JP7194447B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびそれを成形してなる成形体 - Google Patents
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Description
日本国特開2011-46781号公報においては、融点と結晶化温度の差が33℃以上であるポリアミド樹脂組成物を使用して、成形流動性を向上させることが開示されている。
[1]半芳香族ポリアミド(A)とポリフェニレンエーテル(B)と強化材(D)とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
半芳香族ポリアミド(A)が芳香族ジカルボン酸成分とジアミン成分とを含有し、
芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸を50モル%以上含有し、
ジアミン成分が1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミンまたは1,12-ドデカンジアミンを50モル%以上含有し、
半芳香族ポリアミド(A)とポリフェニレンエーテル(B)との質量比(A/B)が、15/85~85/15であり、
強化材(D)が炭素繊維を含み、
熱可塑性樹脂組成物の融点が290℃以上であり、
熱可塑性樹脂組成物の融点と結晶化温度との差が30℃以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[2]さらに結晶核剤(C)を含むことを特徴とする[1]記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]さらに相溶化剤(E)を含むことを特徴とする[1]または[2]記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]さらに耐衝撃改良剤(F)を含むことを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]上記[1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、融点と結晶化温度との差が30℃以下であることが必要であり、28℃以下であることが好ましく、25℃以下であることがさらに好ましい。
融点と結晶化温度は、示差走査熱量計により測定できる。融点そのもの、あるいは融点と結晶化温度との差は、樹脂組成物の結晶性を表す指標であり、樹脂組成物は、融点が高いほど、あるいは融点と結晶化温度との差が小さいほど、高結晶性であると言える。樹脂組成物は、高結晶性であると、成形時の降温過程での結晶化が速く、得られる成形体も結晶化度が高くなる。すなわち、低吸水性、高耐熱性であり、高温下において高強度や高弾性率である成形体が得やすくなる。
結晶核剤(C)としては、例えば、タルク、シリカ、グラファイト、窒化ホウ素等の無機微粒子、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。中でも、タルク、シリカ、窒化ホウ素等の無機微粒子が好ましく、特にタルクが好ましい。
結晶核剤の平均粒子径は、0.1~10μmであることが好ましく、0.1~5μmであることがより好ましく、0.5~3μmであることがさらに好ましい。
強化材(D)としては、繊維状強化材が挙げられる。繊維状強化材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アスベスト繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、アラミド繊維、ポリベンズオキサゾール繊維、ケナフ繊維、竹繊維、麻繊維、バガス繊維、高強度ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維、スチール繊維、セラミックス繊維、玄武岩繊維が挙げられる。
中でも、機械的特性の向上効果が高く、半芳香族ポリアミド(A)との溶融混練時の加熱温度に耐え得る耐熱性を有し、入手しやすいことから、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維が好ましい。ガラス繊維の具体例としては、例えば、日東紡社製「CS3G225S」、日本電気硝子社製「T-781H」が挙げられ、炭素繊維の具体例としては、例えば、東邦テナックス社製「HTA-C6-NR」が挙げられる。
繊維状強化材は、単独で用いてもよいし、併用してもよい。
また、繊維径は3~20μmであることが好ましく、5~13μmであることがさらに好ましい。繊維径が3~20μmであることにより、溶融混練時に折損することなく、樹脂組成物を効率よく補強することができる。
繊維状強化材の断面形状としては、例えば、円形、長方形、楕円、それ以外の異形断面が挙げられ、中でも、円形が好ましい。
着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック等の顔料、ニグロシン等の染料が挙げられる。安定剤としては、例えば、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、光安定剤、銅化合物からなる熱安定剤、アルコール類からなる熱安定剤が挙げられる。難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、ホスフィン酸金属塩からなるリン系難燃剤、ホスファゼン化合物からなる難燃剤が挙げられる。難燃助剤としては、例えば、錫酸亜鉛、硼酸亜鉛、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンやアンチモン酸ナトリウム等の金属塩が挙げられる。炭化抑制剤は、耐トラッキング性を向上させる添加剤であり、例えば、金属水酸化物、ホウ酸金属塩等の無機物が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物を成形して成形体を製造する方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、焼結成形法が挙げられる。中でも、機械的特性、成形性の向上効果が大きいことから、射出成形法が好ましい。
