JP6922679B2 - 電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、電子写真画像形成方法及び電子写真画像形成装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、これらの二つの機能はトレードオフの傾向があり、例えば、アルミナで表面処理した酸化チタン粒子を含有する中間層(例えば、特許文献1参照。)は、熱励起キャリアのブロック性能に優れ、黒ポチが発生しないが、負電荷の導電性支持体への輸送性能が不十分であり、画像メモリーが発生しやすい。
一方、無機絶縁膜で表面処理をしていない酸化チタン粒子を含有する中間層(例えば、特許文献2参照。)は、負電荷の輸送性能は高く、画像メモリーは発生しないが、熱励起キャリアのブロック性能に欠けるため、高温高湿環境下での白ベタ印刷時に黒ポチが発生しやすい。
このように、従来の酸化物半導体粒子を含有する中間層では、画像メモリーの発生防止と黒ポチの発生防止を充分なレベルで両立するには至らなかった。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.導電性支持体上に少なくとも、中間層、電荷発生層及び電荷輸送層がこの順に積層された電子写真感光体であって、
前記中間層が、第2族元素の原子をドープした酸化チタン粒子を含有することを特徴とする電子写真感光体。
チタン化合物に対して、第2族元素の化合物を添加して、前記第2族元素の原子をドープした前記酸化チタン粒子を形成する工程を有することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
黒ポチの発生原因の一つとして、電荷発生材料の熱励起キャリアを挙げることができる。
すなわち、感光体表面が負に帯電しているとき、電荷発生材料の熱励起キャリアは内部電場により電荷分離し、電荷発生材料が負に帯電し、電荷輸送材料が正に帯電する。この負電荷は、電荷発生材料のHOMO−LUMOギャップ間に存在する不純物準位にトラップされていると考えられる。電荷発生材料の不純物準位にトラップされた電子が、酸化チタンのドナー準位に存在するホールと再結合したとき、電荷輸送材料側に電荷分離したホールは再結合の相手を失い、感光体の内部電場によって感光体表面まで移動して感光体表面の負電荷をキャンセルする。
電荷発生層は微粒子分散系であるため、トラップ密度の高い特異点が局所的に存在すると考えられる。このような特異点では上記のプロセスが繰り返し発生し、結果として局所的な表面電位の低下による黒ポチ発生の原因となる。
そこで、以下のようなメカニズムにしたがい、酸化チタンのドナー準位に存在するホールの密度を減らせば、電荷発生材料の熱励起キャリアによる黒ポチ発生を防止できると考えた。
酸化チタン粒子の酸素欠損サイトには2個の電子がトラップされており、この電子が酸化チタンの伝導帯直下にドナー準位を形成する。このドナー準位に存在する電子対のうち一つが、酸化チタンの伝導電子帯へ熱励起されると、ドナー準位にホールが発生する。
ここで、酸化チタン粒子のTi4+サイトの一部を2価のカチオンで置換すると(第2族元素の原子でドープすると)、電荷のバランスが変わって酸素欠損サイトに存在していた電子が相殺されるため、酸化チタンのドナー準位に存在する電子密度が減少し、これに伴い酸化チタンのドナー準位に存在するホールの密度も減少する。第2族元素は、Ti4+と同じくd0配置となる2価のカチオンを与えるので、この目的でのドープ原子として適している。
上記のように酸化チタンのドナー準位に存在するホールの密度が減少することで、電荷発生材料の不純物準位にトラップされた電子が、電荷輸送材料側に電荷分離したホールと、内部で再結合する。その結果、感光体表面は負に帯電した状態のまま、電位が下がることが防止され、黒ポチの発生が防止される。
また、本発明の第2族元素の原子をドープした酸化チタン粒子は、ドープしていない酸化チタン粒子と同等のN型半導体としての電荷輸送性能を示すため、中間層の残留電荷が少なくなり、長期間にわたって画像メモリー発生が防止される。
この特徴は、本実施形態に係る発明に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の電子写真感光体は、電子写真画像形成方法や電子写真画像形成装置に好適に用いられる。
本発明の電子写真感光体(以下、単に「感光体」ともいう。)は、導電性支持体上に少なくとも、中間層、電荷発生層及び電荷輸送層がこの順に積層された電子写真感光体であって、前記中間層が、第2族元素の原子をドープした酸化チタン粒子を含有することを特徴とする。
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に、中間層、電荷発生層、電荷輸送層及び保護層がこの順に積層されてなり、電荷発生層及び電荷輸送層から感光層が構成されていることが好ましい。
本発明に係る第2族元素の原子をドープした酸化チタンは、酸化チタン結晶格子中のチタン原子の一部が第2族元素の原子で置換されているものを指す。
本発明に係る第2族元素の原子をドープした酸化チタン粒子は、ドープ処理を行っていない酸化チタン粒子(ルチル、アナターゼ等)と同一のX線回折パターンを示すことから、酸化チタンの結晶格子構造を維持したまま、チタン原子の一部が第2族元素の原子で置換されていると言える。
