JP2017063155A - 有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタ用材料、有機薄膜トランジスタ用材料セット、有機薄膜トランジスタの製造方法 - Google Patents

有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタ用材料、有機薄膜トランジスタ用材料セット、有機薄膜トランジスタの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2017063155A
JP2017063155A JP2015188818A JP2015188818A JP2017063155A JP 2017063155 A JP2017063155 A JP 2017063155A JP 2015188818 A JP2015188818 A JP 2015188818A JP 2015188818 A JP2015188818 A JP 2015188818A JP 2017063155 A JP2017063155 A JP 2017063155A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
formula
atom
represented
film transistor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015188818A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6399989B2 (ja
Inventor
和公 横井
Kazukimi Yokoi
和公 横井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Priority to JP2015188818A priority Critical patent/JP6399989B2/ja
Publication of JP2017063155A publication Critical patent/JP2017063155A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6399989B2 publication Critical patent/JP6399989B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Formation Of Insulating Films (AREA)
  • Thin Film Transistor (AREA)

Abstract

【課題】加熱プロセスを施しても有機半導体膜にクラックが発生しにくい有機薄膜トランジスタを提供する。また、有機薄膜トランジスタの形成に用いられ、加熱プロセスにおけるクラック発生が抑制された有機半導体膜を与え得る有機薄膜トランジスタ用材料及び有機薄膜トランジスタ用材料セット、並びにこれらを用いた有機薄膜トランジスタの製造方法を提供する。【解決手段】 ゲート電極と、有機半導体層と、ゲート電極及び有機半導体層の間に設けられたゲート絶縁層と、有機半導体層に接して設けられ、有機半導体層を介して連結されたソース電極及びドレイン電極と、を有する有機薄膜トランジスタであって、ゲート絶縁層中、及び、有機半導体層に隣接して配置された中間層中の少なくともいずれかに負膨張材料を含有する、有機薄膜トランジスタ。【選択図】図1

