以下、本発明について図面を用いて説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分又は相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さ等の寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
[電子写真感光体の構成]
図1は、本発明の一実施形態(以下では「本実施形態」と記す)の電子写真感光体の模式断面図である。電子写真感光体100は、導電性支持体101と、導電性支持体101の上に順に設けられた感光層103及び保護層106とを備える。電子写真感光体100は、導電性支持体101と感光層103との間に中間層102をさらに備えることが好ましい。また、感光層103は、中間層102の上に設けられた電荷発生層104と、電荷発生層104の上に設けられた電荷輸送層105とを有することが好ましい。以下では、保護層106を示した後に、保護層106以外の電子写真感光体100の構成を示す。
<保護層>
保護層106は、硬化型樹脂を有する。硬化型樹脂は、第1連鎖重合性化合物に由来する第1構成単位(以下では単に「第1構成単位」と記すことがある)と、第2連鎖重合性化合物に由来する第2構成単位(以下では単に「第2構成単位」と記すことがある)とを含む。硬化型樹脂は、熱硬化型樹脂でも良いが、後述するように光硬化型樹脂であることが好ましい。
(第1連鎖重合性化合物)
第1連鎖重合性化合物は、電荷輸送性構造を有し、下記化学式(1)で表される。
上記化学式(1)において、Ar1、Ar2、Ar5およびAr6のうちの少なくとも2つは、各々独立に、連鎖重合性官能基を有する。Ar1、Ar2、Ar5およびAr6は、各々独立に、窒素を含まず置換基(連鎖重合性官能基を除く)を有しても良いアリール基を示す。Ar3およびAr4は、各々独立に、置換基(連鎖重合性官能基を除く)を有しても良いアリーレン基を示す。
「連鎖重合」とは、重合体の合成反応形態を連鎖重合と逐次重合とに分けた場合の前者を意味する。連鎖重合では、成長鎖の末端基が連鎖担体の役割を果たす。例えば技報堂出版 三羽忠広著の「基礎 合成樹脂の化学(新版)」1995年7月25日(1版8刷)24頁に説明されているように、「連鎖重合」には、ラジカルまたはイオンなどの中間体を経由して反応が進行する付加重合、開環重合または異性化重合などが含まれる。
「連鎖重合性化合物」とは、連鎖重合性官能基を有する化合物を意味する。「連鎖重合性化合物」には、例えば、付加重合性単量体、開環重合性単量体または異性化重合性単量体などが含まれる。「連鎖重合性官能基」とは、連鎖重合を進行させる官能基を意味する。「連鎖重合性官能基」には、芳香環を構成する炭素原子間の二重結合(C=C)は含まれない。つまり、「連鎖重合性官能基」には、置換基を有さないアリール基を構成する炭素原子間の二重結合は含まれず、置換基を有さないアリーレン基を構成する炭素原子間の二重結合は含まれない。
「付加重合性単量体」とは、付加重合が起こり得る結合を有する単量体を意味し、好ましくは不飽和結合を分子内に有する単量体である。そのため、付加重合性単量体が有する連鎖重合性官能基とは、不飽和結合を意味し、例えば、炭素原子間の二重結合(C=C)または炭素原子間の三重結合(C≡C)である。
「開環重合性単量体」とは、開環重合が起こり得る結合を有する単量体を意味し、好ましくはエステル結合およびエーテル結合のうちの少なくとも1つを環内に有する単量体である。そのため、開環重合性単量体が有する連鎖重合性官能基としては、例えば、エステル基またはエーテル基などが挙げられ、開環重合性単量体としては、例えば、環状エステル、環状カーボネートまたは環状エーテルなどが挙げられる。
「異性化重合性単量体」とは、異性化重合が起こり得る結合を有する単量体を意味し、好ましくは活性部位(異性化重合の反応点)付近で水素原子の移動が生じる構造(例えば、ビニル基、α−オレフィン構造または分岐型オレフィン構造)を分子内に有する単量体である。そのため、異性化重合性単量体が有する連鎖重合性官能基としては、例えばビニル基などが挙げられ、異性化重合性単量体としては、例えば、スピロ構造を有する環状エーテル、ノルボルネンまたは不飽和結合を有する分岐型オレフィンなどが挙げられる。
「電荷輸送性構造」とは、電荷輸送性を発現する構造を意味する。電荷輸送性構造には、主にホールを輸送する構造と、主に電子を輸送する構造とが含まれる。主にホールを輸送する構造としては、アミノ基などの電子供与性を示す構造が挙げられる。主にホールを輸送する構造を有する化合物としては、例えば、ヒドラゾン、アリールアミン、アルキルアミンまたはエナミンなどのアミノ基を有する化合物が挙げられ、スチルベンまたはブタジエンなどであっても良い。主に電子を輸送する構造としては、例えば、ニトロ基、シアノ基またはカルボキシル基などの電子受容性を示す構造が挙げられる。主に電子を輸送する構造を有する化合物としては、例えば、キノン類などが挙げられる。第1連鎖重合性化合物は、主にホールを輸送する構造および主に電子を輸送する構造のうちの少なくとも1つの構造を分子内に有する。
上記化学式(1)のAr1、Ar2、Ar5およびAr6が有しても良い置換基としては、連鎖重合性官能基が除かれ、例えば、炭化水素基などが挙げられる。上記化学式(1)のAr3およびAr4が有しても良い置換基としては、連鎖重合性官能基が除かれ、例えば、炭化水素基などが挙げられる。
第1連鎖重合性化合物の具体例としては、例えば、下記化学式(2)〜(5)で表される化合物が挙げられる。
例えば、上記化学式(2)で表される化合物では、アリール基であるフェニル基およびアリーレン基であるフェニル基が電荷輸送性構造として機能し、上記化学式(1)におけるAr2およびAr6が連鎖重合性官能基(C=C)を有する。なお、上記化学式(2)で表される化合物では、上記化学式(1)におけるAr1およびAr5が置換基(メチル基(−CH3))を有する。これらのことは上記化学式(3)で表される化合物においても言える。
上記化学式(4)で表される化合物では、アリール基であるフェニル基およびアリーレン基であるフェニル基が電荷輸送性構造として機能し、上記化学式(1)におけるAr1、Ar2およびAr6が連鎖重合性官能基(C=C)を有する。なお、上記化学式(4)で表される化合物では、上記化学式(1)におけるAr5が置換基(メチル基(−CH3))を有する。これらのことは上記化学式(5)で表される化合物においても言える。
(第2連鎖重合性化合物)
第2連鎖重合性化合物は、電荷輸送性構造を有さない。つまり、第2連鎖重合性化合物は、主にホールを輸送する構造と主に電子を輸送する構造との両方を分子内に有さない。なお、「連鎖重合」、「連鎖重合性化合物」および「電荷輸送性構造」については、上述のとおりである。
第2連鎖重合性化合物は、連鎖重合性化合物として従来公知の化合物であれば特に限定されないが、好ましくは電子写真感光体100のバインダー樹脂として使用可能な樹脂を形成可能な単量体である。例えば、第2連鎖重合性化合物は、紫外線または電子線などの活性線の照射によって重合(硬化)されてポリスチレン樹脂またはポリアクリレート樹脂などを形成可能な単量体であることが好ましい。主にホールを輸送する構造を有しない第2連鎖重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物などが挙げられ、その中でもオキセタン化合物が好ましい。
より具体的には、第2連鎖重合性化合物は、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体、ビニルトルエン系単量体、酢酸ビニル系単量体またはN−ビニルピロリドン系単量体などであることが好ましい。この中でも、アクリロイル基(CH2=CHCO−)またはメタクリロイル基(CH2=CCH3CO−)を有する連鎖重合性化合物を第2連鎖重合性化合物として用いることがより好ましい。これにより、少ない光量での硬化または短時間での硬化が可能となる。第2連鎖重合性化合物としては、これらの連鎖重合性化合物のうちの1種を単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
(硬化型樹脂)
硬化型樹脂は、第1連鎖重合性化合物に由来する第1構成単位と、第2連鎖重合性化合物に由来する第2構成単位とを含む。つまり、硬化型樹脂は、第1連鎖重合性化合物と第2連鎖重合性化合物との混合物に対して硬化処理を行うことによって得られた化合物である。そのため、「硬化型樹脂は、第1連鎖重合性化合物に由来する第1構成単位と、第2連鎖重合性化合物に由来する第2構成単位とを含」むとは、第1連鎖重合性化合物の硬化処理後の化学構造と第2連鎖重合性化合物の硬化処理後の化学構造とが硬化型樹脂に構成単位として含まれていることを意味する。
第1連鎖重合性化合物と第2連鎖重合性化合物との混合物に対して硬化処理を行うと、第1連鎖重合性化合物の連鎖重合性官能基と第2連鎖重合性化合物の連鎖重合性官能基とが反応し得る。そのため、得られた硬化型樹脂には、第1構成単位と第2構成単位との結合が存在することとなる。よって、電荷輸送性構造を有する化合物として連鎖重合性官能基を有さない化合物を用いる場合に比べて、保護層106の硬度を長期に亘って高く維持できる。