また、本発明に係る第2族元素の原子をドープした酸化チタン粒子は、第2族元素の酸化物に起因するX線回折のピークを示さないので、第2族元素の酸化物粒子と酸化チタン粒子の混合物と区別することができる。
第2族元素の原子をチタン原子に対して0.0001以上の割合でドープした酸化チタン粒子を用いると、酸化チタンのドナー準位に存在するホールの密度が減少し、黒ポチ発生防止につながる。また、第2族元素の原子をチタン原子に対して0.1以下の割合でドープした酸化チタン粒子を用いると、ドープしていない酸化チタンと同型の結晶格子構造を維持する傾向が強く、ドープしていない酸化チタンと同等のN型半導体としての電荷輸送性能を示し、画像メモリー発生防止につながる。
中間層は、感光層で生成した電子を導電性支持体側へ輸送する機能(電子輸送機能)と、導電性支持体から感光層への正孔の注入を防止する機能(ブロッキング機能)を有するものであり、導電性支持体と有機感光層との間に接着機能とを付与するものである。
中間層は、バインダー樹脂(以下、「中間層用バインダー樹脂」ともいう。)中に、本発明に係る第2族元素の原子をドープした酸化チタン粒子を含む各種金属酸化物微粒子等の無機微粒子が含有されてなるものである。
前記第2族元素の原子をドープした酸化チタン粒子以外に、その他の金属酸化物微粒子が含まれていてもよい。
その他の金属酸化物微粒子としては特に制限はなく、例えば、酸化亜鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、シリカ(酸化ケイ素)、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウムなどの金属酸化物微粒子、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウムなどの微粒子を用いることができる。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
このような無機微粒子の平均粒径は好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
導電性支持体は、中間層、感光層及び保護層を支持し、かつ、導電性を有する部材である。
導電性支持体の例には、金属製のドラム又はシートと、ラミネートされた金属箔を有するプラスチックフィルムと、蒸着された導電性物質の層を有するプラスチックフィルムと、導電性物質又は導電性物質及びバインダー樹脂からなる塗料を塗布してなる導電層を有する金属部材、プラスチックフィルム、又は紙と、が含まれる。
金属の例には、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛及びステンレス鋼が含まれる。
導電性物質の例には、上記金属、酸化インジウム及び酸化スズが含まれる。加工性、堅牢性及び軽量性の観点からは、上記金属は、アルミニウムであることが好ましい。
感光層は、後述する露光により所期の画像に対応する静電潜像を上記感光体の表面に形成するための層である。
感光層は、例えば、電荷発生層用のバインダー樹脂及び電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送層用のバインダー樹脂及び電荷輸送物質を含有する電荷輸送層との積層物により構成されうる。
電荷発生層用のバインダー樹脂としては、電荷発生層用のバインダー樹脂として用いられている公知の樹脂を使用することができる。
電荷発生層用のバインダー樹脂の例には、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂及びフェノキシ樹脂が含まれる。電荷発生層用のバインダー樹脂は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
また、上記観点から、当該チタニルフタロシアニン化合物は、CuKα線によるX線回折において、ブラッグ角(2θ±0.2)27.3°に最大ピークを有し、7.4°、9.7°及び24.2°に明瞭な回折ピークを有するY型チタニルフタロシアニン化合物、又はブラッグ角8.3°、24.7°、25.1°及び26.5°に明瞭な回折ピークを有する2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンであることが好ましい。
電荷輸送層用のバインダー樹脂としては、電荷輸送層用のバインダー樹脂として用いられている公知の樹脂を使用することができる。電荷輸送層用のバインダー樹脂の例には、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、これらの樹脂の繰り返し単位のうち2以上を有する共重合樹脂などの絶縁性樹脂;及びポリ−N−ビニルカルバゾールなどの有機半導体が含まれる。電荷発生物質の分散性を高め、上記感光体の特性を高める観点からは、電荷輸送層用のバインダー樹脂は、ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。電荷輸送層用のバインダー樹脂は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
感光層の厚さは、10〜50μmの範囲内が好ましく、20〜40μmの範囲内であることがより好ましい。
