物粒子及び保護層用の電荷輸送物質をさらに含んでいてもよい。
ラジカル重合性モノマーは、2以上のラジカル重合性官能基を有する。当該ラジカル重合性官能基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する上記ラジカル重合性モノマーの例には、下記式M1〜M15で表される化合物が含まれる。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリロイル基」は、ラジカル重合性官能基であり、アクリロイル基(CH=CHCO−)及びメタクリロイル基(CH=C(CH)CO−)の一方又は両方を意味する。
上記式M1〜M15において、Rはアクリロイル基(CH=CHCO−)を示し、R’はメタクリロイル基(CH=CCHCO−)を示す。
保護層の電気抵抗を適切に調整して画質安定性を高めるとともに、保護層の強度を高める観点からは、保護層は、保護層用の金属酸化物粒子を含むことが好ましい。
保護層用の金属酸化物粒子を構成する金属酸化物の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化ケイ素)、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム、スズがドープされた酸化インジウム、アンチモンがドープされた酸化スズ及び酸化ジルコニウムが含まれる。保護層用の金属酸化物粒子は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。保護層用の金属酸化物粒子が、2種以上である場合には、当該金属酸化物粒子は、固溶体であってもよいし、融着体であってもよい。
保護層用の金属酸化物粒子の平均一次粒径は、例えば、1nm以上300nm以下の範囲であることが好ましく、3nm以上100nm以下の範囲であることがより好ましい。保護層用の金属酸化物粒子の平均一次粒径が上記範囲内であれば、保護層の強度、画質安定性及び成膜性を高めることができる。保護層用の金属酸化物粒子の平均一次粒径は、中間層用の金属酸化物粒子の平均一次粒径と同様の方法により測定されうる。
保護層用の金属酸化物粒子の含有量は、例えば、保護層中のバインダー樹脂100体積部に対して5体積部以上100体積部以下の範囲であることが好ましく、15体積部以上30体積部以下の範囲であることがより好ましい。保護層用の金属酸化物粒子の含有量が上記範囲内であることは、保護層の強度、画質安定性及び成膜性を高める観点から好ましい。
保護層用の金属酸化物粒子の分散性を高める観点から、保護層用の金属酸化物粒子は、表面処理剤(表面修飾剤)により表面処理されていることが好ましい。保護層の強度をより高める観点から、当該表面処理剤は、上記ラジカル重合性モノマーと反応しうる反応性官能基を有することが好ましい。当該反応性官能基は、ラジカル反応性官能基であることが好ましい。
当該ラジカル反応性官能基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
表面処理剤の例には、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、無機酸化物、フッ素変性シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤及びフッ素系グラフトポリマーが含まれる。表面処理剤は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
表面処理剤は、(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤の例には、下記式S−1〜S−34で表される化合物が含まれる。
保護層用の金属酸化物粒子に対する表面処理剤の処理量は、例えば、保護層用の金属酸化物粒子100質量部に対して0.1質量部以上100質量部以下の範囲であることが好ましい。上記処理量は、上記保護層用の金属酸化物粒子の平均一次粒径及び表面処理剤の種類に応じて適宜調整されうる。
保護層用の金属酸化物粒子の表面が、上記表面処理剤により表面処理されている場合には、保護層中の金属酸化物粒子の表面には、表面処理剤の反応後の成分が、担持されている。保護層用の金属酸化物粒子の表面処理は、公知の方法により行われうる。
保護層は、画像メモリーの発生をより抑制する観点から、保護層用の電荷輸送物質を含むことが好ましい。
保護層用の電荷輸送物質は、保護層に電荷輸送能を付与する化合物である。保護層用の電荷輸送物質は、当該機能を発揮できればよく、公知の化合物から適宜選択されうる。例えば、保護層が、上記ラジカル重合性組成物の紫外線による重合硬化膜により構成されている場合には、保護層用の電荷輸送物質は、紫外線に対して吸収が小さいか、又は紫外線を吸収しない化合物であることが好ましい。
保護層用の電荷輸送物質は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
上記一般式(3)において、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1〜7のアルキル基、又は炭素原子数1〜7のアルコキシ基を表す。
k、p及びnは、それぞれ独立して、1〜5の整数を表し、かつ、mは1〜4の整数を表す。k、p、m及びnが2以上である場合は、複数の基は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
上記一般式(3)で表される電荷輸送物質の例には、下記式CTM−1〜CTM−22で表される化合物が含まれる。
保護層用の電荷輸送物質の含有量は、例えば、上記保護層用のバインダー樹脂100質量部に対して、20質量部以上100質量部以下の範囲であり、40質量部以上70質量部以下の範囲であることがより好ましい。保護層用の電荷輸送物質の含有量が20質量部以上であることは、所期の電気特性を得て、画像メモリーの発生を抑制する観点から好ましい。保護層用の電荷輸送物質の含有量が100質量部以下であることは、所期の膜強度を得る観点から好ましい。保護層用の電荷輸送物質の含有量は、保護層の所期の膜強度及び電気特性に応じて適宜調整されうる。
保護層は、必要に応じて他の成分を含有していてもよい。当該他の成分の例には、滑剤粒子及び酸化防止剤が含まれる。
滑剤粒子の例には、フッ素樹脂粒子が含まれる。当該フッ素樹脂粒子を構成するフッ素樹脂の例には、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、六フッ化塩化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂及びこれらの共重合体が含まれる。上記フッ素樹脂は、四フッ化エチレン樹脂又はフッ化ビニリデン樹脂であることが好ましい。滑剤粒子は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