Description

本発明は、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタ用材料、有機薄膜トランジスタ用材料セット、有機薄膜トランジスタの製造方法に関する。
軽量化、低コスト化、柔軟化が可能であることから、液晶ディスプレイや有機EL(electro luminescence)ディスプレイに用いられるFET(電界効果トランジスタ)、RFID(radio frequency identifier:RFタグ)やメモリなどの論理回路を用いる装置等に、有機半導体膜を有する有機薄膜トランジスタ(有機TFT(thin film transistor))が利用されている。
このような有機半導体膜として、例えば、特許文献1には、低分子有機半導体化合物を結晶化させて形成した有機半導体膜が開示されている。
特表2013−516054号公報
本発明者は、特許文献1に記載された低分子有機半導体化合物を結晶化させて形成した有機半導体膜を有する有機薄膜トランジスタについて検討したところ、有機薄膜トランジスタを集積回路等に搭載する際の加熱プロセスにおいて、有機半導体膜と、有機半導体膜に隣接する基板やゲート絶縁層との熱膨張係数の差異により有機半導体膜にクラックが発生することを知見するに至った。また、有機半導体高分子化合物を結晶化させて形成した有機半導体膜を有する有機薄膜トランジスタについても同様の傾向が確認された。
一般的に、有機半導体膜にクラックが生じるとキャリア移動度も低下すると考えられるため、昨今のキャリア移動度の向上要求を鑑みると、このクラック発生を抑制することが望まれる。
そこで、本発明の目的は、加熱プロセスを施しても有機半導体膜にクラックが発生しにくい有機薄膜トランジスタを提供することである。
また、本発明の他の目的は、有機薄膜トランジスタの形成に用いられ、加熱プロセスにおけるクラック発生が抑制された有機半導体膜を与え得る有機薄膜トランジスタ用材料及び有機薄膜トランジスタ用材料セット、並びにこれらを用いた有機薄膜トランジスタの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、有機薄膜トランジスタにおいて、結晶層である有機半導体膜(以下「有機半導体層」ともいう。)に隣接する位置に、負膨張材料を含有するバッファー層(以下「中間層」ともいう。)を設けることで基板やゲート絶縁層の熱膨張に起因する有機半導体層のクラック発生を抑制できることを見出した。また、この負膨張材料をゲート絶縁層中に配合することでも同様の効果が得られることを知見するに至り、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
(1) ゲート電極と、有機半導体層と、上記ゲート電極及び上記有機半導体層の間に設けられたゲート絶縁層と、上記有機半導体層に接して設けられ、上記有機半導体層を介して連結されたソース電極及びドレイン電極と、を有する有機薄膜トランジスタであって、
上記ゲート絶縁層中、及び、上記有機半導体層に隣接して配置された中間層中の少なくともいずれかに負膨張材料を含有する、有機薄膜トランジスタ。
(2) 上記負膨張材料の平均粒径が10〜1000nmである、(1)に記載の有機薄膜トランジスタ。
(3) 上記負膨張材料のアスペクト比が2〜50である、(1)又は(2)に記載の有機薄膜トランジスタ。
(4) 上記負膨張材料がタングステン酸ジルコニウムである、(1)〜(3)のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
(5) 上記ゲート絶縁層が有機材料により形成されている、(1)〜(4)のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
(6) 上記負膨張材料が上記ゲート絶縁層に含有された、(1)〜(5)のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
(7) 上記負膨張材料が上記有機半導体層に隣接して配置された中間層に含有された、(1)〜(6)のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
(8) 上記有機半導体層が、ガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤を含有する、(1)〜(7)のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
(9) 有機半導体化合物、バインダー及び負膨張材料を少なくとも含有する、有機薄膜トランジスタ用材料。
(10) 有機半導体化合物を少なくとも含む組成物と、バインダー及び負膨張材料を少なくとも含む組成物と、を備えた、有機薄膜トランジスタ用材料セット。
(11) ゲート電極と、有機半導体層と、上記ゲート電極及び上記有機半導体層の間に設けられたゲート絶縁層と、上記有機半導体層に接して設けられ、上記有機半導体層を介して連結されたソース電極及びドレイン電極と、を有する有機薄膜トランジスタの製造方法であって、
(9)に記載の有機薄膜トランジスタ用材料又は(10)に記載の有機薄膜トランジスタ用材料セットを用いて、上記有機半導体層と、上記有機半導体層に隣接して形成され、バインダー及び負膨張材料を含有する中間層と、を形成する、有機薄膜トランジスタの製造方法。
本明細書において、化合物の表示については、その化合物そのものの他、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。
本明細書において、特定の符号で表示された置換基や連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、又は複数の置換基等を同時に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。
また、特に断らない限り、複数の置換基等が近接(特に隣接)するときには、それらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい意味である。
さらに、本明細書において置換・無置換を明記していない置換基等については、目的とする効果を損なわない範囲で、その基にさらに置換基を有していてもよい意味である。これは置換・無置換を明記していない化合物についても同義である。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明によれば、加熱プロセスを施しても有機半導体膜にクラックが発生しにくい有機薄膜トランジスタを提供することができる。
また、本発明によれば、有機薄膜トランジスタの形成に用いられ、加熱プロセスにおけるクラック発生が抑制された有機半導体膜を与え得る有機薄膜トランジスタ用材料及び有機薄膜トランジスタ用材料セット、並びにこれらを用いた有機薄膜トランジスタの製造方法を提供することができる。
(A)〜(C)は、本発明の有機薄膜トランジスタの好ましい構造を模式的に示す図である。 (A)〜(C)は、有機薄膜トランジスタの他の構造を模式的に示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
〔有機薄膜トランジスタ〕
本発明の有機薄膜トランジスタ(以下、単に「本発明のOTFT」という。)の構造を以下に説明する。
本発明のOTFTは、ゲート電極と、有機半導体層と、ゲート電極と有機半導体層との間に設けられたゲート絶縁層と、有機半導体層に接して設けられ、有機半導体を介して連結されたソース電極及びドレイン電極とを有する。ゲート電極に電圧が印加されると、ソース電極−ドレイン電極間の有機半導体層とこれに隣接する層との界面に電流の流路(チャネル)が形成される。すなわち、ゲート電極に印加される入力電圧に応じて、ソース電極とドレイン電極との間を流れる電流が制御される。
本発明のOTFTの好ましい構造を図面に基づいて説明する。各図面に示されるOTFTは、本発明の理解を容易にするための模式図であり、各部材のサイズないし相対的な大小関係等は説明の便宜上大小を変えている場合があり、実際の関係をそのまま示すものではない。また、本発明で規定する事項以外はこれらの図面に示された外形、形状に限定されるものでもない。例えば、図1(A)及び(B)において、ゲート電極5は必ずしも基板6のすべてを覆っている必要はなく、基板6の中央部分に設けられた形態も、本発明のOTFTの形態として好ましい。
図1(A)〜(B)は、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造のOTFTを示している。
図1(A)に示す、OTFTは、基板6上にゲート電極5、ゲート絶縁層2、ソース電極3及びドレイン電極4、中間層7、及び、有機半導体層1がこの順で配置されたものである。後述するように、中間層7には負膨張材料が含有され、有機半導体層1に隣接して配置されている。
また、図1(B)に示す、OTFTは、基板6上にゲート電極5、ゲート絶縁層12、ソース電極3及びドレイン電極4、及び、有機半導体層1がこの順で配置されたものである。後述するように、ゲート絶縁層12には、負膨張材料が含有される。
本発明のOTFTは、(1)負膨張材料を含有する中間層7を有機半導体層1に隣接する位置に設けた点、及び/又は、(2)負膨張材料を含有するゲート絶縁層12を用いた点を特徴とする。上記構成により、本発明の有機薄膜トランジスタは、加熱プロセスにおいて有機半導体層1のクラックの発生が抑制されており、キャリア移動度の低下が抑制されている。具体的には、負膨張材料を含有する中間層7を有機半導体層1に隣接する位置に設ける上記(1)の態様においては、基板6又はゲート絶縁層2の熱膨張による熱応力が負膨張材料を有する中間層7により緩和されることで、有機半導体層1のクラックが抑制される。また、上記(2)の態様のようにゲート絶縁層2に負膨張材料を直接導入する場合には、ゲート絶縁層2自体の熱膨張が抑制されることで、有機半導体層1のクラックが抑制される。
一般的に物質は加熱すると膨張するが、特に有機高分子等の有機材料の線膨張係数は大きいことが知られており、従って本発明の有機薄膜トランジスタは、ゲート絶縁層2(またはゲート絶縁層12)や基板6が後述するような有機高分子等の有機材料で形成されている場合に最も効果的に有機半導体層1のクラック抑制効果を発揮することになる。
なお、中間層7は、図1(A)においては、ゲート絶縁層2と有機半導体層1との間に配置されているが、有機半導体層1に隣接した位置に配置されていればこの態様に限定されず、例えば、図1(C)に示すように、有機半導体層1のゲート絶縁層2側とは反対側の表面上に配置されていてもよい。
また、図1(A)においては、中間層7はソース電極3及びドレイン電極4の間のゲート絶縁層2上に配置されているが、この態様に限定されず、例えば、ソース電極3、ドレイン電極4、及び、ゲート絶縁層2を覆うように中間層が配置されていてもよい。
さらに、図1(A)及び(B)においては、ボトムゲート・ボトムコンタクト構造のOTFTについて述べたが、この態様に限定されず、ボトムゲート・トップコンタクト構造のOTFT、トップゲート・ボトムコンタクト構造のOTFT、トップゲート・トップコンタクト構造のOTFTの場合でも、上記のような有機半導体層に隣接される中間層が配置される、及び/又は、ゲート絶縁層中に負膨張材料が含有される、のいずれか一方が満たされていればよい。
例えば、図2(A)〜(C)ではトップゲート構造のOTFTを示し、図2(A)に示すように、有機半導体層1とゲート絶縁層2との間に負膨張材料を含有する中間層7が配置される態様や、図2(B)に示すように、有機半導体層1と基板6との間に負膨張材料を含有する中間層7が配置される態様や、図2(C)に示すように、負膨張材料を含有するゲート絶縁層12を用いる態様であってもよい。
なお、上記トップゲート構造の場合においては、上記構成以外に、中間層7が有機半導体層1の両面に設けられた態様(言い換えると、有機半導体層1の基板6側界面、ゲート絶縁電層2側のいずれにも中間層を設けた態様)であってもよい。
なお、中間層の配置位置としては、有機半導体層とゲート絶縁層との間、または、有機半導体層のゲート絶縁層とは反対側の表面上に配置されることが好ましく、有機半導体層とゲート絶縁層との間に配置されることが好ましい。
以下では、代表例として、図1(A)に示したOTFT(第1態様)及び図1(B)に示したOTFT(第2態様)について詳述する。
<<第1態様>>
まず、第1態様の各構成、及び、その製造方法について詳述する。はじめに、各特徴点である中間層について詳述する。
<中間層>
中間層は、負膨張材料を含有し、有機半導体層に隣接して形成される層である。
負膨張材料は温度上昇に対して収縮する材料であり、0〜200℃の範囲で負の膨張性を有していることが好ましく、例えば、HfW、(ZrO)、ZrW、Nb、SiO(フォージャサイト構造)等の粒子が挙げられる。分散安定性により優れ、適切な熱膨張係数を有し、且つ、塗膜性に優れるとともに適切な表面自由エネルギーの中間層を形成できる(すなわち、隣接して形成される有機半導体層の濡れ性への影響が少なく、これにより優れた移動度が得られる)点で、ZrW(タングステン酸ジルコニウム)が好ましい。
ZrWは、粒子のアスペクト比及び平均粒径の観点から、湿式法で製造されていることが好ましい。
負膨張材料のアスペクト比は、1〜50であることが好ましく、2〜50であることがより好ましい。アスペクト比とは、粒子の長径と短径との比(長径/短径)で表わされ、上記範囲とすることで塗膜表面が滑らかになりクラック防止効果がより良好となる。負膨張材料のアスペクト比は、2〜30であることがより好ましく、5〜15であることが更に好ましい。
また、負膨張材料の平均粒径は、10〜1000nmであることが好ましく、50〜800nmであることがより好ましく、100〜600nmであることが更に好ましい。上記範囲とすることで、塗布性、分散性安定性により優れるとともに、中間層7の厚みを大きくせずに負膨張材料を所定量導入することが可能となる。また、厚みの小さい中間層7とすることができるので、有機半導体層1とゲート電極6やドレイン電極4との接触が阻害されず、キャリア移動度により優れる。
負膨張材料の長径の測定方法としては、TEM(Transmission Electron Microscope)観察またはSEM(Scanning Electron Microscope)観察により、負膨張材料を観察した際に、負膨張材料に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最大となるように選ばれる平行二平面の距離を「長径」とする。また、長径を与える平行二平面に直交し且つ負膨張材料に外接する平行二平面のうち、平行二平面間距離が最小となるように選ばれる平行二平面間距離を「短径」とする。
なお、アスペクト比の測定方法としては、少なくとも50個の負膨張材料の長径及び短径を測定して、それぞれのアスペクト比を算出して、それらを算術平均して求める。
上記平均粒径の測定方法としては、少なくとも50個の負膨張材料の長径と短径とを測定し、各負膨張材料の長径と短径との平均値を求め、さらにそれらを算術平均して求める。
中間層における、負膨張材料の含有量は、全固形分に対して0.01〜70質量%で含有されることが好ましく、0.1〜40質量%で含有されることがより好ましく、5〜30質量%で含有されることが更に好ましい。上記範囲で含まれることで、有機半導体層への熱応力を抑制でき、有機半導体層のクラック発生がより効果的に抑制される。
中間層には、上記負膨張材料以外の成分が含まれていてよく、例えば、負膨張材料を担持する(分散させる)バインダーが含まれていてもよい。
使用されるバインダーの種類は特に制限されないが、後述するゲート絶縁層に含まれてもよい有機材料(有機高分子)または無機材料が挙げられる。
なかでも、ベンゼン環を有する高分子化合物(ベンゼン環基を有する繰り返し単位を有する高分子)が好ましい。ベンゼン環基を有する繰り返し単位の含有量は特に制限されないが、全繰り返し単位中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、100モル%が挙げられる。
上記高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(α‐メチルスチレン)、ポリビニルシンナメート、ポリ(4−ビニルフェニル)またはポリ(4−メチルスチレン)などが挙げられる。
なお、高分子化合物の重量平均分子量は特に制限されないが、1万〜200万が好ましく、2万〜100万がより好ましく、10万〜60万が更に好ましい。
中間層における、バインダーの含有量は、全固形分に対して15〜95質量%で含有されることが好ましく、20〜85質量%で含有されることがより好ましい。
中間層には、上述した負膨張材料及びバインダー以外の成分が含まれていてもよい。例えば、後述する界面活性剤(特に、ガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤)や有機半導体化合物などが挙げられる。
有機薄膜トランジスタにおいて、中間層の厚みは、1〜500nmであることが好ましく、10〜300nmであることがより好ましく、20〜150nmであることが特に好ましい。上記範囲とすることで所定量の負膨張材料が導入でき、クラックを有効に抑制できるとともに、有機半導体層とゲート電極やドレイン電極との接触が阻害されることなくキャリア移動度にもより優れた有機薄膜トランジスタとすることができる。
中間層の形成方法は後段で詳述するが、有機半導体化合物、バインダー及び負膨張材料を少なくとも含有する有機薄膜トランジスタ用材料を用いて、相分離現象を利用して中間層と有機半導体層とを同時に形成する方法や、有機半導体化合物を少なくとも含む組成物と、バインダー及び負膨張材料を少なくとも含む組成物とを有する有機薄膜トランジスタ用材料セットを用いて、中間層を有機半導体層とは別個に製造する方法などが挙げられる。
<基板>
基板は、OTFT及びその上に作製される表示パネル等を支持できるものであればよい。基板は、表面に絶縁性があり、シート状で、表面が平坦であれば特に限定されない。
基板の材料として、無機材料を用いてもよい。無機材料からなる基板として、例えば、ソーダライムガラス、石英ガラス等の各種ガラス基板や、表面に絶縁膜が形成された各種ガラス基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成されたシリコン基板、サファイヤ基板、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル等の各種合金や各種金属からなる金属基板、金属箔、紙等を挙げることができる。
基板がステンレスシート、アルミ箔、銅箔又はシリコンウェハ等の導電性あるいは半導体性の材料で形成されている場合、通常は、表面に絶縁性の高分子材料あるいは金属酸化物等を塗布又は積層して用いられる。
また、基板の材料として、有機高分子等の有機材料を用いてもよい。例えば、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル、PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィンに例示される有機ポリマーから構成された可撓性を有するプラスチック基板(プラスチックフィルム、プラスチックシートともいう)を挙げることができる。また雲母で形成したものも挙げることができる。
このような可撓性を有するプラスチック基板等を使用すれば、例えば曲面形状を有するディスプレイ装置や電子機器へのOTFTの組込みあるいは一体化が可能となる。
基板を形成する有機材料は、他の層の積層時や加熱時に軟化し難いことから、ガラス転移点が高いことが好ましく、ガラス転移点が40℃以上であるのが好ましい。また、製造時の熱処理により寸法変化を起こし難く、トランジスタ性能の安定性に優れる点から、線膨張係数が小さいことが好ましい。例えば、線膨張係数が25×10−5cm/cm・℃以下である材料が好ましく、10×10−5cm/cm・℃以下である材料がさらに好ましい。
また、基板を構成する有機材料は、OTFT作製時に用いる溶媒に対する耐性を有する材料が好ましく、また、ゲート絶縁層及び電極との密着性に優れる材料が好ましい。
さらに、ガスバリア性の高い有機ポリマーからなるプラスチック基板を用いることも好ましい。
基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けたり、無機材料を蒸着又は積層したりすることも好ましい。
基板として、上記の他に、導電性基板(金やアルミニウム等の金属からなる基板、高配向性グラファイトからなる基板、ステンレス鋼製基板等)も挙げることができる。
基板には、密着性や平坦性を改善するためのバッファー層、ガスバリア性を向上させるためのバリア膜等の機能性膜、また表面に易接着層等の表面処理層を形成してもよいし、コロナ処理、プラズマ処理、UV(紫外線)/オゾン処理等の表面処理を施してもよい。
基板の厚みは、10mm以下であるのが好ましく、2mm以下であるのがさらに好ましく、1mm以下であるのが特に好ましい。また、一方で、0.01mm以上であるのが好ましく、0.05mm以上であるのがさらに好ましい。特に、プラスチック基板の場合は、厚みが0.05〜0.1mm程度であるのが好ましい。また、無機材料からなる基板の場合は、厚みが0.1〜10mm程度であるのが好ましい。
<ゲート電極>
ゲート電極は、OTFTのゲート電極として用いられている従来公知の電極を用いることができる。ゲート電極を構成する導電性材料(電極材料ともいう)としては、特に限定されない。例えば、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、モリブデン、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム、パラジウム、鉄、マンガン等の金属;InO、SnO、インジウム・錫酸化物(ITO,tin-doped indium oxide)、フッ素ドープ酸化錫(FTO,F-doped Tin Oxide)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO,Al doped ZnO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO,Ga doped ZnO)等の導電性金属酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)等の導電性高分子;塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF、AsF、FeCl等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子等のドーパントを添加した上記導電性高分子、並びに、カーボンブラック、グラファイト粉、金属微粒子等を分散した導電性の複合材料等が挙げられる。これらの材料は、1種のみを用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、ゲート電極は、上記導電性材料からなる1層でもよく、2層以上を積層してもよい。
ゲート電極の形成方法に制限は無い。例えば、真空蒸着法等の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD法)、スパッタ法、印刷法(塗布法)、転写法、ゾルゲル法、メッキ法等により形成された膜を、必要に応じて所望の形状にパターンニングする方法が挙げられる。
塗布法では、上記材料の溶液、ペースト又は分散液を調製、塗布し、乾燥、焼成、光硬化又はエージング等により、膜を形成し、又は直接電極を形成できる。
また、インクジェット印刷、スクリーン印刷、(反転)オフセット印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、熱転写印刷、マイクロコンタクトプリンティング法等は、所望のパターニングが可能であり、工程の簡素化、コスト低減、高速化の点で好ましい。
スピンコート法、ダイコート法、マイクログラビアコート法、ディップコート法を採用する場合も、下記フォトリソグラフィー法等と組み合わせてパターニングすることができる。
フォトリソグラフィー法としては、例えば、フォトレジストのパターニングと、エッチング液によるウェットエッチングや反応性のプラズマによるドライエッチング等のエッチングやリフトオフ法等とを組み合わせる方法等が挙げられる。
他のパターニング方法として、上記材料に、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して、研磨し、又は材料の導電性を変化させる方法も挙げられる。
さらに、基板以外の支持体に印刷したゲート電極用組成物を基板等の下地層の上に転写させる方法も挙げられる。
ゲート電極の厚みは、任意であるが、1nm以上が好ましく、10nm以上が特に好ましい。また、500nm以下が好ましく、200nm以下が特に好ましい。
<ゲート絶縁層>
ゲート絶縁層は、ゲート電極と有機半導体層との間に設けられ、絶縁性を有する層であれば特に限定されず、単層であってもよいし、多層であってもよい。
ゲート絶縁層は、絶縁性の材料で形成されるのが好ましく、絶縁性の材料として、例えば、有機高分子などの有機材料、無機酸化物などの無機材料等が好ましく挙げられ、取り扱い性などの点から、有機材料を用いることが好ましい。
有機高分子及び無機酸化物等は、絶縁性を有するものであれば特に限定されず、薄膜、例えば厚み1μm以下の薄膜を形成できるものが好ましい。
有機高分子及び無機酸化物は、ぞれぞれ、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。また、ゲート絶縁層は、それぞれ後述する有機高分子と無機酸化物とを混合させたハイブリッド層としてもよい。
有機高分子としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルフェノール、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレートに代表されるポリ(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、CYTOPに代表される環状フルオロアルキルポリマー、ポリシクロオレフィン、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリベンゾオキサゾール、エポキシ樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に代表されるポリオルガノシロキサン、ポリシルセスキオキサン又はブタジエンゴム等が挙げられる。また、上記の他にも、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、シンナメート樹脂、アクリル樹脂、ポリパラキシリレン樹脂等の熱硬化性樹脂も挙げられる。
有機高分子は、アルコキシシリル基やビニル基、アクリロイルオキシ基、エポキシ基、メチロール基等の反応性置換基を有する化合物と併用することもできる。
有機高分子でゲート絶縁層を形成する場合、ゲート絶縁層の耐溶媒性や絶縁耐性を増す目的等で、有機高分子を架橋し、硬化させることも好ましい。架橋は、光、熱又はこれら双方を用いて、酸又はラジカルを発生させることにより、行うのが好ましい。
ラジカルにより架橋する場合、光又は熱によりラジカルを発生させるラジカル発生剤として、例えば、特開2013−214649号公報の[0182]〜[0186]に記載の熱重合開始剤(H1)及び光重合開始剤(H2)、特開2011−186069号公報の[0046]〜[0051]に記載の光ラジカル発生剤、特開2010−285518号公報の[0042]〜[0056]に記載の光ラジカル重合開始剤等を好適に用いることができ、好ましくはこれらの内容は本願明細書に組み込まれる。
また、特開2013−214649号公報の[0167]〜[0177]に記載の「数平均分子量(Mn)が140〜5,000であり、架橋性官能基を有し、フッ素原子を有さない化合物(G)」を用いるのも好ましく、これらの内容は好ましくは本願明細書に組み込まれる。
酸により架橋する場合、光により酸を発生させる光酸発生剤として、例えば、特開2010−285518号公報の[0033]〜[0034]に記載の光カチオン重合開始剤、特開2012−163946号公報の[0120]〜[0136]に記載の酸発生剤、特にスルホニウム塩、ヨードニウム塩等を好ましく使用することができ、好ましくはこれらの内容は本願明細書に組み込まれる。
熱により酸を発生させる熱酸発生剤(触媒)として、例えば、特開2010−285518号公報の[0035]〜[0038]に記載の熱カチオン重合開始剤、特にオニウム塩等や、特開2005−354012号公報の[0034]〜[0035]に記載の触媒、特にスルホン酸類及びスルホン酸アミン塩等を好ましく使用することができ、好ましくはこれらの内容は本願明細書に組み込まれる。
また、特開2005−354012号公報の[0032]〜[0033]に記載の架橋剤、特に二官能以上のエポキシ化合物、オキセタン化合物、特開2006−303465号公報の[0046]〜[0062]に記載の架橋剤、特に2個以上の架橋基を有し、この架橋基の少なくとも一つがメチロール基もしくはNH基であることを特徴とする化合物、及び、特開2012−163946号公報の[0137]〜[0145]に記載の、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を分子内に2個以上有する化合物を用いるのも好ましく、これらの内容は好ましくは本願明細書に組み込まれる。
ゲート絶縁層を有機高分子で形成する方法としては、例えば、有機高分子を塗工、硬化する方法が挙げられる。塗工方法は、特に限定されず、上記の各印刷法が挙げられる。なかでも、マイクログラビアコート法、ディップコート法、スクリーンコート印刷、ダイコート法又はスピンコート法等のウエットコーティング法が好ましい。
上記無機酸化物としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素(SiN)、酸化ハフニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化銅、酸化ニッケル等の酸化物、また、SrTiO、CaTiO、BaTiO、MgTiO、SrNbのようなペロブスカイト、あるいはこれらの複合酸化物又は混合物等が挙げられる。ここで、酸化ケイ素としては、酸化シリコン(SiO)の他に、BPSG(Boron Phosphorus Silicon Glass)、PSG(Phosphorus Silicon Glass)、BSG(borosilicate glass)、AsSG(砒素シリケートガラス)、PbSG(鉛シリケートガラス)、酸化窒化シリコン(SiON)、SOG(スピンオングラス)、低誘電率SiO系材料(例えば、ポリアリールエーテル、シクロパーフルオロカーボンポリマー及びベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボン、有機SOG)を含む。
ゲート絶縁層を無機酸化物で形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング又はCVD(chemical vapor deposition)法等の真空成膜法を用いることができ、また成膜中に任意のガスを用いたプラズマやイオン銃、ラジカル銃等でアシストを行ってもよい。
また、それぞれの金属酸化物に対応する前駆体、具体的には塩化物、臭化物等の金属ハロゲン化物や金属アルコキシド、金属水酸化物等を、アルコールや水中で塩酸、硫酸、硝酸等の酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基と反応させて加水分解することにより、形成してもよい。このような溶液系のプロセスを用いる場合、上記ウエットコーティング法を用いることができる。
ゲート絶縁層は、上記の方法以外にも、リフトオフ法、ゾル−ゲル法、電着法及びシャドウマスク法のいずれかと、必要に応じてパターニング法とを組合せた方法により、設けることもできる。
ゲート絶縁層は、コロナ処理、プラズマ処理、UV(紫外線)/オゾン処理等の表面処理を施してもよいが、この場合、処理による表面粗さが粗くしないのが好ましい。好ましくは、ゲート絶縁層表面の算術平均粗さRa又は二乗平均粗さRMSは0.5nm以下である。
<有機半導体層>
有機半導体層は、有機半導体化合物を含有する層であり、キャリアを蓄積可能な層である。
有機半導体化合物としては、特に限定されず、低分子系有機半導体化合物、高分子系有機半導体化合物のいずれを用いてもよい。本発明のクラック抑制効果がより享受できるという観点からは、基板やゲート絶縁層との熱膨張係数の差異がより大きい低分子系有機半導体化合物を用いることが好ましい。
(低分子系有機半導体化合物)
以下、本発明で用いることができる低分子系有機半導体化合物について説明する。
低分子系有機半導体化合物としては、例えば、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPSペンタセン)、テトラメチルペンタセン、パーフルオロペンタセン等のペンタセン類、5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラジチオフェン(TES−ADT)、2,8−ジフルオロ−5,11−ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラジチオフェン(diF−TES−ADT)等のアントラジチオフェン類、ジフェニルベンゾチエノベンゾチオフェン(DPh−BTBT)、アルキルベンゾチエノベンゾチオフェン(Cn−BTBT)等のベンゾチエノベンゾチオフェン類、アルキルジナフトチエノチオフェン(Cn−DNTT)等のジナフトチエノチオフェン類、ペリキサンテノキサンテン等のジオキサアンタントレン類、ルブレン類、C60、フェニルC61酪酸メチルエステル(PCBM)等のフラーレン類、銅フタロシアニン、フッ素化銅フタロシアニン等のフタロシアニン類、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3RT)、ポリクアテルチオフェン(PQT)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)等のポリチオフェン類、ポリ[2,5−ビス(3−ドデシルチオフェン−2−イル)チエノ[3,2−b]チオフェン](PBTTT)等のポリチエノチオフェン類、後述する有機半導体化合物(T)などが挙げられる。
これらの中でも、作製される有機半導体層のキャリア移動度などの性能がより向上する等の観点から、以下の有機半導体化合物(T)を用いることが好ましい。
本発明において、有機半導体化合物(T)とは、縮合多環芳香族基を有し、上記縮合多環芳香族基中の環数が4つ以上であり、上記縮合多環芳香族基中の少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択される少なくとも1つの原子を含み、上記縮合多環芳香族基中の部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環、及び、フェナントレン環よりなる群から選択される少なくともいずれか1つの構造を含む有機半導体化合物のことをいう。
ただし、有機半導体化合物(T)における縮合多環芳香族基中の部分構造には、アントラセン環は含まれないことが好ましい。
なお、縮合多環芳香族基とは、芳香族環が複数縮合して得られる基である。
芳香族環としては、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環)及び芳香族複素環(例えば、チオフェン環、フラン環、ピロール環、セレノフェン環、イミダゾール環)が挙げられる。
有機半導体化合物(T)中には、縮合多環芳香族基(縮合多環芳香族構造)が含まれるが、この基が主成分として含まれることが好ましい。ここで主成分とは、縮合多環芳香族基の分子量の含有量が、有機半導体化合物(T)の全分子量に対して、30%以上であることを意図し、40%以上であることが好ましい。上限は特に制限されないが、溶解性の点から、80%以下であることが好ましい。
縮合多環芳香族基は、複数の環が縮合して形成される環構造であり、芳香族性を示す。
有機半導体化合物(T)における縮合多環芳香族基中の環数は4以上であり、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度の観点から、4〜9が好ましく、4〜7がより好ましく、4〜6が更に好ましい。
また、上記縮合多環芳香族基中、少なくとも2つの環が、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1種の原子を含み、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度の観点から、2〜6つの環が上記原子を含むことが好ましく、2〜4つの環が上記原子を含むことがより好ましい。