保護層は、感光層を保護するための層である。
保護層は、感光層の上に配置されるとともに感光体の表面を構成する。保護層は、例えば、保護層用のバインダー樹脂と、保護層用の金属酸化物粒子と、保護層用の電荷輸送物質とを含む。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリロイル基」は、ラジカル重合性官能基であり、アクリロイル基(CH2=CHCO−)及びメタクリロイル基(CH2=C(CH3)CO−)の一方又は両方を意味する。
当該ラジカル反応性官能基は、(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
表面処理剤の例には、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、無機酸化物、フッ素変性シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤及びフッ素系グラフトポリマーが含まれる。表面処理剤は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
S−2:CH2=CHSi(OCH3)3
S−3:CH2=CHSiCl3
S−4:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S−5:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OCH3)3
S−6:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OC2H5)(OCH3)2
S−7:CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3
S−8:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S−9:CH2=CHCOO(CH2)2SiCl3
S−10:CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S−11:CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3
S−12:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S−13:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(OCH3)3
S−14:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2
S−15:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3
S−16:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S−17:CH2=C(CH3)COO(CH2)2SiCl3
S−18:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S−19:CH2=C(CH3)COO(CH2)3SiCl3
S−20:CH2=CHSi(C2H5)(OCH3)2
S−21:CH2=C(CH3)Si(OCH3)3
S−22:CH2=C(CH3)Si(OC2H5)3
S−23:CH2=CHSi(OCH3)3
S−24:CH2=C(CH3)Si(CH3)(OCH3)2
S−25:CH2=CHSi(CH3)Cl2
S−26:CH2=CHCOOSi(OCH3)3
S−27:CH2=CHCOOSi(OC2H5)3
S−28:CH2=C(CH3)COOSi(OCH3)3
S−29:CH2=C(CH3)COOSi(OC2H5)3
S−30:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OC2H5)3
上記処理量は、上記保護層用の金属酸化物粒子の数平均一次粒径及び表面処理剤の種類に応じて適宜調整されうる。
保護層用の電荷輸送物質は、保護層に電荷輸送能を付与する化合物である。保護層用の電荷輸送物質は、当該機能を発揮できればよく、公知の化合物から適宜選択されうる。例えば、保護層が、上記ラジカル重合性組成物の紫外線による重合硬化膜により構成されている場合には、保護層用の電荷輸送物質は、紫外線に対して吸収が小さいか、又は紫外線を吸収しない化合物であることが好ましい。
保護層用の電荷輸送物質は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
k、p及びnは、1〜5の整数を表し、かつ、mは1〜4の整数を表す。k、p、m及びnが2以上である場合は、複数の基は互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
保護層用の電荷輸送物質の含有量が20質量部以上であることは、所期の電気特性を得て、画像メモリーの発生を抑制する観点から好ましい。保護層用の電荷輸送物質の含有量が100質量部以下であることは、所期の膜強度を得る観点から好ましい。保護層用の電荷輸送物質の含有量は、保護層の所期の膜強度及び電気特性に応じて適宜調整されうる。
