JP6927471B2 - パン酵母、パンの製造方法、パン生地及びパン - Google Patents

パン酵母、パンの製造方法、パン生地及びパン Download PDF

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Description

本発明は、パン酵母、パンの製造方法、パン生地及びパンに関する。
我が国で生産される小麦の大部分はうどん用等の中力小麦であり、これらの小麦から得られる中力粉は、強力粉が通常使用されるパンや中華麺等への利用は不向きとされてきたが、品種改良の進展により、製パン適性が外国産強力小麦に匹敵する品質を備えた品種の小麦が供給されるようになってきた。その筆頭として挙げることができるのが、北海道で開発され、生産量が急増している秋まき小麦品種「ゆめちから」である。この小麦から作られる小麦粉の品質は強力粉を凌ぐ超強力粉であるために、単体での用途は限られているものの、従来から生産されている中力粉と適宜ブレンドすることにより、優れた製パン適性を示すことがわかっている。その結果、良質の国産パン用小麦粉の安定供給が可能となり、中小のベーカリーのみならず大手製パンメーカーの製品にもこれらのブレンド粉が採用されている。
製パンの原料には、小麦粉以外に砂糖、食塩、油脂、酵母(イースト)等が必要であるが、酵母は糖をエタノールへと変換する際に発生する炭酸ガスで生地を膨張させるとともに、パンに特有の好ましい風味を与えているという役割を担っている。
市販されているパン用酵母製品の多くは、製造企業が保存する生物種Saccharomyces cerevisiae(サッカロミセス・セレビシエ)に分類される菌株を大量培養したもので、菌株の由来は不明である。酵母サッカロミセス・セレビシエは自然界の果物や樹液などに生息しているが、製パン用として十分なパン生地発酵力を備えた菌株は稀である。
野生酵母由来で菌株の出自が明らかにされている市販パン酵母製品としては、「白神こだま酵母」(特許文献1)及び「とかち野酵母」(特許文献2)がある。「白神こだま酵母」(特許文献1)は、温帯落葉樹林帯内の腐葉土から分離された酵母であり、「とかち野酵母」(特許文献2)は、北海道十勝地方に自生するエゾヤマザクラのサクランボから分離された酵母である。
特開2001−178449号公報 特開2010−068739号公報
上記の国産パン用小麦粉を使用したパンを製造する際に、小麦粉のもととなる小麦から分離したパン酵母を使用することができれば、パン製品に対する消費者のイメージを格段に向上させることが可能となる。そのため、このような小麦から分離された新規酵母の取得が、待たれている状況にあった。
本発明者らは、本来であれば酵母が存在し難い小麦の花部から新規のパン酵母を分離したことにより、本発明を完成させた。本発明は、発酵特性の良好なパン酵母、高品質のパンの製造方法、パン生地及びパンを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るパン酵母は、サッカロミセス・セレビシエ TK239(受託番号:NITE P−02414)、TKD01(受託番号:NITE P−02415)及びTKD35(受託番号:NITE P−02416)からなる群より少なくとも1つ選択される。
本発明の第2の観点に係るパンの製造方法は、本発明の第1の観点に係るパン酵母を使用する。
本発明の第3の観点に係るパン生地は、本発明の第1の観点に係るパン酵母を含有する。
本発明の第4の観点に係るパンは、本発明の第3の観点に係るパン生地を焼成してなる。
本発明によれば、発酵特性の良好なパン酵母、高品質のパンの製造方法、パン生地及びパンを提供することができる。
TK239及びKyokai 7のリボソームRNAスペーサー領域の塩基配列を表す図である。 2−DOG−Mal寒天平板培地上で生育した菌株の液体マルトース発酵力を表すグラフ図である。 予備選抜株による中種パン生地からの炭酸ガス発生量を示すグラフ図である。 TK239、TKD01及びTKD35の中種パン生地からの炭酸ガス発生量を示すグラフ図である。