また、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度の観点から、上記縮合多環芳香族基中に少なくとも2つの複素環が含まれ、上記複素環中にそれぞれ1個のヘテロ原子を有することが好ましい。ヘテロ原子の種類は特に制限されず、O原子(酸素原子)、S原子(硫黄原子)、N原子(窒素原子)、Se原子(セレン原子)などが挙げられる。
有機半導体化合物(T)における縮合多環芳香族基中には、部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択された少なくともいずれか1つの構造が含まれる。なお、上記部分構造としては、アントラセン環は含まれないことが好ましい。
また、有機半導体化合物(T)は、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度の観点から、チオフェン環構造及び/又はセレノフェン環構造を少なくとも有することが好ましく、チオフェン環構造を少なくとも有することがより好ましく、有機半導体化合物(T)が有する複素環構造が全てチオフェン環構造であることが更に好ましい。
上記縮合多環芳香族基としては、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度の観点から、部分構造として、ベンゼン環、ナフタレン環及びフェナントレン環よりなる群から選択されたいずれか少なくとも1つの構造を含み、2つ以上のチオフェン環を含み、環数が4つ以上の縮合多環芳香族基が好ましい。中でも、部分構造として、ベンゼン環を含み、2つ以上のチオフェン環とを含み、環数が4つ以上の縮合多環芳香族基がより好ましい。
また、上記縮合多環芳香族基としては、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度の観点から、上記縮合多環芳香族基中のチオフェン環の数は、3つ以上が好ましく、3〜5つがより好ましく、3〜4つが更に好ましく、3つが特に好ましい。
また、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度の観点から、上記縮合多環芳香族基中の環数は、4〜6つが好ましく、5〜6つがより好ましく、5つが更に好ましい。上記縮合多環芳香族基としては、2つのベンゼン環と、3つのチオフェン環とを含み、かつ、環数が5つである縮合多環芳香族基であることが特に好ましい。
更に、縮合多環芳香族基としては、硫黄原子、窒素原子、セレン原子及び酸素原子よりなる群から選択された少なくとも1種の原子を含む環(複素環。好ましくは、チオフェン環)と、ベンゼン環とが交互に縮合(縮環)した基(縮合してなる基)が好ましく挙げられる。
有機半導体化合物(T)としては、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度の観点から、式(1)〜式(16)のいずれかで表される化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、式(1)〜式(16)のいずれかで表される1種以上の化合物であることがより好ましい。
有機半導体層中には、1種のみの有機半導体化合物(T)が含まれていても、2種以上の有機半導体化合物(T)が含まれていてもよい。
式(1)中、A1a及びA1bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R1a〜R1fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R1a〜R1fのうち少なくとも1つが下記式(W)で表される基である。
−L−R (W)
式(W)中、Lは下記式(L−1)〜式(L−25)のいずれかで表される二価の連結基又は2以上の下記式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される二価の連結基が結合した二価の連結基を表し、Rはアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、又は、トリアルキルシリル基を表す。
式(L−1)〜式(L−25)中、*はRとの結合位置を表し、波線部分はもう一方の結合位置を表し、式(L−1)、式(L−2)、式(L−6)及び式(L−13)〜式(L−24)におけるR’はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、Rは水素原子又は置換基を表し、Rsiはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
式(2)中、X2a及びX2bはそれぞれ独立に、NR2i、O原子又はS原子を表し、A2aはCR2g又はN原子を表し、A2bはCR2h又はN原子を表し、R2iは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基を表し、R2a〜R2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R2a〜R2hのうち少なくとも1つが上記式(W)で表される基である。
式(3)中、X3a及びX3bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はNR3gを表し、A3a及びA3bはそれぞれ独立に、CR3h又はN原子を表す。R3a〜R3hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R3a〜R3hのうち少なくとも1つが上記式(W)で表される基である。
式(4)中、X4a及びX4bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、4p及び4qはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表し、R4a〜R4j、R4k及びR4mはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は上記式(W)で表される基を表し、かつ、R4a〜R4j、R4k及びR4mのうち少なくとも1つは上記式(W)で表される基であり、ただし、R4e及びR4fのうち少なくとも一方が上記式(W)で表される基である場合はR4e及びR4fが表す上記式(W)においてLは上記式(L−2)又は式(L−3)で表される二価の連結基である。
式(5)中、X5a及びX5bはそれぞれ独立に、NR5i、O原子又はS原子を表し、A5aはCR5g又はN原子を表し、A5bはCR5h又はN原子を表し、R5iは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R5a〜R5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R5a〜R5hのうち少なくとも1つが上記式(W)で表される基である。
式(6)中、X6a〜X6dはそれぞれ独立に、NR6g、O原子又はS原子を表し、R6gは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、R6a〜R6fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R6a〜R6fのうち少なくとも1つが上記式(W)で表される基である。
式(7)中、X7a及びX7cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR7iを表し、X7b及びX7dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R7a〜R7iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R7a〜R7iのうち少なくとも1つが上記式(W)で表される基である。
式(8)中、X8a及びX8cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR8iを表し、X8b及びX8dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表し、R8a〜R8iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R8a〜R8iのうち少なくとも1つが上記式(W)で表される基である。
式(9)中、X9a及びX9bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表し、R9c、R9d及びR9g〜R9jはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は上記式(W)で表される基を表し、R9a、R9b、R9e及びR9fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
式(10)中、R10a〜R10hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R10a〜R10hのうち少なくとも1つは上記式(W)で表される置換基を表し、X10a及びX10bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR10iを表し、R10iはそれぞれ独立に、水素原子又は上記式(W)で表される基を表す。
式(11)中、X11a及びX11bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR11nを表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nのうち少なくとも1つは上記式(W)で表される基である。
式(12)中、X12a及びX12bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR12nを表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nのうち少なくとも1つは上記式(W)で表される基である。
式(13)中、X13a及びX13bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR13nを表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nのうち少なくとも1つは上記式(W)で表される基である。
式(14)中、X14a〜X14cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR14iを表し、R14a〜R14iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R14a〜R14iのうち少なくとも1つは上記式(W)で表される基である。
式(15)中、X15a〜X15dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR15gを表し、R15a〜R15gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R15a〜R15gのうち少なくとも1つは上記式(W)で表される基である。
式(16)中、X16a〜X16dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR16gを表し、R16a〜R16gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R16a〜R16gのうち少なくとも1つは上記式(W)で表される基である。
−式(1)で表される化合物−
式(1)において、A1a及びA1bはそれぞれ独立に、S原子(硫黄原子)、O原子(酸素原子)又はSe原子(セレン原子)を表す。A1a及びA1bはS原子又はO原子が好ましい。また、A1a及びA1bは互いに同一であっても異なっていてもよいが、互いに同一であることが好ましい。
式(1)において、R1a〜R1fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、R1a〜R1fのうち少なくとも1つが後述する式(W)で表される基である。
式(1)で表される化合物は、後述する式(W)で表される基以外のその他の置換基を有していてもよい。
式(1)のR1a〜R1fが採りうる置換基の種類は特に制限されないが、以下に説明する置換基Xが挙げられる。置換基Xとしては、後述する式(W)で表される基、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む。)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む。)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい。)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む。)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基が挙げられる。なお、本明細書の式(1)〜式(16)においては、「置換基」としては、上記置換基Xが好ましく挙げられる。
これらの中でも、後述する式(W)で表される基以外の基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルキニル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基が好ましく、フッ素原子、炭素数1〜3の置換又は無置換のアルキル基、炭素数2〜3の置換又は無置換のアルキニル基、炭素数2〜3の置換又は無置換のアルケニル基、炭素数1〜2の置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換又は無置換のメチルチオ基、フェニル基がより好ましく、フッ素原子、炭素数1〜3の置換又は無置換のアルキル基、炭素数2〜3の置換又は無置換のアルキニル基、炭素数2〜3の置換又は無置換のアルケニル基、炭素数1〜2の置換又は無置換のアルコキシ基、置換又は無置換のメチルチオ基が特に好ましい。
式(1)で表される化合物中において、R1a〜R1fのうち、式(W)で表される基以外のその他の置換基の個数は0〜4であることが好ましく、0〜2であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
また、これら置換基は、更に上記置換基Xを有していてもよい。
中でも、R1c〜R1fはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2〜3の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2〜3の置換若しくは無置換のアルケニル基、炭素数1〜2の置換若しくは無置換のアルコキシ基、又は、置換若しくは無置換のメチルチオ基であることが好ましい。
次に、式(W)で表される基について説明する。
−L−R (W)
式(W)中、Lは下記式(L−1)〜式(L−25)のいずれかで表される二価の連結基、又は、二以上の下記式(L−1)〜(L−25)のいずれかで表される二価の連結基が結合した二価の連結基を表す。
式(L−1)〜式(L−25)中、*はRとの結合位置を表し、波線部分はもう一方の結合位置を表す。より具体的には、例えば、式(1)で表される化合物においては、波線部分は式(1)で表される骨格を形成する環と結合する。なお、後述するように、式(W)が他の化合物に含まれる場合、波線部分は各化合物の骨格を形成する環と結合する。
なお、Lが式(L−1)〜式(L−25)のいずれかで表される二価の連結基が2つ以上結合した二価の連結基を表す場合、一方の連結基の*が、他方の連結基の波線部分と結合する。
式(L−13)〜式(L−24)におけるR’の結合位置及びRとの結合位置*は、芳香環又は複素芳香環上の任意の位置をとることができる。
式(L−1)、式(L−2)、式(L−6)及び式(L−13)〜式(L−24)におけるR’はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rは水素原子又は置換基を表す。Rsiはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表す。
式(L−1)及び式(L−2)中のR’はそれぞれLに隣接するRと結合して縮合環を形成してもよい。
これらの中でも、式(L−17)〜式(L−21)、式(L−23)及び式(L−24)のいずれかで表される二価の連結基は、下記式(L−17A)〜式(L−21A)、式(L−23A)及び式(L−24A)で表される二価の連結基であることがより好ましい。
ここで、置換又は無置換のアルキル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換又は無置換のトリアルキルシリル基が置換基の末端に存在する場合は、式(W)における−R単独と解釈することもでき、式(W)における−L−Rと解釈することもできる。
本発明では、主鎖が炭素数N個の置換又は無置換のアルキル基が置換基の末端に存在する場合は、置換基の末端から可能な限りの連結基を含めた上で式(W)における−L−Rと解釈することとし、具体的には「式(W)におけるLに相当する式(L−1)で表される基1個」と「式(W)におけるRに相当する主鎖が炭素数N−1個の置換又は無置換のアルキル基」とが結合した置換基として解釈する。例えば、炭素数8のアルキル基であるn−オクチル基が置換基の末端に存在する場合、2個のR’が水素原子である式(L−1)で表される基1個と、炭素数7のn−ヘプチル基とが結合した置換基として解釈する。
一方、本発明では、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、あるいは、置換又は無置換のトリアルキルシリル基が置換基の末端に存在する場合は、置換基の末端から可能な限りの連結基を含めた上で、式(W)におけるR単独と解釈する。例えば、−(OCHCH)−(OCHCH)−(OCHCH)−OCH基が置換基の末端に存在する場合、オキシエチレン単位の繰り返し数vが3のオリゴオキシエチレン基単独の置換基として解釈する。
が式(L−1)〜式(L−25)のいずれかで表される二価の連結基が結合した連結基を形成する場合、式(L−1)〜式(L−25)のいずれかで表される2価の連結基の結合数は、2〜4であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。
式(L−1)、式(L−2)、式(L−6)及び式(L−13)〜式(L−24)中の置換基R’としては、上記の式(1)のR1a〜R1fが採りうる置換基として例示したものを挙げることができる。その中でも、式(L−6)中の置換基R’はアルキル基であることが好ましく、式(L−6)中のR’がアルキル基である場合は、アルキル基の炭素数は1〜9であることが好ましく、4〜9であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、5〜9であることがさらに好ましい。式(L−6)中のR’がアルキル基である場合は、アルキル基は直鎖アルキル基であることが、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
は水素原子又は置換基を表し、Rとしては、上記の式(1)のR1a〜R1fが採りうる置換基として例示したものを挙げることができる。その中でも、Rとしては、水素原子又はメチル基が好ましい。
siはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を表し、アルキル基であることが好ましい。Rsiがとり得るアルキル基としては、特に制限はないが、Rsiがとり得るアルキル基の好ましい範囲は、Rがトリアルキルシリル基である場合にトリアルキルシリル基がとり得るアルキル基の好ましい範囲と同様である。Rsiがとり得るアルケニル基としては、特に制限はないが、置換又は無置換のアルケニル基が好ましく、分枝アルケニル基であることがより好ましく、アルケニル基の炭素数は2〜3であることが好ましい。Rsiがとり得るアルキニル基としては、特に制限はないが、置換又は無置換のアルキニル基が好ましく、分枝アルキニル基であることがより好ましく、アルキニル基の炭素数は2〜3であることが好ましい。
は、式(L−1)〜式(L−5)、式(L−13)、式(L−17)若しくは式(L−18)のいずれかで表される二価の連結基、又は、式(L−1)〜式(L−5)、式(L−13)、式(L−17)若しくは式(L−18)のいずれかで表される二価の連結基が2以上結合した二価の連結基であることが好ましく、式(L−1)、式(L−3)、式(L−13)若しくは式(L−18)のいずれかで表される二価の連結基、又は、式(L−1)、式(L−3)、式(L−13)若しくは式(L−18)のいずれかで表される二価の連結基が2以上結合した二価の連結基であることがより好ましく、式(L−1)、式(L−3)、式(L−13)若しくは式(L−18)のいずれかで表される二価の連結基、又は、式(L−3)、式(L−13)若しくは式(L−18)のいずれか1つで表される二価の連結基と式(L−1)で表される二価の連結基とを結合した二価の連結基であることが特に好ましい。
式(L−3)、式(L−13)又は式(L−18)のいずれか1つで表される二価の連結基と式(L−1)で表される二価の連結基が結合した二価の連結基は、式(L−1)で表される二価の連結基がR側に結合することが好ましい。
また、Lは、化学的安定性、キャリア輸送性の観点から式(L−1)で表される二価の連結基を含む二価の連結基であることが特に好ましく、式(L−1)で表される二価の連結基であることがより特に好ましく、Lが式(L−1)で表される二価の連結基であり、Rが置換又は無置換のアルキル基であることが最も好ましい。
式(W)において、Rは置換又は無置換のアルキル基、シアノ基、ビニル基、エチニル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数vが2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基、又は、置換若しくは無置換のトリアルキルシリル基を表す。
式(W)において、Rに隣接するLが式(L−1)で表される二価の連結基である場合は、Rは置換又は無置換のアルキル基、オキシエチレン基、オキシエチレン単位の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基、シロキサン基、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基であることが好ましく、置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
式(W)において、Rに隣接するLが式(L−2)又は式(L−4)〜式(L−25)のいずれかで表される二価の連結基である場合は、Rは置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
式(W)において、Rに隣接するLが式(L−3)で表される二価の連結基である場合は、Rは置換若しくは無置換のアルキル基、又は、置換若しくは無置換のトリアルキルシリル基であることが好ましい。
が置換又は無置換のアルキル基の場合、炭素数は4〜17であることが好ましく、6〜14であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、6〜12であることが更に好ましい。Rが上記の範囲の長鎖アルキル基であること、特に長鎖の直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
がアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
これらの中でも、式(W)におけるRとLの組み合わせとしては、式(1)中、Lが式(L−1)で表される二価の連結基であり、かつ、Rが直鎖の炭素数7〜17のアルキル基であるか、あるいは、Lが式(L−3)、式(L−13)又は式(L−18)のいずれか1つで表される二価の連結基と式(L−1)で表される二価の連結基が結合した二価の連結基であり、かつ、Rが直鎖のアルキル基であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。
が式(L−1)で表される二価の連結基であり、かつ、Rが直鎖の炭素数7〜17のアルキル基である場合、Rが直鎖の炭素数7〜14のアルキル基であることがキャリア移動度を高める観点からより好ましく、直鎖の炭素数7〜12のアルキル基であることが特に好ましい。
が式(L−3)、式(L−13)又は式(L−18)のいずれか1つで表される二価の連結基と式(L−1)で表される二価の連結基が結合した二価の連結基であり、かつ、Rが直鎖のアルキル基である場合、Rが直鎖の炭素数4〜17のアルキル基であることがより好ましく、直鎖の炭素数6〜14のアルキル基であることが化学的安定性、キャリア輸送性の観点からより好ましく、直鎖の炭素数6〜12のアルキル基であることがキャリア移動度を高める観点から特に好ましい。
一方、有機溶媒への溶解度を高める観点からは、Rが分枝アルキル基であることが好ましい。
が置換基を有するアルキル基である場合の置換基としては、ハロゲン原子などを挙げることができ、フッ素原子が好ましい。なお、Rがフッ素原子を有するアルキル基である場合はアルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されてパーフルオロアルキル基を形成してもよい。ただし、Rは無置換のアルキル基であることが好ましい。
がオキシエチレン基の繰り返し数が2以上のオリゴオキシエチレン基の場合、Rが表す「オリゴオキシエチレン基」とは本明細書中、−(OCHCH−OYで表される基のことを言う(オキシエチレン単位の繰り返し数vは2以上の整数を表し、末端のYは、水素原子又は置換基を表す。)。なお、オリゴオキシエチレン基の末端のYが水素原子である場合はヒドロキシ基となる。オキシエチレン単位の繰り返し数vは、2〜4であることが好ましく、2〜3であることがより好ましい。
オリゴオキシエチレン基の末端のヒドロキシ基は封止されていること、すなわちYが置換基を表すことが好ましい。この場合、ヒドロキシ基は、炭素数が1〜3のアルキル基で封止されること、すなわち、Yが炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、Yがメチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
が、シロキサン基、又は、ケイ素原子数が2以上のオリゴシロキサン基の場合、シロキサン単位の繰り返し数は2〜4であることが好ましく、2〜3であることがさらに好ましい。また、ケイ素原子(Si原子)には、水素原子やアルキル基が結合することが好ましい。ケイ素原子にアルキル基が結合する場合、アルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基が結合することが好ましい。ケイ素原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基又は水素原子が結合してもよい。また、オリゴシロキサン基を構成するシロキサン単位はすべて同一であっても異なっていてもよいが、すべて同一であることが好ましい。
に隣接するLが式(L−3)で表される二価の連結基である場合、Rが置換又は無置換のトリアルキルシリル基であることも好ましい。Rが置換又は無置換のトリアルキルシリル基である場合はその中でも、シリル基の置換基としては、置換又は無置換のアルキル基であれば特に制限はないが、分枝アルキル基であることがより好ましい。ケイ素原子に結合するアルキル基の炭素数は1〜3であることが好ましく、例えば、メチル基やエチル基やイソプロピル基が結合することが好ましい。ケイ素原子には、同一のアルキル基が結合してもよく、異なるアルキル基が結合してもよい。Rがアルキル基上に更に置換基を有するトリアルキルシリル基である場合の置換基としては、特に制限はない。
式(W)において、L及びRに含まれる炭素数の合計は5〜18であることが好ましい。L及びRに含まれる炭素数の合計が上記範囲の下限値以上であると、キャリア移動度が高くなり、駆動電圧が低くなる。L及びRに含まれる炭素数の合計が上記範囲の上限値以下であると、有機溶媒に対する溶解性が高くなる。
及びRに含まれる炭素数の合計は、5〜14であることが好ましく、6〜14であることがより好ましく、6〜12であることが更に好ましく、8〜12であることが特に好ましい。
式(1)で表される化合物中において、R1a〜R1fのうち、式(W)で表される基の個数は1〜4個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
本発明では、式(1)において、R1a及びR1bのうち少なくとも1つが式(W)で表される基であることが好ましい。式(1)における置換位置として、これらの位置が好ましいのは、化合物の化学的安定性に優れ、最高被占軌道(HOMO)準位、分子の膜中でのパッキングの観点からも好適であるためであると考えられる。特に、式(1)において、R1a及びR1bの2箇所を置換基とすることにより、高いキャリア濃度を得ることができる。
また、式(1)において、R1c〜R1fがそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜3の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2〜3の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2〜3の置換若しくは無置換のアルケニル基、炭素数1〜2の置換若しくは無置換のアルコキシ基、又は、置換若しくは無置換のメチルチオ基であることが好ましい。
−式(2)で表される化合物−
式(2)中、X2a及びX2bはそれぞれ独立に、NR2i(>N−R2i)、O原子又はS原子を表す。X2a及びX2bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X2a及びX2bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。
2a及びX2bは、同じ連結基であることが好ましい。X2a及びX2bはいずれもS原子であることがより好ましい。
2iは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基を表し、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜14のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。
2iがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
式(2)中、A2aは、CR2g又はN原子を表し、A2bは、CR2h又はN原子を表し、R2g及びR2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。A2aがCR2gであるか、A2bがCR2hであることが好ましく、A2aがCR2gであり、かつA2bがCR2hであることがより好ましい。A2a及びA2bは、同じであっても互いに異なっていてもよいが、同じあることが好ましい。
式(2)において、R2eとR2gとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
式(2)において、R2fとR2hとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
式(2)中、R2a〜R2hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも1つは式(W)で表される置換基を表す。
2a〜R2hがそれぞれ独立に、とりうる置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式(W)で表される置換基の定義は、上述の通りである。
2a〜R2hがそれぞれ独立に、とりうる置換基として、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、式(W)で表される置換基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、式(W)で表される基がより好ましく、後述の連結基鎖長が3.7Å以下の基及び式(W)で表される基が特に好ましく、式(W)で表される基がより特に好ましい。
式(2)で表される化合物中、R2a〜R2hのうち、式(W)で表される基は1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
2a〜R2hのうち、式(W)で表される基の位置に特に制限はないが、R2e又はR2fであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましい。
2a〜R2hのうち、式(W)で表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
2a〜R2hが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å(=0.37nm)以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。
ここで、連結基鎖長とはC(炭素原子)−R結合におけるC原子から置換基Rの末端までの長さのことを指す。構造最適化計算は、密度汎関数法(Gaussian03(米ガウシアン社)/基底関数:6−31G、交換相関汎関数:B3LYP/LANL2DZ)を用いて行うことができる。なお、代表的な置換基の分子長としては、プロピル基は4.6Å、ピロール基は4.6Å、プロピニル基は4.5Å、プロペニル基は4.6Å、エトキシ基は4.5Å、メチルチオ基は3.7Å、エテニル基は3.4Å、エチル基は3.5Å、エチニル基は3.6Å、メトキシ基は3.3Å、メチル基は2.1Å、水素原子は1.0Åである。
2a〜R2hが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましい。
2a〜R2hが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
2a〜R2hが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
2a〜R2hが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
2a〜R2hが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
−式(3)で表される化合物−
式(3)において、R3a〜R3f並びに後述するR3g及びR3hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、R3a〜R3hのうち少なくとも1つは、式(W)で表される基を表す。
3a〜R3hで表される置換基としては、上記置換基Xが挙げられる。式(W)で表される基の定義は、上述の通りである。
3a〜R3fがそれぞれ独立にとりうる置換基として、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、又は、式(W)で表される置換基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、又は、式(W)で表される基がより好ましい。
式(3)において、X3a及びX3bはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はNR3g(>N−R3g)を表し、R3gは水素原子又は置換基を表す。Xは、S原子、O原子が好ましい。式(3)において、X3a及びX3bは、同じであることが好ましい。
3gは、水素原子、アルキル基、又は、アリール基であることが好ましく、炭素数1〜14のアルキル基であることがより好ましく、炭素数4〜12のアルキル基であることが特に好ましい。R3gが上記の範囲の長鎖アルキル基であること、特に長鎖の直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
3gがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
式(3)において、A3a及びA3bはそれぞれ独立に、CR3h又はN原子を表し、CR3hを表すことが好ましい。式(3)において、A3a及びA3bは、同じであっても互いに異なっていてもよいが、同じあることが好ましい。
3hは連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
3hは、水素原子、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、水素原子、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
