JP7194380B2 - 製パン用交雑酵母菌株 - Google Patents

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Description

NPMD NITE P-02673 NPMD NITE P-02508
本発明は、製パン配合に使うことにより良好な風味を呈する焼成品が得られることを特徴とする交雑酵母菌株に関するものである。
パン製造において、酵母は糖を発酵する際に発生する炭酸ガスでパン生地を膨張させると同時に、独特の風味を醸し出すという重要な役割を果たしている。このような製パン用として入手可能な酵母製品はパン生地発酵力という形質で選抜されてきたため、ほとんどすべての菌株は生物種サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に分類されている。しかしながら、これらは同一種であるためにそれらの形質は均一的であり、差別化された風味を求めるのは容易ではない。
これまでにパンの風味を改善する方法としては、製造工程の改変(特許文献1)、副原料の配合(特許文献2)、発酵風味液の添加(特許文献3)、自然界から分離した酵母菌株の使用(特許文献4)、薬剤耐性を付与した酵母変異株の適用(特許文献5)などがあり、ある程度の効果はあるとされているが、それで十分かどうかは不明である。
このような技術背景において、より良好風香味を呈するパン類の製造が可能な、これまでにない性質・特徴を有する製パン用酵母の開発が当業界において求められていた。
サッカロマイセス属には少なくとも8つの生物種が含まれており、醸造等の産業に使用されているのは専らサッカロマイセス・セレビシエに分類される菌株である。このうちのサッカロマイセス・ミカタエ(Saccharomyces mikatae)は、日本国内において見出されているマルトース非発酵性の野生種で産業に使用された実績はないが、サッカロマイセス・セレビシエとの交雑株をワイン醸造に使用すると香気成分が異なる製品が得られたと報告されている(非特許文献1)。しかし、これまでにサッカロマイセス・ミカタエとサッカロマイセス・セレビシエの交雑株を製パンに適用されたことはない。
特開2015-165779号公報 特開2015-37393号公報 特開2015-173633号公報 特開2012-191851号公報 特開2002-253211号公報
Plos One,8,e62053,2013
本発明は、製パン配合に使用することにより、良好な風香味を呈する焼成品が得られる酵母菌株を新たに開発することを目的とする。更に言えば、従来の酵母における発酵力と同等もしくはそれ以上の発酵力を維持・発揮しつつ、あるいは、場合によっては発酵力を多少犠牲にしても、品質、特に風味、香り、味の点で極めてすぐれた高品質のパンの製造を可能とする酵母菌株を新たに作出することを本発明は課題とするものである。
上記の目的を達成するためには、サッカロマイセス・ミカタエおよびサッカロマイセス・セレビシエの特徴的な優良形質を兼ね備えた菌株を作出すればよい。本発明者らはこれらの点について鋭意研究した結果、サッカロマイセス・ミカタエとサッカロマイセス・セレビシエとの交雑により製パン配合に使用すると特徴的で良好な風香味を呈する焼成品が得られる酵母菌株を作出できることを発見し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の実施態様を例示すると次のとおりである。
(1)製パン用酵母サッカロマイセス(Saccharomyces)sp.DHM15株(NITE P-02672)。
(2)製パン用酵母サッカロマイセス(Saccharomyces)sp.HM40株(NITE P-02938)。
(3)(1)又は(2)に記載の製パン用酵母を含有するパン生地。
(4)サッカロマイセス・ミカタエ(Saccharomyces mikatae)AK40株(NITE P-02673)と、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)H24U1M株(NITE P-02508)とを交雑することを特徴とする、サッカロマイセス(Saccharomyces)属に属する、より良好な風香味を有するパン類が製造可能な製パン用酵母の作出方法。
(5)交雑が、細胞対胞子接合、希少接合または細胞融合のいずれかであることを特徴とする(4)に記載の製パン用酵母の作出方法。