それだけでなく、第1連鎖重合性化合物は、分子内に連鎖重合性官能基を2つ以上有するので、分子内に結合手を2つ以上有することとなる。ここで、上述したように、第1連鎖重合性化合物の連鎖重合性官能基と第2連鎖重合性化合物の連鎖重合性官能基とが反応し得る。そのため、電荷輸送性構造を有する化合物として分子内に連鎖重合性官能基を1つしか有さない化合物を用いる場合に比べて、保護層106の硬度を長期に亘って高く維持できる。以上のことから、低減耗な電子写真感光体100を提供できるので、電子写真感光体100の長寿命化を実現できる。好ましくは、第1連鎖重合性化合物は分子内に連鎖重合性官能基を2つ有する。
なお、硬化型樹脂では、第1構成単位の配列および第2構成単位の配列は特に限定されない。例えば、硬化型樹脂は、第1連鎖重合性化合物と第2連鎖重合性化合物との共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体またはグラフト共重合体)であっても良い。また、硬化型樹脂は、第2連鎖重合性化合物同士の重合によって得られた多量体に対して第1構成単位が結合されたものであっても良い。例えば、多量体の一部分と当該多量体の残りの一部分とが第1構成単位によって架橋されていても良い。多量体同士が第1構成単位によって架橋されていても良い。
また、「硬化処理」としては、熱照射による硬化であっても良いし、可視光、紫外線または電子線などの活性線の照射による硬化であっても良いが、活性線の照射による硬化であることが好ましい。なぜならば、活性線の照射による硬化の方が、熱照射による硬化よりも、手法が簡便であり、また、硬化反応が進行し易いからである。つまり、硬化型樹脂は、熱硬化型樹脂であっても良いが、光硬化型樹脂であることが好ましい。
(含有モル数)
本実施形態では、硬化型樹脂における第1構成単位の含有モル数は硬化型樹脂における第2構成単位の含有モル数以上である。これにより、保護層106において第1構成単位が偏在することを防止できるので、潤滑剤は保護層106の表面において均一に設けられることとなる。これについては後述する。
第1連鎖重合性化合物と第2連鎖重合性化合物との混合物において第1連鎖重合性化合物の含有モル数が第2連鎖重合性化合物の含有モル数以上であれば、硬化型樹脂における第1構成単位の含有モル数は硬化型樹脂における第2構成単位の含有モル数以上となる。つまり、「硬化型樹脂における第1構成単位の含有モル数は、硬化型樹脂における第2構成単位の含有モル数以上である」とは、硬化型樹脂が、第1連鎖重合性化合物の含有モル数が第2連鎖重合性化合物の含有モル数以上である混合物に対して硬化処理を行うことにより得られたものであることを意味する。
また、「硬化型樹脂における第1構成単位の含有モル数は、硬化型樹脂における第2構成単位の含有モル数以上である」とは、好ましくは硬化型樹脂における第1構成単位の含有モル数が硬化型樹脂における第2構成単位の含有モル数の1倍以上2倍以下であり、より好ましくは硬化型樹脂における第1構成単位の含有モル数が硬化型樹脂における第2構成単位の含有モル数の1倍以上1.4倍以下であり、さらに好ましくは硬化型樹脂における第1構成単位の含有モル数が硬化型樹脂における第2構成単位の含有モル数の1倍以上1.2倍以下である。例えばフーリエ変換型赤外分光分析法またはフーリエ変換型核磁気共鳴分析法などにしたがって、硬化型樹脂における第1構成単位の含有モル数を求めることができる。同様の方法にしたがって、硬化型樹脂における第2構成単位の含有モル数を求めることができる。
<保護層と潤滑剤との関係>
画像を形成するとき、保護層106の表面には潤滑剤が存在している。これにより、放電生成物などの異物が保護層106の表面に付着することを防止できる。よって、保護層106の表面への上記異物の付着に起因する画像品質の低下を防止できる。
潤滑剤を保護層106の表面に設ける方法としては、特に限定されない。例えば、後述の電子写真画像形成装置(以下では単に「画像形成装置」と記すことがある)に設けられた潤滑剤供給装置を用いて潤滑剤を保護層106の表面に供給しても良い。しかし、以下では、静電潜像現像剤への潤滑剤の外添によって当該潤滑剤を保護層106の表面に供給する場合を示す。
潤滑剤を含む静電潜像現像剤を用いて画像を形成すると、潤滑剤は、現像電界によって静電潜像現像剤とともに保護層106の表面へ向かって飛散する。ここで、保護層106は第1構成単位と第2構成単位とを含むので、保護層106の表面には第1構成単位が優先的に存在する部位と第2構成単位が優先的に存在する部位とが含まれると考えられる。そして、潤滑剤は、保護層106の表面のうち第2構成単位が優先的に存在する部位よりも第1構成単位が優先的に存在する部位に付着され易く、第1構成単位が優先的に存在する部位に保持され易い。
ところで、本実施形態では、硬化型樹脂における第1構成単位の含有モル数が硬化型樹脂における第2構成単位の含有モル数以上であるので、単位体積あたりの第1構成単位のモル数を高めることができる。これにより、第1構成単位同士が近接して配置されることとなるので、第1構成単位同士の分子間相互作用が大きくなり、よって、第1構成単位の3次元網目構造を構成できる。したがって、保護層106における第1構成単位の偏在を防止できるので、保護層106の表面において第1構成単位が優先的に存在する部位の偏在を防止できる。そのため、保護層106の表面への潤滑剤の供給量が少ない場合であっても、例えば静電潜像現像剤が0.5質量部以下の潤滑剤を含む場合であっても、保護層106の表面における潤滑剤の付着ムラを防止できる。以上より、保護層106の表面では、潤滑剤による効果が均一となるので、帯電電位及び露光後電位に差が生じることを防止できる。その結果、画像濃度差(例えば、ベタ画像の画像濃度差、または、ハーフトーン画像の画像濃度差など)の発生を防止できるので、画像品質を高く維持できる。
このように、保護層106の表面への潤滑剤の供給量が少ない場合であっても画像品質を高く維持できるので、保護層106の表面への潤滑剤の供給量を減らすことができる。これにより、保護層106の表面における潤滑剤の劣化量を減らすことができる。よって、クリーニングブレードのトルクを低く維持できるので、クリーニングブレードにおいてメクレおよびチッピングなどの発生を防止できる。したがって、クリーニング不良の発生およびトナーフィルミングの発生などを防止できる。以上より、耐久時においても画像品質を高く維持できることとなる。
なお、第1構成単位が優先的に存在する部位に潤滑剤が付着され易い理由としては、次に示すことが考えられる。第1構成単位と第2構成単位とでは、それらの化学構造から、摩擦帯電序列での位置が異なり、第1構成単位が優先的に存在する部位の方が、第2構成単位が優先的に存在する部位よりも、電荷密度が高い。ここで、保護層106の表面のうち電荷密度が相対的に高い部位において電子の授受が起こり易い。そのため、保護層106の表面では、電荷密度が相対的に高い部位(つまり、第1構成単位が優先的に存在する部位)において、電子の授受が特に起こり易い。以上より、潤滑剤は、第1構成単位が優先的に存在する部位に付着され易いと考えられ、また、第1構成単位が優先的に存在する部位に保持され易いと考えられる。
以上、保護層106について示したが、保護層106は、PTFE(polytetrafluoroethylene)粒子などの有機粒子またはp型半導体粒子などをさらに含んでいても良い。保護層106が上記有機粒子を含んでいれば、電子写真感光体100のクリーニング性が向上する。保護層106がp型半導体粒子を含んでいれば、電子写真感光体100の耐摩耗性がさらに向上し、感光体周期による画像濃度差(画像メモリー)が良好となる。このような保護層106の厚さは、0.2μm以上10μm以下であることが好ましく、0.5μm以上6μm以下であることがより好ましい。
<保護層の形成>
まず、溶媒に、第1連鎖重合性化合物と第2連鎖重合性化合物とを加え、必要に応じて重合開始剤をさらに加える。得られた保護層形成用液体を感光体103の上面(具体的には電荷輸送層105の上面)に塗布し、形成された塗膜を乾燥させる。その後、塗膜に対して硬化処理を行う。このようにして保護層106が形成される。
上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、メチレンクロライド、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン、又は、ジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記硬化処理では、電子線による開裂反応により硬化反応を行っても良いし、ラジカル重合開始剤の存在下での熱又は光の照射により硬化反応を行っても良い。ラジカル重合開始剤を用いて硬化反応を行う場合には、重合開始剤として熱重合開始剤又は光重合開始剤のいずれも使用でき、また、熱重合開始剤と光重合開始剤との両方を使用しても良い。
熱重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルアゾビスバレロニリル)、又は、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物が挙げられ、過酸化ベンゾイル(BPO(benzoyl peroxide))、ジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、又は、過酸化ラウロイルなどの過酸化物が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(BASFジャパン株式会社製の品番「IRGACURE 369」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン又は1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどのアセトフェノン系又はケタール系光重合開始剤が挙げられる。
