本発明の電子写真感光体は、少なくとも、樹脂と金属酸化物粒子を含有する保護層を有する電子写真感光体であって、
前記保護層の表面が、複数の凸部を有し、
前記複数の凸部のうち、互いに隣接する凸部構造の凸部間の平均距離Rが、100~250nmの範囲内であり、
前記保護層が、下記例示化合物M2で表されるラジカル重合性モノマーと金属酸化物粒子を含む組成物の重合硬化物を含有し、
前記金属酸化物粒子が、コアが硫酸バリウム、シェルが酸化スズで形成されているコア・シェル型の複合金属酸化物粒子であり、
フッ化アルキル鎖又はシリコーン鎖を側鎖に有する重合性表面修飾剤及び非重合性表面修飾剤により表面修飾され、
前記複合金属酸化物粒子の表面を修飾している表面修飾剤とは別に、前記樹脂中に、前記表面修飾剤の残基と同一構造部分を有する化合物を含有し、
前記樹脂中における、前記表面修飾剤の残基と同一構造部分を有する化合物の含有量が、前記樹脂1質量部に対して、0.02~0.25質量部の範囲内であることを特徴とする。
(上記の例示化合物M2中
、R′は、メタクリロイル基を表す。)これらの特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記樹脂中における、前記表面修飾剤の残基と同一構造部分を有する化合物の含有量が、前記樹脂1質量部に対して、0.01~0.5質量部の範囲内であること、更には、前記樹脂1質量部に対して、0.02~0.25質量部の範囲内であることで、より高画質を保ちつつ、耐摩耗性、白地汚染耐性及び細線再現性により優れた効果を発現させることができる。
また、前記保護層の表面が、複数の凸部を有し、前記複数の凸部のうち、互いに隣接する凸部構造の凸部間(頂点部間)の平均距離Rが、100~250nmの範囲内であることで、凸部が均一に緻密になり、トナーが感光体表面に接する際に、金属酸化物粒子に接する確率が高くなり、クリーニング時に残留トナーを確実かつ速やかに除去することができる。
また、前記保護層が、重合性モノマーと金属酸化物粒子を含む組成物の重合硬化物を含有することで、感光体により耐擦性に優れた保護層を形成することができる。
また、表面修飾剤がフッ化アルキル鎖を有すること、更には、フッ化アルキル鎖が前記表面修飾剤の側鎖に有することで、フッ素含有表面修飾剤を高い密着性で存在させることができ、高いフッ素密度を得ることができる。更に、フッ素含有表面修飾剤を有する金属酸化物粒子は、保護層塗布液中において良好な分散性を示すので、塗膜において優れた分散性が得られることができる。
また、表面修飾剤がシリコーン鎖を有すること、更には、シリコーン鎖が前記表面修飾剤の側鎖に有することで、金属酸化物粒子表面が効率的に疎水化され、重合性モノマーや酸化防止剤との相溶性が高まることにより、分散性が向上する。
金属酸化物粒子に、上記のようなフッ素系・シリコーン系表面修飾剤により表面修飾処理を施すことにより、感光体中の金属酸化物粒子とトナーの外添剤との間の付着力及び摩擦力を顕著に低減させることができる。その結果、残留トナーの除去性をより向上でき、遊離外添剤の発生も抑えられる。
本発明では、表面修飾剤により表面処理が施された金属酸化物粒子を、表面修飾されている金属酸化物粒子という。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《電子写真感光体》
本発明の電子写真感光体は、少なくとも、樹脂と金属酸化物粒子を含有する保護層を有する電子写真感光体であって、
前記保護層の表面が、複数の凸部を有し、
前記複数の凸部のうち、互いに隣接する凸部構造の凸部間の平均距離Rが、100~2
50nmの範囲内であり、
前記保護層が、下記例示化合物M2で表されるラジカル重合性モノマーと金属酸化物粒子を含む組成物の重合硬化物を含有し、
前記金属酸化物粒子が、コアが硫酸バリウム、シェルが酸化スズで形成されているコア・シェル型の複合金属酸化物粒子であり、
フッ化アルキル鎖又はシリコーン鎖を側鎖に有する重合性表面修飾剤及び非重合性表面修飾剤により表面修飾され、
前記複合金属酸化物粒子の表面を修飾している表面修飾剤とは別に、前記樹脂中に、前記表面修飾剤の残基と同一構造部分を有する化合物を含有し、
前記樹脂中における、前記表面修飾剤の残基と同一構造部分を有する化合物の含有量が、前記樹脂1質量部に対して、0.02~0.25質量部の範囲内であることを特徴とする。
(上記の例示化合物M2中
、R′は、メタクリロイル基を表す。)
[表面修飾剤の粒子表面と樹脂中での同一構造について]
図2は、金属酸化物粒子表面と樹脂中におけるフッ素系表面修飾剤の状態を示す模式図であり、前記図1の(d)で説明した本発明で規定する、金属酸化物粒子の表面を修飾しているフッ素系表面修飾剤(a)と、樹脂中に存在しているフッ素系表面修飾剤の残基と同一構造部分を有する化合物(b)を説明する。
図2には、フッ素系の表面修飾剤12として、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル)シランを一例として、説明する。
図2の(a)には、フッ素系の表面修飾剤16が金属酸化物粒子15を修飾している状態を示しており、表面修飾剤16においては、Bが反応基であり、Aで示す構造範囲が図2の(b)に示す樹脂中に存在するフッ素系の表面修飾剤12との同一構造部である残基を表す。
図2の(b)は、樹脂中に含有される表面修飾剤12の構造を示す図である。
本発明でいう「同一構造部分を有する」とは、金属酸化物粒子15と結合した表面修飾剤16の残基A部分と、樹脂中に存在する表面修飾剤12の末端の置換基(図2における3つのCH3基)を除いた構造部分Aとが同一の構造であることをいう。
本発明においては、前記樹脂中における、前記表面修飾剤の残基と同一構造部分を有する化合物の含有量が、前記樹脂1質量部に対して、0.02~0.25質量部の範囲内である。
図3には、金属酸化物粒子表面と樹脂中におけるシリコーン系の表面修飾剤の状態を示す模式図であり、前記図1の(d)で説明した本発明で規定する、金属酸化物粒子の表面を修飾しているシリコーン系表面修飾剤と、樹脂中にシリコーン系の表面修飾剤の残基と同一構造部分を有する化合物として存在している状態を説明する。
図3では、後述する一般式(2)で表される構造を有するシリコーン系表面修飾剤の金属酸化物粒子表面と樹脂中における構造を示すものであり、図2で説明したのと同様に、図3の(a)には、シリコーン系の表面修飾剤16が金属酸化物粒子15を修飾している状態を示しており、表面修飾剤16においては、Bが反応基であり、Aで示す構造範囲が樹脂中に存在する表面修飾剤12との同一構造部である残基を表す。
図3の(b)は、樹脂中に含有されるシリコーン系の表面修飾剤12の構造示す図である。
[感光体の基本構造]
はじめに、本発明の感光体の具体的な構造について、図を交えて説明する。
図4は、本発明の感光体の構成の一例を示す概略断面図である。
本発明の感光体は、少なくとも本発明で規定する構成からなる保護層を有することを特徴とする。
図4の(a)は、第1の構成の感光体101Aを示す断面図であり、導電性支持体102上に、中間層103を形成し、その上に、感光層104を設け、最表面に、本発明に係る保護層105が形成されている構成で、保護層105が、少なくとも、樹脂と金属酸化物粒子を含有し、金属酸化物粒子が表面修飾剤により表面修飾されており、金属酸化物粒子の表面に、表面修飾剤とは別に、前記樹脂中に、前記表面修飾剤の残基と同一構造部分を有する化合物を含有している構成であることを特徴とする。
また、図4の(b)は、第2の構成の感光体101Bを示す断面図であり、導電性支持体102上に、中間層103を形成し、その上に、電荷発生層106及び電荷輸送層107により構成されている感光層104が形成され、最表面に、本発明に係る保護層105が形成されている構成である。
[感光体の各構成要素]
〔保護層〕
本発明に係る保護層は、感光層の上に配置されるとともに感光体の表面を構成する、上記感光層を保護するための層であり、少なくとも、樹脂と金属酸化物粒子を含有することを特徴とする。
(金属酸化物粒子)
本発明に係る金属酸化物粒子は、特に制限されないが、少なくともその表面が金属酸化物から構成される粒子をいう。
粒子の形状は、特に限定されず、粉末状、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状等、いずれの形状であってもよい。
金属酸化物粒子を構成する金属酸化物の例としては、特に制限されないが、シリカ(酸化ケイ素)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、アルミナ(酸化アルミニウム)、酸化スズ、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化マンガン、酸化セレン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、二酸化チタン、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化バナジウム及び銅アルミ酸化物、アンチモンドープ酸化スズ等が挙げられる。
これらの中でも、アルミナ粒子、シリカ(SiO2)粒子、酸化スズ(SnO2)粒子、二酸化チタン(TiO2)粒子、アンチモンドープ酸化スズ(SnO2-Sb)粒子、銅アルミ複合酸化物(CuAlO2)粒子が好ましく、シリカ粒子や酸化スズ粒子がより好ましい。これら金属酸化物粒子は、単独でも又は2種以上を組み合わせても用いることができる。
金属酸化物粒子は、芯材(コア)と、金属酸化物からなる外殻(シェル)と、を有する、コア・シェル構造の複合粒子である。
このような複合粒子を使用した場合、重合性モノマーとの屈折率の差が小さい芯材(コア)を選択することで、保護層の硬化に用いられる活性エネルギー線(特に、紫外線)の透過性が向上し、硬化後の保護層の膜強度を向上し、保護層の摩耗をより低減することができる。また、外殻(シェル)を構成する材料の選択や外殻(シェル)の形状を制御することで、後述する表面修飾粒子における表面修飾効果をより高めることができる。これにより、感光体やクリーニングブレードの摩耗の低減効果及び画像不良の抑制効果をより向上させるとともに、さらに凹凸紙への転写性をより向上させることができる。
当該複合粒子の芯材(コア)を構成する材料は、保護層の光透過性を確保する観点から、硫酸バリウムである。また、当該複合粒子の外殻(シェル)を構成する材料は、酸化スズである。
コア・シェル構造の複合粒子の好ましい例としては、硫酸バリウムからなる芯材と、酸化スズからなる外殻と、を有する、コア・シェル構造の複合粒子等が挙げられる。なお、芯材の個数平均一次粒径と、外殻の厚さとの比率は、使用する芯材及び外殻の種類、ならびにこれらの組み合わせに応じて、所望の表面修飾効果を得られるように適宜設定すればよい。