本発明によれば、サッカロマイセス・ミカタエAK40株とサッカロマイセス・セレビシエH24U1M株とを交雑することにより、きわめてすぐれた風香味を有するパン類が製造可能であり且つ実際の製パンに十分使用に耐え得る発酵力を有する製パン用酵母菌株を作出でき、当該酵母菌株をパン類製造に用いることで、パン類の高品質化を図ることができる。
本発明に係る菌株及びそれらの親株をそれぞれ用いて製造した食パンについて、GC-MSに供して香気成分を分析し、得られた結果を示す棒グラフである。図中、各棒グラフは、下から上へと、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、アセトイン、ノナナール、カプリル酸エチル、酢酸、エチルヘキサノール、フェニルエチルアルコールを順次表わす。
本発明においては、北海道十勝地方のブルーベリー様果実・葉から分離した野生菌株であるサッカロマイセス・ミカタエ AK40株と、市販のパン酵母菌株サッカロマイセス・セレビシエに由来して接合型αを示す一倍体菌株H24から、北本の方法(日本醸造協会雑誌,84(12),849-853,1989)によって得たウラシル要求性変異株であるH24U1M株、とを交雑する。
これらを親株として(AK40株、H24U1M)、胞子対細胞接合及び希少接合を行い、交雑株(DHM15、HM40)をそれぞれ作出する。なお、胞子対細胞接合とは、酵母の胞子(一倍体)と酵母の一倍体栄養細胞との間の異性間の接合により生じた二倍体交雑株を選択する方法を意味し、希少接合とは、酵母の二倍体栄養細胞中に発生するa接合型細胞又はα接合型細胞と一倍体栄養細胞との交雑により生じた三倍体交雑株を選択する方法を意味する。
胞子対細胞接合の手順は次の通りである。AK40をSPO寒天培地(酢酸カリウム1.0%、乾燥酵母エキス0.1%、グルコース0.05%、寒天2.0%)で30℃、6日間培養すると胞子を形成するが、胞子から発芽すると接合型が変換して分裂した細胞同士による自己二倍体化するホモタリック株である。一方、H24U1Mは接合型aが変換せずに接合型αの細胞と接合するヘテロタリック株である。そこで、胞子化したAK40の細胞を細胞壁溶解酵素で処理し、YPD寒天培地(乾燥酵母エキス1.0%、ハイポリペプトン2.0%、グルコース2.0%、寒天2.0%)の片側に塗付し、もう片一方にはH24U1Mを塗布した。顕微鏡下でマイクロマニュピレーターにより取り出したAK40の胞子一個とH24U1M細胞一個のペア24組をつくり、30℃、2日間培養後、30℃、2日間培養した。出現した24個のコロニーを最少グルコース寒天培地(Yeast nitrogen base without amino acids0.67%、グルコース2.0%、寒天2.0%)に接種して30℃、2日間培養後、これらを最少マルトース寒天平板培地(Yeast nitrogen base without amino acids0.67%、マルトース2.0%、寒天2.0%)に移植した。これを嫌気ボックス中で30℃、1日間培養したところ、18コロニーが増殖したので、このうちの一株を胞子対細胞接合による交雑二倍体DHM15として純粋分離した。
一方、希少接合の手順は次の通りである。AK40は接合型a/αの二倍体が考えられるが、細胞分裂の過程においてきわめて低頻度でa/aまたはα/αの細胞が出現する。このような細胞は反対の接合型を示す細胞と接合させることができる。そこでAK40とH24U1Mの両方について一白金耳分の菌体を試験管(直径1.8cm×長さ10.5cm)の中のYPD培地(乾燥酵母エキス1.0%、ハイポリペプトン2.0%、グルコース2.0%)3mlに接種し、30℃で振盪培養(150rpm)した。24時間後、培養液1mlを無菌的に遠心分離にかけて回収した菌体を滅菌水で2回洗浄した。この菌体を液体最少マルトース培地(Yeast nitrogen base without amino acids0.67%、マルトース2.0%)6mlに懸濁し、30℃で3日間、静置培養した。この培養液0.06mlを別の新しい液体最少マルトース培地に接種し、同様に2日間静置培養したところ、植菌直後は透明であった培養液は菌体の増殖により白濁した。この培養液中の増殖した酵母細胞を最少マルトース寒天平板培地上で画線接種し、希少接合による交雑株HM40(NITE P-02938)を純粋分離した。
胞子対細胞接合による交雑株DHM15(受託番号NITE P-02672)は、次のような性質を示す。
(1)形態学的性質
YPD培地(乾燥酵母エキス1.0%、ハイポリペプトン2.0%、グルコース2.0%)で30℃、1日間培養したときの細胞は球形または楕円形で、大きさは4~7μm×5~9μmで、多極出芽する。また、YPD寒天培地で30℃、1日間培養したときのコロニーは淡褐色で、光沢がある。また、SPO寒天培地上で30℃、6日培養すると胞子形成が認められる。