また、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、又は、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル系光重合開始剤を使用しても良い。
また、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、又は、1,4−ベンゾイルベンゼンなどのベンゾフェノン系光重合開始剤を使用しても良い。
また、光重合開始剤としては、例えば、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、又は、2,4−ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系光重合開始剤を使用しても良い。
その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン株式会社製の品番「IRGACURE 819」)、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、又は、イミダゾール系化合物が挙げられる。
光重合促進効果を有するものを単独又は上記光重合開始剤と併用して使用することもできる。光重合促進効果を有する材料としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、又は、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
光重合開始剤としては、アルキルフェノン系化合物、又は、フォスフィンオキサイド系化合物を使用することがより好ましく、α−ヒドロキシアセトフェノン構造、又は、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する開始剤を使用することがさらに好ましい。
重合開始剤としては上述の重合開始剤を単独で又は二種以上混合して使用できる。重合開始剤は、硬化性化合物100質量部に対して、0.1質量部以上40質量部以下添加されることが好ましく、0.5質量部以上20質量部以下添加されることがより好ましい。
上記保護層形成用液体を感光体103の上面に塗布する方法としては、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、または、スライドホッパー法などの公知の方法を用いることができる。
上記塗膜を乾燥させるタイミングは、上記硬化処理の前に限定されず、活性線の照射条件と組み合わせて適宜選択されることが好ましい。例えば、活性線の照射前後において塗膜を乾燥させても良いし、活性線の照射中に塗膜を乾燥させても良い。
上記塗膜の乾燥条件は、塗膜に含まれる溶媒の種類、又は、塗膜の厚さなどにより適宜選択されることが好ましい。塗膜の乾燥温度は、室温以上180℃以下であることが好ましく、80℃以上140℃以下であることがより好ましい。また、塗膜の乾燥時間は、1分以上200分以下であることが好ましく、5分以上100分以下であることがより好ましい。このような条件で塗膜を乾燥させることにより、形成される保護層106に含まれる溶媒量を20ppm以上75ppm以下に制御できる。
上記硬化処理では、塗膜への活性線の照射によりラジカルを発生させて重合させ、且つ、架橋反応により分子間又は分子内で架橋結合を形成して硬化させ、これにより、硬化型樹脂を形成することが好ましい。活性線としては、例えば、紫外線又は可視光などの電磁波、又は、電子線が挙げられ、使い易さ等の見地から紫外線を使用することがより好ましい。
紫外線光源としては、紫外線を発生させる光源であれば制限なく使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、フラッシュ(パルス)キセノン、又は、紫外線LED(light emitting diode)などを使用できる。紫外線の照射条件は光源の種類により異なるが、紫外線の照射量は、1mJ/cm2以上20mJ/cm2以下であることが好ましく、5mJ/cm2以上15mJ/cm2以下であることがより好ましい。また、紫外線光源の出力電圧は、0.1kW以上5kW以下であることが好ましく、0.5kW以上3kW以下であることがより好ましい。
電子線源としては、特に制限なく使用できる。電子線照射用の電子線加速機としては、比較的安価で大出力が得られるカーテンビーム方式のものを使用することが好ましい。電子線照射時の加速電圧は、100kV以上300kV以下であることが好ましい。吸収線量は、0.005Gy以上100kGy以下(0.5Mrad以上10Mrad以下)であることが好ましい。
活性線の照射時間は、活性線の必要照射量が得られる時間以上であることが好ましい。具体的には、活性線の照射時間は、0.1秒以上10分以下であることが好ましく、硬化効率又は作業効率の観点から1秒以上5分以下であることがより好ましい。
<導電性支持体>
導電性支持体101は、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛またはステンレスなどの金属をドラム状またはシート状に成形したもの、アルミニウム箔または銅箔などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウムまたは酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、または、金属、プラスチックフィルムまたは紙などに導電性物質を単独またはバインダー樹脂と共に塗布して導電層を設けたものなどが挙げられる。
<中間層>
中間層102は、導電性支持体101と感光層103との間に設けられ、バリア機能と接着機能とを有する。中間層102は、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリウレタンまたはゼラチンなどのバインダー樹脂が公知の溶媒に溶解されてなる液体(中間層形成用液体)を用いて浸漬塗布法などにより形成されることが好ましい。バインダー樹脂としては、アルコール可溶性のポリアミド樹脂を使用することが好ましい。このような中間層102の厚さは、0.1μm以上15μm以下であることが好ましく、0.3μm以上10μm以下であることがより好ましい。
中間層102は、抵抗の調整という目的で、各種導電性粒子または各種金属酸化物粒子などの無機粒子を含むことが好ましい。無機粒子としては、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウムまたは酸化ビスマス等からなる粒子が挙げられ、また、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズまたは酸化ジルコニウム等からなる粒子が挙げられる。無機粒子としては、これらの粒子を単独または2種以上混合して使用できる。これらの粒子を2種以上混合して使用する場合には、固溶体の形態または融着の形態をとってもよい。無機粒子は、数平均一次粒径が0.3μm以下であることが好ましく、数平均一次粒径が0.1μm以下であることがより好ましい。
中間層102の形成に使用可能な溶媒(中間層形成用液体に含まれる溶媒)としては、例えば、上記無機粒子を良好に分散させ、且つ、ポリアミド樹脂をはじめとするバインダー樹脂を溶解するものであることが好ましい。具体的には、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノールまたはsec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類を用いることが好ましい。これらのアルコール類は、バインダー樹脂として好適なポリアミド樹脂に対して良好な溶解性を有し、また、中間層形成用液体に良好な塗布性能を付与する。
電子写真感光体100の保存性と無機粒子の分散性とを向上させるためには、上記溶媒に対して助溶剤を併用することが好ましい。好ましい効果が得られる助溶剤としては、例えば、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、シクロヘキサノンまたはテトラヒドロフラン等が挙げられる。
中間層形成用液体におけるバインダー樹脂の濃度は、中間層102の厚さ又は中間層形成用液体の塗布方法に応じて適宜選択されることが好ましい。無機粒子を中間層形成用液体に分散させるときには、無機粒子は、バインダー樹脂100質量部に対して、20質量部以上400質量部以下添加されることが好ましく、50質量部以上200質量部以下添加されることがより好ましい。
無機粒子の分散手段としては、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダーまたはホモミキサー等が挙げられるが、これらに限定されない。
中間層形成用液体からなる塗膜を乾燥させる方法としては、中間層形成用液体に含まれる溶媒の種類又は中間層102の厚さなどに応じて適宜選択されることが好ましいが、熱乾燥であることがより好ましい。
<感光層>