滑剤粒子の平均一次粒径は、0.01μm以上1μm以下の範囲であることが好ましく、0.05μm以上0.5μm以下の範囲であることがより好ましい。滑剤粒子の平均一次粒径が上記範囲内であれば、所期の滑剤機能を発現でき、保護層の表面平滑性を高めることができ、耐擦傷性やクリーニング性等をより高めることができる。滑剤粒子の平均一次粒径は、中間層用の金属酸化物粒子の平均一次粒径と同様の方法により測定されうる。
滑剤粒子の含有量は、保護層用のバインダー樹脂100質量部に対して5〜70質量部の範囲の割合で含有されることが好ましく、10〜60質量部の範囲であることがより好ましい。滑剤粒子の含有量が上記範囲内であれば、所期の滑剤機能を発現でき、保護層の表面平滑性を高めることができ、耐擦傷性やクリーニング性等をより高めることができる。
保護層の厚さは、例えば、0.2μm以上10μm以下の範囲であることが好ましく、0.5μm以上6μm以下の範囲であることがより好ましい。保護層の厚さが上記範囲であれば、所期の電気特性を得て、画像メモリーの発生を抑制することができ、所期の膜強度を得ることができる。
[感光体の製造方法]
感光体の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適宜利用することができる。(1)導電性支持体上に中間層を形成する工程と、(2)中間層上に感光層を形成する工程と、(3)感光層上に保護層を形成する工程とを有する。本実施形態では、上記(1)〜(3)のいずれかの工程において、各層形成用塗布液の少なくとも1つに負膨張材料を適量配合すればよい。
(1)中間層を形成する工程
例えば、中間層用バインダー樹脂を溶媒に溶解又は分散させ、次いで、負膨張材料および/または他の無機粒子(金属酸化物粒子)を分散させて分散液を得る。この分散液を静置後、濾過して中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を導電性支持体の表面に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥することにより中間層を形成することができる。
中間層の形成に用いられる溶媒としては、中間層用バインダー樹脂を溶解させることができ、かつ、負膨張材料や他の無機粒子の良好な分散性が得られるものであればよい。例えば中間層用バインダー樹脂としてポリアミド樹脂を用いる場合には、ポリアミド樹脂について良好な溶解性と塗布性能を発現することができることから、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。これらの溶媒は1種単独で又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。
また、保存性や負膨張材料や他の無機粒子の分散性を向上させるために、助溶媒を併用してもよい。助溶媒としては、例えばベンジルアルコール、トルエン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
負膨張材料や他の無機粒子の分散手段としては、超音波分散機、ビーズミル、ボールミル、サンドミル及びホモミキサーなどを用いることができる。
中間層形成用塗布液における中間層用バインダー樹脂の濃度は、中間層の厚さや塗布方法によっても異なるが、例えば中間層用バインダー樹脂100質量部に対する溶媒の使用量が100〜3000質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは500〜2000質量部の範囲内である。
中間層形成用塗布液の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、浸漬塗布法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法などが挙げられる。
塗布膜の乾燥方法は、溶媒の種類や形成する中間層の厚さに応じて公知の乾燥方法を適宜に選択することができ、特に熱乾燥することが好ましい。乾燥条件は、例えば100℃以上150℃以下の範囲で10分間以上60分間以下の範囲とすることができる。
乾燥後の塗布膜(中間層)の厚さは、0.5μm以上20μm以下の範囲であることが好ましい。当該中間層の厚さが、上記の範囲が好ましいことに関しては上記した通りである。
(1’)ETM含有薄膜を形成する工程
ETM含有薄膜を形成する工程は、任意の工程であり、必要に応じて行えばよい。
ETM含有薄膜を形成する工程を行う場合には、まず、ETM含有薄膜形成用塗布液を調製する。次いで、ETM含有薄膜形成用塗布液を中間層上に塗布して、中間層上にETM含有薄膜形成用塗布液の塗膜を形成する。次いで、当該塗膜を乾燥させることによりETM含有薄膜を形成する。
ETM含有薄膜形成用塗布液は、例えば、公知の溶剤に、上記ETM含有薄膜形成用のバインダー樹脂や上記金属酸化物粒子や上記式(1)で示される電子輸送性材料などの上記ETM含有薄膜形成用の材料を分散させることで調製されうる。本実施形態では、負膨張材料をさらに加えた上記ETM含有薄膜形成用の材料を分散させて調製してもよい。ETM含有薄膜形成用塗布液に使用される溶剤の例は、後述する電荷発生層形成用塗布液に使用される溶剤の例と同じである。
上記ETM含有薄膜形成用の材料の分散手段は、公知の分散装置から適宜選択されうる。当該分散手段の例は、中間層用の負膨張材料や他の無機粒子の分散手段の例と同じである。
ETM含有薄膜形成用塗布液の塗布方法は、ETM含有薄膜形成用塗布液の組成に応じて公知の塗布方法から適宜選択されうる。ETM含有薄膜形成用塗布液の塗布方法の例は、上記中間層形成用塗布液の塗布方法の例と同じである。
ETM含有薄膜形成用塗布液の塗膜の乾燥方法は、溶剤の種類や、形成するETM含有薄膜の厚さなどに応じて公知の乾燥方法を適宜選択することができ、特に熱乾燥することが好ましい。ETM含有薄膜形成用塗布液の塗膜の乾燥方法の例は、上記中間層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法の例と同じである。
塗布膜の乾燥方法は、特に加熱乾燥が好ましい。加熱乾燥条件は、例えば100℃以上180℃以下の範囲で10分間以上60分間以下の範囲とすることができる。
(2)感光層を形成する工程
感光層を形成する工程は、例えば、感光層を電荷発生層および電荷輸送層の2層構成とする場合、中間層(場合によってはETM含有薄膜)上に電荷発生層を形成する工程と、当該電荷発生層上に電荷輸送層を形成する工程とを含む。
(2−1)電荷発生層を形成する工程
まず、電荷発生層形成用塗布液を調製する。次いで、電荷発生層形成用塗布液を中間層(又はETM含有薄膜)上に塗布して、中間層上に電荷発生層形成用塗布液の塗膜を形成する。次いで、当該塗膜を乾燥させることにより電荷発生層を形成する。