金属酸化物粒子の個数平均一次粒径は、10~200nmの範囲内であることが好ましく、20~150nmの範囲内であることが更に好ましい。金属酸化物粒子の個数平均一次粒径が10nm以上であれば、十分な耐傷性を得ることができる。一方、金属酸化物粒子の個数平均一次粒径が200nm以下であれば、最外層の形成時に金属酸化物粒子を溶剤に分散させる際に、分散液中で金属酸化物粒子の沈降が生じることなく、安定して感光体を製造することができる。
金属酸化物粒子の個数平均一次粒径は、以下の方法で測定される個数平均一次粒径と定義する。
まず、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により撮影された試料(金属酸化物粒子等)の10000倍の拡大写真をスキャナーに取り込む。
次いで、得られた写真画像から、凝集した金属酸化物粒子や粒子を除く300個の金属酸化物粒子像を、ランダムに自動画像処理解析システム ルーゼックスAP ソフトウエアVer.1.32(株式会社ニレコ製)を使用して2値化処理して、当該金属酸化物粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径を算出する。そして、当該金属酸化物粒子像のそれぞれの水平方向フェレ径の平均値を算出して個数平均一次粒径とする。ここで、水平方向フェレ径とは、上記金属酸化物粒子像を2値化処理したときの外接長方形の、x軸に平行な辺の長さをいう。
また、上記金属酸化物粒子の個数平均一次粒径の測定は、表面修飾剤由来の化学種(被覆層)を含まない金属酸化物粒子について、行うものとする。金属酸化物粒子は、表面修飾処理を施しても、金属酸化物粒子に対して誤差範囲の厚さ(大体、金属酸化物粒子径に対して1/10000程度の厚さ)になると考えられ、このため、表面修飾処理を施すことによっては、平均一次粒子径の変化がないとする。
(表面修飾剤で表面修飾した金属酸化物粒子)
本発明に係る表面修飾剤で表面修飾した金属酸化物粒子は、原料となる金属酸化物粒子に表面修飾剤による表面修飾が施されたものである。
本発明における表面修飾方法、すなわち、金属酸化物粒子表面への表面修飾剤の付着の方法には、主には、湿式処理法と乾式処理法の2つの方法に大別される。
湿式処理法は、金属酸化物粒子と表面修飾剤とを適当な溶剤中で分散することにより該表面修飾剤を金属酸化物粒子表面に付着させる方法である。溶剤中への分散方法としては例えば、ボールミルやサンドミルなど通常の分散手段を用いることができる。分散処理後は、この分散液を乾燥して溶剤を除去した後、更に加熱処理を行って、該表面修飾剤を金属酸化物粒子表面に反応、固着させる方法である。
乾式処理法は、溶剤を使用せずに、表面修飾剤と金属酸化物粒子とを混合し混練を行うことによって表面修飾剤を金属酸化物粒子表面に付着させる。その他の工程に関しては、上記説明した湿式処理と同様にして行われる。
(表面修飾剤)
本発明でいう表面修飾剤は、表面修飾官能基を有する。表面修飾官能基としては、カルボン酸基、ヒドロキシ基、-Rd-COOH(Rdは、2価の炭化水素基)、ハロゲン化シリル基、及びアルコキシシリル基等の導電性金属酸化物粒子と結合しうる基が挙げられる。これらの中でもカルボン酸基、ヒドロキシ基又はアルコキシシリル基が好ましく、ヒドロキシ基又はアルコキシシリル基がより好ましい。
〈フッ素系表面修飾剤〉
フッ素系表面修飾剤は、主鎖にフッ化アルキル基を有するフッ素系表面修飾剤であっても、側鎖にフッ化アルキル基を有するフッ素系表面修飾剤であってもよいが、側鎖型フッ素系表面修飾剤が好ましい。すなわち、金属酸化物粒子は、側鎖型フッ素系表面修飾剤により表面修飾されている態様が好ましい。
フッ素系表面修飾剤は、表面修飾官能基としてアルコキシシリル基を有する表面修飾剤が好ましく、その例としては、下記に示すF-1~F-9で表される化合物等が挙げられる。
また、側鎖にフッ化アルキル基を有するフッ素系表面修飾剤は、フルオロアルキル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体構造を含有するものであることが好ましく、下記一般式(1a)で表される構造単位及び一般式(1b)で表される構造単位を共に有する化合物であることが好ましい。
上記一般式(1a)において、R1は水素原子又はメチル基を表す。
上記一般式(1b)において、R2は炭素数が1~4の直鎖又は分岐鎖アルキル基を表し、Xは炭素数が1~4のアルキレン基を表す。R3は、炭素数が1~6のパーフルオロアルキル基を表す。
上記一般式(1a)で表される構造単位及び一般式(1b)で表される構造単位を共に有するフッ素系表面修飾剤を用いることにより、金属酸化物粒子の表面にフッ素系表面修飾剤を高い密着性で存在させることができ、高いフッ素密度を得ることができる。
また、フッ素系表面修飾剤を有する表面修飾した金属酸化物粒子は、保護層塗布液中において良好な分散性を示すので、塗膜において優れた分散性が得られる。
フッ素系表面修飾剤の分子量は、数平均分子量で5000~30000の範囲内であることが好ましい。
フッ素系表面修飾剤としては、例えば、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、及び、2,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロペンチルメタクリレート/アクリル酸共重合体等を挙げることができ、これらは、単独又は2種以上を混合して使用することができる。
フッ素系表面修飾剤の使用量は、未修飾の金属酸化物粒子100質量部に対して0.5~20質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1~10質量部の範囲内である。
金属酸化物粒子にフッ素系表面修飾剤により表面修飾が施されていることは、示差熱・熱重量(TG/DTA)測定によって確認することができる。
フッ素系表面修飾剤としては、合成品であってもよいし市販品であってもよい。市販品の具体例としては、例えば、T3560、T1770(以上、東京化成工業社製)、KY108、X-71-195(以上、信越化学工業社製)、novec2702(3M社製)等を挙げることができる。
〈シリコーン系表面修飾剤〉
本発明に適用可能なシリコーン系表面修飾剤としては、特に制限はないが、下記一般式(2)で表される構造単位を有する化合物であることが好ましい。
上記一般式(2)において、R
aは水素原子又はメチル基を表し、n′は3以上の整数を表す。
シリコーン系表面修飾剤としては、主鎖にシリコーン鎖を有するシリコーン系表面修飾剤(主鎖型シリコーン系表面修飾剤、又は直鎖型シリコーン系表面修飾剤ともいう。)であっても、側鎖にシリコーン鎖を有するシリコーン系表面修飾剤(側鎖型シリコーン系表面修飾剤)であってもよいが、側鎖型シリコーン系表面修飾剤が好ましい。すなわち、金属酸化物粒子は、側鎖型シリコーン系表面修飾剤により表面修飾されている態様が好ましい。
側鎖型シリコーン系表面修飾剤で金属酸化物粒子の表面修飾を行うと、金属酸化物粒子は効率的に疎水化され、その表面上には高濃度にシリコーン鎖が存在することとなる。そのため、側鎖型シリコーン系表面修飾剤で表面修飾した金属酸化物粒子は、保護層中で高濃度に均一分散することができ、感光体表面に粒子表面を露出させやすい。すなわち、トナー外添剤が感光体の金属酸化物粒子と接触した際に、シリコーン鎖が高濃度に存在するため、低摩擦・低付着を実現することができる。また、上記シリコーン修飾剤は、金属酸化物粒子の分散性向上の役割も担っている。シリコーン系表面修飾剤による表面修飾処理を施すことで、感光体表面に金属酸化物粒子が均一に存在し、表面に緻密な凸部構造を形成することができる。
本発明に適用可能な側鎖型シリコーン系表面修飾剤としては、特に制限はないが、高分子主鎖の側鎖にシリコーン鎖を有し、さらに表面修飾官能基を有する構造であることが好ましい。表面修飾官能基としては、例えば、カルボン酸基、ヒドロキシ基、-Rd-COOH(Rdは、2価の炭化水素基)、ハロゲン化シリル基、及びアルコキシシリル基等の導電性金属酸化物粒子と結合しうる基が挙げられる。これらの中でも、カルボン酸基、ヒドロキシ基又はアルコキシシリル基が好ましく、ヒドロキシ基又はアルコキシシリル基がより好ましい。
側鎖型シリコーン系表面修飾剤は、本発明の効果を維持しつつ、クリーニングブレードの摩耗をより低減させるとの観点から、高分子主鎖としてポリ(メタ)アクリレート主鎖又はシリコーン主鎖を有する構造であることが好ましい。
側鎖及び主鎖のシリコーン鎖は、ジメチルシロキサン構造を繰り返し単位として有することが好ましく、その繰り返し単位数は3~100個の範囲内であるものが好ましく、3~50個の範囲内であるものがより好ましい。
シリコーン系表面修飾剤の重量平均分子量は、特に制限されないが、1000~50000の範囲内であることが好ましい。なお、シリコーン系表面修飾剤の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
シリコーン系表面修飾剤は、合成品であってもよいし、市販品であってもよい。主鎖型シリコーン表面修飾剤の市販品の具体例としては、例えば、KF-99、KF-9901(以上、信越化学工業社製)等を挙げることができる。
また、ポリ(メタ)アクリレート主鎖の側鎖にシリコーン鎖を有する、側鎖型シリコーン系表面修飾剤の市販品の具体例としては、例えば、サイマック(登録商標)US-350(東亞合成社製)、KP-541、KP-574、及びKP-578(以上、信越化学工業社製)等を挙げることができる。
そして、シリコーン主鎖の側鎖にシリコーン鎖を有する、側鎖型シリコーン系表面修飾剤の市販品の具体例としては、KF-9908、KF-9909(以上、信越化学工業社製)等を挙げることができる。また、シリコーン系表面修飾剤は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
シリコーン系表面修飾剤による金属酸化物粒子に対する表面修飾方法は、特に制限されず、金属酸化物粒子の表面上にシリコーン系表面修飾剤を吸着(結合)することができる方法であればよい。このような方法としては、湿式処理方法と乾式処理方法を挙げることができ、いずれを用いてもよい。
湿式処理方法とは、金属酸化物粒子と、シリコー系表面修飾剤とを溶剤中で分散することによって、シリコーン系表面修飾剤を金属酸化物粒子の表面上に付着(又は結合)させる方法である。当該方法としては、金属酸化物粒子と、シリコーン系表面修飾剤とを溶剤中で分散させ、得られた分散液を乾燥し溶剤を除去する方法が好ましく、その後さらに加熱処理を行い、シリコーン系表面修飾剤と金属酸化物粒子とを反応させることによって、シリコーン系表面修飾剤を金属酸化物粒子の表面上に付着(又は結合)させる方法がより好ましい。また、シリコーン系表面修飾剤と金属酸化物粒子とを溶剤中で分散した後、得られた分散液を湿式粉砕することにより、金属酸化物粒子を微細化すると同時に表面修飾を進行させてもよい。
金属酸化物粒子及びシリコーン系表面修飾剤を溶剤中で分散させる手段としては、特に制限されず公知の手段を用いることができ、その例としては、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル等の一般的な分散手段を挙げることができる。