感光層103は、電荷発生機能と電荷輸送機能との両機能を有する単層で構成されていても良いが、電荷発生層104と電荷発生層104の上に設けられた電荷輸送層105とを有することが好ましい。感光層103が電荷発生層104と電荷輸送層105とを有することにより、電子写真感光体100の繰り返し使用に伴う残留電位の上昇を防止でき、また、電子写真特性を目的に合わせて制御できる。
(電荷発生層)
電荷発生層104は、電荷発生物質とバインダー樹脂とを含むことが好ましく、電荷発生物質がバインダー樹脂の溶液に分散されてなる分散液(電荷発生層形成用液体)を中間層102の上面に塗布して形成されることが好ましい。このような電荷発生層104の厚さは、電荷発生物質の特性、バインダー樹脂の特性又は電荷発生物質とバインダー樹脂との混合割合等により異なるため一概に言えないが、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.05μm以上3μm以下であることがより好ましい。
電荷発生物質としては、例えば、スーダンレッド又はダイアンブルー等のアゾ原料、ピレンキノン又はアントアントロン等のキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ又はチオインジゴ等のインジゴ顔料、又は、フタロシアニン顔料等が挙げられ、これらに限定されない。電荷発生物質としては、これらを単独又は公知のバインダー樹脂に分散させた形態で使用できる。
バインダー樹脂としては、公知の樹脂を使用でき、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、又は、メラミン樹脂などを使用でき、これらの樹脂のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体樹脂、又は、塩化ビニルと酢酸ビニルと無水マレイン酸との共重合体樹脂)を使用しても良い。また、バインダー樹脂としては、ポリ−ビニルカルバゾール樹脂等を使用しても良く、特に限定されない。
電荷発生物質は、バインダー樹脂100質量部に対して、1質量部以上600質量部以下添加されていることが好ましく、50質量部以上500質量部以下添加されていることがより好ましい。
電荷発生層104は、次に示す方法にしたがって形成されることが好ましい。まず、分散機を用いて、バインダー樹脂の溶液(この溶液では、バインダー樹脂が溶媒に溶解している)に電荷発生物質を分散させる。このようにして、電荷発生層形成用液体が調製される。次に、塗布機を用いて電荷発生層形成用液体を中間層102の上面に一定の厚さで塗布した後、形成された塗膜を乾燥させる。このようにして、電荷発生層104を形成できる。なお、電荷発生層形成用液体の塗布前に電荷発生層形成用液体を濾過して異物又は凝集物を濾別することが好ましい。これにより、画像欠陥の発生を防止できる。
バインダー樹脂を溶解させるための溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ピリジン、又は、ジエチルアミン等が挙げら
れるが、これらに限定されない。
電荷発生物質の分散手段としては、例えば、超音波分散機、ボールミル、サンドグラインダー、又は、ホモミキサー等が挙げられるが、これらに限定されない。
(電荷輸送層)
電荷輸送層105は、少なくとも電荷輸送物質とバインダー樹脂とを含むことが好ましく、電荷輸送物質がバインダー樹脂の溶液に溶解されてなる溶液(電荷輸送層形成用液体)を電荷発生層104の上面に塗布して形成されることが好ましい。このような電荷輸送層105の厚さは、電荷輸送物質の特性、バインダー樹脂の特性又は電荷輸送物質とバインダー樹脂との混合割合等により異なるため一概に言えないが、5μm以上40μm以下であることが好ましく、10μm以上30μm以下であることがより好ましい。
電荷輸送物質としては、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、スチリル化合物、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリ−1−ビニルピレン、又は、ポリ−9−ビニルアントラセン等が挙げられる。電荷輸送物質としては、これらを単独又は二種類以上混合して使用できる。
バインダー樹脂としては、公知の樹脂を使用でき、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、又は、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂が好ましい。耐クラック性、耐磨耗性、及び、帯電特性の観点からは、ポリカーボネート樹脂のうち、ビスフェノールA(BPA(bisphenol A))、ビスフェノールZ(BPZ(bisphenol Z))、ジメチルBPA、又は、BPAとジメチルBPAとの共重合体等がより好ましい。
電荷輸送物質は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上500質量部以下添加されていることが好ましく、20質量部以上100質量部以下添加されていることがより好ましい。電荷輸送層105は、例えば特開2000−305291号公報等に記載の公知の酸化防止剤をさらに含んでいても良い。
電荷輸送層105は、次に示す方法にしたがって形成されることが好ましい。まず、電荷輸送物質とバインダー樹脂とを溶媒に溶解させて電荷輸送層形成用液体を得る。次に、電荷輸送層形成用液体を電荷発生層104の上面に一定の厚さで塗布した後、形成された塗膜を乾燥させる。このようにして、電荷輸送層105を形成できる。
電荷輸送物質とバインダー樹脂とを溶解させる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、又は、1,3−ジオキソラン等が挙げられが、これらに限定されない。
[画像形成装置の構成、画像形成方法]
本実施形態の画像形成装置は、画像形成を繰り返し行い、静電潜像現像剤と、電子写真感光体100と、電子写真感光体100の保護層106の表面を帯電させる帯電部と、電子写真感光体100の保護層106の表面に静電潜像を形成する露光部と、静電潜像を静電潜像現像剤により現像してトナー像を形成する現像部とを備える。本実施形態の画像形成装置が電子写真感光体100を備えているので、電子写真感光体100の長寿命化を実現でき、耐久時においても画像品質を高く維持できる。
本実施形態のプロセスカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着され、画像形成を繰り返し行う。具体的には、本実施形態のプロセスカートリッジは、静電潜像現像剤と、電子写真感光体100と、電子写真感光体100の保護層106の表面を帯電させる帯電部と、電子写真感光体100の保護層106の表面に静電潜像を形成する露光部と、静電潜像を静電潜像現像剤により現像してトナー像を形成する現像部とを備える。本実施形態のプロセスカートリッジが電子写真感光体100を備えているので、電子写真感光体100の長寿命化を実現でき、耐久時においても画像品質を高く維持できる。以下、図2を参照しながら、具体的に説明する。
図2は、本実施形態の画像形成装置の構成を示す断面図である。図2に示す画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるものであり、4組の画像形成部(プロセスカートリッジ)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状の中間転写体ユニット7と、給紙搬送部21と、定着部24とを備える。装置本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
画像形成部10Yは、イエロー色の画像を形成するものである。画像形成部10Yは、ドラム状の電子写真感光体1Yの周囲に帯電部2Yと露光部3Yと現像部4Yとクリーニング部6Yとが配置されて構成され、一次転写ローラ5Yをさらに有する。
画像形成部10Mは、マゼンタ色の画像を形成するものである。画像形成部10Mは、ドラム状の電子写真感光体1Mの周囲に帯電部2Mと露光部3Mと現像部4Mとクリーニング部6Mとが配置されて構成され、一次転写ローラ5Mをさらに有する。
画像形成部10Cは、シアン色の画像を形成するものである。画像形成部10Cは、ドラム状の電子写真感光体1Cの周囲に帯電部2Cと露光部3Cと現像部4Cとクリーニング部6Cとが配置されて構成され、一次転写ローラ5Cをさらに有する。
画像形成部10Bkは、黒色画像を形成するものである。画像形成部10Bkは、ドラム状の電子写真感光体1Bkの周囲に帯電部2Bkと露光部3Bkと現像部4Bkとクリーニング部6Bkとが配置されて構成され、一次転写ローラ5Bkをさらに有する。
ドラム状の電子写真感光体1Y、ドラム状の電子写真感光体1M、ドラム状の電子写真感光体1C及びドラム状の電子写真感光体1Bkのうちの少なくとも1つとして電子写真感光体100を用いれば、上述の効果(電子写真感光体100の長寿命化を実現でき、耐久時においても画像品質を高く維持できる)が得られる。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkに形成されるトナー画像の色が異なることを除いては同様に構成されている。そのため、以下では、画像形成ユニット10Yを例に挙げて説明する。
本実施形態では、画像形成ユニット10Yにおいて、少なくとも、電子写真感光体1Yと帯電部2Yと現像部4Yとクリーニング部6Yとが一体化されている。