(2)生理的性質
温度20~37℃で生育する。
(3)糖の発酵性
グルコース:+
ガラクトース:+
スクロース:+
マルトース:+
ラクトース:-
ラフィノース:+
トレハロース:+
メリビオース:+
(4)炭素源の資化性
グルコース:++
ガラクトース:++
L-ソルボース:-
スクロース:++
マルトース:++
セロビオース:-
トレハロース:++
ラクトース:-
メリビオース:++
ラフィノース:+
メレジトース:++
イヌリン:-
可溶性デンプン:-
D-キシロース:-
L-アラビノース:-
D-アラビノース:-
D-リボース:-
L-ラムノース:-
リビトール:-
D-マンニトール:-
グリセロール:-
エタノール:++
α-メチルグルコシド:++
サリシン:-
コハク酸:-
クエン酸:-
ミオイノシトール:-
D-グルコサミン:-
希少接合による交雑株HM40(受託番号NITE P-02938)は、次のような性質を示す。
(1)形態学的性質
YPD培地(乾燥酵母エキス1.0%、ハイポリペプトン2.0%、グルコース2.0%)で30℃、1日間培養したときの細胞は球形または楕円形で、大きさは4~7μm×5~9μmで、多極出芽する。また、YPD寒天培地で30℃、1日間培養したときのコロニーは淡褐色で、光沢がある。また、SPO寒天培地上で30℃、6日培養すると胞子形成が認められる。
(2)生理的性質
温度20~37℃で生育する。
(3)糖の発酵性
グルコース:+
ガラクトース:+
スクロース:+
マルトース:+
ラクトース:-
ラフィノース:+
トレハロース:-
メリビオース:+
(4)炭素源の資化性
グルコース:++
ガラクトース:++
L-ソルボース:-
スクロース:++
マルトース:++
セロビオース:-
トレハロース:++
ラクトース:-
メリビオース:++
ラフィノース:+
メレジトース:++
イヌリン:-
可溶性デンプン:-
D-キシロース:-
L-アラビノース:-
D-アラビノース:-
D-リボース:-
L-ラムノース:-
リビトール:-
D-マンニトール:-
グリセロール:-
エタノール:++
α-メチルグルコシド:++
サリシン:-
コハク酸:-
クエン酸:-
ミオイノシトール:-
D-グルコサミン:-
交雑の親株AK40(受託番号NITE P-02673)は、次のような性質を示す。
(1)形態学的性質
YPD培地で30℃、1日間培養したときの細胞は球形または楕円形で、大きさは6~8μm×5~6μmで、多極出芽する。また、YPD寒天培地で30℃、1日間培養したときのコロニーは淡褐色で、光沢がある。また、SPO寒天培地上で30℃、6日培養すると胞子形成が認められる。
(2)生理的性質
温度20~37℃で生育する。
(3)糖の発酵性
グルコース:+
ガラクトース:+
スクロース:+
マルトース:-
ラクトース:-
ラフィノース:+
トレハロース:-
メリビオース:+
(4)炭素源の資化性
グルコース:++
ガラクトース:++
L-ソルボース:-
スクロース:++
マルトース:++
セロビオース:-
トレハロース:+
ラクトース:-
メリビオース:-
ラフィノース:+
メレジトース:++
イヌリン:-
可溶性デンプン:-
D-キシロース:-
L-アラビノース:-
D-アラビノース:-
D-リボース:-
L-ラムノース:-
リビトール:-
D-マンニトール:++
グリセロール:-
エタノール:++
α-メチルグルコシド:++
サリシン:-
コハク酸:-
クエン酸:-
ミオイノシトール:-
D-グルコサミン:-
交雑のもう一方の親株H24U1M(受託番号NITE P-02508)は、次のような性質を示す。
(1)形態学的性質
YPD培地で30℃、1日間培養したときの細胞は球形または楕円形で、大きさは4~6μm×3~5μmで、多極出芽する。また、YPD寒天培地で30℃、1日間培養したときのコロニーは淡褐色で、光沢がある。また、SPO寒天培地上で25℃、7日培養しても胞子の形成は認められない。
(2)生理的性質
温度20~37℃で生育する。
(3)糖の発酵性
グルコース:+
ガラクトース:+
スクロース:+
マルトース:+
ラクトース:-
ラフィノース:+
トレハロース:-
メリビオース:-
(4)炭素源の資化性
グルコース:++
ガラクトース:++
L-ソルボース:-
スクロース:++
マルトース:++
セロビオース:-
トレハロース:+
ラクトース:-
メリビオース:-
ラフィノース:+
メレジトース:+
イヌリン:-
可溶性デンプン:-
D-キシロース:-