3hが炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。R3hが表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
3hが炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。R3hが表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、又は、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
3hが炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。R3hが表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、又は、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
3hが炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。R3hが表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、又は、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
−式(4)で表される化合物−
式(4)中、X4a及びX4bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表す。
4a及びX4bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが好ましく、X4a及びX4bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点からより好ましい。X4a及びX4bは、同じ連結基であることが好ましい。X4a及びX4bはいずれもS原子であることが特に好ましい。
式(4)中、4p及び4qはそれぞれ独立に、0〜2の整数を表す。4p及び4qがそれぞれ独立に、0又は1であることがキャリア移動度と溶解性を両立する観点から好ましく、4p=4q=0又は4p=4q=1であることがより好ましい。
式(4)中、R4a〜R4k及びR4mはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、式(W)で表される基を表し、かつ、R4a〜R4k及びR4mのうち少なくとも一つは式(W)で表される基であり、ただし、R4e及びR4fのうち少なくとも一方が式(W)で表される基である場合は、R4eとR4fとが表す式(W)において、Lは上記式(L−2)又は式(L−3)で表される二価の連結基である。なお、式(W)で表される基の定義は、上述の通りである。
4e及びR4fのうち少なくとも一方が式(W)で表される基である場合は、すなわちR4e及びR4fのうちいずれか一方でも水素原子でもなくハロゲン原子でもない場合に相当する。
4e及びR4fのうち少なくとも一方が式(W)で表される基である場合、R4e及びR4fが表す式(W)において、Lは上記式(L−3)で表される二価の連結基であることが好ましい。
4e及びR4fのうち少なくとも一方が式(W)で表される基である場合、R4e及びR4fは、いずれも式(W)で表される基であることが好ましい。
なお、R4e及びR4fがともに水素原子又はハロゲン原子の場合、R4a〜R4d、R4g〜R4k及びR4mはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式(W)で表される基であり、かつ、R4a〜R4d、R4g〜R4k及びR4mのうち少なくとも1つ以上は式(W)で表される基となる。
式(4)中、R4a〜R4k及びR4mが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を挙げることができ、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、フッ素原子又は塩素原子であることがより好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。
式(4)で表される化合物中、R4a〜R4k及びR4mのうち、ハロゲン原子は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
式(4)で表される化合物中、R4a〜R4k及びR4mのうち、式(W)で表される基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
4a〜R4k及びR4mのうち、式(W)で表される基の位置に特に制限はない。その中でも、本発明では、式(4)中、R4a、R4d〜R4g、R4j、R4k及びR4mがそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子であり、R4b、R4c、R4h及びR4iがそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式(W)で表される基であり、かつ、R4b、R4c、R4h及びR4iのうち少なくとも1つは式(W)で表される基であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましい。
本発明では、R4a、R4c〜R4h及びR4jがそれぞれ独立に、水素原子又はハロゲン原子を表し、R4b及びR4iがそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式(W)で表される基であり、かつ、少なくとも1つは式(W)で表される基であることがより好ましい。
本発明では、R4b及びR4iがともに式(W)で表される基であり、かつR4c及びR4hがともに水素原子又はハロゲン原子であるか、R4c及びR4hがともに式(W)で表される基であり、かつR4b及びR4iがともに水素原子又はハロゲン原子であることが更に好ましい。
本発明では、R4b及びR4iがともに式(W)で表される基であり、かつR4c及びR4hがともに水素原子又はハロゲン原子であるか、R4c及びR4hがともに式(W)で表される基であり、かつR4b及びR4iがともに水素原子又はハロゲン原子であることが特に好ましい。
式(4)において、2以上のR4a〜R4k及びR4mは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しない方が好ましい。
−式(5)で表される化合物−
式(5)中、X5a及びX5bはそれぞれ独立に、NR5i、O原子又はS原子を表す。X5a及びX5bはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X5a及びX5bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X5a及びX5bは、同じ連結基であることが好ましい。X5a及びX5bはいずれもS原子であることがより好ましい。
5iは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜14のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。
5iがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
式(5)中、A5aはCR5g又はN原子を表し、A5bはCR5h又はN原子を表し、R5g及びR5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。A5aがCR5gであるか、A5bがCR5hであることが好ましく、A5aがCR5gかつA5bがCR5hであることがより好ましい。A5a及びA5bは、同じであっても互いに異なっていてもよいが、同じあることが好ましい。
式(5)において、R5eとR5gとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しないほうが好ましい。
式(5)において、R5eとR5iとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しないほうが好ましい。
式(5)において、R5fとR5hとは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しないほうが好ましい。
式(5)において、R5fとR5iは互いに結合して環を形成してもよく、互いに結合して環を形成しなくてもよいが、互いに結合して環を形成しないほうが好ましい。
式(5)中、R5a〜R5hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R5a〜R5hのうち少なくとも1つが式(W)で表される基である。
なお、R5a〜R5hで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式(W)で表される基の定義は、上述の通りである。
式(5)で表される化合物中、R5a〜R5hのうち、式(W)で表される基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
5a〜R5hのうち、式(W)で表される基の位置に特に制限はないが、R5e又はR5fであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましい。
5a〜R5hのうち、式(W)で表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
5a〜R5hが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることがさらに好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
5a〜R5hが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
5a〜R5hが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
5a〜R5hが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式(W)で表される置換基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、又は、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
5a〜R5hが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
5a〜R5hが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、又は、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
−式(6)で表される化合物−
式(6)中、X6a〜X6dはそれぞれ独立に、NR6g、O原子又はS原子を表し、R6gは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
6a〜X6dはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X6a〜X6dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X6a〜X6dは、同じ連結基であることが好ましい。X6a〜X6dはいずれもS原子であることがより好ましい。
6gは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アリール基又はヘテロアリール基を表し、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアシル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜14のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。
6gがアルキル基を表す場合、直鎖アルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖アルキル基であることが、分子の直線性が高まり、キャリア移動度を高めることができる観点から好ましい。
式(6)中、R6a〜R6fはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、少なくとも1つは式(W)で表される基を表す。
なお、R6a〜R6fで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式(W)で表される基の定義は、上述の通りである。
これらの中でも、R6a〜R6fがそれぞれ独立にとりうる置換基として、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルコキシ基、又は、アルキルチオ基、式(W)で表される基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数2〜12のアルキニル基、炭素数1〜11のアルコキシ基、炭素数5〜12の複素環基、炭素数1〜12のアルキルチオ基、又は、式(W)で表される基がより好ましく、後述の連結基鎖長が3.7Å以下の基、又は、式(W)で表される基が更に好ましく、式(W)で表される基が特に好ましい。
式(6)で表される化合物中、R6a〜R6fのうち、式(W)で表される基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
6a〜R6fのうち、式(W)で表される基の位置に特に制限はないが、R6c〜R6fであることが好ましく、R6e又はR6fであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点からより好ましい。
6a〜R6fのうち、式(W)で表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
6a〜R6fが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
6a〜R6fが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に、素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
6a〜R6fが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
6a〜R6fが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
6a〜R6fが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
6a〜R6fが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
−式(7)で表される化合物−
式(7)中、X7a及びX7cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR7i(>N−R7i)を表し、X7b及びX7dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表す。X7a〜X7dはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X7a〜X7dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X7a〜X7dは、同じ連結基であることが好ましい。X7a〜X7dはいずれもS原子であることがより好ましい。
式(7)中、R7a〜R7iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R7a〜R7iのうち少なくとも1つが式(W)で表される基である。
なお、R7a〜R7iで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式(W)で表される基の定義は、上述の通りである。
なお、R7iは、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、炭素数5〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数8〜10のアルキル基であることが特に好ましい。
7iがアルキル基を表す場合、直鎖のアルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖のアルキル基であることが、HOMO軌道の重なりの観点から好ましい。
式(7)で表される化合物中、R7a〜R7iのうち、式(W)で表される置換基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
7a〜R7iのうち、式(W)で表される基の位置に特に制限はないが、R7d又はR7hであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、R7d及びR7hがより好ましい。
式(7)のR7a〜R7iのうち、式(W)で表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
7a〜R7iが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
7a〜R7iが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
7a〜R7iが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
7a〜R7iが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式(W)で表される置換基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
7a〜R7iが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式(W)で表される置換基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
7a〜R7iが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式(W)で表される置換基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
−式(8)で表される化合物−
式(8)中、X8a及びX8cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR8iを表し、X8b及びX8dはそれぞれ独立に、S原子、O原子又はSe原子を表す。X8a〜X8dはそれぞれ独立に、O原子又はS原子であることが合成容易性の観点から好ましい。一方、X8a〜X8dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X8a〜X8dは、同じ連結基であることが好ましい。X8a〜X8dはいずれもS原子であることがより好ましい。
式(8)中、R8a〜R8iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R8a〜R8iのうち少なくとも1つが式(W)で表される基である。
なお、R8a〜R8iで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式(W)で表される基の定義は、上述の通りである。
なお、R8iは、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、炭素数5〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数8〜10のアルキル基であることが特に好ましい。
8iがアルキル基を表す場合、直鎖のアルキル基でも、分枝アルキル基でも、環状アルキル基でもよいが、直鎖のアルキル基であることが、HOMO軌道の重なりの観点から好ましい。
式(8)で表される化合物中、R8a〜R8iのうち、式(W)で表される置換基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
8a〜R8iのうち、式(W)で表される基の位置に特に制限はないが、R8c又はR8gであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、R8c及びR8gがより好ましい。
また、式(8)のR8a〜R8iのうち、式(W)で表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
8a〜R8iが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基は、連結基鎖長が3.7Å以下の基であることが好ましく、連結基鎖長が1.0〜3.7Åの基であることがより好ましく、連結基鎖長が1.0〜2.1Åの基であることが更に好ましい。連結基鎖長の定義は、上述の通りである。
8a〜R8iが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基はそれぞれ独立に、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルキニル基、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアルケニル基、又は、炭素数2以下の置換若しくは無置換のアシル基であることが好ましく、炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基であることがより好ましい。
8a〜R8iが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキル基を表す場合、アルキル基がとり得る置換基としては、シアノ基、フッ素原子、重水素原子などを挙げることができ、シアノ基が好ましい。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、又は、シアノ基置換のメチル基が好ましく、メチル基又はシアノ基置換のメチル基がより好ましく、シアノ基置換のメチル基が特に好ましい。
8a〜R8iが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルキニル基を表す場合、アルキニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルキニル基としては、エチニル基、重水素原子置換のアセチレン基を挙げることができ、エチニル基が好ましい。
8a〜R8iが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アルケニル基を表す場合、アルケニル基がとり得る置換基としては、重水素原子などを挙げることができる。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアルケニル基としては、エテニル基、重水素原子置換のエテニル基を挙げることができ、エテニル基が好ましい。
8a〜R8iが式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基がそれぞれ独立に炭素数2以下の置換アシル基を表す場合、アシル基がとり得る置換基としては、フッ素原子などを挙げることができる。式(W)で表される基以外の置換基である場合の置換基が表す炭素数2以下の置換又は無置換のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、フッ素置換のアセチル基を挙げることができ、ホルミル基が好ましい。
−式(9)で表される化合物−
式(9)中、X9a及びX9bはそれぞれ独立に、O原子、S原子又はSe原子を表す。中でも、S原子が好ましい。
9c、R9d及びR9g〜R9jはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式(W)で表される置換基を表す。式(W)で表される基の定義は、上述の通りである。
9a、R9b、R9e及びR9fは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。なお、R9a、R9b、R9e及びR9fで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。
なお、R9c、R9d及びR9g〜R9jはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は式(W)で表される基(ただし、Lは式(L−3)、式(L−5)、式(L−7)〜式(L−9)、式(L−12)〜式(L−24)のいずれかで表される基である。)を表すことが好ましい。中でも、R9c、R9d及びR9g〜R9jは、水素原子がより好ましい。
なお、Lとしては、式(L−3)、式(L−5)、式(L−13)、式(L−17)又は式(L−18)のいずれかで表される基であることが好ましい。
9a〜R9iのうち少なくとも1つは、式(W)で表される基を表すことが好ましい。
式(9)で表される化合物中、R9a〜R9iのうち、式(W)で表される置換基は、1〜4個であることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、1又は2個であることがより好ましく、2個であることが特に好ましい。
9a〜R9iのうち、式(W)で表される基の位置に特に制限はないが、R9b又はR9fであることが、キャリア移動度を高め、有機溶媒への溶解性を高める観点から好ましく、R9b及びR9fがより好ましい。
また、式(9)のR9a〜R9iのうち、式(W)で表される基以外の置換基は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが特に好ましく、0個であることがより特に好ましい。
−式(10)で表される化合物−
式(10)中、R10a〜R10hはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R10a〜R10hのうち少なくとも1つは式(W)で表される基を表す。なお、R10a〜R10hで表される置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。また、式(W)で表される置換基の定義は、上述の通りである。
中でも、R10a〜R10hはそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子又は置換基を表し、R10a〜R10hのうち少なくとも1つは、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましい。
式(10)のR10a〜R10hは、R10b及びR10fのうち少なくとも1つが、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基であることがより好ましく、R10b及びR10fのいずれもが、置換若しくは無置換のアリールチオ基、又は、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基であることが更に好ましく、置換若しくは無置換のフェニルチオ基又は下記群Aから選ばれるヘテロアリールチオ基であることが特に好ましく、置換若しくは無置換のフェニルチオ基又は下記式(A−17)、式(A−18)、式(A−20)で表されるヘテロアリールチオ基であることが最も好ましい。
アリールチオ基としては、炭素数6〜20のアリール基に硫黄原子が連結した基が好ましく、ナフチルチオ基又はフェニルチオ基がより好ましく、フェニルチオ基が特に好ましい。
ヘテロアリールチオ基としては、3〜10員環のヘテロアリール基に硫黄原子が連結した基が好ましく、5又は6員環のヘテロアリール基に硫黄原子が連結した基がより好ましく、下記群A(式(A−14)〜式(A−27)のいずれかで表される基)が特に好ましい。
群A中、R”及びR”はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
群A中、R’はそれぞれ独立に、水素原子又は式(W)で表される基を表すことが好ましい。
群A中、R”は、置換基を表すことが好ましく、アルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基がより好ましく、アルキル基、アルキル基で置換されたアリール基、又は、アルキル基で置換されたヘテロアリール基が更に好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフェニル基、又は、炭素数1〜4のアルキル基で置換された5員のヘテロアリール基が特に好ましい。
アルキルオキシカルボニル基としては、炭素数1〜20のアルキル基にカルボニル基が連結した基が好ましい。アルキル基の炭素数は、2〜15がより好ましく、5〜10が特に好ましい。
アリールオキシカルボニル基としては、炭素数6〜20のアリール基にカルボニル基が連結した基が好ましい。アリール基の炭素数は、6〜15がより好ましく、8〜12が特に好ましい。
アルキルアミノ基としては、炭素数1〜20のアルキル基にアミノ基が連結した基が好ましい。アルキル基の炭素数は、2〜15がより好ましく、5〜10が特に好ましい。
10a〜R10hのうち、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基以外の置換基(以下、他の置換基ともいう。)は、0〜4個であることが好ましく、0〜2個であることがより好ましく、0又は1個であることが更に好ましく、0個であることが特に好ましい。
10a及びX10bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR(>N−R)を表す。X10a及びX10bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X10a及びX10bは、同じ連結基であることが好ましい。X10a及びX10bは、いずれもS原子であることがより好ましい。
はそれぞれ独立に、水素原子又は式(W)で表される基を表す。式(W)で表される基の定義は上述の通りである。
−式(11)で表される化合物−
式(11)中、X11a及びX11bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR11nを表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R11a〜R11k、R11m及びR11nのうち少なくとも1つは、式(W)で表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式(W)で表される置換基の定義は、上述の通りである。
式(11)中、X11a及びX11bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X11a及びX11bは、同じ連結基であることが好ましい。X11a及びX11bはいずれもS原子であることがより好ましい。
式(11)のR11a〜R11k及びR11mは、R11c及びR11iのうち少なくとも1つが、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、R11c及びR11iのいずれもが、置換若しくは無置換のアルキル基であることが更に好ましい。
−式(12)で表される化合物−
式(12)中、X12a及びX12bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR12nを表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R12a〜R12k、R12m及びR12nのうち少なくとも1つは式(W)で表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式(W)で表される置換基の定義は、上述の通りである。
式(12)中、X12a及びX12bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X12a及びX12bは、同じ連結基であることが好ましい。X12a及びX12bはいずれもS原子であることがより好ましい。
式(12)のR12a〜R12k及びR12mは、R12c及びR12iのうち少なくとも1つが、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、R12c及びR12iのいずれもが、置換又は無置換のアルキル基であることが更に好ましい。
−式(13)で表される化合物−
式(13)中、X13a及びX13bはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR13nを表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R13a〜R13k、R13m及びR13nのうち少なくとも1つは、式(W)で表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式(W)で表される基の定義は、上述の通りである。
式(13)中、X13a及びX13bのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X13a及びX13bは、同じ連結基であることが好ましい。X13a及びX13bはいずれもS原子であることがより好ましい。
式(13)のR13a〜R13k及びR13mは、R13c及びR13iのうち少なくとも1つが、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアリールチオ基、置換若しくは無置換のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換のアルキルオキシカルボニル基、置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基又は置換若しくは無置換のアルキルアミノ基であることが好ましく、置換若しくは無置換のアルキル基であることがより好ましく、R13c及びR13iのいずれもが、置換若しくは無置換のアルキル基であることが更に好ましい。
−式(14)で表される化合物−
式(14)中、X14a〜X14cはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR14iを表し、R14a〜R14iはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R14a〜R14iのうち少なくとも1つは、式(W)で表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式(W)で表される基の定義は、上述の通りである。
なお、R14a〜R14hの少なくとも1つが式(W)で表される基であり、Rがアルキル基である場合には、Lは式(L−2)〜式(L−25)のいずれかで表される基であることが好ましい。
式(14)中、X14a〜X14cのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X14a〜X14cは、同じ連結基であることが好ましい。X14a〜X14cはいずれもS原子であることがより好ましい。
がアルキル基である場合のLとしては、式(L−2)〜式(L−5)、式(L−13)、式(L−17)、又は、式(L−18)のいずれかで表される基が好ましく、式(L−3)、式(L−13)、又は、式(L−18)のいずれかで表される基がより好ましい。
式(14)のR14a〜R14hは、R14b及びR14gのうち少なくとも1つが、式(W)で表される基であることが好ましく、R14b及びR14gのいずれもが、式(W)で表される基であることがより好ましい。
−式(15)で表される化合物−
式(15)中、X15a〜X15dはそれぞれ独立にS原子、O原子、Se原子又はNR15gを表し、R15a〜R15gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R15a〜R15gのうち少なくとも1つは、式(W)で表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式(W)で表される基の定義は、上述の通りである。
式(15)中、X15a〜X15dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X15a〜X15dは、同じ連結基であることが好ましい。X15a〜X15dはいずれもS原子であることがより好ましい。