電荷発生層形成用塗布液は、例えば、公知の溶剤に、上記電荷発生層用のバインダー樹脂や上記電荷発生物質などの上記電荷発生層用の材料を分散させることで調製されうる。本実施形態では、負膨張材料をさらに加えた上記電荷発生層用の材料を分散させて調製してもよい。
電荷発生層形成用塗布液に使用される溶剤は、上記成分の分散性と中間層(又はETM含有薄膜)への塗布性とに応じて、適宜選択されうる。電荷発生層形成用塗布液に使用される溶剤の例には、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸t−ブチル、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロエタン及びトリクロロエタンが含まれる。溶剤は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
電荷発生層用の材料の分散手段は、公知の分散装置から適宜選択されうる。電荷発生物質等の分散手段の例は、中間層用の負膨張材料や他の無機粒子の分散手段の例と同じである。
電荷発生層形成用塗布液の塗布方法は、電荷発生層形成用塗布液の組成に応じて公知の塗布方法から適宜選択されうる。電荷発生層形成用塗布液の塗布方法の例は、上記中間層形成用塗布液の塗布方法の例と同じである。
電荷発生層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法は、溶剤の種類や、電荷発生層の所期の厚さなどに応じて適宜選択されうる。電荷発生層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法の例は、上記中間層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法の例と同じである。
(2−2)電荷輸送層を形成する工程(感光層形成工程)
次いで、電荷発生層上に電荷輸送層を形成する。具体的には、まず、電荷輸送層形成用塗布液を調製する。次いで、電荷輸送層形成用塗布液を電荷発生層上に塗布して、電荷発生層上に電荷輸送層形成用塗布液の塗膜を形成する。最後に、当該塗膜を乾燥させることにより電荷輸送層を形成することができる。
電荷輸送層形成用塗布液は、例えば、公知の溶剤に、上記電荷輸送層用のバインダー樹脂や上記電荷輸送物質などの上記電荷輸送層用の材料を分散させることで調製されうる。本実施形態では、負膨張材料をさらに加えた上記電荷輸送層用の材料を分散させて調製してもよい。電荷輸送層形成用塗布液に使用される溶剤の例は、電荷発生層形成用塗布液に使用される溶剤の例と同じである。
電荷輸送層用の材料の分散手段は、公知の分散装置から適宜選択されうる。電荷輸送物質等の分散手段の例は、中間層用の負膨張材料や他の無機粒子の分散手段の例と同じである。
電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法は、電荷輸送層形成用塗布液の組成に応じて公知の塗布方法から適宜選択されうる。電荷輸送層形成用塗布液の塗布方法の例は、中間層形成用塗布液の塗布方法の例と同じである。
電荷輸送層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法は、溶剤の種類や上記電荷輸送層の所期の厚さなどに応じて適宜選択されうる。電荷輸送層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法の例は、上記中間層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法の例と同じである。
(2−1’)単層の感光層を形成する工程
まず、単層の感光層形成用塗布液を調製する。次いで、この感光層形成用塗布液を中間層(又はETM含有薄膜)上に塗布して、中間層(又はETM含有薄膜)上に感光層形成用塗布液の塗膜を形成する。次いで、当該塗膜を乾燥させることにより感光層を形成する。
単層の感光層形成用塗布液は、例えば、公知の溶剤に、上記感光層用のバインダー樹脂や上記電荷発生物質及び上記電荷輸送物質などの上記感光層用の材料を分散させることで調製されうる。本実施形態では、負膨張材料をさらに加えた上記感光層用の材料を分散させて調製してもよい。単層の感光層形成用塗布液に使用される溶剤の例は、電荷発生層形成用塗布液に使用される溶剤の例と同じである。
感光層用の材料の分散手段は、公知の分散装置から適宜選択されうる。電荷発生物質や電荷輸送物質等の分散手段の例は、中間層用の負膨張材料や他の無機粒子の分散手段の例と同じである。
単層の感光層形成用塗布液の塗布方法は、単層の感光層形成用塗布液の組成に応じて公知の塗布方法から適宜選択されうる。単層の感光層形成用塗布液の塗布方法の例は、上記中間層形成用塗布液の塗布方法の例と同じである。
単層の感光層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法は、溶剤の種類や、電荷発生層の所期の厚さなどに応じて適宜選択されうる。単層の感光層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法の例は、上記中間層形成用塗布液の塗膜の乾燥方法の例と同じである。
(3)保護層を形成する工程
保護層を形成する工程は、電荷輸送層または単層の感光層上に保護層を形成する。具体的には、まず、保護層形成用塗布液を調製する。次いで、保護層形成用塗布液を電荷輸送層上に塗布して、電荷輸送層上に保護層形成用塗布液の塗膜を形成する。最後に、当該塗膜を硬化させることにより保護層を形成する。
保護層形成用塗布液は、例えば、公知の溶剤に、上記ラジカル重合性モノマーや、上記保護層用の金属酸化物粒子、上記保護層用の電荷輸送物質などの保護層用の材料を分散させることで調製されうる。本実施形態では、負膨張材料をさらに加えた保護層用の材料を分散させて調製してもよい。
保護層形成用塗布液に使用される溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール(2−ブタノール)、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン及びジエチルアミンが含まれる。上記溶剤は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
保護層用の材料の分散手段の例は、中間層用の負膨張材料や他の無機粒子の分散手段の例と同じである。保護層形成用塗布液の塗布方法の例は、中間層形成用塗布液の塗布方法の例と同じである。