帯電部2Yは、電子写真感光体1Yに対して一様な電位を与えて電子写真感光体1Yの表面(例えば電子写真感光体100の保護層106の表面)を帯電(例えば負に帯電)させる。帯電部2Yは、非接触帯電方式によって電子写真感光体1Yの表面を帯電させても良いが、後述するように接触帯電方式によって電子写真感光体1Yの表面を帯電させることが好ましい。
露光部3Yは、帯電部2Yにより一様な電位が与えられた電子写真感光体1Yの表面(例えば電子写真感光体100の保護層106の表面)に対して、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、これにより、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する。露光部3Yとしては、電子写真感光体1Yの軸方向に発光素子がアレイ状に配列されて構成されたLEDと結像素子(商品名;セルフォック(登録商標)レンズ)とを備えたもの、又は、レーザ光学系などを用いることができる。
現像部4Yは、露光部3Yにより形成された静電潜像を静電潜像現像剤により現像してトナー像を形成する。用いる静電潜像現像剤は特に限定されないが、乾式現像剤であることが好ましい。
本実施形態の画像形成装置では、電子写真感光体1Yと帯電部2Yと露光部3Yと現像部4Yとクリーニング部6Yなどがプロセスカートリッジとして一体化されて構成され、このプロセスカートリッジが装置本体Aに対して着脱可能に装着されても良い。また、帯電部2Y、露光部3Y、現像部4Y、転写又は分離器、及び、クリーニング部6Yのうちの少なくとも1つが電子写真感光体1Yとともに一体に支持されてプロセスカートリッジが構成され、そのプロセスカートリッジが装置本体Aに対して着脱可能な単一画像形成ユニットに構成され、その単一画像形成ユニットが装置本体Aのレールなどの案内手段を用いて装置本体Aに対して着脱可能に装着されても良い。
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと無端ベルト状の中間転写体ユニット7とを有する筐体8は、支持レール82L、82Rにより、装置本体Aから引き出し可能に構成されている。筐体8では、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。無端ベルト状の中間転写体ユニット7は、図2において感光体1Y、1M、1C、1Bkの左側方に配置されており、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状の中間転写体70と、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkと、クリーニング部6bとを有する。
以下では、図2に示す画像形成装置を用いた画像形成方法について示す。画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkにより形成された各色の画像は、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状の中間転写体70上に逐次転写される。これにより、合成されたカラー画像が形成される。
給紙カセット20に収容された転写材(例えば普通紙、透明シートなど)Pは、給紙搬送部21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22Dとレジストローラ23とを経て、二次転写ローラ5bに搬送される。二次転写ローラ5bでは、合成されたカラー画像が転写材Pに二次転写され、よって、カラー画像が転写材Pに一括に転写される。合成されたカラー画像が転写材Pに二次転写されると、無端ベルト状の中間転写体70はその転写材Pを曲率分離する。この転写材Pは、定着部24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26に載置される。一方、中間転写体70に付着した静電潜像現像剤(残留トナー)はクリーニング部6bにより除去される。
画像形成中、一次転写ローラ5Bkは、常時、電子写真感光体1Bkの表面に当接している。一方、一次転写ローラ5Y、5M、5Cは、カラー画像形成時にのみ、対応する電子写真感光体1Y、1M、1Cの表面に当接する。また、二次転写ローラ5bは、二次転写ローラ5bを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状の中間転写体70の表面に当接する。
以下では、帯電部2Yが接触帯電方式によって電子写真感光体1Yの表面を帯電させることが好ましい理由を示す。
一般に、電子写真感光体の表面を帯電させる方式には、接触帯電方式と非接触帯電方式とが含まれる。「接触帯電方式」とは、電子写真感光体の表面に接触又は近接配置された帯電器(例えば帯電ローラ)に対して電圧を印加することによって電子写真感光体の表面を帯電させる方式である。「非接触帯電方式」とは、電子写真感光体の表面から離隔して配置された帯電器(例えばコロトロン帯電器またはスコロトロン帯電器)に対して電圧を印加することによって電子写真感光体の表面を帯電させる方式である。
接触帯電方式では、非接触帯電方式に比べて、オゾンまたはNOxなどの酸化性ガスの発生量を低減しつつ、電子写真感光体の表面を効率良く帯電させることができる。しかし、帯電時の放電量(放電エネルギー)が大きい。そのため、接触帯電方式では、放電生成物が発生し易く、電子写真感光体の表面が劣化し易い。よって、電子写真感光体の長寿命化の実現が困難となり、また、耐久時には画像品質の低下を引き起こす。
しかし、電子写真感光体1Yとして電子写真感光体100を用いれば、保護層106の硬度を長期に亘って高く維持できる。これにより、電子写真感光体100の保護層106の表面を接触帯電方式で帯電させた場合であっても、保護層106の硬度低下を防止できるので、保護層106の長寿命化を図ることができる。
それだけでなく、本実施形態では、保護層106の表面への潤滑剤の供給量が少ない場合であっても、耐久時における画像品質を高く維持できる。これにより、放電生成物が発生し易い環境下または電子写真感光体1Yの表面が劣化し易い環境下において画像形成を行った場合であっても(つまり、電子写真感光体100の保護層106の表面を接触帯電方式で帯電させた場合であっても)、耐久時における画像品質の低下を防止できる。このように、電子写真感光体1Yとして電子写真感光体100を用いれば、接触帯電方式によって電子写真感光体1Yの表面を帯電させた場合に生じる不具合の発生を抑制することができる。したがって、電子写真感光体1Yとして電子写真感光体100を用いたことにより得られる効果は、接触帯電方式によって電子写真感光体100の保護層106の表面を帯電させた場合に、より一層、顕著となる。それだけでなく、接触帯電方式によって電子写真感光体100の保護層106の表面を帯電させることができるので、電子写真感光体100の保護層106の表面を効率良く帯電させることができる。
<静電潜像現像剤>
静電潜像現像剤は、乾式現像剤であることが好ましく、一成分系の乾式現像剤であっても良いし、二成分系の乾式現像剤であっても良い。
一成分系の乾式現像剤としては、トナー粒子のみからなる非磁性現像剤であっても良いし、トナー粒子中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させた磁性現像剤であっても良い。
二成分系の乾式現像剤は、トナー粒子とキャリア(磁性粒子)とを有する。キャリアの材料としては、鉄、フェライトまたはマグネタイト等の金属を用いても良いし、これらの金属とアルミニウムまたは鉛等の金属との合金を用いても良いが、フェライトを用いることが好ましい。二成分系の乾式現像剤では、キャリア100質量部に対してトナー粒子が2〜10質量部含まれていることが好ましい。
(トナー粒子)
トナー粒子は、トナー母体粒子と外添剤とを有し、好ましくは外添剤として潤滑剤を添加して作製されたものである。これにより、現像時には、潤滑剤は、静電潜像現像剤とともに保護層106の表面へ向かって飛散し、よって、保護層106の表面へ供給されることとなる。なお、トナー母体粒子は、樹脂と着色剤とを含む。
(潤滑剤)
潤滑剤は、電子写真感光体の表面に設けられる潤滑剤として従来公知の潤滑剤であれば特に限定されず、例えば脂肪族金属塩であることが好ましい。より好ましくは、潤滑剤は、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸リチウムまたはステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸金属塩である。これにより、現像時には、保護層106の表面のうち第1構成単位が優先的に存在する部位への潤滑剤の付着がより一層容易となり、また、当該部位での潤滑剤の保持がより一層容易となる。
潤滑剤の粒径は、20μm以下であることが好ましい。これにより、画像形成を繰り返し行った場合であっても、潤滑剤が劣化し難くなる。よって、劣化した潤滑剤が保護層106の表面に残存する量を少なく抑えることができるので、クリーニング不良の発生を防止できる。また、現像時には、保護層106の表面の所望の位置(例えばクリーニング部6bの近傍)に潤滑剤を供給し易くなる。
より好ましくは、潤滑剤の粒径は0.5μm以上5μm以下である。潤滑剤の粒径が0.5μm以上であれば、トナー母体粒子に対する潤滑剤の付着力を低く抑えることができる。これにより、保護層106の表面において潤滑剤がトナー母体粒子と一緒に挙動することを抑制でき、よって、クリーニング不良の発生を防止できる。潤滑剤の粒径が5μm以下であれば、画像欠陥が発生するおそれを回避できる(画像品質のさらなる向上)。