クエン酸:-
ミオイノシトール:-
D-グルコサミン:-
これらAK40株、H24U1M株、DHM15株、HM40株は、いずれも独立行政法人 製品評価技術基盤機構・特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、AK40株は2018年4月4日付け、H24U1M株は2017年7月14日付け、DHM15株は2018年4月4日付けで寄託されており、その受託番号は、それぞれ、NITE P-02673、NITE P-02508、NITE P-02672である。HM40株は、同じく該特許微生物寄託センターに、2019年4月15日付けで寄託されており、その寄託番号は、NITE P-02938である。
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において、これらの様々な変形が可能である。
本発明の交雑株DHM15およびHM40のパン生地発酵力をSaccharomyces mikatae AK40株(交雑片親)、Saccharomyces cerevisiae H24U1M(もう一方の交雑片親)およびSaccharomyces cerevisiae HP467(市販パン酵母分離株)と比較した。
各菌株を50ml三角フラスコ中のYPD培地10mlで30℃、24時間往復振盪培養(150rpm)し、そのうちの0.6mlを300mlバッフル付き三角フラスコ中のYPS培地(バクト酵母エキス2.0%、バクトペプトン4.0%、KHPO0.2%、MgSO・7HO0.1%、NaCl2.0%、アデカノールLG-2940.05%、スクロース2.0%)60mlに接種して24時間、30℃で旋回振盪培養(150rpm)した。培養後の菌体は遠心分離で回収し、蒸留水で2回洗浄してから乾燥させた吸収板の上に数分間置いて培養湿菌体を得た。培養菌体の固形分は約30%になるが、一部を乾燥させて正確な数値を算出し、以下の実験では固形分33%に換算した重量として培養菌体を生地調製に使用した。
小麦粉(強力)10g、蒸留水5.5mlまたはスクロース0.5gおよびNaCl0.2gを含む蒸留水5.5mlおよび酵母菌体0.2g(固形分33%)を含む懸濁液1.0mlを1分間混捏し、それぞれ中種生地または低糖生地を調製した。これらの生地は2.4cm×20cmの試験管に入れ、発生する炭酸ガス量を飽和食塩水中のメスシリンダーに導いて、30℃、2時間当たりに発生する炭酸ガス発生量をパン生地発酵力としてそれぞれ測定した。
表1に示したように、HP467と比較してDHM15は中種生地発酵力においては上回っており、低糖生地発酵力においては同等であってことから、AK40のパン生地発酵力はH24U1Mと交雑することにより大幅に改善されていることが分かった。一方、交雑株HM40のパン生地発酵力はHP467には及ばないものの、AK40よりも高くなっており、H24U1Mと交雑することにより改善されていることが分かった。
Figure 0007194380000001
実施例1と同様の方法で調製した交雑株DHM15および市販パン酵母分離株HP467を使用して中種法で食パンをつくり、それらの品質について比較した。
小麦粉(強力)210g、酵母培養菌体6.0g(固形分33%)、アスコルビン酸溶液0.15ml(20mg/ml)及び蒸留水126mlをピンミキサーで3分間混捏し、捏ね上げたときの温度が24.0±1.0℃になるように中種生地を調製した。これを30℃、4.5時間発酵させた後、小麦粉90g、砂糖15.0g、食塩6.0g、ショートニング15.0gおよび蒸留水75mlを加えて、約4分間混捏し、捏ね上げたときの温度が30.0±0.5℃になるように本捏生地を調製した。さらに、30℃、20分のフロアタイム後、生地を100gずつ手で分割して丸めて30℃、15分のベンチタイムをとった。これをモルダーで成型し、38℃、湿度85%の最終発酵を55分行ってから180℃、25分焼成した。これを室温で放冷後、重量と容積を測定して比容積を算出した。その結果を表2(製パン試験結果)に示す。DHM15でつくったパンの比容積はHP467よりは低いものの、5.0以上で十分に評価できる値であった。
次に製造したパンについて11人のパネルでボリューム、形状、焼色、内部形状、やわらかさ、色相、香りおよび味について評価を行った。対照区であるHP467でつくったパンの結果を50とした結果を表3(官能評価結果)に示す。DHM15でつくったパンはボリューム以外の項目で同等またはそれ以上の評価であり、特に香りと味の項目で顕著に優れていた。
Figure 0007194380000002