溶剤としては、特に制限されず公知の溶剤を用いることができ、その好ましい例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール(2-ブタノール)、tert-ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは単独でも又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶剤の除去方法としては、特に制限されず公知の方法を用いることができ、その例としては、エバポレーターを用いる方法、室温下で溶剤を揮発させる方法等が挙げられる。これらの中でも、室温下で溶剤を揮発させる方法が好ましい。
加熱温度としては、特に制限されないが、50~250℃の範囲内であることが好ましく、70~200℃の範囲内であることがより好ましく、80~150℃の範囲内であることがさらに好ましい。また、加熱時間としては、特に制限されないが、1~600分の範囲内であることが好ましく、10~300分の範囲内であることがより好ましく、30~90分の範囲内であることがさらに好ましい。なお、加熱方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
乾式処理方法とは、溶剤を用いず、シリコーン系表面修飾剤と金属酸化物粒子とを混合し混練を行うことによって、シリコーン系表面修飾剤を金属酸化物粒子の表面上に付着(又は結合)させる方法である。当該方法としては、シリコーン系表面修飾剤と、金属酸化物粒子とを混合し混練した後、さらに加熱処理を行い、シリコーン系表面修飾剤と金属酸化物粒子とを反応させることによって、シリコーン系表面修飾剤を金属酸化物粒子の表面上に付着(又は結合)させる方法であってもよい。また、金属酸化物粒子と、シリコーン系表面修飾剤とを混合し混練する際に、これらを乾式粉砕することにより、金属酸化物粒子を微細化すると同時に表面修飾を進行させてもよい。
なお、後述する重合性表面修飾剤により表面修飾を行った金属酸化物粒子に、非重合性のシリコーン系表面修飾剤により表面修飾する場合、シリコーン系表面修飾剤による表面修飾方法は、金属酸化物粒子の表面上又は重合性表面修飾剤上に、シリコーン表面修飾剤が付着(又は結合)することができればよい。
したがって、金属酸化物粒子へ重合性表面修飾剤と非重合性表面修飾剤を併用する場合には、初めに重合性表面修飾剤による表面修飾を施したのち、非重合性表面修飾剤による表面修飾を行うことが好ましい。
〈重合性基を有する表面修飾剤(重合性表面修飾剤)による表面修飾方法〉
前述のように、保護層形成用組成物中の金属酸化物粒子は、重合性基を有することが好ましい。そして、重合性基の導入方法としては、特に制限されないが、重合性表面修飾剤により表面修飾する方法が好ましい。
なお、「重合性表面修飾剤の有する重合性基」とは、樹脂の成分である重合性モノマー又は樹脂に対して重合性を有する基をいう。例えば、後記するラジカル重合性基等が該当する。また、「非重合性修飾剤」とは、当該重合性基を有しない表面修飾剤をいう。
すなわち、金属酸化物粒子は、重合性基を有する表面修飾剤(重合性表面修飾剤)により表面修飾(重合性表面修飾)し、表面修飾した金属酸化物粒子を調製することが好ましい。重合性基は、重合性表面修飾によって金属酸化物粒子表面に担持され、その結果、金属酸化物粒子は、重合性基を有することとなる。なお、金属酸化物粒子は、保護層中で重合性基由来の基を有する構造として存在することとなるため、本発明の好ましい一形態の例としては、金属酸化物粒子は、重合性基由来の基を有することが挙げられる。
本発明でいう重合性表面修飾剤は、重合性基及び表面修飾官能基を有する。本発明において適用可能な重合性基の種類は、特に制限されないが、ラジカル重合性基が好ましい。ここで、ラジカル重合性基とは、炭素-炭素二重結合を有するラジカル重合可能な基を表す。ラジカル重合性基の例としては、エポキシ基、ビニル基及び(メタ)アクリロイル基等が挙げられ、これらの中でも、メタクリロイル基が好ましい。
また、ここでいう表面修飾官能基とは、金属酸化物粒子の表面に存在するヒドロキシ基などの極性基への重合性を有する基を表す。表面修飾官能基の例としては、例えば、カルボン酸基、ヒドロキシ基、-Rd′-COOH(Rd′は、二価の炭化水素基)、ハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基等が挙げられ、これらの中でもハロゲン化シリル基、アルコキシシリル基が好ましい。
重合性表面修飾剤としては、ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤が好ましく、シランカップリング剤としては、下記S-1~S-32で示す化合物が挙げられる。
S-1:CH2=CHSi(CH3)(OCH3)2
S-2:CH2=CHSi(OCH3)3
S-3:CH2=CHSiCl3
S-4:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S-5:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OCH3)3
S-6:CH2=CHCOO(CH2)2Si(OC2H5)(OCH3)2
S-7:CH2=CHCOO(CH2)3Si(OCH3)3
S-8:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S-9:CH2=CHCOO(CH2)2SiCl3
S-10:CH2=CHCOO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S-11:CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3
S-12:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2
S-13:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(OCH3)3
S-14:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2
S-15:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OCH3)3
S-16:CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)Cl2
S-17:CH2=C(CH3)COO(CH2)2SiCl3
S-18:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(CH3)Cl2
S-19:CH2=C(CH3)COO(CH2)3SiCl3
S-20:CH2=CHSi(C2H5)(OCH3)2
S-21:CH2=C(CH3)Si(OCH3)3
S-22:CH2=C(CH3)Si(OC2H5)3
S-23:CH2=CHSi(OC2H5)3
S-24:CH2=C(CH3)Si(CH3)(OCH3)2
S-25:CH2=CHSi(CH3)Cl2
S-26:CH2=CHCOOSi(OCH3)3
S-27:CH2=CHCOOSi(OC2H5)3
S-28:CH2=C(CH3)COOSi(OCH3)3
S-29:CH2=C(CH3)COOSi(OC2H5)3
S-30:CH2=C(CH3)COO(CH2)3Si(OC2H5)3
S-31:CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)2(OCH3)
S-32:CH2=C(CH3)COO(CH2)8Si(OCH3)3
重合性表面修飾剤は、合成品であってもよいし市販品であってもよい。市販品の具体例としては、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103(以上、信越化学工業社製)等を挙げることができる。また、重合性表面修飾剤は、単独でも又は2種以上を組み合わせても用いることができる。
シリコーン表面修飾及び重合性表面修飾の両方を行う場合、重合性表面修飾を行った後にシリコーン表面修飾を行うことが好ましい。この順序で表面修飾を行うことにより、保護層の耐摩耗性がより向上する。この理由は、撥油効果を有するシリコーン鎖によって、重合性表面修飾剤の金属酸化物粒子表面への接触が妨げられることがないため、金属酸化物粒子への重合性基の導入がより効率よく行われるからである。
重合性表面修飾の方法は、特に制限されず、重合性表面修飾剤を用いる以外は、シリコーン系表面修飾剤で説明した方法と同様の方法を採用することができる。また、公知の金属酸化物粒子の表面修飾技術を用いてもよい。
ここで、湿式処理方法を用いる場合、溶剤は、シリコーン系表面修飾で説明した方法と同様のものを好ましく用いることができる。
重合性表面修飾剤の使用量は、重合性表面修飾前の金属酸化物粒子(前述のシリコーン表面修飾後の金属酸化物粒子を重合性表面修飾する場合は、シリコーン表面修飾後の金属酸化物粒子)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、1.5質量部以上であることがさらに好ましい。この範囲であると、保護層の膜強度が向上し、感光体の摩耗がより低減される。また、重合性表面修飾前の金属酸化物粒子(前述のシリコーン表面修飾後の金属酸化物粒子を重合性表面修飾剤で修飾する場合は、シリコーン表面修飾後の金属酸化物粒子)100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましい。この範囲であると、粒子表面のヒドロキシ基数に対して重合性表面修飾剤の量が過剰とはならずより適切な範囲となり、未反応の重合性表面修飾剤による保護層の膜強度の低下が抑制されて保護層の膜強度が向上し、感光体の摩耗がより低減される。
(表面修飾した金属酸化物粒子の調製)
以下に、表面修飾剤で表面修飾した金属酸化物粒子の代表的な調製方法を示す。
(1)複合金属酸化物粒子(未処理)の調製:
下記の方法に従って、コアが硫酸バリウム、シェルが酸化スズで形成されているコア・シェル型の複合金属酸化物粒子を調製した。
図5に示す製造装置を用い、コア粒子である硫酸バリウムの表面に、酸化スズがシェリングされた複合金属酸化物微粒子(Sn02/BaSO4)を調製した。
具体的には、母液槽41中に、純水3500mL投入し、次に、平均粒径D50が100nmである球状の硫酸バリウム芯材900gを投入して5パス循環させた。
母液槽41から流出するスラリーの流速は2280mL/minであった。また、強分散装置43の撹拌速度を16000rpmとした。
循環完了後のスラリーを純水で全量9000mLにメスアップし、そこに1600gの錫酸ナトリウム及び2.3mLの水酸化ナトリウム水溶液(濃度25mol/L)を投入して5パス循環させ、母液を得た。