自動車部品としては、例えば、サーモスタット部材、インバータのIGBTモジュール部材、インシュレーター、モーターインシュレーター、エキゾーストフィニッシャー、パワーデバイス筐体、ECU筐体、PCU筐体、モーター部材、コイル部材、ケーブルの被覆材、車載用カメラ筐体、車載用カメラレンズホルダー、車載用コネクタ、エンジンマウント、インタークーラー、ベアリング リテーナー、オイルシールリング、チェーンカバー、ボールジョイント、チェーンテンショナー、スターターギア、減速機ギア、トランスミッションギア、電動パワーステアリングギア、車載用リチウムイオン電池トレー、車載用高電圧ヒューズの筐体、自動車用ターボチャージャーインペラ等が挙げられる。
電気・電子部品としては、例えば、コネクタ、ECUコネクタ、メインテンロックコネクタ、モジュラージャック、リフレクタ、LEDリフレクタ、スイッチ、センサー、ソケット、ピンソケット、コンデンサー、ジャック、ヒューズホルダー、リレー、コイルボビン、ブレーカー、回路部品、電磁開閉器、ホルダー、カバー、プラグ、携帯用パソコンやワープロ等の電気・電子機器の筐体部品、インペラ、掃除機インペラ、抵抗器、可変抵抗器、IC、LEDの筐体、カメラ筐体、カメラ鏡筒、カメラレンズホルダー、タクトスイッチ、照明用タクトスイッチ、ヘアアイロン筐体、ヘアアイロン櫛、全モールド直流専用小型スイッチ、有機ELディスプレイスイッチ、3Dプリンタ用の材料、モーター用ボンド磁石用の材料が挙げられる。
雑貨としては、例えば、トレー、シート、結束バンドが挙げられる。
産業機器部品としては、例えばインシュレーター類、コネクタ類、ギア類、スイッチ類、モーター類、センサー、インペラ、プラレールチェーンが挙げられる。
これらの用途の中でも、自動車のエンジンルームに使用する部品等に特に好適に用いることができる。
熱可塑性樹脂組成物および成形体の特性は、以下の方法により測定、評価した。
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC-7型)を用い、昇温速度20℃/分で360℃まで昇温した後、360℃で5分間保持し、降温速度20℃/分で25℃まで降温し、さらに25℃で5分間保持後、再び昇温速度20℃/分で昇温した。2回目の昇温時に観測された吸熱ピークのトップを融点とし、降温時に観測された発熱ピークのトップを結晶化温度とした。
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを十分に乾燥した後、射出成形機(ファナック社製 S2000i-100B型)を用いて、シリンダー温度(融点+15℃)、金型温度130℃、成形サイクル35秒の条件で射出成形し、ダンベル試験片を作製した。
得られたダンベル試験片を用いて、ISO1183に準拠して密度を測定した。
上記(3)で得られたダンベル試験片を用いて、ISO75-1,2に準拠して荷重1.8MPaにおける荷重たわみ温度を測定した。
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを十分に乾燥した後、射出成形機(日本製鋼所社製 J35-AD)を用いて、シリンダー温度(融点+15℃)、金型温度140℃、成形サイクル25秒の条件で、20mm×20mm×0.5mmの試験片を成形した。
得られた試験片を、ISO1110に準拠して、温度70℃、相対湿度62%の条件で吸湿処理をおこない、吸湿処理前後の質量から、下記式を用いて算出した。
吸水率[%]=(吸湿後の質量-吸湿前の質量)/(吸湿前の質量)×100
上記(2)で得られたダンベル試験片を用いて、23℃雰囲気下にて、ISO178に準拠して曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。同様に、150℃、200℃雰囲気下にても、曲げ強度および曲げ弾性率を測定した。
150℃、200℃雰囲気下での曲げ強度を、それぞれ、23℃雰囲気下での曲げ強度で割って、150℃、200℃における曲げ強度保持率を算出した。
同様に、150℃、200℃雰囲気下での曲げ弾性率を、それぞれ、23℃雰囲気下での曲げ弾性率で割って、150℃、200℃における曲げ弾性率保持率を算出した。
上記(2)で得られたダンベル試験片から短冊状試験片を切り出して、ノッチを付けた後、23℃雰囲気下にて、ISO179-1eAに準拠してノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。
実施例および比較例で用いた原料を以下に示す。
・半芳香族ポリアミド(A-1)
ジカルボン酸成分として粉末状のテレフタル酸(TPA)4.81kgと、モノカルボン酸成分としてステアリン酸(STA)0.15kgと、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物9.3gとを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、ジアミン成分として100℃に加温した1,10-デカンジアミン(DDA)5.04kgを、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応生成物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、TPA:DDA:STA=49.3:49.8:0.9(原料モノマーの官能基の当量比率は、TPA:DDA:STA=49.5:50.0:0.5)であった。
続いて、得られた反応生成物を、同じ反応装置で、窒素気流下、250℃、回転数30rpmで8時間加熱して重合し、半芳香族ポリアミドの粉末を作製した。