保護層形成用塗布液は、本実施形態の効果が得られる範囲において、上記成分以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。当該他の成分の例には、ラジカル重合開始剤が含まれる。当該ラジカル重合開始剤は、熱重合開始剤であってもよいし、光重合開始剤であってもよい。当該重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1,2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどのアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤;ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼンなどのベンゾフェノン系光重合開始剤;及び2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤が含まれる。
光重合開始剤のほかの例には、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュアー(登録商標)819;フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、及びイミダゾール系化合物が含まれる。重合開始剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
重合開始剤の含有量は、上記ラジカル重合性モノマー100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の範囲であり、0.5質量部以上15質量部以下の範囲であることが好ましい。
保護層形成用塗布液の塗膜を硬化させるための方法の例には、当該塗膜への活性エネルギー線の照射、及び上記塗膜の加熱が含まれる。活性エネルギー線の上記塗膜への照射は、例えば、ラジカル反応性成分のラジカル反応によって保護層を形成する公知の条件で行うことが可能である。
活性エネルギー線の照射エネルギー(積算光量)や照射時間などは、使用される光源の種類や光源の出力、保護層を形成するためのラジカル反応性官能基の種類などに応じて適宜設定されうる。活性エネルギー線の照射エネルギー(積算光量)は、5mJ/cm以上500mJ/cm以下の範囲であることが好ましく、5mJ/cm以上100mJ/cm以下の範囲であることがより好ましい。また、照射時間は、0.1秒以上10分以下であることが好ましく、0.1秒以上5分以下であることがより好ましい。
活性エネルギー線の光源の種類の例には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノン、紫外線LEDが含まれる。活性エネルギー線の光源の出力は、0.1kW以上5kW以下の範囲であることが好ましく、0.5kW以上3kW以下の範囲であることがより好ましい。活性エネルギー線の種類の例には、可視光、紫外線、電子線、X線及びガンマ線が含まれる。活性エネルギー線の波長は、250nm以上400nm以下(紫外線)の範囲であることが好ましい。
保護層形成用塗布液の塗膜の加熱乾燥方法の例は、中間層形成用塗布液の塗膜の加熱乾燥方法と同じである。
以上のようにして、感光体を製造することができる。
[電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置]
本発明の他の実施形態(単に第2形態ともいう)である電子写真画像形成方法(単に画像形成方法ともいう)は、上述した本発明の一実施形態(第1形態ともいう)の感光体を用いることを特徴とする。また、本発明のさらに他の実施形態(第3形態ともいう)である電子写真画像形成装置(単に画像形成装置ともいう)は、上述した第1形態の感光体を具備していることを特徴とする。これら第2及び第3形態の画像形成方法及び画像形成装置では、第1形態の感光体を用いる又は具備していることで、熱履歴に伴う黒ポチやドット再現性低下等の画質欠陥の発生を防止することができる。
具体的に、第2形態の画像形成装置は、上述した第1形態の感光体を具備し、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有することが好ましい。
以下に、上述した第1形態の感光体を具備した第2形態の画像形成装置とともに第3形態の画像形成方法について説明する。図1は、本発明の第2形態の一例を示すフルカラーの電子写真画像形成装置の断面構成図である。なお、以下の説明において、感光体1Y、1M、1C及び1Bkに上述した第1形態の感光体が用いられているものとする。
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7aと、給紙手段21及び定着手段24とから成る。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
イエロー色の画像を形成する画像形成ユニット10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電プロセス)2Y、露光手段(露光プロセス)3Y、現像手段(現像プロセス)4Y、一次転写手段(転写プロセス)としての一次転写ローラー5Y及びクリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成ユニット10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラー5M及びクリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成ユニット10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラー5C及びクリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成ユニット10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラー5Bk及びクリーニング手段6Bkを有する。
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkは、感光体1Y、1M、1C又は1Bkを中心に、帯電手段2Y、2M、2C又は2Bkと、露光手段3Y、3M、3C又は3Bkと、現像手段4Y、4M、4C又は4Bk及び感光体1Y、1M、1C又は1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C又は6Bkより構成されている。