潤滑剤の粒径とは、潤滑剤の数平均粒径を意味し、画像解析法により測定される。具体的には、走査型電子顕微鏡を用いて倍率(3万倍)でトナー粒子の写真を撮影し、得られた写真画像をスキャナーにより取り込む。画像処理解析装置(株式会社ニレコ製の商品名「LUZEX AP」を用いて、写真画像においてトナー母体粒子の表面に存在する潤滑剤粒子に対して2値化処理を行う。潤滑剤粒子の任意の100個に対して水平フェレ径を算出し、算出された水平フェレ径の平均値を潤滑剤の数平均粒径とする。
静電潜像現像剤は、潤滑剤を、トナー母体粒子100質量部に対して0.5質量部以下含むことが好ましい。これにより、現像時には、保護層106の表面へ付着される潤滑剤の量が少なく抑えられることとなる。このような場合であっても、保護層106の表面における潤滑剤の付着ムラを防止できるので、耐久時における画像品質を高く維持できる。より好ましくは、静電潜像現像剤は潤滑剤をトナー母体粒子100質量部に対して0.03質量部以上0.1質量部以下含む。例えばX線光電子分光分析法または誘導結合プラズマ発光分光分析法などにしたがって、潤滑剤の含有量を求めることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に限定されない。
[実施例1]
<電子写真感光体の製造>
次に示す方法にしたがって、電子写真感光体を作製した。まず、円筒形のアルミニウム支持体の表面に切削加工を施し、表面粗さRzが1.5(μm)である導電性支持体を用意した。
(中間層の形成)
サンドミルに、ポリアミド樹脂(バインダー樹脂、ダイセル・エボニック株式会社製の品番「X1010」)1質量部と、酸化チタン粒子(テイカ株式会社製の品番「SMT500SAS」)1.1質量部と、エタノール(溶媒)20質量部とを入れ、バッチ式で10時間、分散させた。このようにして、中間層形成用液体を得た。
中間層形成用液体からなる膜を、浸漬塗布法により導電性支持体の上面に形成した後、110℃で20分乾燥させた。このようにして、導電性支持体の上面に、厚さ(乾燥後の厚さ)が2μmである中間層が形成された。
(電荷発生層の形成)
サンドミルに、チタニルフタロシアニン顔料(電荷発生物質、特性X線(Cu−Kα線)を用いたX線回折スペクトルの測定により、少なくとも2θ=27.3°の位置に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料)20質量部と、ポリビニルブチラール樹脂(バインダー樹脂、電気化学工業株式会社製の品番「#6000−C」)10質量部と、酢酸t−ブチル(溶媒)700質量部と、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン(溶媒)300質量部とを入れ、10時間、分散させた。このようにして、電荷発生層形成用液体を得た。
電荷発生層形成用液体からなる膜を、浸漬塗布法により中間層の上面に形成した後、乾燥させた。このようにして、中間層の上面に、厚さ(乾燥後の厚さ)が0.3μmである電荷発生層が形成された。
(電荷輸送層の形成)
サンドミルに、下記化学式(6)で表される化合物(電荷輸送物質)150質量部と、ポリカーボネート樹脂(バインダー樹脂、三菱ガス化学株式会社製の品番「Z300」)300質量部と、酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製の品番「Irganox(登録商標)1010」)6質量部と、トルエンとテトラヒドロフランとの混合溶媒((トルエン):(テトラヒドロフラン)=1:9(体積比))2000質量部と、シリコーンオイル(添加剤、信越化学工業株式会社製の品番「KF−54」)1質量部とを入れ、電荷輸送物質とバインダー樹脂とを上記混合溶媒に溶解させた。このようにして、電荷輸送層形成用液体を得た。
電荷輸送層形成用液体からなる膜を、浸漬塗布法により電荷発生層の上面に形成した後、110℃で60分乾燥させた。このようにして、電荷発生層の上面に、厚さ(乾燥後の厚さ)が20μmである電荷輸送層が形成された。
(保護層の形成)
サンドミルに、第1連鎖重合性化合物(上記化学式(2)で表される化合物)120モル部と、第2連鎖重合性化合物(共栄社化学株式会社製の品番「ライトエステルTNP」)100モル部と、酸化スズ粒子(CIKナノテック株式会社製、数平均一次粒子径:20nm、体積抵抗率:1.05×105(Ω・cm))20モル部と、2−ブタノン(溶媒)510モル部とを入れて、10時間、分散させた。
次に、上記サンドミルに、テトラヒドロフラン0.3モル部と2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)1−ブタノン(光重合開始剤、BASF株式会社製の品番「Irgacure 369」)12.5モル部とをさらに入れて、遮光下で混合且つ撹拌した。このようにして、保護層形成用液体を得た。なお、後述のメタルハライドランプからの光を保護層形成用液体に照射するまでは、保護層形成用液体を遮光下で取り扱った。
次に、円形スライドホッパー塗布機を用いて、電荷輸送層の上面に保護層形成用液体を塗布した。形成された塗膜を室温にて20分乾燥させた。その後、塗膜が形成された構造体(導電性支持体の上に中間層と感光層とが順に形成されて構成された構造体)を回転させながら、メタルハライドランプ(出力が500W)からの光を塗膜の表面から100mm離れた位置から塗膜に対して1分間、照射した。このようにして厚さ(乾燥後の厚さ)が3μmの保護層が形成され、よって、本実施例の電子写真感光体が得られた。
<静電潜像現像剤の製造>
(1) トナー母体粒子(着色粒子)の形成
(1−1) コア部用樹脂微粒子の作製
下記に示す第1段重合、第2段重合及び第3段重合を経て、多層構造を有するコア部用樹脂微粒子を作製した。
(a) 第1段重合(第1樹脂微粒子の作製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置が取り付けられた反応容器(容積:5L)に、第1界面活性剤溶液(第1界面活性剤溶液では、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部がイオン交換水3040質量部に溶解されていた)を入れた。窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、第1界面活性剤溶液を80℃に加温させた。
第1界面活性剤溶液に第1重合開始剤溶液(第1重合開始剤溶液では、重合開始剤(過硫酸カリウム(KPS))10質量部がイオン交換水400質量部に溶解されていた)を添加し、温度を75℃とした。得られた混合液に対してスチレン532質量部とn−ブチルアクリレート200質量部とメタクリル酸68質量部とn−オクチルメルカプタン16.4質量部とからなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、75℃で2時間、撹拌した。このようにして第1段重合が行われ、第1樹脂微粒子(質量平均分子量(Mw):16500)が得られた。
次に示す方法にしたがって、第1樹脂微粒子のMwを測定した。まず、室温において、超音波分散機を用いて5分間、分散処理を行うことによって、測定試料をテトラヒドロフランに溶解させた(濃度:1mg/ml)。得られた溶液に対して、ポアサイズが0.2μmであるメンブランフィルターを用いて濾過処理を行った。このようにして試料溶液を得た。
次に、カラム(東ソー株式会社製の商品名「HLC−8220」)とカラム(東ソー株式会社製の商品名「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM−M3連」)とを準備した。テトラヒドロフラン(THF、キャリア溶媒)とともに10μlの試料溶液をカラムに注入し、この試料溶液をテトラヒドロフランとともに流速0.2ml/minでカラムに流した。このとき、カラムの温度は40℃に保持されていた。検出器としては、示差屈折率検出器(RI検出器)を用いた。得られた結果と検量線(下記参照)とを用いて測定試料の分子量分布を算出した。
分子量が6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×106、8.6×105、2×106、および、4.48×106であるポリエステル樹脂(標準試料、Pressure Chemical社製)に対しても同様の方法で測定を行い、得られた結果を用いて検量線を作成した。
(b) 第2段重合(第2樹脂微粒子の作製、中間層の形成)
撹拌装置が取り付けられたフラスコ内において、スチレン101.1質量部とn−ブチルアクリレート62.2質量部とメタクリル酸12.3質量部とn−オクチルメルカプタン1.75質量部とからなる単量体混合液に、パラフィンワックス(離型剤、日本精蝋株式会社製の商品名「HNP−57」)93.8質量部を添加した。その後、90℃に加温して固形分を溶解させた(パラフィンワックスを含む単量体混合液の調製)。
また、第2界面活性剤溶液(第2界面活性剤溶液では、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部がイオン交換水1560質量部に溶解されている)を98℃に加熱した。この第2界面活性剤溶液に第1樹脂微粒子32.8質量部(固形分換算)を添加した(第1樹脂微粒子を含む第2界面活性剤溶液の調製)。