その後、得られた半芳香族ポリアミドの粉末を、二軸混練機を用いてストランド状とし、ストランドを水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングして半芳香族ポリアミド(A-1)ペレットを得た。
樹脂組成を表1に示すように変更した以外は、半芳香族ポリアミド(A-1)と同様にして、半芳香族ポリアミドペレットを得た。
樹脂組成を表1に示すように変更することと、得られた反応生成物を、窒素気流下、240℃、回転数30rpmで12時間加熱して重合すること以外は、半芳香族ポリアミド(A-1)の製造方法と同様の操作をおこなって半芳香族ポリアミド(A-6)ペレットを得た。
・B-1:ポリ-2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル(SABIC社製 ノリルPPO640)
・C-1:タルク(日本タルク社製 SG-2000)、平均粒径1μm
(4)強化材
・D-1:炭素繊維(東邦テナックス社製 HTA-C6-NR)、平均繊維長6mm
・D-2:ガラス繊維(日東紡社製 CS3G225S)、平均繊維長3mm
(5)相溶化剤(E)
・E-1:無水マレイン酸(試薬)
(6)耐衝撃改良剤
・F-1:水添ブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製 タフテックH1272)
半芳香族ポリアミド(A-1)58.65質量部、ポリフェニレンエーテル(B-1)10.35質量部、結晶核剤(C-1)1.0質量部をドライブレンドし、ロスインウェイト式連続定量供給装置(クボタ社製 CE-W-1型)を用いて計量し、スクリュー径26mm、L/D50の同方向二軸押出機(東芝機械社製 TEM26SS型)の主供給口に供給して、溶融混練をおこなった。途中、サイドフィーダーより強化材(D-1)30.0質量部を供給し、さらに溶融混練をおこなった。ダイスからストランド状に引き取った後、水槽に通して冷却固化し、それをペレタイザーでカッティングして熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。押出機のバレル温度設定は、((A-1)の融点-5~+15℃)、スクリュー回転数250rpm、吐出量30kg/hとした。
熱可塑性樹脂組成物の組成を表2、4に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作をおこなって樹脂組成物のペレットを得た。
実施例2、5~7において、樹脂組成物は、結晶核剤を含有した方が、吸水性が低く、荷重たわみ温度、高温時の曲げ強度、高温時の曲げ弾性率が高く、耐熱性に優れていた。
実施例2、8~10において、樹脂組成物は、半芳香族ポリアミドとして、ジカルボン酸成分とジアミン成分とがそれぞれ1種類であるホモポリマーを含有した方が、吸水率が低く、荷重たわみ温度が高く、高温時の曲げ強度、高温時の曲げ弾性率が高くなった。
実施例2、12~13において、樹脂組成物は、強化材の含有量が多いほど、荷重たわみ温度、高温時の曲げ強度、高温時の曲げ弾性率が高く、耐熱性に優れていた。
実施例13、参考例2において、樹脂組成物は、ガラス繊維よりも炭素繊維を含有した方が、荷重たわみ温度、高温時の曲げ強度、高温時の曲げ弾性率が高く、耐熱性に優れていた。
実施例2、15、16において、樹脂組成物は、相溶化剤を含有した方が、曲げ強度が高くなった。
実施例2、17において、樹脂組成物は、耐衝撃改良剤を含有した方が、シャルピー衝撃強度が高くなった。
比較例3、4の樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド(A)とポリフェニレンエーテル(B)の質量比(A/B)が、15/85~85/15を外れて、ポリフェニレンエーテルの含有量が多かったため、粘度が高すぎて溶融混練ができなかった。
比較例5~20の樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド(A)の構成や含有量が本発明で規定する要件を満たしていないため、150℃および200℃の高温環境下において、曲げ強度や曲げ弾性率が低下するものであり、また、吸水率も高いものであった。
Claims (5)
- 半芳香族ポリアミド(A)とポリフェニレンエーテル(B)と強化材(D)とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
半芳香族ポリアミド(A)が芳香族ジカルボン酸成分とジアミン成分とを含有し、
芳香族ジカルボン酸成分がテレフタル酸を50モル%以上含有し、
ジアミン成分が1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミンまたは1,12-ドデカンジアミンを50モル%以上含有し、
半芳香族ポリアミド(A)とポリフェニレンエーテル(B)との質量比(A/B)が、15/85~85/15であり、
強化材(D)が炭素繊維を含み、
熱可塑性樹脂組成物の融点が290℃以上であり、
熱可塑性樹脂組成物の融点と結晶化温度との差が30℃以下であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - さらに結晶核剤(C)を含むことを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- さらに相溶化剤(E)を含むことを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- さらに耐衝撃改良剤(F)を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1~4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
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