Figure 0007194380000003

実施例2と同様の方法で交雑株HM40および市販パン酵母分離株HP467を使用して中種法で食パンをつくり、それらの品質について比較した。
その結果を表4(製パン試験結果)に示す。該表から明らかなように、HM40でつくったパンの比容積はHP467よりは低いものの、5.0以上で十分に評価できる値であった。
実施例2と同様に、製造したパンについて10人のパネルでボリューム、形状、焼色、内部形状、やわらかさ、色相、香りおよび味について評価を行った。対照区であるHP467でつくったパンの結果を50とした結果を表5(官能試験結果)に示す。HM40でつくったパンはボリューム以外の項目で同等またはそれ以上の評価であり、特に香りと味の項目で顕著に優れていた。
Figure 0007194380000004

Figure 0007194380000005

サッカロマイセス属の異種間交雑菌株の生地発酵力及びそれらを用いて製造したパンについての香気成分の分析を行った。
〈使用菌株〉
使用菌株としては、下記表6に記載した菌株を使用した。
Figure 0007194380000006

〈生地発酵力〉
生地発酵力は、イースト工業会法により砂糖0%配合の生地で実施した。結果を下記表7に示す(数値の単位はml)が、DHM15株及びHM40株は、いずれも、0%生地発酵力は対照と同等あるいはそれ以上であることが確認された。
Figure 0007194380000007

〈香気成分〉
これらの菌株を用いて70%中種法によって食パンを製造した。得られた食パンのクラム部分を以下の条件にてGC-MSに供して、香気成分を分析した。
○装置
Shimadzu GC-MS-QP2010Ultra
○香気成分捕集条件
サンプル:パンのクラム部分4g
捕集材:SPMEファイバー(100um PDMS,Fused Silica24Ga)
捕集時間:30分、捕集温度70℃
○GC-MS分析条件
カラム:TC-WAX(0.25mm,I.D.×60m)、40℃/2min→240℃(10min)
イオン化法:EI
内部標準:シクロヘキサノール
得られた結果を表8及び図1に示した。これらの結果から、主要な香気成分の比率は対照と大きく異なり、また、既述の食パンの官能試験の結果(パネラーの大半が対照との明確な香りの違いを感じとれた)からも明らかなように、本発明に係る交雑パン酵母菌株を用いて製造した食パンは香りが非常によかった。
Figure 0007194380000008

図中、縦軸はピーク面積、横軸は菌株を表わす。菌株は、左から順に、弊社一般用イースト(HP467)、AK40、H24U1M、DHM15、HM40を表わす。各棒グラフは下から順番に、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、アセトイン、ノナナール、カプリル酸エチル、酢酸、エチルヘキサノール、フェニルエチルアルコールを示す。
本発明を要約すると、下記のとおりである。
本発明は、より良好な風香味や形状等のパン類が製造可能な実用的な製パン用酵母、当該酵母を用いたパン類の製造方法等を提供することを目的とする。
そして、サッカロマイセス・ミカタエ(Saccharomyces mikatae)AK40株と、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)H24U1M株とを交雑することで、より良好な風香味及び形状のパン類を製造できる実用的な製パン用酵母の取得ができ、当該酵母をパン類製造に用いることで風香味及び形状がより好適な高品質パン類、特に風味、香り、味の点できわめてすぐれたパン類を製造できる。
本発明において寄託されている微生物の寄託番号を下記に示す。
(1)サッカロマイセス・ミカタエ(Saccharomyces mikatae)AK40株(NITE P-02673)
(2)サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)H24U1M株(NITE P-02508)
(3)サッカロマイセス(Saccharomyces)sp.DHM15株(NITE P-02672)
(4)サッカロマイセス(Saccharomyces)sp.HM40株(NITE P-02938)

Claims (5)

  1. サッカロマイセス・ミカタエ(Saccharomyces mikatae) AK40株(NITE P-02673)と、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) H24U1M株(NITE P-02508)とを交雑することを特徴とする、サッカロマイセス(Saccharomyces)属に属する、製パン用酵母の作出方法。
  2. 交雑が、細胞対胞子接合、希少接合または細胞融合のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の製パン用酵母の作出方法。
  3. 製パン用酵母サッカロマイセス(Saccharomyces)sp.DHM15株(NITE P-02672)。
  4. 製パン用酵母サッカロマイセス(Saccharomyces)sp.HM40株(NITE P-02938)。
  5. 請求項3又は4に記載の製パン用酵母を含有するパン生地。



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