フッ素樹脂は、四フッ化エチレン樹脂又はフッ化ビニリデン樹脂であることが好ましい。滑剤粒子は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
本発明の電子写真感光体の製造方法は、チタン化合物に対して、第2族元素の化合物を添加して、前記第2族元素の原子をドープした前記酸化チタン粒子を形成する工程を有することを特徴とする。具体的には、(1)前記酸化チタン粒子を形成する工程、(2)前記酸化チタン粒子を用いて、導電性支持体上に中間層を形成する工程と、(3)中間層上に感光層を形成する工程と、(4)感光層上に保護層を形成する工程とを有する。
第2族元素の原子をドープした酸化チタン粒子は、チタン化合物に対して、第2族元素の化合物を添加することにより形成することができる。
具体的に、第2族元素の原子をチタン原子に対して、0.0001〜0.1の範囲内の割合でドープした酸化チタン粒子を得るためには、酸化チタン粒子形成時に、チタン化合物(例えば、オルトチタン酸テトライソプロピル)Aモルに対して、ドープする第2族元素の化合物(例えば、酢酸マグネシウム)Aモル×0.0001〜0.1モルを同時に添加すればよい。
上記添加後、激しく撹拌しながら蒸留水を加え、生成した白色懸濁液をさらに撹拌し、
50〜100℃の範囲内で加熱静置後、さらに、150〜650℃の範囲内で加熱処理を行う。その後、減圧処理により水を留去した後、加熱乾燥処理を行い、さらに700〜100℃の範囲内で焼成処理を行うことで、アナターゼ型からルチル型の結晶系変換を行うことが好ましい。
中間層は、例えば、中間層用バインダー樹脂を溶媒に溶解又は分散させ、次いで、本発明に係る酸化チタン粒子を均質に分散させて分散液を得、この分散液を静置後、濾過して中間層形成用塗布液を調製し、この中間層形成用塗布液を導電性支持体の表面に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥することにより形成することができる。
また、保存性や無機微粒子の分散性を向上させるために、助溶媒を併用してもよい。助溶媒としては、例えばベンジルアルコール、トルエン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
塗布膜の乾燥方法は、溶媒の種類や形成する中間層の層厚に応じて公知の乾燥方法を適宜に選択することができ、特に熱乾燥することが好ましい。乾燥条件は、例えば100〜150℃で10〜60分間とすることができる。
中間層の厚さが0.5μm以上であれば、導電性支持体の表面全体を十分に被覆することができるため、導電性支持体からの正孔の注入を十分にブロックすることができ、この結果、黒ポチ、カブリなど画像欠陥の発生をより抑制することができる。一方、中間層の厚さが5μm以下であれば、電気抵抗を適切にでき、十分な電子輸送性が得られ、この結果、濃度ムラの発生をより抑制することができる。
感光層を形成する工程は、中間層上に電荷発生層を形成する工程と、当該電荷発生層上に電荷輸送層を形成する工程とを含む。
電荷発生層形成用塗布液に使用される溶剤の例には、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジエチレングリコール ジメチルエーテル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸t−ブチル、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロエタン及びトリクロロエタンが含まれる。溶剤は、1種であってもよいし、それ以上であってもよい。
保護層を形成する工程は、電荷輸送層上に保護層を形成する。具体的には、まず、保護層形成用塗布液を調製する。次いで、保護層形成用塗布液を電荷輸送層上に塗布して、電荷輸送層上に保護層形成用塗布液の塗膜を形成する。最後に、当該塗膜を硬化させることにより保護層を形成する。
以上のようにして、感光体を製造することができる。
本発明の電子写真画像形成装置は、上述した本発明の電子写真感光体を用いることを特徴とする。また、本発明の電子写真画像形成装置は、上述した本発明の電子写真感光体を具備していることを特徴とする。
具体的に、本発明の電子写真画像形成装置は、本発明の電子写真感光体を具備し、帯電プロセス、露光プロセス、現像プロセス及び転写プロセスを有することが好ましい。
なお、従来、電子写真画像形成装置においては、転写後に光照射による除電工程を行うことができる構成のものがあり、この工程を行う除電手段(光除電装置)としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
しかしながら、本発明の感光体を採用した電子写真画像形成装置においては、上記除電手段を用いなくても、長期間にわたる耐メモリー性と、黒ポチ、カブリ等の画像欠陥の発生の防止を両立できるため、除電手段を有さない構成とすることができる。このように光除電装置を有さない構成とした場合、画像形成装置の省スペース化、低コスト化を実現することが可能であり、感光体への光ダメージ低減にもつながるため好ましい。