この母液を、母液槽41から流出する流速S1が200mLとなるように循環させながら、強分散装置43としてのホモジナイザー「magic LAB」(IKAジャパン株式会社製)に20%硫酸を供給した。供給速度S3を9.2mL/minとした。ホモジナイザーの容積は20mL、撹拌速度は16000rpmであった。循環を15分間行い、その間硫酸を連続的にホモジナイザーに供給した。このようにして、コア粒子である硫酸バリウムの表面に酸化スズのシェル層が形成された粒子を得た。
得られた粒子を含むスラリーを、その導電率が600μS/cm以下となるまでリパルプ洗浄した後、ヌッチェ濾過を行い、ケーキを得た。このケーキを大気中、150℃で10時間乾燥させた。次いで、乾燥ケーキを粉砕し、その粉砕粉を1体積%H2/N2雰囲気下で450℃、45分間還元焼成した。これによって、硫酸バリウムのコア粒子表面に酸化スズがシェリングされた個数平均一次粒径が100nmの複合金属酸化物粒子(Sn02/BaSO4)を得た。
ここで、図5に示す製造装置において、符号42、44は、母液槽41と強分散装置43との間の循環路を形成する循環配管、符号45、46は、循環配管42、44に設けられたポンプ、符号41aは撹拌翼、符号43aは撹拌部、符号41b、43bはシャフト、符号41c,43cはモーターを示す。
(2)表面修飾した金属酸化物粒子の調製
(表面修飾した金属酸化物粒子A:ジメチルジクロロシラン処理)
エタノール100mLに酸化錫(個数平均一次粒径=20nm)10gを加え、USホモジナイサーを用いて60分間分散させた。次いで、非重合性のカップリング剤として、ジメチルジクロロシラン0.3g及びエタノール10mLを加え、USホモジナイサーを用いて30分間分散を行った。エバポレーターによって溶剤を除去した後、120℃で1時間加熱することにより、表面修飾剤として非重合性のジメチルジクロロシランのみで表面修飾した金属酸化物粒子Aを得た。
(表面修飾した金属酸化物粒子B:Mc処理(メタクリル処理))
エタノール100mLに上記調製した複合金属酸化物粒子(Sn02/BaSO4、個数平均一次粒径=100nm)10gを加え、USホモジナイサーを用いて60分間分散させた。次いで、カップリング剤として3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製の「KBM503」)0.3g及びエタノール10mLを加え、USホモジナイサーを用いて30分間分散を行った。エバポレーターによって溶剤を除去した後、120℃で1時間加熱することにより、表面修飾剤として重合性の重合性基を有するKBM503で表面修飾した金属酸化物粒子Bを得た。
(表面修飾した金属酸化物粒子C:Si処理(シリコーン処理))
2-ブタノール100mLに酸化錫(個数平均一次粒径=20nm)10gを加え、USホモジナイサーを用いて60分間分散させた。次いで、シリコーン主鎖の側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤(信越化学社製の「KF-9908」)0.3g及び2-ブタノール10mLを加え、USホモジナイザーを用いて60分間分散を行った。エバポレーターによって溶剤を除去した後、120℃で1時間加熱することにより、側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤により表面修飾した金属酸化物粒子Cを得た。
(表面修飾した金属酸化物粒子D:Mc+フッ素化処理(F処理))
はじめに、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート9.9g、アクリル酸0.1g、重合開始剤「パーロイルSA」(日油社製)0.3g及びフッ素系溶剤:メチルペルフルオロブチルエーテル(東京化成工業社製)60.0gを反応容器に加え、乾燥窒素でパージして反応容器を密封し、70℃で24時間、撹拌下で加熱した後、反応容器を冷却し、開封した。次いで、反応容器内の溶液をメタノール300mL中に注ぎ、得られた重合体を沈殿させ、沈殿物を真空下にて乾燥させることにより、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体よりなる特定のフッ素化表面修飾剤(novec2702)を得た。
エタノール100mLに複合金属酸化物粒子(Sn02/BaSO4、個数平均一次粒径=100nm)10gを加え、USホモジナイサーを用いて60分間分散させた。次いで、カップリング剤として3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製の「KBM503」)0.3g及びエタノール10mLを加え、USホモジナイサーを用いて30分間分散を行った。エバポレーターによって溶剤を除去した後、120℃で1時間加熱することにより、重合性基を有する金属酸化物粒子を得た。
上記で得られた金属酸化物粒子5gを、2-ブタノール50mLに加え、USホモジナイザーを用いて60分間分散させた。次いで、フッ素化表面修飾剤〔A〕0.15gを加えて、USホモジナイザーを用いて60分間分散を行った。エバポレーターによって溶剤を除去した後、120℃で1時間加熱することにより、フッ素化表面修飾が施され、且つ重合性基を有する金属酸化物粒子Dを得た。
(表面修飾した金属酸化物粒子E:Mc+シリコーン処理(Si処理))
エタノール100mLに酸化錫(個数平均一次粒径=20nm)10gを加え、USホモジナイサーを用いて60分間分散させた。次いで、カップリング剤として3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製の「KBM503」)0.3g及びエタノール10mLを加え、USホモジナイサーを用いて30分間分散を行った。エバポレーターによって溶剤を除去した後、120℃で1時間加熱することにより、重合性基を有する金属酸化物粒子を得た。
上記で得られた金属酸化物粒子5gを、2-ブタノール50mLに加え、USホモジナイザーを用いて60分間分散させた。次いで、シリコーン主鎖の側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤(信越化学社製の「KF-9908」)0.15gを加えて、USホモジナイザーを用いて60分間分散を行った。エバポレーターによって溶剤を除去した後、120℃で1時間加熱することにより、側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾が施され、且つ重合性基を有する金属酸化物粒子Eを得た。
その他の表面修飾した金属酸化物粒子についても、未処理の金属酸化物粒子の種類、表面修飾剤の重合性及び非重合性の表面修飾剤の種類とその組み合わせにより、所望の構成からなる表面修飾剤により表面修飾した金属酸化物粒子を得ることができる。
(保護層の凸部間の平均距離R)
本発明に係る保護層においては、表面に複数の凸部を有し、前記複数の凸部のうち、互いに隣接する凸部間の平均距離Rが、100~250nmの範囲内である。
本発明に係る保護層の表面は、金属酸化物粒子の隆起による凸部構造を有する。本発明でいう「金属酸化物粒子の隆起による凸部構造」とは、露出した金属酸化物粒子が構成する凸部構造を意味する。
保護層の表面に存在する凸部構造が金属酸化物粒子の隆起によるものであることは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した保護層の表面の写真画像を目視にて観察することにより確認することができる。
保護層の金属酸化物粒子の隆起による凸部構造の凸部間の平均距離R(以下、「凸部間平均距離R」ともいう。)は、以下の方法に従って算出される。
まず、最外層である保護層について、走査型電子顕微鏡「JSM-7401F」(日本電子株式会社製)により撮影(倍率:10000倍、加速電圧:2kV)した写真画像(図6の(a)参照。)を、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)自動画像処理解析システム ルーゼックス(登録商標)AP ソフトウエアVer.1.32(株式会社ニレコ製)に取り込み、モノクロヒストグラムの極大値+30レベルを閾値として該写真画像を二値化した後(図6の(b)参照。)、隣接重心間距離を算出し、これを保護層の金属酸化物粒子の隆起による凸部構造の凸部間平均距離Rとする。
本発明に係る凸部間平均距離Rは、前述のように100~250nmの範囲内である。下限値は、120nm以上であることが好ましい。また、上限値は、240nm以下であることが好ましく、225nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましい。
ここで、保護層の金属酸化物粒子の隆起による凸部構造の凸部間平均距離Rは、それぞれ、金属酸化物粒子の種類、一次粒径及び含有量、重合性モノマーの種類及び含有量、ならびに表面修飾の有無、表面修飾剤の種類、表面修飾条件及び未処理母体粒子の種類等によって制御することができる。
(樹脂:重合性モノマー)
保護層は、重合性金属酸化物と重合性モノマーを含有する組成物の重合硬化物で構成されている。これにより、保護層は、重合性モノマーの重合による一体的な重合体で構成され、その内部に金属酸化物粒子等が分散されている。また、当該金属酸化物粒子等を、上記重合体と重合反応による共有結合によって結合させることができる。
これら重合性モノマー、及び金属酸化物粒子はそれぞれ、一種単独で用いられても良いし、二種以上を混合して用いられても良い。
以下、保護層に適用可能な樹脂である重合性モノマーについて説明する。
本発明に係る重合性モノマーは、重合性基を有し、紫外線、可視光線、電子線等の活性線の照射により、又は加熱等のエネルギーの付加により、重合(硬化)して、一般に感光体のバインダー樹脂として用いられる樹脂となる化合物である。
重合性モノマーとしては、ラジカル重合反応を経て硬化する下記例示化合物M2で表されるラジカル重合性モノマーである。
重合性モノマーが有する重合性基は、炭素-炭素二重結合を有し、重合可能な基である。重合性基は、少ない光量又は短い時間での硬化が可能であることから、アクリロイル基(CH2=CHCO-)又はメタクリロイル基(CH2=C(CH3)CO-)であることが特に好ましい。
重合性モノマーとしては、具体的には、例えば、以下の例示化合物M2が挙げられる。下記の各式中
、R′は、メタクリロイル基を表す。
上記重合性モノマーは、公知の方法で合成することができ、また市販品としても入手することができる。
また、重合性モノマーとしては、重合性基を3個以上有する化合物であることが、架橋密度の高い高硬度の保護層を形成する観点から好ましい。
[感光体のその他の構成要素]
〔1.導電性支持体〕
本発明の感光体を構成する導電性支持体は、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、アルミニウム、銅、クロム、ニッケル、亜鉛、ステンレスなどの金属をドラム又はシート状に成形したもの、アルミニウムや銅などの金属箔をプラスチックフィルムにラミネートしたもの、アルミニウム、酸化インジウム、酸化スズなどをプラスチックフィルムに蒸着したもの、導電性物質を単独又はバインダー樹脂とともに塗布して導電層を設けた金属、プラスチックフィルム及び紙などが挙げられる。