式(15)のR15a〜R15fは、R15b及びR15eのうち少なくとも1つが、式(W)で表される基であることが好ましく、R15b及びR15eのいずれもが、式(W)で表される基であることがより好ましい。
−式(16)で表される化合物−
式(16)中、X16a〜X16dはそれぞれ独立に、S原子、O原子、Se原子又はNR16gを表す。R16a〜R16gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、R16a〜R16gのうち少なくとも1つは、式(W)で表される基を表す。置換基としては、上述した置換基Xが挙げられる。式(W)で表される基の定義は、上述の通りである。
なお、R16c及びR16fは、水素原子、ハロゲン原子又は式(W)で表される基(ただし、Lは、式(L−3)、式(L−5)、式(L−7)〜式(L−9)、式(L−12)〜式(L−24)のいずれかで表される基である。)であることが好ましい。R16a、R16b、R16d、R16e及びR16gはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表すことが好ましい。
なお、式(16)において、Lは、式(L−3)、式(L−5)、式(L−7)〜式(L−9)、式(L−12)〜式(L−24)のいずれかで表される基であり、R16c及びR16fが式(W)で表される基の場合、式(L−3)、式(L−5)、式(L−13)、式(L−17)、式(L−18)のいずれかで表される基であることが好ましい。
式(16)中、X16a〜X16dのうち少なくとも1つがS原子であることが、キャリア移動度を高める観点から好ましい。X16a〜X16dは、同じ連結基であることが好ましい。X16a〜X16dはいずれもS原子であることがより好ましい。
式(16)のR16a〜R16fは、R16a及びR16dのうち少なくとも1つが、式(W)で表される基であることが好ましく、R16a及びR16dのいずれもが、式(W)で表される基であることがより好ましい。
また、R16c及びR16fは、水素原子であることが好ましい。
有機半導体化合物(T)は、上記縮合多環芳香族基における縮合多環芳香環上に、アルキル基を有することが好ましく、炭素数6〜20のアルキル基を有することがより好ましく、炭素数7〜14のアルキル基を有することが更に好ましい。上記態様であると、得られる有機薄膜トランジスタのキャリア移動度及び熱安定性により優れる。
また、有機半導体化合物(T)は、上記縮合多環芳香族基における縮合多環芳香環上に、1つ以上のアルキル基を有することが好ましく、2〜4つのアルキル基を有することがより好ましく、2つのアルキル基を有することが更に好ましい。上記態様であると、得られる有機薄膜トランジスタのキャリア移動度及び熱安定性により優れる。
有機半導体化合物(T)の分子量は、特に制限されないが、分子量が3,000以下であることが好ましく、2,000以下であることがより好ましく、1,000以下であることが更に好ましく、850以下であることが特に好ましい。分子量を上記上限値以下とすることにより、溶媒への溶解性を高めることができる。一方で、薄膜の膜質安定性の観点からは、分子量は300以上であることが好ましく、350以上であることがより好ましく、400以上であることが更に好ましい。
有機半導体化合物(T)の合成方法は、特に制限されず、公知の方法を参照して合成できる。上記式(1)〜式(16)で表される化合物の合成方法としては、例えば、Journal of American Chemical Society,116, 925(1994)、Journal of Chemical Society, 221(1951)、Org.Lett.,2001,3,3471、Macromolecules,2010,43,6264、Tetrahedron,2002,58,10197、特表2012−513459号公報、特開2011−46687号公報、Journal of Chemical Research.miniprint,3,601−635(1991)、Bull.Chem.Soc.Japan,64,3682−3686(1991)、Tetrahedron Letters,45,2801−2803(2004)、欧州特許公開第2251342号明細書、欧州特許公開第2301926号明細書、欧州特許公開第2301921号明細書、韓国特許公開第10−2012−0120886号公報、J.Org.Chem.,2011,696、Org.Lett.,2001,3,3471、Macromolecules,2010,43,6264、J.Org.Chem.,2013,78,7741、Chem.Eur.J.,2013,19,3721、Bull.Chem.Soc.Jpn.,1987,60,4187、J.Am.Chem.Soc.,2011,133,5024、Chem.Eur.J.2013,19,3721、Macromolecules,2010,43,6264−6267、J.Am.Chem.Soc.,2012,134,16548−16550などが挙げられる。
なお、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度の観点から、有機半導体化合物(T)は、式(1)〜式(9)、式(14)又は式(15)のいずれかで表される化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、式(1)〜式(9)又は式(15)のいずれかで表される化合物を少なくとも1種含むことがより好ましい。
以下に有機半導体化合物(T)の好ましい具体例を示すが、これらに限定されないことは言うまでもない。
(高分子系有機半導体化合物)
高分子系有機半導体としては、特に限定されないが、高結晶性および高キャリア移動度を与え得る観点から、例えば、ヘテロアレーンポリマー、ドナー・アクセプター(D−A)型ポリマー等が挙げられる。ここで、ヘテロアレーンとは単環式芳香族複素環および縮合芳香族複素環を意味し、ヘテロアレーンポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン(ポリセレノフェン)や、Chem. Rev. 2007, 107, 1296−1323に記載のものが挙げられる。これらの中でも、高移動度の観点から、ドナー・アクセプター(D−A)型ポリマーが好ましい。
以下に、本発明の有機薄膜トランジスタに好適に使用できるドナー・アクセプター(D−A)型ポリマーについて説明する。
(ドナー・アクセプター(D−A)型ポリマー)
ドナー・アクセプター(D−A)型ポリマーとしては、特に限定されないが、例えば、下記式(P1)で表される繰り返し単位を有する分子量2,000以上の化合物(以下、単に「式(P1)で表される有機半導体化合物」と称する。)を用いることが好ましい。
式(P1)中、Aは、sp2窒素原子、カルボニル基、及び、チオカルボニル基のうち少なくとも1つを環構造内に有する部分構造を含む電子アクセプターユニットを表す。
Dは、少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、もしくはSe原子を環構造内に有する2価の芳香族複素環基、又は、2環以上の縮環構造からなる2価の芳香族炭化水素基を部分構造として含む電子ドナーユニットを表す。
(電子アクセプターユニット(式(P1)の「A」))
上記式(P1)中、Aはsp2窒素原子、カルボニル基及びチオカルボニル基のうち少なくとも1つを環構造内に有する部分構造を含む電子アクセプターユニットを表す。
Aは下記式(A−1)〜式(A−12)で表される構造よりなる群から選ばれた少なくとも1つの構造を部分構造として有することが好ましく、Aが下記式(A−1)〜式(A−12)よりなる群から選ばれた少なくとも1つにより表される構造であることがより好ましい。
式(A−1)〜式(A−12)中、Xはそれぞれ独立に、O原子、S原子、Se原子、又は、NRA1を表す。Yはそれぞれ独立に、O原子又はS原子を表す。Zaはそれぞれ独立に、CRA2又はN原子を表す。Wはそれぞれ独立に、C(RA2、NRA1、N原子、CRA2、O原子、S原子、又は、Se原子を表す。RA1はそれぞれ独立に、−O−、−S−、及び、−NRA3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、下記式(1−1)で表される1価の基、又は、他の構造との結合部位を表す。RA2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、−O−、−S−、及び、−NRA3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、下記式(1−1)で表される1価の基、又は、他の構造との結合部位を表す。RA3はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表す。*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
式(1−1)中、Arは、芳香族複素環基又は炭素数5〜18の芳香族炭化水素基を表す。Lは、−O−、−S−、及び、−NR1S−のうち少なくとも1つを含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキレン基を表す。Lは、−O−、−S−、及び、−NR2S−のうち少なくとも1つを含んでいてもよい炭素数1〜100のアルキル基を表す。R1S及びR2Sはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。lは、1〜5の整数を表す。lが2以上のとき、複数のLは、互いに同一でも異なっていてもよい。*は、他の構造との結合部位を表す。
式(A−1)〜式(A−12)中、Xはそれぞれ独立に、O原子、S原子、Se原子、又は、NRA1を表し、S原子又はNRA1が好ましい。
Yはそれぞれ独立に、O原子又はS原子を表し、O原子が好ましい。
aはそれぞれ独立に、CRA2又はN原子を表し、CRA2が好ましい。
Wはそれぞれ独立に、C(RA2、NRA1、N原子、CRA2、O原子、S原子、又は、Se原子を表し、C(RA1、CRA2、又は、S原子が好ましい。
A1はそれぞれ独立に、−O−、−S−、及び、−NRA3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、上記式(1−1)で表される1価の基、又は、他の構造との結合部位を表し、−O−、−S−、及び、−NRA3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、又は、上記式(1−1)で表される1価の基が好ましい。
A1が−O−、−S−、及び、−NRA3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基を表す場合、炭素数2〜30のアルキル基が好ましく、炭素数8〜25のアルキル基がより好ましい。また、上記アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
ここで、アルキル基が−O−を含むとは、アルキル基の炭素−炭素結合の途中に−O−が導入されている場合や、アルキル基の一端に−O−が導入されている場合(アルコキシ基)を意味する。アルキル基に−S−や−NRA3−を含む場合も同様の意味である。
なお、RA1における他の構造との結合部位とは、上記式(A−1)〜式(A−12)中の*で表される他の構造との結合部位である。
A2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、−O−、−S−、及び、−NRA3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、上記式(1−1)で表される1価の基、又は、他の構造との結合部位を表し、水素原子又は他の構造との結合部位が好ましい。
A2が−O−、−S−、及び、−NRA3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基を表す場合、炭素数2〜30のアルキル基が好ましく、炭素数8〜25のアルキル基がより好ましい。また、上記アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
ここで、アルキル基が−O−を含むとは、アルキル基の炭素−炭素結合の途中に−O−が導入されている場合や、アルキル基の一端に−O−が導入されている場合(アルコキシ基)を意味する。アルキル基に−S−や−NRA3−を含む場合も同様の意味である。
A2がハロゲン原子を表す場合、F原子、Cl原子、Br原子、I原子が好ましく、F原子がより好ましい。
なお、RA2における他の構造との結合部位とは、上記式(A−1)〜式(A−12)中の*で表される他の構造との結合部位である。
A3はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表す。RA3における置換基は、後述するR1S及びR2Sにおける置換基と同義である。
式(1−1)中、Arは、芳香族複素環基又は炭素数5〜18の芳香族炭化水素基を表す。
Arにおける炭素数5〜18の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン環基、ビフェニル基、ナフタレン環基、又は、3環が縮合した芳香族炭化水素(例えば、フルオレン環)から2以上の水素原子を取り除いた基が挙げられる。これらの中でも、キャリア移動度がより優れたものになるという観点から、ベンゼン環基、ビフェニル基、又は、ナフタレン環基であることが好ましく、ベンゼン環基であることが好ましい。
Arにおける芳香族複素環基は、単環であっても、2環以上の縮環構造を有していてもよいが、キャリア移動度がより優れたものになるという観点から単環であることが好ましい。Arにおける芳香族複素環基は、5〜7員環であることが好ましい。また、芳香族複素環基に含まれるヘテロ原子としては、N原子、O原子、S原子又はSe原子であることが好ましく、S原子であることがより好ましい。
は、−O−、−S−、及び、−NR1S−のうち少なくとも1つを含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキレン基を表す。ここで、アルキレン基が−O−を含むとは、アルキレン基の炭素−炭素結合の途中に−O−が導入されている場合や、アルキレン基の一端又は両端に−O−が導入されている場合を意味する。アルキレン基に−S−や−NR1S−を含む場合も同様の意味である。
を表すアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖、環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましい。
を表すアルキレン基の炭素数は、1〜20であるが、キャリア移動度がより優れたものとなるという観点から、1〜15であることが好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。
なお、Lを表すアルキレン基が分岐鎖状である場合には、分岐部分の炭素数については、Lを表すアルキレン基の炭素数に含むものとする。ただし、Lが−NR1S−を含み、かつ、このR1Sが炭素原子を含む場合には、R1Sの炭素数は、Lを表すアルキレン基の炭素数に含めないものとする。
は、−O−、−S−、及び、−NR2S−のうち少なくとも1つを含んでいてもよい炭素数1〜100のアルキル基を表す。ここで、アルキル基が−O−を含むとは、アルキル基の炭素−炭素結合の途中に−O−が導入されている場合や、アルキル基の一端(すなわち、上記「Ar」との接続部分)に−O−が導入されている場合を意味する。アルキル基に−S−や−NR2S−を含む場合も同様の意味である。
を表すアルキル基は、直鎖状、分岐鎖、環状のいずれであってもよいが、キャリア移動度及び高温高湿下での経時安定性がより優れたものになるという観点から、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。また、Lを表すアルキル基は、置換基としてハロゲン原子(好ましくは、F原子、Cl原子、Br原子、I原子、より好ましくは、F原子)を有するハロゲン化アルキル基であってもよい。
を表すアルキル基の炭素数は、1〜100であり、2〜60であることが好ましく、2〜30であることがより好ましく、8〜25であることが更に好ましい。
なお、Lを表すアルキル基が分岐鎖状である場合には、分岐部分の炭素数については、Lを表すアルキル基の炭素数に含むものとする。ただし、Lが−NR2S−を含み、かつ、このR2Sが炭素原子を含む場合には、R2Sの炭素数は、Lを表すアルキレン基の炭素数に含めないものとする。
1S及びR2Sはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては、アルキル基(好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基)、ハロゲン原子(好ましくは、F原子、Cl原子、Br原子、I原子)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20のアリール基)を表す。これらの中でも、R1S及びR2Sはそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
lは、1〜5の整数を表すが、1又は2であることが好ましい。lが2以上のとき、複数のLは、互いに同一でも異なっていてもよい。
また、lが5未満の整数である場合には、Arは他の置換基を有していてもよい。置換基としては、上記R1S及びR2Sと同様の置換基が挙げられる。
*は、他の構造との結合部位を表す。
式(P1)で表される有機半導体化合物は、式(P1)中のAが下記式(A−1)〜式(A−12)で表される構造よりなる群から選ばれた少なくとも1つの構造を部分構造として有することが好ましく、式(A−1)、式(A−3)、式(A−4)、式(A−5)、式(A−6)、式(A−8)及び式(A−12)で表される構造よりなる群から選ばれた少なくとも1つの構造を部分構造として有することがより好ましく、式(A−1)、式(A−3)、式(A−5)、式(A−6)、式(A−8)及び式(A−12)で表される構造よりなる群から選ばれた少なくとも1つの構造を部分構造として有することがより一層好ましく、式(A−1)及び式(A−3)で表される構造よりなる群から選ばれた少なくとも1つの構造を部分構造として有することが特に好ましく、式(A−3)で表される構造が最も好ましい。
また、式(P1)で表される有機半導体化合物は、上記それぞれの態様において、式(P1)中のAが各式により表される構造を部分構造として有する態様よりも、式(P1)中のAが各式により表される構造である態様の方が好ましい。
式(A−1)〜式(A−12)で表される構造の例を以下に示すが、本発明は以下の例示により限定されるものではない。下記構造式中、RA1は式(A−1)〜式(A−12)中のRA1と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、*は他の構造との結合部位を表す。
(電子ドナーユニット(式(P1)の「D」))
Dは少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、もしくはSe原子を環構造内に有する2価の芳香族複素環基、又は、2環以上の縮環構造からなる2価の芳香族炭化水素基を部分構造として含む電子ドナーユニットである。
少なくとも1つのN原子、O原子、S原子又はSe原子を環構造内に有する2価の芳香族複素環基としては、少なくとも1つのS原子を環構造内に有する2価の芳香族複素環基が好ましい。
また、上記2価の芳香族複素環基は、単環であっても、2環以上の縮環構造を有していてもよく、単環の2価の芳香族複素環基を2以上組み合わせた構造であるか、2以上の単環の2価の芳香族複素環基と、1以上の2環以上の縮環構造を有する2価の芳香族複素環基を組み合わせた構造であることが好ましい。
上記2価の芳香族複素環基は更に置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基(例えば、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましい)、アルケニル基(炭素数2〜30が好ましい。)、アルキニル基(炭素数2〜30が好ましい。)、芳香族炭化水素基(炭素数6〜30が好ましい。)、芳香族複素環基(5〜7員環が好ましい。ヘテロ原子としては、O原子、N原子、S原子、Se原子が好ましい。)、ハロゲン原子(F原子、Cl原子、Br原子、I原子が好ましく、F原子又はCl原子がより好ましく、F原子が特に好ましい。)、上記式(1−1)で表される1価の基が挙げられる。
D3は後述する式(D−1)におけるRD3と同義であり、好ましい態様も同様である。
上記2価の芳香族複素環基の例を以下に示すが、本発明は以下の例示により限定されるものではない。下記構造式中、水素原子は−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、ハロゲン原子、又は、上記式(1−1)により表される基により置換されていてもよく、RD1は後述する式(D−1)中のRD1と同義であり、好ましい態様も同様であり、*は他の構造との結合部位を表す。上記−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましい。RD3は後述する式(D−1)におけるRD3と同義であり、好ましい態様も同様である。
2環以上の縮環構造からなる芳香族炭化水素基としては、炭素数10〜20の芳香族炭化水素基が好ましく、フルオレン基、ナフチレン基、若しくは、3環又は4環が縮合した芳香族炭化水素から水素原子を2つ除いた基がより好ましく、フルオレン基、ナフチレン基、若しくは、アントラセン環、フェナントレン環、クリセン環、又はピレン環から水素原子を2つ除いた基が更に好ましい。
上記芳香族炭化水素基はさらに置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、ハロゲン原子、上記式(1−1)で表される1価の基が挙げられる。−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基及びハロゲン原子の好ましい例は、上記の2価の芳香族複素環基で説明したものと同様である。RD3は後述する式(D−1)におけるRD3と同義であり、好ましい態様も同様である。
また、式(P1)において、Dは式(D−1)で表される構造であることが好ましい。
上記式(D−1)中、X’はそれぞれ独立に、O原子、S原子、Se原子、又は、NRD1を表す。RD1はそれぞれ独立に、上記式(1−1)で表される1価の基であってもよい1価の有機基を表す。Zはそれぞれ独立に、N原子又はCRD2を表す。RD2はそれぞれ独立に、水素原子、又は、上記式(1−1)で表される1価の基であってもよい1価の有機基を表す。Mは、単結合、2価の芳香族複素環基、2価の芳香族炭化水素基、アルケニレン基、アルキニレン基、又は、これらを組み合わせてなる2価の基を表す。Mは、−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、又は、上記式(1−1)で表される1価の基で置換されていてもよい。RD3はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。p及びqはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。*はそれぞれ独立に、他の構造との結合部位を表す。
なお、上記式(D−1)において、各繰り返し単位及び上記Mは、結合軸において回転可能に結合している。
すなわち、例えば、式(D−1)(及び後述する式(2)〜式(6)の表記)では、p個連結する5員環の繰り返し単位と、q個連結する5員環の繰り返し単位とが互いに逆方向を向いているが、式(D−1)(及び後述する式(P2)〜式(P6)の表記)は、これらが互いに同じ方向を向く構造体も包含する意味である。
式(D−1)中、X’はそれぞれ独立に、O原子、S原子、Se原子、又は、NRD1を表し、O原子、S原子、又は、Se原子であることが好ましく、S原子であることがより好ましい。
はそれぞれ独立に、N原子又はCRD2を表し、CRD2であることがより好ましい。
D1はそれぞれ独立に、1価の有機基を表し、−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基(例えば、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、炭素数8〜30のアルキル基がより好ましい。)、アルキニル基(炭素数2〜30が好ましい。)、芳香族炭化水素基(炭素数6〜30が好ましい。)、芳香族複素環基(5〜7員環が好ましい。ヘテロ原子としては、O原子、N原子、S原子、Se原子が好ましい。)、ハロゲン原子(F原子、Cl原子、Br原子、I原子が好ましく、F原子又はCl原子がより好ましく、F原子が特に好ましい。)、又は、上記式(1−1)で表される1価の基であることが好ましく、アルキル基、ハロゲン原子、又は上記式(1−1)で表される1価の基であることがより好ましい。
D2はそれぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表し、水素原子、−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基(例えば、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましい。)、アルキニル基(炭素数2〜30が好ましい。)、アルケニル基(炭素数2〜30が好ましい。)、芳香族炭化水素基(炭素数6〜30が好ましい。)、芳香族複素環基(5〜7員環が好ましい。ヘテロ原子としては、O原子、N原子、S原子、Se原子が好ましい。)、ハロゲン原子(F原子、Cl原子、Br原子、I原子が好ましく、F原子又はCl原子がさらに好ましく、F原子が特に好ましい。)、又は、上記式(1−1)で表される1価の基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、又は上記式(1−1)で表される1価の基であることがより好ましい。
Mは、単結合、2価の芳香族複素環基、2価の芳香族炭化水素基、アルケニレン基、アルキニレン基、又はこれらを組み合わせてなる2価の基を表す。Mは、−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、又は、式(1−1)で表される1価の基で置換されていてもよい。
上記Mにおける2価の芳香族複素環基は、単環であっても、2環以上の縮環構造を有していてもよい。本発明に好ましく用いられる2価の芳香族複素環基の例は、上述した2環以上の縮環構造を有する2価の芳香族複素環基の例と同様である。
Mにおける2価の芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、フルオレン基、ナフチレン基、又は、3環若しくは4環が縮合した芳香族炭化水素から水素原子を2つ除いた基がより好ましく、フルオレン基、ナフチレン基、アントラセン環、フェナントレン環、クリセン環、若しくはピレン環から水素原子を2つ除いた基が更に好ましい。
Mにおける2価の芳香族複素環基、又は、2価の芳香族炭化水素基、は、さらに置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基(例えば、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましい。)、ハロゲン原子(F原子、Cl原子、Br原子、I原子が好ましく、F原子又はCl原子がさらに好ましく、F原子が特に好ましい。)、上記式(1−1)で表される1価の基が挙げられる。
Mにおけるアルケニレン基としては、炭素数2〜10のアルケニレン基が好ましく、炭素数2〜4のアルケニレン基がより好ましく、エテニレン基がさらに好ましい。
Mにおけるアルキニレン基としては、炭素数2〜10のアルキニレン基が好ましく、炭素数2〜4のアルキニレン基がより好ましく、エチニレン基がさらに好ましい。
D3はそれぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を表す。RD3における置換基は、上記R1S及びR2Sにおける置換基と同義である。
p及びqはそれぞれ独立に、0〜4の整数であり、1〜3の整数であることが好ましく、1〜2の整数であることがより好ましい。pとqは同じ値であることが好ましい。また、p+qが2〜4であることが好ましい。
ただし、p+qが0の場合には、Mは、少なくとも1つのN原子、O原子、S原子、もしくはSe原子を環構造内に有する2価の芳香族複素環基、または、2環以上の縮環構造からなる2価の芳香族炭化水素基を部分構造として含むことが好ましい。
Dの構造の例を以下に示すが、本発明は以下の例示により限定されるものではない。下記構造式中、水素原子は−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、又は、上記式(1−1)により表される基により置換されていてもよく、RD1は上記式(D−1)中のRD1と同義であり、好ましい態様も同様であり、*は他の構造との結合部位を表す。上記−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基又は炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、炭素数8〜30のアルキル基がより好ましい。RD3は上記式(D−1)におけるRD3と同義であり、好ましい態様も同様である。
(式(P2)〜式(P6)で表される繰り返し単位)
上記式(P1)で表される繰り返し単位が、下記式(P2)〜(P6)のいずれかで表される繰り返し単位であることが好ましく、下記式(P2)又は下記式(P3)のいずれかで表される繰り返し単位であることがさらに好ましく、下記式(P3)で表される繰り返し単位であることが特に好ましい。
上記式(P2)〜(P6)中、Xはそれぞれ独立に、O原子、S原子、Se原子、又は、NRA1を表す。
A1はそれぞれ独立に、−O−、−S−、及び、−NRA3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、上記式(1−1)で表される1価の基、又は、他の構造との結合部位を表す。
Yはそれぞれ独立に、O原子又はS原子を表す。
はそれぞれ独立に、CRA2又はN原子を表す。
A2はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、−O−、−S−、及び、−NRA3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、又は、他の構造との結合部位を表す。
A3はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
X’はそれぞれ独立に、O原子、S原子、Se原子、又は、NRD1を表す。
D1はそれぞれ独立に、上記式(1−1)で表される1価の基であってもよい1価の有機基を表す。
はそれぞれ独立に、N原子又はCRD2を表す。RD2はそれぞれ独立に、水素原子又は上記式(1−1)で表される1価の基であってもよい1価の有機基を表す。
Mは、単結合、2価の芳香族複素環基、2価の芳香族炭化水素基、アルケニレン基、アルキニレン基、又は、これらを組み合わせてなる2価の基を表す。Mは、−O−、−S−、及び、−NRD3−のうち少なくとも1つを含んでいてもよいアルキル基、又は、上記式(1−1)で表される1価の基で置換されていてもよい。
D3はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
p及びqはそれぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
式(P2)〜式(P6)中、X、Y、Z、RA1、RA2、及び、RA3は、上記式(A−1)〜式(A−12)におけるX、Y、Z、RA1、RA2、及び、RA3とそれぞれ同義であり、好ましい態様も同様である。
また、式(P2)〜式(P6)中、X’、Z、RD1、RD2、RD3、M、p、及び、qは上記式(D−1)におけるX’、Z、RD1、RD2、RD3、M、p、及び、qとそれぞれ同義であり、好ましい態様も同様である。
(有機半導体化合物の好ましい態様)
有機半導体化合物中、式(P1)で表される繰り返し単位の含有量は、有機半導体化合物の全質量に対し、60〜100質量%であることが好ましく、80〜100質量%であることがより好ましく、90〜100質量%であることがさらに好ましく、実質的に式(P1)で表される繰り返し単位のみから形成されていることが特に好ましい。なお、実質的に式(P1)で表される繰り返し単位のみから形成されているとは、式(P1)で表される繰り返し単位の含有量が95質量%以上であることを意味し、97質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましい。
式(P1)で表される繰り返し単位の含有量が上記範囲内であると、キャリア移動度により優れる有機半導体層が得られる。
また、有機半導体化合物は、式(P1)で表される繰り返し単位を1種単独で含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
有機半導体化合物は、式(P1)で表される繰り返し単位を2以上有する化合物であり、繰り返し単位数nが2〜9のオリゴマーであってもよく、繰り返し単位数nが10以上の高分子(ポリマー)であってもよい。これらの中でも、繰り返し単位数nが10以上の高分子であることが、キャリア移動度及び得られる有機半導体層の物性の観点から好ましい。
式(P1)で表される繰り返し単位を有する化合物の分子量は、キャリア移動度の観点から、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることが更に好ましく、20,000以上であることが特に好ましく、30,000以上であることが最も好ましい。また、溶解度の観点から、1,000,000以下であることが好ましく、300,000以下であることがより好ましく、150,000以下であることが更に好ましく、100,000以下であることが特に好ましい。
本発明において、式(P1)で表される繰り返し単位を有する化合物が分子量分布を有する場合、その化合物の分子量とは重量平均分子量を意味する。
本発明において、式(P1)で表される繰り返し単位を有する化合物の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ法(GPC(Gel Permeation Chromatography))法にて測定され、標準ポリスチレンで換算して求められる。具体的には、例えば、GPCは、HLC−8121GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel GMHHR−H(20) HT(東ソー(株)製、7.8mmID×30cm)を2本用い、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いる。また、条件としては、試料濃度を0.02質量%、流速を1.0ml/min、サンプル注入量を300μl、測定温度を160℃とし、IR(infrared)検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−128」、「F−80」、「F−40」、「F−20」、「F−10」、「F−4」、「F−2」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「A−500」の12サンプルから作製する。
有機半導体層中には、式(P1)で表される繰り返し単位を有する化合物が1種のみで含まれていてもよく、2種以上で含まれていてもよい。
また、式(P1)で表される繰り返し単位を有する化合物の末端の構造は、特に制限はなく、他の構成単位の有無や、合成時に使用した基質の種類、合成時のクエンチ剤(反応停止剤)の種類にもよるが、例えば、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、エチレン性不飽和基、アルキル基等、芳香族複素環基(チオフェン環が好ましい。)、芳香族炭化水素基(ベンゼン環が好ましい。)が挙げられる。
式(P1)で表される繰り返し単位を有する化合物の合成方法は、特に限定されず、公知の方法を参照して合成すればよい。例えば、特表2010−527327号、特表2007−516315号、特表2014−515043号、特表2014−507488号、特表2011−501451号、特開2010−18790号、WO2012/174561号、特表2011−514399号、特表2011−514913号等の文献を参考に、電子アクセプターユニットの前駆体と電子ドナーユニットの前駆体を合成して、それぞれの前駆体を鈴木カップリングやStilleカップリング等のクロスカップリング反応させることにより合成することができる。
以下に、式(P1)で表される有機半導体化合物の好ましい具体例を示すが、本発明は以下の例示により限定されるものではない。