まず、本実施形態によるパン酵母について説明する。
本実施形態によるパン酵母Saccharomyces cerevisiae(サッカロミセス・セレビシエ) TK239は、国産小麦の花部から分離され、好ましくは、北海道十勝地方で生産された超強力小麦品種「ゆめちから」の花部から分離される。小麦の花部には通常、酵母は存在し難いが、本発明者らは驚くべきことに小麦の花部からパン酵母サッカロミセス・セレビシエ TK239を分離することに成功し、本発明を完成させた。
サッカロミセス・セレビシエ TK239を取得する方法として、以下が例示される。北海道十勝地方で栽培されている超強力小麦品種「ゆめちから」の開花した穂の部分の試料をサンプルチューブに採取し、そこに一次集積用培地(例えば、スクロース 10.0%、乾燥酵母エキス 1.0%、ハイポリペプトン 2.0%、プロピオン酸ナトリウム 0.2%、クロラムフェニコール溶液(20mg/mLエタノール)0.25%を含む)を分注し、30℃、4日間静置培養する。この中で活発なガス発生が認められた培養液からパスツールピペットで二次集積培地(例えば、スクロース 20.0%、乾燥酵母エキス1.0%、ハイポリペプトン 2.0%、プロピオン酸ナトリウム 0.2%、クロラムフェニコール溶液(20mg/mLエタノール)0.25%を含む)に接種し、30℃、2日培養する。その後、培養液の一部をYPD寒天平板培地(乾燥酵母エキス1.0%、ハイポリペプトン2.0%、グルコース2.0%、寒天2.0%)に画線接種して30℃、2日間培養し、出現したコロニーのひとつを分離して、サッカロミセス・セレビシエ TK239を取得する。
サッカロミセス・セレビシエ TK239は、糖をエタノールへと変換する際に炭酸ガスを多く発生させることができ、発酵特性の良好なパン酵母である。
サッカロミセス・セレビシエ TK239は、例えば、次のような性質を示す。
(1)形態学的性質
YPD液体培地(乾燥酵母エキス1.0%、ハイポリペプトン2.0%、グルコース2.0%)で30℃、1日間培養したときの細胞は球形又は楕円形で、大きさは4〜6μm×5〜7μmで、多極出芽する。また、YPD寒天平板培地で30℃、1日間培養したときのコロニーは淡褐色で、光沢がある。
SPO培地(酢酸カリウム1.0%、酵母エキス0.1%、グルコース0.05%、寒天2.0%)上で30℃、3〜5日培養すると1〜4個の球形の胞子を形成する。
(2)生理的性質
温度22〜37℃で生育する。
(3)糖の発酵性
グルコース + ラクトース −
ガラクトース + ラフィノース +
スクロース + トレハロース −
マルトース + メリビオース −
(4)炭素源の資化性
グルコース ++ L−アラビノース −
ガラクトース ++ D−アラビノース −
L−ソルボース − D−リボース −
スクロース ++ L−ラムノース −
マルトース ++ リビトール −
セロビオース − D−マンニトール −
トレハロース + グリセロール +
ラクトース − エタノール ++
メリビオース − α−メチルグルコシド −
ラフィノース + サリシン −
メレジトース + コハク酸 −
イヌリン − クエン酸 −
可溶性デンプン − ミオイノシトール −
D−キシロース − D−グルコサミン −
また、他の実施形態によるパン酵母は、TKD01及びTKD35である。TKD01及びTKD35は、例えば、サッカロミセス・セレビシエ TK239から分離される。