〔2.中間層〕
本発明の感光体には、導電性支持体と感光層との間にバリアー機能と接着機能を有する中間層を設けることもできる。種々の故障防止などを考慮すると、中間層を設けるのが好ましい。
このような中間層は、例えば、バインダー樹脂(以下、「中間層用バインダー樹脂」ともいう。)及び必要に応じて導電性粒子や金属酸化物粒子が含有されてなるものである。
中間層用バインダー樹脂としては、特に制限されず、例えば、カゼイン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、エチレン-アクリル酸コポリマー、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチンなどが挙げられる。これらの中でもアルコール可溶性のポリアミド樹脂が好ましい。これら中間層用バインダー樹脂は1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
中間層には、抵抗調整の目的で各種の導電性粒子や金属酸化物粒子を含有させることができる。例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマスなどの各種金属酸化物粒子を用いることができる。また、スズをドープした酸化インジウム、アンチモンをドープした酸化スズ及び酸化ジルコニウムなどの導電性粒子(超微粒子)を用いることができる。
このような導電性粒子又は金属酸化物粒子の個数平均一次粒径は、0.3μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以下である。
これら導電性粒子又は金属酸化物粒子は、1種単独でも又は2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合した場合には、固溶体又は融着の形をとってもよい。
導電性粒子又は金属酸化物粒子の含有割合は、バインダー樹脂100質量部に対して20~400質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50~350質量部の範囲内である。
中間層の層厚は、0.1~15μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.3~10μmの範囲内である。
〔3.感光層〕
本発明の感光体では、中間層と最外層との間に、感光層を有する。より詳しくは、感光層は、電荷発生層と電荷輸送層とで構成されている。
(電荷発生層)
感光体を構成する感光層における電荷発生層は、電荷発生物質及びバインダー樹脂(以下、「電荷発生層用バインダー樹脂」ともいう。)が含有されてなるものである。
電荷発生物質としては、例えば、スーダンレッド、ダイアンブルーなどのアゾ原料、ピレンキノン、アントアントロンなどのキノン顔料、キノシアニン顔料、ペリレン顔料、インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ顔料、ピランスロン、ジフタロイルピレンなどの多環キノン顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、多環キノン顔料、チタニルフタロシアニン顔料が好ましい。これらの電荷発生物質は、1種単独でも又は2種以上を混合して用いてもよい。
電荷発生層用バインダー樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、及びこれらの樹脂の内二つ以上を含む共重合体樹脂(例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体樹脂)、ポリ-ビニルカルバゾール樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。これら電荷発生層用バインダー樹脂は、1種単独でも又は2種以上を混合して用いてもよい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有割合は、電荷発生層用バインダー樹脂100質量部に対して1~600質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50~500質量部の範囲内である。
電荷発生層の層厚は、電荷発生物質の特性、電荷発生層用バインダー樹脂の特性、含有割合などにより異なるが、おおむね0.01~5μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.05~3μmの範囲内である。
(電荷輸送層)
感光体を構成する感光層における電荷輸送層は、電荷輸送物質及びバインダー樹脂(以下、「電荷輸送層用バインダー樹脂」ともいう。)が含有されてなるものである。
電荷輸送層の電荷輸送物質としては、電荷(正孔)を輸送する物質として、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などが挙げられる。
最外層の下部に形成される電荷輸送層には、移動度が高く、分子量が大きい電荷輸送物質を含有させることが好ましく、このような電荷輸送物質としては、公知の化合物を併用することが可能で、例えば、カルバゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、イミダゾロン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ビスイミダゾリジン誘導体、ヒドラゾン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾロン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、キナゾリン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、アミノスチルベン誘導体、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリ-1-ビニルピレン及びポリ-9-ビニルアントラセン等が挙げられる。これらの化合物を単独又は2種類以上混合して使用することができる。
電荷輸送層用バインダー樹脂は、公知の樹脂を用いることができ、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリルニトリル共重合体樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体樹脂などが挙げられるが、ポリカーボネート樹脂が好ましい。さらにはBPA(ビスフェノールA)型、BPZ(ビスフェノールZ)型、ジメチルBPA型、BPA-ジメチルBPA共重合体型のポリカーボネート樹脂などが耐クラック、耐磨耗性、帯電特性の点で好ましい。これら電荷輸送層用バインダー樹脂は1種単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有割合は、電荷輸送層用バインダー樹脂100質量部に対して10~500質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは20~250質量部の範囲内である。
電荷輸送層の層厚は、電荷輸送物質の特性、電荷輸送層用バインダー樹脂の特性及び含有割合などによって異なるが、5~40μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~30μmの範囲内である。
電荷輸送層中には、酸化防止剤、電子導電剤、安定剤、シリコーンオイルなどを添加してもよい。酸化防止剤については特開2000-305291号公報、電子導電剤は特開昭50-137543号公報、同58-76483号公報などに開示されているものが好ましい。
[感光体の製造方法]
本発明の感光体を製造する方法としては、導電性支持体上の感光層上に、重合性化合物を含有する未硬化膜を形成する工程と、前記未硬化膜に光照射して硬化樹脂を含有する最外層を形成する工程とを備え、その他、特に制限されないが、下記工程を有する製造方法で製造されることが好ましい。
工程(1):導電性支持体の外周面に中間層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより、中間層を形成する工程、
工程(2):導電性支持体の外周面に、又は工程(1)により導電性支持体上に形成された中間層の外周面に、電荷発生層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより電荷発生層を形成する工程、
工程(3):導電性支持体の外周面、又は中間層上に形成された電荷発生層の外周面に電荷輸送層形成用の塗布液を塗布し、乾燥することにより電荷輸送層を形成する工程、
工程(4):電荷発生層上に形成された電荷輸送層の外周面に、最外層形成用の塗布液を塗布し、重合し、硬化させることにより最外層を形成する工程。
各層を形成するための塗布液中の各成分の濃度は、各層の層厚や生産速度に合わせて適宜選択される。
各層を形成するための塗布液において、導電性粒子や金属酸化物粒子等の粒子や電荷発生物質等の分散手段としては、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ホモミキサーなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
各層を形成するための塗布液の塗布方法としては、特に制限されないが、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ブレードコーティング法、ビームコーティング法、スライドホッパー法、円形スライドホッパー法などの公知の方法が挙げられる。
塗膜の乾燥方法は、溶媒の種類、層厚に応じて適宜選択することができるが、熱乾燥、又は自然乾燥が好ましい。
以下、各層の形成工程の詳細を説明する。
〈工程(1):中間層の形成〉
中間層は、溶媒中に中間層用バインダー樹脂を溶解させて、中間層形成用塗布液を調製し、必要に応じて導電性粒子や金属酸化物粒子、分散剤やレベリング剤等の他の成分を分散又は溶解させた後、当該塗布液を導電性支持体上に一定の層厚に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成することができる。
中間層形成用塗布液は、浸漬コーティング法を用いて塗布することが好ましい。
中間層の形成工程において使用する溶媒としては、導電性粒子や金属酸化物粒子を良好に分散し、中間層用バインダー樹脂、特にポリアミド樹脂を溶解するものが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール(2-ブタノール)などの炭素数1~4のアルコール類が、ポリアミド樹脂の溶解性と塗布性能に優れ好ましい。また、保存性、粒子の分散性を向上するために、前記溶媒と併用でき、好ましい効果を得られる助溶媒としては、ベンジルアルコール、トルエン、ジクロロメタン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