(界面活性剤)
有機半導体層には、塗膜の膜厚均一性のより一層の向上のため、界面活性剤を添加することができる。
有機薄膜トランジスタに加熱プロセスを施す際、界面活性剤が流動して偏在することで、有機半導体層にひずみが生じ、クラックが発生する場合がある。このため、ガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤を用いることが好ましい。
ガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤は、有機半導体層に導入しても、負膨張材料と共に中間層に導入してもよい。上記界面活性剤を使用することで、クラックを発生させず、またキャリア移動度及びその高温高湿条件下での維持率を低下させることなく、膜厚均一性をより向上させることができる。
ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)Q100(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて以下の方法および条件でDSC測定をそれぞれについて行うことで得られる。
DSC測定は、加熱(1回目)→冷却(1回目)→加熱(2回目)のサイクルで行い、1回目の冷却時と2回目の加熱時にそれぞれDSC曲線を取得した。2回目の加熱時に取得したDSC曲線から求めたTgを採用した。なお、DSC曲線からTgを求める際には、DSC曲線の変曲点からTgを読み取った。
測定条件 測定範囲 : −30℃〜230℃
加熱・冷却速度: 10℃/min
ガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤としては、例えば、PMMA-b-PDMS(ポリメチルメタクリレートとポリジメチルシロキサンの共重合体)、PMMA−b−PS(ポリメチルメタクリレートとポリスチレンの共重合体)、PMMA−b−POSS(ポリメチルメタクリレートとシルセスキオキサンメタクリレートの共重合体)、PMMA−b−PEO(ポリメチルメタクリレートとポリエチレンオキサイドの共重合体)、PMMA−b−PPO(ポリメチルメタクリレートとポリプロピレンオキサイドの共重合体)、PS−b−PEO(ポリスチレンとポリエチレンオキサイドの共重合体)などの、ガラス転移温度が50℃以上のポリマー鎖を含むブロック共重合体が挙げられる。つまり、ブロック共重合体において、ガラス転移温度が50℃以上のブロックが少なくとも1つ含まれればよい。
なかでも、ガラス転移温度が80℃以上の界面活性剤(好ましくは、Tgが80℃以上のポリマー鎖を含むブロック共重合体)であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、120℃以下の場合が多い。
なお、ガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤としてポリマー鎖を含むブロック共重合体を用いる場合、その重量平均分子量は特に制限されないが、1万〜20万が好ましく、1万〜9.5万がより好ましい。
有機半導体層が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、全固形分量に対して0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。
また、界面活性剤は中間層に含有させてもよい。中間層が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、全固形分量に対して0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましい。
また、界面活性剤を中間層及び有機半導体層のいずれにも含有させる場合には、界面活性剤の含有量は、中間層及び有機半導体層の全固形分量に対して、上記範囲とすればよい。
<ソース電極、ドレイン電極>
本発明のOTFTにおいて、ソース電極は、配線を通じて外部から電流が流入する電極である。また、ドレイン電極は、配線を通じて外部に電流を送り出す電極であり、通常、上記有機半導体層に接して設けられる。
ソース電極及びドレイン電極の材料としては、従来の有機薄膜トランジスタに用いられている導電性材料を用いることができ、例えば、上記ゲート電極で説明した導電性材料等が挙げられる。
ソース電極及びドレイン電極は、それぞれ、上記ゲート電極の形成方法と同様の方法により形成することができる。
上記フォトリソグラフィー法としては、リフトオフ法又はエッチング法を採用できる。
特に、ゲート絶縁層がエッチング液や剥離液に対する耐性に優れていることから、ソース電極及びドレイン電極はエッチング法でも好適に形成することができる。エッチング法は、導電性材料を成膜した後に不要部分をエッチングにより除去する方法である。エッチング法によりパターニングすると、レジスト除去時に下地に残った導電性材料の剥がれ、レジスト残渣や除去された導電性材料の下地への再付着を防止でき、電極エッジ部の形状に優れる。この点で、リフトオフ法よりも好ましい。
リフトオフ法は、下地の一部にレジストを塗布し、この上に導電性材料を成膜し、レジスト等を溶媒により溶出又は剥離等することにより、レジスト上の導電性材料ごと除去して、レジストが塗布されていなかった部分にのみ導電性材料の膜を形成する方法である。
ソース電極及びドレイン電極の厚みは、任意であるが、それぞれ、1nm以上が好ましく、10nm以上が特に好ましい。また、500nm以下が好ましく、300nm以下が特に好ましい。
ソース電極とドレイン電極との間の間隔(チャネル長)は、任意であるが、100μm以下が好ましく、50μm以下が特に好ましい。また、チャネル幅は、5000μm以下が好ましく、1000μm以下が特に好ましい。
<オーバーコート層>
本発明のOTFTは、オーバーコート層を有していてもよい。オーバーコート層は、通常、OTFTの表面に保護層として形成される層である。単層構造でも多層構造でもよい。
オーバーコート層は、有機系のオーバーコート層でも無機系のオーバーコート層でもよい。
有機系のオーバーコート層を形成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアセナチレン、エポキシ樹脂等の有機ポリマー、及び、これらの有機ポリマーに架橋性基や撥水基等を導入した誘導体等が挙げられる。これらの有機ポリマーやその誘導体は、架橋成分、フッ素化合物、シリコン化合物等と併用することもできる。
無機系のオーバーコート層を形成する材料としては、特に限定されないが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の金属酸化物、窒化ケイ素等の金属窒化物等が挙げられる。
これらの材料は、1種を用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
オーバーコート層の形成方法に制限は無く、公知の各種の方法により形成することができる。
例えば、有機系のオーバーコート層は、例えば、その下地となる層に、オーバーコート層となる材料を含む溶液を塗布後に乾燥させる、オーバーコート層となる材料を含む溶液を塗布、乾燥後に露光、現像してパターニングする等の方法により形成することができる。なお、オーバーコート層のパターニングは、印刷法やインクジェット法等により直接形成することもできる。また、オーバーコート層のパターニング後に、露光や加熱することにより、オーバーコート層を架橋させてもよい。
一方、無機系のオーバーコート層は、スパッタリング法、蒸着法等の乾式法やゾルゲル法のような湿式法により形成することができる。
<その他の層>
本発明のOTFTは、上記以外の層や部材を設けてもよい。
その他の層又は部材としては、例えば、バンク等が挙げられる。バンクは、インクジェット法等により半導体層やオーバーコート層等を形成するときに、吐出液を所定の位置に塞き止める目的等で用いられる。このため、バンクには、通常、撥液性がある。バンクの形成方法としては、フォトリソグラフィー法等によりパターニングした後にフッ素プラズマ法等の撥液処理を施す方法、フッ素化合物等の撥液成分を含む感光性組成物等を硬化させる方法等が挙げられる。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいてゲート絶縁層が有機材料により形成されている場合には、後者の撥液成分を含む感光性組成物を硬化させる方法が、ゲート絶縁層が撥液処理の影響を受ける可能性が少ないので好ましい。なお、バンクを用いずに下地に撥液性のコントラストを持たせてバンクと同じ役割を持たせる技術を用いてもよい。
<製造方法>
(有機薄膜トランジスタ用材料又は有機薄膜トランジスタ用材料セットによる有機半導体層/中間層の製造方法)
上述した有機薄膜トランジスタの製造方法(以下、本発明の方法ということがある)は、特に限定されず、各部材(ゲート絶縁層、ソース電極、ドレイン電極)は上述した方法にて製造可能である。
なお、有機薄膜トランジスタにおいて有機半導体層及び中間層を形成する方法としては、例えば、有機半導体化合物、負膨張材料及びバインダーを含む組成物である有機薄膜トランジスタ用材料によって塗膜を形成した後、相分離現象を利用して、有機半導体化合物と負膨張材料を膜厚方向にそれぞれ相分離させて有機半導体層と中間層とを同時に形成してもよいし、または、有機半導体層を形成する前又は形成した後に、負膨張材料と負膨張材料を担持するバインダーとを含む層を別途積層形成してもよい。
以下、上記2つの方法に関して詳述する。
まず、上述の有機薄膜トランジスタ用材料を用いる方法は、有機半導体化合物と負膨張材料との相分離現象を利用して中間層及び有機半導体層を形成する方法である。
通常、有機半導体化合物と負膨張材料とはその構造の違いから混じり合わないため、両者を混合すると、有機半導体化合物の相と、負膨張材料の相とに分離する。そこで、有機半導体化合物、負膨張材料及びバインダーを含む組成物である有機薄膜トランジスタ用材料を用いて塗膜を作製すると、塗膜の下側に比重により沈降した負膨張材料の高濃度領域が形成され、一方、塗膜の上側には有機半導体化合物の結晶層が形成され、結果として中間層と有機半導体層とを形成することができる。
特に、有機薄膜トランジスタ用材料にバインダーが含まれることにより、上記相分離がより進行しやすくなる。なお、負膨張材料は、通常、バインダーと共に塗膜の下側に高濃度で偏在化する。
なお、塗布性の付与、有機半導体層の結晶性、相分離等の観点から、有機薄膜トランジスタ用材料中に溶媒を含有させることが好ましい。溶媒の含有量は、有機薄膜トランジスタ用材料の全質量に対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
溶媒としては、下記のものが挙げられる。
溶媒としては、例えば、有機溶媒、水及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、テトラリン、デカリン、1−メチルナフタレン等の炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエン等のハロゲン化炭化水素溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル溶媒、メタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール等のアルコール溶媒、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリドン、1−メチル−2−イミダゾリジノン等のアミド・イミド溶媒、ジメチルスルフォキシド等のスルホキシド溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒等が挙げられる。
有機溶媒は、単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。有機溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、ベンゾニトリル等が特に好ましい。
また、有機薄膜トランジスタ用材料中において、負膨張材料の含有量は、有機薄膜トランジスタ用材料の全固形分に対して1〜30質量%で含まれることが好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましい。
また、有機薄膜トランジスタ用材料中において、有機半導体化合物の含有量は、有機薄膜トランジスタ用材料の全固形分に対して10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることが好ましい。
また、有機薄膜トランジスタ用材料中において、バインダーの含有量は、有機薄膜トランジスタ用材料の全固形分に対して10〜70質量%であることが好ましく、20〜60質量%であることが好ましい。
また、有機薄膜トランジスタ用材料中に上述したガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤を含有させてもよく、この場合には、上記界面活性剤の含有量は、有機薄膜トランジスタ用材料の全固形分に対して0.01〜30質量%であることが好ましく、0.01〜10質量%であることがより好ましい。
有機薄膜トランジスタ用材料を塗布する方法としては、公知の方法(例えば、バーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ドクターブレード法)を採用できる。
塗布条件は、特に限定されない。室温(25℃)付近で塗布してもよいし、有機半導体化合物の塗布溶媒への溶解性を増すために加熱状態で塗布してもよい。塗布温度は、好ましくは15〜150℃であり、より好ましくは15〜100℃であり、さらに好ましくは15〜50℃であり、特に好ましくは室温付近(20〜30℃)である。
スピンコート法では、回転数を100〜3000rpmにするのが好ましい。
なお、必要に応じて、塗布後に、塗膜を乾燥してもよい。乾燥条件は、溶媒を揮発・除去できる条件であればよく、例えば、室温放置、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥等の方法が挙げられる。
また、有機半導体層を形成する前又は形成した後に、負膨張材料と負膨張材料を担持するバインダーとを含む中間層を別途積層形成する場合、有機半導体化合物を少なくとも含む組成物と、バインダー及び負膨張材料を少なくとも含む組成物を備えた有機薄膜トランジスタ用材料セットを用いて形成することが可能である。具体的には、例えば、有機半導体化合物及び溶媒を含む組成物を所定の基材上に塗布して有機半導体層を形成した後、さらに、バインダー、負膨張材料及び溶媒を含む組成物を有機半導体層上に塗布して中間層を形成する方法や、バインダー、負膨張材料及び溶媒を含む組成物を所定の基材上に塗布して中間層を形成した後、さらに、有機半導体化合物及び溶媒を含む組成物を中間層上に塗布して有機半導体層を形成する方法が挙げられる。上述のガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤を配合させる場合には、有機半導体層および中間層のどちらに配合してもよい。
中間層を形成するバインダーとして、上述したバインダーポリマーの他、エチレンプロピレンゴム、ポリウレタン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、シリコーンゴム等も使用することができる。
これらの組成物を塗布する方法は上述の通りであり、各組成物の塗布後、必要に応じて、乾燥処理を実施してもよい。
なお、有機半導体層と中間層とを別途形成する場合、あるいは、後述する第2態様であるゲート絶縁層に負膨張材料を含有させ、中間層を形成しない場合において、有機半導体層を形成する際は、塗膜性等の観点から、有機半導体化合物とともにバインダーを配合することが好ましい。バインダーとしては、有機薄膜トランジスタ用材料に用いられる上述のバインダーを使用することができる。
また、本明細書において、有機半導体層と中間層とを別途形成する場合であって、有機半導体層形成にバインダーを用い、このバインダーが相分離現象により有機半導体層から独立して層を成して中間層に連続して(隣接して)形成される場合には、このバインダーは中間層のバインダーとしてみなす。
<<第2態様>>
以下に、上述した図1(B)に示す第2態様の各構成、及び、その製造方法について詳述する。
第2態様のOTFTは、基板6上にゲート電極5、ゲート絶縁層12、ソース電極3及びドレイン電極4、及び、有機半導体層1がこの順で配置されたものである。第2態様は、第1態様と比較して、ゲート絶縁層中の負膨張材料が含有されている点以外は、同一の構成を有するため、以下では説明を省略し、主に、ゲート絶縁層12について詳述する。
第2態様におけるゲート絶縁層には、負膨張材料が含まれる。
負膨張材料の定義は、上述の通りである。
ゲート絶縁層には、上述したように、絶縁性の材料(例えば、有機高分子などの有機材料、無機酸化物などの無機材料)が含まれている。
第2態様におけるゲート絶縁層において、負膨張材料の含有量は、全固形分に対して1〜50質量%で含有されることが好ましく、5〜40質量%で含有されることがより好ましく、10〜30質量%で含有されることが更に好ましい。上記範囲で含まれることで、有機半導体層への熱応力を抑制でき、有機半導体層のクラック発生をより効果的に抑制される。
また、第2態様におけるゲート絶縁層12の厚みは、0.01〜100μmであることが好ましく、0.05〜5μmであることがより好ましく、0.1〜1μmであることが特に好ましい。上記範囲とすることで、電気特性として高いON−OFF比とクラック発生抑制効果を得ることができる。
また、第2態様では、ゲート絶縁層に隣接する有機半導体層は、上述したガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤を含むことが好ましい。有機半導体層に上記界面活性剤を含有させることで、クラックを発生させず、またキャリア移動度及びその高温高湿条件下での維持率を低下させることなく、膜厚均一性をより向上させることができる。
第2態様におけるゲート絶縁層の製造方法は特に制限されず、例えば、絶縁性の材料及び負膨張材料を含むゲート絶縁層形成用組成物を所定の基材上に塗布して、必要に応じて、乾燥処理を施す方法が挙げられる。
なお、ゲート絶縁層形成用組成物には、上述した溶媒が含まれていてもよい。
<OTFTの用途>
本発明のOTFTは好ましくは表示パネルに搭載して使用される。表示パネルとしては、例えば、液晶パネル、有機ELパネル、電子ペーパーパネル等が挙げられる。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
<有機半導体層形成用組成物の調製>
有機半導体化合物(OSC-1)と、バインダー(Mw=50万のポリスチレン)とを固形分質量比が1:1となるように混合、攪拌して、実施例1の有機半導体層形成用組成物を調製した。有機半導体層形成用組成物は、トルエンを溶剤とする固形分濃度0.5質量%溶液として調製した。
なお、本実施例で用いた各種ポリマーは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法で測定された標準ポリスチレン換算値である。重量平均分子量及び数平均分子量のGPC法による測定は、ポリマーをTHF(Tetrahydrofuran)に溶解させ、高速GPC(HLC−8220GPC、東ソー社製)を用い、カラムとして、TSKgel SuperHZ4000(TOSOH製、4.6mmI.D.×15cm)を用い、溶離液としてTHFを用いて行った。
<ゲート絶縁層形成用組成物(負膨張材料含有)の調製>
バインダーとしてポリイミド溶液(7%溶液、日産化学社製サンエバーSE−130B)を30質量%と、負膨張材料としてタングステン酸ジルコニウム(下記合成品; 平均粒径 200nm、アスペクト比 10、シランカップリング表面処理)を0.24質量%とを、溶媒であるアニソールに溶解させることでゲート絶縁層形成用組成物(負膨張材料含有)を調製し、実施例1のゲート絶縁層形成用組成物とした。
なお、タングステン酸ジルコニウムは文献(ACS Appl. Mater. Interfaces, 2013, 5 (19), pp 9478-9487)を参考にして、下記手順によって合成したものを用いた。
(タングステン酸ジルコニウムの調製)
0.08M ZrO(ClO・xHOと、0.10M NaWO・2HOを7M HCl中、160°Cにて12時間反応した。反応後、白色沈殿を取り出し、イオン交換水にて洗浄、遠心分離機にて沈殿を6回繰り返した。75℃にて24時間乾燥した後、乳鉢にてすりつぶした。最後に白色粉末を600度にて30分焼結することでタングステン酸ジルコニウムのナノ粒子を得た。
さらにナノ粒子5gを50mlの無水エタノールに加え攪拌した後、10分超音波を照射した。pHを4に調整したヘキシルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、信越シリコーン社製)10%エタノール溶液10gを加え60℃で2時間反応した。遠心分離により沈殿と無水エタノール洗浄を3回繰り返した後、減圧オーブンにて60℃で24時間乾燥し、表面処理されたタングステン酸ジルコニウムナノ粒子を得た。
<有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート・ボトムコンタクト構造)の製造>
上記のようにして得られた有機半導体層形成用組成物及びゲート絶縁層形成用組成物を用いて、図1(B)に示すボトムゲート・ボトムコンタクト構造の有機薄膜トランジスタ(実施例1)を以下の手順で作製した。
基板6として厚さ1mmのドープシリコン基板(ゲート電極5を兼ねる)を用い、その上にゲート絶縁層12を形成した。
ゲート絶縁層12は、上記ゲート絶縁層形成用組成物(負膨張材料含有)を基板6上に塗布し、これを乾燥させることで厚さ0.7μmの膜として形成した。
次いで、図1(B)に示すようにソース電極3及びドレイン電極4として、くし型に配置された銀からなる電極(厚み150nm、ゲート幅W=100μm、ゲート長L=100μm)を、マスクを用いて真空蒸着により形成した。
次いで、ゲート絶縁層12、ソース電極3及びドレイン電極4を覆うように、上記有機半導体層形成用組成物を、25℃でスピンコート(回転数800rpm)により塗布した。その後、ホットプレート上にて60℃で120分加熱し、有機半導体層1を成膜した。
こうして、厚さ300nmの有機半導体層1を成膜し、実施例1の有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)を得た。
[実施例2、3]
ゲート絶縁層形成用組成物に含まれる負膨張材料の配合量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法により、実施例2、3の有機薄膜トランジスタを作製した。
[実施例4、5、6]
ゲート絶縁層形成用組成物に含まれる負膨張材料をタングステン酸ジルコニウムからリン酸ジルコニウム(ZrO)(平均粒径80nm、アスペクト比3.8、東亞合成社製)に変更した以外は実施例1、2、3と同様の方法により、それぞれ実施例4、5、6の有機薄膜トランジスタを作製した。
[実施例7、8、9]
ゲート絶縁層形成用組成物に含まれる負膨張材料をタングステン酸ジルコニウムからシリカ(平均粒径60nm、アスペクト比1.0、昭和電工社製)に変更した以外は実施例1、2、3と同様の方法により、それぞれ実施例7、8、9の有機薄膜トランジスタを作製した。
[実施例10、11、12]
上記有機半導体層形成用組成物に含まれる有機半導体化合物をOSC−1から下記構造のOSC−2に変更した以外は実施例1、2、3と同様の方法により、それぞれ実施例10、11、12の有機薄膜トランジスタを作製した。
[実施例13]
<有機薄膜トランジスタ用材料1の調製>
有機半導体化合物(下記に示すOSC−3)を0.5質量%と、バインダーとしてポリスチレン(Mw=50万)を0.5質量%と、負膨張材料としてタングステン酸ジルコニウム(合成品;(上述したもの) 平均粒径:200nm、アスペクト比:10、シランカップリング表面処理)を0.056質量%とを、溶媒であるアニソールに溶解させることで有機薄膜トランジスタ用材料1を作製し、実施例13の有機半導体層(有機半導体膜)及び有機半導体層に隣接し、負膨張材料を含む中間層の形成に用いた。
有機薄膜トランジスタ用材料1は、所定の基材上に成膜されると成分が相分離し、有機半導体化合物の結晶層である有機半導体層と、その下層に負膨張材料を含むポリスチレン層(中間層)とを形成する。
<ゲート絶縁層形成用組成物の調製>
下記組成で、ゲート絶縁層形成用組成物(負膨張材料なし)を調製し、実施例13の有機薄膜トランジスタのゲート絶縁層2の形成に用いた。
ポリ(4−ビニルフェノール)(日本曹達社製、商品名:VP−8000、Mn11000、分散度1.1)を6.3gと、架橋剤として2,2−ビス(3,5−ジヒドロキシメチル−4−ヒドロキシ)プロパン2.7gとを、91gの1−ブタノール/エタノール=1/1の混合溶媒に室温で溶解した。この溶解液をφ0.2μmのPTFE製メンブランフィルタでろ過した。得られたろ液に酸触媒としてジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート塩0.18gを加え、これをゲート絶縁層形成用組成物(負膨張材料なし)とした。
<有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート・ボトムコンタクト構造)の製造>
上記のようにして得られた有機薄膜トランジスタ用材料1及びゲート絶縁層形成用組成物を用いて、図1(A)に示すボトムゲート・ボトムコンタクト構造の有機薄膜トランジスタ(実施例13)を以下の手順で作製した。
基板6として厚さ1mmのドープシリコン基板(ゲート電極5を兼ねる)を用い、その上にゲート絶縁層2を形成した。
ゲート絶縁層2は、まず、ゲート絶縁層形成用組成物を基板6上に塗布し、これを乾燥して成膜した後、100℃に加熱して架橋構造を形成させることで厚さ0.7μmの膜とした。
次いで、図1(A)に示すようにソース電極3及びドレイン電極4として、くし型に配置された銀からなる電極(厚み150nm、ゲート幅W=100μm、ゲート長L=100μm)を、マスクを用いて真空蒸着により形成した。
次いで、ゲート絶縁層2、ソース電極3及びドレイン電極4を覆うように、上記有機薄膜トランジスタ用材料1を、25℃でスピンコート(回転数800rpm)により塗布し、塗膜を成膜した。塗膜は成膜後に成分が相分離し、有機半導体化合物の結晶層である有機半導体層1と、その隣接する下層(すなわち、ゲート絶縁層2と有機半導体層1との界面領域)に負膨張材料を含むポリスチレン層(中間層)7が形成された。
こうして、厚さ300nmの有機半導体層1と、厚さ120nmの中間層7を成膜し、実施例13の有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)を得た。
[実施例14、15]
有機薄膜トランジスタ用材料1に含まれる負膨張材料の配合量を表1に示すように変更した以外は実施例13と同様の方法により、それぞれ実施例14、15の有機薄膜トランジスタを作製した。
[実施例16、17、18]
有機半導体層形成用組成物を下記の組成に変更した以外は、実施例1、2、3と同様の方法により、それぞれ実施例16、17、18の有機薄膜トランジスタを作製した。
<有機半導体層形成用組成物(負膨張材料なし、界面活性剤あり)の調製>
有機半導体化合物(OSC−1)0.5質量%と、バインダー(Mw=50万のポリスチレン)0.5質量%と、界面活性剤(PMMA-b-PDMS:ポリメチルメタクリレートとポリジメチルシロキサンの共重合体(Polymer soruce社製、重量平均分子量6万 ガラス転移温度100℃))0.025質量%とを、溶媒であるアニソールに溶解させることで、有機半導体層形成用組成物を調製した。
[実施例19、20、21]
実施例16、17、18の有機半導体層形成用組成物に含まれる界面活性剤を、PMMA-b-PDMSからBYK−323(シリコン系表面調整剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、ガラス転移温度20℃以下(常温常圧下で液体))に変更し、TFT構成をボトムゲート・ボトムコンタクト構造からトップゲート・トップコンタクト構造にし、それぞれ実施例19、20、21の有機薄膜トランジスタを作製した。
以下、トップゲート・トップコンタクト構造の有機薄膜トランジスタの作製手順について詳述する。
基板6として厚さ1mmのドープシリコン基板(ゲート電極5を兼ねる)を用い、その上に、上記のようにして得られた有機半導体層組成物を、25℃で、スピンコート(回転数1000rpm)にて有機半導体層1が300nmとなるように形成した。
次いで、図2(C)に示すようにソース電極3及びドレイン電極4として、くし型に配置された銀からなる電極(厚み150nm、ゲート幅W=100μm、ゲート長L=100μm)を、マスクを用いて真空蒸着により形成した。
次いで、有機半導体層1、ソース電極3及びドレイン電極4を覆うように、上記で得られたゲート絶縁膜組成物(負膨張材料含有)を、25℃でスピンコート(回転数800rpm)により塗布し、塗膜を成膜した。さらにゲート電極として金からなる電極(厚み50nm、100μm)を、マスクを用いて真空蒸着により形成した。こうして、実施例19〜21の有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)を得た。
[実施例22〜24]
有機半導体層形成用組成物を下記の組成及び成膜方法に変更し、ゲート絶縁層形成用組成物を実施例13で使用したもの(負膨張材料非含有)に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、実施例22〜24の有機薄膜トランジスタを作製した。
<有機薄膜トランジスタ用材料2の調製>
有機半導体化合物(OSC−1)を0.5質量%と、バインダーとしてポリスチレン(Mw=50万)を0.5質量%と、負膨張材料としてタングステン酸ジルコニウム(合成品(上述したもの);平均粒径:200nm、アスペクト比:10、シランカップリング表面処理)を0.056質量%と、界面活性剤(PMMA-b-PDMS:ポリメチルメタクリレートとポリジメチルシロキサンの共重合体(Polymer soruce社製、重量平均分子量6万 ガラス転移温度100℃)を0.025質量%とを、溶媒であるアニソールに溶解させることで有機薄膜トランジスタ用材料2を作製し、実施例22の有機半導体層(有機半導体膜)及び有機半導体層に隣接し、負膨張材料を含む中間層の形成に用いた。
<有機薄膜トランジスタ用材料2の成膜方法>
ゲート絶縁層2、ソース電極3及びドレイン電極4を覆うように、上記有機薄膜トランジスタ用材料を25℃でスピンコート(回転数800rpm)により塗布し、塗膜を成膜した。塗膜は成膜後に成分が相分離し、有機半導体化合物の結晶層である有機半導体層1と、その隣接する下層(すなわち、ゲート絶縁層2と有機半導体層1との界面領域)に負膨張材料を含むポリスチレン層(中間層)7が形成された。
こうして、厚さ300nmの有機半導体層1と、厚さ120nmの中間層7を成膜した。
[実施例25]
有機半導体層形成用組成物を実施例22と同様の有機薄膜トランジスタ用材料2及びその成膜方法に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、実施例25の有機薄膜トランジスタを作製した。
[比較例1]
<有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート・ボトムコンタクト構造)の製造>
実施例1と同様の有機半導体層形成用組成物及び実施例13と同様のゲート絶縁層形成用組成物を用いて、図1(A)に示すボトムゲート・ボトムコンタクト構造の有機薄膜トランジスタ(比較例1)を以下の手順で作製した。
比較例1の有機薄膜トランジスタは、負膨張材料がいずれの層にも含有されない構成である。
基板6として厚さ1mmのドープシリコン基板(ゲート電極5を兼ねる)を用い、その上にゲート絶縁層2を形成した。
ゲート絶縁層2は、まず、ゲート絶縁層形成用組成物を基板6上に塗布し、これを乾燥して成膜した後、100℃に加熱して架橋構造を形成させることで厚さ0.7μmの膜とした。
次いで、図1(A)に示すようにソース電極3及びドレイン電極4として、くし型に配置された銀からなる電極(厚み150nm、ゲート幅W=100μm、ゲート長L=100μm)を、マスクを用いて真空蒸着により形成した。
次いで、ゲート絶縁層2、ソース電極3及びドレイン電極4を覆うように、上記有機半導体層形成用組成物を、25℃でスピンコート(回転数800rpm)により塗布した。その後、ホットプレート上にて60℃で120分加熱し、有機半導体層1を成膜した。
こうして、厚さ300nmの有機半導体層1を成膜し、比較例1の有機薄膜トランジスタ(ボトムゲート・ボトムコンタクト型)を得た。
[比較例2]
ゲート絶縁層形成用組成物を実施例13で使用したもの(負膨張材料非含有)に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、比較例2の有機薄膜トランジスタを作製した。
なお、実施例1〜25、比較例1、2の有機半導体層形成用組成物の調製において、有機半導体化合物が溶解しくにい場合には、必要に応じて50℃程度の加熱をしながら攪拌して、各成分を溶解させた。
<評価試験>
得られた各有機薄膜トランジスタについて、クラック発生の有無、キャリア移動度、高温高湿条件下での経時安定性、膜厚均一性を下記方法により評価することでその性能を調べた。
(クラックの発生評価)
作製した有機薄膜トランジスタに150℃、1時間の条件で熱を与えた後、目視により有機半導体層のクラックの発生を評価した。クラックが発生した場合は「NG」、クラックが発生しなかった場合には「OK」とした。
得られた結果を下記表に示す。
(キャリア移動度評価)
作製した各有機薄膜トランジスタのソース電極3−ドレイン電極4間に−40Vの電圧を印加し、ゲート電圧を+10V〜−60Vの範囲で変化させ、ドレイン電流Idを表わす下記式を用いてキャリア移動度μを算出した。
d=(w/2L)μCi(Vg−Vth2
式中、Lはゲート長、wはゲート幅、Ciはゲート絶縁層2の単位面積当たりの容量、Vgはゲート電圧、Vthは閾値電圧を表す。
キャリア移動度μは高いほど好ましく、実用上は0.5以上であることが好ましい。
得られた結果を下記表に示す。
(高温高湿下での経時安定性)
各作製した各有機薄膜トランジスタを70℃、湿度80%下で24時間保管した後、上記「キャリア移動度評価」と同様の方法によりキャリア移動度を測定した。測定結果から、キャリア移動度維持率(下記式)を以下の5段階で評価し、高温高湿下での経時安定性の指標とした。この値が大きいほど高温高湿下での経時安定性が高く、実用上は「B」以上であることが必要であり、「A」以上であることがより好ましい。
高温高湿下保管後のキャリア移動度維持率(%)={キャリア移動度(高温高湿下保管後)/キャリア移動度(高温高湿下保管前)}×100
「A」:90%以上
「B」:75%以上90%未満
「C」:50%以上75%未満
「D」:25%以上50%未満
「E」:25%未満
得られた結果を下記表に示す。
(膜均一性評価)
塗布後の素子をFIB(Focused Ion Beam System(Gaイオンビーム))により断面を切り出し、SEM観察を行う事で膜の厚さ方向の均一性評価を行った。測定結果から、膜厚均一性評価を以下の3段階で評価し、その指標とした。
「A」:各層の膜厚が平均膜厚に対して±50%以内で製膜できている
「B」:層間混合なく製膜できている
「C」:層間の混合が発生している
表1において、ゲート絶縁層欄における「負膨張材料の添加量(質量%)」は、層全固形分に対する負膨張材料の含有量を表す。
また、有機半導体層/中間層欄における「界面活性剤の添加量(質量%)」は、有機半導体組成物全量に対する界面活性剤の含有量を表す。
また、有機半導体層/中間層欄における「有機半導体化合物/バインダー(固形分濃度比)」とは、有機半導体層形成用組成物中に含まれる有機半導体化合物とバインダーの固形分濃度比を表す。
また、有機半導体層/中間層欄における「負膨張材料の添加量(質量%)」は、中間層全固形分に対する負膨張材料の含有量を表す。
表1に示すように、本発明の有機薄膜トランジスタは、加熱プロセスを経ても有機半導体層にクラックが生じないことが確認された。
また、ゲート絶縁層中に負膨張材料を導入した実施例1〜9を対比すると、負膨張材料としてタングステン酸ジルコニウムを用いた場合において、キャリア移動度及びその高温高湿条件下での維持率がより優れていることが確認された。通常、ゲート絶縁層は負膨張材料が含まれると表面自由エネルギーが上昇し、上層に形成される有機半導体層の塗膜性に影響を与えることで有機薄膜トランジスタのキャリア移動度が低くなる傾向にあると想定される。しかし、特にタングステン酸ジルコニウムを用いた場合には、キャリア移動度への影響が見られなかった。さらに、ゲート絶縁層が高温高湿条件下で長期に渡って熱膨張せずに安定に保持されることで、高温高湿条件下での維持率にも優れていた。
また、実施例1〜3と実施例10〜12をそれぞれ対比すると、低分子系有機半導体化合物を用いた場合に、キャリア移動度がより優れることが確認された。
また、実施例1〜3、実施例13〜15、実施例22〜24の対比から明らかなように、有機半導体化合物と中間層の作製の際に、負膨張材料とガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤(好ましくは、ガラス転移温度が50℃以上のポリマー鎖を含むブロック共重合体)とを併用することで、クラックを生じさせず、また、キャリア移動度及びその高温高湿条件下での維持率を低下させずに、膜厚均一性をより向上させることが確認された。
更に、実施例16〜18からも明らかなように、ゲート絶縁層中に負膨張材料を添加した場合においても、有機半導体層中にガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤(好ましくは、ガラス転移温度が50℃以上のポリマー鎖を含むブロック共重合体)を添加することで、上述の効果が得られることが確認された。
一方、実施例1〜3、実施例19〜21の対比から明らかなように、ガラス転移温度が50℃未満の界面活性剤を用いた場合には、膜厚均一性はより向上したものの、高温高湿条件下での維持率が低下した。
なお、比較例2が示すように、負膨張材料を用いずに、ガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤(好ましくは、ガラス転移温度が50℃以上のポリマー鎖を含むブロック共重合体)のみを単独で有機半導体層に導入した場合には、負膨張材料及び界面活性剤をいずれも使用しない比較例1と比べて、より多くのクラックが発生し、またキャリア移動度(加熱前)も低くなる。つまり、上述するガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤は、負膨張材料と用いられることで、初めて、クラックを生じさせず、また、キャリア移動度及びその高温高湿条件下での維持率を低下させずに、膜厚均一性をより向上させることができる。
一方、比較例の有機薄膜トランジスタは、有機半導体層の周辺部に負膨張材料を含有しないため、加熱プロセスを経ると有機半導体層にクラックが生じた。
[実施例26、27、28]
有機薄膜トランジスタ材料を用いて有機半導体層と中間層を作製した実施例13、14、15において、有機薄膜トランジスタ材料に代えて、中間層形成用組成物を用いてゲート絶縁層上に負膨張材料を含む中間層を形成し、その上層に有機半導体層形成用組成物を用いて別途有機半導体層を設けた以外は同様の方法により、それぞれ実施例26、27、28の有機薄膜トランジスタを作製した。
具体的には、タングステン酸ジルコニウム(平均粒径200nm、アスペクト比10)1質量%と、バインダーとしてエチレンプロピレンゴム(JSR社製、EP22)0.5質量%をアニソールに溶解させることで中間層形成用組成物を作製し、これをゲート絶縁層2上へスピンコートにより塗布し、厚さ100nmの層を形成した。その上に上記実施例1と同様の有機半導体層形成用組成物を用いて有機半導体層(厚さ300nm)を形成した。
得られた有機薄膜トランジスタの各種性能(クラック発生の有無、キャリア移動度(加熱前)、高温高湿下での維持率、膜厚均一性)を評価したところ、実施例13、14,15と同等の性能が得られることが確認された。
1 有機半導体層、 2,12 ゲート絶縁層、 3 ソース電極、 4 ドレイン電極、 5 ゲート電極、 6 基板、 7 中間層