TKD01及びTKD35は、例えば、以下のようにしてサッカロミセス・セレビシエ TK239から分離される。TK239をYPD液体培地(乾燥酵母エキス1.0%、ハイポリペプトン2.0%、グルコース2.0%)で30℃、24時間培養する。この培養液中の菌体を遠心分離で無菌的に回収し、滅菌水で洗浄後、滅菌水に懸濁する。この菌体懸濁液を複数の2−DOG−Mal寒天平板培地(例えば、2−デオキシグルコース 0.08%、Yeast Nitrogen Base w/o Amino acid 0.67%、マルトース2.0%、寒天2.0%を含む)に塗布し、30℃、5日培養後に出現したコロニーを得る。これらのコロニーを、それぞれ50mL三角フラスコ中のYPD液体培地に接種し、30℃、24時間、旋回振盪培養(例えば、150rpm)する。菌体を遠心分離で無菌的に回収、滅菌水で洗浄後、その全量をマルトース発酵力測定用培地(例えば、マルトース 1.60g、KHPO 0.10g、(NHHPO 0.10gを含む)に懸濁し、30℃、往復振盪(例えば、90rpm)で発酵させる。24時間後、酵母を接種しない培地をブランクとして設定し、各菌株による正味の培地重量の減少(発酵した場合COの発生、放出により培地重量減少)を液体マルトース発酵力として測定し、液体マルトース発酵力の高い株を選抜する。次に得られた株をそれぞれYPD液体培地に接種し、30℃、24時間、往復振盪培養(例えば、150rpm)する。このYPD培養液をYPS培地(バクト酵母エキス2.0%、バクトペプトン4.0%、KHPO 0.2%、MgSO・7HO 0.1%、NaCl 2.0%、アデカノールLG−294 0.05%、スクロース 2.0%)に接種して30℃、24時間旋回振盪培養(例えば、150rpm)する。このYPS培養液中の菌体を遠心分離で無菌的に回収し、滅菌水で洗浄後、滅菌水に懸濁する。この菌体懸濁液、蒸留水及び小麦粉を30℃の恒温室内で捏ね上げて中種パン生地を作り、そこから発生する炭酸ガス量を測定し、炭酸ガス発生量が高い株を高マルトース発酵性菌株として選抜し、TKD01及びTKD35を取得する。
2−デオキシグルコース含有選択培地を用いた高マルトース発酵性菌株の分離について説明する。グルコースの構造類似物である2−デオキシグルコースは、グルコースのようには代謝されないが、マルトースの代謝を抑制するため、菌株は2−デオキシグルコース存在下で通常、生育不能となる。2−デオキシグルコース存在下でも生育可能な菌株は、グルコース存在下でも活発にマルトースを代謝することができ、高マルトース発酵性菌株として選抜される。2−デオキシグルコース含有選択培地における2−デオキシグルコースの含有濃度は、例えば、0.08〜0.10%、好ましくは0.08%である。
パン酵母においては、グルコースとマルトースとが共存するとマルトースの代謝が抑制され、グルコースが消費された後、マルトースによりマルトースの取り込み及び分解に関与する酵素が誘導されて代謝される。中種生地では、パン酵母はパン生地中に存在するグルコース等の単糖類を発酵して消費し、その後は小麦粉に含まれるβ−アミラーゼなどの作用によってデンプンから生成するマルトースを発酵する。このとき、パン酵母はマルトースパーミアーゼによってマルトースを細胞内に取り込み、α−グルコシダーゼによってグルコース2分子へと分解する。このため、中種生地を十分膨張させるためには、主要な糖であるマルトースを迅速に発酵することを要するが、TKD01及びTKD35は高マルトース発酵性菌株であり、発酵特性の良好なパン酵母である。
パン酵母であるサッカロミセス・セレビシエ TK239、TKD01及びTKD35は各々、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に2017年4月14日付けで受託され、各々、受託番号NITE P−02414、受託番号NITE P−02415及び受託番号NITE P−02416が付与されている。
次に、本実施形態によるパンの製造方法について説明する。
本実施形態によるパンの製造方法では、上述のパン酵母サッカロミセス・セレビシエ TK239、TKD01及びTKD35のうち少なくとも1種が使用される。本明細書において「パン」には、食パン(山型食パン等)、ロールパン(バターロール等)、菓子パン、フランスパン、冷凍生地パン等といった焼成されることにより製造されるものの他、ドーナツ、蒸しパン等も含まれる。本明細書における「パン」は、小麦粉と水とを使用して得られる生地を加熱して得られるものをすべて包含し、特に限定はされない。