循環経路を有する機械式高速撹拌分散機(エム・テクニック株式会社製の商品名「クレアミックス」)を用いて、パラフィンワックスを含む単量体混合液と第1樹脂微粒子を含む第2界面活性剤溶液とを8時間に亘って混合した。このようにして乳化粒子(粒径が340nmである)を含む乳化液が得られた。この乳化液に対して第2重合開始剤溶液(第2重合開始剤溶液では、過硫酸カリウム6質量部がイオン交換水200質量部に溶解されていた)を添加し、98℃で12時間、撹拌した。このようにして第2段重合が行われ、第2樹脂微粒子(Mw:23000)が得られた。
(c) 第3段重合(コア部用樹脂微粒子の作製、外層の形成)
上記第2樹脂微粒子に第3重合開始剤溶液(第3重合開始剤溶液では、過硫酸カリウム5.45質量部がイオン交換水220質量部に溶解されていた)を添加した。得られた分散液に対して、80℃で、スチレン293.8質量部とn−ブチルアクリレート154.1質量部とn−オクチルメルカプタン7.08質量部とからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間に亘って加熱且つ撹拌を行った(第3段重合)。その後、28℃まで冷却した。このようにしてコア部用樹脂微粒子(Mw:26800、体積平均粒径:125nm、ガラス転移点(Tg):28.1℃)を得た。
(1−2) シェル層用樹脂微粒子の作製
スチレンの配合量を548質量部に変更し、n−ブチルアクリレートの配合量を156質量部に変更し、メタクリル酸の配合量を96質量部に変更し、n−オクチルメルカプタンの配合量を16.5質量部に変更したことを除いては上記「 (a) 第1段重合(第1樹脂微粒子の作製)」に記載の方法にしたがって、シェル層用樹脂微粒子(Tg:53℃)を作製した。
(1−3) 着色剤微粒子の分散液の調製
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、この溶液に対してカーボンブラック(キャボット社製の商品名「リーガル330R」)420質量部を徐々に添加した。得られた分散液に対して機械式高速撹拌分散機(エム・テクニック株式会社製の商品名「クレアミックス」)を用いて分散処理を行った。このようにして、着色剤微粒子の分散液を得た。電気泳動光散乱光度計(大塚電子株式会社杜製の商品名「ELS−800」)を用いて、着色剤微粒子の分散液に含まれる着色剤微粒子の粒子径を測定したところ、110nmであった。
(1−4) トナー母体粒子の作製
(a) コア部の形成
温度センサー、冷却管、窒素導入装置および撹拌装置が取り付けられた反応容器に、コア部用樹脂微粒子420質量部(固形分換算)とイオン交換水900質量部と着色剤微粒子の分散液100質量部とを入れて撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整した後、上記反応容器に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液をさらに加えてpHを8〜11の範囲内に調整した。
得られた分散液に対して、塩化マグネシウム・六水和物60質量部がイオン交換水60質量部に溶解されて構成された水溶液を、30℃において、撹拌しながら10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、80分間かけて80℃(コア部形成温度)にまで昇温させた。その状態で粒度分布測定装置(コールター社製の商品名「コールターマルチサイザー3」)を用いて分散液に含まれる粒子の粒径を測定した。かかる粒子のメジアン径D50(体積基準で測定したときのメジアン径)が5.8μmに達した時点で、塩化ナトリウム40.2質量部がイオン交換水1000質量部に溶解されて構成された水溶液を添加し、かかる粒子の成長を停止させた。さらに、液温度を80℃(コア部熟成温度)として1時間にわたり撹拌することによって融着を継続させた(熟成処理)。このようにしてコア部が形成された。
なお、円形度測定装置(シスメックス株式会社製の商品名「FPIA−2100」)を用いてコア部の円形度を測定したところ、0.930であった。また、電界放出形走査電子顕微鏡(日本電子株式会社製の商品名「JSM−7401F」)を用いて走査透過電子顕微鏡法にてコア部を高倍率(10000倍)にて観察したところ、着色剤が結着樹脂に溶解されていることが確認され、また、着色剤微粒子が残存していないことが確認された。
(b) シェル層の形成
65℃において、上記熟成処理がなされた分散液に対し、シェル層用樹脂微粒子46.8質量部(固形分換算)を添加し、塩化マグネシウム・六水和物2質量部がイオン交換水60質量部に溶解されて構成された水溶液を10分間かけて更に添加した。80℃(シェル化温度)まで昇温した後、1時間に亘って撹拌を継続した。このようにして、コア部の表面にシェル層用樹脂微粒子が融着された。この粒子の円形度が所定の値をとるまで、80℃(シェル熟成温度)において、熟成処理を行った。このようにして、コア部の表面にシェル層が形成された。
(c) トナー母体粒子の形成
塩化ナトリウム40.2質量部がイオン交換水1000質量部に溶解されて構成された水溶液をさらに加えた後、8℃/分の降温条件で30℃まで冷却した。得られた融着粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄し、40℃の温風で乾燥させた。これにより、トナー母体粒子(メジアン径D50:5.9μm、Tg:31℃)を得た。
(2) 外添剤の添加(トナー粒子の製造)
トナー母体粒子100質量部に、ステアリン酸亜鉛粒子(平均分子量:1000、ヒドロキシ価:33、粒径:1μm)0.075質量部と負帯電性シリカ(日本アエロジル株式会社製の商品名「RX−200」)1質量部と負帯電性シリカ(日本アエロジル株式会社製の商品名「NX90」)1質量部とを添加した。この混合物に対して、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用い回転翼周速を35m/secとし処理温度を32℃として20分間、混合処理を行った。その後、目開きが45μmのふるいを用いて粗大粒子を除去した。このようにしてトナー粒子を得た。
(3) 静電潜像現像剤の製造
得られたトナー粒子に、数平均一次粒子径が60μmであるフェライトキャリアを混合した。このようにして、トナー粒子の濃度が4質量%である静電潜像現像剤が得られた。
<評価>
(評価用画像形成装置の準備)
画像形成装置(コニカミノルタビジネスソリューションズ株式会社製の品番「bizhub C353」)の電子写真感光体として本実施例の電子写真感光体を搭載し、画像形成ユニットの帯電方式を接触帯電方式に変更した。このようにして得られた画像形成装置を用いて以下に示す評価を行った。
(潤滑剤メモリ)
評価用画像形成装置を用いてA3用紙10万枚に対して印字率が5%相当である文字チャートの印刷を連続して行った。その後、A3用紙100枚に対して図3に示すチャートの印刷を行った。図3に示すチャートでは、斜線が付された領域はトナー粒子が定着される領域であり、それ以外の領域はトナー粒子が定着されない領域である。その後、A3用紙に対してハーフトーン画像の印刷を行い、得られたハーフトーン画像の画質を評価した。結果を表1に示す。
表1では、ハーフトーン画像の品質の劣化がほとんど確認されなかった場合には「A1」と記し、ハーフトーン画像の品質の劣化が若干、確認された場合には「B1」と記し、ハーフトーン画像の品質の劣化が明らかに確認された場合には「C1」と記す。
ハーフトーン画像の品質の劣化が確認されなければ、耐久時においても画像品質が高く維持されていると考えられ、よって、潤滑剤が電子写真感光体の保護層の表面に均一に存在していると考えられる。つまり、潤滑剤メモリの発生が防止されていると言える。ここで、「潤滑剤メモリの発生が防止されている」とは、電子写真感光体の保護層の表面において潤滑剤が均一に存在していることを意味する。
(転写メモリの発生に起因するハーフトーン画像ムラ)
評価用画像形成装置を用いてA3用紙10万枚に対して印字率が5%相当である文字チャートの印刷を連続して行った。その後、A3用紙に対して図4に示すチャートの印刷を行って、ハーフトーン画像(図4参照)の画質を評価した。結果を表1に示す。
表1では、ハーフトーン画像の品質の劣化がほとんど確認されなかった場合には「A2」と記し、ハーフトーン画像の品質の劣化が若干、確認された場合には「B2」と記し、ハーフトーン画像の品質の劣化が著しかった場合には「C2」と記す。
転写メモリが発生すると、ハーフトーン画像にはソリッド画像(図4参照)の一部または全部が存在することとなるので、ハーフトーン画像の品質が劣化する。一方、転写メモリの発生が防止されていれば、ハーフトーン画像にはソリッド画像が存在しないこととなるので、ハーフトーン画像が明瞭に再現されることとなる(ハーフトーン画像の品質の劣化防止)。よって、ハーフトーン画像の品質の劣化が確認されなければ、転写メモリの発生が抑制されていると言える。なお、「転写メモリ」とは、前周回において露光された部分の電位(明電位)が残留し、次の周回における帯電工程を経ても、かかる部分(明電位が残留している部分)においては所望する帯電電位(暗電位)を得ることができない現象を意味する。
(画像流れに起因するハーフトーン画像ムラ)
高温高湿(温度30℃、相対湿度(relative humidity)85%)の環境下で、評価用画像形成装置を用いてA3用紙2000枚に対して印字率が5%相当である文字チャートの印刷を連続して行った。その後、A3用紙1枚に対してハーフトーン画像(参照用ハーフトーン画像)を印刷した。