〈工程(2):電荷発生層の形成〉
電荷発生層は、溶媒中に電荷発生層用バインダー樹脂を溶解させた溶液中に、電荷発生物質を分散して、電荷発生層形成用塗布液を調製し、当該塗布液を中間層上に一定の層厚に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成することができる。
電荷発生層形成用塗布液は、浸漬コーティング法を用いて塗布することが好ましい。
電荷発生層の形成に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸tert-ブチル、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール(2-ブタノール)、メチルセロソルブ、4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
〈工程(3):電荷輸送層の形成〉
電荷輸送層は、溶媒中に電荷輸送層用バインダー樹脂及び電荷輸送物質を溶解させた、電荷輸送層形成用塗布液を調製し、当該塗布液を電荷発生層上に一定の層厚に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥することにより形成することができる。
電荷輸送層形成用塗布液は、浸漬コーティング法を用いて塗布することが好ましい。
電荷輸送層の形成に用いられる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール(2-ブタノール)、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
〈工程(4):保護層の形成〉
保護層は、樹脂を形成する重合性モノマーと、表面修飾した金属酸化物粒子と、必要に応じて重合開始剤、特定のラジカル捕捉剤、潤滑剤及び電荷輸送物質等の他の成分を公知の溶媒に添加して、最外層形成用塗布液を調製し、この保護層形成用塗布液を工程(3)により形成された電荷輸送層の外周面に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥し、紫外線や電子線などの活性線を照射することによって塗膜中の重合性化合物成分を重合させ、硬化されることにより保護層を形成することができる。
保護層形成用塗布液は、円形スライドホッパー塗布装置を用いてスライドホッパー法にて塗布することが好ましく、例えば、特開2015-114454号公報など開示されている方法で塗布することができる。
保護層の形成に用いられる溶媒としては、重合性化合物、金属酸化物粒子等を溶解又は分散させることができればいずれのものも使用でき、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール(2-ブタノール)、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、テトラヒドロフラン、1-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、ピリジン、ジエチルアミンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
重合性化合物を反応させる方法としては、特に制限されないが、例えば、電子線開裂で反応する方法、ラジカル重合開始剤を添加して、光、熱で反応する方法等が挙げられる。
硬化樹脂成分は、硬化処理として塗膜に活性線を照射し、ラジカルを発生させて重合し、かつ分子間及び分子内で架橋反応による架橋結合を形成して硬化することにより、生成される。活性線としては紫外線や電子線がより好ましく、紫外線が使用しやすく特に好ましい。
《電子写真画像形成方法》
本発明に係る電子写真画像形成方法は、少なくとも、
1)電子写真感光体の表面を帯電する帯電工程と、
2)当該電子写真感光体の表面を露光することにより、静電潜像を形成する露光工程と、
3)当該静電潜像をトナーにより顕像化しトナー画像を形成する現像工程と、
4)当該トナー画像を転写媒体に転写する転写工程と、
を有し、1)~4)で使用する電子写真感光体が本発明の電子写真感光体であることが好ましい。
また、必要に応じて
5)残存トナーを除去するクリーニング工程と、
6)残存電荷を除去する除電工程を、
有していてもよい。
本発明の感光体は、電子写真方式の公知の種々の画像形成方法において用いることができる。例えば、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、一つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置及び感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法も用いることができる。
本発明に係る電子写真画像形成方法としては、具体的には、本発明の感光体を使用して、感光体上に帯電装置にて帯電(帯電工程)し、像露光(露光工程)することにより形成された静電潜像を、現像装置を用いて現像(現像工程)することにより顕像化させてトナー画像を得る。このトナー画像をコピー用紙又は転写ベルト等の転写媒体上に転写(転写工程)し、その後、除電工程を経て、次の画像形成のサイクルが行われる。転写ベルト等の転写媒体上に転写されたトナー画像は、コピー用紙上に転写され、コピー用紙上に転写されたトナー画像を接触加熱方式等の定着処理によってコピー用紙に定着(定着工程)させることにより、可視画像を得る。転写工程の後、感光体上に残留したトナー(転写残トナー)は、ゴムブレード等により除去(クリーニング工程)される。このクリーニング工程は、除電工程の前でも後であってもよいが、除電工程が光照射による除電の場合は、クリーニング工程の後の方が、感光体上に残留するトナーが除電光の吸収を妨げることがないので、効果的に除電が行えるので好ましい。
除電工程においては、交流除電(AC除電)又は光除電のどちらでもよいが、交流除電では、交流電源の設置が必要になり、スペースの問題、又は装置が大がかりになるなどの問題があり、光除電の方が好ましい。
《電子写真画像形成装置》
次いで、具体的な電子写真画像形成方法について、電子写真画像形成装置を用いて説明する。
本発明の電子写真画像形成装置は、本発明の感光体を使用して、感光体上に帯電装置にて帯電する帯電手段、像露光することにより形成された静電潜像を形成する露光手段、現像装置を用いて現像することにより顕像化させてトナー画像を得る現像手段、このトナー画像を用紙又は転写ベルト等の転写媒体上に転写する転写手段、及び除電手段を有している。コピー用紙上に直接転写されたトナー画像及び転写ベルト等の転写媒体を経て用紙上に転写されたトナー画像は接触加熱方式等の定着処理によってコピー用紙に定着する定着手段により可視画像を得る。転写の後、感光体上に残留したトナー(転写残トナー)は、クリーニングブレード等のクリーニング手段によりにより除去される。
図7は、本発明の電子写真感光体を備えるタンデム型の電子写真画像形成装置の構造を示す断面模式図である。
図7に示す画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、中間転写体ユニット7と、給紙手段21及び定着手段24とからなる。電子写真画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
4つの画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkを中心に、帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bk、及び感光体1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C、6Bkより構成されている。
なお、本発明の電子写真画像形成装置は、感光体1Y、1M、1C、1Bkとして、各々上記説明した本発明の感光体を用いる。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、備えるトナーの色がそれぞれイエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、ブラック(Bk)色というように異なることを除き同じ構成である。よって、以下では、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを有し、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー像を形成するものである。
帯電手段2Yは、感光体1Yの表面を一様に負極性に帯電させる手段である。帯電手段2Yとしては、例えば、コロナ放電型の帯電器が用いられる。
露光手段3Yは、帯電手段2Yにより一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段である。この露光手段3Yとしては、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、又は、レーザー光学系などが用いられる。
現像手段4Yは、例えばマグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ(図示せず)及び感光体と、この現像スリーブとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
現像手段4Yは、例えばマグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ、及び当該現像スリーブと感光体との間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
定着手段24は、例えば、内部に加熱源を備えた加熱ローラーと、この加熱ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラーとにより構成されてなる熱ローラー定着方式のものが挙げられる。
クリーニング手段6Yは、クリーニングブレードより構成されている。なお、このクリーニングブレードより上流側にブラシローラーを設けてもよい。
また、感光体1Yの表面に滑剤を供給する(塗布する)滑剤供給手段(図示せず)を設けてもよい。滑剤供給手段は、例えば、一次転写ローラー5Yの下流側かつクリーニング手段6Yの上流側に設けることができる。ただし、クリーニング手段6Yの下流側であってもよい。
画像形成装置100としては、感光体と、現像手段、クリーニング手段などの構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。また、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段の少なくとも一つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としてもよい。