本発明の電子写真画像形成装置としては、本発明の電子写真感光体と、上述の帯電手段(帯電器)、露光手段(露光器)、現像手段(現像器)又はクリーニング手段(クリーニング器)の少なくとも一つとを一体として有したプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として構成し、この画像形成ユニットを電子写真画像形成装置本体に対して出し入れ可能(着脱自在)に構成されていることが好ましい。また、帯電手段、露光手段、現像手段の他、転写手段(転写器)、分離手段(分離器)の少なくとも一つを感光体とともに一体として有したプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
(1)導電性支持体の作製
直径30mmの円筒状のアルミニウム支持体の表面を切削加工することにより、表面が細かい粗面とされた導電性支持体〔1〕を得た。
(2−1)酸化チタン粒子の作製
オルトチタン酸テトライソプロピル(東京化成(株)製)1000質量部と酢酸マグネシウム四水和物(和光純薬(株)製)7.5質量部の混合物を、激しく撹拌しながら蒸留水1700質量部に加えた。生成した白色懸濁液を3時間撹拌した後、80℃で15時間静置し、さらにオートクレーブ中200℃で12時間加熱処理を行った。
減圧処理により水を留去した後、150℃で24時間乾燥処理を行った。さらに700℃で5時間焼成処理を行い、アナターゼ型からルチル型の結晶系変換を行うことで、Mgドープ酸化チタン粒子〔1〕を得た。
RINT2000(リガク(株)を用いたX線回折スペクトル(CuKα)測定において、27.4°、36.1°、41.2°及び54.3°に回折ピークが観測され、ルチル型の結晶構造であることを確認した。蛍光X線分析装置(XRF−1700:(株)島津製作所)を用いて、Mg 1sピーク強度(1304eV)と、Ti 2pピーク強度(459eV)の比から、マグネシウム原子がチタン原子に対して0.01の割合でドープされていることを確認した。
Mgドープ酸化チタン粒子〔1〕1000質量部をトルエン4000質量部と撹拌混合し、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン「KBM−503」(信越化学工業(株)製)120質量部を添加し、50℃で3時間撹拌した。その後、トルエンを減圧蒸留にて留去し、130℃で3時間焼き付けを行い、表面処理済みMgドープ酸化チタン粒子〔1〕を得た。走査型電子顕微鏡により倍率100000倍で撮影し、一次粒子の平均粒径が15nmであることを確認した。
下記化学式(N−1)で表されるポリアミド樹脂100質量部を、エタノール/n−プロピルアルコール/テトラヒドロフラン(体積比50/20/30)の混合溶媒1850質量部に加え、20℃で撹拌混合し、この溶液に、表面処理済みMgドープ酸化チタン粒子〔1〕300質量部を添加し、ビーズミルにより、ミル滞留時間2時間として分散させた。この溶液を一昼夜静置した後、日本ポール社製のリジメッシュ5μmフィルターを使用して50kPaの圧力下で濾過することにより、中間層形成用塗布液〔1〕を調製した。
このようにして得られた中間層形成用塗布液〔1〕を、導電性支持体〔1〕の外周面に浸漬塗布法で塗布し、120℃で30分間乾燥することにより、乾燥膜厚1.5μmの中間層〔1〕を形成した。
(3−1)電荷発生物質〔CG−1〕の調製
1,3−ジイミノイソインドリン29.2質量部をo−ジクロロベンゼン200質量部に分散し、チタニウムテトラ−n−ブトキシド20.4質量部を加え、窒素雰囲気下において150〜160℃で5時間加熱した。放冷後、析出した結晶を濾過し、クロロホルム、2%塩酸水溶液、水、メタノールで順次洗浄し、乾燥することにより、26.2質量部(収率91%)の粗チタニルフタロシアニンを得た。
次いで、この粗チタニルフタロシアニンを5℃以下において濃硫酸250質量部中で1時間撹拌して溶解し、これを20℃の水5000質量部に注ぎ、析出した結晶を濾過し、水洗してウェットペースト品225質量部を得た。
このウェットペースト品を冷凍庫にて凍結し、再度解凍した後、濾過、乾燥することにより、無定形チタニルフタロシアニン24.8質量部(収率86%)を得た。
この無定形チタニルフタロシアニン10.0質量部と、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール0.94質量部(0.6当量比)(当量比はチタニルフタロシアニンに対する当量比、以後同じ)をオルトジクロロベンゼン(ODB)200質量部中に混合し60〜70℃で6.0時間加熱撹拌した。一夜放置後、この反応液にメタノールを加えて生じた結晶を濾過し、濾過後の結晶をメタノールで洗浄することにより、(2R,3R)−2,3−ブタンジオール付加体チタニルフタロシアニンを含有する顔料からなる電荷発生物質〔CG−1〕10.3質量部を得た。
電荷発生物質〔CG−1〕のX線回折スペクトルにおいては、8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークが生じ、マススペクトルにおいては576と648にピークが生じ、IRスペクトルにおいては970cm−1付近にTi=O、630cm−1付近にO−Ti−Oの両吸収が現れた。また、熱分析(TG)においては390〜410℃に約7%の質量減少が生じた。
以上のことより、電荷発生物質〔CG−1〕は、チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体と非付加体(付加していない)チタニルフタロシアニンの混合物と推定される。