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkは、感光体1Y、1M、1C又は1Bkに、それぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、「帯電器2Y」ともいう)、露光手段3Y、現像手段4Y及びクリーニング手段6Yを配置し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y及びクリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
帯電手段2Yは、感光体1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施形態においては、感光体1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名:セルフォック(登録商標)レンズ)とから構成されるもの又はレーザー光学系などが用いられる。
現像手段4Yは、例えば、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ及び感光体と、この現像スリーブとの間に直流及び交流バイアス電圧又は直流若しくは交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
無端ベルト状中間転写体ユニット7aは、複数のローラーにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、5M、5C及び5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D及びレジストローラー23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体という。
一方、二次転写手段としての二次転写ローラー5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、一次転写ローラー5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラー5Y、5M及び5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M又は1Cに当接する。
二次転写ローラー5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
また、画像形成装置の本体Aから筐体8を支持レール82L及び82Rを介して引き出し可能にしてある。
筐体8は、画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7aとから成る。
画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C及び1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7aが配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7aは、ローラー71、72、76、73及び74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bk及びクリーニング手段6bとから成る。
<除電工程>
なお、第2形態の画像形成装置においては、転写後に光照射による除電工程を行うことができる構成のものであってもよく、この工程を行う除電手段(光除電装置)としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
<プロセスカートリッジ>
第2形態の画像形成装置としては、第1形態の感光体と、上述の帯電手段(帯電器)、露光手段(露光器)、現像手段(現像器)又はクリーニング手段(クリーニング器)の少なくとも一つとを一体として有したプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として構成し、この画像形成ユニットを画像形成装置本体に対して出し入れ可能(着脱自在)に構成されていることが好ましい。また、帯電手段、露光手段、現像手段の他、転写手段(転写器)、分離手段(分離器)の少なくとも一つを感光体とともに一体として有したプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、画像形成装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
第2形態の画像形成装置は、電子写真複写機、レーザープリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の画像形成装置一般に適応するが、さらに、電子写真技術を応用したディスプレイ、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り、「質量部」又は「質量%」を表す。
[感光体1の作製]
(1)導電性支持体の作製
直径60mmの円筒状のアルミニウム支持体の表面を切削加工することにより、表面が細かい粗面とされた導電性支持体〔1〕を得た。
(2)中間層の形成
(2−1)中間層形成用塗布液の調製
オキシ過塩素酸ジルコニウム(シグマ−アルドリッチ社製)245質量部と、タングステン酸ナトリウム二水和物(富士フィルム和光純薬株式会社製)330質量部を、濃度7モル/Lの塩酸水溶液1000質量部に加えて、160℃にて12時間反応した。反応後、白色沈殿を取り出し、イオン交換水による洗浄および遠心分離機による沈殿を6回繰り返した。75℃にて24時間乾燥した後、乳鉢にてすりつぶした。最後に白色粉末を600℃にて30分焼結することで、負膨張材料であるタングステン酸ジルコニウム(ZrW、線膨張係数:−9ppm/K)270質量部を得た。
得られた負膨張材料のタングステン酸ジルコニウムにつき、電界放射型透過型電子顕微鏡(HF−3300:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により10万倍で撮影した画像より一次粒子の平均粒径(平均一次粒径)が50nmであることを確認した。また、RINT2000(リガク株式会社製)を用いたX線回折スペクトル(CuKα)測定において、タングステン酸ジルコニウムに起因する21.6°、23.7°、27.5°、32.3°及び36.6°の回折ピークを確認した。
前記タングステン酸ジルコニウム500質量部をトルエン2000質量部と攪拌混合し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−503;信越化学工業株式会社製)12質量部を添加し、50℃で3時間攪拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去した後、120℃で2時間焼き付けを行って有機表面処理済みのタングステン酸ジルコニウムを得た。