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラーにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、5M、5C及び5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する画像支持体:例えば普通紙、透明シートなど)Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、及びレジストローラー23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材などの感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体という。
一方、二次転写手段としての二次転写ローラー5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、一次転写ローラー5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラー5Y、5M及び5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M及び1Cに当接する。
二次転写ローラー5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
また、装置本体から筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C及び10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とからなる。
画像形成部10Y、10M、10C及び10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C及び1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラー71、72、73及び74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラー5Y、5M、5C及び5Bk、並びにクリーニング手段6bとからなる。
なお、図7では、帯電方式として、帯電ローラー方式を一例として示したが、本発明の電子写真画像形成装置においては、スコロトロン帯電方式も適用することができる。
《トナー及び現像剤》
本発明において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むものであり、その他必要に応じて、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
本発明において、画像形成装置に適用するトナーとしては、特に制限されず、公知の各種トナーを用いることができる。
トナーとしては、粉砕トナー及び重合トナーのいずれを用いることもできるが、高い画質の画像が得られる観点から、重合トナーを用いることが好ましい。
トナーの平均粒径は、特に制限されないが、体積基準のメジアン径で2~8μmの範囲内であることが好ましい。この範囲とすることにより、解像度をより高くすることができる。
また、トナー母体粒子には、外添剤として、平均粒径10~300nm程度のシリカ及びチタニアなどの無機粒子、0.2~3μm程度の研磨剤等を適宜量、外添剤として外部添加することができる。
トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄などの強磁性金属、強磁性金属とアルミニウム及び鉛などの合金、フェライト及びマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。これらの中でも、特にフェライトが好ましい。
キャリアとしては、さらに樹脂により被覆されているもの、又は樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、シクロヘキシルメタクリレート-メチルメタクリレート共重合体などを用いることが好ましい。
キャリアの体積基準のメジアン径は15~100μmの範囲内が好ましく、25~60μmの範囲内がより好ましい。
二成分現像剤に含まれるトナーの濃度は、4.0~8.0質量%の範囲内であることが好ましい。
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。また、特記しない限り、各操作は、室温(25℃)で行った。
《表面修飾した金属酸化物粒子の調製》
〔表面修飾した金属酸化物粒子1の調製〕
前記「表面修飾した金属酸化物粒子の調製」の項で記載した「金属酸化物粒子A(ジメチルジクロロシラン処理)の調製方法」に従って、個数平均一次粒径が20nmのSiO2粒子表面にジメチルジクロロシランで表面修飾した金属酸化物粒子1を調製した。
〔表面修飾した金属酸化物粒子2の調製〕
「表面修飾した金属酸化物粒子の調製」の項で記載した「金属酸化物粒子Cの調製方法」に従って、個数平均一次粒径が20nmのSnO2粒子表面をKF9908で表面修飾した金属酸化物粒子2を調製した。
〔表面修飾した金属酸化物粒子3の調製〕
(複合金属酸化物粒子(未処理)の調製)
前記「表面修飾した金属酸化物粒子の調製」の項で記載した複合金属酸化物粒子(未処理)の調製方法に従って、硫酸バリウムのコア粒子表面に酸化スズがシェリングされた個数平均一次粒径が100nmの複合金属酸化物粒子(Sn02/BaSO4)を調製した。
(表面修飾処理)
次いで、エタノール100mLに上記複合金属酸化物粒子(Sn02/BaSO4)10gを加え、USホモジナイサーを用いて60分間分散させた。次いで、カップリング剤として3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製の「KBM503」)0.3g及びエタノール10mLを加え、USホモジナイサーを用いて30分間分散を行った。エバポレーターによって溶剤を除去した後、120℃で1時間加熱することにより、重合性基を有する金属酸化物粒子を得た。
上記で得られた金属酸化物粒子5gを、2-ブタノール50mLに加え、USホモジナイザーを用いて60分間分散させた。次いで、シリコーン主鎖の側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾剤(信越化学社製の「KF-9908」)0.15gを加えて、USホモジナイザーを用いて60分間分散を行った。エバポレーターによって溶剤を除去した後、120℃で1時間加熱することにより、側鎖にシリコーン鎖を有する表面修飾が施され、且つ重合性基を有する金属酸化物粒子3を得た。
〔表面修飾した金属酸化物粒子4の調製〕
上記表面修飾した金属酸化物粒子3の調製において、金属酸化物粒子として、複合金属酸化物粒子(Sn02/BaSO4)に代えて、個数平均一次粒径が20nmのSnO2粒子を用いた以外は同様にして、表面修飾した金属酸化物粒子4を得た。
〔表面修飾した金属酸化物粒子5の調製〕
上記表面修飾した金属酸化物粒子2の調製において、金属酸化物粒子として、個数平均一次粒径が20nmのSnO2粒子に代えて、複合金属酸化物粒子(Sn02/BaSO4)を用いた以外は同様にして、表面修飾した金属酸化物粒子5を得た。
〔表面修飾した金属酸化物粒子6~12の調製〕
上記表面修飾した金属酸化物粒子3の調製において、表面修飾する際の非重合性表面修飾剤の種類を、表Iに記載の化合物にそれぞれ変更した以外は同様にして、表面修飾した金属酸化物粒子6~12を調製した。
〔表面修飾した金属酸化物粒子13の調製〕
上記表面修飾した金属酸化物粒子4の調製において、表面修飾する際の非重合性表面修飾剤KF9908(信越化学社製)を、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体よりなる特定のフッ素化表面修飾剤(novec2702)に変更した以外は同様にして、表面修飾した金属酸化物粒子13を調製した。
(表面修飾剤)
上記各表面修飾した金属酸化物粒子の調製に用いた各表面修飾剤の詳細は、以下の通りである。
〈非重合性表面修飾剤〉
・ジメチルジクロロシラン
・T3560:フルオロアルキルシラン(東京化成工業社製)
・KY-108:パーフルオロポリエーテル鎖を有するアルコキシシラン(信越化学工業社製)
・novec2702:2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(3M社製)
・オクチルシラン
・KF99:直鎖型シリコーン(メチルハイドロジェンシリコーンオイル、信越化学工業社製)
・KF9901:下記構造で表される直鎖型メチルハイドロジェンシリコーンオイル(信越化学工業社製)
・KF9908:シリコーン主鎖の側鎖に、シリコーン鎖を有する分岐型シリコーン(信越化学工業社製)
〈重合性表面修飾剤〉
・KBM503:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製)
《感光体の作製》
〔感光体1の作製〕
(導電性支持体の準備)
円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、導電性支持体を準備した。
(中間層の形成)
下記成分を下記の構成比率で混合し、分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行い、中間層形成用塗布液を調製した。調製した中間層形成用塗布液を浸漬塗布法によって、上記導電性支持体の表面にディップ塗布し、110℃で20分間乾燥し、膜厚が2μmの中間層を導電性支持体上に形成した。
〈中間層形成用塗布液の調製〉
ポリアミド樹脂(X1010 ダイセルデグサ社製) 10質量部
酸化チタン粒子(SMT500SAS テイカ社製) 11質量部
エタノール 200質量部
(電荷発生層の形成)
下記成分を下記の構成比率で混合し、循環式超音波ホモジナイザー(RUS-600TCVP;株式会社日本精機製作所製)を19.5kHz、600Wにて循環流量40L/時間で0.5時間分散することにより、電荷発生層形成用塗布液を調製した。調製した電荷発生層形成用塗布液を浸漬塗布法によって中間層の表面に塗布し、乾燥させて、膜厚が0.3μmの電荷発生層を中間層上に形成した。なお、電荷発生物質は、Cu-Kα特性X線回折スペクトル測定で8.3°、24.7°、25.1°、26.5°に明確なピークを有するチタニルフタロシアニン及び(2R,3R)-2,3-ブタンジオールの1:1付加体と、未付加のチタニルフタロシアニンの混晶を使用した。
〈電荷発生層形成用塗布液〉
電荷発生物質 24質量部
ポリビニルブチラール樹脂(エスレックBL-1、積水化学工業社製) 12質量部
混合液(3-メチル-2-ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(体積比)