本実施形態によるパンの製造方法は、例えば、中種法に適用される。中種法は、まず小麦粉、水、パン酵母で練り上げた中種生地を室温で発酵させ、これに残りの小麦粉、水、砂糖、食塩、油脂などを加えて混捏した生地をさらに発酵後、焼成する方法である。
次に、本実施形態によるパン生地について説明する。
本実施形態によるパン生地は、上述のパン酵母サッカロミセス・セレビシエ TK239、TKD01及びTKD35のうち少なくとも1種を含有する。該パン生地は、例えば、小麦粉、水、パン酵母で練り上げた中種生地である。
次に、本実施形態によるパンについて説明する。
本実施形態によるパンは、上述の本実施形態によるパン生地を焼成してなるものである。例えば、上述の中種生地に残りの小麦粉、水、砂糖、食塩、油脂などを加えて混捏した生地をさらに発酵後、焼成したパンであってもよい。
以上説明したように、パン酵母サッカロミセス・セレビシエ TK239、TKD01及びTKD35は、発酵特性が良好であり、高品質のパンを製造することが可能である。また、国産小麦の花部から分離されたこれらのパン酵母を、国産パン用小麦粉によるパン製造の際に用いることで、消費者からのニーズの多い国産小麦を原料とした高品質のパン類を製造することができ、パン製品に対する消費者のイメージを格段に向上させることが可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
パン酵母菌株サッカロミセス・セレビシエ TK239(NITE P−02414)を、次のような方法で分離した。
北海道十勝地方で栽培されている超強力小麦品種「ゆめちから」の開花した穂の部分(全長約5cm)の試料49点を50mL容サンプルチューブに採取し、そこに表1の一次集積用培地約20mLを分注した。これらを30℃、4日間静置培養した。この中で39番目の試料にのみ活発なガス発生が認められたため、その培養液からパスツールピペットで2〜3滴を表1の二次集積培地10mLに接種した。30℃、2日培養後、培養液の一部をYPD寒天平板培地(乾燥酵母エキス1.0%、ハイポリペプトン2.0%、グルコース2.0%、寒天2.0%)に画線接種して30℃、2日間培養し、出現したコロニーのひとつを分離し、TK239とした。
Figure 0006927471
このようにして分離した本菌株の酵母TK239は次のような性質を示したことから、サッカロミセス・セレビシエと同定した。
(1)形態学的性質
YPD液体培地(乾燥酵母エキス1.0%、ハイポリペプトン2.0%、グルコース2.0%)で30℃、1日間培養したときの細胞は球形又は楕円形で、大きさは4〜6μm×5〜7μmで、多極出芽した。また、YPD寒天平板培地で30℃、1日間培養したときのコロニーは淡褐色で、光沢があった。
SPO培地(酢酸カリウム1.0%、酵母エキス0.1%、グルコース0.05%、寒天2.0%)上で30℃、3〜5日培養すると1〜4個の球形の胞子を形成した。
(2)生理的性質
温度22〜37℃で生育した。
(3)糖の発酵性
グルコース + ラクトース −
ガラクトース + ラフィノース +
スクロース + トレハロース −
マルトース + メリビオース −
(4)炭素源の資化性
グルコース ++ L−アラビノース −
ガラクトース ++ D−アラビノース −
L−ソルボース − D−リボース −
スクロース ++ L−ラムノース −
マルトース ++ リビトール −
セロビオース − D−マンニトール −
トレハロース + グリセロール +
ラクトース − エタノール ++
メリビオース − α−メチルグルコシド −
ラフィノース + サリシン −
メレジトース + コハク酸 −
イヌリン − クエン酸 −
可溶性デンプン − ミオイノシトール −
D−キシロース − D−グルコサミン −
(5)リボソームRNAスペーサー領域の塩基配列