下記化学式(N−1)で表されるポリアミド樹脂60質量部を、エタノール/n−プロピルアルコール/テトラヒドロフラン(体積比50/20/30)の混合溶媒1110質量部に加え、20℃で撹拌混合した。この溶液に、有機表面処理済みのタングステン酸ジルコニウム150質量部、および市販の酸化チタンナノ粒子(SMT−150MK;テイカ株式会社製;平均一次粒径15nm)を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理したもの(以下、単に「表面処理した酸化チタン粒子」ともいう)150質量部を添加し、ビーズミルにより、ミル滞留時間2時間として分散させた。この溶液を一昼夜静置した後、日本ポール株式会社製のリジメッシュ(登録商標)5μmフィルターを使用して50kPaの圧力下で濾過することにより、中間層形成用塗布液〔1〕を調製した。
(2−2)中間層の形成
このようにして得られた中間層形成用塗布液〔1〕を、導電性支持体〔1〕の外周面に浸漬塗布法で塗布し、120℃で30分間乾燥することにより、乾燥膜厚(中間層厚さ)1.5μmの中間層〔1〕を形成した。
(3)電荷発生層の形成
(3−1)電荷発生物質〔CG−1〕の調製
1,3−ジイミノイソインドリン29.2質量部をo−ジクロロベンゼン200質量部に分散し、チタニウムテトラ−n−ブトキシド20.4質量部を加え、窒素雰囲気下において150〜160℃で5時間加熱した。放冷後、析出した結晶を濾過し、クロロホルム、2%塩酸水溶液、水、メタノールで順次洗浄し、乾燥することにより、26.2質量部(収率91%)の粗チタニルフタロシアニンを得た。
次いで、この粗チタニルフタロシアニンを5℃以下において濃硫酸250質量部中で1時間撹拌して溶解し、これを20℃の水5000質量部に注ぎ、析出した結晶を濾過し、水洗してウェットペースト品225質量部を得た。
このウェットペースト品を冷凍庫にて凍結し、再度解凍した後、濾過、乾燥することにより、無定形チタニルフタロシアニン24.8質量部(収率86%)を得た。
この無定形チタニルフタロシアニン10.0質量部と、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール0.94質量部(0.6当量比)(当量比はチタニルフタロシアニンに対する当量比、以後同じ)をオルトジクロロベンゼン(ODB)200質量部中に混合し60〜70℃で6.0時間加熱撹拌した。一夜放置後、この反応液にメタノールを加えて生じた結晶を濾過し、濾過後の結晶をメタノールで洗浄することにより、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する顔料からなる電荷発生物質〔CG−1〕10.3質量部を得た。電荷発生物質〔CG−1〕のX線回折スペクトルにおいては、8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークが生じ、マススペクトルにおいては576と648にピークが生じ、IRスペクトルにおいては970cm−1付近にTi=O、630cm−1付近にO−Ti−Oの両吸収が現れた。また、熱分析(TG)においては390〜410℃に約7%の質量減少が生じた。以上のことより、電荷発生物質〔CG−1〕は、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体と非付加体(付加していない)チタニルフタロシアニンの混合物と推定される。
(3−2)電荷発生層形成用塗布液〔1−1〕の調製
下記原料を混合し、循環式超音波ホモジナイザー「RUS−600TCVP」(株式会社日本精機製作所製、19.5kHz、600W)を用いて循環流量40L/Hで分散し、電荷発生層形成用塗布液〔1−1〕を調製した。
・電荷発生物質〔CG−1〕 24質量部
・ポリビニルブチラール樹脂「エスレック(登録商標)BL−1」(積水化学工業株式会社製) 12質量部
・溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=4/1(V/V) 600質量部。
(3−3)電荷発生層の形成
電荷発生層形成用塗布液〔1−1〕を上記中間層〔1〕上に、浸漬塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥し、層厚0.5μmの電荷発生層〔1〕を形成した。
(4)電荷輸送層の形成
下記原料を混合して溶解し、電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・電荷輸送物質:下記化学式(A)で表される化合物 225質量部
・電荷輸送層用バインダー樹脂:ポリカーボネート樹脂「Z300」(三菱ガス化学株式会社製) 300質量部
・酸化防止剤「Irganox(登録商標)1010」(BASFジャパン株式会社製) 6質量部
・溶媒:テトラヒドロフラン(THF) 1600質量部
・溶媒:トルエン 400質量部
・シリコーンオイル「KF−50」(信越化学工業株式会社製) 1質量部。
上記電荷発生層〔1〕上に、この電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を円形スライドホッパー塗布装置を用いて塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥し、層厚25μmの電荷輸送層〔1〕を形成した。以上により感光体1を得た。
[感光体2、3の作製]
感光体1の中間層の製造において、有機表面処理済みのタングステン酸ジルコニウムおよび表面処理した酸化チタン粒子の添加量を表1の通りに変更したことの他は、同様にして感光体2および3を得た。
[感光体4の作製]
感光体1の中間層の製造において、市販の酸化チタンナノ粒子を市販の酸化亜鉛粒子(FINEX−30;堺化学工業株式会社製;平均一次粒径35nm)に変更したことの他は、同様にして感光体4を得た。
〔感光体5の作製〕
感光体1の中間層の製造において、市販の酸化チタンナノ粒子を、酸素欠損型酸化スズが被覆されている酸化チタン粒子(三井金属鉱業株式会社製;平均一次粒径100nm)に変更して中間層を作製した。
続けて、電子輸送性材料としてN,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(東京化成工業株式会社製)4質量部、ブロックされたイソシアネート化合物(商品名:SBN−70D、旭化成ケミカルズ株式会社製)6質量部、ポリビニルアセタール樹脂(商品名:KS−5Z、積水化学工業株式会社製)1.5質量部を1−メトキシ−2−プロパノール100質量部とテトラヒドロフラン100質量部の混合溶媒に溶解した溶液(ETM含有薄膜形成用塗布液)を浸漬塗布法で塗布した。その後、塗膜を160℃で40分間乾燥することにより、乾燥膜厚0.7μmの電子輸送性材料(ETM)含有薄膜を前記中間層上に別途形成し感光体5を得た。即ち、感光体5は、感光体1の中間層と電荷発生層との間に別途ETM含有薄膜を設けた構成とした。