下記原料を混合し、循環式超音波ホモジナイザー「RUS−600TCVP」(株式会社日本精機製作所製、19.5kHz、600W)を用いて循環流量40L/Hで分散し、電荷発生層形成用塗布液〔1−1〕を調製した。
・電荷発生物質〔CG−1〕 24質量部
・ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12質量部
・溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=4/1(V/V) 600質量部
電荷発生層形成用塗布液〔1−1〕を上記中間層〔1〕上に、浸漬塗布法により塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥し、層厚0.5μmの電荷発生層〔1〕を形成した。
下記原料を混合して溶解し、電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を調製した。
・電荷輸送物質:下記化学式(A)で表される化合物 225質量部
・電荷輸送層用バインダー樹脂
:ポリカーボネート樹脂「Z300」(三菱ガス化学社製) 300質量部
・酸化防止剤「Irganox1010」(BASFジャパン社製) 6質量部
・溶媒:THF 1600質量部
・溶媒:トルエン 400質量部
・シリコーンオイル「KF−50」(信越化学工業(株)製) 1質量部
上記電荷発生層〔1〕上に、この電荷輸送層形成用塗布液〔1〕を円形スライドホッパー塗布装置を用いて塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥し、層厚25μmの電荷輸送層〔1〕を形成した。
感光体1の作製において、酢酸マグネシウム四水和物の量を2.25質量部に変更したことのほかは、同様にして感光体2を得た。
感光体1の作製において、酢酸マグネシウム四水和物の量を0.75質量部に変更したことのほかは、同様にして感光体3を得た。
感光体1の作製において、オートクレーブ中200℃加熱処理から150℃乾燥加熱までの工程を、450℃で1時間加熱のみに変更したことのほかは、同様にして感光体4を得た。
感光体4の作製において、450℃で加熱する工程を550℃に変更したことのほかは、同様にして感光体5を得た。
感光体1の作製において、700℃で5時間焼成処理を実施しなかったことのほかは、同様にして感光体6を得た。Mgドープ酸化チタン粒子のX線回折により25.3°、37.8°、48.0°、53.9°及び55.1°に回折ピークが観測され、アナターゼ型の結晶構造であることを確認した。
感光体6の作製において、酢酸マグネシウム四水和物の量を0.75質量部に変更したことのほかは、同様にして感光体7を得た。
感光体1の作製において、酢酸マグネシウム四水和物の量を75質量部に変更したことのほかは、同様にして感光体8を得た。
感光体1の作製において、酢酸マグネシウム四水和物の量を0.075質量部に変更したことのほかは、同様にして感光体9を得た。
感光体1の作製において、蒸留水をエタノール:水=1:1の混合溶媒に変更したことのほかは、同様にして感光体10を得た。
感光体4の作製において、450℃で加熱する工程を650℃に変更したことのほかは、同様にして感光体11を得た。
感光体1の作製において、酢酸マグネシウム四水和物7.5質量部を酢酸カルシウム一水和物6.2質量部に変更したことのほかは、同様にして感光体12を得た。
感光体1の作製において、酢酸マグネシウム四水和物7.5質量部を酢酸カルシウム一水和物0.62質量部に変更したことのほかは、同様にして感光体13を得た。
感光体1の作製において、酢酸マグネシウム四水和物7.5質量部を酢酸ベリリウム4.5質量部に変更したことのほかは、同様にして感光体14を得た。
感光体1の作製において、酢酸マグネシウム四水和物7.5質量部を酢酸ストロンチウム0.5水和物7.6質量部に変更したことのほかは、同様にして感光体15を得た。
感光体1の作製において、電荷発生物質をX線回折スペクトルにおいて7.3°、16.0°、24.9°、28.0°に明確なピークを有するヒドロキシガリウムフタロシアニンに変更したことのほかは、同様にして感光体16を得た。
感光体1の作製において、酢酸マグネシウム四水和物の量を11.3質量部に変更したことのほかは、同様にして感光体17を得た。
感光体1の作製において、酢酸マグネシウム四水和物を添加しなかったことのほかは、同様にして感光体18を得た。
感光体18の作製において、700℃で5時間焼成処理を実施しなかったことのほかは、同様にして感光体19を得た。
感光体1の作製において、Mgドープ酸化チタン粒子〔1〕を、平均粒径35nmのルチル型酸化チタンにシリカ及びアルミナ処理を施した無機処理酸化チタン(SMT−500SAS;テイカ(株)製)に変更したことのほかは、同様にして感光体20を得た。
感光体18の作製において、Mgドープ酸化チタン粒子〔1〕1000質量部をトルエン4000質量部と撹拌混合する際に、平均粒径35nmの酸化マグネシウム粒子(関東電化工業(株)製)10質量部を追加したことのほかは、同様にして感光体21を得た。
市販のフルカラー複合機「bizhub C287」(コニカミノルタ社製)に感光体1〜21をそれぞれ搭載し、電子写真画像形成装置1〜21を使用して評価を行った。