培養菌体から常法によりDNAを抽出し、pITS1及びpITS4のプライマー(表2)によって約760塩基対のリボソームRNAスペーサー領域を増幅させた。この領域はリボソームRNA内部の塩基配列よりも塩基置換頻度が高いために、近縁種の解析に効果的とされている。増幅断片はpITS1、pITS2、pITS3及びpITS4の各プライマー(表2)でサイクルシーケンシングを行い、DNAシーケンサーにて塩基配列を決定する。この配列情報をインターネット上のBLASTプログラムに入力してホモロジー検索を行うと、S.cerevisiae Kyokai 7(清酒酵母きょうかい7号)の配列(日本DNAデータバンク アクセッション番号AB180471)と完全に一致した(図1)。
Figure 0006927471
図1は、リボソームRNAスペーサー領域の塩基配列を示す(*は一致部分、TK239:配列番号5、Kyokai 7:配列番号6)。
(実施例2)
次に、サッカロミセス・セレビシエ TK239(NITE P−02414)から、TKD01(NITE P−02415)及びTKD35(NITE P−02416)を、次のような方法で分離した。
自然界から分離される野生酵母は、中種製パン法で必要とされるマルトース発酵性が十分でない場合が多いが、同一菌株であっても培養中の無数の細胞中にはマルトース発酵性に優れた個体が存在している。そこで、このような高マルトース発酵性を備えた個体を選別、分離し、そのような形質が引き継がれた菌株を以下のような方法で選抜した。
TK239を10mL YPD液体培地(乾燥酵母エキス1.0%、ハイポリペプトン2.0%、グルコース2.0%)で30℃、24時間培養した。この培養液中の菌体を遠心分離で無菌的に回収し、滅菌水10mLで2回洗浄後、滅菌水に懸濁して全量1.0mLに合わせた。この菌体懸濁液0.1mLを2−DOG−Mal寒天平板培地(2−デオキシグルコース 0.08%、Yeast Nitrogen Base w/o Amino acid 0.67%、マルトース2.0%、寒天2.0%)10枚に塗布し、30℃、5日培養後に出現した58個のコロニーをそれぞれTKD01〜58と命名した。
TKD01〜58及びTK239をそれぞれ50mL三角フラスコ中のYPD液体培地10mLに接種し、30℃、24時間、旋回振盪培養(150rpm)した。菌体は遠心分離で無菌的に回収、滅菌水5mLで1回洗浄後、その全量を50mL三角フラスコ中のマルトース発酵力測定用培地(マルトース 1.60g、KHPO 0.10g、(NHHPO 0.10g)20mLに懸濁し、30℃、往復振盪(90rpm)で発酵させた。24時間後、酵母を接種しない培地をブランクとして設定し、各菌株による正味の培地重量の減少(発酵した場合COの発生、放出により培地重量減少)を液体マルトース発酵力として測定した。その結果をまとめたものを図2に示す。ほとんどの菌株はTK239(約0.10g)よりも高い水準であったが、最も液体マルトース発酵力の高いグループとして0.24g以上の8株(TKD01、03、19、32、33、35、50、57)を予備的に選抜した。
次にTKD01、03、19、32、33、35、50、57及びTK239をそれぞれ1.8cm試験管中のYPD液体培地3mLに接種し、30℃、24時間、往復振盪培養(150rpm)した。このYPD培養液0.1mLを50mL三角フラスコ中のYPS培地(バクト酵母エキス2.0%、バクトペプトン4.0%、KHPO 0.2%、MgSO・7HO 0.1%、NaCl 2.0%、アデカノールLG−294 0.05%、スクロース 2.0%)10mLに接種して30℃、24時間旋回振盪培養(150rpm)した。このYPS培養液中の菌体を遠心分離で無菌的に回収し、滅菌水10mLで1回洗浄後、滅菌水に懸濁し容量を1.0mLに合わせた。この菌体懸濁液1.0mL、蒸留水5.5mL及び小麦粉(日清製粉カメリヤ)10gを30℃の恒温室内で1分間捏ね上げて中種パン生地をつくり、そこから発生する4時間当たりの炭酸ガス量を測定した。図3は独立した3回の実験に基づく値から描いたものである。この結果から、最も中種パン生地からの炭酸ガス発生量が高かった上位2株、すなわちTKD01及びTKD35を高マルトース発酵性菌株として最終的に選抜した。
(実施例3)