〔感光体6の作製〕
感光体1の中間層の製造において、有機表面処理済みのタングステン酸ジルコニウムの添加量を300質量部に変更し、酸化チタン粒子を用いなかったことの他は、同様にして感光体6を得た。
〔感光体7の作製〕
感光体1の中間層の製造において、オキシ過塩素酸ジルコニウム245質量部をオキシ過塩素酸ハフニウム315質量部に変更したことの他は、同様にして感光体7を得た。
感光体7の作製過程で得られた負膨張材料であるタングステン酸ハフニウム(HfW、線膨張係数:−9ppm/K)につき、電界放射型透過型電子顕微鏡(HF−3300:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により10万倍で撮影した画像より一次粒子の平均粒径(平均一次粒径)が50nmであることを確認した。また、RINT2000(リガク株式会社製)を用いたX線回折スペクトル(CuKα)測定において、タングステン酸ハフニウムに起因する21.8°、23.9°、27.6°、32.5°及び36.8°の回折ピークを確認した。
〔感光体8の作製〕
感光体1の中間層の製造において、タングステン酸ナトリウム二水和物330質量部をモリブデン酸ナトリウム二水和物242質量部に変更したことの他は、同様にして感光体8を得た。
感光体8の作製過程で得られた負膨張材料であるモリブデン酸ジルコニウム(ZrMo、線膨張係数:−5ppm/K)につき、電界放射型透過型電子顕微鏡(HF−3300:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により10万倍で撮影した画像より一次粒子の平均粒径(平均一次粒径)が50nmであることを確認した。また、RINT2000(リガク株式会社製)を用いたX線回折スペクトル(CuKα)測定において、モリブデン酸ジルコニウムに起因する21.7°、23.8°、27.6°、32.6°及び36.7°の回折ピークを確認した。
〔感光体9の作製〕
感光体8の中間層の製造において、オキシ過塩素酸ジルコニウム245質量部をオキシ過塩素酸ハフニウム315質量部に変更したことの他は、同様にして感光体9を得た。
感光体9の作製過程で得られた負膨張材料であるモリブデン酸ハフニウム(HfMo、線膨張係数:−4ppm/K)につき、電界放射型透過型電子顕微鏡(HF−3300:株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により10万倍で撮影した画像より一次粒子の平均粒径(平均一次粒径)が50nmであることを確認した。また、RINT2000(リガク株式会社製)を用いたX線回折スペクトル(CuKα)測定において、モリブデン酸ハフニウムに起因する21.9°、24.0°、27.7°、32.6°及び36.9°の回折ピークを確認した。
〔感光体10の作製〕
感光体7の中間層の製造において、有機表面処理済みのタングステン酸ハフニウムの添加量を300質量部に変更し、酸化チタン粒子を用いなかったことの他は、同様にして感光体10を得た。
〔感光体11の作製〕
感光体8の中間層の製造において、有機表面処理済みのモリブデン酸ジルコニウムの添加量を300質量部に変更し、酸化チタン粒子を用いなかったことの他は、同様にして感光体11を得た。
〔感光体12の作製〕
感光体9の中間層の製造において、有機表面処理済みのモリブデン酸ハフニウムの添加量を300質量部に変更し、酸化チタン粒子を用いなかったことの他は、同様にして感光体12を得た。
〔感光体13の作製〕
感光体1の中間層の製造において、負膨張材料として、タングステン酸ジルコニウムを特開2005−35840号公報の段落番号0035に記載の方法に従って合成したリン酸タングステンジルコニウム(ZrWO(PO、線膨張係数:−4ppm/K)に変更したことの他は、同様にして感光体13を得た。
〔感光体14の作製〕
感光体1の中間層の製造において、負膨張材料として、タングステン酸ジルコニウムを国際公開第2016/117248号の段落番号0043(実施例1)に記載の方法に従って合成したβ−ユークリプタイト(LiAlSiO、線膨張係数:−1ppm/K)に変更したことの他は、同様にして感光体14を得た。
〔感光体15の作製〕
感光体1の中間層の製造において、負膨張材料として、タングステン酸ジルコニウムを下記の方法に従って合成したマンガン−亜鉛−スズ−窒素4元系化合物(Mn3.4Zn0.4Sn0.2N、線膨張係数:−40ppm/K)に変更したことの他は、同様にして感光体15を得た。
窒化マンガン、金属マンガン、金属亜鉛および金属スズをMn3.4Zn0.4Sn0.2Nの配合になるように計量して混合し、850℃で5時間加熱処理を行った。得られた粉末をジルコニアボールミルで充分に粉砕処理することにより、平均一次粒径200nmのマンガン−亜鉛−スズ−窒素4元系化合物の微粉末を得た。
〔感光体16の作製〕
感光体1の中間層の製造において、表面処理した酸化チタン粒子の添加量150質量部を300質量部に変更し、タングステン酸ジルコニウムを用いなかったことの他は、同様にして感光体16を得た。
〔感光体17の作製〕
感光体1の中間層の製造において、有機表面処理済みのタングステン酸ジルコニウム150質量部を、市販の酸化ジルコニウム粒子(株式会社アイテック製;平均一次粒径10nm)を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理したもの150質量部に変更したことの他は、同様にして感光体17を得た。
〔感光体18の作製〕
感光体16の中間層の製造において、市販の酸化チタンナノ粒子を市販の酸化ジルコニウム粒子(株式会社アイテック製;平均一次粒径10nm)に変更したことの他は、同様にして感光体18を得た。
〔感光体19の作製〕
感光体1の電荷輸送層の製造において、有機表面処理済みのタングステン酸ジルコニウム50質量部を添加して超音波ホモジナイザーを用いて分散した塗布液を用いたことの他は、同様にして感光体19を得た。
〔感光体20の作製〕
感光体16の電荷輸送層の製造において、有機表面処理済みのタングステン酸ジルコニウム50質量部を添加して超音波ホモジナイザーを用いて分散した塗布液を用いたことの他は、同様にして感光体20を得た。
〔感光体21の作製〕
感光体1の電荷輸送層まで製造した後に、以下の方法で保護層を形成した他は、同様にして感光体21を得た。
(保護層の形成)