評価用画像形成装置の電源を切り、8時間放置した後、その評価用画像形成装置の電源を再び入れた。A3用紙20枚に対してハーフトーン画像の印刷を連続して行った。印刷されたハーフトーン画像を目視にて観察し、その品質が参照用ハーフトーン画像の品質に回復するまでに要した用紙の枚数を数えた。結果を表1に示す。
表1では、ハーフトーン画像の品質が参照用ハーフトーン画像の品質に回復するまでに要した用紙の枚数が3枚以下であった場合には「A3」と記し、回復に要した用紙の枚数が4枚以上7枚以下であった場合には「B3」と記し、回復に要した用紙の枚数が8枚以上10枚以下であった場合には「C3」と記し、回復に要した用紙の枚数が11枚以上であった場合には「D3」と記す。
ハーフトーン画像の品質が参照用ハーフトーン画像の品質に回復するまでに要した用紙の枚数が少なければ少ないほど、画像流れが防止されているので、電子写真感光体の表面における放電生成物などの異物の付着量が少なく抑えられている、と言える。本発明者らは、回復に要した用紙の枚数が7枚以下であれば、電子写真感光体の表面における上記異物の付着が効果的に抑制されている、と考えている。その理由を以下に示す。通常、画像形成装置の電源を入れたときに実施される画像安定化のための電子写真感光体の回転数が、A3用紙7枚の印刷印字に相当する。よって、回復に要した用紙の枚数が7枚以下であれば、一枚目の印刷においても画像流れに起因する画像品質の低下を防止できることとなる。
(耐久に起因するハーフトーン画像ムラ)
評価用画像形成装置を用いてA3用紙10万枚に対して印字率が5%相当である文字チャートの印刷を連続して行った後、A3用紙1枚に対してハーフトーン画像の印刷を行った。評価用画像形成装置に搭載されている電子写真感光体の表面を目視にて観察した。また、印刷されたハーフトーン画像における画像欠陥の有無を調べた。さらには、電子写真感光体の表面の状態とハーフトーン画像における画像欠陥の有無との相関性を調べた。結果を表1に示す。
表1では、電子写真感光体の表面にはスジの発生およびフィルミング(例えば、静電潜像現像剤の残存または外添剤の残存)の発生が確認されず、また、印刷されたハーフトーン画像には画像欠陥の発生が確認されなかった場合には、「A4」と記す。電子写真感光体の表面にはスジの発生および上記フィルミングの発生が確認されたが、それに相関する画像欠陥の発生がハーフトーン画像に確認されなかった場合には、「B4」と記す。電子写真感光体の表面にはスジの発生および上記フィルミングの発生が確認され、それに相関する画像欠陥の発生がハーフトーン画像に確認された場合には、「C4」と記す。電子写真感光体の表面にスジの発生および上記フィルミングの発生が確認されなければ、電子写真感光体の保護層の硬度が高いと言える。
[実施例2〜10および比較例1〜4]
電荷輸送性構造を有する化合物と潤滑剤とを表1に示すように変更したことを除いては実施例1に記載の方法にしたがって評価を行った。結果を表1に示す。
<結果と考察>
表1において、化学式(2)〜(5)は、それぞれ、上記化学式(2)〜(5)で表される化合物を意味する。化学式(7)は、下記化学式(7)で表される化合物を意味する。「配合量(モル)*11」には、第2連鎖重合性化合物の配合量を100モルとした場合の第1連鎖重合性化合物の配合量または下記化学式(7)で表される化合物の配合量(モル)を記す。「配合量(質量部)*12」には、トナー母体粒子の配合量を100質量部とした場合の潤滑剤の配合量(質量部)を記す。
また、表1において、「ZnSt*13」はステアリン酸亜鉛を意味し、「CaSt*14」はステアリン酸カルシウムを意味する。
比較例1では、転写メモリの発生に起因するハーフトーン画像ムラが発生し、画像流れに起因するハーフトーン画像ムラが発生し、耐久に起因するハーフトーン画像ムラが発生した。このような結果が得られた理由として次に示すことが考えられる。
トナー母体粒子には潤滑剤が外添されていない。そのため、放電生成物などの異物が電子写真感光体の保護層の表面に付着する。よって、転写メモリの発生を引き起こし、その結果、転写メモリの発生に起因するハーフトーン画像ムラが発生した。
また、放電生成物は空気中の水分と結合し易く、また、この結合によって抵抗低下を引き起こす。よって、放電生成物が保護層の表面に付着した電子写真感光体では、高温高湿環境下においては、潜像電荷が維持され難い。よって、画像流れの発生を引き起こし、その結果、画像流れに起因するハーフトーン画像ムラが発生した。
さらに、電荷輸送性構造を有する化合物としては、連鎖重合性官能基を有さない化合物(上記化学式(7)で表される化合物)を用いている。そのため、電荷輸送性構造を有する化合物と第2連鎖重合性化合物との混合物に対して硬化処理を行っても、電荷輸送性構造を有する化合物は第2連鎖重合性化合物に結合されない。よって、電子写真感光体の保護層の硬度を高めることが難しく、したがって、耐久に起因するハーフトーン画像ムラが発生した。
比較例2では、潤滑剤メモリが発生し、転写メモリの発生に起因するハーフトーン画像ムラが発生し、画像流れに起因するハーフトーン画像ムラが発生し、耐久に起因するハーフトーン画像ムラが発生した。このような結果が得られた理由として次に示すことが考えられる。
電荷輸送性構造を有する化合物としては、連鎖重合性官能基を有さない化合物(上記化学式(7)で表される化合物)を用いている。そのため、電荷輸送性構造を有する化合物に対して潤滑剤を付着させることが難しく、よって、保護層の表面における潤滑剤の付着位置を制御することが難しい。したがって、潤滑剤メモリが発生した。そして、潤滑剤メモリが発生したために、転写メモリが発生し、その結果、転写メモリの発生に起因するハーフトーン画像ムラが発生した。また、潤滑剤メモリが発生したために、画像流れに起因するハーフトーン画像ムラとが発生した。
また、比較例1と同様の理由から、比較例2においても耐久に起因するハーフトーン画像ムラが発生した。
比較例3では、潤滑剤メモリが発生し、転写メモリの発生に起因するハーフトーン画像ムラが発生し、画像流れに起因するハーフトーン画像ムラが発生し、耐久に起因するハーフトーン画像ムラが発生した。このような結果が得られた理由として次に示すことが考えられる。
電荷輸送性構造を有する化合物としては、第1連鎖重合性化合物を用いている(上記化学式(2)で表される化合物)。しかし、第1連鎖重合性化合物の配合量(モル)は、第2連鎖重合性化合物の配合量(モル)よりも少ない。そのため、電子写真感光体の保護層の表面において、第1連鎖重合性化合物に由来する第1構成単位を均一に設けることが難しく、よって、潤滑剤を均一に設けることが難しい。したがって、潤滑剤メモリが発生した。そして、潤滑剤メモリが発生したために、転写メモリが発生し、その結果、転写メモリの発生に起因するハーフトーン画像ムラが発生した。また、潤滑剤メモリが発生したために、画像流れに起因するハーフトーン画像ムラとが発生した。
また、第1連鎖重合性化合物の配合量(モル)が第2連鎖重合性化合物の配合量(モル)よりも少ないので、電子写真感光体の保護層の硬度低下を引き起こす。そのため、耐久に起因するハーフトーン画像ムラが発生した。
比較例3と比較例4とでは、潤滑剤の粒径のみを異にするが、同様の結果が得られた。この結果から、潤滑剤の粒径の最適化よりも、第1連鎖重合性化合物の配合量(モル)と第2連鎖重合性化合物の配合量(モル)との大小関係の最適化の方が、潤滑剤メモリの発生を防止でき、転写メモリの発生に起因するハーフトーン画像ムラの発生を効果的に防止でき、画像流れに起因するハーフトーン画像ムラの発生を効果的に防止でき、耐久に起因するハーフトーン画像ムラの発生を効果的に防止できることが分かった。
一方、実施例1〜10では、電荷輸送性構造を有する化合物は連鎖重合性官能基を有するので第1連鎖重合性化合物に相当し、また、第1連鎖重合性化合物の配合量(モル)は第2連鎖重合性化合物の配合量(モル)以上である。よって、潤滑剤メモリの発生、転写メモリの発生に起因するハーフトーン画像ムラの発生、画像流れに起因するハーフトーン画像ムラの発生、および、耐久に起因するハーフトーン画像ムラの発生が防止された。
また、実施例1〜10では、潤滑剤はトナー母体粒子100質量部に対して0.5質量部以下含まれているに過ぎず、よって、電子写真感光体の保護層の表面への潤滑剤の供給量は少ないと考えられる。このような場合であっても、潤滑剤メモリの発生の防止、転写メモリの発生に起因するハーフトーン画像ムラの発生の防止、画像流れに起因するハーフトーン画像ムラの発生の防止、および、耐久に起因するハーフトーン画像ムラの発生の防止が確認された。
実施例1〜8および10では、実施例9に比べて、転写メモリの発生に起因するハーフトーン画像ムラの発生がより一層防止された。この結果から、潤滑剤の粒径は5μm以下であることが好ましいことが分かった。
実施例1、2、4、5および10では、実施例3および6〜9に比べて、画像流れに起因するハーフトーン画像ムラの発生がより一層防止された。この結果から、第1連鎖重合性化合物としては上記化学式(2)または(4)で表される化合物を用いることが好ましいことが分かった。つまり、第1連鎖重合性化合物に含まれるアリール基の置換基(連鎖重合性官能基を含む置換基)としてはアクリロイル基よりもメタクリロイル基の方が好ましいことが分かった。
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。