TK239、TKD01及びTKD35を用いて調製された中種生地からの炭酸ガス発酵の経時変化を追跡した。各菌株を試験管中のYPD培地(乾燥酵母エキス1.0%、ハイポリペプトン2.0%、グルコース2.0%)3mLで30℃、24時間往復振盪培養(120rpm)し、そのうちの0.6mLを300mLバッフル付き三角フラスコ中のYPS培地(バクト酵母エキス2.0%、バクトペプトン4.0%、KHPO 0.2%、MgSO・7HO 0.1%、NaCl 2.0%、アデカノールLG−294 0.05%、スクロース 2.0%)60mLに接種して30℃、24時間旋回振盪培養(150rpm)した。培養後の菌体は遠心分離で回収し、蒸留水で2回洗浄してから乾燥させた吸収板の上に数分間置いて培養湿菌体を得た。培養菌体の固形分は約30%になるが、一部を乾燥させて正確な数値を算出し、以下の実験では固形分33%に換算した重量として培養菌体を生地調製に使用した。
小麦粉(日清製粉カメリヤ)100g、酵母培養菌体2.0g及び蒸留水57mLをピンミキサーで約3分間混捏し、捏ね上げたときの温度が30℃になるように中種生地を調製した。パン生地20gを分割し、5分当たりに発生する炭酸ガス量の変化をファーモグラフII(アトー株式会社)にて測定した(図4)。測定開始後1時間以降における炭酸ガス発生は、酵母細胞が小麦粉中のデンプンからアミラーゼ類の作用で生成するマルトースを発酵することによるものであるが、それを消費し尽くすと低下する。TKD01及びTKD35の炭酸ガス発生量はTK239を上回っており、さらにマルトースの消費終了時間が20分から30分程度早まっていることから、マルトース発酵性が高まっていることが判った。
(実施例4)
TK239、TKD01、TKD35及び市販パン酵母分離株HP467を使用して中種法で食パン(山型)をつくり、それらの品質について比較した。小麦粉(北海道産超強力小麦粉「ゆめちから粉」)210g、酵母培養菌体7.2g(HP467は6.0g、いずれも固形分33%)、アスコルビン酸溶液0.15mL(20mg/mL)及び蒸留水129mLをピンミキサーで3分間混捏し、捏ね上げたときの温度が24.0±0.5℃になるように中種生地を調製した。これを30℃、4.5時間発酵させた後、小麦粉(北海道産中力小麦粉「きたほなみ粉」)90g、砂糖15.0g、食塩6.0g、ショートニング15.0g及び蒸留水75mLを加えて、約5分間混捏し、捏ね上げたときの温度が30.0±0.5℃になるように本捏生地を調製した。さらに30℃、20分のフロアタイム後、生地を100gづつ手で分割して丸めて30℃、15分のベンチタイムをとった。これをモルダーで成型し、38℃、湿度85%の最終発酵を55分行ってから180℃、25分焼成した。これを室温で放冷後、重量と容積を測定して比容積を算出した。その結果を表3に示す。TKD01及びTKD35でつくったパンの比容積はTK239よりも高かったが、いずれも5以上でHP467と同水準の十分に評価できる値であった。また、TKD01、TKD35及びTK239で製造したパンとHP467で製造したパンを比較すると、前者の方が外観、香り、味がともに良好であり、好ましい品質を示した。
Figure 0006927471
以上説明したように、北海道十勝地方で栽培されている超強力小麦品種「ゆめちから」の開花した穂の部分に由来するパン酵母サッカロミセス・セレビシエ TK239、TKD01又はTKD35を使用することによって、高品質のパンを製造できることが示された。

Claims (4)

  1. サッカロミセス・セレビシエ TK239(受託番号:NITE P−02414)、TKD01(受託番号:NITE P−02415)及びTKD35(受託番号:NITE P−02416)からなる群より少なくとも1つ選択されるパン酵母。
  2. 請求項1に記載のパン酵母を使用する、
    ことを特徴とするパンの製造方法。
  3. 請求項1に記載のパン酵母を含有する、
    ことを特徴とするパン生地。
  4. 請求項3に記載のパン生地を焼成してなるパン。
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