保護層用の電荷輸送物質である負膨張材料として前記中間層製造時に合成したタングステン酸ジルコニウム50質量部、市販の酸化スズ粒子(CIKナノテック株式会社製:平均一次粒径15nm)を3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理したものを50質量部、バインダーとしての硬化性化合物(サートマー社製SR−350:トリメチロールプロパントリメタクリラート)100質量部、重合開始剤(イルガキュアー (登録商標)819:BASFジャパン株式会社製)15質量部、2−ブタノール500質量部を混合撹拌し、十分に溶解した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散することにより保護層形成用塗布液を得た。該塗布液を先に電荷輸送層まで作製した感光体上に円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。塗布後、キセノンランプを用いて紫外線を照射強度10mW/cmで5秒間照射して、乾燥膜厚2.0μmの保護層を得た。
〔感光体22の作製〕
感光体21の中間層の製造において、表面処理した酸化チタン粒子の添加量を300質量部に変更し、タングステン酸ジルコニウムを用いなかったことの他は、同様にして感光体22を得た。
〔感光体23の作製〕
感光体22の保護層の製造において、タングステン酸ジルコニウムを特開2005−35840号公報の段落番号0035に記載の方法に従って合成したリン酸タングステンジルコニウムに変更したことの他は、同様にして感光体23を得た。
〔感光体24の作製〕
感光体16と同様の方法で製造したものを感光体24とした。
〔感光体25の作製〕
感光体22の保護層の製造において、酸化スズ粒子の添加量を100質量部に変更し、タングステン酸ジルコニウムを用いなかったことの他は、同様にして感光体25を得た。
[評価方法]
〔感光体1〜25の評価〕
市販のフルカラー複合機「bizhub Press(登録商標) C1070」(コニカミノルタ株式会社製)に感光体1〜25をそれぞれ搭載し、電子写真画像形成装置1〜25を使用して評価を行った。画像評価前に、感光体1〜25に対して、70℃で1時間静置する工程と−10℃で1時間静置する工程とのヒートサイクルを30回加えた。
感光体1〜18に対して、黒ポチ、残留電位及びドット再現性の評価を行い、感光体19〜25に対しても、同様に黒ポチ、残留電位及びドット再現性の評価行った。
(1)黒ポチの評価
長期印刷として、画像比率5%の文字画像をA4横送りで各5万枚両面連続プリントを行う耐久試験を実施した。その後、温度30℃、相対湿度80%RHの環境下において、転写材:「A3/PODグロスコート(A3サイズ、100g/m)」(王子製紙社製)上に、グリッド電圧−900V、現像バイアス−720Vの条件で、無地画像(白ベタ画像)を形成し、得られた転写材上の10×10cmの範囲における直径0.1mm以上の黒点発生数(感光体周期=188mm間隔で発生するもの)を、ルーペを併用しながら目視でカウントした。結果を表1、2に示す。
−黒ポチ評価基準−
A:10×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が観測されない(合格)
B:10×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が1〜9個(合格)
C:10×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が10〜99個(不合格)
D:10×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が100個以上(不合格)。
(2)残留電荷の評価
中間層の電荷輸送性能の指標として露光後の電位を測定した。評価はジェンテック株式会社製「CYNTHIA59」を用いて、20℃、65%RHの条件下、暗所でスコロトロン帯電器により感光体を表面電位が−500Vになるように帯電させ、33msec後に強度148μW/cmの白色露光を行い、感光体表面上の露光後の電位(残留電位)を測定した。結果を表1、2に示す。
(3)ドット再現性の評価
1200dpiのハーフトーン画像を連続1000枚印刷し、1000枚目の画像でドット再現性をルーペで拡大して目視で判定して評価した。結果を表1、2に示す。
−ドット再現性評価基準−
A:独立して再現されているドットの割合が100%(合格)
B:独立して再現されているドットの割合が90%以上100%未満(合格)
C:独立して再現されているドットの割合が50%以上90%未満(不合格)
D:独立して再現されているドットの割合が50%未満(不合格)。
表1、2中の添加量の単位は、全て「質量部」である。
上記表1の結果から、本発明の感光体のうち、負膨張材料を含む中間層を用いた実施例1〜16の感光体1〜15を用いた場合、負膨張材料を含まない中間層を用いた比較例1〜3の感光体16〜18に比べて、黒ポチ及び残留電位の発生を防止することができることが分かる。さらにドット再現性にも効果があることが分かる。
また、上記表2の結果から、本発明の感光体のうち、中間層以外の感光層を構成する電荷輸送層や保護層が負膨張材料を含む実施例16〜20の感光体19〜23を用いた場合、感光体のいずれの層にも負膨張材料が含まれていない比較例4〜5の感光体24〜25に比べて、ドット再現性に優れることがわかる。さらに感光体19〜23は、黒ポチ及び残留電位の発生の防止にも効果があることが分かる。
1Y、1M、1C、1Bk 感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段
6Y、6M、6C、6Bk クリーニング手段
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット。

Claims (7)

  1. 導電性支持体上に、少なくとも、中間層、感光層の順に積層された複数の層を有する感光体であって、
    前記複数の層のうち少なくとも一層が負膨張材料を含有する、電子写真感光体。
  2. 前記中間層が前記負膨張材料を含有する、請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記負膨張材料がタングステン酸ジルコニウム、タングステン酸ハフニウム、モリブデン酸ジルコニウムおよびモリブデン酸ハフニウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記負膨張材料がタングステン酸ジルコニウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  5. 前記中間層が酸化チタン、酸化亜鉛および酸化スズからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体を用いる、電子写真画像形成方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子写真感光体を具備する、電子写真画像形成装置。
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