400質量部
(電荷輸送層の形成)
下記成分を下記の構成比率で混合して調製した電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法によって電荷発生層の表面に塗布し、120℃で70分間乾燥することにより、膜厚が24μmの電荷輸送層を電荷発生層上に形成した。
〈電荷輸送層形成用塗布液〉
下記構造式で表される電荷輸送物質 60質量部
ポリカーボネート樹脂(Z300、三菱ガス化学社製) 100質量部
酸化防止剤(IRGANOX1010 BASF社製) 4質量部
(保護層の形成)
下記成分を下記の構成比率で混合し、分散及び溶解して調製した保護層形成用塗布液1を、電荷輸送層の表面に円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。次いで、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚6.0μmの熱可塑性型の保護層を形成し、感光体1を作製した。ジメチルジクロロシランの保護層における樹脂1質量部に対する含有量は、0.1質量部である。
〈保護層形成用塗布液1の調製〉
表面修飾した金属酸化物粒子1(ジメチルジクロロシランで表面修飾した個数平均1次粒径20nmのシリカ粒子) 120質量部
電荷輸送物質:(N-(4-メチルフェニル)-N-{4-(β-フェニルスチリル)フェニル}-p-トルイジン) 150質量部
ポリカーボネート樹脂(Z300:三菱ガス化学社製) 300質量部
酸化防止剤(IRGANOX1010::BASFジャパン社製) 12質量部
テトラヒドロフラン(THF) 2800質量部
シリコーンオイル(KF-54:信越化学社製) 4質量部
ジメチルジクロロシラン 30質量部
〔感光体2の作製〕
上記感光体1の作製において、電荷輸送層までは同様にして形成し、保護層を下記の方法に従って形成し、感光体2を作製した。
(保護層の形成)
下記成分を下記の構成比率で混合して、保護層形成用塗布液2(ラジカル重合性樹脂組成物)を、電荷輸送層の表面に円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。次いで、形成した塗膜に対し、メタルハライドランプで紫外線を1分間照射して当該塗膜を硬化させることにより、膜厚が3.0μmの保護層を電荷輸送層上に形成した。
〈保護層形成用塗布液2の調製〉
ラジカル重合性モノマー(例示化合物M2) 120質量部
表面修飾した金属酸化物粒子2(KF9908で表面修飾した個数平均1次粒径20nmの酸化錫) 100質量部
重合開始剤(イルガキュア819、BASFジャパン社製) 10質量部
2-ブタノール 400質量部
KF9908(前出、信越化学社製) 12質量部
〔感光体3の作製〕
上記感光体2の作製において、保護層を下記の方法に従って形成した以外は同様にして、感光体3を作製した。
(保護層の形成)
下記成分を下記の構成比率で混合して、保護層形成用塗布液3(ラジカル重合性樹脂組成物)を、電荷輸送層の表面に円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。次いで、形成した塗膜に対し、メタルハライドランプで紫外線を1分間照射して当該塗膜を硬化させることにより、膜厚が3.0μmの保護層を電荷輸送層上に形成した。KF9908の保護層における樹脂1質量部に対する含有量は、0.005質量部である。
〈保護層形成用塗布液3の調製〉
ラジカル重合性モノマー(例示化合物M2) 120質量部
表面修飾した金属酸化物粒子3(重合性表面修飾剤としてKBM503、非重合性表面修飾剤としてKF9908で表面修飾した個数平均一次粒径が100nmの複合金属酸化物粒子(Sn02/BaSO4)) 100質量部
重合開始剤(イルガキュア819、BASFジャパン社製) 10質量部
2-ブタノール 400質量部
KF9908(前出、信越化学社製) 0.6質量部
〔感光体4~24の作製〕
上記感光体3の作製において、保護層の形成条件として、表Iに記載の表面修飾した金属酸化物粒子の種類、保護層形成用塗布液における表面修飾剤の種類と添加量をそれぞれ変更した以外は同様にして、感光体4~24を作製した。
なお、感光体13、15、16は、感光体14に対し、保護層形成時の表面修飾した金属酸化物粒子3の添加量を適宜調整して、凸部間の平均距離を180nmから、それぞれ100nm、250nm、280nmに変更した。
〔感光体25の作製〕
上記感光体1の作製において、電荷輸送層までは同様にして形成し、保護層を下記の方法に従って形成し、感光体25を作製した。
(保護層の形成)
下記成分を下記の構成比率で混合し、分散及び溶解して調製した保護層形成用塗布液20を、電荷輸送層の表面に円形スライドホッパー塗布機を用いて塗布した。次いで、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚6.0μmの熱可塑性型の保護層を形成し、感光体25を作製した。novec2702の保護層における樹脂1質量部に対する含有量は、0.1質量部である。
〈保護層形成用塗布液25の調製〉
電荷輸送物質:(N-(4-メチルフェニル)-N-{4-(β-フェニルスチリル)フェニル}-p-トルイジン) 150質量部
ポリカーボネート樹脂(Z300:三菱ガス化学社製) 300質量部
酸化防止剤(IRGANOX1010、BASFジャパン社製) 12質量部
テトラヒドロフラン(THF) 2800質量部
シリコーンオイル(KF-54:信越化学社製) 4質量部
novec2702(前出、3M社製) 30質量部
〔感光体26の作製〕
上記感光体12の作製において、電荷輸送層までは同様にして形成し、保護層形成用塗布液として、表面修飾された金属酸化物粒子に添加する表面修飾剤として、KF9908に代えて、novec2702(前出、3M社製)を用い、かつ、樹脂中に含まれる表面修飾剤であるKF9908(前出、信越化学社製)を除いた以外は同様にして、感光体26を作製した。
〔感光体27の作製〕
上記感光体14の作製において、電荷輸送層までは同様にして形成し、保護層形成用塗布液として、樹脂中に含まれる表面修飾剤である表面修飾剤KF9908に代えて、novec2702(前出、3M社製)を用いた以外は同様にして、感光体27を作製した。
〔保護層表面における凸部間の平均距離の測定〕
上記作製した各感光体の保護層表面を下記の方法で観察して、凸部間の平均距離を測定した。
保護層について、走査型電子顕微鏡「JSM-7401F」(日本電子株式会社製)により撮影(倍率:10000倍、加速電圧:2kV)した写真画像(図6の(a)参照。)を、画像処理解析装置LUZEX AP(株式会社ニレコ製)自動画像処理解析システム ルーゼックス(登録商標)AP ソフトウエアVer.1.32(株式会社ニレコ製)に取り込み、モノクロヒストグラムの極大値+30レベルを閾値として該写真画像を二値化(図6の(b)参照。)した後、隣接重心間距離を算出して、凸部構造の凸部間平均距離R(nm)を求め、得られた結果を表Iに示す。
《感光体の評価》
下記の評価には、フルカラー印刷機(「bizhub PRESS(登録商標)C658」、コニカミノルタ株式会社製)を使用した。Bizhub C658は波長780nmのレーザー露光、反転現像を行う中間転写、タンデム方式のカラー複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)であり、感光体のみ、上記作製した感光体を装着した。
次いで、常温常湿環境(温度20℃、湿度50%RH)にて、YMCK各色の印字面積率10%のA4版画像をA4版中性紙に20万枚印刷出力した後に、下記に示す方法に従って各評価を行った。
(1)感光体の摩耗耐性の評価
上記20万枚印刷を行ったのち、耐久試験前後における感光体の保護層の膜厚減耗量により評価した。具体的には、保護層の膜厚は、均一膜厚部分(塗布の先端部及び後端部の膜厚変動部分を、膜厚プロフィールを作製して除く。)をランダムに10ヶ所測定し、その平均値を保護層の膜厚とする。
膜厚測定器は、渦電流方式の膜厚測定器「EDDY560C」(HELMUT FISCHER GMBTE CO社製)を用い、耐久試験前後の保護層の膜厚の差を膜厚減耗量(μm)として算出した。評価結果が「A」から「D」の場合を実用可能と判断した。
A:膜厚減耗量が0.05μm未満
B:膜厚減耗量が0.05μm以上、0.10μm未満
C:膜厚減耗量が0.10μm以上、0.15μm未満
D:膜厚減耗量が0.15μm以上、0.20μm未満
E:膜厚減耗量が0.20μm以上
(2)すり抜け耐性の評価
上記常温常湿環境(温度20℃、湿度50%RH)で20万枚印刷を行ったのち、低温低湿環境(温度10℃、湿度20%RH)にて、紙の搬送方向の前方部に黒字部、後方部に白地部が位置するように、図8の(a)に示すカバレッジ率80%のハーフトーン画像を、A3版中性紙に2万枚印刷し、2万枚目の紙の白地部を目視により観察し、トナーのすり抜けを評価した。評価結果が「A」及び「B」の場合を実用可能と判断した。
A:白地部に汚れが見られなかった
B:白地部に軽微なスジ状の汚れが発生したが、実用上の問題はない
C:白地部に明らかなスジ状の汚れが発生し、実用上の問題がある
(3)細線再現性の評価
上記常温常湿環境(温度20℃、湿度50%RH)で20万枚印刷を行ったのち、高温高湿環境(温度30℃、湿度80%RH)にて、1ドットの線を有する図8の(b)で示す画像を、A3版PODグラスコート紙に印刷し、出力画像の線幅を原稿画像の線幅と比較して、細線再現性を評価した。評価結果が「A」から「C」の場合を実用可能と判断した。
A:いずれの黒線が途切れず一定の線幅で形成されている
B:斜めの黒線の線幅が一部細くなったり乱れたりしているが途切れてはいない
C:縦または横の黒線の線幅が一部細くなったり乱れたりしているが途切れてはいない
D:黒線の途切れている箇所が一部ある
E:黒線が形成されていない
表IIに示す結果より明らかなように、本発明又は参考例の感光体は、比較例に対し、摩擦耐性に優れ、かつ本発明の感光体を用いて形成した電子写真画像は、すり抜け耐性及び細線再現性に優れた効果を発現していることがわかる。
更に詳しくは、本発明又は参考例の感光体においては、樹脂中に含まれる表面修飾剤の含有量を0.005~0.55部まで変化して作製した感光体3~11においては、当該表面修飾剤の含有量が0.01~0.5部の範囲内にある感光体4~10において、感光体摩擦耐性や細線再現性により優れた効果を発現していることが分かる。
また、表面における凸部間平均距離Rに関しては、凸部間平均距離Rを80~280nmの範囲内で作製した感光体12~16においては、凸部間の平均距離Rが、100~250nmの範囲内である感光体13~15において、より優れた効果を発現していることが分かる。
また、感光体14と感光体17を比較すると、金属酸化物粒子に対し、重合性基を有する表面修飾剤を適用している感光体14が、重合性基を有している表面修飾剤を適用していない感光体17に対し、より優れた効果を発揮していることが分かる。