Claims (11)

  1. ゲート電極と、有機半導体層と、前記ゲート電極及び前記有機半導体層の間に設けられたゲート絶縁層と、前記有機半導体層に接して設けられ、前記有機半導体層を介して連結されたソース電極及びドレイン電極と、を有する有機薄膜トランジスタであって、
    前記ゲート絶縁層中、及び、前記有機半導体層に隣接して配置された中間層中の少なくともいずれかに負膨張材料を含有する、有機薄膜トランジスタ。
  2. 前記負膨張材料の平均粒径が10〜1000nmである、請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
  3. 前記負膨張材料のアスペクト比が2〜50である、請求項1又は2に記載の有機薄膜トランジスタ。
  4. 前記負膨張材料がタングステン酸ジルコニウムである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
  5. 前記ゲート絶縁層が有機材料により形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
  6. 前記負膨張材料が前記ゲート絶縁層に含有された、請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
  7. 前記負膨張材料が前記有機半導体層に隣接して配置された中間層に含有された、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
  8. 前記有機半導体層が、ガラス転移温度が50℃以上の界面活性剤を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機薄膜トランジスタ。
  9. 有機半導体化合物、バインダー及び負膨張材料を少なくとも含有する、有機薄膜トランジスタ用材料。
  10. 有機半導体化合物を少なくとも含む組成物と、バインダー及び負膨張材料を少なくとも含む組成物と、を備えた、有機薄膜トランジスタ用材料セット。
  11. ゲート電極と、有機半導体層と、前記ゲート電極及び前記有機半導体層の間に設けられたゲート絶縁層と、前記有機半導体層に接して設けられ、前記有機半導体層を介して連結されたソース電極及びドレイン電極と、を有する有機薄膜トランジスタの製造方法であって、
    請求項9に記載の有機薄膜トランジスタ用材料又は請求項10に記載の有機薄膜トランジスタ用材料セットを用いて、前記有機半導体層と、前記有機半導体層に隣接して形成され、バインダー及び負膨張材料を含有する中間層と、を形成する、有機薄膜トランジスタの製造方法。
JP2015188818A 2015-09-25 2015-09-25 有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタ用材料、有機薄膜トランジスタ用材料セット、有機薄膜トランジスタの製造方法 Active JP6399989B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015188818A JP6399989B2 (ja) 2015-09-25 2015-09-25 有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタ用材料、有機薄膜トランジスタ用材料セット、有機薄膜トランジスタの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015188818A JP6399989B2 (ja) 2015-09-25 2015-09-25 有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタ用材料、有機薄膜トランジスタ用材料セット、有機薄膜トランジスタの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017063155A true JP2017063155A (ja) 2017-03-30
JP6399989B2 JP6399989B2 (ja) 2018-10-03