まず、画像比率5%の文字画像をA4横送りで各5万枚両面連続プリントを行う耐久試験(以下、「長期印刷」ともいう。)を実施し、長期印刷前(初期)及び長期印刷試験後に、パターンメモリー及び黒ポチについての評価を行った。
なお、パターンメモリーが検出されやすい条件にするために、電子写真画像形成装置の光除電装置を外した状態で評価を行った。
長期印刷の前後に、温度10℃、湿度15%RHの環境下において、縦方向の帯ベタ画像を、転写材:「A3/PODグロスコート(A3サイズ、100g/m2)」(王子製紙社製)上に20枚連続印刷し、続けて全面ベタ画像を3枚印刷する。得られた全面ベタ画像の帯ベタ部の履歴発生、すなわち、パターンメモリーの発生を、以下の評価基準に従って評価した。濃度計(グレタグ・マクベス社製の品番「RD−918」)を用いて、得られた全面ベタ画像のうち帯ベタ履歴部に対応する領域の反射濃度と、帯ベタ履歴部に該当しない領域の反射濃度を測定した。そして、測定された二つの反射濃度差(ΔID)を算出した。結果を表Iに示す。
(評価基準)
A:全面ベタのΔIDが0.005未満(合格)
B:全面ベタのΔIDが0.005以上0.010未満(合格)
C:全面ベタのΔIDが0.010以上(不合格)
長期印刷の前後に、温度30℃、湿度80%RHの環境下において、転写材:「A3/PODグロスコート(A3サイズ、100g/m2)」(王子製紙社製)上に、グリッド電圧−900V、現像バイアス−720Vの条件で、無地画像(白ベタ画像)を形成し、得られた転写材上の10cm×10cmの範囲における直径0.1mm以上の黒点発生数をカウントした。結果を表Iに示す。
(黒ポチ評価基準)
A:10cm×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が観測されない(合格)
B:10cm×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が1〜2個(合格)
C:10cm×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が3〜9個(合格)
D:10cm×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が10〜99個(不合格)
E:10cm×10cmの範囲に直径0.1mm以上の黒点が100個以上(不合格)
「TiOPc」:チタニルフタロシアニンと(2R,3R)−2,3−ブタンジオールの1:1付加体と非付加体チタニルフタロシアニンの混合物。
「Ga(OH)Pc」:ヒドロキシガリウムフタロシアニン。
2Y、2M、2C、2Bk 帯電手段
3Y、3M、3C、3Bk 露光手段
4Y、4M、4C、4Bk 現像手段
6Y、6M、6C、6Bk クリーニング手段
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
Claims (11)
- 導電性支持体上に少なくとも、中間層、電荷発生層及び電荷輸送層がこの順に積層された電子写真感光体であって、
前記中間層が、第2族元素の原子をドープした酸化チタン粒子を含有することを特徴とする電子写真感光体。 - 前記中間層が、第2族元素の原子をチタン原子の原子数に対して0.0001〜0.1の範囲内の割合でドープした酸化チタン粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 前記第2族元素が、マグネシウム又はカルシウムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
- 前記第2族元素が、マグネシウムであることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記第2族元素の原子をドープした酸化チタン粒子の平均粒径が、10〜100nmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記中間層が、第2族元素の原子をチタン原子の原子数に対して0.001〜0.01の範囲内の割合でドープした酸化チタン粒子を含有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記酸化チタン粒子が、ルチル型の酸化チタン粒子であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記電荷発生層が、チタニルフタロシアニンを含有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電子写真感光体を製造する電子写真感光体の製造方法であって、
チタン化合物に対して、第2族元素の化合物を添加して、前記第2族元素の原子をドープした前記酸化チタン粒子を形成する工程を有することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。 - 請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする電子写真画像形成方法。
- 請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の電子写真感光体を具備していることを特徴とする電子写真画像形成装置。
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