Family

ID=58429131

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015188818A Active JP6399989B2 (ja) 2015-09-25 2015-09-25 有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタ用材料、有機薄膜トランジスタ用材料セット、有機薄膜トランジスタの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6399989B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018180195A1 (ja) * 2017-03-31 2018-10-04 株式会社ダイセル 膜状成形体の製造方法
WO2018180194A1 (ja) * 2017-03-31 2018-10-04 株式会社ダイセル 有機半導体及びその製造方法
WO2019087722A1 (ja) * 2017-10-31 2019-05-09 日本化学工業株式会社 改質リン酸タングステン酸ジルコニウム、負熱膨張フィラー及び高分子組成物
JP2020201383A (ja) * 2019-06-10 2020-12-17 コニカミノルタ株式会社 電子写真感光体、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01202866A (ja) * 1988-02-09 1989-08-15 Seiko Epson Corp 分子素子
JP2003277064A (ja) * 2002-03-26 2003-10-02 Asahi Kasei Corp タングステン酸ジルコニウム等の粉体及び複合材料
JP2004327857A (ja) * 2003-04-25 2004-11-18 Pioneer Electronic Corp 有機トランジスタの製造方法および有機トランジスタ
JP2007046045A (ja) * 2005-07-13 2007-02-22 Teijin Ltd ポリイミドフィルム基材
JP2007091577A (ja) * 2005-09-05 2007-04-12 Ohara Inc 無機物粉末およびそれを用いた複合体
US20070135550A1 (en) * 2005-12-14 2007-06-14 Nirupama Chakrapani Negative thermal expansion material filler for low CTE composites
JP2009081265A (ja) * 2007-09-26 2009-04-16 Idemitsu Kosan Co Ltd 有機薄膜トランジスタ

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01202866A (ja) * 1988-02-09 1989-08-15 Seiko Epson Corp 分子素子
JP2003277064A (ja) * 2002-03-26 2003-10-02 Asahi Kasei Corp タングステン酸ジルコニウム等の粉体及び複合材料
JP2004327857A (ja) * 2003-04-25 2004-11-18 Pioneer Electronic Corp 有機トランジスタの製造方法および有機トランジスタ
JP2007046045A (ja) * 2005-07-13 2007-02-22 Teijin Ltd ポリイミドフィルム基材
JP2007091577A (ja) * 2005-09-05 2007-04-12 Ohara Inc 無機物粉末およびそれを用いた複合体
US20070135550A1 (en) * 2005-12-14 2007-06-14 Nirupama Chakrapani Negative thermal expansion material filler for low CTE composites
JP2009081265A (ja) * 2007-09-26 2009-04-16 Idemitsu Kosan Co Ltd 有機薄膜トランジスタ

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018180195A1 (ja) * 2017-03-31 2018-10-04 株式会社ダイセル 膜状成形体の製造方法
WO2018180194A1 (ja) * 2017-03-31 2018-10-04 株式会社ダイセル 有機半導体及びその製造方法
JP2018172575A (ja) * 2017-03-31 2018-11-08 株式会社ダイセル 有機半導体及びその製造方法
JP2018174265A (ja) * 2017-03-31 2018-11-08 株式会社ダイセル 膜状成形体の製造方法
WO2019087722A1 (ja) * 2017-10-31 2019-05-09 日本化学工業株式会社 改質リン酸タングステン酸ジルコニウム、負熱膨張フィラー及び高分子組成物
JP6553831B1 (ja) * 2017-10-31 2019-07-31 日本化学工業株式会社 改質リン酸タングステン酸ジルコニウム、負熱膨張フィラー及び高分子組成物
JP2020201383A (ja) * 2019-06-10 2020-12-17 コニカミノルタ株式会社 電子写真感光体、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP6399989B2 (ja) 2018-10-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6285075B2 (ja) 有機半導体素子及びその製造方法、化合物、有機半導体組成物、並びに、有機半導体膜及びその製造方法
KR101926949B1 (ko) 유기 박막 트랜지스터 및 그 제조 방법
WO2015133375A1 (ja) 有機薄膜トランジスタ及びその製造方法
JP6399989B2 (ja) 有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタ用材料、有機薄膜トランジスタ用材料セット、有機薄膜トランジスタの製造方法
JP6706316B2 (ja) 有機半導体素子、重合体、有機半導体組成物及び有機半導体膜
JP6629866B2 (ja) 有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタの製造方法、有機半導体組成物、有機半導体膜および有機半導体膜の製造方法
WO2018061821A1 (ja) 有機半導体膜形成用組成物、有機半導体膜及びその製造方法、並びに、有機半導体素子
WO2017175665A1 (ja) 有機薄膜トランジスタ素子、有機半導体膜形成用組成物、有機半導体膜の製造方法及び有機半導体膜
JP6318452B2 (ja) 有機薄膜トランジスタ及びその製造方法
JP6754126B2 (ja) 有機半導体素子、有機半導体組成物、有機半導体膜の製造方法、有機半導体膜、並びに、これらに用いる化合物及びポリマー
JP6751364B2 (ja) 有機半導体素子、有機半導体組成物、有機半導体膜の製造方法、有機半導体膜、及びこれらに用いるポリマー
JP6434459B2 (ja) 有機半導体膜形成用組成物、有機半導体膜、有機薄膜トランジスタ
TWI752207B (zh) 有機半導體元件、有機半導體組成物、有機半導體膜的製造方法、有機半導體膜、以及用於這些的化合物及聚合物
JP6442049B2 (ja) 有機薄膜トランジスタ、有機半導体層形成用組成物
TWI761480B (zh) 有機半導體元件、有機半導體組成物、有機半導體膜的製造方法、有機半導體膜、以及用於其的化合物及聚合物
KR20160134818A (ko) 반도체 소자 및 절연층 형성용 조성물
JP6574052B2 (ja) 有機半導体素子、重合体、有機半導体組成物及び有機半導体膜
WO2017038948A1 (ja) 有機薄膜トランジスタ、有機薄膜トランジスタの製造方法、有機半導体組成物、有機半導体膜および有機半導体膜の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170801

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180425

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180508

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180704

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180807

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180904

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6399989

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250